JP3140242B2 - 光学素子の成形用金型、成形方法、および光学素子成形装置 - Google Patents

光学素子の成形用金型、成形方法、および光学素子成形装置

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JP3140242B2 JP05037651A JP3765193A JP3140242B2 JP 3140242 B2 JP3140242 B2 JP 3140242B2 JP 05037651 A JP05037651 A JP 05037651A JP 3765193 A JP3765193 A JP 3765193A JP 3140242 B2 JP3140242 B2 JP 3140242B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光学機器に使用される
光学素子(レンズに代表する)を精密成形法により形成
するための光学素子成形金型、光学素子の成形方法、お
よび光学素子成形装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、光学レンズを、研磨工程なしの一
発成形により形成する試みが多くなされ、現在レンズメ
−カ−各社では量産段階にある。
【0003】ガラス素材を溶融状態から型に流しこみ加
圧成形するのが最も能率的であるが冷却時のガラスの収
縮を制御することが難しく、精密なレンズ成形には適さ
ない。
【0004】従って、例えば、特開昭58−8413号
公報や特開昭60−200833号公報などに記載の様
に、ガラス素材を一定の形状に予備加工して、これを成
形型の間に供給し、加熱、押圧成形するのが一般的な成
形方法である。
【0005】一方、光学設計の観点からは、球面レンズ
系における種々の収差補正を目的として、成形により得
られた軸対称な非球面レンズを導入した光学系が急速に
普及してきた。
【0006】図5および図6は、軸対称の成形型を用い
た非球面レンズの成形法のひとつにより、球形状のガラ
ス素材を成形して非球面レンズを形成した状態を示す断
面図である。61、62は円柱状の片側端面に非球面形
状の光学機能面61a、62aが形成された上下型、6
3は上下型をガイドすると同時にレンズ厚みを規制する
胴型、64は球形状のガラス素材、66、67はヒ−タ
−65を内蔵する上下の加熱板、68は加圧機構を有す
る成形装置の一部である。
【0007】ガラス素材を成形型の中に供給し、上下の
加熱板66、67により型およびガラス素材をガラスの
軟化点近傍の温度まで加熱し、上下型61、62により
ガラス素材64を加圧変形する。変形は、レンズ厚みを
規制する胴型63bの上端面に上加熱板66が当接する
まで続行して完了する。変形終了後、徐々に冷却してレ
ンズが取り出せる温度になると型を開きレンズを取り出
す。その結果、図6に示すように成形レンズ71は金型
とは反対形状の非球面形状61a、62aが精密に転写
されたレンズが得られる。
【0008】上述した非球面レンズのほとんどは軸対称
形状のものが主流であり、片面あるいは両面に非球面形
状を有したレンズである。したがって、成形に用いられ
る成形型は、単に円柱形状の端面に所望する非球面形状
を加工すればよく、加工時の芯出しは従来の切削加工時
の方法でよく、加工法においても切削および研削法のい
ずれにおいても高精度な金型加工が実現できる。
【0009】特にレ−ザ−光学系ではフォ−カスレンズ
の様に単にスポットを結像させたり、コリメ−トするだ
けでなく、レ−ザ−光の利用効率をより高めるために、
レ−ザ−ビ−ムを自在に整形できるレンズが望まれてい
る。例えばレ−ザ−ビ−ムプリンタ−の走査光学系では
レ−ザ−光の伝達効率を高めるために、コリメ−タ、ビ
−ム整形プリズム、球面レンズ、シリンダ−レンズ等の
機能を1枚に持たせた片面若しくは両面がト−リック
面、あるいはアナモフィック面のような軸非対称レンズ
等が考えられる。
【0010】両面が軸非対称な面を有したレンズの場合
には、第1面側、第2面側の相互の位置関係をより精度
よく決定されなければならない。そのためには図4
(A)、(C)の様に成形金型51、52の外形を角型
にし、さらに図5(B)の様に成形金型をガイドする胴
型53も角孔に構成して成形されたレンズ両面の位置関
係(多くは光軸ずれとねじれ成分)を保証するのが一般
的である。
【0011】ちなみに図4(A)における片側の金型5
1の光学機能面RXは凹面、RYも凹面のアナモフィッ
ク面であり、曲率半径はRY〈RXの関係である。ま
た、図中(C)における他方の金型52の光学機能面R
Xが凹面、RYが凸面のアナモフィック面で曲率半径は
RY〈RXの関係である。また、上下型51、52は胴
型53に所定のクリアランスで勘合される。上述した構
成の金型を用いて従来法による成形では種々の課題を解
決する必要がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】上述した構成の金型、
成形方法、成形装置では次に挙げる三つの課題を有す
る。 (a)上下金型および胴型の加工精度、すなわち寸法精
度や直角度、型と胴型とのクリアランス等の誤差によっ
て上下の金型にねじれ成分や光軸ずれが発生し、よって
成形されたレンズは所望の光学性能が満たされない金型
構成である。 (b)得ようとするレンズ厚みが大きい程、レンズの収
縮量が大きく、変形完了時点で金型成形面と1:1の転
写面を得たとしても冷却時にその形状を崩しレンズ性能
を満足しない成形方法である。 (c)変形時点では面転写が得られたとしても、冷却時
のレンズの収縮に追随して、必要な加圧力を加えること
ができない成形装置である。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記(a)〜(c)の課
題に対応して、本願発明では、それぞれ (a)光学素子のプレス成形に用いる光学素子成形用金
型において、上型を収容して摺動移動せしめる第1の胴
型と、該胴型に前記上型の光軸と同一軸芯状に下型が圧
入固定され、かつ、前記上下型および第1の胴型を包含
するように第2の胴型を有した金型構成を用いるもので
ある。 (b)上下型と該上下型および被成形素材を収容する第
1の胴型と、該第1の胴型を包含するがごとく第2の胴
型を配し一体となすように成形ブロックを組み立てる工
程と、該成形ブロック全体を、前記、被成形素材が変形
可能な温度まで予熱する余熱工程と、前記上下型を介
し、前記被成形素材を第2の胴型で寸法規制されことな
く所定量を残して変形する変形工程と、変形完了後、成
形ブロックをその上下面から冷却固化しつつ、かつ、上
型を介し被成形素材にのみ所定量だけ変形させる加圧を
続行する冷却加圧工程とを具備し、上記余熱、変形、冷
却加圧の各工程を上記の順序で実施する成形方法を用い
るものである。 (c)上下型と該上下型および被成形素材を収容する第
1の胴型と、該第1の胴型を包含するがごとく第2の胴
型を配し一体となした成形ブロックを、接触面が平面状
の上下加熱板を備え、前記成形ブロックの上下面から余
熱、変形、冷却の各工程を順次搬送して行う光学素子の
成形装置において、前記、冷却工程を構成する上加熱版
に前記上型を押圧する押圧部と、前記第2の胴型を押圧
する押圧平面部とが併設され、前記押圧部と押圧平面部
との間に所定の段差を有する成形装置を用いるものであ
る。
【0014】
【作用】(a)における作用は、従来、下型と第1の胴
型とは所定のクリアランスで勘合されていたものを所定
位置に圧入固定にすることで、下型および第1の胴型の
加工誤差等によって生じる上下レンズ面の光軸ずれや、
ねじれ成分の低減に作用する。
【0015】(b)における作用は、冷却工程中に被成
形素材の収縮量の範囲内で加圧を続行することで厚みの
大きなレンズであっても成形面の転写性向上に作用す
る。
【0016】(c)における作用は、レンズの厚み規制
と、転写性の両者を精密に制御できることに作用する。
【0017】
【実施例】
(実施例1)以下、本発明の光学素子の成形用金型の一
実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】図1(A)は、本実施例における成形用金
型20の構成を示すものであり、下型12と第1の胴型
13がスペ−サ14を介して圧入固定されている。下型
12と胴型13の角穴とは四方に約10μmの間隙を有
するように作成されており、スペ−サ14により上記間
隙の範囲内で下型と胴型との位置関係が調整される。す
なわち摺動する上型11との光軸ずれ、ねじれ成分がキ
ャンセルされるように調整する役目を果たす。
【0019】特に図1(B)は、ねじれ成分が調整され
た状態を示し、スペ−サは下型の四隅の四箇所もしくは
二箇所に配し挿入されている。第2の胴型15は、第1
の胴型の周囲に配置されており成形されるレンズの厚み
を規制する。成形用金型20の上下には成形装置の一部
であるヒ−タ16を内蔵する上下加熱板17と、加圧機
構18を示す。19は、成形で得られたレンズである。
【0020】尚、上型11、下型12は従来技術の図4
(A)、(C)で説明したものと同様の光学機能を有
し、11mm角の形状に加工した。したがって成形で得
られるレンズは外形11mm×厚み10mmである。
【0021】最適な下型の配置は、以下の手順で求めら
れる。まず、下型の四方に等しい厚みのスペ−サを挿入
して下型12を第1の胴型13に圧入固定する。上記の
状態で図5で説明した従来方法でレンズ成形を行い、得
られたレンズをフィ−ゾ型の干渉計を用いて透過波面収
差を測定した。
【0022】その結果、レンズ両面の軸ずれ成分はほと
んど無いことが判明した。しかし、ねじれ成分が発生し
ている収差を確認した。その結果に基ずいて下型12と
第1の胴型13との間隙にそれぞれ挿入するスペ−サ1
4の厚みと配分は、12μm厚と8μm厚のスペーサを
準備し、挿入した位置は、前記で得られたレンズのねじ
れ成分をキャンセルする方向に下型12の三箇所に配置
して第1の胴型に圧入固定を行った。スペーサには耐熱
性の良いチタン箔を購入して使用した。その後、再度、
レンズ成形を行い上記の収差が除去されているかを確認
する。
【0023】本実施例では11mm角の大きさに対し
て、2μmのねじれ成分のみを補正することで光軸ず
れ、ねじれ成分のないレンズ性能を得ることができた。
【0024】(実施例2)以下、本発明の光学素子の成
形方法の一実施例について図面をもとに説明する。図2
(A)、(B)、(C)は、実施例1で示した成形用金
型と、従来例の成形装置とを用いて余熱、変形、冷却の
各工程を説明するものである。
【0025】図2(A)の余熱工程は、上下の加熱板1
7を上下型11、12に接触させた状態で被成形素材1
9が変形可能な温度まで金型全体を予熱する。被成形素
材として鉛系ガラス(SF−8)を用い、520℃まで
予熱した。
【0026】図2(B)の変形工程では、加圧機構18
を用い、上型11を介して被成形素材19を変形を加え
る。変形は、第2の胴型15の上端面と上加熱板17と
に所定の変形量Δdを残して変形を完了する。Δdは、
用いる被成形素材の熱特性と、変形温度からガラス転移
点までの温度区間tは、成形レンズの最終厚み等から決
定され、本実施例ではΔd≦ΔT×α×tの関係を満足
した。ここで、ΔTは、変形温度520℃からSF−8
のガラス転移点420℃(冷却する温度)までの温度区
間100℃、αは、前記温度区間における被成形素材の
熱膨脹係数290×10−7、成形レンズ厚み10mm
の数値を用いて算出し、25μmに設定した。
【0027】図2(C)の冷却工程では、上下金型を介
して冷却しながら前記したΔdだけ変形を続行し、上加
熱板17が第2の胴型15の上端面に当接するまで冷却
加圧して成形を完了する。
【0028】以上のように、各工程を、各工程間におい
て成形用金型を搬送しながら、順次、実施した。変形工
程において、Δdを制御する手段に成形装置側の可動軸
にストッパ−(図示せず)を設けて行う場合は、可動軸
や加熱板の熱変形によって精密に制御するのは難しく、
△dが多い場合には所望のレンズ厚みを得ることは困難
である。△dが所定の寸法、所定のレンズ厚みで転写性
の良いレンズを得ることができた。上記の結果から△d
の制御は、望ましくは成形金型の近傍で寸法制御するの
がよい。従来例では金型の形状精度に対して、成形され
たレンズは〜1μm程度の形状変化を伴っていたが、本
実施例で得られたレンズは、〜0.5μm程度に改善で
きた。
【0029】(実施例3) 本実施例の成形装置は、図3に示すように冷却工程の上
加熱板17に、上型を押す押圧部17bと、第2の胴型
15が当接する押圧平面部17aを設けた構成である。
押圧部17bと押圧平面部17aには、実施例2で算出
したΔdに相当する寸法だけ段差が設けられている。す
なわち成形時における変形工程は第2の胴型15に上加
熱板17が当接するまで変形する。但し、第2の胴型寸
法はあらかじめ△dだけ高く作製されている。冷却時に
は、押圧部17bは、上型を介して被成形素材19をΔ
dだけ冷却加圧し転写性を向上させる。押圧平面部17
は、第2の胴型に当接してレンズ厚みを精密に制御で
きる。
【0030】上記の構成の成形装置を用いて、実施例2
で行ったものと同様の温度条件でレンズ成形を行った。
その結果、レンズ厚みは10mmに対して5μmの誤差
範囲内であり非常に高い精度が確認された。また、成形
に用いた金型の精度精度に対して0.3μm以内の形状
誤差しかない成形レンズを得ることができた。
【0031】
【発明の効果】以上、本発明の光学素子の成形用金型
は、金型加工時における誤差を補正することが可能とな
り光軸ずれ、ねじれ成分を除去することが可能となる。
また、光学素子の成形方法では変形工程から冷却工程ま
での収縮に応じた冷却加圧を行うことで転写性の高いレ
ンズ成形が実現できる。さらに、光学素子の成形装置で
は、転写性とレンズ厚みの両者を同時に満足することが
可能で所望するレンズ性能を高め、安定させる効果を有
するものである。本発明は、特に軸非対称形状を有し、
かつ、光軸精度、レンズ厚み精度の高い成形レンズを精
密成形法によって得るのに寄与することができるもので
ある。尚、本実施例では被成形素材としてガラスを用い
たが、光学素子を形成できるものであれば一切の限定を
加えない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光学素子の成形用金型の一実施例の構
成図
【図2】本発明の光学素子の成形方法の一実施例を示す
工程図
【図3】本発明の光学素子の成形装置の説明図
【図4】成形面が軸非対称な面である場合の金型構成を
示す立体斜視図
【図5】従来の光学素子の成形装置の構成を示す断面図
【図6】従来の成形装置で成形された光学素子の外観図
【符号の説明】
20 成形金型 11 上型 12 下型 13 第1胴型 14 スペ−サ 15 第2胴型 16 ヒ−タ 17 加熱板 18 加圧機構 19 被成形素材17a 押圧平面部 17b 押圧部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−295825(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C03B 11/08 C03B 11/00 C03B 11/16

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 軸非対称面を有する一対の成形型および
    該成形型を収容する第1の胴型と、該第1の胴型を包含
    する第2の胴型とを具備した光学素子成形型において、
    前記成形型の一方を、前記第1の胴型に圧入固定された
    ことを特徴とする光学素子成形用金型。
  2. 【請求項2】 光軸方向に第2の胴型高さが第1の胴型
    よりも冷却工程区間における被成形素材の収縮量だけ高
    く設定したことを特徴とする請求項1記載の光学素子用
    成形金型。
  3. 【請求項3】 第1の胴型と下型との固定は、それぞれ
    の製作誤差を吸収するが如くシックネステ−プを介して
    圧入固定されていることを特徴とする請求項1記載の光
    学素子成形用金型。
  4. 【請求項4】 上下型と該上下型および被成形素材を収
    容する第1の胴型と、前記第1の胴型を包含するがごと
    く第2の胴型を配し、一体となすように成形ブロックを
    組み立て、前記成形ブロック全体を予熱、変形、冷却を
    順次行う工程を備えた光学素子の成形方法において、前
    記変形工程で被成形素材の収縮量に相当する量を前記第
    2の胴型で規制し、冷却工程で前記収縮量の範囲内で押
    圧して前記第2の胴型で再び規制することを特徴とする
    光学素子の成形方法。
  5. 【請求項5】 冷却加圧工程中における被成形素材の変
    形量が、前記被成形素材の変形工程から冷却加圧工程ま
    での温度区間における熱収縮量の範囲内であることを特
    徴とする請求項4記載の光学素子の成形方法。
  6. 【請求項6】 上下型と該上下型および被成形素材を収
    容する第1の胴型と、前記第1の胴型を包含するがごと
    く第2の胴型を配し一体となした成形ブロックを、接触
    面が平面状の上下加熱板を備え、前記成形ブロックの上
    下面から余熱、加圧、冷却を行うための余熱手段、加圧
    手段、冷却手段と、前記成形ブロックを前記余熱、加
    圧、冷却手段間で順次搬送する搬送手段を具備する成形
    装置であって、上加熱板に前記上型を押圧する押圧部
    と、前記第2の胴型を押圧する押圧平面部とが設けら
    れ、前記押圧部と前記押圧平面部との間に所定の段差が
    形成されていることを特徴とする光学素子成形装置。
  7. 【請求項7】 設けられる段差が、変形温度から冷却温
    度までの区間における被成形素材の変形方向の熱収縮量
    の範囲内であることを特徴とする請求項6記載の光学素
    子成形装置。
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