JP3151207B2 - 植物の組織培養方法及びその装置ならびに代謝産物の生産方法 - Google Patents

植物の組織培養方法及びその装置ならびに代謝産物の生産方法

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JP3151207B2 JP04242590A JP4242590A JP3151207B2 JP 3151207 B2 JP3151207 B2 JP 3151207B2 JP 04242590 A JP04242590 A JP 04242590A JP 4242590 A JP4242590 A JP 4242590A JP 3151207 B2 JP3151207 B2 JP 3151207B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は植物の組織培養方法及び前記植物の組織培養
方法を利用した代謝産物の生産方法、ならびに植物の組
織培養装置に関し、さらに詳しくは、植物の高密度組織
培養及びそれによる代謝産物の生産に好適な諸物の組織
培養装置に関する。
〔従来の技術〕
代謝産物の一つであるアルカロイドとして例えばスコ
ポラミンは鎮痙剤、鎮痛剤などとして、またヒヨスチア
ミンは副交換神経しゃ断薬として、またベルベリンは健
胃整腸薬として重用され、これら化合物は天然の植物体
中から抽出して製造されている。しかし天然物を原料と
しているため、その生産は天候に左右されること、収穫
時期が限定されていることなどが問題となっている。そ
のためこれらの化合物を植物の組織培養によって生産す
る研究が数多く行われている〔たとえばPlant Cell Rep
orts 、101−103(1982)など〕。
本発明者らは、植物の組織培養において、酸素を培養
槽内に通気して溶存酸素濃度を高めることによりアルカ
ロイドの生産性が向上することを見出した(特開昭62−
6674号及び同62−6676号)。しかし、この方法ではアル
カロイドの生産性をさらに向上させるために、培養組織
の密度を上げると、気泡が培養組織の間隙に滞留し、酸
素や養分の円滑な供給が阻害され、良い結果は得られな
いことがわかった。
また、空気を通気した培地を培養槽に供給する方法が
提示されているが(特開昭62−179383号)、これは培養
組織に供給される酸素濃度が、植物の組織培養の高密度
培養或いは代謝産物の生産性の点で充分ではない。
〔発明が解決しようとする課題〕
以上のように、従来技術による植物の組織培養方法で
は、特に植物の工業的規模での高密度組織培養に種々の
問題点があり、また、代謝産物を組織培養法によって工
業的に生産しようとする場合、代謝産物の収量について
は必ずしも満足のいくものではなかった。
従って、工業的規模での高密度培養可能な、かつ、代
謝産物の生産性を向上し得る植物の組織培養方法及びそ
の装置の開発が重要な課題であった。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者らは、植物の組織培養方法において、植物の
組織又は細胞を、溶存酸素濃度10ppm以上の培地の供給
を受ける培養槽において培養することにより、植物を従
来以上に高密度で組織培養することが可能となること、
特に、前記植物の組織培養を植物の組織又は細胞に実質
的に動揺を与えない流れの状態で液体培地を供給しつつ
おこなうと、植物を予想を超える高密度で組織培養する
ことが可能となること、また、この植物の組織培養方法
を代謝産物の生産に適用した場合、代謝産物の生産を著
しく向上し得ることを見出した。
本発明者はさらに、植物の組織培養の手段として、液
体培地の通気槽に酸素乃至酸素含有気体を通気して酸素
溶存液体培地を得、これを植物の組織又は細胞の培養槽
内に強制的に供給するように構成した植物の組織培養装
置を採用し、この植物の組織培養装置を用いて、所定の
培養条件で植物の組織又は細胞を組織培養することによ
り、上記課題を有利に解決し得ることを見出した。
本願発明は、上記新知見に基づいて鋭意研究を重ねた
結果完成したものであって、本願発明の植物の組織培養
方法は、植物の組織又は細胞を、溶存酸素濃度10ppm以
上の培地の供給を受ける培養槽において培養することを
特徴とする。
本願発明の植物の組織培養装置は、同様に上記新知見
に基づいて鋭意研究を重ねた結果完成したものであっ
て、液体培地の通気槽に酸素乃至酸素含有気体の通気手
段と、酸素乃至酸素含有気体の通気により得られた酸素
溶存液体培地を前記通気槽から植物の組織又は細胞の培
養槽内に強制的に供給する手段とを具備することを特徴
とする。
前記溶存酸素濃度は、好ましくは、15ppm以上であ
り、また、前記培養は、好ましくは、植物の組織又は細
胞を、培養槽内において、液体培地を前記組織又は細胞
に実質的に動揺を与えない流れの状態において連続乃至
間歇的に供給しつつ行われる。かくすることにより、従
来の攪拌型培養槽やエアリフト型培養槽による場合のよ
うに、組織培養される植物の組織又は細胞に損傷を与え
ることなく培養することができ、植物の組織又は細胞を
例えば新鮮重400g/以上の高密度で培養することが可
能となるのである。
本発明の組織培養装置において、好ましくは、少なく
とも、培養槽内における酸素溶存液体培地の排出側に、
培養される植物の組織又は細胞の流出を防止する手段、
例えば、フィルターが設けられる。
また、培養槽外から培養槽内に酸素溶存液体培地を強
制的に供給する手段は、好ましくは、前記酸素溶存液体
培地を培養される植物の組織又は細胞に実質的に動揺を
与えない流れの状態で供給する手段であり、特に好まし
くは、前記手段が酸素溶存液体培地を培養される植物の
組織又は細胞に一様なピストンフローで供給する手段で
ある。
さらに、組織培養される植物の組織又は細胞が光合成
能力を有するものであって、光照射下に組織培養を行う
ものにおいては、前記培養槽を透明な素材によって形成
したものを用いることが好ましい。
本発明の方法及び装置において、前記組織又は細胞に
実質的に動揺を与えない流れの状態としては、特に好ま
しいのは、一様なピストンフローである。
さらに、液体培地の供給を強制的供給手段により行う
ことが、植物の組織培養を高密度で行う上で極めて望ま
しい。
また、本願発明の代謝産物の生産方法は、上記植物の
組織培養方法によって培養し、得られた培養物より代謝
産物を採取することを特徴とするものである。
本発明で使用できる植物としては、代謝産物を生産す
る細胞であればどのような植物でも本発明の方法を適用
することができる。その細胞が不定根などに器官分化し
ていても良く、また、カルスや懸濁細胞も同様に使用す
ることができる。
本発明が適用される植物として具体的には、ズボイシ
ア・ミオポロイデス(Duboisia myoporoides),ズボイ
シア・ライヒハルディ(Duboisia leichhardtii)等の
ズボイシア属植物、ダツラ・タツラ(Datura tatul
a),ダツラ・アルボレア(Datura arborea),ダツラ
・ストラモニウム(Datura stramonium)等のダツラ属
植物、スコポリア・ジャポニカ(Scopolia japonica)
等のスコポリア属植物、ヒヨシアマス・ニガー(Hyoscy
amus niger)等のヒヨス属植物およびアトローパ・ベラ
ドンナ(Atropa belladonna)等のアトローパ属植物な
どのナス科植物、オウレン(Coptis japonica Makin
o),セリバオウレン(C.japonika Makino var.dussect
a Nakai),キクバオウレン(C.japonika Makino var.j
aponika),コセリバオウレン(C.japonika Makino va
r.major Satake),バイカオウレン(C.quinquefolia M
iq.)およびミツバオウレン(C.trifolia Salisb.)等
のオウレン属の植物、アキカラマツ(Thalictrumminus
L.var hypoleucum Miq.)等のサリクトラム属の植物、
クサントリザ属の植物およびヒドラスチス属の植物等が
挙げられる。
本発明の植物の組織培養方法及び代謝産物の生産方法
において、前述のような植物の組織又は細胞を、溶存酸
素濃度10ppm以上の培地の供給を受ける培養槽において
組織培養することが必要であり、溶存酸素濃度が10ppm
未満の場合は、培地中の溶存酸素濃度を植物の高密度組
織培養や、代謝産物の収量を高くするのに必要な濃度以
上にすることができない。さらに前記溶存酸素濃度は、
15ppm以上であることが好まいい。本発明において使用
できる酸素含有気体としては、望ましくは、空気に純酸
素を加えたもの、あるいは純酸素そのものを挙げること
ができる。
前記方法において、溶存酸素濃度10ppm以上の培地の
供給を受ける培養槽としては、前記気体を直接培養槽内
に通気せずに、あらかじめ通気した培地が供給されるも
のであれば、何ら限定されることなく使用できる。こう
して、通気槽内で通気された酸素溶存液体培地は、培養
槽内に強制的に供給される。
第1図は、本発明の植物の組織培養装置の一例を示
し、第2図は他の例を示す。
第3図は、酸素溶存液体培地を通気槽から培養槽内に
強制的に供給する手段が設けられていない比較の装置を
示す。
第4図(1)及び(2)はそれぞれ、本願発明の実施
例及び比較例における移植量とスコポラミン収量並びに
生育量の比を示すグラフである。
第1図において、通気槽4と培養槽3を別々に設け、
両者を培養液供給管1によって接続する。通気槽4にお
いては培地に、酸素含有ガス通気管2を通して酸素含有
ガスを通気し、溶存酸素濃度を15ppm以上にした培地を
培養液供給管1を介してポンプ6,6により強制的に培養
槽3に供給する。
なお、5は通気後の酸素ガスを排出するための排気
管、8はバルブである。
第1図の例では培養槽と通気槽は配管で接続している
が、両槽はフィルター、メッシュ等で接していてもよ
い。前記酸素含有ガスを通気する方法としてはフィルタ
ー、焼結金属などを用いることができる。
また、本発明において、前記液体培地の組織又は細胞
に実質的に動揺を与えない流れの状態における供給と
は、従来の液体培地の培養槽内への小孔よりの吹き出し
による供給、前記液体培地の培養槽内での攪拌等の組織
又は細胞に動揺を与える操作を伴わず、通常第1図に示
すポンプ6等の強制的供給手段により一方向より培養槽
内に強制的に定常流に近い状態で供給されるものであ
り、その供給の際に目視によって不定根等の組織又は細
胞の動揺が殆ど観察されない状態にある。この場合の液
体培地の培養槽への供給速度は1ml//min〜50//m
in、好ましくは500ml//min〜10//minの範囲にあ
る。
そして、前記培養槽中の組織又は細胞に前記10ppm以
上、好ましくは15ppm以上の酸素濃度の液体培地をこの
ような流れの状態で供給することにより、培養槽中の不
定根、カルス等の組織又は細胞は、相互に密接状態にな
り、全体として一体的な中実の固形物に近い状態とな
り、従来技術では到底達成できなかった、新鮮重400g/
或いは乾燥重20g/以上という高密度で組織又は細胞
を増殖せしめることが可能となり、ひいては、代謝産物
の生産性を飛躍的に高めることができるものである。
さらに、前記組織又は細胞の培養を、例えば培養槽に
固定されたフィルター等により限定された容積の空間内
で行うようにすると、培養の継続とともに細胞分裂によ
る細胞数の増加は進行するが、組織培養物全体の容積の
増加が前記空間の限定された容積によって抑制されるた
め、個々の細胞は乾燥重/新鮮重の比率及び乾燥重が異
常に高くなり、従来の技術常識を超えた高密度組織培養
を達成することができ、これにより代謝産物の生産性も
飛躍的に向上する。前記組織又は細胞の培養を限定され
た容積の空間内で行う方法を、例えば、ズボイシアの不
定根に適用すると、前記乾燥重/新鮮重の比率が0.07以
上で乾燥重40g/以上の高密度のものが得られることが
確認された。
第2図に示す装置は、培養槽内で高密度で増殖し、そ
の内部に充満している組織又は細胞に液体培地を強制的
に供給するためのポンプ6と、液体培地の供給時の組織
又は細胞の動揺を防ぐとともに、前記組織又は細胞の培
養を限定された容積の空間内で行うようにするために、
培養槽3の内壁面に所定の間隔をおいて固定されたステ
ンレス製メッシュ7,7を具備する以外は、第1図の培養
装置と類似した構成となっている。第2図に示す装置
は、不定根の組織培養及びそれによる代謝産物の生産に
有利に使用することができる。
本発明で使用される液体培地は、無機成分および炭素
源を必須成分とし、これに植物ホルモン類、ビタミン類
を添加し、更に必要に応じてアミノ酸類を添加した培地
である。
無機成分としては、窒素、リン、カリウム、ナトリウ
ム、カルシウム、マグネシウム、イオウ、鉄、マンガ
ン、亜鉛、ホウ素、モリブデン、塩素、ヨウ素、コバル
ト等の元素を含む無機塩を挙げることができ、具体的に
は硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、
塩化アンモニウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、リ
ン酸1水素カリウム、リン酸2水素カリウム、硫酸マグ
ネシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸第
1鉄、硫酸第2鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、モリブデン
酸ナトリウム、三酸化モリブデン、ヨウ化カリウム、硫
酸亜鉛、ホウ酸、塩化コバルト等の化合物を例示でき
る。
前記培地の炭素源としては、ショ糖等の炭水化物とそ
の誘導体、脂肪酸等の有機酸およびエタノール等の1級
アルコールなどを例示できる。
前記培地の植物ホルモン類としては、例えば、ナフタ
レン酢酸(NAA)、インドール酢酸(IAA)、p−クロロ
フエノキシ酢酸、2,4−ジクロロフエノキシ酢酸(2,4−
D)、インドール酪酸(IBA)およびこれらの誘導体等
のオーキシン類およびベンジルアデニン(BA)、カイネ
チン、ゼアチン等のサイトカイニン類を例示できる。
前記培地のビタミン類としては、ビオチン、チアミン
(ビタミンB1)、ピリドキシン(ビタミンB6)、ピリド
キサール、ピリドキサミン、パントテン酸カルシウム、
アスコルビン酸(ビタミンC)、イノシトール、ニコチ
ン酸、ニコチン酸アミドおよびリボフラビン(ビタミン
B2)などを例示できる。
前記培地のアミノ酸類としては、例えばグリシン、ア
ラニン、グルタミン酸、システイン、フエニルアラニン
およびリジンなどを例示できる。
本発明の前記培地は、通常は、前記無機成分を約0.1
μMないし約100mM、前記炭素源を約1g/ないい約100g
/、前記植物ホルモン類を約0.01μMないし約100μ
M、前記ビタミン類を約0.1mg/ないし約150mg/およ
び前記アミノ酸類を0ないし約100mg/含ませて使用さ
れることが望ましい。
本発明の植物の組織培養に用いられる前記培地として
具体的には、従来から知られている植物の組織培養に用
いられている培地、例えばムラシゲ・スクーグ('62)
[Murashige & Skoog]の培地、リンスマイヤー・スク
ーグ(RM−1965)[Linsmaier & Skoog]の培地、ホワ
イト('63)[White]の培地、ガンボルグ[Gamborg]
のB−5培地、三井のM−9培地、ニッチ・ニッチ[Ni
tsch Nitsch]の培地等に前記した炭素源および植物ホ
ルモンを添加し、更に必要に応じて前記したビタミン
類、アミノ酸類を添加して調製される培地を例示できる
が、本発明ではこの中でも特にニッチ・ニッチ、リンス
マイヤー・スクーグ又はムラシゲ・スクーグの培地を用
いて調製される培地が好ましい。なお、上記した従来公
知の培地の組成に関しては、例えば、竹内、中島、古谷
著の「新植物組織培養」P386〜P391、朝倉書店、1979年
に記載されている。
本発明では、前記培地を用いて、前述のような培養槽
で植物の組織培養を行い、代謝産物を含有する培養細胞
ないし培養組織を得るものである。
本発明の組織培養に用いられる前記植物の組織として
具体的には、該植物の根、葉、茎、種子、花芽などの他
にも本発明に関わる組織培養あるいは他の従来の組織培
養方法によって得られる該植物の培養細胞ないし培養組
織を例示できる。ズボイシア属植物を用いる場合には、
植物組織を前もって組織培養して得られる不定根を前述
の培養槽において組織培養することが特に好ましく、こ
の場合には原料の不定根が本発明方法によって増殖培養
されて、代謝産物としてスポコラミン、ヒヨスチアミン
等のトロパン系アルカロイドを多量含有する不定根が得
られる。
本発明方法によって生産される代謝産物としてはトロ
パン系アルカロイド(スコポラミン、ヒヨスチアミンな
ど)、イソキノリン系アルカロイド(ベルベリンなど)
等が例示できる。
本発明において、代謝産物を含有する培養細胞又は培
養組織から代謝産物を分離するには、例えば薬局法等に
記載されている植物から代謝産物を単離精製する場合に
用いられてきた通常の方法を採用することができる。
〔実施例〕
以下、本発明の方法を実施例によって更に具体的に説
明する。
実施例1 当社薬草園にて栽培したDuboisia myoporoides R.Br
の葉を洗浄し、10%アンチホルミン液に10分間浸漬し、
次いで滅菌水で3回洗浄した後、約1cmに切断し、ナフ
タレン酢酸およびベンジルアデニンをそれぞれ10-5Mお
よび10-6Mとなるように添加したリンスマイヤー・スク
ーグの寒天培地に置床し、25℃で30日間培養する。カル
ス形成と同時に発生した不定根を切り出し、シュークロ
ース3%、インドール酪酸を10-5Mになるように添加し
たニッチ・ニッチの液体培地に移植し、2年間継代培養
した。
このようにして得た不定根100mg(乾燥重量)を通気
槽と培養槽からなる第1図に示す培養装置の培養槽に移
植し、次に50mlのニッチ・ニッチの液体培地(シューク
ロース3%、インドール酪酸10-5M含有)を含む培養槽
に通気槽で純酸素を通気した培地(溶存酸素濃度40pp
m)を毎分20mlずつ供給して培養する方法で3週間培養
した。得られた不定根を乾燥後塩基性のクロロホルム−
メタノール液50mlで抽出した。これに40mlの1N硫酸を加
えてアルカロイド層を硫酸層に移した。さらに、アンモ
ニア水2mlおよびクロロホルム40mlを加えてアルカロイ
ドをクロロホルム層に移し、これを減圧濃縮し、ガスク
ロマトグラフィーでアルカロイド量を分析した。この場
合のスコポラミンの生産量を第1表に示した。なお、ガ
スクロマトグラフィーの分析は以下の条件で行った。
カラム:Silicone 0V−17(1%)on Chromosorb W(Mesh 80〜100) 3mmφ×1mガラスカラム キャリヤガス:N2 カラム温度 :200℃ 実施例2 通気に用いる気体が空気に酸素を添加し、酸素分圧が
50%となった気体である以外は、実施例1と同様にし
て、ズボイシア不定根を培養し、スコポラミンの抽出、
含量の測定を行った。この結果を第1表に示した。
実施例3 実施例1において純酸素の代りに酸素分圧を30%にし
た気体を通気した以外は該実施例と同様に行った結果を
第1表に示した。
比較例1 実施例1において純酸素の代りに空気を使用して通気
を行った以外は該実施例と同様に行った結果を第1表に
示した。
比較例2 実施例1において純酸素を直接培養槽に通気した以外
は該実施例と同様に行った結果を第1表に示した。
比較例3 実施例1で使用したズボイシア不定根は2年間継代培
養したものであるが、比較例3では実施例1と同様の条
件で6ヶ月間継代培養したズボイシア不定根を用いた。
すなわち、比較例3は実施例1に先立つ1.5年前に行っ
た実験であり、実施例1と比較例3の不定根は親細胞を
同一とする同じ系列(cell line)の不定根である。
比較例3ではこの6ヶ月間継代培養して得た不定根0.
8g(乾燥重量)を溶存酸素濃度調節計および底部に通気
用のガラスフィルター板を備え、上記液体培地1を含
む通気培養槽に移植し、溶存酸素濃度をそれぞれ第2表
に示す値に保ちながら3週間培養した。得られた不定根
を乾燥し、これを塩基性のクロロホルム−メタノール液
1で抽出した。これに1の1N硫酸を加えてアルカロ
イドを硫酸層に移した。さらにアンモニア水100mlおよ
びクロロホルム1を加えてアルカロイドをクロロホル
ム層に移し、これを減圧濃縮し、抽出物をガスクロマト
グラフィーで分析した。乾燥重量あたりのスコポラミ
ン、ヒヨスチアミン、アセチルトロピン、イソブチロイ
ルトロピン、バレロイルトロピン、チグロイジンのトロ
パン系アルカロイドの総量とスコポラミンの含量を求め
た。その結果を第2表に示した。
実施例と比較例の結果を比較すると、公知の攪拌培養
の場合は溶存酸素濃度を高めても低いスコポラミン含量
しか得られず、また生産量も低いが、本発明により組
織、細胞に動揺を与えないで培養する場合に初めて、高
いスコポラミン含量及び高い生育量が得られることがわ
かる。
実施例4 使用した植物の組織がオウレン細胞であること、およ
び培地が、ホルモン濃度がナフタレン酢酸100μM、ベ
ンジルアデニン5μMを含むリンスマイヤー・スクーグ
の液体培地であること以外は、実施例1と同様にして、
オウレン細胞を培養し、90%メタノールを用いてベルベ
リンを抽出し、HPLCを用いて含量の測定を行った。この
結果を第3表に示した。
比較例4 通気に用いる気体が空気である以外は実施例4と同様
にして、オウレン細胞の培養、ベルベリンの抽出、含量
の測定を行った。この結果を第3表に示した。
比較例5 セリバオウレン(Cop.Var.dissecta Nakai)の葉を70
%エタノール溶液および次亜塩素酸ソーダ水溶液(有効
塩素量0.5%)で殺菌した後に、ショ糖3%、ナフタレ
ン酢酸10-5M、ベンジルアデニン10-8Mを含有する無菌の
リンスマイヤー・スクーグの液体培地を寒天で固めた固
体培地(寒天1重量%)上に置床して25℃暗所で培養し
てセリバオウレンのカルスを得た。次に、このセリバオ
ウレンのカルスを上記と同様の条件でリンスマイヤー・
スクーグの液体培地で14日毎に植えつぎ、ロータリーシ
ェーカーで旋回培養(振幅25mm、100rpm)してセリバオ
ウレンの培養細胞の生育速度を速め、安定化したセリバ
オウレン培養細胞を得た。
溶存酸素濃度計と酸素含有ガス通気管を備えた通気攪
拌培養槽(内容積2)にCu2+濃度を1μMに変更した
無菌の上記液体培地1.5および上記カルス15g新鮮重量
を入れ、溶存酸素濃度が第4表に示した値になるように
酸素含有ガスの通気量を調節しながら25℃暗所で2週間
培養した。得られたカルスを乾燥し、乳鉢を用いて乾燥
カルスを破砕した後に90%メタノールでイソキノリン系
アルカロイドを抽出した。この抽出液を高速液体クロマ
トグラフィーを用いてベルベリン、パルマチン、コプテ
シン、ヤテオリジン等のイソキノリン系アルカロイドを
分析した。その結果を第4表に示した。
この実験結果も、公知の攪拌培養では良好な結果が得
られないことを示している。
実施例5 実施例1と同様にして得た不定根300mg(乾燥重量)
を通気槽と培養槽からなる第2図に示す培養装置の培養
槽(容積30cm3)に移植し、次に通気槽で純酸素を通気
し、シュークロース3%、インドール酪酸10-5Mを含む
ニッチ・ニッチの液体培地(溶存酸素濃度40ppm)を毎
分20mlずつ供給して培養する方法で3週間培養した。本
実施例で用いた第2図に示す培養槽によれば、培養槽内
の液体培地の流れの状態は図の矢印で示すように下部か
ら上部への一様なピストンフローとなっており、培養槽
内の不定根は実質的に動揺を与えられない安定した状態
にあった。得られた不定根について、実施例1と同様の
手法によりアルカロイドの抽出、分析を行った。この場
合のアルカロイドの生産量を第5表に示した。
実施例6 実施例と同様にして得た不定根150mg(乾燥重量)を
使用した以外は、実施例5と同様にして3週間培養した
ときの結果を第6表に示した。
比較例6 第3図に示す培養装置を用いる以外は実施例6と同様
にして不定根を3週間培養したときの結果を第6表に示
した。
第3図に示す培養装置では、矢印で示すように液体培
地は通気槽の上部から培養槽上部に流れ込み、培養槽下
部から通気槽へと循環しているが液体培地の流れの状態
は実施例6の様な一様な流れにはなりにくくチャンネリ
ングを起こしやすいのでアルカロイドの生産性は悪かっ
た。
実施例7 実施例1と同様にして得た不定根について、培養槽に
供給する培地の溶存酸素濃度を40ppmにし、移植量を変
えて3週間培養した。その結果を第4図に●−●の直線
で示した。
比較例7 培養槽に供給する培地の溶存酸素濃度が8ppmである以
外は、実施例7と同様にして、3週間培養した。その結
果を第4図に○−○の直線で示した。
実施例8 実施例1で用いたのと同じ不定根300mg(乾燥重量)
を通気槽と培養槽からなる第2図に示す培養装置の培養
槽(容積30cm3)に移植し、次に通気槽で純酸素を通気
したニッチ・ニッチの液体培地(溶存酸素濃度40ppm)
を毎分20mlずつ供給する方法で培養し(第1段階)、培
養開始後1週間目に培地を捨て、新たにアンモニウムイ
オン9mM、硝酸イオン36mM、リン酸イオン0.25mM、およ
びショ糖5%を含み、インドール酪酸を含まないニッチ
・ニッチ液体培地を加え、第2段階として2週間培養し
た。得られた不定根から実施例1と同様にしてスポコラ
ミンを抽出し、含量の測定を行った。この結果を第7表
に示した。
比較例8 実施例8において、培養1週間目に培地を捨てず、ま
た新たに培地を添加しないこと以外は、該実施例と同様
に行った結果を第7表に示した。
実施例8の方法によれば、トロパン系アルカロイドを
産生する植物の不定根を培養する場合、培養途中で培地
を新しい培地と全量交換することにより、培養に伴って
組織から培地中に排出された老廃物の影響を排除し、不
定根中のトロパン系アルカロイドの含量が向上するか、
あるいは不定根の生育が促進され、結果としてトロパン
系アルカロイドの生産性を向上させることができる。さ
らに、培養の第1段階には不定根の側根を誘導する培
地、第2段階には側根の伸長並びにトロパン系アルカロ
イドの生産を促進する培地を用いて段階的に培養するこ
とにより、培養組織中のトロパン系アルカロイドの生産
性を飛躍的に高めることができる。
実施例9 アマチャヅル不定根150mg(乾燥重量)を通気槽と培
養槽からなる第2図に示す培養装置の培養槽(容積30cm
3)に移植し、次に通気槽で純酸素を通気し、シューク
ロース3%、インドール酪酸(IBA)10-5Mを含有するニ
ッチ・ニッチの液体培地(溶存酸素濃度40ppm)を毎分2
0mlずつ供給して培養する方法で4週間培養した。この
ときの生育量を第8表に示す。このときの代謝産物はジ
ンセノサイドであった。
比較例9 実施例9で純酸素を通気する代わりに空気を通気し
(溶存酸素濃度8ppm)、また培養槽への移植量を15mg
(乾燥量)とした以外は実施例8と同様にして行った結
果を第9表に示す。
実施例10 実施例9で使用したのと同じ培養装置を用いて、ジギ
タリス幼植物300mg(乾燥重量)を培養槽に移植し、通
気槽で純酸素を通気し、シュークロース3%、カイネチ
ン10-6Mを含有するニッチ・ニッチの液体培地を毎分20m
lずつ供給して3週間培養したときの結果を第10表に示
した。
比較例10 実施例10で空気を使用し、移植量を30mg(乾燥重)と
した以外は実施例9と同一にして培養した結果を第10表
に示した。
〔発明の効果〕 本発明の方法及び装置によれば、酸素含有気体を直接
培地に通気しないので、代謝産物を産生する植物の細胞
に損傷を与えることなく酸素を十分に供給することがで
き、細胞の増殖速度を増加させるとともに高密度培養を
達成することができるだけでなく、アルカロイド等の代
謝産物の生産も促進されるので、代謝産物を効率良く、
生産することができるものである。また、特に植物の不
定根等の組織又は細胞を、上記のように所定の高濃度の
酸素が溶存している液体培地を前記組織又は細胞に動揺
を与えない状態で供給しつつ培養することにより、不定
根、カルス等の組織又は細胞を極めて高密度で増殖させ
ることができ、本発明は種苗の大量増殖等に極めて有効
に適用でき、また、アルカロイド等の代謝産物の生産に
適用すれば、その生産性を飛躍的に向上させることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の植物の組織培養装置の一例を示し、
第2図は他の例を示す。 第3図は、酸素溶存液体培地を通気槽から培養槽内に強
制的に供給する手段が設けられていない比較の装置を示
す。 第4図はそれぞれ、本発明の実施例及び比較例における
移植量とスコポラミン収量並びに生育量の比を示すグラ
フである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (31)優先権主張番号 特願平1−234637 (32)優先日 平成1年9月12日(1989.9.12) (33)優先権主張国 日本(JP) (72)発明者 出野 博志 山口県玖珂郡和木町和木6丁目1番2号 三井石油化学工業株式会社内 (56)参考文献 特開 昭62−6674(JP,A) 特開 昭62−179383(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12M 3/00 C12N 5/00

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】植物の組織又は細胞を、液体培地を含む培
    養槽内において、溶存酸素濃度10ppm以上の液体培地を
    一様なピストンフローで連続乃至間歇的に供給しつつ培
    養することを特徴とする植物の組織培養方法。
  2. 【請求項2】液体培地の供給を強制的供給手段により行
    うことを特徴とする請求項1記載の植物の組織培養方
    法。
  3. 【請求項3】培養により、組織又は細胞を新鮮重400g/
    以上または乾燥重20g/以上の高密度に増殖せしめる
    ことを特徴とする請求項1又は2のいずれかの項記載の
    植物の組織培養方法。
  4. 【請求項4】植物の組織又は細胞が不定根であることを
    特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかの項記載の
    植物の組織培養方法。
  5. 【請求項5】植物の組織又は細胞を請求項1乃至請求項
    4のいずれかの項記載の植物の組織培養方法によって培
    養し、得られた培養物より代謝産物を採取することを特
    徴とする代謝産物の生産方法。
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