JP3158556U - クラッチ駆動装置およびそれを備えた車両 - Google Patents

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Abstract

【課題】クラッチ駆動装置において、相殺用圧縮コイルばねを設けなくても、遊び領域における逆アシスト力を抑制することを可能とする。【解決手段】クラッチ駆動装置は、クラッチと、アクチュエータと、第1回転体19と、第1回転体19の回転に伴ってアクチュエータの駆動力をクラッチに伝達する作動力伝達機構15と、一端側が揺動自在に支持され、他端側が回転体19に当接されたアシストスプリングユニット25と、を備えている。第1回転体19とアシストスプリングユニット25との当接構造は、第1回転体19が回転してもクラッチが切断されない領域である遊び領域内の少なくとも一つの位置において、アシストスプリングユニット25の付勢力が第1回転体19を回転させる方向に作用しないような構造に構成されている。【選択図】図7

Description

本考案は、アクチュエータの駆動力を用いてクラッチを駆動するクラッチ駆動装置およびそれを備えた車両に関する。
従来から、手動によるクラッチの断続動作を補助する装置として、ばね等の付勢力を利用するクラッチ操作補助装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたクラッチ操作補助装置は、クラッチレバーとクラッチとの間に介在し、ライダーによるクラッチレバーの操作力を軽減するものである。
図18(a)に示すように、特許文献1に記載されたクラッチ操作補助装置は、圧縮コイルばね234と、圧縮コイルばね234を支持すると共に圧縮コイルばね234に従って長手方向に伸縮するスプリングホルダー253とを備えている。スプリングホルダー253の根元部は支点C1を中心として揺動するように形成され、スプリングホルダー253の先端部は、連結用ピン241を介してレバー238に連結されている。レバー238は、クラッチレバーとクラッチとの間の操作力伝達系内に配置されており、支軸243を中心として回転する。図18(a)〜(c)において、クラッチが切断する方向にクラッチレバーを操作すると、レバー238は時計回り方向に回転し、クラッチが接続する方向にクラッチレバーを操作すると、レバー238は反時計回り方向に回転する。
ところで、クラッチには、クラッチレバーを握ってもクラッチからの荷重(以下、クラッチ荷重という)が加わらないいわゆる遊び領域が設けられている。遊び領域では、クラッチレバーを握ってもクラッチは切断されない。クラッチが切断され始める位置はミートポイント(言い換えると切断開始位置)と呼ばれ、ミートポイントを過ぎるとクラッチレバーにクラッチ荷重が加わることになる。そこで、上記クラッチ操作補助装置では、圧縮コイルばね234のアシスト力は、ミートポイントでは零となり、ミートポイントを超えてクラッチを切断する方向にクラッチレバーを操作している間は、クラッチを切断する方向に作用するようになっている。
具体的には、図18(b)に示すように、ミートポイントにおいては、スプリングホルダー253の揺動支点C1と連結用ピン241の中心とを結ぶ線L1と、揺動支点C1とレバー238の回転中心(すなわち、支軸243の中心)とを結ぶ線L2とは、一致する。そのため、圧縮コイルばね234のアシスト力は零となる。そして、図18(c)に示すように、ミートポイントを超えてクラッチ切断側へ移行している間は、線L1は線L2よりも下側に移行し、圧縮コイルばね234の付勢力は、レバー238を時計回り方向(すなわち、クラッチを切断する方向)に回転させるアシスト力として作用する。
一方、図18(a)に示すように、遊び領域においては、線L1は線L2よりも上側にずれており、圧縮コイルばね234の付勢力は、レバー238を反時計回り方向、すなわちクラッチを接続する方向に作用する。そのため、遊び領域における上記圧縮コイルばね234の付勢力は、クラッチレバーを握るライダーに負荷を与える力(以下、逆アシスト力という)として作用してしまう。そこで、上記クラッチ操作補助装置では、逆アシスト力を相殺するように、遊び領域にあるレバー238に付勢力を与える相殺用圧縮コイルばね235を別途設けるようにしている。
以上のように、上記クラッチ操作補助装置は、ライダーの手動によるクラッチ操作を補助する装置である。一方、クラッチの切断および接続の動作を電動モータ等のアクチュエータを用いて行う装置(以下、クラッチ駆動装置という)が知られている。また、アクチュエータの負荷を軽減するために、上述したアシスト力を発生させる圧縮コイルばねを備えたクラッチ駆動装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかし、圧縮コイルばねを備えたクラッチ駆動装置であっても、遊び領域において、圧縮コイルばねによる逆アシスト力が発生する。そのため、遊び領域においては、アクチュエータに余分な負荷がかかることになる。そこで、クラッチ駆動装置においても、アクチュエータの負荷を軽減するために、相殺用圧縮コイルばねを別途設けることが考えられる。
特開2005−326018号公報 特開2007−69638号公報
しかしながら、クラッチ駆動装置において相殺用圧縮コイルばねを別途設けることとすると、部品点数の増加、構造の複雑化、およびコストアップを招くおそれがある。
本考案は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、クラッチ駆動装置において、相殺用圧縮コイルばねを設けなくても、遊び領域における逆アシスト力を抑制することを可能とすることにある。
本考案に係るクラッチ駆動装置は、クラッチと、前記クラッチを断続させる駆動力を発生させるアクチュエータと、前記クラッチを切断するときには第1の方向に回転し、前記クラッチを接続させるときには第2の方向に回転する回転体を有し、前記回転体の回転に伴って前記アクチュエータの駆動力を前記クラッチに伝達する作動力伝達機構と、一端側が揺動自在に支持され、他端側が前記回転体に当接され、前記クラッチが切断され始めてからさらに切断方向に状態変化している間に、前記回転体を前記クラッチが切断する方向に付勢する補助弾性体と、を備え、前記回転体と前記補助弾性体との当接構造は、前記回転体が回転しても前記クラッチが切断されない領域である遊び領域内の少なくとも一つの位置において、前記補助弾性体の付勢力が前記回転体を回転させる方向に作用しないような構造に構成されているものである。
上記クラッチ駆動装置では、従来のように補助弾性体と回転体とがピン結合されているのではなく、互いに当接しており、遊び領域内の少なくとも一つの位置において、補助弾性体の付勢力が回転体を回転させる方向に作用しないようになっている。そのため、遊び領域の全域において逆アシスト力が発生する従来技術と比較して、遊び領域の平均の逆アシスト力を小さく抑えることができる。したがって、相殺用圧縮コイルばねを設けなくても、アクチュエータの負荷を軽減することができる。なお、クラッチの切断はアクチュエータによって行われるので、クラッチの切断をクラッチレバー等を用いて行う車両と異なり、ライダーの操作フィーリングが悪化するという問題は生じない。そのため、遊び領域内に上述の構造を設けたとしても、実用上の問題は生じない。
本考案によれば、クラッチ駆動装置において、相殺用圧縮コイルばねを設けなくても、遊び領域における逆アシスト力を抑制することが可能となる。
自動二輪車の側面図である。 自動変速操作スイッチの斜視図である。 パワーユニットの側面図である。 カバーを外した状態のパワーユニットの側面図である。 パワーユニットの一部を切り欠いて示す平面図である。 パワーユニットの主要構成要素を示す模式図である。 (a)はクラッチが接続されている状態の作動力伝達機構の側面図、(b)は同状態におけるボールカムのボールの位置を示す模式図である。 第1回転体の断面図である。 第2回転体の側面図である。 クラッチが接続状態にあるときのボールカムの断面図である。 (a)はクラッチが切断開始位置にあるときの作動力伝達機構の側面図、(b)はクラッチが切断開始位置にあるときのボールカムのボールの位置を示す模式図である。 (a)はクラッチが切断された状態の作動力伝達機構の側面図、(b)は同状態のボールカムのボールの位置を示す模式図である。 クラッチが切断されている状態のボールカムの断面図である。 (a)〜(d)は第1回転体とアシストスプリングユニットとの当接構造を示す正面図である。 アシストスプリングユニットのアシスト力の変化を示す図である。 (a)〜(c)は、実施形態2に係る第1回転体とアシストスプリングユニットとの当接構造を示す正面図である。 (a)〜(c)は、実施形態3に係る第1回転体とアシストスプリングユニットとの当接構造を示す正面図である。 (a)〜(c)は、従来のクラッチ操作補助装置の構成図である。
以下、本考案の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
−実施形態1−
《自動二輪車》
図1は、本実施形態に係る自動二輪車1を示す側面図である。図1に示すように、実施形態に係る自動二輪車1は、車体フレーム2を備えている。車体フレーム2は、ヘッドパイプ3と、ヘッドパイプ3から後方に延びるメインフレーム4と、メインフレーム4の後部から下方に延びるリヤアームブラケット5とを有している。
ヘッドパイプ3にはフロントフォーク9が支持されている。フロントフォーク9の上端には、操向ハンドル8が設けられ、下端には前輪41が設けられている。また、メインフレーム4の上部には燃料タンク44が配置され、燃料タンク44の後方にはシート45が配置されている。シート45は、シートレール6の上に載置されている。メインフレーム4およびリヤアームブラケット5には、パワーユニット35が懸架されている。リヤアームブラケット5には、リヤアーム7の前端部が上下揺動可能に支持されている。リヤアーム7の後端部には後輪40が支持されている。
操向ハンドル8には、シート45に跨って乗車するライダー100によって操作される自動変速操作スイッチ136,137(図2参照)が設けられている。
《パワーユニット》
図3はパワーユニット35の右側面図である。なお、符号65は、エアクリーナを示している。図4は、カバー38およびケースカバー32(図5参照)を取り外した状態におけるパワーユニット35の主要部の右側面図である。図5は、パワーユニット35の一部を切り欠いて示す平面図である。図6は、パワーユニット35の内部の構成を模式的に示す図である。図6に示すように、パワーユニット35は、エンジン30と、クラッチ11と、変速装置43とを備えている。また、パワーユニット35は、クラッチ11を断続させるクラッチアクチュエータ14(図4参照)と、変速装置43を作動させるシフトアクチュエータ70とを備えている。
《エンジン》
エンジン30の種類は何ら限定されないが、本実施形態では、エンジン30は水冷式4サイクル並列4気筒型のエンジンである。ただし、エンジン30は、ガソリンエンジン等の内燃機関に限定されず、モータエンジン等の他の種類のエンジンであってもよい。また、エンジン30は、ガソリンエンジンとモータエンジンとを組み合わせたものであってもよい。エンジン30は、左右方向に延びるクランク軸31を有している。クランク軸31には、ギア310が形成されている。
《クラッチ》
図6に示すように、本実施形態に係るクラッチ11は、多板摩擦クラッチである。ただし、クラッチ11の種類は、多板摩擦クラッチに限定されるわけではない。クラッチ11は、クラッチハウジング443と、このクラッチハウジング443に一体的に設けられた複数のフリクションプレート445と、クラッチボス447と、クラッチボス447に一体的に設けられた複数のクラッチプレート449と、フリクションプレート445とクラッチプレート449とを圧着させるプレッシャプレート451とを備えている。
メイン軸10には、メイン軸10に対して回転自在なギア441が支持されている。このギア441は、クランク軸31のギア310と噛み合っている。クラッチハウジング443はギア441に固定されており、クラッチハウジング443はギア441と一体となって回転する。そのため、クラッチハウジング443には、ギア441を介してクランク軸31からトルクが伝達される。
図5に示すように、筒状のクラッチボス447の内側には、このクラッチボス447と一体的に設けられ、メイン軸10の軸方向に延びる円筒状の複数のガイド部447Cが配置されている。ガイド部447Cには、皿ばねからなるばね450が取り付けられている。ばね450は、プレッシャプレート451を図5の左側に向かって付勢している。すなわち、ばね450は、クラッチ11が接続する方向にプレッシャプレート451を付勢している。
詳細は後述するが、プレッシャプレート451は、クラッチアクチュエータ14によって駆動され、スライド軸455の軸方向に移動する。クラッチ11が接続される際には、スライド軸455が図5の左側に移動し、プレッシャプレート451も同様に左側に移動する。その結果、ばね450の付勢力を受けたプレッシャプレート451が、フリクションプレート445とクラッチプレート449とを圧着させる。これにより、フリクションプレート445とクラッチプレート449との間に摩擦力が発生し、クラッチハウジング443からクラッチボス447へ駆動力が伝達される状態となる。
一方、クラッチ11が切断される際には、スライド軸455が図5の右側に移動し、プレッシャプレート451も、ばね450の付勢力に対抗して図5の右側に移動する。その結果、フリクションプレート445とクラッチプレート449との圧着状態が解除される。これにより、クラッチハウジング443からクラッチボス447へ駆動力が伝達されない状態となる。
このように、クラッチアクチュエータ14の駆動力とばね450の付勢力との大小によって、プレッシャプレート451はメイン軸10の軸方向の一方側または他方側に移動し、この移動に応じてクラッチ11が接続状態または切断状態になる。
《変速装置》
図6に示すように、変速装置43は、エンジン30のクランク軸31と平行に配設されたメイン軸10と、メイン軸10と平行に配設されたドライブ軸42と、を備えている。メイン軸10には、複数段の変速ギア49が設けられている。ドライブ軸42にも、複数段の変速ギア420が設けられている。メイン軸10上の変速ギア49は、ドライブ軸42上の変速ギア420と噛み合っている。なお、図6では、変速ギア49と変速ギア420とを分離して描いてある。これらの変速ギア49と変速ギア420とは、選択された一対の変速ギア以外は、いずれか一方または両方がメイン軸10またはドライブ軸42に対して遊転状態(つまり空回りの状態)で装着される。したがって、メイン軸10からドライブ軸42への回転力の伝達は、選択された一対の変速ギアのみを介して行われる。
変速ギア49と変速ギア420とを選択して変速比を変えるギアチェンジ動作は、シフトカム421の回転によって行われる。シフトカム421は、複数のカム溝421aを有し、各カム溝421aにシフトフォーク422が装着される。各シフトフォーク422は、それぞれメイン軸10およびドライブ軸42の所定の変速ギア49および変速ギア420に係合している。シフトカム421の回転により、シフトフォーク422がカム溝421aに案内されて各軸方向に移動し、シフトカム421の回転角度に応じた位置の一対の変速ギア49および変速ギア420のみが、メイン軸10およびドライブ軸42に対しそれぞれスプラインによる固定状態となる。これにより、変速ギア位置が定まり、当該変速ギア49および変速ギア420を介して、メイン軸10とドライブ軸42との間で所定の変速比で回転力が伝達される。
シフトカム421には、連結機構425を介してシフトアクチュエータ70が接続されている。シフトアクチュエータ70の種類は特に限定されず、例えば、電動モータ等を好適に用いることができる。シフトアクチュエータ70は、連結機構425を介してシフトカム421を回転させ、ギアチェンジ動作を行う。
《クラッチアクチュエータおよび作動力伝達機構》
次に、クラッチ11の断続を行うための駆動力を発生させるクラッチアクチュエータ14と、クラッチアクチュエータ14の駆動力を伝達する作動力伝達機構15とについて説明する。
図4および図5に示すように、クラッチアクチュエータ14および作動力伝達機構15は、パワーユニット35のケーシング39の内部に配置されている。詳しくは、図5に示すように、パワーユニット35のケーシング39は、クランク軸31およびクラッチ11を収容するクランクケース36と、クランクケース36の一部の右端部を覆うカバー38とを有している。クラッチアクチュエータ14および作動力伝達機構15は、クランクケース36の外側かつカバー38の内側に配置されている。言い換えると、クラッチアクチュエータ14および作動力伝達機構15は、クランクケース36の外側において、カバー38によって覆われている。
クラッチアクチュエータ14および作動力伝達機構15は、ケーシング39内の左右方向の一端部に配置される。クラッチアクチュエータ14および作動力伝達機構15は、ケーシング39内の左端部および右端部のいずれにも配置可能であるが、本実施形態では、右端部に配置されている。また、本実施形態では、クラッチアクチュエータ14および作動力伝達機構15は、左右方向に関して、クラッチ11が配置されている側に配置されている。ただし、クラッチアクチュエータ14および作動力伝達機構15を、左右方向に関して、クラッチ11が配置されている側と反対の側に配置することも可能である。
図4に示すように、本実施形態に係るクラッチアクチュエータ14は、電動モータによって構成されている。クラッチアクチュエータ14は、略円筒状のモータ本体14Aと、モータ本体14Aから下方に突出する駆動軸14Bとを備えている。クラッチアクチュエータ14は、モータ本体14Aおよび駆動軸14Bが上下に延びるように配置されている。
図7(a)に示すように、作動力伝達機構15は、クラッチアクチュエータ14の駆動軸14Bに連結されたウォーム軸16と、ウォーム軸16と噛み合う第1回転体19と、第1回転体19と噛み合う第2回転体24(図9参照)と、第2回転体24の回転力をスライド軸455の軸方向の力に変換するボールカム20とを備えている。なお、後述するように、本実施形態では、第2回転体24はボールカム20の一部を構成している。ただし、第2回転体24とボールカム20とは別体であってもよい。
ウォーム軸16は上下方向に延びている。ウォーム軸16の外周面には、螺旋状の溝が形成されている。ウォーム軸16は、軸受71および72によって回転自在に支持されている。なお、本実施形態では、クラッチアクチュエータ14の駆動軸14Bとウォーム軸16とは別体であるが、駆動軸14Bとウォーム軸16とは一体化されていてもよい。
図7(a)および図8に示すように、第1回転体19は、右側から左側(図7(a)では、紙面表側から裏側)に向かって順に、ウォームホイール部19aと、カム部19bと、ギア部19cとを備えている。図7(a)に示すように、ウォームホイール部19aの外周側の一部には、歯19a1が形成されている。ウォームホイール部19aは、ウォーム軸16と噛み合っている。そのため、ウォーム軸16の回転力はウォームホイール部19aに伝達され、第1回転体19はウォーム軸16にしたがって回転する。ウォーム軸16と第1回転体19のウォームホイール部19aとは、ウォームギア18を構成している。
第1回転体19のカム部19bは、後述するアシストスプリングユニット25の当接部25dと接触する部分である。
第1回転体19のギア部19cには、歯19c1が形成されている。ギア部19cの半径(厳密には、第1回転体19の回転中心C1から歯19c1までの距離)は、ウォームホイール部19aの半径(厳密には、第1回転体19の回転中心C1から歯19a1までの距離)よりも大きい。ただし、ギア部19cの半径とウォームホイール部19aの半径との大小関係は、逆であってもよい。また、ギア部19cの半径とウォームホイール部19aの半径とは、等しくてもよい。
図7(a)および図10に示すように、ボールカム20は、右側から左側(図7(a)では紙面表側から裏側)に向かって順に、カムプレート22と、ボールプレート23と、第2回転体24とを備えている。
カムプレート22は、スライド軸455に固定されており、スライド軸455と一体となってスライド軸455の軸方向に移動自在である。しかし、カムプレート22は、ストッパピン61によって、スライド軸455周りの回転が規制されている。
ボールプレート23は、周方向に均等の間隔をもって配置された3つのボール21を転がり自在に支持するものである。なお、ボール21の個数は3つに限定されるわけではない。
図10に示すように、第2回転体24は、軸受50によってスライド軸455周りに回転自在に支持されている。一方、第2回転体24は、スライド軸455の軸方向には移動しないようになっている。図9に示すように、第2回転体24には、歯24aが形成されている。この歯24aは、第1回転体19のギア部19cの歯19c1と噛み合っている(図7(a)参照)。したがって、第1回転体19と第2回転体24とは、歯19c1および歯24aを介してギア結合されており、第1回転体19の回転力が第2回転体24に伝達される。
カムプレート22の左側(図7(a)では下側)の面および第2回転体24の右側(図7(a)および図9では上側)の面には、周方向に沿って傾斜したカム溝22b,24bがそれぞれ形成されている(図7(b)も参照)。このように、本実施形態では、第2回転体24はカムプレートとしても機能する。第2回転体24が回転すると、カムプレート22のカム溝22bと第2回転体24のカム溝24bとの相対的な位置がずれ、ボール21がカム溝22b,24bから乗り上げる。これにより、カムプレート22がボール21によって右側に押され、右側にスライドする。それに伴い、スライド軸455も右側にスライドし、プレッシャプレート451も右側に移動する。その結果、クラッチ11は接続状態から切断状態に切り替えられる。
図7(a)に示すように、本実施形態では、作動力伝達機構15に、クラッチ11の切断を補助するアシスト力を発生させるアシストスプリングユニット25が設けられている。アシストスプリングユニット25は、略筒状の第1ホルダ25aと、この第1ホルダ25aに組み合わされた略筒状の第2ホルダ25bと、第1ホルダ25aと第2ホルダ25bとの間に配置された圧縮コイルばね25cと、第2ホルダ25bの先端に設けられた当接部25dとを備えている。当接部25dは、前述した第1回転体19のカム部19bと当接している。第1ホルダ25aと第2ホルダ25bとは、圧縮コイルばね25cによって、互いに離れる方向に付勢されている。第2ホルダ25bが圧縮コイルばね25cによって当接部25d側に付勢されていることにより、当接部25dには、第1回転体19のカム部19bに押しつけられる力が付与されている。これにより、当接部25dとカム部19bとは、ボルト等の締結具を用いることなく連結されている。
第1ホルダ25aの根元側は、ケース36に揺動自在に支持されている。そのため、アシストスプリングユニット25は、揺動中心C3を中心として揺動自在に構成されている。
図14(a)〜(d)は、アシストスプリングユニット25と第1回転体19のカム部19bとを拡大して示す図である。アシストスプリングユニット25の当接部25dは、湾曲面からなる第1当接面S1を有している。第1当接面S1は、第1回転体19側に向かって凸状の第1凸状当接面S11と、凹状の第1凹状当接面S12とを有している。一方、第1回転体19のカム部19bは、当接部25dの第1当接面S1と当接する第2当接面S2を有している。第2当接面S2は、当接部25d側に向かって凸状の第2凸状当接面S22と、凹状の第2凹状当接面S21とを有している。後述するように、遊び領域においては、第1回転体19の回転に伴って、第1凸状当接面S11と第2凹状当接面S21とが当接し、その後、第1凹状当接面S12と第2凸状当接面S22とが当接することになる。なお、符号29は、第1回転体19のカム部19bとアシストスプリングユニット25の当接部25dとの当接構造を示している。本実施形態では、当接構造29は、当接部25dの第1当接面S1とカム部19bの第2当接面S2とによって形成されている。
《シフトチェンジの動作》
自動二輪車1におけるシフトチェンジは、以下のようにして行われる。まず、ライダー100が自動変速操作スイッチ136または137を操作する。すると、自動二輪車1の制御装置(図示せず)がクラッチアクチュエータ14およびシフトアクチュエータ70を制御し、クラッチ11の切断、変速装置43の変速ギアの切り換え、クラッチ11の接続の一連の動作が実行される。
《クラッチ11の断続動作》
次に、クラッチアクチュエータ14によってクラッチ11が切断および接続される動作について説明する。
図7(a)、図11(a)、図12(a)は作動力伝達機構15の側面図であり、図7(a)はクラッチ11が接続されている状態、図11(a)はクラッチ11が切断され始める状態、図12(a)はクラッチ11が切断された状態をそれぞれ表している。
図7(a)および図11(a)に示すように、クラッチアクチュエータ14が作動し、ウォーム軸16が回転すると、第1回転体19は時計回り方向に回転する。第1回転体19と第2回転体24とは噛み合っているので、第1回転体19が時計回り方向に回転すると、第2回転体24は反時計回り方向に回転する。なお、クラッチ11が接続されている位置(=図7(a)に示す位置)から切断され始める位置(=図11(a)に示す位置。以下、切断開始位置という)までは、いわゆる遊び領域であり、クラッチアクチュエータ14には大きな負荷は加わらない。切断開始位置では、アシストスプリングユニット25の揺動中心C3と、アシストスプリングユニット25の当接部25dと第1回転体19のカム部19bとの当接位置と、第1回転体19の回転中心C1とは、一直線上に並ぶ。そのため、アシストスプリングユニット25の付勢力は、第1回転体19を回転させる力としては作用しない。すなわち、アシストスプリングユニット25のアシスト力は零となる。
切断開始位置からウォーム軸16がさらに回転すると、第1回転体19は時計回り方向にさらに回転する。また、第1回転体19の回転にしたがって、第2回転体24は、反時計回り方向にさらに回転する。すると、図12(b)に示すように、ボールカム20のボールプレート23のボール21は、カムプレート22のカム溝22bおよび第2回転体24のカム溝24b内を若干乗り上げる。その結果、カムプレート22がボール21によって、クラッチ11を切断する方向に押し出される。具体的には、カムプレート22は、車両の右側に向かって押され、スライド軸455と共に右側に移動する(図13参照)。これにより、プレッシャプレート451が右側に移動し、クラッチ11は切断される。
なお、図12(a)に示すように、第1回転体19が切断開始位置を超えて時計回り方向に回転すると、アシストスプリングユニット25の当接部25dと第1回転体19のカム部19bとの当接位置は、アシストスプリングユニット25の揺動中心C3と第1回転体19の回転中心C1とを結ぶ線よりも、図12(a)の下側にずれる。そのため、アシストスプリングユニット25の付勢力は、第1回転体19を時計回り方向に回転させる力、すなわちクラッチ11を切断させる方向のアシスト力となって作用する。これにより、クラッチアクチュエータ14の負荷が軽減される。
以上が、クラッチ11が切断される際の動作である。なお、切断状態にあるクラッチ11を接続する際には、上述の動作と逆の動作が行われる。
《第1回転体とアシストスプリングユニットとの当接態様》
次に、第1回転体19とアシストスプリングユニット25との当接の態様、すなわち、第1回転体19のカム部19bとアシストスプリングユニット25の当接部25dとがどのように当接するかについて、詳細に説明する。
前述したように、図14(a)〜(d)は、第1回転体19のカム部19bとアシストスプリングユニット25との当接態様を示した正面図である(なお、車両本体においては側面図となる。)。図14(a)〜(d)は、クラッチ11の切断側の状態から接続側の状態を順に表している。逆に言うと、接続状態にあるクラッチ11を切断する際には、カム部19bおよびアシストスプリングユニット25の状態は、図14(d)→(c)→(b)→(a)の順に示すように変化する。
図15は、アシストスプリングユニット25からカム部19bに伝えられるアシスト力の変化を示す図である。ここでは、クラッチ11を切断する方向に作用するアシスト力を「正アシスト力」といい、逆に、クラッチ11を接続する方向に作用するアシスト力を「逆アシスト力」という。図15では、正アシスト力を+、逆アシスト力を−で表示している。なお、クラッチ11が切断開始位置(言い換えると、ミートポイント)にあるときには、アシストスプリングユニット25によるアシスト力は零となる。
以下の説明では、第1回転体19の回転中心C1とアシストスプリングユニット25の揺動中心C3とを結ぶ直線を中立線NLと呼ぶことにする。アシストスプリングユニット25からカム部19bに作用する力の向き(厳密には、揺動中心C3からカム部19bに向かって延ばした方向の力の向きをいう。以下同様である。)が中立線NLと一致すると、アシストスプリングユニット25によるアシスト力は零となる。一方、アシストスプリングユニット25からカム部19bに作用する力の向きが中立線NLから右側に傾いていると、アシストスプリングユニット25によるアシスト力は逆アシスト力となる。逆に、アシストスプリングユニット25からカム部19bに作用する力の向きが中立線NLから左側に傾いていると、アシストスプリングユニット25によるアシスト力は正アシスト力となる。
まず、図14(d)に示すように、クラッチ11が接続状態にあるときには、当接部25dの第1凸状当接面S11とカム部19bの第2凹状当接面S21とが当接している。この状態では、アシストスプリングユニット25からカム部19bに作用する力の向きは、中立線NLから右側に傾いており、アシストスプリングユニット25のアシスト力は逆アシスト力となる。
クラッチアクチュエータ14により、クラッチ11が接続状態から切断に向けて駆動されると、第1回転体19は時計回りに回転する。この際、当接部25dの第1凸状当接面S11とカム部19bの第2凹状当接面S21とは当接し続けるが、当接箇所は第1凹状当接面S12および第2凸状当接面S22側に移動していく。その結果、アシストスプリングユニット25からカム部19bに作用する力の向きは、中立線NL側に移動していき、アシストスプリングユニット25の逆アシスト力は徐々に小さくなっていく(図15の点d→点c参照)。
そして、図14(c)に示すように、アシストスプリングユニット25からカム部19bに作用する力の向きが中立線NLと一致すると、アシストスプリングユニット25のアシスト力は零となる(図15の点c参照)。なお、このとき、当接部25dの第1凸状当接面S11の中心P1は、中立線NL上に位置することになる。
その後、第1回転体19が時計回り方向にさらに回転すると、当接箇所は、第1凹状当接面S12および第2凸状当接面S22側にさらに移動していく。これにより、アシストスプリングユニット25からカム部19bに作用する力の向きは、中立線NLから左側に傾き、その傾きが徐々に大きくなる。その結果、アシストスプリングユニット25のアシスト力は正アシスト力となり、その正アシスト力は徐々に大きくなっていく(図15の点c→点b1参照)。
第1回転体19が時計回り方向にさらに回転すると、やがて、図14(b)に示すように、当接部25dの第1凸状当接面S11とカム部19bの第2凹状当接面S21とが当接するとともに、当接部25dの第1凹状当接面S12とカム部19bの第2凸状当接面S22とが当接する状態となる。すると、アシストスプリングユニット25からカム部19bに作用するアシスト力の向きは、中立線NLから左側に傾いた位置から、中立線NLと一致する位置まで非連続的に変化する。その結果、アシストスプリングユニット25のアシスト力は、正アシスト力から瞬間的に零となる(図15の点b1→点b2参照)。
図14(b)に示す状態から第1回転体19が時計回り方向に回転すると、当接部25dの第1凹状当接面S12とカム部19bの第2凸状当接面S22とは当接し続けるが、当接部25dの第1凸状当接面S11とカム部19bの第2凹状当接面S21とは離反する。すると、アシストスプリングユニット25からカム部19bに作用するアシスト力の向きは、中立線NLと一致する位置から、中立線NLから右側に傾いた位置まで非連続的に変化する。その結果、アシストスプリングユニット25のアシスト力は、瞬間的に零から逆アシスト力となる(図15の点b2→点b3参照)。
その後、第1回転体19が時計回り方向にさらに回転すると、当接部25dの第1凹状当接面S12とカム部19bの第2凸状当接面S22とが当接し続けるが、当接箇所は、第1凸状当接面S11および第2凹状当接面S21から離れる方向に移動していく。その結果、アシストスプリングユニット25からカム部19bに作用する力の向きは、中立線NL側に移動していき、アシストスプリングユニット25の逆アシスト力は徐々に小さくなっていく(図15の点b3→点a参照)。
そして、図14(a)に示すように、遮断開始位置(=ミートポイント)において、アシストスプリングユニット25からカム部19に作用する力の向きが中立線NLと一致し、アシストスプリングユニット25のアシスト力が零となる(図15の点a参照)。
以上が、クラッチ11が切断される際のアシストスプリングユニット25と第1回転体19との当接態様の変化である。なお、切断状態にあるクラッチ11が接続される際には、上述の変化とは逆の変化となる。
《実施形態の効果》
以上のように、本実施形態によれば、アシストスプリングユニット25と第1回転体19との当接構造29は、図15に示すように、遊び領域における位置b2および位置cにおいて、アシストスプリングユニット25のアシスト力が第1回転体19を回転させる方向に作用しないような構造に構成されている。そのため、遊び領域の全域において逆アシスト力が発生する従来技術と比較して、遊び領域の平均の逆アシスト力を小さく抑えることができる。したがって、相殺用のばね等を設けなくても、遊び領域における逆アシスト力を抑制することができ、クラッチアクチュエータ14の負荷を軽減することができる。
また、本実施形態によれば、図15に示すように、遊び領域において、アシストスプリングユニット25のアシスト力が逆アシスト力となる領域、すなわち逆アシスト領域と、アシストスプリングユニット25のアシスト力が正アシスト力となる領域、すなわち正アシスト領域とが混在している。そのため、遊び領域の全体を考えると、正アシスト領域の正アシスト力が逆アシスト領域の逆アシスト力をある程度相殺するので、遊び領域の平均の逆アシスト力を抑制することができる。
なお、本実施形態によれば、遊び領域において、アシスト力は複雑に変化する(図15参照)。そのため、仮に、本車両1がクラッチ11をクラッチレバー等によって手動操作する車両であったとすると、アシスト力の変化がクラッチレバー等を介してライダーに伝わり、操作フィーリングが悪化するおそれがある。ところが、本実施形態では、クラッチ11は、クラッチアクチュエータ14によって駆動される。そのため、ライダーの操作フィーリングが悪化するという問題は生じない。
本実施形態によれば、アシストスプリングユニット25と第1回転体19との当接構造29は、アシストスプリングユニット25の当接部25dに形成された湾曲面からなる第1当接面S1と、第1回転体19のカム部19bに形成された湾曲面からなる第2当接面S2とを有している。そのため、上述の作用効果を発揮する当接構造29を、比較的簡単な構成によって実現することができる。なお、本実施形態では、第1当接面S1および第2当接面S2は湾曲面であるが、第1当接面S1および第2当接面S2を屈曲面としてもよい。
また、本実施形態によれば、第1当接面S1は、第1凸状当接面S11と第1凹状当接面S12とからなり、第2当接面S2は、第2凹状当接面S21と第2凸状当接面S22とからなっている。そして、アシストスプリングユニット25のアシスト力は、第1凸状当接面S11と第2凹状当接面S21とが当接しながら第1回転体19が時計回り方向に回転する間に、逆アシスト力から正アシスト力となり(図15の点d→点c→点b1参照)、その後、第1凹状当接面S12と第2凸状当接面S22とが当接しながら第1回転体19が時計回り方向に回転する際に、正アシスト力から逆アシスト力となる(図15の点b1→点b2→点b3参照)。本実施形態によれば、上述の作用効果を奏する第1当接面S1および第2当接面S2を、比較的容易に実現することができる。また、本実施形態によれば、凸状の当接面と凹状の当接面とが当接するので、凸状の当接面と凸状の当接面とが当接する場合と異なり、アシストスプリングユニット25の当接部25dと第1回転体19のカム部19bとの間に滑りが生じにくい。そのため、当接部25dとカム部19bとの間の位置ずれが生じにくく、上述の作用効果を安定して得ることができる。
また、本実施形態によれば、図14(a)〜(d)に示すように、遊び領域において第1回転体19の回転軸方向から見たときに、アシストスプリングユニット25の揺動中心C3から圧縮コイルばね25cの伸縮方向に延ばした延長線L3が、中立線NLを境として一方側から他方側に移動するようになっている。
ここで、アシストスプリングユニット25が第1回転体19から受ける反力の向きと、上記延長線L3とが一致するときには、アシストスプリングユニット25を撓ませるような力、言い換えると、第1ホルダ25aと第2ホルダ25bとを互いにこじるような力は発生しない。しかし、上記反力の向きと上記延長線L3とが一致しないときには、アシストスプリングユニット25を撓ませるような力が生じる。本実施形態に係るクラッチ駆動装置90では、アシストスプリングユニット25と第1回転体19との当接位置が複雑に変化するので、本来的にはそのような撓み力が生じやすい。ところが、本実施形態によれば、遊び領域において上記延長線L3が中立線NLを境として一方側から他方側に移動するようになっており、アシストスプリングユニット25に作用する撓み力の方向が変化する。そのため、遊び領域の全体を考えると、遊び領域の全域において撓み力が一方向のみに作用する場合と比べて、撓み力の平均的な大きさは小さくなる。したがって、アシストスプリングユニット25の動作がスムーズになる。また、アシストスプリングユニット25の耐久性が向上する。
また、本実施形態では、アシストスプリングユニット25の当接部25dの第1当接面S1および第1回転体19のカム部19bの第2当接面S2は、互いの当接に際して摩擦力が生じないような湾曲面によって形成されている。そのため、クラッチ駆動装置90の動作がよりスムーズとなる。
−実施形態2−
前記実施形態1は、遊び領域において、逆アシスト領域と正アシスト領域とが混在するものであった。これに対し、以下に説明する実施形態2は、遊び領域の全域において、アシストスプリングユニット25のアシスト力が零となるものである。なお、当接構造29以外は実施形態1と同様であるので、以下では当接構造29のみについて説明する。
図16(a)〜(c)は、実施形態2におけるアシストスプリングユニット25と第1回転体19のカム部19bとの当接構造29を示す正面図である。接続状態にあるクラッチ11を切断する際には、カム部19bおよびアシストスプリングユニット25の状態は、図16(c)→(b)→(a)の順に示すように変化する。
本実施形態では、アシストスプリングユニット25の当接部25dの第1当接面S1は、平滑面S31と、凹状の円弧面S32とを有している。一方、第1回転体19のカム部19bは、回転中心C1を中心とする大円弧面S41と、円柱部材19b1の側面の一部をなす小円弧面S42とを有している。
図16(c)に示すように、クラッチ11が接続状態にあるときには、当接部25dの平滑面S31とカム部19bの大円弧面S41とが当接している。クラッチアクチュエータ14により、クラッチ11が接続状態から切断に向けて駆動されると、第1回転体19は時計回り方向に回転する。この際、当接部25dの平滑面S31とカム部19bの大円弧面S41とは当接し続けるが、それらの当接点P3は常に中立線NL上に位置する。そのため、アシストスプリングユニット25のアシスト力は、第1回転体19を回転させる力としては作用せず、当該アシスト力は零となる。
その後、第1回転体19が時計回り方向にさらに回転すると、やがて、図16(b)に示すように切断開始位置に至り、当接部25dの平滑面S31とカム部19bの大円弧面S41とが離れ、代わりに、当接部25dの円弧面S32とカム部19bの小円弧面S42とが当接する。なお、この切断開始位置においても、アシストスプリングユニット25からカム部19bに作用する力の向きは、中立線NLと一致する。そのため、アシストスプリングユニット25のアシスト力は零のままである。
第1回転体19が切断開始位置を超えて時計回り方向にさらに回転すると、図16(a)に示すように、当接部25dの円弧面S32とカム部19bの小円弧面S42とは当接し続けるが、アシストスプリングユニット25からカム部19bに作用する力の向きは、中立線NLから左側に傾く。その結果、アシストスプリングユニット25のアシスト力は、第1回転体19を時計回り方向に付勢する正アシスト力となる。すなわち、アシストスプリングユニット25によって、クラッチアクチュエータ14によるクラッチ11の切断が補助される。
以上のように、実施形態2によれば、遊び領域の全域(すなわち、図16(c)から図16(b)に至るまでの全領域)において、アシストスプリングユニット25によるアシスト力は零となる。したがって、相殺用のばね等を設けなくても、遊び領域における逆アシスト力の発生を防止することができる。
−実施形態3−
なお、遊び領域の全域においてアシストスプリングユニット25によるアシスト力を零にする当接構造29の具体的形状は、上記実施形態2の形状に限定されるわけではない。例えば、図17(a)〜(c)に示すような当接構造29であってもよい。
この実施形態3では、アシストスプリングユニット25の当接部25dの第1当接面S1は、複数の歯が形成された歯面S51と、凹状の円弧面S52とを有している。一方、第1回転体19のカム部19bは、上記歯面S51と噛み合う歯面S61と、円柱部材19b1の側面の一部をなす小円弧面S62とを有している。
図17(c)に示すように、クラッチ11が接続状態にあるときには、当接部25dの歯面S51とカム部19bの歯面S61とが当接している。言い換えると、当接部25dの歯面S51とカム部19bの歯面S61とが噛み合っている。クラッチアクチュエータ14により、クラッチ11が接続状態から切断に向けて駆動されると、第1回転体19は時計回り方向に回転する。この際、アシストスプリングユニット25からカム部19bに作用するアシスト力の向きは、常に中立線NLと一致する。そのため、アシストスプリングユニット25のアシスト力は、第1回転体19を回転させる力としては作用せず、当該アシスト力は零となる。
その後、第1回転体19が時計回り方向にさらに回転すると、やがて、図17(b)に示すように切断開始位置に至り、当接部25dの歯面S51とカム部19bの歯面S61とが離れ、代わりに、当接部25dの円弧面S52とカム部19bの小円弧面S62とが当接する。なお、この切断開始位置においても、アシストスプリングユニット25からカム部19bに作用する力の向きは、中立線NLと一致する。そのため、アシストスプリングユニット25のアシスト力は零のままである。
第1回転体19が切断開始位置を超えて時計回り方向にさらに回転すると、図17(a)に示すように、当接部25dの円弧面S52とカム部19bの小円弧面S62とは当接し続けるが、アシストスプリングユニット25からカム部19bに作用する力の向きは、中立線NLから左側に傾く。その結果、アシストスプリングユニット25のアシスト力は、第1回転体19を時計回り方向に付勢する正アシスト力となる。すなわち、アシストスプリングユニット25によって、クラッチアクチュエータ14によるクラッチ11の切断が補助される。
以上のように、実施形態3においても、遊び領域の全域(すなわち、図17(c)から図17(b)に至るまでの全領域)において、アシストスプリングユニット25によるアシスト力は零となる。したがって、相殺用のばね等を設けなくても、遊び領域における逆アシスト力の発生を防止することができる。
《その他の変形例》
前記実施形態では、補助弾性体は、圧縮コイルばね25cを有するアシストスプリングユニット25であった。しかし、補助弾性体は、圧縮コイルばね25c以外のばねを備えたものであってもよい。また、補助弾性体は、ばね以外の弾性部材(例えばゴム等)を備えたものであってもよい。
前記実施形態では、本考案に係るクラッチ駆動装置90を搭載した車両は、自動二輪車1であった。しかし、本考案に係る車両は、自動二輪車1に限定されず、ATV等の他の鞍乗型車両であってもよい。また、本考案に係る車両は、鞍乗型車両以外の車両であってもよい。
前記実施形態では、作動力伝達機構15の回転体は、第1回転体19および第2回転体24の2つであった。しかし、作動力伝達機構15の回転体は、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
1 自動二輪車(車両)
11 クラッチ
14 クラッチアクチュエータ(アクチュエータ)
15 作動力伝達機構
16 ウォーム軸
19 第1回転体(回転体)
19a ウォームホイール部
19b カム部
19c ギア部
20 ボールカム(力方向変換機構)
24 第2回転体
25 アシストスプリングユニット(補助弾性体)
25a 第1ホルダ(ホルダ)
25b 第2ホルダ(ホルダ)
25c 圧縮コイルばね(弾性部材)
25d 当接部
29 当接構造
35 パワーユニット
90 クラッチ駆動装置
455 スライド軸
C1 第1回転体の回転中心
C2 第2回転体の回転中心
C3 アシストスプリングユニットの揺動中心
S1 第1当接面
S2 第2当接面
S11 第1凸状当接面
S12 第1凹状当接面
S21 第2凹状当接面
S22 第2凸状当接面
NL 中立線
L3 延長線

Claims (8)

  1. クラッチと、
    前記クラッチを断続させる駆動力を発生させるアクチュエータと、
    前記クラッチを切断するときには第1の方向に回転し、前記クラッチを接続させるときには第2の方向に回転する回転体を有し、前記回転体の回転に伴って前記アクチュエータの駆動力を前記クラッチに伝達する作動力伝達機構と、
    一端側が揺動自在に支持され、他端側が前記回転体に当接され、前記クラッチが切断され始めてからさらに切断方向に状態変化している間に、前記回転体を前記クラッチが切断する方向に付勢する補助弾性体と、を備え、
    前記回転体と前記補助弾性体との当接構造は、前記回転体が回転しても前記クラッチが切断されない領域である遊び領域内の少なくとも一つの位置において、前記補助弾性体の付勢力が前記回転体を回転させる方向に作用しないような構造に構成されている、クラッチ駆動装置。
  2. 請求項1に記載のクラッチ駆動装置において、
    前記回転体と前記補助弾性体との当接構造は、前記回転体が回転しても前記クラッチが切断されない領域である遊び領域において、前記補助弾性体の付勢力が前記回転体を前記第2の方向に回転させる方向に作用する逆アシスト領域と、前記補助弾性体の付勢力が前記回転体を前記第1の方向に回転させる方向に作用する正アシスト領域とが含まれるような構造に構成されている、クラッチ駆動装置。
  3. 請求項2に記載のクラッチ駆動装置において、
    前記当接構造は、前記補助弾性体の前記他端側に形成された湾曲面または屈曲面からなる第1当接面と、前記回転体に形成された湾曲面または屈曲面からなり、前記第1当接面と当接する第2当接面とを有している、クラッチ駆動装置。
  4. 請求項3に記載のクラッチ駆動装置において、
    前記補助弾性体の前記第1当接面は、前記回転体側に向かって凸状の第1凸状当接面と凹状の第1凹状当接面とを有し、
    前記回転体の前記第2当接面は、前記補助弾性体側に向かって凸状の第2凸状当接面と凹状の第2凹状当接面とが形成され、
    前記遊び領域において前記回転体が前記第1の方向に回転する際に、前記第1凸状当接面と前記第2凹状当接面とが当接した後、前記第1凹状当接面と前記第2凸状当接面とが当接し、
    前記補助弾性体の付勢力は、前記第1凸状当接面と前記第2凹状当接面とが当接しながら前記回転体が前記第1の方向に回転する間に、前記回転体を前記第2の方向に付勢する逆アシスト力から、前記回転体を前記第1の方向に付勢する正アシスト力となり、その後、前記第1凹状当接面と前記第2凸状当接面とが当接しながら前記回転体が前記第1の方向に回転する際に、正アシスト力から逆アシスト力となる、クラッチ駆動装置。
  5. 請求項3に記載のクラッチ駆動装置において、
    前記補助弾性体は、伸縮自在な弾性部材と、前記第1当接面を有しかつ前記弾性部材を保持する伸縮自在なホルダとを備え、
    前記第1当接面および前記第2当接面は、前記遊び領域において前記回転体が前記第1の方向に回転する間、前記回転体の回転軸方向から見たときに、前記補助弾性体の揺動中心から前記弾性部材の伸縮方向に延ばした延長線が、前記揺動中心と前記第回転体の回転中心とを結ぶ中立線を境として一方側から他方側に移動するように形成されている、クラッチ駆動装置。
  6. 請求項3に記載のクラッチ駆動装置において、
    前記第1当接面および前記第2当接面は、前記遊び領域において前記回転体が回転している間、当接に際して摩擦力が生じない湾曲面によって形成されている、クラッチ駆動装置。
  7. 請求項1に記載のクラッチ駆動装置において、
    前記回転体と前記補助弾性体との当接構造は、前記回転体が回転しても前記クラッチが切断されない領域である遊び領域の全域において、前記補助弾性体の付勢力が前記回転体を回転させる方向に作用しないように構成されている、クラッチ駆動装置。
  8. 請求項1に記載のクラッチ駆動装置を備えた車両。
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