JP3158337B2 - 樹脂シャッタの成形金型および成形方法 - Google Patents

樹脂シャッタの成形金型および成形方法

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JP3158337B2
JP3158337B2 JP07418295A JP7418295A JP3158337B2 JP 3158337 B2 JP3158337 B2 JP 3158337B2 JP 07418295 A JP07418295 A JP 07418295A JP 7418295 A JP7418295 A JP 7418295A JP 3158337 B2 JP3158337 B2 JP 3158337B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、熱可塑性樹脂の射出
成形等によって成形されるフロッピーディスク、光磁気
ディスク等の磁気ディスクの樹脂シャッタの成形金型お
よび成形方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、磁気ディスクのディスケット
は、図4に示すように、記憶用ディスク体1を収納する
樹脂性のシェル2とシェル2の外周部に摺動可能に取り
付けられた断面コ字状の樹脂シャッタ3とから構成され
ている。そして、コンピュータ等に接続された磁気ディ
スクユニット(図示略)から抜き出された非使用状態
で、前記樹脂シャッタ3により各シェル2の磁気ヘッド
導入口4を閉鎖し、記憶用ディスク体1を外部の塵埃等
から保護するようになっている。
【0003】このような磁気ディスク5に使用される樹
脂シャッタ3は、図5に示すように、対向する一対の側
板部6・7とこれら側板部6・7を連結する連結部8と
からほぼ一定の肉厚寸法を有する断面コ字状に一体成形
されるのが一般的である。また、この樹脂シャッタ3の
各側板部6・7には、シェル2に設けた磁気ヘッド導入
口4に連通させられる窓9が設けられ、一方の側板部6
には、シェル2に設けたレール溝(図示略)に収納され
るスライド用突起10を内面側に突出状態に成形するた
めの小窓11・12が設けられ、また、連結部8の内面
には、スプリング引掛用突起13が一方の小窓13を利
用して成形されるようになっている。
【0004】このような構成の樹脂シャッタ3は、一般
には、図6および図7に示すような成形金型14によっ
て成形される。この成形金型14は、例えば、上方に配
される固定側型板15に固定される固定型16と、前記
固定側型板15に対して下方から接離させられる可動側
型板17に取り付けられる可動型18とから構成されて
いる。
【0005】前記可動型18は、さらに分割された3つ
の金型20・21・22からなる。これらは、可動側型
板17に固定されるコア金型20と、可動側型板17に
水平方向に移動可能に取り付けられ可動側型板17の変
位に伴って、スライド機構19によりコア金型20に対
して接離させられる一対のスライド金型21・22とか
らなる。符号19aはスライド機構19を構成するガイ
ド部、19bはスライド金型を水平方向に付勢するスプ
リングである。
【0006】前記固定型16には、樹脂シャッタ3の連
結部8を成形するための凹部16aが設けられ、各スラ
イド金型21・22には、樹脂シャッタ3の側板部6・
7を成形するための凹部21a・22aが設けられてい
る。
【0007】また、一対のスライド金型21・22に
は、上方に配される固定型16に向かって漸次縮幅する
ように配される一対の傾斜面21b・22bがそれぞれ
設けられている。一方、これらの傾斜面21b・22b
に対向させられる固定型16の水平方向両側には、型閉
時に前記傾斜面21a・22aに当接する傾斜面23a
・24aを有するロッキングブロック23・24が設け
られている。これらの傾斜面21a・22a・23a・
24aにより、スライド金型21・22は、固定側型板
15と可動側型板17との型締力に応じて、スプリング
19bの付勢力に抗して、コア金型20に向けて押圧さ
れるようになっている。
【0008】これら固定型16およびロッキングブロッ
ク23・24は、相互間の位置調整のための適当なシム
25を挟んだ状態で、それぞれ固定側型板15にボルト
等の締結手段によって固定されている。そして、固定型
16と可動型18とが型閉めされることによって、スラ
イド金型21・22と固定型16、スライド金型21・
22とコア金型20とがそれぞれ緊密に圧接させられ
る。
【0009】これにより、固定型16の凹部16aとコ
ア金型20の上端面20aとによって連結部8のキャビ
ティ26aが形成される。また、スライド金型21・2
2の凹部21a・22aとコア金型20の側面20bと
によって側板部6・7のキャビティ26b・26cが形
成されるようになっている。
【0010】これらのキャビティ26a・26b・26
cは、ほぼ一定の断面形状を有しているとともに、連結
部8のキャビティ26aは、その幅方向の両端部におい
て側板部6・7のキャビティ26b・26cにそれぞれ
連通している。また、連結部8のキャビティ26aを形
成する固定型16には、図示しない射出成形機から供給
される溶融樹脂をキャビティ26a内に射出するための
ゲート27が設けられている。
【0011】このように構成された成形金型14によっ
て樹脂シャッタ3を成形するには、固定側型板15に対
して可動側型板17を作動させ固定型16と可動型18
とを型閉めした状態で、形成されたキャビティ26内に
射出成形機から溶融樹脂を射出する。射出された溶融樹
脂はゲート27から連結部8のキャビティ26a内に導
入され、キャビティ26内の空気を追い出しながら2つ
の側板部6・7のキャビティ26b・26cに振り分け
られて、各側板部6・7のキャビティ26b・26cの
下端に向かって流動させられる。そして、キャビティ2
6内に完全に充填された状態で溶融樹脂が冷却・硬化さ
れることにより、断面コ字状の樹脂シャッタ3が成形さ
れることになる。
【0012】ところで、側板部6・7はその肉厚寸法が
0.35〜0.38mmときわめて薄いものであるた
め、成形に際して、側板部6・7のキャビティ26b・
26cの下端まで溶融樹脂を行き届かせるためには、き
わめて高い射出圧力が必要となる。このため、一対の側
板部6・7を均一な肉厚寸法に成形するためには、ゲー
ト27から連結部8のキャビティ26aに射出され、側
板部6・7のキャビティ26b・26cに振り分けられ
る溶融樹脂の流量バランスを均等に設定しておく必要が
ある。
【0013】すなわち、2つの側板部6・7のキャビテ
ィ26b・26cに溶融樹脂が同時にかつ均等な流量で
流入させられなければ、各キャビティ26b・26c内
における樹脂圧が相違することとなって、上端面20a
を自由端として立設される平板状のコア金型20が両側
板部6・7のキャビティ26b・26cにおける圧力差
により変形させられることが考えられる。その結果、樹
脂圧の高い側の側板部6・7のキャビティ26b(26
c)内には、多量の溶融樹脂が流れ込んで一方の側板部
6(7)の肉厚寸法が厚く成形されてしまうという不都
合がある。
【0014】特に、上記樹脂シャッタ3においては、ス
ライド用突起10を成形するための小窓11・12が一
方の側板部6のみに設けられているために、両側板部6
・7間に面積差が生じている。このため、両側板部6・
7のキャビティ26b・26cの設計上の厚さ寸法を均
一に形成するのみでは、両キャビティ26b・26cへ
の溶融樹脂の流量バランスを図ることは困難であった。
したがって、ゲート27から連結部8のキャビティ26
aに射出された溶融樹脂が2つの側板部6・7のキャビ
ティ26b・26c内に同時にかつ均等な流量で流入さ
せられるように、他の何らかの方法によって調整する必
要がある。
【0015】従来、このような成形金型14の調整は、
主に、スライド金型21・22の凹部21a・22a内
面あるいはコア金型20との当接面21c・22cを削
り取ることによって実施されていた。すなわち、スライ
ド金型21・22を削り、コア金型20との間に形成さ
れる一側の側板部6(7)のキャビティ26b(26
c)の断面積を増減させることによって、両側板部6・
7のキャビティ26b・26cへの溶融樹脂の流量バラ
ンスが調整されることになる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記調
整作業は、調整ごとに可動側型板17からスライド金型
21・22を取り外し、サーフィスグラインダ等によっ
て研削加工を実施し、再度可動側型板17に組み付ける
という作業を実施しなければならず、煩雑なものであっ
た。しかも、樹脂シャッタ3の肉厚寸法は、上述したよ
うに、0.35〜0.38mmときわめて薄いものであ
るから、研削加工はきわめて微妙である。したがって、
所望の設定状態を得るために、上記煩雑な調整作業を繰
り返し実施する必要があった。
【0017】また、溶融樹脂の流動形態は、キャビティ
26内からの空気の排出流量にも依存する。しかし、ス
ライド金型21・22のコア金型20との当接面21c
・22cを削り取る調整作業では、空気の排出経路の状
態も変動するため、成形品の測定値からスライド金型2
1・22の調整量を一義的に予測することができなかっ
た。したがって、所望の設定状態を得るまでに、多数回
に亙る試行錯誤を繰り返さなけばならず、調整のために
多大な作業工数が必要となるという不都合があった。
【0018】さらに、従来の樹脂シャッタ3において
は、図7に実線で示すように、設計上、連結部8の外面
と側板部6・7の外面とを一致させ、両者間に段差が形
成されないようになっていた。このため、上記のような
成形金型14の調整を実施すると、図7に鎖線で示すよ
うに、連結部8のキャビティ26aと側板部6・7のキ
ャビティ26b・26cとが、パーティングラインP近
傍においてズレを生じることが考えられる。その結果、
連結部8の幅方向一側が側板部6・7の表面から突出す
るようなバリが形成されしてしまい、このバリを除去す
るための後処理工程が必要となるという不都合もあっ
た。
【0019】本発明は上述した事情に鑑みてなされたも
のであって、連結部によって連結される2つの側板部の
肉厚寸法を均等にする調整作業をきわめて簡易に実施で
き、しかも、バリの除去作業を不要とすることができる
樹脂シャッタの成形金型および成形方法を提供すること
を目的としている。
【0020】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、対向する一対の側板部とこれら側板部を
連結する連結部とからなる断面コ字状の樹脂シャッタを
一体成形する成形金型であって、前記連結部のキャビテ
ィを有しかつ該キャビティに連通するゲートを具備する
固定型と、該固定型に対して接離させられ前記連結部の
キャビティに連通する一対の側板部のキャビティを形成
する可動型とからなるとともに、前記可動型が、前記側
板部のキャビティ間に配されるコア金型と、該コア金型
に対して前記可動型の接離方向に交差する方向に接離さ
せられてコア金型との間に前記側板部のキャビティを形
成するスライド金型とからなり、型閉時に前記側板部の
キャビティと連結部のキャビティとが連通する位置にお
ける前記スライド金型どうしの間隔寸法が、前記固定型
に形成された連結部のキャビティの幅寸法より大きく設
定され、前記固定型がスライド金型の移動方向に位置調
整可能に設けられている樹脂シャッタの成形金型を提案
している。
【0021】また、上記成形金型において、型閉時にス
ライド金型をコア金型に付勢する傾斜面を有するロッキ
ングブロックが、固定型に一体的に設けられ、該ロッキ
ングブロックの傾斜面がスライド金型の移動方向に位置
調整可能に設けられていることとすれば効果的である。
さらに、ロッキングブロックの傾斜面にスライド金型を
摺動させる摺動板が着脱可能に取り付けられていること
としてもよい。
【0022】また、本発明は、対向する一対の側板部と
これら側板部を連結する連結部とからなる断面コ字状の
樹脂シャッタを一体成形する方法であって、複数の金型
を組み合わせることにより、溶融樹脂を射出するゲート
に連通し連結部を成形する第1のキャビティと、一対の
側板部を成形する一対の第2のキャビティとを連通状態
に形成するとともに、これらのキャビティがそれぞれ連
通する位置に、溶融樹脂の流通断面積が局部的に縮小す
る絞り部を設け、該絞り部の断面積を変化させるように
金型の位置を調整する樹脂シャッタの成形方法を提案し
ている。
【0023】
【作用】本発明に係る樹脂シャッタの成形金型によれ
ば、コア金型に対してスライド金型を当接させることに
より両金型間に一対の側板部のキャビティが形成されて
なる可動型が形成され、該可動型を固定型に当接させる
ことにより、一対の側板部とこれらを連結する連結部と
からなる断面コ字状のキャビティが形成される。そし
て、溶融樹脂をゲートから連通部のキャビティ内に射出
することにより、溶融樹脂は連結部と側板部との連通位
置を介して側板部内に流入・充填され、樹脂シャッタが
成形されることになる。
【0024】この場合において、型閉時の上記連通位置
におけるスライド金型どうしの間隔寸法が固定型に形成
された連結部のキャビティの幅寸法より大きく設定され
ているので、溶融樹脂の流通断面積は、上記連通位置に
おいて局部的に縮小させられることになる。このため、
上記連通位置においてキャビティに段差が形成され、こ
の段差が連結部のキャビティから側板部のキャビティへ
流動する溶融樹脂に対して絞りとして機能する。したが
って、連結部から側板部への溶融樹脂の流量がこの連通
位置における流通断面積によって左右されることにな
る。
【0025】そして、本発明では、スライド金型の移動
方向に位置調整可能に設けられた固定型を移動させるこ
とにより、連結部のキャビティの位置を側板部のキャビ
ティに対して調整する。これによって、連結部のキャビ
ティと一側の側板部のキャビティとの連通位置における
溶融樹脂の流通断面積が拡大されると、他側の側板部の
キャビティと連結部のキャビティとの連通位置における
溶融樹脂の流通断面積が縮小されることになる。したが
って、固定型の位置調整のみによって、連結部のキャビ
ティから両側板部のキャビティへの溶融樹脂の流量バラ
ンスを効率的に図ることが可能となる。
【0026】また、キャビティに形成される段差は、側
板部のキャビティから連結部のキャビティ側に向かって
一段高くなるように形成されるので、キャビティ内に成
形される樹脂シャッタでは、逆に、連結部に向けて一段
低くなる段差が形成されることになる。したがって、樹
脂シャッタに形成されるこの段差は、外観上、バリとし
てではなく意識的に設けられたデザインの一部として把
握でき、製品価値を損うこともない。
【0027】さらに、両側板部のキャビティへの溶融樹
脂の流量バランスを図るための固定型の位置調整は、上
記段差が形成される限りにおいて有効であるので、段差
の範囲内において実施される。したがって、固定型の位
置調整によって樹脂シャッタの連結部と側板部とが交差
する位置にバリが形成されることは回避されることにな
る。
【0028】また、上記成形金型において、型閉時にス
ライド金型をコア金型に付勢する傾斜面を有するロッキ
ングブロックが、固定型に一体的に設けられ、該ロッキ
ングブロックの傾斜面がスライド金型の移動方向に位置
調整可能に設けられていることとすれば、上記固定型の
位置調整作業に際して、ロッキングブロックも固定型と
同時に移動させられる。したがって、固定型の位置調整
作業ごとに、固定型とロッキングブロックとの相対的な
位置調整を実施する必要がなく、調整作業を容易なもの
とすることが可能となる。
【0029】さらに、ロッキングブロックとこれに当接
するスライド金型との相対的な位置調整は、ロッキング
ブロックの傾斜面をスライド金型の移動方向に位置調整
することによって達成される。したがって、連結部から
両側板部への溶融樹脂の流量バランスを図るためには、
固定型および傾斜面をスライド金型の移動方向に位置調
整するだけで済み、煩雑な研削作業や、固定型およびロ
ッキングブロックを固定型型板から取り外す等の面倒な
調整作業が不要となる。これにより、調整作業に要する
作業工数が短縮でき、均一な肉厚寸法の側板部を有する
高品質の樹脂シャッタを安定して供給することが可能と
なる。
【0030】上記傾斜面の位置調整は、例えば、ロッキ
ングブロックの傾斜面に着脱可能に取り付けられた摺動
板をの位置調整によって実施される。すなわち、固定型
およびロッキングブロックが固定された状態で、摺動板
のみを取り外し、その厚さ寸法調整あるいは、ロッキン
グブロックの傾斜面と摺動板との間におけるシム調整等
によって摺動板の位置調整を行うことが可能である。
【0031】さらに、本発明に係る樹脂シャッタの成形
方法によれば、連通部を成形する第1のキャビティと一
対の側板部を成形する一対の第2のキャビティとの連通
部に絞り部を設け、この絞り部の断面積を調整するの
で、スライド金型の製品面あるいはコア金型との当接面
を削り取る調整作業と比較して、きわめて簡易かつ効果
的に、第1のキャビティから一対の第2のキャビティへ
の溶融樹脂の流量の均等化を図ることが可能である。
【0032】しかも、金型を削る場合のようにキャビテ
ィから排出される空気の排出経路の変動等の他の条件の
変化を伴わないので、所望の効果を得るための調整量を
予め的確に把握することが可能となる。したがって、試
行錯誤の繰り返しを最小限に抑えて、調整に要する作業
工数の低減が図られることになる。
【0033】
【実施例】以下、本発明に係る樹脂シャッタの成形金型
および成形方法の一実施例について、図1から図3を参
照して説明する。なお、本実施例において、図4から図
7に示した従来例と構成を共通とする箇所に同一符号を
付して説明を簡略化する。
【0034】本実施例に係る成形金型30も、図1に示
すように、上方に配される固定側型板15に固定される
固定型31と、固定側型板15に対して下方から接離さ
せられる可動側型板17に取り付けられる可動型18と
から構成され、該可動型18が、コア金型20、および
コア金型20に対して水平方向に接離させられる一対の
スライド金型21・22とからなるという基本構成にお
いて、従来の成形金型14と共通している。
【0035】また、前記固定型31に設けた連結部8を
成形するための凹部31aおよび各スライド金型21・
22に設けた側板部6・7を成形するための凹部21a
・22aにより、型閉時に、固定型31と可動型18と
の間に断面コ字状のキャビティ26が形成される点、ス
ライド金型21・22に、上方に配される固定型31に
向かって漸次縮幅する傾斜面21b・22bがそれぞれ
設けられ、固定側型板15に、これに対向する傾斜面3
2aを有するロッキングブロック32が設けられている
点等においても、従来の成形金型14と共通している。
【0036】しかし、本実施例に係る樹脂シャッタ33
の成形金型30は、固定型31の構成において従来の成
形金型14と相違している。本実施例に係る成形金型3
0の固定型31は、図2に示すように、型閉時における
パーティングラインP近傍のスライド金型21・22の
凹部21a・22a底面どうしの距離W1よりも小さい
幅寸法W2の凹部31aを有している。したがって、断
面コ字状に形成されるキャビティ26では、連結部8の
キャビティ26aと各側板部6・7のキャビティ26b
・26cとが連通するパーティングラインPの位置にお
いて、断面積が局部的に小さくなる段差34が形成され
るようになっている。この段差34の寸法は、例えば、
0.01〜0.1mm程度とすればよい。
【0037】また、前記固定型31は前記ロッキングブ
ロック32と一体的に形成されている。すなわち、連結
部8のキャビティ26aを形成する固定型31の下面の
両側に、下方に向かって漸次遠ざかる2つの傾斜面32
aが設けられている。さらに、これらの傾斜面32aに
は、耐摩耗性の高い材質の板材よりなる摺動板35がボ
ルト36によって着脱自在に取り付けられるようになっ
ている。また、これらの摺動板35と各ロッキングブロ
ック32の傾斜面32aとの間には、適当な厚さ寸法の
シム37が着脱可能に挿入されている。
【0038】このように構成された固定型31には、上
下方向に貫通する複数の貫通孔38が設けられている。
そして、固定型31は、これら貫通孔38に挿通させら
れるボルト39によって固定側型板15に取り付けられ
るようになっている。
【0039】ここで、ボルト39と貫通孔38との間に
は、スムーズな挿入のために十分な隙間が設けられてい
る。したがって、ボルト39を完全に締結せずに固定型
31を固定側型板15に取り付けた状態で、固定型31
に水平方向の外力を作用させれば、固定型31、すなわ
ち、連結部8のキャビティ26aを形成するための凹部
31aを、隙間の範囲内で水平方向に移動させることが
できることになる。そして、固定型31を移動させた後
に、ボルト39を締結することにより、固定型31の水
平方向の位置調整が容易に実施されることになる。
【0040】また、固定型31の移動に際しては、該固
定型31に一体的に形成されたロッキングブロック32
も同時に移動させられることになる。したがって、単に
固定型31を水平方向に移動させたのみでは、スライド
金型21・22をコア金型20の方向に付勢するための
傾斜面32aの位置も水平方向に変位させられてしまう
ことになる。
【0041】しかし、本実施例の成形金型30において
は、傾斜面32aに摺動板35が設けられていて、該摺
動板35と傾斜面32aとの間にシム37が介在させら
れているので、このシム37を厚さ寸法の異なる別のシ
ム37と交換することによって、スライド金型21・2
2の傾斜面21b・22bを摺動させる摺動板35の位
置を水平方向に移動させることができる。
【0042】したがって、連結部8のキャビティ26a
を形成するための凹部31aを水平方向に移動させた分
だけ、摺動板35の傾斜面35aを戻すようにシム37
の厚さ寸法を調整することにより、摺動板35の傾斜面
35aとスライド金型21・22との接触状態を変化さ
せることなく連結部8のキャビティ26aのみを水平方
向に移動させることが可能となる。しかも、シム37に
よる調整は、鉛直線に対して傾斜する傾斜面32aに対
して行うようになっているので、固定型31を固定側型
板15に取り付けたまま実施することができる。
【0043】このように構成された本実施例の成形金型
30の作用について説明する。まず、固定型31を固定
側型板15にボルト39で固定し、その傾斜面32aに
摺動板35を固定した状態で、該固定型31に対して可
動型18を近接させ型閉状態とすると、これらの金型3
1・18の間に断面コ字状のキャビティ26が形成され
る。
【0044】ここで、本実施例の成形金型30では、連
結部8のキャビティ26aの幅寸法W2がスライド金型
21・22の距離寸法W1より小さく形成されているの
で、連結部8のキャビティ26aと側板部6・7のキャ
ビティ26b・26cとの連通部分における断面積が局
部的に小さくなる絞り部40が形成されることになる。
そして、固定型31と可動型18とが型閉めされた状態
で固定型31に設けたゲート27から溶融樹脂を射出す
ると、溶融樹脂はまず連結部8のキャビティ26aに充
填され、前記絞り部40を通して、2つの側板部6・7
のキャビティ26b・26cに流入させられる。
【0045】この場合に、側板部6・7への溶融樹脂の
流量は、主として絞り部40の流通断面積に依存して決
定される。したがって、肉厚寸法が大きくなる側の側板
部6(7)に対する絞り部40の流通断面積を縮小し、
他側の側板部7(6)に対する絞り部40の流通断面積
を拡大する調整作業を行うことにより、一対の側板部6
・7の肉厚寸法を均等に成形することができることにな
る。
【0046】次に、本実施例に係る成形金型30の調整
作業について、以下に説明する。まず、設計上のあるい
は適当な相対位置関係となるように固定型31および可
動型18の位置調整を行った状態で、樹脂シャッタ33
の成形を行う。次いで、成形された樹脂シャッタ33の
側板部6・7各部の肉厚寸法を測定することにより絞り
部40の調整方向および調整量を推定する。
【0047】そして、図1に鎖線で示すように、固定型
31に対して可動型18を下降させた状態で、固定型3
1と一体に設けられたロッキングブロック32の傾斜面
32aの摺動板35のボルト36を緩め、固定型31の
所望の変位量を得るためにシム37を交換する。この後
に、摺動板35をボルト36によって傾斜面32aに固
定した状態で、固定型31を固定側型板15に固定して
いるボルト39を緩める。
【0048】この状態で、可動型18を上昇させて固定
型31に当接させる。これにより、可動型18のスライ
ド金型21・22に設けた傾斜面21b・22bが固定
型31のロッキングブロック32に設けた傾斜面32a
に当接し、固定型31は、スライド金型21・22の傾
斜面21b・22bに倣って水平方向に移動させられ
る。
【0049】そして、可動型18を再度下降させ、ボル
ト39を締結することによって固定型31を固定側型板
15に固定する。その後、再度、樹脂シャッタ33を成
形するとともに、その各部の肉厚寸法を測定して、側板
部6・7各部の肉厚寸法が、所定の数値範囲内となった
場合には、調整作業が完了することになる。
【0050】このように、本実施例に係る樹脂シャッタ
33の成形金型30によれば、連結部8のキャビティ2
6aから各側板部6・7のキャビティ26b・26cに
流入する溶融樹脂の流量を、固定型31を水平方向に移
動させるだけで、簡易かつ効果的に調整することができ
る。すなわち、従来のように、調整作業に際して、スラ
イド金型21・22を可動側型板17から完全に取り外
す必要がなく、固定型31を固定側型板15に取り付け
るボルト39や摺動板35を傾斜面32aに取り付ける
ボルト36を緩めあるいは締め付けるという簡易な作業
のみによって、調整作業を達成することができる。
【0051】また、従来のようにスライド金型21・2
2を削るような物理的な変形を伴わないので、調整作業
がきわめて簡易であるとともに、シム37の厚さ寸法を
増減させることにより、微妙な調整が可能となる。した
がって、調整作業に要する作業工数を大幅に削減するこ
とができ、新規な金型の導入時、あるいは、金型の変更
・調整に際しても、きわめて迅速に、高品質の樹脂シャ
ッタ33を成形し得る状態に設定することができる。
【0052】さらに、本実施例の成形金型30では、固
定型31とロッキングブロック32とを一体的に形成し
ているので、固定型31およびロッキングブロック32
相互の位置関係の調整を不要とすることができる。ま
た、一側の側板部6(7)のキャビティ26b(26
c)への溶融樹脂の流量増大を図るとともに、他側の側
板部7(6)のキャビティ26c(26b)への溶融樹
脂の流量減少を同時に図ることができ、きわめて効率的
に調整作業を実施することができる。
【0053】また、本実施例に係る樹脂シャッタ33の
成形方法によれば、連結部8のキャビティ26aと一対
の側板部6・7のキャビティ26b・26cとの連通す
る位置に断面積を局部的に小さく形成した絞り部40を
設け、この絞り部40の断面積を調整するので、側板部
6・7のキャビティ26b・26cへの溶融樹脂の流量
を効率的に調整して、肉厚寸法の均一な高品質の樹脂シ
ャッタ33を迅速にかつ安定して供給することができ
る。
【0054】また、本実施例に係る成形金型30および
成形方法によって成形される樹脂シャッタ33は、図3
に示すように、一対の側板部6・7と、これらを連結す
る連結部8とから断面コ字状に形成されるが、各側板部
6・7と連結部8との交差する角部に、交差線に沿って
段差41が形成される。この段差41は、側板部6・7
から連結部8に向かって一段低くなるように形成されて
いるために、外観上、バリとしてではなく、デザインの
一部として把握されるものとすることができ、固定型3
1と可動型18とのパーティングラインPにおけるバリ
の発生を回避することができる。
【0055】したがって、上記段差41が形成される範
囲内における固定型31の位置調整が行われる限り、各
側板部6・7のキャビティ26b・26cへの溶融樹脂
の流量調整を効率的に実施でき、かつ、パーティングラ
インPにおけるバリの発生を抑制することができる。
【0056】なお、本実施例に係る樹脂シャッタ33の
成形金型30においては、固定型31とロッキングブロ
ック32とを一体的に構成することとしたが、この場合
における一体的な構成には、単一の材料から固定型31
とロッキングブロック32とを一体的に切削形成する場
合の他、固定型31とロッキングブロック32とを別部
材として形成した後に、これらをボルト等の適当な締結
手段によって相互に固定する場合も含まれる。
【0057】この場合、上記実施例において、ロッキン
グブロック32の傾斜面32aに摺動板35を取り付
け、摺動板35と傾斜面32aとの間のシム36を調整
することとしたが、これに代えて、摺動板35を用いる
ことなく、固定型31とロッキングブロック32との間
においてシム36調整を実施することにより、ロッキン
グブロック32の傾斜面32aの位置調整を行うことと
してもよい。しかし、この場合には、シム36調整のた
めに固定型31およびロッキングブロック32を固定側
型板15から取り外す必要があるので、摺動板35によ
り傾斜面35aの位置調整を行う方が好ましい。
【0058】また、上記実施例に係る樹脂シャッタ33
の成形金型30においては、ロッキングブロック32の
傾斜面32aと摺動板35との間に挿入するシム36を
交換することにより、スライド金型21・22に当接す
る摺動板35の傾斜面35aの位置を調整することとし
たが、これに代えて、種々の板厚寸法の摺動板35を用
意し、この摺動板35自体を交換することにより対応す
ることとしてもよい。さらに、スライド金型21・22
をコア金型20に対して水平方向に接離させるスライド
機構19として、例えば、スライドレール19aとスプ
リング19bとからなるものを例示したが、これに代え
て、アンギュラピン、アンギュラカム、ラックアンドピ
ニオン等、他の周知のスライド機構を採用することとし
てもよいことは言うまでもない。
【0059】また、上記実施例においては、断面コ字状
の樹脂シャッタ33を成形するための成形金型30およ
び成形方法を示したが、例えば、薄肉の断面コ字状ある
いは屈曲する断面形状を有する他の任意の成形品を成形
する場合に適用して、キャビティ26内の樹脂流量を調
整することとしてもよい。また、固定型31および可動
型18を上下に配することとしたが、これとは逆に、あ
るいは、左右に配置することとしてもよい。
【0060】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明に係る樹脂
シャッタの成形金型は、ゲートを設けた連結部のキャビ
ティを有する固定型と、これに対して接離させられる可
動型とからなり、可動型を側板部のキャビティ間に配さ
れるコア金型とコア金型との間に側板部のキャビティを
形成するスライド金型とから構成し、型閉時に側板部の
キャビティと連結部のキャビティとが連通する位置にお
けるスライド金型どうしの間隔寸法を連結部のキャビテ
ィの幅寸法より大きく設定し、固定型をスライド金型の
移動方向に位置調整可能に設けたので、連結部のキャビ
ティと側板部のキャビティとの間にキャビティの断面積
が局部的に小さくなる部分を形成して、この部分を流通
する溶融樹脂の流量を固定型の移動のみによって効率良
く調整することができるという効果を奏する。したがっ
て、肉厚寸法が均一な高品質の樹脂シャッタを得るため
の調整作業をきわめて簡易なものとすることができ、作
業工数を削減して、迅速かつ安定した高品質の樹脂シャ
ッタの成形を実施することができる。
【0061】また、上記樹脂シャッタの成形金型におい
て、ロッキングブロックを固定型に一体的に設け、ロッ
キングブロックの傾斜面をスライド金型の移動方向に位
置調整可能に設ける構成とすれば、上記効果に加えて、
ロッキングブロックおよび固定型の相互間の位置調整作
業を不要として、作業をさらに簡易なものとすることが
できる他、一方の側板部の肉厚調整と他方の側板部の肉
厚調整とを同時にかつ効率的に実施することができると
いう効果を奏する。
【0062】また、ロッキングブロックと固定型とが同
時に移動させられることとなるので、ロッキングブロッ
クの傾斜面の位置調整のみにより、固定型に形成された
連結部のキャビティの微妙な位置調整をきわめて簡易に
実施することができるという効果もある。
【0063】さらに、上記樹脂シャッタの成形金型にお
いて、ロッキングブロックの傾斜面にスライド金型を摺
動させる摺動板を着脱可能に取り付けることとすれば、
摺動板の厚さ調整あるいは摺動板と傾斜面との間のシム
調整を行うことによって、簡易に調整作業を実施するこ
とができる。しかも、シム調整作業等は、ロッキングブ
ロックが固定側型板に固定された状態で実施することが
できるので、金型の取り外し、取り付け作業を不要と
し、調整作業のさらなる容易化を図ることができるとい
う効果を奏する。
【0064】また、本発明に係る樹脂シャッタの成形方
法は、溶融樹脂を射出するゲートに連通し連結部を成形
する第1のキャビティと、一対の側板部を成形する一対
の第2のキャビティとを連通状態に形成し、これらのキ
ャビティがそれぞれ連通する位置に、溶融樹脂の流通断
面積が局部的に縮小する絞り部を設け、その断面積を変
化させるように金型の位置を調整するので、スライド金
型の製品面あるいはコア金型との当接面を削り取る従来
の調整作業と比較して、きわめて簡易かつ効果的に、第
1のキャビティから一対の第2のキャビティへの溶融樹
脂の流量の均等化を図ることができる。
【0065】しかも、金型を削る場合のようにキャビテ
ィから排出される空気の排出経路の変動等の他の条件の
変化を伴わないので、所望の効果を得るための調整量を
予め的確に把握することができる。したがって、試行錯
誤の繰り返しを最小限に抑えて、調整に要する作業工数
の低減を図り、金型交換時等に迅速かつ安定して高品質
の樹脂シャッタを成形することができるという効果があ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る樹脂シャッタの成形金型を示す縦
断面図である。
【図2】図1の成形金型を示す拡大断面図である。
【図3】図1の成形金型により成形される樹脂シャッタ
を示す斜視図である。
【図4】磁気ディスクの一例を示す正面図である。
【図5】従来の樹脂シャッタの一例を示す斜視図であ
る。
【図6】図5の樹脂シャッタを成形するための成形金型
を示す縦断面図である。
【図7】図6の成形金型を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
6・7 側板部 8 連結部 18 可動型 20 コア金型 21・22 スライド金型 26・26a・26b・26c キャビティ 27 ゲート 30 成形金型 31 固定型 32a・35a 傾斜面 32 ロッキングブロック 33 樹脂シャッタ 35 摺動板 40 絞り部 W1 間隔寸法 W2 幅寸法
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−317733(JP,A) 特開 平6−238671(JP,A) 特開 平4−216379(JP,A) 実開 平1−116620(JP,U) 実開 昭56−79314(JP,U) 実開 平2−34218(JP,U) 実開 平3−79915(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B29C 45/26 - 45/44 B29C 33/00 - 33/76 G11B 23/03

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 対向する一対の側板部とこれら側板部を
    連結する連結部とからなる断面コ字状の樹脂シャッタを
    一体成形する成形金型であって、 前記連結部のキャビティを有しかつ該キャビティに連通
    するゲートを具備する固定型と、該固定型に対して接離
    させられ前記連結部のキャビティに連通する一対の側板
    部のキャビティを形成する可動型とからなるとともに、 前記可動型が、前記側板部のキャビティ間に配されるコ
    ア金型と、該コア金型に対して前記可動型の接離方向に
    交差する方向に接離させられてコア金型との間に前記側
    板部のキャビティを形成するスライド金型とからなり、 型閉時に前記側板部のキャビティと連結部のキャビティ
    とが連通する位置における前記スライド金型どうしの間
    隔寸法が、前記固定型に形成された連結部のキャビティ
    の幅寸法より大きく設定され、 前記固定型がスライド金型の移動方向に位置調整可能に
    設けられていることを特徴とすることを特徴とする樹脂
    シャッタの成形金型。
  2. 【請求項2】 型閉時にスライド金型をコア金型に付勢
    する傾斜面を有するロッキングブロックが、固定型に一
    体的に設けられ、 該ロッキングブロックの傾斜面がスライド金型の移動方
    向に位置調整可能に設けられていることを特徴とする請
    求項1記載の樹脂シャッタの成形金型。
  3. 【請求項3】 ロッキングブロックの傾斜面にスライド
    金型を摺動させる摺動板が着脱可能に取り付けられてい
    ることを特徴とする請求項2記載の樹脂シャッタの成形
    金型。
  4. 【請求項4】 対向する一対の側板部とこれら側板部を
    連結する連結部とからなる断面コ字状の樹脂シャッタを
    一体成形する方法であって、 複数の金型を組み合わせることにより、溶融樹脂を射出
    するゲートに連通し連結部を成形する第1のキャビティ
    と、一対の側板部を成形する一対の第2のキャビティと
    を連通状態に形成するとともに、 これらのキャビティがそれぞれ連通する位置に、溶融樹
    脂の流通断面積が局部的に縮小する絞り部を設け、 該絞り部の断面積を変化させるように金型の位置を調整
    することを特徴とする樹脂シャッタの成形方法。
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