電子工業・精密機械工業・精密印刷などの用途の精密製品の高品質化と歩留まり向上とを図るために塵埃を除去するクリーンルームが必要とされている。国際半導体技術ロードマップ(International Technology Roadmap for Semiconductor, ITRS)によれば、局所クリーン化の進展により2018年には通常の大気レベルの環境までクリーンルームの要求清浄度は緩和されるとしているが、現時点ではまだそれからはほど遠い。
クリーンルームを用いることなくクリーンな作業空間を提供する技術については従来より提案されている。例えば、クリーンな環境での作業を可能とする作業台として、作業空間の開口部から外気を取り入れ、この空気をフィルターでろ過して作業空間の上部から作業空間内に吹き出す作業台であって、作業空間の側面または背面に作業空間と外部とを連通する連通路を設け、この連通路に物体収納空間を形成し、物体空間の両側に外部と作業空間とを仕切る開閉手段を設けたものが提案されている(特許文献1参照。)。
また、単位室体を順次連結して、全体として一定容積の清浄空間を構成する連結式クリーン空間装置において、各単位室体毎に、その内部において清浄な空気を循環させる空気循環手段および粉塵除去手段を備え、清浄空間と遮断して空調手段設置空間を設けた連結式クリーン空間装置が提案されている(特許文献2参照。)。
また、空気循環手段と粉塵除去手段および空調手段とをそれぞれ備えて単位室体を順次連結して、全体として一定容積の清浄空間を構成する連結式クリーン空間装置において、前記単位室体の内部空間を連結する開口部に、前記開口部を横切る方向に空気が吹き出るように空気吹き出し口を設け、あるいは、前記単位室体の内部空間を連結する開口部に開閉自在な扉を設けることが提案されている(特許文献3参照。)。
また、上方に外気を取り入れ下面の空気吹き出し口から作業域内に清浄空気を吹き出す空気浄化部を備え、下方にこの空気浄化部を支える脚を有する移動可能な清浄作業室において、作業室同士の脚を互いに結合する脚部結合手段と、作業室同士の空気浄化部を互いに結合する空気浄化部結合手段とを備え、上記空気浄化部結合手段は空気浄化部の側面に設けられ、該側面の幅方向全長にわたり上下方向に結合する1対の結合部材からなり、上記結合部材の少なくとも一方はその上下方向の結合部を圧縮可能な密封材で構成され、作業室同士の結合、分離が自在である清浄作業室が提案されている(特許文献4参照。)。
また、フィルターを通して清浄な空気を吹き出すブロウユニットと、ブロウユニットから供給される空気をフィルターを通して吸い込むドレンユニットとを間隔をおいて対向配置することでクリーンベンチを構成することが提案されている(特許文献5参照。)。
また、完全循環型で密閉された構造を持つクリーンユニットおよび連結クリーンユニットが提案されている(特許文献6〜8参照)。これによれば、クリーンな環境に維持することができる作業室の後部、上部および下部のうちの少なくとも一つならびに少なくとも一方の側部にそれぞれ連結部を設けたクリーンユニットの作業室の上部に送風動力を有する塵埃フィルター(HEPA(high efficiency particulate air)フィルター)を一つ設けるとともに、作業室の側面などに気密性を有する管を直結し、かつ上記の塵埃フィルターの入口に繋げることにより気体が循環するように構成する。このクリーンユニットの清浄度の平均値および最高値はクラス10並の値が得られている。また、このクリーンユニットは、その連結部を利用して、実行しようとするプロセスに応じて、折れ線状配置、ループ状配置などで複数連結することにより所望のクリーンユニットシステムを容易に構成することができる。上記のようにクリーンユニットを循環型に構成することにより高い清浄度が達成されるメカニズムについては、すでに報告されている(非特許文献1、2参照。)。
図18にこの種の従来のクリーンユニットを示す。図18に示すように、このクリーンユニットにおいては、作業室301の上面に送風動力を有する塵埃フィルター302が取り付けられ、作業室301の側壁下部に設けられた通風孔と塵埃フィルター302の入口とを気密性を持って接続するように循環ダクト303が取り付けられており、図18中矢印で示すように空気を循環させることにより作業室301の内部を高清浄環境に維持することができるようになっている。
特開平2−15984号公報
特開平5−106888号公報
特開平5−223300号公報
特開昭63−123937号公報
特開2003−90576号公報
国際公開第04/114378号パンフレット
特開2006−183929号公報
特開2007−85721号公報
A.Ishibashi, H.Kaiju, Y.Yamagata and N.Kawaguchi : Electron. Lett.41,735(2005)
H.Kaiju, N.Kawaguchi and A.Ishibashi : Rev. Sci. Instrum.76, 085111(2005)
しかしながら、上記の特許文献6〜8で提案された従来のクリーンユニットでは、ISOクラス−1以上の超高清浄度環境を実現することは困難であった。
そこで、この考案が解決しようとする課題は、大掛かりで小回りが効かず、巨大な設備投資や固定資産負担が必要な巨大なクリーンルームを用いることなく、ISOクラス−1以上の超高清浄度のクリーンエアー環境を実現することができ、しかもこの超高清浄度のクリーンエアー環境を長期間維持することができるクリーンユニットおよびこのクリーンユニットを用いた連結クリーンユニットを提供することである。
上記課題を解決するために、第1の考案は
密閉可能に構成され、内部をクリーンな環境に維持することができる作業室と、
上記作業室に設けられた送風動力を有する塵埃フィルターと、
上記作業室と上記塵埃フィルターの入口との間を気密性を持って接続する気体流路とを有し、
上記作業室から流出する気体の全てが上記気体流路を通って上記塵埃フィルターの入口に入るように構成されたクリーンユニットであって、
上記気体流路の一部が、上記作業室の一つの壁面に設けられた二重壁の間の空間であって上記作業室の内部より体積が小さいものにより構成されている
ことを特徴とするものである。
第2の考案は、
クリーンな環境に維持することができるクリーンユニットが複数連結された連結クリーンユニットにおいて、
少なくとも一つのクリーンユニットが、
密閉可能に構成され、内部をクリーンな環境に維持することができる作業室と、
上記作業室に設けられた送風動力を有する塵埃フィルターと、
上記作業室と上記塵埃フィルターの入口との間を気密性を持って接続する気体流路とを有し、
上記作業室から流出する気体の全てが上記気体流路を通って上記塵埃フィルターの入口に入るように構成されたクリーンユニットであって、
上記気体流路の一部が、上記作業室の一つの壁面に設けられた二重壁の間の空間であって上記作業室の内部より体積が小さいものにより構成されているものである
ことを特徴とするものである。
第1および第2の考案において、作業室内のダスト微粒子密度をn(t)(tは運転開始後の時間)、作業室の内部の空間の体積をV、その空間の内面積をS、単位面積・単位時間当たりのダスト微粒子の脱離レートをσ、クリーンユニットの設置環境(外気)のダスト微粒子密度をN
0 、塵埃フィルターのダスト捕集効率をγ、塵埃フィルターの風量をFとすると、作業室内のダスト微粒子密度n(t)は、非特許文献1において本考案者らにより理論的に示されている通り、
なる微分方程式を満たす。
密閉循環系では、従来の半開放系であるクリーンルームのダスト微粒子密度と大きく異なり、n(t)は、
によって与えられる。時間が経てば(1)式の第2項が
に従って、つまり、γはほぼ1であるのでV/F時間当たり、1/eに減衰し、急速にゼロに近づくため、外気のダスト微粒子密度を含まない(1)式の右辺第1項のみが残る。すなわち、密閉循環系では、クリーンユニットの設置環境によらず、
なる究極の清浄度が得られる。
例えば、作業室の内部の空間の幅、高さ、奥行きが各1mのクリーンユニットにおいて風量F=1m3 /分で密閉循環させる場合を考えると、V/F=1m3 /(1m3 /分)=1分となるので、1分毎に、作業室内のダスト微粒子数は1/e、すなわち約2.8分の一に減っていくことが分かる。また、作業室の内部の空間の幅、高さ、奥行きが各2mのクリーンユニットの場合、風量8m3 /分のファンユニットを一台用いる(あるいは風量2m3 /分のファンユニットを4台用いるなど)ことにより、同じタイムスケールで、作業室の内部の清浄度を高くすることができる。
特に、従来のクリーンルームの定常状態のダスト微粒子密度は設置環境のダスト微粒子密度N0 に依存し、かつこのためできるだけダスト微粒子の捕集効率γが1に近い高品質の塵埃フィルターが必要であったのに対し、第1および第2の考案では、定常状態のダスト微粒子密度n(t)はN0 に依存せず(従って設置環境を選ばず)、かつγがnの表式の分母に入っているので、γが1に近いことも重要ではなく、安価な塵埃フィルターでも極めて高い清浄度を達成することができる。
好適には、作業室から流出する気体の風量に対する作業室の内部の体積の比を2.5分以下とする。
従来の考察(特許文献8などを参照)では、
におけるSσは作業室の内壁の表面のものが考えられていたが、ISOクラス−1以上の超高清浄度を得るには、作業室の内壁の表面の凹凸を十分に小さくすることに加え、作業室に比べて小さい体積しか有しない二重壁を通じて気体の還流を行うことにより、Sσは塵埃フィルターそのもののそれを考えなければならないことが判明した。
二重壁の間の空間の厚さは、好適には、作業室の内部の空間の奥行きの寸法の1/10以下であり、具体的には、例えば1cmのオーダー、典型的には0.5〜4cmである。こうすることで、ISOクラス−1またはそれ以上の超高清浄度を得やすくなる。また、クリーンユニットの運転中は二重壁の間の空間は外部空間に対して陰圧となるため、この二重壁を押し潰す圧力が加わることから、これを防止するために、好適には、二重壁の間にこの二重壁の補強材が設けられる。この補強材としては、例えば、波状の断面形状および複数の通気孔を有する板や、少なくとも一つ、一般的には複数のリブまたは支柱を用いることができる。こうすることで、二重壁の潰れを防止して、作業室の高清浄度を極めて再現性良く得ることが可能となる。気体流路となる、二重壁の開口部の断面形状は、例えば、ほぼ正方形、言い換えると断面形状の縦横比(アスペクト比)がほぼ1対1になるようにしてもよいし、ほぼ円形にしてもよい。好適には、作業室の塵埃フィルターの出口側に、この塵埃フィルターの出口から出てくる空気の流れをこの流れの方向と垂直な面内で均一にするための均一流形成体(例えば、空気の透過が可能な板状または膜状のもの)が設けられる。こうすることで、塵埃フィルターから出てくる空気を均等に分流・分散することができ、作業室内をほぼ均一に流れるようにすることができ、ISOクラス−1以上の超高清浄度を作業室全体で得ることが可能となる。このように均一流形成体を設ける場合、好適には、この均一流形成体から流出する気体の風量に対する、作業室のこの均一流形成体の下方の空間の体積の比を2.5分以下とする。好適には、作業室および還流用の気体流路の一部を構成する二重壁の少なくとも一部、より好適には、作業室のほぼ全部および二重壁の全部が、表面凹凸の少ない材料、例えばステンレス鋼や透明樹脂などにより形成され、最も好適には、内面が鏡面(例えば、JIS規格#400〜#800相当)のステンレス鋼により形成される。必要に応じて、作業室の内壁からの発塵を抑えるために、例えば、この内壁の全部または一部に、ポリテトラフルオロエチレンのコーティングを施すようにしてもよい。塵埃フィルターは、好適には、自己発塵性の小さい塵埃フィルターを少なくとも一部に含む。この塵埃フィルターは、好適には、少なくとも最下流側に、ポリテトラフルオロエチレンをろ材に用いたULPA(ultra low penetration air)フィルターを含み、例えば、上流側のHEPAフィルターと下流側のULPAフィルターとからなる。必要に応じて、気体流路の二重壁以外の部分にパイプ状流路、例えば直径10cm以下のパイプ状流路を設けてもよい。こうすることで、気体流路の長さのフレキシビリティーを得ることができるため、塵埃フィルターに自己発塵性の少ないものを少なくとも一部に含ませることが容易となり、塵埃フィルターを複数段積層する場合にも容易に対応することができる。このパイプ状流路には必要に応じて弁が設けられる。この弁の開閉により、気体流路の遮断や流路の変更を容易に行うことが可能となり、気体流路を変更した場合に生じるデッドスペースを小さくすることができ、超高清浄度を高い安定性で実現することができる。クリーンユニットを複数連結する場合、好適には、作業室の後部、上部および下部のうちの少なくとも一つならびに少なくとも一方の側部にそれぞれ連結部が設けられる。このような連結クリーンユニットは、一つまたは複数、好適には全てのクリーンユニットおいて超高清浄度のクリーンエアー環境を得ることができることから、随時拡張可能な、トータルのプロセスを一貫して行うことができるプラットフォームとして用いることができる。
クリーンユニットの形状は、種々の形状であってよく、必要に応じて選ばれるが、具体例を挙げると、直方体状または立方体状、直方体または立方体を変形した形状などであってよい。また、作業室の内部の大きさは、基本的には使用目的などに応じて設計により適宜決定するものであるが、例えば、オペレーターがグローブなどを用いて作業室の内部で各種の作業(各種のプロセスの実行、クリーニングなどのメンテナンスの実施など)を行うことができるようにするためには、作業室内に外部から手を入れて作業空間のほぼ全体に届く大きさであることが望ましく、一般的には通常の室内に格納することができる大きさ、例えば幅、高さ、奥行きとも1m以内に選ばれるが、これに限定されるものではない。一方、作業室の内部に人が入って作業を行う場合には、人が入ることができる大きさ、例えば幅、高さ、奥行きとも1.5m以上、典型的には2m以上に選ばれるが、これに限定されるものではない。作業室内に人が入って作業を行う必要がない場合、例えば作業を自動化する場合、あるいは、クリーンユニットを試料などを入れたまま携帯する場合などには、作業室の大きさをより小さくすることが可能である。
作業室内では、例えば材料処理を行うことができる。この材料処理には、無機材料、有機材料、生体材料などの各種の材料の処理が含まれる。複数のクリーンユニットを連結する場合、例えば、トータルな一連のプロセスフローの中で複数回現れる同種類のプロセスを、上記の複数のクリーンユニットに、ループ状配置でクリーンユニットが連結された部分を設けることにより、同一のクリーンユニットにおいて実行可能となる。
複数のクリーンユニットを連結する場合、この連結クリーンユニットには、例えば、ナノテクノロジープロセスユニットおよび/またはバイオテクノロジープロセスユニットを含ませることができる。
クリーンユニットの連結を行う場合、作業室の後部、上部および下部のうちの少なくとも一つならびに少なくとも一方の側部にそれぞれ連結部が設けられるが、作業室の連結部を後部、上部、下部および二つの側部のどこに設けるかは、クリーンユニットを二次元的(平面的)または三次元的(立体的)にどのように配置するかに応じて適宜決められる。例えば、連結クリーンユニットを水平面内に配置する場合、連結の自由度を大きくし、連結クリーンユニットのフレキシビリティーを高めるためには、好適には、連結部は、作業室の後部および両側部にそれぞれ設けられる。この場合、一つのクリーンユニットに対し、後部および両側部に合計三つのクリーンユニットを連結することが可能である。また、クリーンユニットを鉛直面内に配置する場合、連結の自由度を大きくし、連結クリーンユニットのフレキシビリティーを高めるためには、好適には、連結部は、作業室の上部または下部および両側部にそれぞれ設けられる。この場合、一つのクリーンユニットに対し、上部または下部および両側部に合計三つのクリーンユニットを連結することが可能である。連結部は、例えば、作業室の壁に設けられた開口部とこの開口部を開閉可能に設けられた遮断板とを有する。この遮断板は、開閉可能である限り、基本的にはどのようなものであってもよいが、典型的には、引き戸や扉などである。この遮断板の開閉は、手動で行ってもよいし、光センサーなどのセンサーを作業室内部に取り付けるとともに、遮断板の開閉機構を設け、オペレーターの手や試料が遮断板に近づいた時に自動的に開閉するようにしてもよい。また、作業室にベルトコンベアーなどの搬送機構を設け、入り口と出口との間でこの搬送機構により試料を搬送する場合には、試料が搬送機構により出口付近まで搬送された時、これをセンサーにより検知して遮断板を開閉機構により開閉するようにしてもよい。遮断板または作業室の壁面にパッキンなどのシール部材を設けて遮断時の気密性を高めるようにしてもよい。
クリーンユニットの内部(作業室の内部)には、使用目的に応じて、コンパクトな装置を収めることができる。この装置は、具体的には、例えば、各種のプロセス装置、ラッピング装置、解析装置(例えば、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)などの走査プローブ顕微鏡(SPM)など)、反応装置、マイクロケミカルシステム、マイクロケミカルリアクター、露光装置、エッチング装置、成長装置、加工装置、殺菌装置、粒径フィルター、人工光源、バイオ装置、食品加工装置、検査装置、メディカルデバイス、内視鏡部品、コンタクトレンズ作製機器、透析機器、医用ディスポーザル製造装置、香辛料/化粧品の調合・作製装置、製薬装置などである。人工光源は、例えば、細胞系の育成、植物体の育成、遺伝子実験などを行う場合に用いられる。細胞系の育成や植物体の育成を行う場合、人工光源としては、好適には、スペクトル半値幅が30nm以下の発光ダイオードや半導体レーザ、特にパルス駆動半導体レーザが用いられる。
また、クリーンユニットの作業室の内部環境は様々な方式で制御することができる。この内部環境の制御手段は、例えば、温度制御装置、湿度制御装置、気体成分制御装置、吸着装置、除害装置、特定波長照明器、密閉/開球環境選択機構などである。内部環境は、例えばコンピュータにより制御することができる。
上記の連結クリーンユニットによれば、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、植物工場技術などの分野にわたってトータルな一連のプロセスフローに対応して各種の材料の処理プロセスを高いフレキシビリティーを持って低コストで簡便に実行することができる材料処理方法、トータルな一連のプロセスフローに対応して無機材料または有機材料を用いた各種の素子(LSI、発光ダイオード、半導体レーザなど)の製造プロセスを高いフレキシビリティーを持って低コストで簡便に実行することができる素子製造方法、トータルな一連のプロセスフローに対応して植物体育成プロセスを高いフレキシビリティーを持って低コストで簡便に実行することができる植物体育成方法などの実現が可能となる。
この考案によれば、作業室と塵埃フィルターの入口との間を気密性を持って接続する気体流路の一部が、作業室の一つの壁面に設けられた二重壁の間の空間であって作業室の内部より体積が小さいものにより構成されているので、作業室と塵埃フィルターの入口との間をパイプにより接続する場合に比べて気体流路の幅を十分に広くすることができ、それによって作業室内の気流の制御性を高めることができ、これによって例えばISOクラス−1以上の超高清浄度のクリーンエアー環境を実現することができるとともに、この超高清浄度のクリーンエアー環境を長期間維持することができる。そして、連結クリーンユニットでは、このような超高清浄度のクリーンエアー環境でトータルな一連のプロセスを実行することができる。
以下、この考案の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施形態の全図において、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
図1〜図7はこの考案の第1の実施形態によるクリーンユニットを示し、図1は正面図、図2は背面図、図3は上面図、図4は左側面図、図5は右側面図、図6は図3のX−X線に沿っての断面図、図7は図4のY−Y線に沿っての断面図である。また、図8はこのクリーンユニットの作業室から前カバーを取り外した状態を示す正面図、図9は前カバーを本体に取り付けられる側から見た図である。
図1〜図9に示すように、このクリーンユニットは全体として六面体形状の箱状の作業室1を有する。この作業室1の両側面は互いに平行、上面および底面も互いに平行、両側面と上面、底面および背面とは互いに直角であり、前面は背面に対して非平行でその上部が背面に近づく向きに所定の角度、例えば70〜85°だけ傾斜しているが、これに限定されるものではない。作業室1は、前部が開放された直方体形状の本体11とこの本体11の前面に取り外し可能に設けられた前カバー12とにより構成されている。前カバー12は図示省略した固定具により本体11に固定されている。前カバー12を取り外した状態で本体11の中にプロセス装置や観察装置などの必要な装置を入れることができるようになっている。
本体11は、内壁からのダスト微粒子の放出を抑えたり、静電気の発生などによるダスト微粒子の付着を防止するために、好適には、金属、取り分けステンレス鋼(例えば、SUS304)により形成され、より好適には、その内面が、除去しようとするダスト微粒子の径と同程度またはそれ以上の大きさの凹凸を有しない平滑表面であるもの、例えば鏡面(例えば、JIS規格#400〜#800相当)のステンレス鋼により形成される。前カバー12も同様にステンレス鋼などの金属により形成してもよいが、前カバー12を透明とする場合には透明アクリル樹脂や透明パレックス樹脂などの透明樹脂を用いてもよい。前カバー12を金属などの不透明な材料により形成する場合に作業室1の内部を外部から観察可能とするためには、前カバー12にガラス窓などを設ければよい。図8に示すように、本体11の前面の外周には額縁部が形成されている。図9に示すように、前カバー12の、本体11に取り付けられる側の面の外周にも同じ形状の額縁部が形成されている。本体11に対する前カバー12の取り付けは、本体11の額縁部に対して前カバー12の額縁部を間にOリングなどのシール材を挟んで押し付け、図示省略した固定具により本体11と前カバー12とを相互に固定することにより行う。このシール材としては、好適には、十分な圧力が加わった状態で気密性が得られるものが用いられる。
作業室1の内部の大きさはその中にプロセス装置などの必要な装置を収容することができ、かつ、オペレーターが作業室1の内部に入らない場合には例えば後述の手作業用グローブに両手を入れて作業室1内で必要な作業を行うことができる大きさに選ばれ、オペレーターが作業室1の内部に入る場合にはオペレーターが内部に入って作業を行うことができる大きさに選ばれる。前者の場合の作業室1の内部の空間の寸法は、一般的には奥行き、幅、高さとも1m以内であり、具体的には例えば奥行き40〜70cm、幅70〜90cm、高さ50〜100cmであるが、これに限定されるものではない。
本体11の背面は、後述のトランスファーボックスの接続部を除いて、所定の間隔をおいて互いに平行に設けられた外壁11aと内壁11bとからなる二重壁により構成されている(図6参照)。内壁11bの下端と本体11の底面との間には所定の高さの隙間13がスリット状に設けられている。内壁11bの下端には、この内壁11bと垂直で本体11の底面に平行な底板14が一体に設けられている。図10にこの底板14を示す。図10に示すように、この底板14には、例えば円形の通気孔14aが蜂の巣状に多数設けられている。
本体11の上面11cには二つの塵埃フィルター15、16が直列に接続されて取り付けられている。塵埃フィルター15の上流側には、送風動力源であるファンユニット17が設けられている。塵埃フィルター15、16は、除去可能なダスト微粒子の最小径が互いに異なり、塵埃フィルター15に比べて塵埃フィルター16の方が除去可能なダスト微粒子の最小径が小さい。塵埃フィルター15としては、例えば、ガラス繊維をろ材に用いたHEPAフィルターを用いる。塵埃フィルター16としては、自己発塵の少ないもの、例えば、ポリテトラフルオロエチレンをろ材に用いたULPAフィルターを用いる。
二重壁を構成する外壁11aと内壁11bとの間隔は本体11の上面11cの付近において広がっている。上面11cには二重壁の間の空間と連通した三つの円形の通気孔(図示せず)が設けられている。これらの通気孔にはそれぞれダクトホース18の一端が上面11cに垂直に接続されている。これらのダクトホース18の他端とファンユニット17の入口との間は偏平な直方体形状の連結管19により気密性を持って接続されている。ダクトホース18としては、例えば、内径が4〜6cmのポリプロピレン製のものが用いられるが、例えばステンレス鋼製のもの、特に内面が鏡面(例えば、JIS規格#400〜#800相当)のステンレス鋼製のものを用いてもよい。
本体11の上面11cの直ぐ下方にはこの上面11cに平行に均一流形成板20が設けられている。図11にこの均一流形成板20を示す。図11に示すように、この均一流形成板20には円形の通気孔20aが多数設けられている。塵埃フィルター16の出口から出てくるエアーはこの均一流形成板20と本体11の上面11cとの間の空間を通って水平方向に広がるとともに、通気孔20aを通って下方に流れる。この場合、均一流形成板20と本体11の上面11cとの間の空間を通るエアーは塵埃フィルター16から遠くなるほど到達しにくくなることから、均一流形成板20の全ての場所の通気孔20aから出てくるエアーの流れが面内で均一となるように、均一流形成板20の通気孔20aの大きさは塵埃フィルター16の出口から離れるに従って徐々に大きくなっている。より一般的には、塵埃フィルター16の出口の面積をA1 、塵埃フィルター16の出口から出てくるエアーの風量をF1 、均一流形成板20の全体の面積をA2 、均一流形成板20の通気孔20aを通って下方に流れるエアーの風量をF2 とすると、F1 A1 =F2 A2 が成立するから、F2 =(A1 /A2 )F1 となる。そこで、均一流形成板20を通って下方に流れるエアーの風量がこの式で決まるF2 になり、かつ均一流形成板20の単位面積当たりの通気孔20aの総面積が均等になるように通気孔20aの大きさおよび密度を決める。なお、均一流形成板20の代わりに、エアーが透過可能な均一な目の細かい膜を用いて、非ゼロの圧力損失を生じさせ、その結果として、膜通過後のエアーの流れが膜に対して場所依存性を小さくするようにしてもよい。この場合、好適には、均一流形成板20を通って下方に流れるエアーの風量に対する、作業室1の均一流形成板20の下側の空間の体積の比が2.5分以下になるようにする。
本体11の両側面および背面の下部にはそれぞれ、クリーンユニット間のコネクターおよび搬送路を兼用するトランスファーボックス21〜23が着脱自在に設けられている。図1〜図7には図示されていないが、これらのトランスファーボックス21〜23が取り付けられている部分の本体11の壁には開口部が設けられている。これらのトランスファーボックス21〜23を用いて両側面および背面の三方向から他のクリーンユニットを連結することができるようになっているとともに、これらのトランスファーボックス21〜23を通して試料などの搬送を行うことができるようになっている。トランスファーボックス21〜23は、典型的には、本体11の壁に設けられた開口部とこの開口部を開閉可能に設けられた遮断板とを有する。この遮断板は、開閉可能である限り、基本的にはどのようなものであってもよいが、典型的には引き戸や扉などである。トランスファーボックス21〜23の断面の寸法は例えば(15〜20cm)×(15〜20cm)であるが、これに限定されるものではない。
本体11の背面のトランスファーボックス23の接続部の付近の長方形の領域11dにおいては、外壁11aが形成されておらず、従って二重壁が形成されていない。そして、トランスファーボックス23はこの領域11dの内壁11bに接続されている。この領域11dの下端は本体11の背面の下端と一致している。外壁11aは、この領域11dの左端、右端および上端において垂直に折れ曲がって内壁11bと隙間なく接合している。上述のように二重壁は本体11の背面の領域11dの部分を除いた部分に形成されているが、この二重壁の形状は、左右が非対称であることを無視すると、凱旋門と同様な形状となっている。これを反映して、底板14と本体11の底面との間の空間を通って隙間13から二重壁の間の空間に入るエアーは、この領域11dの両側を通って上方に流れるが、このときのエアーの流れの形状も凱旋門と同様な形状となる(図2参照。)。このように二重壁を凱旋門と同様な形状に形成していることにより、本体11の背面に対するトランスファーボックス23の接続が可能となるとともに、二重壁の面積を最大化することができ、この二重壁の間の空間内のエアーの滞留を防ぐことができ、作業室1の下部からのエアーの還流を効率的に行うことができ、ひいては作業室1内の超高清浄度を短時間で達成することが可能となる。
前カバー12の前面の壁には二つの円形の開口部24が設けられており、これらの開口部24に一対の手作業用グローブ25が装着されている。そして、これらの手作業用グローブ25にオペレーターが両手を入れて、作業室1内で必要な作業を行うことができるようになっている。
本体11の上面11cには、塵埃フィルター15、16、ファンユニット17などを覆うように上カバー26を取り付けることができるようになっている。この上カバー26の材料は必要に応じて選ばれるが、外部から内部を見えないようにするためには不透明な材料、例えば樹脂を用いることができる。具体的には、この上カバー26の材料として、例えば黒色の静電防止アクリル樹脂が用いられる。
クリーンユニットの運転中は、本体11の背面の二重壁の間の空間にはエアーが流れることから、この空間の内部は作業室1の外部空間に対して陰圧になるため、この二重壁にはこの二重壁を押し潰そうとする圧力が加わる。二重壁を構成する外壁11aおよび内壁11bの機械的強度を十分に高くしておけば、二重壁が押し潰されるのを防止することができるが、必要に応じて、二重壁の機械的補強を行うのが望ましい。この補強構造の例を図12および図13に示す。図12に示す例では、外壁11aと内壁11bとの間に、波状に湾曲加工され、全面に多数の通気孔27aが形成された金属板27を挿入し、この湾曲加工された金属板27の剛性を利用して二重壁の機械的補強を行う。金属板27に通気孔27aを形成するのは、金属板27を挿入したことによる、二重壁の間の空間を通るエアーの流れの抵抗の増加を最小限に抑えるためである。図13に示す例では、外壁11aと内壁11bとの間に金属などの剛性のある材料からなるリブ28を間隔を置いて複数、本体11の背面の上下方向に延在するように設け、このリブ28の剛性を利用して二重壁の機械的補強を行う。この場合、リブ28の間の開口部29が気体流路となる。
次に、このクリーンユニットの運転方法の一例について説明する。ここでは、最初、作業室1の内部が通常の室内環境のような低清浄度であるとする。
ファンユニット17を作動させると、図6中矢印で示すように、作業室1内のエアーは底板14の通気孔14aを通り、底板14と本体11の底面との間の空間を通って隙間13から二重壁の間の空間に入り、さらにダクトホース18および連結管19を通って塵埃フィルター15の入口に入り、粒径が大きいダスト微粒子が除去される。次に、こうして粒径が大きいダスト微粒子が除去されたエアーが塵埃フィルター15から出てきて塵埃フィルター16に入り、より粒径が小さいダスト微粒子の除去が除去される。これを繰り返すことによりエアーの清浄化が行われる。
このクリーンユニットの作業室1内のダスト微粒子のカウント数の時間依存性の測定を54日間(1296時間)連続して行った。図14にその結果を示す。図14において、縦軸はダスト微粒子数を対数で表示している。クリーンユニットは通常環境の部屋に設置した。クリーンユニットは密閉されており、作業室1内にダストカウンターを設置した。ただし、本体11の内部の空間の大きさは奥行き約41cm、幅約80cm、高さ約80cm、前カバー12の下端の奥行きは約14cm、上端の奥行きは約4cmである。この場合、クリーンユニットの作業室1の内部の空間の体積は約0.4m3 である。二重壁を構成する外壁11aと内壁11bとの間の空間の厚さは約3.2cmである。二重壁が形成されていない領域11cの寸法は幅約30cm、高さ約25cmである。ファンユニッ17としては、寸法が18cm×18cm×9cmの軸流ファンを用い、風量は0.4〜0.9m3 /分である。本体11は鏡面仕上げ(JIS規格#400相当)のステンレス鋼により形成し、前カバー12は透明パレックス樹脂により形成し、ダクトホース18は内径約4cm、長さ約20cmのポリプロピレン製のものを用いた。塵埃フィルター15としては、寸法が20cm×20cm×5.5cm、粒径0.3μmのダスト微粒子の捕集効率が99.99%以上のHEPAフィルターを用いた。また、塵埃フィルター16としては、寸法が20cm×20cm×5.5cm、粒径0.15μmのダスト微粒子の捕集効率が99.999%以上のULPAフィルターを用いた。
図14から分かるように、作業室1内のダスト微粒子のゼロカウント到達時間は20分程度である。ただし、図14の横軸は時間を日単位で示しているため、プロットはいずれも縦軸上に乗っている。ゼロカウントへの到達以降、ダストカウントはゼロを維持し、ごく稀に有限のダストカウントが計測された。作業室1内のダスト微粒子の54日間にわたる測定中、ダスト微粒子がカウントされるのは、運転開始直後の20分程度で、以後は、ごくまれに1〜2カウントを計数するものの、そのほかの時間は、完全にゼロカウントを維持した。このように1千時間を超える測定を行った後、ダスト微粒子の計測を行った結果を図15に示す。図15に示すように、清浄度はISOクラス−2〜−3程度であり、これまで得られていない世界最高の超高清浄度環境が実現されていることが分かる。なお、ダストカウンターとしては、東京ニュークリアサービス(株)のLasair110および310を使用した。
以上のように、この第1の実施形態によれば、密閉可能なクリーンユニットの作業室1の本体11の背面を一部を除いて二重壁とし、この二重壁の間の空間を、作業室1の内部から塵埃フィルター15の入口に戻る気体流路の一部としているので、作業室1から塵埃フィルター15の入口にエアーを途中で淀むことなく効率良く還流させることができる。加えて、HEPAフィルターなどの塵埃フィルター15とHEPAフィルターと比較してより粒径の小さいダスト微粒子を除去することができるULPAフィルターなどの塵埃フィルター16とを直列に接続して用いている。このため、このクリーンユニットをオフィスなどの通常の環境下にクリーンユニットを置いた場合でも、塵埃フィルター15、16の運転開始後極めて短時間(例えば、20分程度)でISOクラス−2〜−3という世界最高の超高清浄度を達成することができ、しかも長期間にわたってこの超高清浄度を維持することができる。このため、このように超高清浄度の作業室1内で素子の製造や細胞の育成などを汚染を最小限に抑えつつ、最適な環境で行うことができ、歩留まりの大幅な向上を図ることができる。また、塵埃フィルター15により粒径が大きいダスト微粒子を除去してから、より粒径が小さいダスト微粒子の除去が可能な塵埃フィルター16を使用して清浄化を行うことができるため、最初から塵埃フィルター16を使用して清浄化を行う場合に比べて、塵埃フィルター16の目詰まりなどを起こすことなく、作業室1を塵埃フィルター16により到達可能な清浄度に清浄化することができる。また、塵埃フィルター16の寿命の向上を図ることもできる。また、このクリーンユニットは、清浄度が低い通常のオフィス環境に設置しても内部の高清浄度環境を維持することができることから、従来のように巨大なクリーンルーム内に設置する必要がなく、設備コストの大幅な低減を図ることができる。このクリーンユニットは、このようにISOクラス−2〜−3程度の超高清浄度エアー環境を実現することができるため、完全に塵・菌がゼロの状態のクリーンエアー環境を実現することができる。例えば、次世代高度技術、特に、バイオとナノとの融合や細胞培養の発展に資することができる。特に、高い費用がかかるGMPなどを廉価にシステムアップすることもできる。
次に、この考案の第2の実施形態によるクリーンユニットについて説明する。
図16に示すように、このクリーンユニットは、作業室1の本体11の背面の二重壁の構造が第1の実施形態と異なる。具体的には、このクリーンユニットにおいては、本体11の背面の両端部に断面がほぼ正方形(アスペクト比が約1)の管部30が設けられており、これらの管部30の間は一重壁31になっている。管部30の下端は底板14と同じ高さにあり、管部30の下端と本体11の底面との間には隙間がある。この構造は、図13に示す構造を変形したものに相当する。すなわち、この構造は、図13において、リブ28の数を一つとしてそれを幅広に形成し、さらにこのリブ28の両側の開口部29を断面形状がほぼ正方形となるように形成したものであり、一重壁31がリブ28に対応し、管部30の内部が開口部29に対応する。
この第2の実施形態によっても、第1の実施形態と同様な利点を得ることができる。
次に、この考案の第3の実施形態による連結クリーンユニットについて説明する。
図17に示すように、この連結クリーンユニットにおいては、第1の実施形態によるクリーンユニットと同様な三方向接続可能なクリーンユニット121〜128がトランスファーボックス129を介して連結されている。この場合、クリーンユニット122〜127はループ状配置で連結されている。
各クリーンユニット121〜128で行われる作業は例えば次の通りである。まず、クリーンユニット121は保管ユニットで、試料保管庫(例えば、基板を収納したウエハーカセット)が設置され、連結に使用されていない右側面のトランスファーボックス129は試料投入口、同じく連結に使用されていない背面のトランスファーボックス129は非常時試料取出口である。クリーンユニット122は化学ユニットで、例えば化学前処理システムが設置され、化学前処理が行われる。クリーンユニット123はレジストプロセスユニットで、例えばスピンコータおよび現像装置が設置され、レジストのコーティングや現像が行われる。クリーンユニット124はリソグラフィーユニットで、露光装置が設置され、連結に使用されていない右側面のトランスファーボックス129は非常時試料取出口である。クリーンユニット125は成長/メタライゼーションユニットで、例えば電気化学装置およびマイクロリアクターシステムが設置され、連結に使用されていない右側面のトランスファーボックス129は非常時試料取出口である。クリーンユニット126はエッチングユニットで、エッチング装置が設置されている。このクリーンユニット126の背面のトランスファーボックス129は、中継ボックス130を介して、クリーンユニット123の背面のトランスファーボックス129と連結されている。クリーンユニット127はアセンブリユニットで、例えば顕微鏡およびプローバーが設置されている。クリーンユニット128は走査プローブ顕微鏡(SPM)観察ユニットで、例えば卓上STMおよび卓上AFMが設置され、連結に使用されていない右側面のトランスファーボックス129は試料取出口、同じく連結に使用されていない背面のトランスファーボックス129は非常時試料取出口である。クリーンユニット123のスピンコータ、クリーンユニット124の露光装置、クリーンユニット125の電気化学装置およびマイクロリアクターシステム、クリーンユニット126のエッチング装置、クリーンユニット127のプローバーなどは電源に接続されていて電源が供給されるようになっている。また、クリーンユニット125の電気化学装置は信号ケーブルにより電気化学装置制御器と接続されており、この電気化学装置制御器により制御されるようになっている。さらに、クリーンユニット127の顕微鏡、クリーンユニット128の卓上STMおよび卓上AFMによる観察画像は、液晶モニターに映し出すことができるようになっている。
この連結クリーンユニットにおいて、例えば、第1の実施形態によるクリーンユニットを小型化してポータブルとしたポータブルクリーンユニットの作業室内に試料(例えば、半導体ウェハー)を保管したまま、このポータブルクリーンユニットのトランスファーボックスをクリーンユニット128の試料取り出し口に取り付けて連結する。この状態でトランスファーボックス129を経由して、遠く離れた2つの地点に存在する、クリーンユニット連結プラットフォームシステムの間で試料の移動を行うこともできる。また、このポータブルクリーンユニットからクリーンユニット128に試料を搬送し、卓上STMまたは卓上AFMにより観察を行うこともできる。
この第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様な利点に加えて、次のような多くの利点を得ることができる。すなわち、化学前処理、レジスト塗布、露光、現像、成長/メタライゼーション、エッチング、プロービング、表面観察など、通常巨大なクリーンルームの中に設えられた装置群を駆使して行われるほぼあらゆる工程を、超高清浄度のクリーンエアー環境が得られるクリーンユニットを連結した連結クリーンユニットにおいてループ状配置などを取ることによって、大規模なクリーンルームを用いることなく通常の実験室規模の部屋の中において簡便かつコンパクトに実現することができる。
以上、この考案の実施形態について具体的に説明したが、この考案は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この考案の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態において挙げた数値、構造、構成、形状、材料などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、構成、形状、材料などを用いてもよい。
1…作業室、11…本体、11a…外壁、11b…内壁、11c…上面、12…前カバー、13…隙間、14…底板、15、16…塵埃フィルター、17…ファンユニット、18…ダクトホース、19…連結管、20…均一流形成板、21〜23…トランスファーボックス、25…手作業用グローブ、26…上カバー、27…金属板、28…リブ、29…開口部、30…管部、31…一重壁