JP3155129B2 - パイルファブリック - Google Patents

パイルファブリック

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車輌内装材のシート地
等に好適なパイルファブリックに関するものであり、さ
らに詳しくは、製造工程や使用時に毛倒れが起こりにく
いパイルファブリックに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、車輌内装材などのパイルファ
ブリックには、強度や染色堅牢性の点からポリエステル
繊維が主として用いられてきたが、製造工程や使用時に
毛倒れを起こすという問題があった。毛倒れは、パイル
部に荷重がかかった際にパイル部が倒れ(以下「パイル
倒れ」と称する)、倒れたパイル部が熱などによってそ
のままの状態に固定されるためにその部分が白く見える
現象で、パイルファブリックの品位を大きく損なう。
【0003】このような現象を防止するために、従来よ
り以下のような対策が講じられてきた。 パイルの打ち込み密度を高めてパイル密度を大きくす
る パイルの単繊維繊度を大きくする パイルの長さを短くする しかしながら、これらの対策は、パイル倒れを起こりに
くくする効果はあるものの、一旦パイル倒れが起こって
しまえば回復が困難でやはり毛倒れが起こる上、では
目付が大きくなり、パイルファブリックの風合が硬くな
る、ではパイルの表面タッチが粗硬化する、では地
組織が透けて見え、パイルの豪華さを損ねるなどの欠点
が生じる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
従来技術の有する問題点、即ち、パイルファブリックの
風合の硬化や表面タッチの粗硬化あるいは地組織の透け
の問題を惹起することなく、毛倒れの起こりにくいパイ
ルファブリックを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らが上記目的を
達成するため、パイルファブリックのパイル糸を構成す
るポリエステル繊維の物性と毛倒れの起こり易さとの関
係について鋭意検討した結果、パイル糸に高ヤング率の
繊維を用いるとき、曲げ弾性回復性が良好で、可及的に
毛倒れの起こりにくいパイルファブリックが得られるこ
とを究明した。
【0006】かくして本発明によれば、パイル長さが
1.8mm以上、パイル密度が50万デニール/inch2
以下のパイルファブリックにおいて、該パイルファブリ
ックを構成するパイル糸が、単繊維繊度が4デニール以
下かつヤング率が1600Kg/mm2 以上のポリエス
テル繊維であることを特徴とするパイルファブリックが
提供される。
【0007】本発明のパイルファブリックのパイル糸に
使用するポリエステル繊維は、テレフタル酸を主たる酸
成分とし、アルキレングリコールを主たるグリコール成
分とするポリエステルである。
【0008】また、テレフタル酸成分の一部を他の二官
能性カルボン酸成分で置き換えたポリエステルであって
もよく、グリコール成分の一部を他のグリコール成分で
置き換えたポリエステルであってもよい。
【0009】かかるポリエステルは任意の方法によって
合成したものでよい。例えばポリエチレンテレフタレー
トについて説明すれば、テレフタル酸とエチレングリコ
ールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジ
メチルの如きテレフタル酸の低級アルキルエステルとエ
チレングリコールとをエステル交換反応させるか、ある
いはテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させて
テレフタル酸のグリコールエステル及び/またはその低
分子量重合体を生成させる第1段階の反応と第1段階の
反応生成物を減圧下加熱して所望の重合度になるまで重
縮号反応させる第2段階の反応とによって製造される。
【0010】上記ポリエステルには、その他必要に応
じ、難燃剤、蛍光増白剤、酸化チタン等の艶消し剤、着
色剤、コロイダルシリカ、乾式法シリカ、コロイダルア
ルミナ、微粒子状アルミナ、炭酸カルシウム、リン酸カ
ルシウム等の不活性微粒子その他の任意の添加剤を、ポ
リエステルの合成開始時から紡糸工程までの任意の段階
で、それぞれ別々にまたは予め混合して添加してもよ
い。
【0011】本発明のパイルファブリックは、パイル長
さが1.8mm以上のものをいう。前述のように、パイ
ルファブリックの毛倒れは、パイル長さが短いほど起こ
りにくいが、パイル長さが短くなると地組織の透け等の
問題が発生する。
【0012】この透け感を防ぐ意味から、本発明におい
ては1.8mm以上のパイル長さを前提とする。ただ、
パイル長さがあまり長すぎると車輌内装材などの用途に
は適さないので3mm以下程度に止めることが好まし
い。
【0013】また、本発明のパイルファブリックはパイ
ル密度が50万デニール/inch2 以下のものを対象とす
る。ただ、パイル密度があまり小さすぎるとパイルファ
ブリックの豪華さが損なわれるので、35万デニール/
inch2 程度に止めるのが好ましい。
【0014】上記のような前提が付け得るパイルファブ
リックにおいて、本発明によれば、以下に述べる手段を
採用することにより毛倒れが防止できる。
【0015】以下、これについて述べる。先ず、本発明
においては、パイル糸を構成するポリエステル繊維のヤ
ング率を、従来のパイルファブリックの常識をはるかに
越えた1600Kg/mm2 以上にすることにより、パ
イル繊維の曲げ弾性回復性を向上させて毛倒れの起こり
にくいパイルファブリックを得ることが可能となる。
【0016】該ポリエステル繊維のヤング率が1600
Kg/mm2 未満の場合には、パイル倒れが起こった際
の回復が不十分であり、毛倒れが起こりやすくなる。
【0017】上記の高ヤング率ポリエステル繊維を得る
方法には特に制限はなく、任意の方法が採用できるが、
例えばタイヤコードなどの産業資材用ポリエステル繊維
を得る際に用いられるような、極限粘度の大きいポリエ
チレンテレフタレートチップを溶融紡糸した後高倍率延
伸する方法などが例示される。
【0018】さらに、本発明においては、パイル糸を構
成するポリエステル繊維の単繊維繊度を4デニール以下
とすることが必要である。
【0019】一般に、繊維の曲げ硬さはデニールの2乗
に比例するので、パイル糸の単繊維繊度を大きくすると
パイルの表面タッチが著しく粗硬化する。
【0020】ただ、単繊維繊度があまり小さすぎるとパ
イルの脱落等が起こりやすくなるので、2デニール程度
に止めるのが好ましい。
【0021】本発明のパイルファブリックは、上記の方
法で得られたポリエステル繊維を、例えば通常のトリコ
ット編機のフロント糸として用い、常法により編立て、
染色起毛仕上げを行なうことにより得られる。
【0022】この場合、地組織を形成するミドル糸およ
びバック糸としては、上記ポリエステル繊維の他、通常
(800〜1500Kg/mm2 )のヤング率を有する
ポリエステル繊維や他の合成繊維、また必要に応じて木
綿などの天然繊維、レーヨンなどの再生繊維等を自由に
用いることができる。
【0023】
【作用】前述のように、毛倒れを防ぐには、まずパイル
倒れを起こりにくくすることが肝要であるが、パイル密
度を高めたり、単繊維繊度を大きくしてパイル倒れを起
こりにくくした場合は、パイルファブリックの風合の硬
化や表面タッチの粗硬化等の問題が発生する。
【0024】そこで本発明者らは毛倒れ現象についてさ
らに詳細な検討を行ない、パイル糸に高ヤング率の繊維
を用いるとき、パイル倒れが起こりにくくなると同時に
曲げの弾性回復性が高められ、例えパイル倒れが起こっ
ても、一旦倒れたパイル糸がそのままの状態で熱固定さ
れることがなくなるので、毛倒れになりにくいことを究
明した。
【0025】即ち、パイル糸のヤング率を高めることに
より、曲げに対する抵抗力と曲げ弾性回復の両方を向上
させることができるのである。
【0026】特に、ポリエステル繊維の場合は熱セット
性が不良であるため、上記の効果が顕著に発現する。
【0027】〔図1〕は、従来のパイルファブリックに
おいて、パイル長さが2.0mmの場合の毛倒れの有無
を評価した結果であり、毛倒れを起こさない適正なパイ
ル密度および単繊維繊度範囲(図中、実線より上の部
分)が存在することを示している。
【0028】即ち、従来のパイルファブリックにおいて
は、例えばパイル糸の単繊維繊度が2デニールの場合、
〔図1〕に示すように70万デニール/inch2 未満のパ
イル密度では毛倒れが起こり実用に供し得ないので、7
0万デニール/inch2 以上の密度にしてパイルファブリ
ックを得ていた。
【0029】しかしながら、パイル密度が50万デニー
ル/inch2 を越えると目付が大きくなり、パイルファブ
リックの風合が硬くなる上、コストアップの原因にもな
る。
【0030】一方、パイル糸の単繊維繊度を例えば4デ
ニールより大きくすると、パイル密度を50万デニール
/inch2 にしても毛倒れは起こらないが、パイルの表面
タッチが粗硬化する。
【0031】これに対して、本発明のパイルファブリッ
クは、パイル糸の曲げに対する抵抗力と曲げ弾性回復が
優れているので、前述の前提のようなパイル密度および
単繊維繊度領域(図中、斜線の部分)にあっても毛倒れ
が起こりにくい上、目付が小さく良好な風合を有してい
る。
【0032】従来のパイルファブリックにおいては、パ
イル糸のヤング率を高めることはパイルファブリックの
表面タッチを粗硬化させるだけであると考えられ、毛倒
れを起りにくくするという効果については認識されてい
なかった。
【0033】本発明においては、パイル密度および単繊
維繊度を、従来ファブリックとして用いることができな
かった範囲に保ちつつパイル糸のヤング率を高めている
ので、表面タッチが粗硬化することはなく、良好な風合
を有するパイルファブリックが得られる。
【0034】以下、実施例により本発明をさらに具体的
に説明する。なお、実施例中の各物性は下記の方法によ
り測定した。
【0035】(1) ポリエステル繊維のヤング率 東洋ボールドウィン製引張試験機(タイプRTM-100 )を
用い、試料長250mm、引張速度 50mm/分、チ
ャートスピード200mm/分の条件で記録した荷伸曲
線の初期接線勾配の最大値から常法により算出した。測
定は10回実施し、その平均値で表した。
【0036】(2) 毛倒れの起こりやすさ 直径80mmφ、重さ2kgの荷重をパイルファブリッ
クのパイル面に載荷した状態で80℃、2時間乾熱処理
する。荷重を取り除いた後、パイルが毛倒れした部分を
視感判定し、○(毛倒れが目立たない)、△(毛倒れが
少し目立つ)、×(毛倒れが目立つ)の3段階で評価し
た。
【0037】
【実施例1】極限粘度0.62のポリエチレンテレフタ
レートチップを常法により溶融紡糸し、4500m/分
の速度で巻き取った後1.2倍に加熱延伸して、ヤング
率が1750Kg/mm2 、100デニール/36フィ
ラメントのポリエステルマルチフィラメントを得た。
【0038】該マルチフィラメントをフロント糸に、ま
たミドル糸およびバック糸には、別に作製したヤング率
が1200Kg/mm2 、75デニール/36フィラメ
ントのポリエステルマルチフィラメントを配し、カール
マイヤー製KS4型28ゲージ経編機を用いて編立てを
行なった。次いで、該編地を常法に従って染色、起毛加
工し、表1に示す物性を有するパイルファブリックを得
た。
【0039】
【比較例1】極限粘度0.69のポリエチレンテレフタ
レートチップを用い、紡糸速度および延伸倍率をそれぞ
れ1200m/分、3.5倍として、ヤング率が155
0Kg/mm2 のポリエステルマルチフィラメントを得
た。
【0040】該マルチフィラメントをフロント糸に用
い、その他は実施例1と同様に実施して表1に示す物性
を有するパイルファブリックを得た。
【0041】
【比較例2〜4】実施例1において、フロント糸に用い
るポリエステルマルチフィラメントのヤング率と単繊維
繊度、パイル密度およびパイル長さを表1に示す如く変
更し、その他は実施例1と同様に実施した。得られたパ
イルファブリックの物性を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】実施例1は本発明のパイルファブリックで
あり、毛倒れが目立たず良好な風合を有している。これ
に対して、比較例1はパイル糸を構成するポリエステル
繊維のヤング率が低く、毛倒れが目立つ。
【0044】比較例2は単繊維繊度を大きくすることに
よって、また比較例3はパイル密度を高めることによっ
て毛倒れを目立たなくさせているので、それぞれ表面タ
ッチが粗硬化する、目付が大きくなって風合が硬くなる
という欠点を有している。
【0045】さらに、比較例4はパイル長さが短いので
毛倒れはあまり目立たないが、地組織が透けて見え、パ
イルファブリックの豪華さが失われている。
【0046】
【発明の効果】本発明によれば、パイルファブリックの
風合の硬化や表面タッチの粗硬化あるいは地組織の透け
の問題を惹起することなく、毛倒れの起こりにくいパイ
ルファブリックがコストアップすることなく得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】パイル密度と単繊維繊度が毛倒れに及ぼす影響
を示すグラフ
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−104942(JP,A) 特開 昭56−58070(JP,A) 特開 昭64−52856(JP,A) 特開 昭57−42942(JP,A) 実開 平2−136086(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D06C 27/00 D01F 6/62 D04B 21/04 D06C 11/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 パイル長さが1.8mm以上、パイル密
    度が50万デニール/inch2 以下のパイルファブリック
    において、該パイルファブリックを構成するパイル糸
    が、単繊維繊度が4デニール以下かつヤング率が160
    0Kg/mm2以上のポリエステル繊維であることを特
    徴とするパイルファブリック。
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