JP4963429B2 - 追尾アンテナ装置、姿勢角推定方法およびそのプログラム - Google Patents

追尾アンテナ装置、姿勢角推定方法およびそのプログラム Download PDF

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Description

本発明は、車両などの移動体に搭載され、電波を発する目標物を自動追尾する追尾アンテナ装置において、移動体の姿勢計測値に基づいてアンテナの指向方向を制御するオープンループ方式でアンテナの指向方向の制御に用いる移動体の姿勢角を精度よく推定し、オープンループ方式による追尾精度を高めた追尾アンテナ装置、姿勢角推定方法およびそのプログラムに関する。
船舶、飛行機、電車、自動車などの移動体において、衛星放送の受信や衛星通信を利用した高速インターネットアクセスを実現するためには、移動中においても衛星を精度よく追尾するアンテナ装置が必要になる。この追尾制御方式には、大別するとクローズドループ方式とオープンループ方式がある。
クローズドループ方式は、基本的にはアンテナで受信した衛星からの受信信号のレベルが最大になるようにアンテナの指向方向を制御する方式であり、代表的なものとしてモノパルス方式やステップトラック方式などがある。一方、オープンループ方式は、移動体に、移動体の姿勢角を検出するジャイロや傾斜計などの姿勢センサを搭載し、その計測値の座標変換によってアンテナの指向方向を求め、その指向方向にアンテナを制御する方式である。
クローズドループ方式は、移動体の大きな姿勢変動に対して追従することが困難な点や、衛星波が受信できない例えばビル陰やトンネルなどでは使用できない問題がある。一方、オープンループ方式は、クローズドループ方式の問題点を克服可能であるものの、姿勢センサの誤差である例えばジャイロのドリフト誤差などにより、指向方向の推定誤差が生じる問題があり、通常はこれら2つの方式が併用される。
ところで、オープンループ方式の精度が高い場合、移動体の急激な姿勢変動にも追従することができ、またトンネルなど衛星見通し外から見通しに入ったときの再捕捉が高速化されるなど、可用性が全体的に向上する。そのため、オープンループ方式の高精度化が図られてきた。単純には、高精度な姿勢センサを用いることによりオープンループ方式の高精度化は実現されるが、高精度な姿勢センサは非常に高価であるため、通常は複数のセンサを組み合わせて使用することになる。
この複数のセンサとしては、移動体の3軸を計測する角速度計であるジャイロと、ロールおよびピッチの2軸の傾斜計、GPS方位などを用いる構成が一般的である。ジャイロには、ドリフトやバイアスなど主に低域の誤差が多く含まれており、傾斜計は加速度計の一種であって移動体の細かな振動(例えばエンジンの回転など)が計測されるため、主に高域の誤差が含まれる。したがって、ジャイロの計測値にハイパスフィルタを作用させ、傾斜計やGPS方位などの計測値にローパスフィルタを作用させ、それぞれの和を計算することにより高精度な計測を実現する方法が考案されている。しかし、実際に例えば自動車などの姿勢角を計測する場合、特にブレーキ操作などの減速状況で大きな加速度が生じ、そのため傾斜計の低域成分に大きな誤差が生じるため、結果的にピッチ角の計測誤差が大きくなる。そのため、例えば特許文献1では、上記と同様のアイデアに加えて、速度計を追加することによりピッチ角の誤差を補正する操作を行い、オープンループ方式の計測精度を向上させる方法が提案されている。
特許3451308号公報「移動体通信用通信衛星追尾装置」
しかし、特許文献1では、ヨー角計測に用いるGPS方位が衛星の見通し外では使用できないばかりでなく、低速では誤差が大きい、出力が安定しない場合があるなどの問題点がある。そのため、例えば磁気方位計を利用する方法もあるが、建物などの構造物の影響を受けやすい問題があり、いずれにしても結果的にヨー角の計測誤差が大きくなる問題がある。
ところで、追尾アンテナ装置の指向方向制御において、移動体の姿勢計測値に基づいてアンテナの指向方向を制御するオープンループ方式では、移動体の姿勢推定誤差が指向方向誤差になるので、これをモノパルス方式やステップトラック方式などのクローズドループ方式で吸収し、誤差の拡大を抑制する構成になっている。
しかし、例えば移動体を急制動したときのように大きな姿勢推定誤差が生じる場合には、クローズドループ方式でこの誤差に対して追従することができず、追尾精度が劣化する要因になる。また、オープンループ方式における姿勢推定誤差を残したままトンネルなどに入って見通し外になり、そしてトンネルを抜けて見通しとなったときに、再捕捉に要する時間が余分にかかる問題があった。
本発明は、移動体の姿勢角を低コストで精度よく推定し、オープンループ方式による追尾精度を向上させることができる追尾アンテナ装置、姿勢角推定方法およびそのプログラムを提供することを目的とする。
第1の発明は、移動体に搭載されるアンテナの指向方向を設定する指向方向駆動部と、移動体の姿勢計測値に基づいてアンテナの指向方向を制御するオープンループ方式およびアンテナの受信信号に基づいてアンテナの指向方向を制御するクローズドループ方式を併用し、アンテナの指向方向を電波を発する目標物の方向に制御する制御値を生成して指向方向駆動部に与える指向方向制御部とを備えた追尾アンテナ装置において、目標物の方向である絶対方位角と絶対仰角を記憶する目標物方向記憶部と、アンテナが目標物を捕捉したときに、移動体の方向に対するアンテナの相対的な指向方向である相対方位角と相対仰角を計測する指向方向計測部と、移動体の姿勢角であるロール角、ピッチ角、ヨー角を記憶する姿勢角記憶部と、移動体の3軸方向の角速度を計測する角速度計測部と、角速度計測部で得られた移動体角速度と、姿勢角記憶部に記憶された姿勢角を入力し、移動体角速度を姿勢角方向の角速度に座標変換した後に積分し、姿勢角高域成分を抽出する姿勢角高域成分抽出部と、移動体のロール角方向の水平面からの傾きであるロール傾斜角を計測するロール傾斜角計測部と、ロール傾斜角計測部で計測されたロール傾斜角からロール角低域成分を抽出するロール角低域成分抽出部と、姿勢角高域成分抽出部で抽出された姿勢角高域成分のロール角高域成分と、ロール角低域成分抽出部で抽出されたロール角低域成分とを加算してロール角として出力するロール角計算部と、目標物方向記憶部に記憶された絶対方位角および絶対仰角と、指向方向計測部で計測された相対方位角および相対仰角と、ロール角計算部で得られたロール角とを入力し、移動体のヨー角を推定するヨー角推定部と、ヨー角推定部で推定されたヨー角からヨー角低域成分を抽出するヨー角低域成分抽出部と、姿勢角高域成分抽出部で抽出された姿勢角高域成分のヨー角高域成分と、ヨー角低域成分抽出部で抽出されたヨー角低域成分とを加算してヨー角として出力するヨー角計算部と、目標物方向記憶部に記憶された絶対方位角および絶対仰角と、指向方向計測部で計測された相対方位角および相対仰角と、ヨー角計算部で得られたヨー角とを入力して移動体のピッチ角を推定するピッチ角推定部と、ピッチ角推定部で推定されたピッチ角からピッチ角低域成分を抽出するピッチ角低域成分抽出部と、姿勢角高域成分抽出部で抽出された姿勢角高域成分のピッチ角高域成分と、ピッチ角低域成分抽出部で抽出されたピッチ角低域成分とを加算してピッチ角として出力するピッチ角計算部とを備え、移動体の姿勢角としてロール角計算部、ヨー角計算部、ピッチ角計算部からそれぞれ出力されるロール角、ヨー角、ピッチ角を姿勢角記憶部に記憶するとともに、指向方向制御部のオープンループ方式による制御に供する構成である。
第2の発明は、第1の発明のヨー角推定部に代えて、目標物方向記憶部に記憶された絶対方位角と、指向方向計測部で計測された相対方位角とを入力し、移動体のヨー角を推定するヨー角推定部を用いる構成である。
第3の発明のピッチ角推定部は、第1の発明または第2の発明のヨー角計算部で求めたヨー角に代えて、ヨー角推定部で推定したヨー角を用いる構成である。第4の発明のピッチ角推定部は、ヨー角計算部で求めたヨー角に代えて、ヨー角低域成分抽出部で抽出したヨー角低域成分を用いる構成である。
第5の発明は、移動体に搭載されるアンテナの指向方向を電波を発する目標物に自動追尾させる追尾アンテナ装置で、移動体の姿勢計測値に基づいてアンテナの指向方向を制御するオープンループ方式に用いる移動体の姿勢角を推定する姿勢角推定方法において、目標物の方向である絶対方位角と絶対仰角を有し、アンテナが目標物を捕捉したときに、移動体の方向に対するアンテナの相対的な指向方向である相対方位角と相対仰角を計測しておき、さらに、移動体の3軸方向の移動体角速度を計測し、移動体の姿勢角であるロール角、ピッチ角、ヨー角と、移動体角速度とを入力し、移動体角速度を姿勢角方向の角速度に座標変換した後に積分して姿勢角高域成分を抽出する第1のステップと、移動体のロール角方向の水平面からの傾きであるロール傾斜角を計測し、ロール傾斜角の低域成分であるロール角低域成分を抽出する第2のステップと、姿勢角高域成分のロール角高域成分と、ロール角低域成分とを加算してロール角として算出する第3のステップと、目標物の絶対方位角および絶対仰角と、相対方位角および相対仰角と、ロール角とを入力して移動体のヨー角を推定する第4のステップと、ヨー角の低域成分であるヨー角低域成分を抽出する第5のステップと、姿勢角高域成分のヨー角高域成分と、ヨー角低域成分とを加算してヨー角として算出する第6のステップと、目標物の絶対方位角および絶対仰角と、相対方位角および相対仰角と、第6のステップで求めたヨー角とを入力して移動体のピッチ角を推定する第7のステップと、ピッチ角の低域成分であるピッチ角低域成分を抽出する第8のステップと、姿勢角高域成分のピッチ角高域成分と、ピッチ角低域成分とを加算してピッチ角として算出する第9のステップとを有し、第3のステップ、第6のステップ、第9のステップで移動体の姿勢角として算出されたロール角、ヨー角、ピッチ角をオープンループ方式による制御に供することを特徴とする。
第6の発明は、第5の発明の第4のステップに代えて、目標物の絶対方位角と、相対方位角とを入力して移動体のヨー角を推定する第4のステップを用いる。
第7の発明の第7のステップは、第5の発明または第6の発明の第6のステップで求めたヨー角に代えて、第4のステップで推定したヨー角を用いる。第8の発明の第7のステップは、第5の発明または第6の発明の第6のステップで求めたヨー角に代えて、第5のステップで抽出したヨー角低域成分を用いる。
第9の発明は、第5〜第8の発明のいずれかに記載の各ステップを実行させるためのコンピュータ読み取り可能なプログラムである。
本発明は、移動体の姿勢角を低コストで精度よく推定することができ、オープンループ方式による追尾精度を向上させることができる。これにより、追尾精度が上がり、再捕捉時間を短縮することができ、低コストで高性能な追尾アンテナ装置を実現することができる。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の追尾アンテナ装置の第1の実施形態を示す。
図において、移動体に搭載されるアンテナ11の指向方向は、指向方向駆動部12により設定される。指向方向駆動部12は、アンテナ11の仰角および方位角を機械的に設定する場合には例えばモータを駆動し、アンテナ11として電気的に指向方向を可変できるフェーズドアレイアンテナを用いる場合には各アンテナ素子に対応する移相器の位相を設定する構成である。指向方向制御部13は、オープンループ方式およびクローズドループ方式を併用し、アンテナ11の指向方向を制御する制御値を生成して指向方向駆動部12に与える。目標物方向記憶部14は、目標物の方向である絶対方位角と絶対仰角を記憶する。指向方向計測部15は、アンテナ11が目標物を捕捉したときに、移動体の方向に対するアンテナ11の相対的な指向方向である相対方位角と相対仰角を計測する。
姿勢角記憶部27は、移動体の姿勢角であるロール角、ピッチ角、ヨー角を記憶する。角速度計測部16は、移動体の3軸方向の角速度を計測する。姿勢角高域成分抽出部17は、角速度計測部16で得られた移動体角速度と、姿勢角記憶部27に記憶された姿勢角を入力し、移動体角速度を姿勢角方向の角速度に座標変換した後に積分し、高域成分を抽出する。
ロール傾斜角計測部18は、移動体のロール角方向の水平面からの傾きであるロール傾斜角を計測する。ロール角低域成分抽出部19は、ロール傾斜角計測部18で計測されたロール傾斜角の低域成分を抽出する。ロール角計算部20は、姿勢角高域成分抽出部17で抽出された姿勢角高域成分のロール角高域成分と、ロール角低域成分抽出部19で抽出されたロール角低域成分とを加算してロール角として出力する。
ヨー角推定部21は、目標物方向記憶部14に記憶された絶対方位角および絶対仰角と、指向方向計測部15で計測された相対方位角および相対仰角と、ロール角計算部20で得られたロール角とを入力して移動体のヨー角を推定する。ヨー角低域成分抽出部22は、ヨー角推定部21で推定されたヨー角の低域成分を抽出する。ヨー角計算部23は、姿勢角高域成分抽出部17で抽出された姿勢角高域成分のヨー角高域成分と、ヨー角低域成分抽出部22で抽出されたヨー角低域成分とを加算してヨー角として出力する。
ピッチ角推定部24は、目標物方向記憶部14に記憶された絶対方位角および絶対仰角と、指向方向計測部15で計測された相対方位角および相対仰角と、ヨー角計算部23で得られたヨー角とを入力して移動体のピッチ角を推定する。ピッチ角低域成分抽出部25は、ピッチ角推定部24で推定されたピッチ角の低域成分を抽出する。ピッチ角計算部26は、姿勢角高域成分抽出部17で抽出された姿勢角高域成分のピッチ角高域成分と、ピッチ角低域成分抽出部25で抽出されたピッチ角低域成分とを加算してピッチ角として出力する。
姿勢角記憶部27は、移動体の姿勢角としてロール角計算部20、ヨー角計算部23、ピッチ角計算部26からそれぞれ出力されるロール角、ヨー角、ピッチ角を記憶し、指向方向制御部13のオープンループ方式による制御および姿勢角高域成分抽出部17に提供する。
以下、移動体の姿勢角Θ(ロール角φ、ピッチ角θ、ヨー角ψ)を高精度に算出するアルゴリズムについて説明する。移動体の姿勢角Θは
Θ= [φ θ ψ] T
と表される。角速度計測部16として用いる3軸角速度計(ジャイロ)の計測値ωは
ω= [ωx ωy ωz ] T
と表される。
目標物方向の絶対方位角AZ、絶対仰角ELとし、移動体から見た相対的な目標物方向の相対方位角az、相対仰角elとする。ここで、絶対方位角AZ、絶対仰角EL、相対方位角az、相対仰角elはそれぞれ確かな値であり、相対方位角az、相対仰角elは例えば指向方向駆動部12のロータリーエンコーダなどにより正確に計測される。
角速度計測部16の計測値ωは、以下の公知の式を用いて姿勢角Θへ変換される。
Figure 0004963429
姿勢角高域成分抽出部17は、式(1) によりdΘ/dtを求め、時間積分により姿勢角Θを求める。ただし、この姿勢角Θは低域成分に誤差を多く含むため、ハイパスフィルタを通過させて姿勢角の高域成分(φHPF 、θHPF 、ψHPF )を抽出する。
一方、衛星を捕捉している状態では、幾何学的に以下の式が厳密に成立する。
sin(ψ+AZ)cos(EL)=cosφsin(az)cos(el)+sinφsin(el) …(2)
cosθcos(ψ+AZ)cos(EL)−sinθsin(EL) =cos(az)cos(el) …(3)
すなわち、衛星の捕捉状態では、上記のようにAZ、ELとaz、elはほぼ正確に得られるため、姿勢角のロール角φ、ピッチ角θ、ヨー角ψのうちいずれか1つの角度が正確に分かれば、残りの2つの角度も正確に計算することができる。本発明では、式(2) と式(3) を用いて、1つの姿勢角を基準として残りの2つの姿勢角を求め、得られた2つの姿勢角の低域成分を使って高域成分と加算し、計測値とする。
なお、ロール角の計測値が大きな誤差を生じる場合は、急旋回により遠心加速度が生じ、ロール方向の傾斜計の計測誤差が大きくなることが考えられる。一方、実測したところ、移動体の直進方向の加速度外乱の頻度が高く、すなわちピッチ方向の傾斜計に与える影響が大きく、またGPS方位や磁気方位も高精度でないことから、ヨー角の精度も低いことが分かった。したがって、本発明では基準となる姿勢角としてロール角φを採用する。
まず、ロール傾斜角計測部18は、傾斜計または加速度計を用いてロール傾斜角φを計測する。ここではφ1 とする。ロール角低域成分抽出部19は、ローパスフィルタを用いてロール傾斜角φ1 の低域成分を抽出する。ここではφ1LPFとする。ロール角計算部20は、このロール角低域成分φ1LPFと、姿勢角高域成分抽出部17から入力するロール角高域成分φHPF と加算し、ロール角φを求める。
次に、ヨー角推定部21では、絶対方位角AZ、絶対仰角EL、相対方位角az、相対仰角elと、ロール角計算部2 20で求めたロール角φを式(2) に代入する処理を行い、ヨー角ψを得る。ここではψ1 とする。ヨー角低域成分抽出部22では、ローパスフィルタを用いてヨー角ψ1 の低域成分を抽出する。ここではψ1LPFとする。ヨー角計算部23は、このヨー角低域成分ψ1LPFと、姿勢角高域成分抽出部17から入力するヨー角高域成分ψHPF と加算し、ヨー角ψを求める。
さらに、ピッチ角推定部24では、絶対方位角AZ、絶対仰角EL、相対方位角az、相対仰角elと、ヨー角計算部23で求めたヨー角ψを式(3) に代入する処理を行い、ピッチ角θを得る。ここではθ1 とする。ピッチ角低域成分抽出部25では、ローパスフィルタを用いてピッチ角θ1 の低域成分を抽出する。ここではθ1LPFとする。ピッチ角計算部26は、このピッチ角低域成分θ1LPFと、姿勢角高域成分抽出部17から入力するピッチ角高域成分θHPF と加算し、ピッチ角θを求める。
(第2の実施形態)
図2は、本発明の追尾アンテナ装置の第2の実施形態を示す。
本実施形態の特徴は、ヨー角推定部21において、ロール角計算部20で得られたロール角を利用せず、目標物方向記憶部14に記憶された絶対方位角と、指向方向計測部15で計測された相対方位角とを入力して移動体のヨー角を推定するところにある。その他の構成は第1の実施形態と同様である。
式(2) において、低域ではφ=0、el=ELとみなすと、
sin(ψ+AZ)cos(EL)=sin(az)cos(el) …(4)
となり、
ψ+AZ=az …(5)
となる。
ヨー角推定部21では、絶対方位角AZおよび相対方位角azを式(5) に代入する処理を行い、ヨー角ψを得る。ここではψ2 とする。ヨー角低域成分抽出部22では、ローパスフィルタを用いてヨー角ψ2 の低域成分を抽出する。ここではψ2LPFとする。ヨー角計算部23は、このヨー角の低域成分ψ2LPFと、姿勢角高域成分抽出部17から入力するヨー角の高域成分と加算し、ヨー角ψを求める。
(第3の実施形態)
図3は、本発明の追尾アンテナ装置の第3の実施形態を示す。
第1の実施形態の構成におけるピッチ角推定部24では、絶対方位角AZ、絶対仰角EL、相対方位角az、相対仰角elと、ヨー角計算部23で求めたヨー角ψを式(3) に代入してピッチ角θを推定していた。
本実施形態では、ヨー角計算部23で求めたヨー角ψに代えて、ヨー角推定部21で推定したヨー角ψ1 を用いる構成としたものである。すなわち、
cosθcos(ψ1+AZ)cos(EL)−sinθsin(EL) =cos(az)cos(el) …(6)
を用いることを特徴とする。これは、第2の実施形態の構成にも同様に適用することができる。
(第4の実施形態)
図4は、本発明の追尾アンテナ装置の第4の実施形態を示す。
第1の実施形態の構成におけるピッチ角推定部24では、絶対方位角AZ、絶対仰角EL、相対方位角az、相対仰角elと、ヨー角計算部23で求めたヨー角ψを式(3) に代入してピッチ角θを推定していた。
本実施形態では、ヨー角計算部23で求めたヨー角ψに代えて、ヨー角低域成分抽出部22で抽出したヨー角ψ1LPFを用いる構成としたものである。すなわち、
cosθcos(ψ1LPF+AZ)cos(EL)−sinθsin(EL) =cos(az)cos(el) …(7)
を用いることを特徴とする。これは、第2の実施形態の構成にも同様に適用することができる。
(他の実施形態)
衛星を捕捉していない状態では、式(2) と式(3) は成立しないため、特にヨー角の低域成分を補償することかできない。そのため、未捕捉直前のヨー角を初期値として式(1) の計算を行い、得られたヨー角を計測値としてオープンループ方式に使用すればよい。また、ピッチ角については、同様に未捕捉直前のピッチ角を初期値として式(1) の計算を行ってもよいし、例えばトンネル内では大きく減速する状況はあまり生じないので、ピッチ方向の傾斜計を使用してピッチ角の低域成分を求めてもよい。いずれの方法でも、未捕捉直前まで精度よく姿勢角を計測しているため、オープンループ方式の誤差が小さくなっており、再捕捉時間を短縮することができる。
本発明の第1の実施形態を示す図。 本発明の第2の実施形態を示す図。 本発明の第3の実施形態を示す図。 本発明の第4の実施形態を示す図。
符号の説明
11 アンテナ
12 指向方向駆動部
13 指向方向制御部
14 目標物方向記憶部
15 指向方向計測部
16 角速度計測部
17 姿勢角高域成分抽出部
18 ロール傾斜角計測部
19 ロール角低域成分抽出部
20 ロール角計算部
21 ヨー角推定部
22 ヨー角低域成分抽出部
23 ヨー角計算部
24 ピッチ角推定部
25 ピッチ角低域成分抽出部
26 ピッチ角計算部
27 姿勢角記憶部

Claims (9)

  1. 移動体に搭載されるアンテナの指向方向を設定する指向方向駆動部と、
    前記移動体の姿勢計測値に基づいて前記アンテナの指向方向を制御するオープンループ方式および前記アンテナの受信信号に基づいて前記アンテナの指向方向を制御するクローズドループ方式を併用し、前記アンテナの指向方向を電波を発する目標物の方向に制御する制御値を生成して前記指向方向駆動部に与える指向方向制御部と
    を備えた追尾アンテナ装置において、
    前記目標物の方向である絶対方位角と絶対仰角を記憶する目標物方向記憶部と、
    前記アンテナが前記目標物を捕捉したときに、前記移動体の方向に対する前記アンテナの相対的な指向方向である相対方位角と相対仰角を計測する指向方向計測部と、
    前記移動体の姿勢角であるロール角、ピッチ角、ヨー角を記憶する姿勢角記憶部と、
    前記移動体の3軸方向の角速度を計測する角速度計測部と、
    前記角速度計測部で得られた移動体角速度と、前記姿勢角記憶部に記憶された姿勢角を入力し、移動体角速度を姿勢角方向の角速度に座標変換した後に積分し、姿勢角高域成分を抽出する姿勢角高域成分抽出部と、
    前記移動体のロール角方向の水平面からの傾きであるロール傾斜角を計測するロール傾斜角計測部と、
    前記ロール傾斜角計測部で計測されたロール傾斜角からロール角低域成分を抽出するロール角低域成分抽出部と、
    前記姿勢角高域成分抽出部で抽出された姿勢角高域成分のロール角高域成分と、前記ロール角低域成分抽出部で抽出されたロール角低域成分とを加算してロール角として出力するロール角計算部と、
    前記目標物方向記憶部に記憶された絶対方位角および絶対仰角と、前記指向方向計測部で計測された相対方位角および相対仰角と、前記ロール角計算部で得られたロール角とを入力し、前記移動体のヨー角を推定するヨー角推定部と、
    前記ヨー角推定部で推定されたヨー角からヨー角低域成分を抽出するヨー角低域成分抽出部と、
    前記姿勢角高域成分抽出部で抽出された姿勢角高域成分のヨー角高域成分と、前記ヨー角低域成分抽出部で抽出されたヨー角低域成分とを加算してヨー角として出力するヨー角計算部と、
    前記目標物方向記憶部に記憶された絶対方位角および絶対仰角と、前記指向方向計測部で計測された相対方位角および相対仰角と、前記ヨー角計算部で得られたヨー角とを入力して移動体のピッチ角を推定するピッチ角推定部と、
    前記ピッチ角推定部で推定されたピッチ角からピッチ角低域成分を抽出するピッチ角低域成分抽出部と、
    前記姿勢角高域成分抽出部で抽出された姿勢角高域成分のピッチ角高域成分と、前記ピッチ角低域成分抽出部で抽出されたピッチ角低域成分とを加算してピッチ角として出力するピッチ角計算部と
    を備え、前記移動体の姿勢角として前記ロール角計算部、前記ヨー角計算部、前記ピッチ角計算部からそれぞれ出力されるロール角、ヨー角、ピッチ角を前記姿勢角記憶部に記憶するとともに、前記指向方向制御部のオープンループ方式による制御に供する構成である
    ことを特徴とする追尾アンテナ装置。
  2. 移動体に搭載されるアンテナの指向方向を設定する指向方向駆動部と、
    前記移動体の姿勢計測値に基づいて前記アンテナの指向方向を制御するオープンループ方式および前記アンテナの受信信号に基づいて前記アンテナの指向方向を制御するクローズドループ方式を併用し、前記アンテナの指向方向を電波を発する目標物の方向に制御する制御値を生成して前記指向方向駆動部に与える指向方向制御部と
    を備えた追尾アンテナ装置において、
    前記目標物の方向である絶対方位角と絶対仰角を記憶する目標物方向記憶部と、
    前記アンテナが前記目標物を捕捉したときに、前記移動体の方向に対する前記アンテナの相対的な指向方向である相対方位角と相対仰角を計測する指向方向計測部と、
    前記移動体の姿勢角であるロール角、ピッチ角、ヨー角を記憶する姿勢角記憶部と、
    前記移動体の3軸方向の角速度を計測する角速度計測部と、
    前記角速度計測部で得られた移動体角速度と、前記姿勢角記憶部に記憶された姿勢角を入力し、移動体角速度を姿勢角方向の角速度に座標変換した後に積分し、姿勢角高域成分を抽出する姿勢角高域成分抽出部と、
    前記移動体のロール角方向の水平面からの傾きであるロール傾斜角を計測するロール傾斜角計測部と、
    前記ロール傾斜角計測部で計測されたロール傾斜角からロール角低域成分を抽出するロール角低域成分抽出部と、
    前記姿勢角高域成分抽出部で抽出された姿勢角高域成分のロール角高域成分と、前記ロール角低域成分抽出部で抽出されたロール角低域成分とを加算してロール角として出力するロール角計算部と、
    前記目標物方向記憶部に記憶された絶対方位角と、前記指向方向計測部で計測された相対方位角とを入力し、前記移動体のヨー角を推定するヨー角推定部と、
    前記ヨー角推定部で推定されたヨー角からヨー角低域成分を抽出するヨー角低域成分抽出部と、
    前記姿勢角高域成分抽出部で抽出された姿勢角高域成分のヨー角高域成分と、前記ヨー角低域成分抽出部で抽出されたヨー角低域成分とを加算してヨー角として出力するヨー角計算部と、
    前記目標物方向記憶部に記憶された絶対方位角および絶対仰角と、前記指向方向計測部で計測された相対方位角および相対仰角と、前記ヨー角計算部で得られたヨー角とを入力して移動体のピッチ角を推定するピッチ角推定部と、
    前記ピッチ角推定部で推定されたピッチ角からピッチ角低域成分を抽出するピッチ角低域成分抽出部と、
    前記姿勢角高域成分抽出部で抽出された姿勢角高域成分のピッチ角高域成分と、前記ピッチ角低域成分抽出部で抽出されたピッチ角低域成分とを加算してピッチ角として出力するピッチ角計算部と
    を備え、前記移動体の姿勢角として前記ロール角計算部、前記ヨー角計算部、前記ピッチ角計算部からそれぞれ出力されるロール角、ヨー角、ピッチ角を前記姿勢角記憶部に記憶するとともに、前記指向方向制御部のオープンループ方式による制御に供する構成である
    ことを特徴とする追尾アンテナ装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の追尾アンテナ装置において、
    前記ピッチ角推定部は、前記ヨー角計算部で求めたヨー角に代えて、前記ヨー角推定部で推定したヨー角を用いる構成である
    ことを特徴とする追尾アンテナ装置。
  4. 請求項1または請求項2に記載の追尾アンテナ装置において、
    前記ピッチ角推定部は、前記ヨー角計算部で求めたヨー角に代えて、前記ヨー角低域成分抽出部で抽出したヨー角低域成分を用いる構成である
    ことを特徴とする追尾アンテナ装置。
  5. 移動体に搭載されるアンテナの指向方向を電波を発する目標物に自動追尾させる追尾アンテナ装置で、移動体の姿勢計測値に基づいてアンテナの指向方向を制御するオープンループ方式に用いる移動体の姿勢角を推定する姿勢角推定方法において、
    前記目標物の方向である絶対方位角と絶対仰角を有し、
    前記アンテナが前記目標物を捕捉したときに、前記移動体の方向に対する前記アンテナの相対的な指向方向である相対方位角と相対仰角を計測しておき、さらに、
    前記移動体の3軸方向の移動体角速度を計測し、前記移動体の姿勢角であるロール角、ピッチ角、ヨー角と、前記移動体角速度とを入力し、前記移動体角速度を姿勢角方向の角速度に座標変換した後に積分して姿勢角高域成分を抽出する第1のステップと、
    前記移動体のロール角方向の水平面からの傾きであるロール傾斜角を計測し、前記ロール傾斜角の低域成分であるロール角低域成分を抽出する第2のステップと、
    前記姿勢角高域成分のロール角高域成分と、前記ロール角低域成分とを加算してロール角として算出する第3のステップと、
    前記目標物の絶対方位角および絶対仰角と、前記相対方位角および相対仰角と、前記ロール角とを入力して前記移動体のヨー角を推定する第4のステップと、
    前記ヨー角の低域成分であるヨー角低域成分を抽出する第5のステップと、
    前記姿勢角高域成分のヨー角高域成分と、前記ヨー角低域成分とを加算してヨー角として算出する第6のステップと、
    前記目標物の絶対方位角および絶対仰角と、前記相対方位角および相対仰角と、前記第6のステップで求めた前記ヨー角とを入力して移動体のピッチ角を推定する第7のステップと、
    前記ピッチ角の低域成分であるピッチ角低域成分を抽出する第8のステップと、
    前記姿勢角高域成分のピッチ角高域成分と、前記ピッチ角低域成分とを加算してピッチ角として算出する第9のステップとを有し、
    前記第3のステップ、前記第6のステップ、前記第9のステップで移動体の姿勢角として算出されたロール角、ヨー角、ピッチ角を前記オープンループ方式による制御に供することを特徴とする姿勢角推定方法。
  6. 移動体に搭載されるアンテナの指向方向を電波を発する目標物に自動追尾させる追尾アンテナ装置で、前記移動体の姿勢計測値に基づいて前記アンテナの指向方向を制御するオープンループ方式に用いる移動体の姿勢角を推定する姿勢角推定方法において、
    前記目標物の方向である絶対方位角と絶対仰角を有し、
    前記アンテナが前記目標物を捕捉したときに、前記移動体の方向に対する前記アンテナの相対的な指向方向である相対方位角と相対仰角を計測しておき、さらに、
    前記移動体の3軸方向の移動体角速度を計測し、前記移動体の姿勢角であるロール角、ピッチ角、ヨー角と、前記移動体角速度とを入力し、前記移動体角速度を姿勢角方向の角速度に座標変換した後に積分して姿勢角高域成分を抽出する第1のステップと、
    前記移動体のロール角方向の水平面からの傾きであるロール傾斜角を計測し、前記ロール傾斜角の低域成分であるロール角低域成分を抽出する第2のステップと、
    前記姿勢角高域成分のロール角高域成分と、前記ロール角低域成分とを加算してロール角として算出する第3のステップと、
    前記目標物の絶対方位角と、前記相対方位角とを入力して前記移動体のヨー角を推定する第4のステップと、
    前記ヨー角の低域成分であるヨー角低域成分を抽出する第5のステップと、
    前記姿勢角高域成分のヨー角高域成分と、前記ヨー角低域成分とを加算してヨー角として算出する第6のステップと、
    前記目標物の絶対方位角および絶対仰角と、前記相対方位角および相対仰角と、前記第6のステップで求めた前記ヨー角とを入力して移動体のピッチ角を推定する第7のステップと、
    前記ピッチ角の低域成分であるピッチ角低域成分を抽出する第8のステップと、
    前記姿勢角高域成分のピッチ角高域成分と、前記ピッチ角低域成分とを加算してピッチ角として算出する第9のステップとを有し、
    前記第3のステップ、前記第6のステップ、前記第9のステップで移動体の姿勢角として算出されたロール角、ヨー角、ピッチ角を前記オープンループ方式による制御に供することを特徴とする姿勢角推定方法。
  7. 請求項5または請求項6に記載の姿勢角推定方法において、
    前記第7のステップは、前記第6のステップで求めたヨー角に代えて、前記第4のステップで推定したヨー角を用いる
    ことを特徴とする姿勢角推定方法。
  8. 請求項5または請求項6に記載の姿勢角推定方法において、
    前記第7のステップは、前記第6のステップで求めたヨー角に代えて、前記第5のステップで抽出したヨー角低域成分を用いる
    ことを特徴とする姿勢角推定方法。
  9. コンピュータに、請求項5〜請求項8のいずれかに記載の各ステップを実行させるためのコンピュータ読み取り可能なプログラム。
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