JP3142504B2 - 追尾型アンテナ装置 - Google Patents

追尾型アンテナ装置

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JP3142504B2 JP09169892A JP16989297A JP3142504B2 JP 3142504 B2 JP3142504 B2 JP 3142504B2 JP 09169892 A JP09169892 A JP 09169892A JP 16989297 A JP16989297 A JP 16989297A JP 3142504 B2 JP3142504 B2 JP 3142504B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、人工衛星、航空機
等の目標から無線送信される信号を、車両等の移動体に
搭載される指向性アンテナによって、継続的に捕捉受信
させるための追尾型アンテナ装置に関する。
【0002】
【従来の技術及びその問題点】人工衛星等の目標から無
線送信される信号を車両等の移動体に搭載された指向性
アンテナにて好適に受信し続けられるようにするため
に、目標に対する移動体の相対移動及び移動体の傾斜に
抗して常に目標を指向し続けるよう、即ち目標を追尾す
るよう、指向性アンテナのビーム方向を逐次変化させる
装置、即ち追尾型アンテナ装置が開発されている。追尾
型アンテナを実現する方法の一つに、方位(AZ)軸及
び仰角(EL)軸を有するマウントによってこの指向性
アンテナを移動体上に支持し、移動体の移動や傾斜に応
じて、指向性アンテナのビームを機械的又は電子的な方
位軸回り及び仰角軸回りで回転させる、という方法があ
る。この種のマウントはAZ−ELマウントと呼ばれ、
構造が簡素である等の特徴を有している。このAZ−E
Lマウントでは、方位軸及び仰角軸という2本の軸が制
御対象となっている。従って、その制御に際しては、方
位軸及び仰角軸各々について制御角を決定する必要があ
る。
【0003】更に、目標をより精度よく追尾できるよう
にする方法として、従来からステップトラックが用いら
れている。ステップトラックは、指向性アンテナが衛星
を捕捉している状態から、指向性アンテナのビーム方向
を試行錯誤的に微小角度変化させその変化の前後の信号
受信状態例えば受信レベルを比較することにより、指向
性アンテナのビーム方向をどちら回りに変化させればよ
りよい信号受信状態となるかを判断し、その結果に応じ
て指向性アンテナのビーム方向を変えていく、という方
法である。前述のように、AZ−ELマウントを有する
追尾型アンテナ装置では方位軸制御角及び仰角軸制御角
を共に決定しなければならないため、従来は、ステップ
トラックも方位及び仰角双方について個別に実行されて
いた。即ち、指向性アンテナのビーム方向を方位軸回り
で試行錯誤的に微小角度変化させその変化の前後の信号
受信状態の比較結果に基づき指向性アンテナのビーム方
向を方位軸回りでどちらかに変化させるという方位ステ
ップトラックと、指向性アンテナのビーム方向を仰角軸
回りで試行錯誤的に微小角度変化させその変化の前後の
信号受信状態の比較結果に基づき指向性アンテナのビー
ム方向を仰角軸回りでどちらかに変化させるという仰角
ステップトラックとを、共に行っていた。
【0004】
【発明の概要】本発明の目的の一つは、従来から行われ
ていた方位ステップトラック及び仰角ステップトラック
に代えて、無線信号の受信状態を頼りに移動体方位デー
タの値を試行錯誤的に修正していくという新しい考え
(以下、これを移動体方位ステップトラックと呼ぶ)を
導入することにより、従来に比べ高精度で信頼性の高い
追尾型アンテナ装置を実現することにある。本発明の目
的の一つは、本願出願人が特願平7−192772号
(特開平9−46122号)にて提案した仮想移動体方
位法による目標サーチと、本願にて新たに提案する移動
体方位ステップトラックとの併用により、目標サーチ及
びステップトラックを共に移動体方位により実行できる
ようにし、ひいては目標サーチ及びステップトラックを
効率化すると共に装置の構成(特にレジスタ類の個数・
種類)を簡素化することにある。本発明の目的の一つ
は、移動体に固定された直交座標系を構成する3軸各々
の回りでの移動体の角速度並びに移動体のロール角及び
ピッチ角を検出し、角速度の検出結果をロール角及びピ
ッチ角の検出結果を利用してオイラー角表現に変換する
ことにより、移動体の進行方位に関するデータをより正
確なものとし、ひいては従来に比べ精度及び信頼性の高
い追尾型アンテナ装置を実現することにある。本発明の
目的の一つは、オイラー角表現への変換で得られるロー
ル角速度及びピッチ角速度を移動体のロール角及びピッ
チ角の検出値と結合させることにより、移動体の傾斜角
に関するデータをより正確なものとし、ひいては従来に
比べ精度及び信頼性の高い追尾型アンテナ装置を実現す
ることにある。本発明の目的の一つは、AZ−ELマウ
ントやAZ−XEL(X)−EL(Y)マウント等のよ
うに少くとも方位軸と仰角軸とを有し陸上移動体への搭
載に適する追尾型アンテナ装置、特に、建物や樹木等の
電波障害物の多い状態でもより信頼度の高い追尾を行え
る追尾型アンテナ装置を実現することにある(尚、以下
の説明では、代表的なマウントであるAZ−ELマウン
トへの本発明の適用例を述べるが、本発明の適用対象マ
ウントはこれには限定されない)。
【0005】本発明の目的の一つは、仮想移動体方位法
による目標サーチ及び移動体方位ステップトラックを実
行するに際して必要となる移動体方位データについて、
適当な条件下で補正を施すことにより、移動体の角速度
及び傾斜角の検出結果を移動体方位データの生成に利用
しつつも従来以上の精度を有しかつ従来より安価な追尾
型アンテナ装置を実現することにある。本発明の目的の
一つは、その他の資源例えばGPS受信機から得た方位
データや、この方位データと角速度及び傾斜角の検出結
果から得た移動体方位データとを結合して得たデータ
を、移動体の移動中に移動体方位データを補正する際及
び目標サーチの開始に当たって移動体方位データを初期
設定する際に利用することにより、より精度と信頼性の
高い追尾型アンテナ装置を実現することにある。
【0006】本発明の目的の一つは、角速度及び傾斜角
の検出結果から得た移動体方位データやGPS受信機か
ら得た方位データを所定時間に亘り監視した結果に基づ
き移動体が直進しているか否かを判断し、直進(又は停
止)していると判断したときのみ移動体方位データの補
正やブロッキング/オフビーム判定を実行するようにす
ることにより、移動体方位データの補正やブロッキング
/オフビーム判定の精度を高くすることにある。本発明
の目的の一つは、他の資源例えばGPS受信機から得ら
れる方位データを利用してブロッキング/オフビーム判
定を行い、オフビームと判定されたときに目標サーチを
(或いはこれに先立ち移動体方位データの補正を)行わ
せることにより、無線信号受信状態の劣化により好適に
対処できるようにすることにある。本発明の目的の一つ
は、移動体方位ステップトラックに加え仰角ステップト
ラックを実行することにより、更に精度の高い追尾型ア
ンテナ装置を実現することにある。
【0007】このような目的を達成するため、本発明に
係る追尾型アンテナ装置は、指向性アンテナ、方位軸仰
角軸制御手段、制御角決定手段、移動体データ生成手
段、仮想移動体方位法目標サーチ手段及び移動体方位ス
テップトラック手段を備える。本発明における指向性ア
ンテナは、人工衛星等の目標から送信される無線信号を
受信すべく車両等の移動体に搭載されており、そのビー
ム方向を方位軸回り及び仰角軸回りで制御可能なアンテ
ナである。また、方位軸仰角軸制御手段は、方位軸制御
角及び仰角軸制御角に従い上記指向性アンテナのビーム
方向を方位軸回り及び仰角軸回りで制御する手段であ
り、例えば、各軸を制御するモータ(機械軸の場合)若
しくは可変移相器(電子軸の場合)やその駆動回路を含
む。
【0008】制御角決定手段は、追尾すべき目標の位置
を示す目標位置データ、搭載に係る移動体の位置を示す
移動体位置データ、上記移動体の傾斜角を示す移動体傾
斜角データ及び上記移動体の進行方位を示す移動体方位
データに基づき、方位軸制御角及び仰角軸制御角を決定
する。ここでいう“移動体の進行方位”は、水平真北座
標系X000では図1中のφvである。“目標の位置”
は、目標が人工衛星である場合にはその軌道情報を構成
する緯度、経度及び高度である(静止衛星の場合は経度
のみ)。“移動体の位置”は、移動体の現在位置の緯
度、経度等で表現できるデータであり、例えばGPS受
信機から与えられ又は使用者により設定される。“移動
体の傾斜角”は、図1中ではロール角r及びピッチ角p
で表されている。
【0009】これらのうち“目標の位置”及び“移動体
の位置”がわかれば、水平真北座標系X000におい
て移動体の位置Oから見た目標の方向T、即ち目標の方
位φt h及び仰角εth(又は俯角θth)がわかる。ここで
は導出過程は省略するが、水平真北座標系X000
おける目標の方位φth、仰角εth及び俯角θthは、近似
的には
【数1】 φth=arcsin{sinθt・sin(φvqtq)/(1-cos2θx)1/2} εth=arctan{|cosθx-R/(R+H)|/(1-cos2θx)1/2} θth=π/2-εth 但し、cosθx=cosθt・cosθv+sinθv・sinθt・cos(φ
vqtq) θt=π/2[rad]-目標の緯度 θv=π/2[rad]-移動体の緯度 φtq=目標の経度 φvq=移動体の経度 R=地球の半径 H=目標体の高度 となる。
【0010】更に、特願平7−192772号に記載し
たように、図1中の移動体座標系XYZで表した目標方
向の単位ベクトル[X Y Z]Tは、水平真北座標系X00
0で表した目標方向の単位ベクトル[X0 Y0 Z0]Tに、移動
体の進行方位φvによる変換、ピッチ角pによる変換及
びロール角rによる変換を順に施して得られる次の値
【数2】 である。目標方向を示すベクトル[X0 Y0 Z0]Tは次の式
【数3】 に示されるように目標の方位φth及び俯角θthにより表
すことができ、同様に、移動体座標系XYZにおける目
標の方位及び俯角は
【数4】 φ=arctan(Y/X) θ=arccos(Z) と表せるから、“移動体の進行方位”及び“移動体の傾
斜角”がわかれば方位軸制御角及び仰角軸制御角を決め
ることができる。
【0011】更に、本発明においては、移動体データ生
成手段において移動体方位データ及び移動体傾斜角デー
タを生成する。これらのデータを生成するため、移動体
データ生成手段は、移動体に固定された直交座標系を構
成する3本の軸各々の回りでの移動体の角速度の検出値
と、移動体のロール角及びピッチ角の検出値とを、利用
する。具体的には、まず、直交3軸の回りでの移動体角
速度の検出値[ωxyz]Tを、移動体のロール角及び
ピッチ角の検出値r及びpに基づき、次の式
【数5】 により直交座標表現からオイラー角表現即ちロール、ピ
ッチ及びヨーの3成分による表現へと変換する。次に、
変換により得られた角速度[ωr,ωp,ωφ]Tのうち、
方位軸回りの角速度(ヨー角速度)を示す成分ωφを積
分することにより移動体方位データが得られる。また、
ロール角速度を示す成分ωr及びピッチ角速度を示す成
分ωpを、傾斜角r及びpの検出値のうち対応するもの
と、例えば相補的合成フィルタやシューラループを用い
て結合させることにより、移動体傾斜角データが得られ
る。
【0012】本発明の最大の特徴に係る処理は、仮想移
動体方位法目標サーチ手段及び移動体方位ステップトラ
ック手段にて実現されている。まず、目標を指向性アン
テナが捕捉していないと見なせるときには、仮想移動体
方位法目標サーチ手段が、移動体方位データにより目標
サーチを実行する。即ち、移動体方位データをその初期
値から徐々に変化させつつ制御角決定手段を動作させる
と同時に、目標からの無線信号受信状態を監視すること
により、無線信号受信状態が良好になるビーム方向をサ
ーチする。このように移動体方位という1種類の角度に
て目標サーチを実行することにより、方位及び仰角とい
う2種類の角度にて目標サーチを実行する場合に比べ迅
速に、目標をサーチすることができる。
【0013】そして、この目標サーチに成功した後は、
目標サーチによって得られた移動体方位を初期値とし
て、移動体方位ステップトラック手段が、移動体方位に
よるステップトラックを実行する。即ち、移動体方位ス
テップトラック手段は、移動体方位データを試行錯誤的
に微小角度変化させつつ制御角決定手段を動作させ、こ
の試行錯誤的な変化の前後の無線信号受信状態を比較し
た結果に基づき無線信号受信状態がより良好になるよう
に移動体方位データを変化させるという処理を、繰返し
実行する。
【0014】このように、方位及び仰角に代えて移動体
方位(及び仰角)にてステップトラックを行っているた
め、従来に比べ精度の高いステップトラックが可能であ
る。則ち、従来のように方位及び仰角ステップトラック
を行うのでは、制御角を求める際に使用する移動体方位
データに誤差が生じていてもその誤差が移動体から見た
目標の相対方位の誤差として扱われてしまい、従って、
移動体の傾斜が大きいとき等には当該移動体方位データ
の誤差を正確に補償することは難しい。これに対し、本
発明のように移動体方位ステップトラックを行うように
すれば、移動体方位データの誤差を正確に補償すること
ができるため、従来より精度及び信頼性の高いステップ
トラックを実現できる。また、この効果は、特に、目標
及び移動体の位置が十分正確にわかっているときに現れ
る。このような状況は、目標例えば人工衛星の経度乃至
軌道を予めデータとして蓄えておくか逐次入力するよう
にすると共に、GPS受信機等を利用して移動体の位置
に関するデータを逐次入力するようにすることで、実現
できる。更に、仮想移動体方位法による目標サーチと移
動体方位ステップトラックとを併用しているため、目標
サーチ及びステップトラックを共に移動体方位により実
行でき、従ってこれらの効率化を達成できる。また、こ
れらはいずれも移動体方位レジスタ上のデータの操作に
より実現できるため、実現するために必要な装置構成は
簡素である。
【0015】加えて、直交3軸による移動体の角速度の
検出値を、ロール角及びピッチ角の検出値を利用してオ
イラー角表現へ変換して移動体方位データを生成してい
るため、制御角決定に使用する移動体方位データの精度
を高めることができる。また、オイラー角変換により得
られるロール角速度及びピッチ角速度を、ロール角及び
ピッチ角の検出値のうち対応するものとそれぞれ結合さ
せ、これにより、制御角決定に使用するロール角データ
及びピッチ角データを生成しているため、制御角決定に
使用するロール角データ及びピッチ角データの信頼性を
高めることができる。
【0016】本発明においては、また、移動体に固定さ
れた直交座標系を構成する3本の軸のうち移動体非傾斜
時に鉛直方向を向くZ軸の回りでの移動体の角速度の検
出値が大きくばらついておらずかつ移動体が停止してい
る期間が到来したとき、この期間におけるZ軸回りでの
移動体の角速度の検出値を利用して決定した補正値によ
り、Z軸回りの移動体の角速度の検出値にオフセット補
正を施し、オフセット補正された値を移動体データ生成
手段におけるオイラー角表現への変換に供する。即ち、
移動体が停止している期間におけるZ軸回りでの移動体
の角速度の検出値のばらつき例えば|最大値−最小値|
や分散が所定程度以下である場合には、その期間におけ
るZ軸回りでの移動体の角速度の検出値又はこれに基づ
き生成した値を利用して、検出値に含まれるオフセット
分が解消乃至低減されるようこのZ軸回りでの移動体の
角速度の検出値に補正を施す。これによって、制御角の
生成に使用する移動体方位データがより正確な値になる
とともに、ロール角データ及びピッチ角データと結合乃
至合成されるロール角速度データ及びピッチ角速度デー
タもより正確な値になる。
【0017】本発明においては、更に、仮想移動体方位
法による目標サーチ及び移動体方位ステップトラックを
実行するに際して必要となる移動体方位データについ
て、適当な条件下で補正を施すようにしている。例え
ば、GPS受信機からも方位データを入力し、移動体が
直進しているときには、GPS受信機から入力した方位
データを利用して、移動体方位データをプリセットす
る。より具体的には、GPS受信機から入力した方位デ
ータ或いはこれに加工・修正を加えた方位データを、移
動体方位レジスタ上に書き込み、それ以後は、移動体の
角速度並びにロール角及びピッチ角の検出値に基づき生
成した移動体方位データの増分値を、移動体方位レジス
タ上のデータに積算していく。制御角決定手段では、移
動体方位レジスタ上のデータを、制御角の決定に使用す
る。このようにすることにより、いわば複数の資源から
の方位データを有効活用でき、従来以上の精度を実現す
ることができる。
【0018】本発明においては、更に、移動体が停止又
は直進しておりかつ目標からの無線信号受信状態がオフ
ビームにより所定程度以下まで劣化したと見なせるとき
に、そのときの移動体方位データ(移動体方位レジスタ
上のデータ)若しくはGPS受信機から入力した方位デ
ータ又はこれらを結合して生成した方位データを、移動
体方位データの初期値として、仮想移動体方位法目標サ
ーチ手段を動作させる。このように、複数の資源からの
方位データを有効活用して、オフビーム判定直後に実行
する目標サーチの初期値を設定することにより、より精
度と信頼性の高い追尾型アンテナ装置を実現できる。ま
た、オフビーム判定に応じ仮想移動体方位法目標サーチ
手段を動作させるのに先立ち、GPS受信機から入力し
た方位データを利用して移動体方位データ(移動体方位
レジスタ上のデータ)をプリセットするようにしてもよ
い。この場合、その後も無線信号受信状態が十分回復し
ないときには、そのときの移動体方位データ(移動体方
位レジスタ上のデータ)若しくはGPS受信機から入力
した方位データ又はこれらを結合して生成した方位デー
タを移動体方位データの初期値として、仮想移動体方位
法目標サーチ手段を動作させる。このように一旦移動体
方位データのプリセットを行うようにすれば、目標サー
チに移行する頻度が低くなる。
【0019】本発明においては、無線信号受信状態が所
定程度以下まで劣化したとき、上述のブロッキング/オ
フビーム判定を、目標の方位とGPS受信機から入力し
た方位データとに基づき行う。ここで用いる目標の方位
は、制御角決定手段にて求めたものを用いることができ
る。本発明においては、このような形でも、複数の資源
を有効活用している。また、本発明においては、移動体
方位データ又はGPS受信機からの方位データが所定の
監視期間内に所定程度を下回るばらつきを呈したとき
に、移動体が直進していると判定する。前述のように、
直進していると判定されたときには移動体方位データの
補正やブロッキング/オフビーム判定が実行される。従
って、このように複数の資源を有効活用した直進/変針
判定によって、移動体方位データの補正やブロッキング
/オフビーム判定の精度が高くなる。
【0020】そして、本発明においては、移動体方位の
みならず仰角についても、ステップトラックを実行す
る。即ち、仰角軸制御角に与えるバイアスを試行錯誤的
に微小角度変化させつつ方位軸仰角軸制御手段を動作さ
せ、この試行錯誤的な変化の前後の無線信号受信状態を
比較した結果に基づき無線信号受信状態がより良好にな
るように上記バイアスを変化させるという処理を、繰返
し実行する。このようにすることによって、機械軸の歪
みその他の要因による追尾誤差をも低減できる。
【0021】以下、本発明の好適な実施形態に関し説明
する。尚、本願では本発明を「追尾型アンテナ装置」に
係る発明であると記しているが、本願の開示内容を参照
した当業者であれば、本発明を例えば「ステップトラッ
ク方法」「移動体方位データ処理方法」等としても把握
できる。また、以下の説明ではブロック図を使用する
が、これは、本発明の機能的構成がより明瞭になるよう
にとの意図によるものであり、本発明をハードウエア的
にしか実施できないことを示すものではない。また、本
発明を実施するに際しては、本質を逸脱しない範囲での
変形が可能である。例えば、ビット誤り率BERを同期
信号Syncの代わりに用いることも可能である。
【0022】
【発明の実施の形態】
(1)全体構成 図2に、本発明の好適な実施形態に係る追尾型アンテナ
装置の全体構成を示す。この図の装置では、AZ−EL
マウントにより指向性アンテナ10を車両等の移動体上
に支持している。指向性アンテナ10にて受信された信
号は、受信機及び周波数変換器12により増幅されまた
中間周波数へ変換され、更に中間周波数増幅器14によ
り増幅され、復調器16に供給される。指向性アンテナ
10が人工衛星、航空機等の追尾目標を好適に追尾して
いる状態では、復調器16は、受信信号からデータ乃至
信号を復調できる。復調器16は、更に、受信信号と同
期したときその旨を示す同期信号Syncを出力し、ま
た、受信信号のレベルを示す受信レベル信号RLevを
逐次出力する。これら同期信号Sync及び受信レベル
信号RLevは、後述する目標サーチやステップトラッ
ク等の際に利用される。
【0023】他方、指向性アンテナ10の方位軸回りビ
ーム方向及び仰角軸回りビーム方向を制御するため、A
Z−ELマウントの方位軸構造物18及び仰角軸構造物
20にはそれぞれ方位軸モータ22及び仰角軸モータ2
4が設けられており、更にはこれらに対応する駆動回路
26及び28並びにポテンショメータ30及び32が設
けられている。駆動回路26及び28は、AZ−EL制
御演算記憶回路34から与えられる方位軸制御角及び仰
角軸制御角に応じて対応するモータ22又は24を駆動
する。ポテンショメータ30及び32は、対応する構造
物18若しくは20又は対応するモータ22若しくは2
4の角度位置を検出し、その結果をそれぞれ方位軸角度
データ又は仰角軸角度データとしてAZ−EL制御演算
記憶回路34にフィードバックする。このように、本実
施形態では、指向性アンテナ10の方位軸回り及び仰角
軸回りビーム方向についてサーボループが形成されてい
る。なお、本発明を実施するに際しては、機械的な軸に
代えて電子的な軸例えばフェーズドアレイを用いても構
わない(特に仰角軸)。
【0024】AZ−EL制御演算記憶回路34は、方位
軸制御角及び仰角軸制御角を決定するために、ポテンシ
ョメータ30及び32の出力等の他に、移動体に搭載さ
れている各種の装置からデータ入力部44を介し各種の
計測データを入力している。計測データの供給元となる
装置としては、角速度検出器35、傾斜検出器36、G
PS受信機38、磁気コンパス40、移動体速度センサ
42等がある。
【0025】これらの装置のうち角速度検出器35は、
移動体に固定された直交座標系例えば図1中の移動体座
標系XYZを構成する3軸の回りでの移動体の角速度を
検出し、その結果をそれぞれX軸角速度データωx、Y
軸角速度データωy及びZ軸角速度データωzとして出力
する。傾斜検出器36は、図1中のロールr及びピッチ
pを検出し、前者をロール角データr、後者をピッチ角
データpとして出力する。GPS受信機38は、地球周
回軌道上にあるGPS衛星から受信した信号に基づき搭
載に係る移動体の位置、進行方位、速度等を検出し、そ
の結果を移動体位置データPvGPS・移動体方位データφ
vGPS・移動体速度データVvGPSとして出力する。磁気コ
ンパス40は、地磁気の方位を検出しその結果を移動体
方位データφvMAGとして出力する。移動体速度センサ4
2は、移動体の速度を例えば車輪の回転数等から検出
し、その結果を移動体速度データVvREVとして出力す
る。
【0026】図2の装置は、更に、移動体位置データの
初期値等の手動入力や各種データの表示に用いられる操
作表示部48を有している。初期設定の際には、AZ−
EL制御演算記憶回路34は、データ入力部44を介し
移動体位置データの初期値等を受け取る(図上はデータ
入力部44が介在していないが、実際には介在する)。
また、移動体データ及び目標データ記憶回路46は、各
種の移動体位置データ、移動体方位データ、目標位置デ
ータ、サーチ範囲等の情報を記憶する。記憶回路46に
記憶されるデータのうち、目標位置データとは、指向性
アンテナ10が追尾すべき目標の位置を示すデータであ
り、各時点における目標の緯度、経度及び高度を組み合
わせた軌道データである。但し、目標が静止衛星である
場合には、緯度、経度及び高度は常に一定でありまた緯
度及び高度はどの静止衛星でも同じであるので、静止衛
星毎に異なる値である経度のみを記憶しておけばよい。
目標位置データは、予め記憶回路46上に記憶させてお
き、可能であれば逐次更新する。また、サーチ範囲と
は、後述する移動体方位による目標サーチの際にサーチ
対象とする方位角度範囲をさす。
【0027】(2)AZ−EL制御演算記憶回路及びそ
の周辺の回路構成 図2に示す装置における特徴的な処理は、AZ−EL制
御演算記憶回路34にて行われている。図3に、AZ−
EL制御演算記憶回路34及びその周辺の回路の機能構
成の例を示す。本実施形態では、AZ−EL制御演算記
憶回路34の中心的な機能即ち方位軸制御角及び仰角軸
制御角を演算決定する機能は、AZ−EL制御演算回路
50により担われている。AZ−EL制御演算回路50
は、データ入力部44を介しAZ−EL制御演算記憶回
路34に与えられるデータのうち、移動体速度センサ4
2からの移動体速度データVvREV、操作表示部48から
の移動体位置データPvSET、並びにGPS受信機38か
らの移動体位置データPvG PS、移動体方位データφvGPS
及び移動体速度データVvGPSを適宜取り込んでいる。A
Z−EL制御演算回路50は、その他、同期信号Syn
cや受信レベル信号RLevも取り込んでいる。更に、
本実施形態では、直進/変針判定やブロッキング/オフ
ビーム判定のためのデータを記憶する区間データ記憶回
路52を、設けている。
【0028】データ入力部44を介しAZ−EL制御演
算記憶回路34に与えられるデータのうち、X軸角速度
データωx、Y軸角速度データωy及びZ軸角速度データ
ωzは、直交座標表現からオイラー角表現への変換(オ
イラー角変換)や移動体方位レジスタ54上での積算
(積分)を経て、移動体の進行方位を示す移動体方位デ
ータφvIMUに変換され、この移動体方位データφvIMU
AZ−EL制御演算回路50に供給される。また、デー
タ入力部44を介しAZ−EL制御演算記憶回路34に
与えられるデータのうち残りのデータ即ちロール角デー
タr及びピッチ角データpは、X軸角速度データωx
Y軸角速度データωy及びZ軸角速度データωzのオイラ
ー角変換により得られるロール角速度データωr及びピ
ッチ角速度データωpと相補的に合成され、補正された
ロール角データr及びピッチ角データpとしてAZ−E
L制御演算回路50に供給される。
【0029】X軸角速度データωx、Y軸角速度データ
ωy及びZ軸角速度データωzにオイラー角変換を施すの
は、オイラー角角速度変換器56である。オイラー角角
速度変換器56は、ロール角データr及びピッチ角デー
タpを利用して、[ωx ωyωz]Tを先に示した式に則り
r ωp ωφ]Tに変換する。この変換により得られる
角速度データのうち移動体の方位軸回りの角速度を示す
移動体方位角速度データωφには、掛算器58により所
定のサンプル間隔Tが乗ぜられ、これにより得られた方
位角増分ΔφvIMUが加算器60により移動体方位レジス
タ54上のデータに加算される。移動体方位レジスタ5
4には予め移動体方位データの初期値φvIMU0が設定さ
れているものとすれば、この積算(積分)処理によって
移動体方位データφvIMUが得られることがわかる。更
に、オイラー角変換を行っているため、移動体方位デー
タφvIMUは正確なものとなる。
【0030】また、本実施形態では、移動体方位バイア
スレジスタ62と遅延レジスタ及び差分演算回路64と
を、サーチのために用いている。即ち、AZ−EL制御
演算回路50から与えられるサーチ角φvIMUbiasを移動
体方位バイアスレジスタ62に格納し、遅延レジスタ及
び差分演算回路34が移動体方位バイアスレジスタ62
上のサーチ角φvIMUbiasを所定時間遅延させてその前後
でのサーチ角φvIMUbi asの増分ΔφvIMUbiasを求め、得
られた増分ΔφvIMUbiasを加算器60に与えて移動体方
位レジスタ54上の移動体方位データφvIMUを変化させ
ている。また、この実施形態では、AZ−EL制御演算
回路50から加算器60にステップ角を与えることによ
り、ステップトラックに関わる回路を構成している。
【0031】更に、本実施形態では、Z軸角速度データ
ωzにオフセット補正を施している。即ち、オフセット
補正制御及び区間データ記憶回路66は、データ入力部
44を介し角速度検出器35から与えられるZ軸角速度
データωz及び移動体速度センサ42から与えられる移
動体速度データVvREVを所定の監視期間に亘って監視
し、その結果、監視期間内の移動体速度データVvREV
いずれも0を示しておりかつ監視期間内のZ軸角速度デ
ータωzのばらつき(|最大値−最小値|、分散等)が
所定程度以下であることが判明した場合に、その監視期
間内でのZ軸角速度データωzの平均値(又はこれに相
当する値やこれに修正を施した値)を加算器68にてZ
軸角速度データωzから減ずる等の手法で、Z軸角速度
データωzにオフセット補正を施す。オイラー角角速度
変換器56に供給されるのは、このオフセット補正後の
Z軸角速度データωzである。このような補正を施すの
は、特に、角速度検出器35からのZ軸角速度データω
zにオフセット/ドリフトが比較的多く含まれていると
きに、精度向上の面で有効である。また、AZ−EL制
御演算回路50からオフセット補正制御及び区間データ
記憶回路66へと信号を与え適宜この補正を許可/禁止
するようにすることができる。更に、Z軸角速度データ
ωzのばらつきを検出するに際しては、雑音低減のため
の信号処理乃至フィルタリングを施したZ軸角速度デー
タωzを、その対象とするのが望ましい。
【0032】また、データ入力部44を介して与えられ
るロール角データr及びピッチ角データpは、オイラー
角角速度変換器56にて得られるロール角速度データω
r及びピッチ角速度データωpのうち対応する成分と、ロ
ール角及びピッチ角合成器70にて結合され、これによ
り、補正されたロール角データr及びピッチ角データp
が生成されAZ−EL制御演算回路50に供給される。
即ち、移動体速度センサ42からの移動体速度データV
vREV等を参照しながら、ロール角データr及びピッチ角
データpとロール角速度データωr及びピッチ角速度デ
ータωpとを、互いにその短所を補いあうよう即ち一方
の感度乃至精度が低い領域では他方への重みがますよ
う、結合させることにより、より信頼性の高いロール角
データr及びピッチ角データpを得ている。
【0033】(3)装置動作…電源投入直後の目標サー
チ 次に、本実施形態の動作に関し、装置実使用の流れに沿
って説明する。基本的な流れとしては、電源投入直後に
目標サーチを行い、これによって目標を捕捉するに至っ
たときはステップトラックによる目標追尾に移り、追尾
がはずれた(オフビームした)可能性があるときには条
件付きで目標サーチに移行する、という流れである。こ
の流れの中で、目標サーチについては、本願出願人が特
願平7−192772号にて提案した移動体方位法、即
ち移動体方位データφvIMUに変化を与えて目標を探索す
る方法を採用している。また、ステップトラックについ
ては、移動体方位データφvIMUにステップ的変化を与え
る移動体方位ステップトラックを行うこととしている。
【0034】目標のサーチに先だって、AZ−EL制御
演算回路50は、まず、GPS受信機38から移動体位
置データPvGPSを入力する一方で記憶回路46から最近
の目標位置データPtSETを入力し、両者に基づいてX0
00における目標の方位φt h及び仰角εth(又は俯角
θth)を求める。もし、ブロッキングその他の理由でG
PS受信機38から移動体位置データPvGPSが得られな
いのであれば、操作表示部48の操作にて設定される又
は記憶回路46に格納されている移動体位置データP
vSETを入力し、これと目標位置データPtSETとに基づき
方位φth及び仰角εth(又は俯角θth)を求める。移動
体位置データPvGPS又はPvSETと目標位置データPtSET
とに基づき方位φth及び仰角εth(又は俯角θth)を求
める式については、前述の通りである。更に、本実施形
態では、方位φth及び仰角εth(又は俯角θth)を求め
るのと同時に又は相前後して、AZ−EL制御演算回路
50が移動体方位データφvIMUの初期値φvIMU0を移動
体方位レジスタ54にプリセットする。初期値φvIMU0
としては、例えば、記憶回路46上に格納されている過
去の移動体方位データφvIMUの中で最近のもの、磁気コ
ンパス40からの移動体方位データφvMAG、操作表示部
48にて設定される移動体方位データφvSETを用いるこ
とができる。
【0035】この後、AZ−EL制御演算回路50は、
方位軸制御角及び仰角軸制御角を演算決定し駆動回路2
6及び28に与える動作を開始する。即ち、AZ−EL
制御演算回路50は、移動体方位レジスタ54上の移動
体方位データφvIMU、ロール角及びピッチ角合成器70
からのロール角データr及びピッチ角データp、並びに
先だって求めた方位φth及び仰角εth(又は俯角θth
に基づき、方位軸制御角及び仰角軸制御角を決定する。
【0036】電源投入直後においては、このようにして
決定された方位軸制御角及び仰角軸制御角に基づき方位
軸及び仰角軸を制御したとしても、一般に、指向性アン
テナ10にて目標を直ちに捕捉することはできない。そ
こで、AZ−EL制御演算回路50は、同期信号Syn
cが生じているか否かの判定(及び/又は受信レベルが
所定レベルを超えたか否かの判定)を行い、判定が成立
していないのであれば指向性アンテナ10にて目標を捕
捉してはいないと見なす。捕捉してないと見なしたと
き、AZ−EL制御演算回路50は、バイアスφ
vIMUbiasを移動体方位バイアスレジスタ62に与え、移
動体方位レジスタ54上の移動体方位データφvI MUを変
化させる。以後は、同期信号Syncが生じているか否
かの判定(及び/又は受信レベルが所定レベルを超えた
か否かの判定)が成立するに至るまで、方位軸制御角及
び仰角軸制御角の決定及び出力、信号受信状態の判定、
並びに移動体方位データφvIMUの操作を繰り返す。但
し、この繰返しは、記憶回路46から又は操作表示部4
8から与えられるサーチ範囲を移動体方位変更の限度と
して行い、このサーチ範囲内で上述の判定が成立しない
のであれば、AZ−EL制御演算回路50は、サーチ不
成功である旨を表示操作部48を介して使用者に報知す
ると共に、次回のサーチを自動的に開始させるためのタ
イマをセットする。このタイマが計時を終了した時点
で、目標のサーチに係る手順が再実行される。
【0037】(4)装置動作…ステップトラック及び移
動体方位データφvIMUの更新 サーチの結果同期信号Syncが生じているとの判定
(及び/又は受信レベルが所定レベルを超えたとの判
定)が成立するに至ったとき、AZ−EL制御演算回路
50は、移動体方位データφvIMUによるステップトラッ
クを開始する。即ち、加算器60に正負いずれかの符号
を有するステップ角を与えることにより移動体方位デー
タφvIMUをわずかに変化させてみて、その結果受信レベ
ルが上昇したのであれば同じ符号のステップ角を加算器
60に与え、下降したのであれば異なる符号のステップ
角を加算器60に与える、という手順で、指向性アンテ
ナ10の指向誤差を低減していく。尚、機械軸の歪み等
に対処するためには、仰角軸に関してもステップトラッ
クを行うのが好ましい。その際には、正負いずれかの符
号を有するステップ角を加えることにより仰角軸制御角
のバイアス角又は仰角εthをわずかに変化させてみて、
その結果受信レベルが上昇したのであれば同じ符号のス
テップ角を加え、下降したのであれば異なる符号のステ
ップ角を加える、という手順を、AZ−EL制御演算回
路50が実行する。
【0038】また、本実施形態では、移動体方位データ
φvIMUによるステップトラックを行っているときに適宜
移動体方位データφvGPSを利用して移動体方位レジスタ
54上の移動体方位データφvIMUを更新することによ
り、誤差の更なる低減を図っている。即ち、移動体方位
レジスタ54上の移動体方位データφvIMUが時間的な変
動を示しているか否かを判定し、示していないと判定さ
れたときには移動体方位データφvGPSに基づき算出した
初期値φvIMU0を移動体方位レジスタ54にセットす
る、という手順を実行する。ここに、移動体方位データ
φvIMU自体は積分による誤差を含むとしてもその時間変
化自体は比較的信頼できる。従って、移動体方位レジス
タ54上の移動体方位データφvIMUの時間的変動に関し
判定を実行することにより、移動体が直進しているか否
かを比較的正確に知ることができる。移動体が直進して
いるのであれば、移動体方位データφvGPSの値は比較的
安定して一定値をとっているはずである。そこで、本実
施形態では、AZ−EL制御演算回路50がそのときの
移動体方位データφvGPSに基づき初期値φvIMU0を算出
し、その結果得られた初期値φvIMU0を移動体方位レジ
スタ54にセットすることにより、移動体方位データφ
vIMUに含まれる誤差をリセットしている。
【0039】尚、移動体方位レジスタ54上の移動体方
位データφvIMUの時間的変動は、例えば、所定長(例え
ば5〜10秒)の監視期間に亘って移動体方位レジスタ
54上の移動体方位データφvIMUの|最大値−最小値
|、分散等を監視することにより検出する。監視期間の
最初又は最後で移動体が急変針しているときに直進と判
定してしまうことがないようにするには、|最大値−最
小値|を判定の指標とした方がよい。また、監視期間
は、経時的に移動していく移動期間であってもよいし、
ある時点からある時点までというように固定されている
固定期間であってもよい。前述の区間データ記憶回路5
2は、この監視期間において収集した移動体方位データ
φvIMUや移動体方位データφvGPSを記憶する。AZ−E
L制御演算回路50は、記憶回路52上の情報に基づ
き、上述の直進/変針判定を事後判定として、即ち対応
する監視期間の終了後に行う。直進と判定されたときに
初期値φvIMU0として用いられるのは、監視期間中に収
集したφvGPSの中で最新の値や、同監視期間中に収集し
た移動体方位データφvGPSの平均値であってもよいが、
この種の値に更に、監視期間終了後初期値φvIMU0を移
動体方位レジスタ54にセットする直前までの移動体方
位データφvIMUの変化量を加算した値にするのが好まし
い。更に、同時に移動体方位データφvGPSについてもそ
の時間的変動を監視及び検出し、時間的変動が大きいと
きには移動体方位データφvGPS又はこれに基づき生成し
たデータによる初期値φvIMU0のプリセットをやめるよ
うにするのが、より好ましい。
【0040】(5)装置動作…ブロッキング/オフビー
ム判定と目標サーチへの移行 移動体方位データφvIMUによるステップトラックを行っ
ている状態で、あるとき同期信号Syncが消失した
(又は受信レベルが顕著に落ちた)とする。このような
状況が生じるのは、建物等の遮蔽物により目標からの無
線信号が遮蔽されているとき(ブロッキング時)や、何
らかの現象により指向性アンテナ10のビーム方向が目
標からはずれてしまったとき(オフビーム時)である。
ブロッキングであれば、指向性アンテナ10の現在のビ
ーム方向をそのまま維持しておいても、移動体の移動に
よっていずれ目標を再捕捉できるのに対し、オフビーム
では一般にはそうはならない。そこで、本実施形態で
は、次のような手順を実行している。
【0041】即ち、AZ−EL制御演算回路50は、ま
ず、同期信号Syncが消失している(又は受信レベル
が所定レベル以下に落ちている)状態が生じたときに
は、とりあえず所定時間(例えば5分)経過するのを待
つ。移動体方位データφvIMUにおける積分誤差の増大は
穏やかであるので、この程度の時間であれば、無視する
ことができる。この所定時間以内に同期信号Syncが
消失している(又は受信レベルが所定レベル以下に落ち
ている)状態が解消したのであれば、AZ−EL制御演
算回路50は、前述したようなステップトラックを続け
る。逆に、この所定時間を経過してもそのような状態が
続いているのであれば、AZ−EL制御演算回路50
は、オフビームが生じているかもしれないとみなし、移
動体が停止しているのか否かを移動体速度データVvREV
に基づき判定する。移動体が停止しているのであれば、
AZ−EL制御演算回路50は、現時点での移動体方位
データφvIMUの周辺で目標をサーチする。その手順は前
述のものと同じである。尚、移動体が停止しているとの
判定の下に目標サーチを実行している間に移動体が移動
し始めたとしても、移動体方位データφvIMUがこの移動
に応じて変化して行くから、目標のサーチは継続でき
る。
【0042】移動体が停止していないと判定されたとき
には、AZ−EL制御演算回路50は、移動体が直進し
ているのかそれとも変針中であるのかを判定する。例え
ば、移動体方位レジスタ54上の移動体方位データφ
vIMUが時間的な変動を示しているか否かを移動体方位レ
ジスタ54上の移動体方位データφvIMUの|最大値−最
小値|、分散等の監視結果に基づき事後的に判定する、
という手順にて、直進/変針判定を行う。この監視につ
いては、移動体方位レジスタ54上の移動体方位データ
φvIMUを補正乃至プリセットするときの監視手順と同様
の手順とすることができる。
【0043】その結果直進と判定されたときには、AZ
−EL制御演算回路50は、移動体方位データφ
vGPS(又はφvMAG)のばらつきをその|最大値−最小値
|、分散等から検出し、検出したばらつきが所定程度以
下であるときには目標方位φthと移動体方位データφ
vGPS(又はφvMAG)の差が所定程度以下であるか否かを
判定する。所定程度以下ならばブロッキングであると見
なせるため、AZ−EL制御演算回路50は、現在の制
御状態を維持する。逆に、目標方位φthと移動体方位デ
ータφvGPS(又はφvMAG)の差が所定程度以下でないの
であれば、オフビームであると見なせる。
【0044】オフビームであると判定したときには、A
Z−EL制御演算回路50は、現時点における移動体方
位データφvGPSに基づき算出した初期値φvIMU0を移動
体方位レジスタ54にセットする。即ち、ステップトラ
ック中に直進と判定されたときと同様、移動体方位レジ
スタ54上の移動体方位データφvIMUを、より正確であ
ろう値にプリセットしている。この補正に関しても、初
期値φvIMU0として用いられるのは、監視期間中に収集
した移動体方位データφvGPSの中で最新の値や、同監視
期間中に収集した移動体方位データφvGPSの平均値であ
ってもよいが、監視期間終了後移動体方位データφ
vIMU0を移動体方位レジスタ54にセットする直前まで
の移動体方位データφvIMUの変化量を加算した値にする
のが好ましい。この補正によっても同期信号Sync
(又は受信レベル信号RLev)が回復しなかったとき
には、現時点における移動体方位データφvIMU、φvGPS
若しくはφvMAG又はこれらを結合させた値(平均値等)
を始点として、前述の目標サーチ手順を実行する。第3
実施形態の場合、オフビームであると判定したときに
は、初期値φvIMU0を移動体方位レジスタ60にセット
するステップを省略し、現時点における移動体方位デー
タφvIMUを始点として前述の目標サーチ手順を実行す
る。
【0045】他方、変針と判定されたときには、AZ−
EL制御演算回路50は、所定時間を限度として、直進
との判定が成立するのを待つ。この所定時間が経過して
も直進との判定が成立するに至らなかったときは、AZ
−EL制御演算回路50は、オフビームと判定されたと
きと同様、前述の目標サーチ手順を実行する。なお、移
動体方位データφvGPSが得られないときには、AZ−E
L制御演算回路50は、移動体方位データφvMAGや移動
体方位データφvIMUに基づき、直進/変針判定及びブロ
ッキング/オフビーム判定を行う。
【図面の簡単な説明】
【図1】 座標系の関係を示す図である。
【図2】 本発明の好適な実施形態の全体構成を示すブ
ロック図である。
【図3】 本実施形態の要部構成を示すブロック図であ
る。
【符号の説明】
000 基準座標系(水平真北座標系)、XYZ
移動体座標系、r ロール、p ピッチ、φv 移動体
方位、φth,εth,θth 目標の方位、仰角、俯角、S
ync 同期信号、RLev 受信レベル信号、10
指向性アンテナ、34 AZ−EL制御演算記憶回路、
38 GPS受信機、44 データ入力部、46 移動
体データ及び目標データ記憶回路、48 操作表示部、
50 AZ−EL制御演算回路、52 区間データ記憶
回路、54 移動体方位レジスタ、56 オイラー角角
速度変換器、58 掛算器、60,68 加算器、66
オフセット補正制御及び区間データ記憶回路、70 ロ
ール角及びピッチ角合成器。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01S 3/00 - 3/74 H01Q 3/00 - 3/20

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 人工衛星等の目標から送信される無線信
    号を受信すべく車両等の移動体に搭載され、そのビーム
    方向を方位軸回り及び仰角軸回りで制御可能な指向性ア
    ンテナと、 方位軸制御角及び仰角軸制御角に従い上記指向性アンテ
    ナのビーム方向を方位軸回り及び仰角軸回りで制御する
    方位軸仰角軸制御手段と、 上記目標の位置を示す目標位置データ、上記移動体の位
    置を示す移動体位置データ、上記移動体の傾斜角を示す
    移動体傾斜角データ及び上記移動体の進行方位を示す移
    動体方位データに基づき、方位軸制御角及び仰角軸制御
    角を決定する制御角決定手段と、 上記移動体に固定された直交座標系を構成する3本の軸
    各々の回りでの上記移動体の角速度の検出値を、上記移
    動体のロール角及びピッチ角の検出値を用いて、直交座
    標表現からオイラー角表現へと変換し、変換後の角速度
    のうち方位軸回りの角速度を示す成分を積分することに
    より上記移動体方位データを、また変換後の角速度のう
    ちロール角速度を示す成分及びピッチ角速度を示す成分
    をロール角及びピッチ角の検出値のうち対応するものと
    結合させることにより上記移動体傾斜角データを、それ
    ぞれ生成する移動体データ生成手段と、 上記目標を上記指向性アンテナが捕捉していないと見な
    せるときに、上記移動体方位データをその初期値から徐
    々に変化させつつ上記制御角決定手段を動作させ、同時
    に上記目標からの無線信号受信状態を監視することによ
    り、当該無線信号受信状態が良好になるビーム方向をサ
    ーチする仮想移動体方位法目標サーチ手段と、 上記移動体方位データを試行錯誤的に微小角度変化させ
    つつ上記制御角決定手段を動作させ、この試行錯誤的な
    変化の前後の無線信号受信状態を比較した結果に基づき
    無線信号受信状態がより良好になるように上記移動体方
    位データを変化させるという処理の繰返しを、上記仮想
    移動体方位法目標サーチ手段によるサーチに成功した後
    そのときの移動体方位データを初期値として開始する移
    動体方位ステップトラック手段と、 を備え、上記移動体方位データにより上記目標のサーチ
    及びステップトラックを実行することを特徴とする追尾
    型アンテナ装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の追尾型アンテナ装置にお
    いて、 上記移動体に固定された直交座標系を構成する3本の軸
    のうち移動体非傾斜時に鉛直方向を向くZ軸の回りでの
    上記移動体の角速度の検出値のばらつきが所定程度以下
    でありかつ上記移動体が停止している期間が生じた場合
    に、その期間における上記Z軸回りでの上記移動体の角
    速度の検出値又はこれに基づき生成した値を利用して、
    そのオフセット分が解消乃至低減されるよう当該Z軸回
    りでの上記移動体の角速度の検出値に補正を施し、その
    結果得られる補正後の値を上記移動体データ生成手段に
    おけるオイラー角表現への変換に供するオフセット補正
    手段を備えることを特徴とする追尾型アンテナ装置。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載の追尾型アンテナ装
    置において、 上記移動体が直進しているときに、GPS受信機から入
    力した方位データを利用して上記移動体方位データをプ
    リセットする移動体方位補正手段を備えることを特徴と
    する追尾型アンテナ装置。
  4. 【請求項4】 請求項1又は2記載の追尾型アンテナ装
    置において、 上記移動体が停止又は直進しておりかつ上記目標からの
    無線信号受信状態がオフビームにより所定程度以下まで
    劣化したと見なせるときに、そのときの移動体方位デー
    タ若しくはGPS受信機から入力した方位データ又はこ
    れらを結合して生成した方位データを上記移動体方位デ
    ータの初期値として、上記仮想移動体方位法目標サーチ
    手段を動作させるオフビーム時目標サーチ移行手段を備
    えることを特徴とする追尾型アンテナ装置。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の追尾型アンテナ装置にお
    いて、 オフビーム時目標サーチ移行手段が、上記移動体が直進
    しておりかつ上記目標からの無線信号受信状態がオフビ
    ームにより所定程度以下まで劣化したと見なせるとき
    に、まず、GPS受信機から入力した方位データを利用
    して上記移動体方位データをリセットし、その後も無線
    信号受信状態が十分回復しないときに、そのときの移動
    体方位データ若しくはGPS受信機から入力した方位デ
    ータ又はこれらを結合して生成した方位データを上記移
    動体方位データの初期値として、上記仮想移動体方位法
    目標サーチ手段を動作させることを特徴とする追尾型ア
    ンテナ装置。
  6. 【請求項6】 請求項4又は5記載の追尾型アンテナ装
    置において、 無線信号受信状態が所定程度以下まで劣化したとき、そ
    の劣化がブロッキングによるものなのかそれともオフビ
    ームによるものなのかを、上記目標の方位とGPS受信
    機から入力した方位データとに基づき判定するブロッキ
    ング/オフビーム判定手段を備えることを特徴とする追
    尾型アンテナ装置。
  7. 【請求項7】 請求項2乃至6記載の追尾型アンテナ装
    置において、 上記移動体方位データ又はGPS受信機からの方位デー
    タが所定の監視期間内に所定程度を下回るばらつきを呈
    したときに、上記移動体が直進していると判定する直進
    /変針判定手段を備えることを特徴とする追尾型アンテ
    ナ装置。
  8. 【請求項8】 請求項1乃至7記載の追尾型アンテナ装
    置において、 上記仰角軸制御角に与えるバイアスを試行錯誤的に微小
    角度変化させつつ上記方位軸仰角軸制御手段を動作さ
    せ、この試行錯誤的な変化の前後の無線信号受信状態を
    比較した結果に基づき無線信号受信状態がより良好にな
    るように上記バイアスを変化させるという処理を、繰返
    し実行する仰角ステップトラック手段を備えることを特
    徴とする追尾型アンテナ装置。
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