JP3152895B2 - オートテンショナ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、例えば自動車エン
ジンのベルト補機駆動に利用されるオートテンショナに
関する。

【０００２】

【従来の技術】オートテンショナは、単一のベルトで複
数の装置に駆動力を伝達する伝動装置に用いられ、ベル
トのゆるみを防止して駆動力を各装置に確実に伝達させ
る。このようなオートテンショナは、例えばエンジンブ
ロック等の所定部位に固定されるカップと、このカップ
に対して揺動自在に支持されたアームと、このアームに
回転自在に取り付けられたプーリとを備えている。ベル
トはプーリの側面に懸架され、緊張する方向に付勢され
る。ベルトを緊張させるための付勢力は、所定のねじり
力で巻回されてカップ内に配設されるねじりコイルスプ
リングの反発力によって発生する。

【０００３】カップ内にはねじりコイルスプリングとダ
ンピング機構とが設けられている。ダンピング機構はベ
ルト等の振動によるアームの揺動を減衰させるために設
けられ、例えばアームに固定されてカップ内周面と摺接
する略環状のダンピングバンドと、このダンピングバン
ドをカップ側に付勢するリングスプリングとを備える。
このダンピング機構とねじりコイルスプリングとが干渉
しないように、カップ径はねじりコイルスプリングの径
より所定長さ分だけ大きく設定される。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかし、所望の付勢力
を得るためには所定のねじりコイルスプリング長さが必
要であり、カップ内にねじりコイルスプリングとダンピ
ングバンドとを備える構成では、カップの小型化には限
界があった。

【０００５】本発明の目的は、オートテンショナを一定
のベルト付勢力を減ずることなく小型化することであ
る。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明によるオートテン
ショナは、平板状に形成された取付板部とこの取付板部
の一方の面から突出した軸受部とを有するベースと、軸
受部を貫通する回転軸と軸受部の取付け板部とは反対側
の端部において回転軸と一体的に設けられる平板状の回
転板とを有し、ベースに対して回転軸周りに回転可能な
アームと、一端を取付板部の一方の面に他端を回転板の
取付板部側の面に取付けられ、回転軸周りに露出して巻
回されることによりアームを所定の回転方向に付勢する
ねじりコイルスプリングと、取付板部の他方の面におい
て回転軸に一体的にボルトにより取り付けられ、アーム
の回転運動に抵抗付与するダンピング機構とを備え、ダ
ンピング機構が、ボルトによりアームの回転軸に固定さ
れるカップと、カップの内周面と摺接するダンピングバ
ンドと、ダンピングバンドを内周面側からカップに付勢
するリングスプリングとを有し、カップの内部が略密閉
されることを特徴とする。

【０００７】オートテンショナにおいて、ダンピング機
構が回転軸に一体的に取り付けられていてもよい。

【０００８】オートテンショナにおいて、ダンピング機
構が、回転軸に固定されるカップと、取付板部の他方の
面から突出したピンに取り付けられカップの開口面と摺
接するダンピングバンドと、このダンピングバンドを内
周面側からカップに付勢するリングスプリングとを備え
てもよい。

【０００９】オートテンショナにおいて、ダンピング機
構が、摩擦部材と、この摩擦部材をベースに付勢する複
数の圧縮コイルスプリングと、この圧縮コイルスプリン
グを収納しアームの回転軸に取り付けられるケーシング
とを備えてもよい。

【００１０】オートテンショナにおいて、ダンピング機
構が、摩擦部材と、この摩擦部材をベースに付勢する皿
バネとを備えてもよい。

【００１１】

【発明の実施の形態】以下、本発明によるオートテンシ
ョナの実施形態について添付図面を参照して説明する。

【００１２】図１は本実施形態のオートテンショナを利
用した自動車用エンジンのベルトシステムを示す図であ
る。このベルトシステムは、エンジンの出力軸に取り付
けられた駆動プーリ１１と、エアコンディショナ、パワ
ーステアリング装置、オルタネータ用の各従動プーリ１
２、１３、１４と、アイドラプーリ１５、１６、そして
オートテンショナ（以下、テンショナという）１０とを
備えている。各プーリの間には単一の駆動ベルト１７が
懸架され、この駆動ベルト１７は時計周りに駆動され
る。

【００１３】テンショナ１０はベース２０を備え、この
ベース２０はエンジンブロック１８に固定される。また
テンショナ１０はアーム３０を備えている。このアーム
３０はベース２０に対し軸（図示しない）周りに回動可
能である。このアーム３０にはプーリ６０が取り付けら
れ、このプーリ６０はアーム３０に対して回転可能であ
る。プーリ６０の外周面に駆動ベルト１７が懸架され
る。プーリ６０は、ねじりコイルスプリング（図示しな
い）により実線の位置から反時計周りに付勢されて破線
の位置まで移動し、駆動ベルト１７を緊張させる。

【００１４】図２〜図５には第１実施形態であるオート
テンショナが示される。図２はテンショナ１０の断面
図、図３はプーリ６０以外の構成を示す分解斜視図、図
４はベース２０の上面図、図５はアーム３０の下面図で
ある。

【００１５】ベース２０は円板状の取付板部２１と、２
つの取付部２２と、円筒形状の軸受部２４とが一体的に
形成される。取付部２２はボルト（図示しない）により
エンジンブロックに固定される。取付板部２１の上面２
１ａからは軸受部２４が取付板部２１に対して垂直方向
に延びており、この軸受部２４に２つの軸受２５、３５
を介してアーム３０の軸３４が挿入される。

【００１６】アーム３０は金属部材であり、偏心する２
枚の円板である回転板３２とプーリ取付板４２とが一体
的に形成されて成る。回転板３２にはその下面３２ｂか
ら円柱状の軸３４が下方に延びている。この軸３４は軸
受２５、３５内において所定の摩擦抵抗で回転可能であ
り、即ちアーム３０はベース２０に対し、軸３４周りに
回転自在である。

【００１７】プーリ取付板４２の中央には軸３４と平行
でありかつ反対の方向に延びるプーリ軸４４が形成さ
れ、プーリボルト６８によって、プーリ６０がこのプー
リ軸４４に取り付けられる。プーリ６０とプーリ軸４４
との間にはボールベアリング６２が介装され、これによ
りプーリ６０はプーリ軸４４に対して回転自在である。
プーリボルト６８の頭部とボールベアリング６２との間
には、塵埃の浸入を防止するダストシールド６４が介装
される。

【００１８】ねじりコイルスプリング５０は、例えば円
形断面を有する金属線を螺旋状に巻回して成形される。
金属線の太さ、材質、形状、またはねじりコイルスプリ
ングの巻回数は必要とされるベルト張力に応じて適宜選
択される。ねじりコイルスプリング５０は、適度にねじ
られた状態でベース２０とアーム３０との間に圧縮状態
で介装され、この状態でプーリ６０に懸架された駆動ベ
ルト１７（図１）を緊張させる方向にアーム３０を付勢
する。ねじりコイルスプリング５０の一端（以下、ベー
ス側端部という）５２はベース２０の取付板部２１に、
他端（以下、アーム側端部という）５６はアーム３０の
回転板３２に取り付けられ、軸３４の周りに巻回され
る。

【００１９】ベース側端部５２は直線状に形成される。
図４に示すように、このベース側端部５２はベース２０
の取付板部２１の上面２１ａに形成されたスプリング受
け部２６、２７、２９に係合し、これによりねじりコイ
ルスプリング５０は径方向および周方向に固定される。
アーム側端部５６は螺旋部５４から径方向の外側に折曲
して形成される。図５に示すように、アーム側端部５６
はアーム３０の回転板下面３２ｂに形成されたスプリン
グ受け部３６、３７に係合し、これによりねじりコイル
スプリング５０の周方向および径方向の位置が規制され
る。さらにねじりコイルスプリング５０は、ベース２０
の円板部上面２１ａとアーム３０の回転板下面３２ｂと
により螺旋軸方向、即ち軸３４方向の位置が規制され
る。

【００２０】ダンピング機構はアーム３０の過度の揺動
を防止するために設けられるものであり、例えばベース
２０に当接しアーム３０と一体的に動く摩擦部材（以
下、ダンピングバンドという）を設け、これにより摩擦
時に発生するダンピング力によってアーム３０の揺動を
減衰させる。本実施形態ではベース２０にダンピングバ
ンド７０が取り付けられており、アーム３０の軸３４に
一体的に固定されたカップ８０がこのダンピングバンド
７０に摺動することにより、ダンピング力が発生する。

【００２１】ダンピングバンド７０はナイロン樹脂など
の弾性部材により形成される略環状の部材である。図３
に示すように、ベース２０に固定される端部にはベース
２０の２つのピン２８（図３には１つだけ示す）とそれ
ぞれ嵌合するための嵌合穴７２が形成される。嵌合穴７
２と対向する側の側面には軸方向に延びた開口部７４が
形成される。この開口部７４はダンピングバンド７０の
熱変形を吸収するとともに、ダンピングバンド７０の摩
耗の際に徐々に広がり、リングスプリング７５の付勢力
を十分に伝達できるようにダンピングバンド７０の弾性
変形が可能となる。ベース側端部にはさらにフランジ７
６が形成され、カップ８０との密着面における粉塵の侵
入を防止している。

【００２２】リングスプリング７５は金属線から成るＣ
形バネであり、径方向に収縮された状態でダンピングバ
ンド７０の内周面に取り付けられる。ダンピングバンド
７０に取り付けられた状態において、リングスプリング
７５はダンピングバンド７０の内周面に形成された２つ
のスプリング受７７、７８により軸方向の位置が規制さ
れる。リングスプリング７５は正方形断面を有してお
り、開口部から徐々に板幅（径方向の寸法）が厚くなっ
ている。リングスプリング７５は軸方向に２枚重ねられ
る。リングスプリング７５は、ダンピングバンド７０を
周方向に対して略均一に、内側からカップ内周面８０ａ
に向かって付勢する。

【００２３】カップ８０は底面中央から開口側に向かっ
て立ち上がる隆起部８２を備えており、隆起部８２は底
面側から軸３４の底面３４ｂにボルト８５により取り付
けられる。カップ８０が軸３４に取り付けられた状態に
おいて、隆起部上面８２ａと軸底面３４ｂとが密着し、
カップ内周面８０ａとダンピングバンド外周面７０ａと
が密着する。この密着面によりカップ８０内は略密閉さ
れる。

【００２４】駆動ベルト１７（図１）からの振動はプー
リ６０を介してアーム３０に伝達される。アーム３０は
軸３４まわりに揺動することにより、プーリ６０の振動
を吸収する。アーム３０が揺動すると、軸３４の回転に
ともなってカップ８０が回転し、ダンピングバンド７０
とカップ８０とが摺接することにより、ダンピング力が
発生し、アーム３０の揺動を減衰させる。このダンピン
グ力はねじりコイルスプリング５０のねじり力に関係な
く一定である。

【００２５】以上のように、第１実施形態のオートテン
ショナ１０はベース２０の上方にねじりコイルスプリン
グ５０が設けられ、ダンピング機構がベース２０の下方
に設けられる。従来はベース２０に相当するテンショナ
カップにねじりコイルスプリングを収納し、テンショナ
カップとねじりコイルスプリングとの間にダンピング部
材を設けていたが、第１実施形態はねじりコイルスプリ
ング５０をカップ８０に収納しないので、従来の構成に
比べ、カップ８０の径をねじりコイルスプリング５０の
径より大きく設定する必要がなく、カップ容積を小さく
できる。即ちねじりコイルスプリング５０の設計に規制
されることなく、オートテンショナ全体を小型化でき
る。

【００２６】図６、図７には第２実施形態であるオート
テンショナが示される。図７はダンピング機構の構成を
示す分解斜視図である。第２実施形態のオートテンショ
ナは、ダンピング機構が異なること以外は第１実施形態
と同じである。同じ構成には同符号を付し、説明を省略
する。

【００２７】ベース２０の回転板下面２１ｂはフラット
に形成される。摩擦部材１７０はリング状の板材であ
り、その下面１７０ｂには３つの円柱突起１７２が形成
される。円柱突起１７２は周方向に関して等間隔に設け
られる。摩擦部材１７０は圧縮スプリングケース１８０
を介して、ボルト１８５によりアーム３０の軸３４に取
り付けられる。圧縮スプリングケース１８０は、円柱突
起１７２と係合する３つの穴１８２と、圧縮スプリング
１７４を収容するための３つのスプリング穴１８４とを
備える。圧縮スプリング１７４はコイルバネであり、圧
縮された状態でスプリング穴１８４に収納される。

【００２８】圧縮スプリングケース１８０が取り付けら
れた状態において、圧縮スプリング１７４は摩擦部材１
７０をベース２０の回転板下面２１ｂに押圧付勢し、こ
れにより摩擦部材１７０の上面１７０ａとベース２０の
回転板下面２１ｂとが密着する。アーム３０の揺動によ
り軸３４が回転すると、摩擦部材１７０の上面１７０ａ
がベース２０の回転板下面２１ｂに対して摺動し、これ
によりダンピング力が発生する。

【００２９】第２実施形態においても第１実施形態と同
様、ベース２０に関してねじりコイルスプリング５０の
反対側の位置にダンピング機構が設けられており、ねじ
りコイルスプリング５０の設計によらずにテンショナ１
０の小型化が図られる。

【００３０】図８は第３実施形態であるオートテンショ
ナが示される。第３実施形態のオートテンショナは、ダ
ンピング機構が異なること以外は第１実施形態と同じで
ある。同じ構成には同符号を付し、説明を省略する。

【００３１】ベース２０の回転板下面２１ｂはフラット
に形成される。揺動軸３４にはフランジ２８２を備えた
固定部材２８０がボルト２８５により螺合固定される。
ベース２０の回転板下面２１ｂと、固定部材２８０のフ
ランジ上面２８２ａとの間には、摩擦部材２７０と２枚
の皿バネ２６０、２６５とが介装される。摩擦部材２７
０はリング状に形成される板材であり、その上面２７０
ａが回転板下面２１ｂに密着している。皿バネ２６０、
２６５は中央に固定部を貫通させるための穴を備え、互
いの皿底が密着して設けられる。皿バネ２６０、２６５
はそれぞれ外縁部がフラットに形成され、ベース２０側
の皿バネ２６０の外縁部２６２は摩擦部材２７０に密着
し、反対側の皿バネ２６５の外縁部２６７は固定部材２
８０のフランジ２８２に密着している。

【００３２】図８に示す状態において、皿バネ２６０、
２６５は軸方向に圧縮された状態で介装されており、こ
れにより摩擦部材２７０がベース下面２１ｂへ押圧付勢
される。アーム３０の揺動により軸３４が回転すると、
摩擦部材上面２７０ａが回転板下面２１ｂに対して摺動
し、これによりダンピング力が発生する。

【００３３】第３実施形態においても第１実施形態と同
様、ベース２０に関してねじりコイルスプリング５０の
反対側の位置にダンピング機構が設けられており、ねじ
りコイルスプリング５０の設計によらずにテンショナ１
０の小型化を図ることができる。

【００３４】図９は第４実施形態であるオートテンショ
ナが示される。第４実施形態のオートテンショナは、軸
の構成が異なること以外は第１実施形態と同じである。
同じ構成には同符号を付し、説明を省略する。

【００３５】軸３３４は上端にネジ部３３４ａを備えて
おり、このネジ部３３４ａがアーム３０の回転板３２と
螺合することにより、アーム３０と軸３３４はは一体的
に回転可能になる。図示しないが軸３３４の下端にもネ
ジ部が設けられており、カップ８０を介してナット３８
５により締め付けられる。これによりカップ８０が軸３
３４に取り付けられる。

【００３６】第４実施形態においても第１〜第３実施形
態と同様、ベース２０に関してねじりコイルスプリング
５０の反対側の位置にダンピング機構が設けられてお
り、ねじりコイルスプリング５０の設計によらずに、テ
ンショナ１０の小型化を図ることができる。

【００３７】以上のように、第１〜第４実施形態で示す
オートテンショナは、ねじりコイルスプリングがカップ
内に設けられておらず、ダンピング機構がベースに対し
ねじりコイルスプリングと対向する位置に設けられてい
る。従って、カップの大きさをねじりコイルスプリング
の径より大きく設定する必要がなく、オートテンショナ
の小型化が可能になる。

【００３８】

【発明の効果】本発明によると、オートテンショナを一
定のベルト付勢力を減ずることなく小型化することがで
きる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明によるオートテンショナの実施形態を用
いたベルトシステムを示すブロック図である。

【図２】本発明によるオートテンショナの第１実施形態
を示す断面図である。

【図３】図２に示すオートテンショナのアームとダンピ
ング機構とをベースに取り付ける構成を示す分解斜視図
である。

【図４】図２に示すベースの上面図である。

【図５】図２に示すアームの下面図である。

【図６】本発明によるオートテンショナの第２実施形態
を示す断面図である。

【図７】図６に示すオートテンショナのダンピング機構
を示す分解斜視図である。

【図８】本発明によるオートテンショナの第３実施形態
を示す断面図である。

【図９】本発明によるオートテンショナの第４実施形態
を示す断面図である。

【符号の説明】 １０ オートテンショナ ２０ ベース ２５、３５ 軸受 ３０ アーム ５０ ねじりコイルスプリング ６０ プーリ ７０ ダンピングバンド ７５ リングスプリング ８０ カップ

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 平板状に形成された取付板部と、この取
   付板部の一方の面から突出した軸受部とを有するベース
   と、 前記軸受部を貫通する回転軸と、前記軸受部の前記取付
   け板部とは反対側の端部において前記回転軸と一体的に
   設けられる平板状の回転板とを有し、前記ベースに対し
   て前記回転軸周りに回転可能なアームと、 一端を前記取付板部の一方の面に、他端を前記回転板の
   前記取付板部側の面に取付けられ、前記回転軸周りに露
   出して巻回されることにより、前記アームを所定の回転
   方向に付勢するねじりコイルスプリングと、 前記取付板部の他方の面において前記回転軸に一体的に
   ボルトにより取り付けられ、前記アームの回転運動に抵
   抗付与するダンピング機構とを備え、前記ダンピング機構が、前記ボルトにより前記アームの
   回転軸に固定されるカップと、前記カップの内周面と摺
   接するダンピングバンドと、前記ダンピングバンドを内
   周面側から前記カップに付勢するリングスプリングとを
   有し、前記カップの内部が略密閉される ことを特徴とす
   るオートテンショナ。
2. 【請求項２】 前記ダンピングバンドが、前記取付板部
   の他方の面から突出したピンに取り付けられることを特
   徴とする請求項１に記載のオートテンショナ。