JP3148573B2 - 耐食性のすぐれたR−Fe−B−C系永久磁石材料の製造方法 - Google Patents

耐食性のすぐれたR−Fe−B−C系永久磁石材料の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、耐食性および結晶配
向性にすぐれた高性能のR−Fe−B−C系永久磁石材
料の製造方法に係り、ストリップキャスティング法によ
り得られた所要組成の鋳片あるいは粗粒を粗粉砕、微粉
砕後、微粉末をモールド内に特定の充填密度に充填し、
瞬間的にパルス磁界を繰り返し磁界方向を反転させて付
加して配向後、冷間静水圧プレス、焼結、時効処理する
製造方法であり、特に微粉砕紛の成形を静磁界中で冷間
静水圧プレスにて行うことにより、すぐれた配向性、磁
気特性を有する高性能な耐食性のすぐれたR−Fe−B
−C系永久磁石材料を得る製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】今日、高性能永久磁石として代表的なR
−Fe−B系永久磁石(特開昭59−46008号)
は、三元系正方晶化合物の主相とRリッチ相を有する組
織にて高い磁石特性が得られ、一般家庭の各種電器製品
から大型コンピュータの周辺機器まで幅広い分野で使用
され、用途に応じた種々の磁石特性を発揮するよう種々
の組成のR−Fe−B系永久磁石が提案されている。
【0003】前記R−Fe−B系永久磁石は極めてすぐ
れた磁気特性を有するが、耐食性、温度特性の点で問題
があり、従来よりR−Fe−B系永久磁石の耐食性の改
善のため、磁石表面に耐食性金属膜や樹脂膜を被覆する
方法が提案され(特開昭60−54406号公報、特開
昭60−63901号公報)、また磁石の磁気特性の温
度特性の改善のため、磁石組成のFeの1部をCoにて
置換することが提案(特開昭59−64733号公報)
されているが、未だ十分でなく、且つ、磁石のコスト上
昇を招来する問題があった。
【0004】最近、R−Fe−B系磁石のBの一部をC
で置換して耐食性のすぐれた境界相を生成させて、耐食
性の改善向上、温度特性の向上を図ったR−Fe−B−
C系磁石が提案(特開平3−82744号公報)されて
いる。前記R−Fe−B−C系磁石は、合金溶湯を鋳型
に鋳込んで鋳塊を作製後、該鋳塊を粉砕、成型、焼結、
時効処理の粉末冶金法により磁石化したり、あるいは前
記鋳塊または鋳塊の粉砕後の粗粉を溶体化処理後、粉砕
して、前記の粉末冶金法により磁石化して、耐食性及び
温度特性の改善向上を図ったが、R−Fe−B−C系磁
石の磁気特性は(BH)maxがたかだか38MGOe
程度であった。
【0005】また、鋳塊粉砕法によるR−Fe−B系合
金粉末の欠点たる結晶粒の粗大化、α−Feの残留、偏
析を防止するために、R−Fe−B系合金溶湯を双ロー
ル法により、0.03mm〜10mm板厚の鋳片とな
し、前記鋳片を通常の粉末冶金法に従って、鋳片をスタ
ンプミル・ジョークラッシャーなどで粗粉砕後、さらに
ディスクミル、ボールミル、アトライター、ジェットミ
ルなどの粉砕法により平均粒径が3〜5μmの粉末に微
粉砕後、磁場中プレス、焼結、時効処理して、高性能化
を図る製造方法が提案(特開昭63−317643号公
報)されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、R−F
e−B系永久磁石材料に対するコストダウンの要求が強
く、効率よく高性能永久磁石用原料粉末を製造すること
が極めて重要になっている。このため、極限に近い特性
を引き出すための製造条件の改良が必要となっている。
また、今日の電気、電子機器の小型・軽量化ならびに
(BH)max40MGOe以上の高機能化の要求は強
く、R−Fe−B系永久磁石のより一層の高性能化とコ
ストダウンが要求されている。
【0007】そこで、出願人は先に、効率よい微粉砕を
可能にし、かつ耐酸化性に優れ、しかも磁石の結晶粒の
微細化により高いiHcを発現し、さらに各結晶粒の磁
化容易方向の配向度を高めて、高性能R−Fe−B系永
久磁石材料の製造方法の提供を目的に、ストリップキャ
スティング法により得られた特定板厚のR−Fe−B系
合金鋳片をH2吸蔵崩壊法により得られた粗粉砕粉を不
活性ガス気流中でジェットミル粉砕して得られた微粉末
を成型型内に特定の充填密度に充填後、瞬間的に特定方
向のパルス磁界を付加して、配向後、成型、焼結、時効
処理に高性能のR−Fe−B系永久磁石を得る製造方法
を提案(特願平5−192886号)した。
【0008】さらに、R−Fe−B系永久磁石の高性能
化を目的に、モールド内への充填性の向上、配向性の向
上等を考慮すると、例えば、前記方法で得られた微粉末
にプレス成型前に潤滑剤を添加配合しても、微粉末表面
に均一に潤滑剤を被覆することは極めて困難であり、ま
た、プレス成型時の単位当たりの重量バラツキや割れな
どの不良を発生する恐れがあった。
【0009】この発明は、耐食性にすぐれ、磁気特性の
改善向上を図ったR−Fe−B−C系永久磁石材料の製
造方法における問題点を解消し、前述のストリップキャ
スティング法で得られた微粉砕粉を用いて、プレス充填
性にすぐれ、さらに各結晶粒の磁化容易方向の配向度を
高めて、(BH)maxが42MGOe以上の耐食性の
すぐれた高性能R−Fe−B−C系永久磁石材料が得ら
れる製造方法の提供を目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】発明者らは、ストリップ
キャスティング法で得られたR-Fe-B-C系合金粉であって
も、プレス充填性にすぐれ、さらに各結晶粒の磁化容易
方向の配向度を高めて高性能化を図ると共に耐食性のす
ぐれた焼結磁石の製造方法を目的に、粉砕方法、充填方
法、成形方法、磁場中配向方法について、それぞれ種々
検討した結果、得られた鋳片を機械粉砕法あるいはH2
蔵崩壊法により粗粉砕後、機械粉砕法あるいはジェット
ミル粉砕法にて微粉砕して得られる、例えば平均粒度1.
0μm〜10μmとなした微粉砕粉を、例えばモールド内に
充填密度1.4〜3.5g/cm3に充填後、磁界強度10kOe以上の
パルス磁界を瞬間的に磁界方向を反転させて繰り返し付
加後、冷間静水圧プレスを静磁場中で行うことにより、
耐食性及び配向性にすぐれ、特に磁気特性の(BH)maxが4
2MGOe以上を示す高性能の磁石材料が得られることを知
見した。
【0011】この発明は、ストリップキャスティング法
により得られた板厚0.03mm〜10mmの鋳片を粉
砕して得られたR(但しRはYを含む希土類元素のう
ち、少なくとも1種)10at%〜30at%、B+C
=4〜15at%(但し、B、2at%以下)、残部F
e(但しFeの1部をCo、Niの1種または2種にて
置換できる)を主成分とする微粉末をモールド内に充填
密度1.4〜3.5g/cm3に充填し、瞬間的に10
kOe以上のパルス磁界を反転させて付加して配向させ
た後、冷間静水圧プレスし、その後焼結、時効処理する
ことを特徴とする耐食性にすぐれたR−Fe−B−C系
永久磁石材料の製造方法である。
【0012】また、この発明は、上記構成において、磁
石用原料微粉末が、ストリップキャスティング法により
得られた鋳片を機械粉砕法あるいはH2吸蔵崩壊法によ
り粗粉砕後、機械粉砕法あるいはジェットミル粉砕法に
て微粉砕して得られるR−Fe−B−C系永久磁石材料
の製造方法を併せて提案する。さらに、この発明は、上
記構成において、冷間静水圧プレスを静磁界中で行う耐
食性にすぐれたR−Fe−B−C系永久磁石材料の製造
方法を併せて提案する。
【0013】この発明において、ストリップキャスティ
ング法による鋳片は、特定組成の合金溶湯を単ロール
法、あるいは双ロール法によるストリップキャスティン
グ法にて製造される。得られた鋳片は板厚が0.03m
m〜10mmの薄板材であり、所望の鋳片板厚により、
単ロール法と双ロール法を使い分けるが、板厚が厚い場
合は双ロール法を、また板厚が薄い場合は単ロール法を
採用したほうが好ましい。
【0014】鋳片の板厚を0.03mm〜10mmに限
定した理由は、0.03mm未満では急冷効果が大とな
り、結晶粒径が3μmより小となり、粉末化した際に酸
化しやすくなるため、磁気特性の劣化を招来するので好
ましくなく、また10mmを超えると、冷却速度が遅く
なり、α−Feが晶出しやすく、結晶粒径が大となり、
Ndリッチ相の偏在も生じるため、磁気特性が低下する
ので好ましくないことによる。
【0015】R−Fe−B系磁石のBの1部をCで置換
したR−Fe−B−C系磁石の主相は、R2Fe14B正
方晶化合物のBの1部がCで置換されたR2Fe14(B
1-xx)正方晶化合物となり、結晶構造は変化しない。
この発明のストリップキャスティング法により得られた
特定組成のR−Fe−B−C系合金の断面組織は、主相
のR2Fe14(B1-xx)正方晶結晶が従来の鋳型に鋳
造して得られた鋳塊のものに比べて約1/10以上も微
細であり、例えば、その短軸方向の寸法は0.1μm〜
50μm、長軸方向は5μm〜200μmの微細結晶で
あり、かつその主相結晶粒を取り囲むようにRリッチ相
が微細に分散されており、局部的に偏在している領域に
おいても、その大きさは20μm以下である。
【0016】この発明において、粗粉砕のH2吸蔵処理
は、例えば、所定大きさに破断した0.03mm〜10
mm厚みの鋳片を原料ケース内に挿入し、上記原料ケー
スを蓋を締めて密閉できる容器内に装入して密閉したの
ち、容器内を十分に真空引きした後、200Torr〜
50kg/cm2の圧力のH2ガスを供給して、該鋳片に
2を吸蔵させる。このH2吸蔵反応は、発熱反応である
ため、容器の外周には冷却水を供給する冷却配管が周設
して容器内の昇温を防止しながら、所定圧力のH2ガス
を一定時間供給することにより、H2ガスが吸収されて
該鋳片は自然崩壊して粉化する。さらに、粉化した合金
を冷却したのち、真空中で脱H2ガス処理する。
【0017】この発明において、上記処理容器内を予め
不活性ガスで空気を置換し、その後H2ガスで不活性ガ
スを置換してもよい。またH2ガス圧力は、200To
rr未満では粉化性が悪くなり、50kg/cm2を超
えるとH2吸収による粉化の点では好ましいが、装置や
作業の安全性からは好ましくないため、H2ガス圧力は
200Torr〜50kg/cm2とする。量産性から
は、2kg/cm2〜10kg/cm2が好ましい。この
発明において、H2吸蔵による粉化の処理時間は、前記
密閉容器の大きさ、破断塊の大きさ、H2ガス圧力によ
り変動するが、5分以上は必要である。
【0018】H2吸蔵により粉化した合金粉末を冷却
後、真空中で1次の脱H2ガス処理する。さらに、真空
中またはアルゴンガス中において、粉化合金を100℃
〜750℃に加熱し、0.5時間以上の2次脱H2ガス
処理すると、長期保存に伴う粉末あるいはプレス成形体
の酸化を防止して、得られる永久磁石の磁気特性の低下
を防止できる。この発明による100℃以上に加熱する
脱水素処理は、すぐれた脱水素効果を有しているために
上記の真空中での1次脱水素処理を省略し、崩壊粉を直
接100℃以上の真空中またはアルゴンガス雰囲気中で
脱水素処理してもよい。
【0019】すなわち、前述したH2吸蔵反応用容器内
でH2吸蔵・崩壊反応させた後、得られた崩壊粉を続い
て同容器の雰囲気中で100℃以上に加熱する脱水素処
理を行うことができる。あるいは、真空中での脱水素処
理後、処理容器から取り出して崩壊粉を微粉砕したの
ち、再度処理容器で100℃以上に加熱するこの発明の
脱水素処理を施してもよい。上記の脱水素処理における
加熱温度は、100℃未満では崩壊合金粉内に残存する
2を除去するのに長時間を要して量産的でない。ま
た、750℃を超える温度では液相が出現し、粉末が固
化してしまうため、微粉砕が困難になったり、プレス時
の成形性を悪化させるので、焼結磁石の製造の場合には
好ましくない。また、焼結磁石の焼結性を考慮すると、
好ましい脱水素処理温度は200℃〜600℃である。
また、処理時間は処理量によって変動するが0.5時間
以上は必要である。
【0020】前記処理の合金粉末は粒内に微細亀裂が内
在するので、ボールミルなどの機械粉砕、ジェットミル
などで短時間で微粉砕され、1μm〜80μmの所要粒
度の合金粉末を得ることができるが、所要組成の粗粉砕
粉に特定の液状または固状潤滑剤を混合してジェットミ
ル粉砕することにより、微粉砕後、微粉末表面に均一に
潤滑剤が被覆され、粉砕能率を向上させるとともにプレ
ス充填性の改善とともに従来のプレス成型時の重量バラ
ツキや割れ不良が防止され、しかも配向性にすぐれた磁
石を得ることができる。
【0021】この発明において、微粉砕前に添加配合の
液状潤滑剤は少なくとも1種の飽和あるいは不飽和脂肪
酸類エステル、並びに酸性酸としてほう酸エステルなど
を用いて、石油系溶剤やアルコール系溶剤に分散させて
用いる。液状潤滑剤中の脂肪酸エステル量は5wt%〜
50wt%が好ましい。
【0022】飽和脂肪酸エステルとしては、一般式 RCOOR′ R=Cn2n+2 (アルカン) で表されるエステルで、不飽和脂肪酸エステルとして
は、一般式 R=Cn2n (アルケン) RCOOR′ または R=Cn2n-2 (アルキン) で示される。
【0023】また、固状潤滑剤としては、ステアリン酸
亜鉛、ステアリン酸銅、ステアリン酸アルミニウム、エ
チレンビニアマイドなどの少なくとも1種であり、固状
潤滑剤の平均粒度は1μm未満では工業的に生産するこ
とが困難で、また50μmを越えると粗粉砕粉と均一に
混合することが難しいので、平均粒度としては1μm〜
50μmが好ましい。
【0024】この発明において、液状潤滑剤または固状
潤滑剤の添加量は0.02wt%未満では粉末粒子への
均一な被覆が十分でなく、プレス充填性や磁気配向性の
改善向上が認められず、また、5wt%を越えると潤滑
剤中の不揮発残分が焼結体中に残存して、焼結密度の低
下を生じ、磁気特性の劣化を招来するので好ましくな
く、潤滑剤の添加量は0.02wt%〜5wt%とす
る。
【0025】この発明において、粗粉砕粉の平均粒度を
10μm〜500μmに限定した理由は、平均粒度は1
0μm未満では原料粉末を大気中で安全に取り扱うこと
が困難であり、原料粉末の酸化により磁気特性が劣化す
るので好ましくなく、また、500μmを超えるとジェ
ットミル粉砕機への原料粉末の供給が困難となり、粉砕
能率を著しく低下するので好ましくないため、粗粉砕粉
の平均粒度は10μm〜500μmとする。
【0026】次に微粉砕には、不活性ガス(例えば、N
2、Ar)によるジェット・ミルにて微粉砕を行う。勿
論、有機溶媒(例えば、ベンゼンやトルエン等)を用い
たボールミルや、アトライター粉砕を用いることも可能
である。また、この発明による微粉砕の平均粒度は、
1.0μm未満では粉末は極めて活性となり、プレス成
型などの工程において発火する危険性があり、磁気特性
の劣化を生じ好ましくなく、また、10μmを超えると
焼結により得られる永久磁石の結晶粒が大きくなり、容
易に磁化反転が起こり、保磁力の低下を招来し、好まし
くないため、1.0μm〜10μmの平均粒度とする。
好ましい平均粒度は2.5μm〜4μmである。
【0027】微粉砕した粉末は、好ましくは不活性ガス
雰囲気中でモールドに充填する。モールドは非磁性の金
属、酸化物、セラミックスなどから作製したもののほ
か、プラスチックやゴムなどの有機化合物でもよい。粉
末の充填密度は、その粉末の静止状態の嵩密度(充填密
度1.4g/cm3)から、タッピング後の嵩密度(充
填密度3.5g/cm3)の範囲が好ましい。従って充
填密度1.4〜3.5g/cm3に限定する。
【0028】一般に永久磁石においては、主相結晶粒の
磁化容易軸方向を揃える、すなわち、配向度を高めるこ
とも高Br化を達成するための必須条件である。そのた
め、粉末冶金的手法で製造される永久磁石材料、たとえ
ば、ハードフェライト磁石、Sm−Co磁石ならびにR
−Fe−B磁石では、その粉末を磁界中でプレスする方
式が採られている。しかしながら、磁界を発生させるた
めに通常のプレス装置(油圧プレス、機械プレス)に配
置されているコイルおよび電源では、たかだか10kO
e〜20kOeの磁界しか発生させることができず、よ
り高い磁界を発生させるためには、コイルの巻数を多く
する必要があり、また高い電源を必要とするための装置
の大型化を必要とする。
【0029】本発明者らは、プレス時の磁界強度と焼結
体のBrとの関係を解析したところ、磁界強度を高くす
ればするほど、高Br化でき、瞬間的に強磁界を発生さ
せることの可能なパルス磁界を等方向に付加することに
よって、より一層高Br化でき、さらに、パルス磁界を
磁界方向を交互に反転させて繰り返し付加することによ
り、等方向に付加したパルス磁界に比し、原料粉末の結
晶配向度が一段と改善向上し、磁気特性は一段と向上す
ることを知見した。パルス磁界を用いる方法において
は、磁界方向を交互に反転させて繰り返し付加するパル
ス磁界で瞬間的に配向させることが重要で、さらに、粉
末を冷間静水圧プレスによって成形することが可能であ
り、また、冷間静水圧プレス時に静磁場中で行うことに
より、結晶配向性は一段と改善向上する。
【0030】この発明において、反転繰り返し型パルス
磁界は、空心コイル、コンデンサー電源により発生し、
パルス磁場の強度は10kOe以上、好ましくは20〜
60kOeで、従来の等方向のパルス磁界の強度より低
い磁界強度の付加でも同等の効果が得られる。パルス磁
界の1波形の時間は1μsec〜10secが好まし
く、さらに好ましくは5μsec〜100msecであ
り、パルス磁界の反転繰り返し型波形は電圧を逆方向に
付加することにより得られ、パルス磁界の反転繰り返し
付加回数は1〜10回、好ましくは1〜5回である。ま
た、この発明におけるパルス磁界の波形は同じ強度の波
形の反転繰り返しでもよいが、パルス磁界の波形のピー
ク値は最初より漸次減少する値で付加してもよい。
【0031】また、この発明において、配向させた後、
通常の磁界中プレス方法で成形するが、配向後の粉末を
冷間静水圧プレスによって成形することが好ましい。こ
の際、ゴムなどの可塑性のあるモールドを使用した場合
には、そのまま冷間静水圧プレス成形を行うことが可能
である。冷間静水圧プレス成形を行うことは、大型磁石
材料の製造に最適な方法である。冷間静水圧プレス条件
としては、プレス圧 1ton/cm2〜3ton/c
2が好ましく、モールドの硬度はシェアー硬度Hs=
20〜80が好ましい。冷間静水圧プレス時の静磁界の
強度は5〜20kOeが好ましい。また、冷間静水圧プ
レスを静磁界中で行うこともでき、例えば、配向に際し
て、同一の磁界強度で繰り返し反転させて印加した後、
配向後の粉体に静磁界中で冷間静水圧プレスを施すこと
により、さらにBrの高い高性能R−Fe−B−C系永
久磁石材料を得ることが可能である。
【0032】この発明において、成形、焼結、熱処理な
ど条件、方法は公知のいずれの粉末冶金的手段を採用す
ることができる。以下に好ましい条件の一例を示す。成
形は、公知のいずれの成形方法も採用できるが、冷間静
水圧プレスにて圧縮成形を行なうことが好ましい。焼結
前には、真空中で加熱する一般的な方法や、水素流気中
で100〜200℃/時間で昇温し、300〜600℃
で1〜2時間程度保持する方法などにより脱バインダー
処理を行なうことが好ましい。脱バインダー処理を施す
ことにより、バインダー中の炭素が脱炭され、磁気特性
の向上に繋がる。
【0033】なお、R元素を含む合金粉末は、水素を吸
蔵しやすいために、水素流気中での脱バインダー処理後
には脱水素処理工程を行なうことが好ましい。脱水素処
理は、真空中で昇温速度は、50〜200℃/時間で昇
温し、500〜900℃で1〜2時間程度保持すること
により、吸蔵されていた水素はほぼ完全に除去される。
また、脱水素処理後は、引き続いて昇温加熱して焼結を
行うことが好ましく、500℃を超えてからの昇温速度
は任意に選定すればよく、例えば100〜300℃/時
間など、焼結に際して取られる公知の昇温方法を採用で
きる。配向後の成形品の焼結並びに焼結後の熱処理条件
は、選定した合金粉末組成に応じて適宜選定されるが、
焼結並びに焼結後の熱処理条件としては、1000〜1
180℃、1〜6時間保持する焼結工程、450〜95
0℃、1〜8時間保持する時効処理工程などが好まし
い。
【0034】以下に、この発明における、R−Fe−B
−C系永久磁石合金用鋳片の組成限定理由を説明する。
この発明の永久磁石合金用鋳片に含有される希土類元素
Rはイットリウム(Y)を包含し、軽希土類及び重希土
類を包含する希土類元素である。Rとしては、軽希土類
をもって足り、特にNd,Prが好ましい。また通常R
のうち1種をもって足りるが、実用上は2種以上の混合
物(ミッシュメタル、ジジム等)を入手上の便宜などの
理由により用いることができ、Sm,Y,La,Ce,
Gd等は他のR、特にNd,Pr等との混合物として用
いることができる。なお、このRは純希土類元素でなく
てもよく、工業上入手可能な範囲で製造上不可避な不純
物を含有するものでも差し支えない。Rは、R−Fe−
B−C系永久磁石の必須元素であって、10原子%未満
では高磁気特性、特に高保磁力が得られず、30原子%
を超えると残留磁束密度(Br)が低下して、すぐれた
特性の永久磁石が得られない。よって、Rは10原子%
〜30原子%の範囲とする。
【0035】B及びCは、R−Fe−B−C系永久磁石
の必須元素であってB+Cが4原子%未満では高い保磁
力(iHc)が得られず、15原子%を超えると残留磁
束密度(Br)が低下するため、すぐれた永久磁石が得
られず、また、B2at%以上ではすぐれた耐食性を有
する永久磁石が得られない。よって、B+Cは4原子%
〜15原子%(但し、B2at%以下)の範囲とする。
【0036】Feは、55原子%未満では残留磁束密度
(Br)が低下し、86原子%を超えると高い保磁力が
得られないので、Feは55原子%〜86原子%に限定
する。また、Feの一部をCo、Niの1種または2種
で置換する理由は、永久磁石の温度特性を向上させる効
果及びさらに耐食性を向上させる効果が得られるためで
あるが、Co、Niの1種または2種はFeの50%を
超えると高い保磁力が得られず、すぐれた永久磁石が得
られない。よって、Co,Niの1種または2種の置換
はFeの50%を上限とする。
【0037】この発明の合金鋳片において、高い残留磁
束密度と高い保磁力と高耐食性を共に有するすぐれた永
久磁石を得るためには、R12原子%〜18原子%、B
+C=5〜10at%(但しB2at%以下)、Fe7
2原子%〜83原子%が好ましい。また、この発明によ
る合金鋳片は、C、R、B、Feの他、工業的生産上不
可避的不純物の存在を許容できるが、B+Cの一部を、
3.5原子%以下のP、2.5原子%以下のS、3.5
原子%以下のCuのうち少なくとも1種、合計量で4.
0原子%以下で置換することにより、磁石合金の製造性
改善、低価格化が可能である。
【0038】さらに、前記R、B、Fe、Cを含有する
R−Fe−B−C合金に、9.5原子%以下のAl、
4.5原子%以下のTi、9.5原子%以下のV、8.
5原子%以下のCr、8.0原子%以下のMn、5原子
%以下のBi、12.5原子%以下のNb、10.5原
子%以下のTa、9.5原子%以下のMo、9.5原子
%以下のW、2.5原子%以下のSb、7原子%以下の
Ge、7原子%以下のGa、3.5原子%以下のSn、
5.5原子%以下のZr、5.5原子%以下のHfのう
ち少なくとも1種添加含有させることにより、R−Fe
−B−C系永久磁石合金の高保磁力が可能になる。この
発明のR−B−Fe−C系永久磁石において、結晶相は
主相が正方晶であることが不可欠であり、特に、微細で
均一な合金粉末を得て、すぐれた磁気特性を有する焼結
永久磁石を作製するのに効果的である。
【0039】
【作用】この発明は、ストリップキャスティング法によ
り得られた鋳片を機械粉砕法あるいはH2吸蔵崩壊法に
より粗粉砕化した後、粗粉砕粉に固状あるいは液状潤滑
剤を添加配合後、微粉砕時にジェットミル粉砕して、合
金塊を構成している主相の結晶粒及びRリッチ相を細分
化すると共に、粒度分布が均一な粉末を得ることがで
き、この際、Rリッチ相が微細に分散され、かつR2
14(B1-xx)相も微細化され、特に脱H2処理によ
り安定化させた合金粉末に特定の潤滑剤を添加配合後、
微粉砕した場合は、微粉砕能は従来の約2倍に向上する
ため、製造効率が大幅に向上するとともに、前記微粉末
を型内に充填後、瞬間的に反転繰返しパルス磁界を付加
して、粉末の結晶粒を配向した後、冷間静水圧プレス
時、特に静磁場中で成形後、焼結することにより、耐食
性にすぐれ、プレス充填性及び磁場配向性は改善され、
磁石合金の磁気特性のBr及びiHcが向上し、特に
(BH)maxが42MGOe以上の耐食性にすぐれた
R−Fe−B−C系永久磁石が得られる。
【0040】
【実施例】
実施例1 高周波溶解炉にて溶解して得られた13.0Nd−1.
5Dy−10Co−1.5B−5.5C−68.5Fe
組成の合金溶湯を直径200mmの銅製ロール2本を併
設した双ロール式ストリップキャスターを用い、板厚約
1mmの薄板状鋳片を得た。前記鋳片内の結晶粒径は短
軸方向の寸法0.5μm〜15μm、長軸方向寸法は5
μm〜80μmであり、Rリッチ相は主相を取り囲むよ
うに3μm程度に微細に分離して存在する。前記鋳片を
50mm角以下に破断後、前記破断片1000gを吸排
気可能な密閉容器内に収容し、前記容器内にN2ガスを
30分間流入して、空気と置換した後、該容器内に3k
g/cm2のH2ガスを2時間供給してH2吸蔵により鋳
片を自然崩壊させて、その後真空中で500℃に5時間
保持して脱H2処理した後、室温まで冷却し、さらに1
00メッシュまで粗粉砕した。
【0041】次いで、前記粗粉砕粉をジェットミルで粉
砕して平均粒度3μmの微粉末を得た。得られた合金粉
末を用いて、ゴム質のモールドに原料粉末を充填し、パ
ルス磁界として強度50kOe、パルス磁界の反転繰り
返し付加回数4回、パルス磁界の1波形の時間8sec
の条件にて付加後、プレス圧1.0ton/cm2にて
冷間静水圧プレスした。モールドから取り出した成型体
を1040℃に3時間焼結後、900℃に1時間の時効
処理を行い、永久磁石を得た。得られた永久磁石の磁気
特性と耐食性試験結果を表1に示す。耐食性試験は80
℃×90%RH×500時間放置後の単位面積当たりの
酸化増量で示す。
【0042】実施例2 実施例1と同一組成、同一条件にて得られた粗粉砕粉に
液状潤滑剤として脂肪酸エステル(有効成分50% シ
クロヘキサン50%)を1wt%添加配合後、7kg/
cm2のArガス中にてジェットミル微粉砕して、平均
粒度3.2μmの合金粉末を得た。得られた微粉末を実
施例1と同一条件の反転繰り返しパルス磁界を付加後、
冷間静水圧プレス及び焼結、時効処理を行い、得られた
永久磁石の磁気特性と耐食性試験結果を表1に示す。
【0043】実施例3 実施例1と同一組成、同一条件にて得られた微粉砕粉を
ゴム質モールド内に充填後、実施例1と同一条件の反転
繰り返しパルス磁界を瞬間的に付加後、強度12kOe
の静磁場中にプレス圧1.0kg/cm2にて、冷間静
水圧プレスして成型体を得た後、実施例1と同一条件の
焼結、時効処理を行い、磁気特性を測定して、その結果
と耐食性試験結果を表1に示す。
【0044】実施例4 実施例2と同一組成、同一条件にて得られた反転繰り返
しパルス磁界を瞬間的に付加して試験片に実施例3と同
一条件の静磁場中で冷間静水圧プレス処理を行った後、
実施例1と同一条件にて焼結、時効処理を行い、得られ
た試験片の磁気特性と耐食性試験結果を表1に示す。
【0045】比較例1 実施例1と同一組成、同一条件にて得られた微粉末を金
型内に充填後、10kOeの磁界中で配向し、磁界に直
角方向に1.0T/cm2の圧力で成型後、実施例1と
同一条件の焼結、時効処理を行い、試験片の磁気特性と
耐食性試験結果を表1に示す。
【0046】比較例2 実施例1と同一組成、同一条件にて得られた微粉末を型
内に充填後、パルス磁界の強度50kOeにて等方向に
パルス磁界を瞬間的に付加後、実施例1と同一条件の冷
間静水圧プレス、焼結、時効処理を行い、試験片の磁気
特性と耐食性を測定して、その結果を表1に示す。
【0047】比較例3 実施例2と同一組成、同一条件にて得られた微粉末を型
内に充填して、強度50kOeのパルス磁界を等方向に
瞬間的に付加後、実施例1と同一条件の冷間静水圧プレ
ス、焼結、時効処理を行い、試験片の磁気特性を測定し
て、その結果と耐食性試験結果を表1に示す。
【0048】比較例4 組成が13Nd−1.5Dy−7B−78.5Feであ
る以外は実施例1と同一条件、方法にて磁石を作製し、
得られた磁石の磁気特性と耐食性試験結果を表1に示
す。
【0049】比較例5 実施例1と同一組成の合金溶湯を鋳型に注入して得られ
た鋳塊を実施例1と同一条件にてH2粉砕法にて粗粉砕
後、ジェットミルにて微粉砕後、前記微粉砕粉に反転繰
返しのパルス磁界を付加した後、冷間静水圧プレスした
後、焼結、時効処理を施して磁石を作製し、得られた磁
石の磁気特性と耐食性試験結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【発明の効果】この発明は、ストリップキャスティング
法で得られたR−Fe−B−C系合金鋳片を機械粉砕法
あるいはH2吸蔵崩壊法により粗粉砕後、機械粉砕ある
いはジェットミル粉砕法にて微粉砕して得られるいずれ
粉砕工程を経たR−Fe−B−C系微粉砕粉も、平均粒
度1.5μm〜5μmとなした微粉砕粉をモールド内に
充填密度1.4〜3.5g/cm3に充填後、磁界強度
10kOe以上のパルス磁界を瞬間的に磁界方向を反転
させて繰り返し付加後、冷間静水圧プレスを静磁場中で
行うことにより、配向性にすぐれ、極めて高性能な耐食
性のすぐれた磁石材料が得られる。
【0052】特に、ストリップキャスティング法にて製
造し、H2吸蔵崩壊、脱H2処理後、特定の潤滑剤を添加
配合してジェットミル微粉砕にて合金塊を構成している
主相の結晶粒を細分化することが可能となり、粒度分布
が均一な粉末を、従来の約2倍程度の効率で作製するこ
とができ、プレス充填性にすぐれ、さらに各結晶粒の磁
化容易方向の配向度を高めて、耐食性にすぐれ、極めて
高性能なR−Fe−B−C系磁石材料を製造性よく得ら
れる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭56−119699(JP,A) 特開 平6−124825(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01F 41/02 B22F 3/02 C22C 33/02 C22C 38/00 303 H01F 1/08

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ストリップキャスティング法により得ら
    れた板厚0.03mm〜10mmの鋳片を粉砕して得ら
    れたR(但しRはYを含む希土類元素のうち、少なくと
    も1種)10at%〜30at%、B+C=4〜15a
    t%(但しB2at%以下)、残部Fe(但しFeの1
    部をCo、Niの1種または2種にて置換できる)を主
    成分とする微粉末をモールド内に充填密度充填し、10
    kOe以上のパルス磁界を繰り返し反転させて付加して
    配向させた後、冷間静水圧プレスし、その後焼結、時効
    処理する耐食性のすぐれたR−Fe−B−C系永久磁石
    材料の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項において、磁石用原料微粉末の
    平均粒度が1.0μm〜10μmであるR−Fe−B−
    C系永久磁石材料の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1において、冷間静水圧プレスを
    静磁界中で行う耐食性のすぐれたR−Fe−B−C系永
    久磁石材料の製造方法。
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