JP3149568B2 - アンチスキッド制御装置 - Google Patents

アンチスキッド制御装置

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JP3149568B2
JP3149568B2 JP27506292A JP27506292A JP3149568B2 JP 3149568 B2 JP3149568 B2 JP 3149568B2 JP 27506292 A JP27506292 A JP 27506292A JP 27506292 A JP27506292 A JP 27506292A JP 3149568 B2 JP3149568 B2 JP 3149568B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は車両の制動時における車
輪のスリップ率を最適に制御するアンチスキッド制御装
置に関し、特に、低速走行時における制動性能を向上さ
せたものに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、アンチスキッド制御装置では、制
御対象となる車輪毎に車輪速度及び車輪加速度を算出す
る必要がある。この場合、通常、それらの車輪速度及び
加速度には、車輪速度センサの出力するパルス信号から
得られる速度に関する過去いくつかの値の加算平均(フ
ィルタリング)、即ち、車輪平均速度が用いられてい
る。
【0003】平均速度を用いることは、路面振動、車体
あるいは車速センサ取付け部の振動、車速センサ取付け
部の加工精度のばらつき等によって、車速センサの出力
信号がノイズ成分を多分に含むとこを考慮したものであ
り、ノイズ成分に影響されないアンチスキッド制御を可
能としている。
【0004】しかし、車速センサは単位回転量毎に1個
のパルス信号を出力するものであり、そのパルスの周期
から車輪瞬時速度が演算される。低速時にはパルス周期
が長くなるので、車速センサから得られる速度情報は、
速度が低下するに従って、その周期が長くなり過去に測
定された一定個数の瞬時速度の平均値で与えられる車輪
平均速度は真の速度に対して遅れるようになる。この結
果、ブレーキ圧を解除するタイミングが遅れる。
【0005】このため、特開昭60−35649号公報
に記載の装置では、アンチスキッド制御の基準となる推
定車体速度の初期値は車輪平均速度で与え、車輪のアン
チスキッド制御を行うために必要な現実の車輪速度は最
新の車輪瞬時速度で与えている。この結果、低速領域に
おける車輪速度及び車輪加速度の真の値に対する応答性
が向上し、車輪速度の落ち込み時における減圧タイミン
グも遅れることがなく、油圧の引き遅れによる車輪のロ
ック期間が長くなることを抑制することはできる。この
ことにより、上記装置は、ノイズ成分によ誤作動を防止
し精度の高い良好なアンチスキッド制御を行うことを可
能としている。
【0006】
【発明の解決しようとする課題】アンチスキッド制御装
置では、ブレーキ圧の減圧後に車輪速度が加速されて所
定の値に復帰される時、ブレーキ圧の増圧制御が行われ
車輪速度は再度低下する。上記の装置では、この時のブ
レーキ圧の増圧制御における増圧曲線は、高速時におけ
る車輪速度を平均値で与える場合を前提とする増圧曲線
に設定されており、速度によらず不変である。しかも、
車輪速度を平均値で与える場合を前提とする増圧曲線
は、平均値の応答遅れを考慮して、ブレーキ圧の過減圧
状態を補償するために増圧の勾配を大きめにするように
考慮されている。
【0007】このため、低速時には、車輪速度の復帰時
のブレーキ圧の増圧制御において、車輪速度が急激に落
ち込み過ぎる。しかも、車輪速度に車輪瞬時速度を用い
ているので、ブレーキ圧の減圧タイミングの遅れがな
い。この結果、ブレーキ圧の減圧、増圧の制御周期が短
くなり、アクチュエータの作動頻度が大きくなり、作動
音・ペダルキックバック・車体振動の増大の原因となっ
ている。
【0008】本発明は上記の課題を解決するために成さ
れたものであり、その目的は、アンチスキッド制御装置
において、低速時において、車輪ロック、復帰の制御周
期が必要以上に短周期になることを防止し、最適な制動
制御を行うことである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の発明の構成は、車両の車輪速度に応じて周期の変化す
るパルス信号を出力する車速センサの出力信号から車輪
瞬時速度及び車輪平均速度を演算し、制動対象車輪の速
度である車輪速度を、低速時には車輪瞬時速度とし、高
速時には車輪平均速度として、その車輪速度に応じてブ
レーキ圧の減圧時期、増圧時期を制御するようにしたア
ンチスキッド制御装置において、車体速度が所定値より
も低い低速度か、所定値より高い通常速度かを判定する
速度判定手段と、速度判定手段により車体速度が低速度
と判定された場合には、車輪速度が上昇して所定速度に
復帰した場合に、ブレーキ圧を増圧制御する時、ブレー
キ圧の増加特性の比較的緩い特性に基づいて、ブレーキ
圧の増圧制御を行う第1増圧制御手段と、速度判定手段
により車体速度が通常速度と判定された場合には、車輪
速度が上昇して所定速度に復帰した場合に、ブレーキ圧
を増圧制御する時、ブレーキ圧の増加特性の比較的急な
特性に基づいて、ブレーキ圧の増圧制御を行う第2増圧
制御手段と、を有するアンチスキッド制御装置。
【0010】
【作用】車体速度が通常速度である場合には制御に使用
される車輪速度は平均速度で与えられ、車体速度が低速
度である場合には、車輪速度は車輪瞬時速度で与えられ
る。そして、その車輪速度が所定値より小さくなった場
合に減圧制御が行われ、その車輪速度が上昇して所定値
に回復した場合に増圧制御が行われる。この増圧制御に
おいて、車体速度が通常速度であれば、比較的増圧特性
が急な特性で増圧され、車体速度が低速度であれば、そ
の特性よりは増加傾向が緩い特性で増圧制御される。
【0011】
【発明の効果】この結果、本発明では、車体速度が低速
度である場合に、車輪瞬時速度を用いているので、減圧
タイミングが遅延することがなく、車輪をロック状態又
はスリップ率の高い状態になる前に復帰させることがで
きる。そして、車体速度が低い場合には、車輪速度が
昇して所定速度に復帰した時に増圧制御する場合に、比
較的緩い増加特性で増圧制御しているので、急激な車輪
速度の落ち込みが防止される。この結果、ブレーキ圧の
減圧、増圧の制御周期を通常速度時と同様に長くするこ
とができ、アクチュエータの作動頻度を低下させ、作動
音・ペダルキックバック・車体振動を減少させることが
できる。よって、低速時における制御特性が最適とな
る。
【0012】
【実施例】
【0013】以下、本発明を具体的な実施例に基づいて
説明する。図2は、本実施例にかかるアンチスキッド制
御装置の全体の構成を示したブロック図である。10
は、マイクロコンピュータを備えた制御装置(EC
U)、20は車両の各車輪、30は制動力を発生するブ
レーキ系である。
【0014】ブレーキ系30は、ブレーキペダル31、
マスタシリンダ32、ポンプ33、アキュムレータ3
4、プレッシャレギュレータ35、ブレーキアクチュエ
ータ36、ホイールシリンダ37、およびブレーキディ
スク38を備える。そして、マスタシリンダ32の発生
油圧が各ホイールシリンダ37に加えられると共に、ブ
レーキアクチュエータ36に備えられた図示せぬ複数の
電磁弁により、各ホイールシリンダ37に加えられる油
圧が調整され、各ホイールシリンダ37の図示せぬ摩擦
部材とブレーキディスク38との摩擦力により制動力を
発生する。
【0015】ECU10は、駆動輪及び被駆動輪の各車
輪20に設けられた4つの車輪速度センサ51からの信
号、油圧センサ41からの信号、ブレーキスイッチ42
からの信号などを入力し、所定の演算処理により、ブレ
ーキアクチュエータ36に備えられた図示せぬ複数の電
磁弁を駆動して、各車輪20毎に設けられたホイールシ
リンダ37に与えられる油圧を調整する。
【0016】図3において、車輪速度センサ51は、車
輪と共に回転するシグナルロータ52と電磁ピックアッ
プ53とからなり、シグナルロータ52にはその周囲に
48個の歯が等間隔で設けられている。電磁ピックアッ
プ53の出力は、波形整形回路54に入力され、この波
形整形回路54の出力は、ECU10のマイクロコンピ
ュータに割り込み信号として入力される。電磁ピックア
ップ53は、シグナルロータ52の回転を、等間隔で設
けられた歯の通過に伴う磁界の変化として検出し、この
歯間隔の回転時間を周期とする交流信号を短形波に整形
し出力する。そして波形整形回路54は、この交流信号
を短形波に整形する。そして、例えばこの短形波の立ち
上がりを割り込み信号としてECU10に入力する。
【0017】次に、この実施例のアンチスキッド制御装
置1の作動を説明する。図4、図5、図6、図7および
図8は、ECU10に備えられたマイクロコンピュータ
の演算処理を示すフローチャートである。図4は、メイ
ンルーチンとなるアンチスキッド処理の概略を示すフロ
ーチャートである。このアンチスキッド処理は、ECU
10への電源供給と共に起動される。
【0018】ステップ100では、初期設定が行われ
る。ステップ200では、車輪速度VW を演算する。こ
の実施例では、4輪毎の制御を行うので、各輪毎の車輪
速度VW が演算される。ステップ300では、車輪加速
度AW が演算される。この実施例では、車輪速度同様、
4輪の各輪毎の車輪加速度AW が演算される。
【0019】ステップ400では、ステップ200、3
00でそれぞれ演算された車輪速度VW 、車輪加速度A
W 、に基づいて、アンチスキッド制御の開始の可否、お
よび、ブレーキアクチュエータ36の図示せぬ複数の電
磁弁の動作モードを演算する。例えば、ホイールシリン
ダ37の油圧を増、減、保持するような各電磁弁の動作
モードのうち、車輪の回転がロックしそうになると減、
そして回転が回復してくると増という具合のモードが演
算により求められる。
【0020】ステップ500では、ブレーキアクチュエ
ータ36にステップ400で求められた動作モードを指
令する信号を出力する。こうして、以後ステップ200
から500の処理が繰り返され、車輪をロックすること
なく、操縦性を確保した車両の制動が行われる。
【0021】なお、上述のステップ400、500の作
動は、制御系の構成により種々の方式があり、例えばス
テップ400で各ホイールシリンダ37の目標油圧を演
算し、ステップ500で各ホイールシリンダ37の油圧
を目標油圧に制御する油圧サーボとしての作動が行われ
るものでもよい。
【0022】図5は、波形整形回路54からの割り込み
信号毎に実行される車速パルス割り込み処理のフローチ
ャートである。ステップ900では、図9に示すように
所定の割り込み信号P1 から、所定時間ΔTS 経過後の
次の割り込み信号P2 までのパルス数NP と、経過時間
ΔTとを求める処理が行われる。この処理は、最初の割
り込み信号から始まって、ほぼΔTS 毎に繰り返され
る。すなわち、上記の一連のパルス数NP と経過時間Δ
Tとを計測後、割り込み信号P2 から再び計測が開始さ
れる。
【0023】図6は、図4のステップ200に示す車輪
速度VW の演算処理を示すフローチャートである。ステ
ップ201では、車輪瞬時速度V′W が演算される。車
輪瞬時速度V′Wは図5に示す車速パルス割り込みにて
カウントされるパルス信号数NP と、その経過時間ΔT
と係数Kとから次式 V′W =K・NP /ΔT より求められる。
【0024】ステップ202では、レジスタVX0の値が
レジスタVX1に、ステップ201にて算出された車輪瞬
時速度V′W がレジスタVX0にそれぞれ設定される。つ
まり過去いくつかの車輪瞬時速度V′W を記憶するため
のレジスタVX0、VX1の内容を更新する処理がなされる
のである。
【0025】次に、ステップ203において、現在の車
体速度から低速領域(例えば30Km /h以下)かどう
か判断する。低速領域でないと判断された場合は、ステ
ップ204で、フィルタリング処理が行われ、車輪速度
W が算出される。一方、ステップ203で低速領域と
判断された場合は、ステップ205で、VW =VX0と最
新の車輪瞬時速度に切り替えて車輪速度センサからの単
位時間当たりの入力パルスの少ない低速領域での車輪速
度の応答性を高める。
【0026】図7では、図4のステップ300に示す車
輪加速度AW の演算処理を示すフローチャートである。
ここで、本実施例においては、フィルタ処理手段として
デジタルフィルタを適用した例について説明する。ステ
ップ301では、前回算出された車輪瞬時速度VX1とそ
の車輪瞬時速度VX1を算出する際に用いられた経過時間
ΔTn-1 と、今回算出された車輪瞬時速度VX0と経過時
間ΔTn と係数Jから車輪瞬時加速度A′W が次式で演
算される。
【0027】
【数1】 A′W =2J・(VX0−VX1)/(ΔTn +ΔTn-1
【0028】ステップ302では、過去に算出された車
輪瞬時加速度及びデジタルフィルタ処理後の車輪加速度
のデータを格納するレジスタの内容が入替えられる。車
輪瞬時加速度のデータは、レジスタAX1の値がレジスタ
X2に、レジスタAX0の値がレジスタAX1に、また今回
算出されたA′W の値がレジスタAX0にそれぞれ格納さ
れ、デジタルフィルタ処理後の車輪加速度のデータは、
レジスタAX1の値がレジスタAX2に、さらに前回の処理
にて算出された車輪加速度AW がレジスタAw1に格納さ
れる。
【0029】ステップ303では、車輪速度の算出と同
様に車体速度が低速領域に存在するか否かが判定され
る。車体速度が低速領域でないと判定された場合は、ス
テップ304に進む。ステップ304では、通常速度領
域(車輪速度センサから出力されるパルス信号の単位時
間当たりのパルス数が十分な領域)の車輪瞬時加速度
A′W に対するフィルタ処理に適した遮断周波数fc1
が設定される。一方、ステップ303で、車体速度が低
速領域と判定された場合は、ステップ305に進み、低
速度領域(車輪速度センサから出力される単位時間当た
りのパルス数が十分でない領域)におけるフィルタ処理
に適した大きな遮断周波数fc2(>fc1)が設定され
る。または、フィルタ処理を行わないでAW =A′W
することもできる。
【0030】ステップ303では、ステップ304また
はステップ305にて設定された遮断周波数fcに応じ
て、デジタルフィルタの係数(ai , bj ):i=0,
1,2,j=1,2が算出される。デジタルフィルタ係
数(ai , bj )は、予め遮断周波数に応じて求められ
ており、g(fc)で示されるマップあるいは関数とし
てマイクロコンピュータに記憶されている。そして、デ
ジタルフィルタにおいては、その係数(ai , bj )を
変えることにより、フィルタ自体の特性を自在に変える
ことができるのである。
【0031】ステップ307では、過去の車輪瞬時加速
度AX2とAX1と今回の車輪瞬時加速度AX0と、過去のデ
ジタルフィルタ処理後の車輪加速度AX2とAX1と、ステ
ップ306にて選択されたフィルタ係数(ai , bj
によって次式に示すデジタルフィルタ処理が実行され、
車輪加速度AW が算出される。
【0032】
【数2】AW =a0 ・AX0+a1 ・AX1+a2 ・AX2
1 ・Aw1+b2 ・Aw2
【0033】上記フィルタ処理の遮断周波数を切り替え
るか、または、なくすことで、全ての速度領域にわたっ
て応答性を確保することができる。
【0034】つづいて、上記ステップ400で実行され
るアクチュエータ動作モード設定処理について、図8の
フローチャートに沿って説明する。まず、ステップ40
1で、現在、ストップスイッチ42がオン状態であるか
否かを判断し、ストップスィッチ42がオフ状態ならば
後述のステップ405に移行し、オン状態ならばステッ
プ402に進む。ステップ402では、制御フラグFCO
N がリセット状態であるか否か、すなわちアンチスキッ
ド制御がすでに実行状態であるか否かを判断する。そし
て、制御フラグFCON が1であり、アンチスキッド制御
がすで実行されていれば、後述のステップ410に移行
し、制御フラグFCON が0であり、アンチスキッド制御
が実行されていなければ、つづくステップ403に進
む。
【0035】ステップ403では、車輪速度VW が基準
車輪速度VS を下回っているか否かによってアンチスキ
ッド制御の実行条件が成立しているか否かを判断する。
そして、車輪速度VW が基準車輪速度VS 以上のときに
は、アンチスキッド制御の実行条件が成立していないと
判断して、ステップ405に進む。ステップ405で
は、油圧制御フラグFCON を0にリセットして、ステッ
プ406にすすんでアクチュエータ36の駆動を停止し
て処理を終了する。
【0036】一方、ステップ403にて、基準車輪速度
S を下回っている(スリップ率が目標スリップ率KS
より大きくなっている)と判断されると、アンチスキッ
ド制御の実行条件が成立したとして、ステップ404に
進み、その旨を表す油圧制御フラグFCON をセットし、
ステップ410に進む。
【0037】ステップ410では、車輪速度VW が基準
速度VS を下回っているか否かを判断する。車輪速度V
W が基準車輪速度VS 以上(スリップ率が目標スリップ
率KS 以下)と判断されると、ステップ450に移行
し、車輪速度VW が基準車輪速度VS 未満(スリップ率
が目標スリップ率KS より大きい)と判断されると、ス
テップ420に進む。
【0038】ステップ420では、車輪加速度AW が正
の加速度であるか否かを判断する。車輪加速度AW が正
の加速度(したがって、車輪速度VW が推定車体速度V
Cへ復帰中である)と判断されると、ステップ430に
進んで当該車輪に対応するアクチュエータ36の動作モ
ードとして保持モードを選択し、処理を終了する。つま
り、基準車輪速度VS 未満に下降した車輪速度VW が、
下降から上昇に転じたときには、保持モードを選択す
る。
【0039】また、ステップ420で車輪加速度AW
零以下(したがって、さらに車輪速度VW が下降してい
るとき、または下降し終わったとき)と判断されたとき
には、ステップ440に移行して当該車輪に対応するア
クチュエータ36の動作モードとして減圧モードを選択
し、処理を終了する。つまり、車輪速度VW が基準車輪
速度VS 未満に下降し、さらに下降し続けるときには、
減圧モードを選択して、車輪速度VW の低下を抑制し、
車輪20のロックを防止するのである。
【0040】一方、ステップ410で、車輪速度VW
基準車輪速度VS 以上(したがって、スリップ率が目標
スリップ率KS 以下)と判断されたときには、ステップ
450に進み、車輪速度・加速度の算出と同様に車体速
度が低速度領域かどうか判断する。低速度領域でないと
判断された場合は、ステップ460に進み、当該車輪に
対応するアクチュエータ36の動作モードとして、ホイ
ールシリンダ37に伝達される制動油圧を、車輪のスリ
ップの大きさで勾配を変化させる可変勾配増圧モードを
選択する。つまり、通常速度領域においては、各車輪の
スリップ(落ち込み)情報は、応答遅れが少ないので、
スリップが小さい領域では、増圧勾配を急峻にし、油圧
不足を即座に解消させることができ、スリップが大きい
領域では、増圧勾配を緩くして、高い油圧を保ち制動力
の向上が実現できる。
【0041】一方、ステップ450で、車体速度が低速
度領域と判断された場合は、ステップ470に移行し
て、当該車輪に対応するアクチュエータ36の動作モー
ドとして、ホイールシリンダ37に伝達される制動油圧
を緩やかに増圧する緩勾配増圧モードを選択する。つま
り、低速度領域では、ステップ200および300で車
輪速度・加速度の応答性を高めることによってステップ
440の減圧モードになるタイミングが早くなっている
ので、このステップ470の緩勾配増圧モードの作用に
より緩やかな増圧勾配で高い油圧レベルを長く保ちつ
つ、アクチュエータの作動頻度を抑えることが実現でき
る。
【0042】そして、上記のように、すべての車輪20
に対してアクチュエータ36の動作モード(保持・減圧
・可変勾配増圧・緩勾配増圧モード)が設定される。
【0043】つぎに、アンチスキッド制御が実行される
実施例の車両での制動動作について、図1に基づいて説
明する。図1の(a)には車輪速度VW の推移を、
(b)には、車輪加速度AW の推移を、(c)にはソレ
ノイド出力の推移を、(d)には、ホイールシリンダ油
圧の推移を示した。また、(a)〜(d)それぞれにつ
いて、本発明による制御の推移と、従来の制御の推移と
を表示して比較できるようにした。
【0044】本発明では、低速度領域において、車両の
制動が開始され、車輪瞬時速度V′W で与えられた車輪
速度VW が低下し基準速度VS 以下になると(時刻
10)、減圧モードが選択されて制動油圧が減圧され
る。その後、制動油圧の減圧により車輪速度VW が上昇
し始めると(時刻T20)、保持モードが選択されて制動
油圧が一定に保たれる。即ち、本発明では、減圧タイミ
ング(時刻T10)が遅れていないので、破線に示すよう
に、車輪速度Vw は零(車輪のロック状態)に至る前
に、車体速度に向けて回復することになる。
【0045】これに対して、従来の制御方法では、車輪
速度Vw が車輪瞬時速度V′W より遅れた平均速度で与
えられているので、その平均速度が基準速度VS 以下と
なる時刻S10は、車輪瞬時速度V′W が零(車輪のロッ
ク状態)付近である。また、車輪加速度Aw が平均加速
度で与えられているので、ロック後の復帰、即ち、平均
加速度が正となるタイミングS30は、瞬時車輪加速度
A′w が正となるタイミングS20に比べて遅れる。よっ
て、図1の(c)、(d)の曲線c、bに示すように、
時刻S10〜時刻S30の間、減圧される。このため、必要
以上に減圧が行われ、次の増圧制御を急激なものにしな
ければならなくなる。このように、従来の方法では、減
圧タイミングが遅延することより、車輪は、ロック状態
又は最適スリップ率よりも大きなスリップ状態となる期
間が長く存在することになる。
【0046】本発明では、車輪速度VW が図1の(a)
の破線に示すように上昇し続けて基準速度VS を越える
と(時刻T30)、低速度領域では緩勾配増圧モードが選
択されて制動油圧が図1の(d)の曲線aに示すように
緩やかに増圧される。この増圧によって、図1の(a)
の破線に示すように車輪速度VW の上昇が抑えられ下降
し始める。ここで、車輪落ち込み(時刻T10)の早期発
見により高い油圧レベルを維持しながら、ゆるやかな勾
配で増圧していくので、車輪のスリップは適切なレベル
が維持でき、再落ち込みに至るまでの時間も長い。
【0047】これに対して、従来方法では、減圧後(時
刻S10)の車輪復帰(時刻S30)により、急峻な増圧勾
配の増圧が与えられ、車輪速度の再落ち込みが短期間で
生じる。
【0048】以上の述べたように、本発明は、低速度領
域において、制御演算に用いる車輪速度及び加速度に車
輪瞬時速度、瞬時加速度を用いており、車輪速度が復帰
した時には、増圧勾配の緩やかな増圧特性でブレーキ圧
を増加させる。一方、通常速度領域では、制御演算に用
いる車輪速度及び加速度に車輪平均速度、平均加速度を
用いており、車輪速度が復帰した時には、その時のスリ
ップ率に応じて増圧勾配の急な増圧特性でブレーキ圧を
増加させるように制御している。よって、図1の(a)
に示すように従来制御に比べて、ホイールシリンダ油圧
の変動が少なく、作動頻度の少ない安定したソレノイド
駆動が行われ、作動音・ペダルキックバック・車体振動
を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の具体的な実施例にかかるアンチスキッ
ド制御装置の動作特性を説明した特性図。
【図2】本発明の具体的な実施例にかかるアンチスキッ
ド制御装置の構成を示したブロック図。
【図3】車輪速度センサの構成を示したブロック図
【図4】本実施例装置のメインの制御手順を示したフロ
ーチャート。
【図5】本実施例装置の車輪速度の検出手順を示したフ
ローチャート。
【図6】本実施例装置の車輪速度の設定手順を示したフ
ローチャート。
【図7】本実施例装置の車輪加速度の設定手順を示した
フローチャート。
【図8】本実施例装置のブレーキ圧の制御手順を示した
フローチャート。
【図9】車輪速度センサの出力するパルス信号を示した
波形図。
【符号の説明】
10…ECU(速度判定手段、第1増圧制御手段、第2
増圧制御手段) 51…車輪速度センサ ステップ203、303、450…速度判定手段 ステップ470…第1増圧制御手段 ステップ460…第2増圧制御手段
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−35649(JP,A) 特開 平1−311942(JP,A) 特開 平4−201772(JP,A) 特開 昭61−287851(JP,A) 特開 昭64−28060(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60T 7/12 - 8/96

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両の車輪速度に応じて周期の変化する
    パルス信号を出力する車速センサの出力信号から車輪瞬
    時速度及び車輪平均速度を演算し、制動対象車輪の速度
    である車輪速度を、低速時には車輪瞬時速度とし、高速
    時には車輪平均速度として、その車輪速度に応じてブレ
    ーキ圧の減圧時期、増圧時期を制御するようにしたアン
    チスキッド制御装置において、 車体速度が所定値よりも低い低速度か、所定値より高い
    通常速度かを判定する速度判定手段と、 前記速度判定手段により前記車体速度が低速度と判定さ
    れた場合には、前記車輪速度が上昇して所定速度に復帰
    した場合に、前記ブレーキ圧を増圧制御する時、ブレー
    キ圧の増加特性の比較的緩い特性に基づいて、ブレーキ
    圧の増圧制御を行う第1増圧制御手段と、 前記速度判定手段により前記車体速度が前記通常速度と
    判定された場合には、前記車輪速度が上昇して所定速度
    に復帰した場合に、前記ブレーキ圧を増圧制御する時、
    ブレーキ圧の増加特性の比較的急な特性に基づいて、ブ
    レーキ圧の増圧制御を行う第2増圧制御手段と、 を有するアンチスキッド制御装置。
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