JP3131635B2 - 電動機 - Google Patents

電動機

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JP3131635B2
JP3131635B2 JP03151295A JP15129591A JP3131635B2 JP 3131635 B2 JP3131635 B2 JP 3131635B2 JP 03151295 A JP03151295 A JP 03151295A JP 15129591 A JP15129591 A JP 15129591A JP 3131635 B2 JP3131635 B2 JP 3131635B2
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入江眞一郎
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鉄心に巻線を巻き付け
る構造の電動機における、振動及び騒音を低減すること
ができる構造に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】電動機
は、一般に鉄心にクシ状に軸心に向かって延出する多数
の歯部を備えてスロットと称される開口部を形成し、こ
の開口部に巻線を軸方向から挿入装着している。しか
し、この様な巻線の装着では、鉄心の軸方向端面に巻線
端が大きく突出して軸方向の寸法が大きくなる。しか
も、この様な巻線端は、鉄心に有効な磁束を発生するも
のではなく、抵抗損となり、発熱するだけの無駄な巻線
となっていた。そこで、継鉄部に巻線を巻き付ける、す
なわちトロイダル状の巻線が施される電動機が試みら
れ、巻線の無駄を少なくし軸方向の寸法を小さくするこ
とで大きな効果を得ている。
【0003】しかしながら、この様な電動機においても
幾つかの問題がある。リング状の継鉄部に巻線を巻き付
けるには、継鉄部を分割しなければ容易に巻線を施すこ
とができず、この分割によって製造上および特性上好ま
しくない現象が現れた。例えば、分割された鉄心を接合
する手間や接合部分における磁気抵抗の乱れなどがあ
り、高効率や低騒音が求められる電動機としては問題が
あった。
【0004】また、この様な磁気抵抗の乱れがなくと
も、鉄心が分割され、巻線を施した後、接合すると十分
な真円度を得ることが難しく、固定子鉄心の内周におけ
る磁束分布が乱れ、振動や騒音に悩まされた。この様な
問題は、回転数を制御するためにサイリスタなどの素子
で電源電流を制御すると電源電流の波形が正弦波でなく
なることから発生する高調波に同調して極めて大きな振
動や騒音が発生することで確認されている。
【0005】この様な電動機は、従前のクシ状に多数の
歯部を延出させてスロットを形成する電動機に比較する
と固定子鉄心の回転子に対する磁束密度分布が正弦波状
にならず、磁気的特性上においても大きな振動を発生す
るものであった。
【0006】そこで、固定子鉄心を分割しないで巻線を
巻装することが考えられ、特開昭63−110928号
公報に記載される電動機では、主巻線と補助巻線のスロ
ットをそれぞれ径方向に異なる深さにして、それぞれの
巻線を巻装している。この様な固定子鉄心においては、
固定子鉄心を分割しなくとも主巻線と補助巻線とがそれ
ぞれ巻装できるため、固定子鉄心を分割するといった問
題を解消することができる。しかしながら、この特開昭
63−110928号公報に記載される電動機において
も、振動や騒音を低減するとはできない要素がある。
【0007】この様な従来の電動機の問題点を図5、図
7、図8、図9及び図10に説明すると、図5は、固定
子鉄心の一つの極に分布する磁束の幅によって発生する
高調波振動を表すものであり、図7は、特開昭63−1
10928号公報に記載される電動機の固定子鉄心の構
造を示すものであり、図8は、クシ型の歯部を形成する
従来の電動機の固定子鉄心を展開して示すものであり、
図9は、図7に示される固定子鉄心を図8に示される固
定子鉄心と比較するために構造を展開して示したもので
あり、図10は、図8に示される固定子鉄心の磁束の分
布を示すものである。従来の電動機では、図8に示され
るクシ型の固定子鉄心の場合、一つの極を構成する電気
角180度の幅に対して、磁束密度分布は、135度の
幅の正弦波になっている。そして、135度の場合、図
5に示される第3高調波及び第5高調波がそれぞれ少な
い状態となる。しかし、固定子鉄心の構造を図7に示さ
れるように変形させると、図9に示されるようになり、
この場合、歯部1、2に巻装される巻線3、4は、巻装
量が少なくなり、理想的であり、磁束の分布する電気角
は、135度のショ―トピッチとなり、同じ効果が得ら
れる。
【0008】しかしながら、図9に示される固定子鉄心
では、主コイル4と補助コイル3とを径方向に完全に分
離しようとすると巻線の巻けない無駄な空間が生じる。
したがって、充分な巻線量を巻くことができない。そこ
で、図3に示すように巻線量を充分確保できる形状のス
ロットに変更すると磁束の分布する電気角が145°と
なり、図5のグラフより、第3高調波成分が急激に増加
し、トルク−スピ−ド特性の低速域でトルクの陥没が生
じて、振動,騒音の元となるといった欠点があった。
【0009】
【発明の目的】本発明は、従来の電動機の理想的な構造
を採用すると共に、固定子鉄心の回転子に対向する内径
側の磁束密度分布を正弦波状に近付けることによって振
動、騒音を低減することができる電動機を提供すること
を目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、外周にリング
状の継鉄部を形成し、この継鉄部の内周に軸向きに突出
する複数の第1補極を備え、この第1補極の間に軸向き
に突出する主極を形成し、この主極の内径側に周方向に
延設される支持部を形成し、この支持部の両端に軸向き
に突出する2個の歯部を形成し、この2個の歯部の間で
前記主極の延長線上に第2補極を形成してE字状に形成
し、前記第1補極、第2補極及び歯部の内径側に回転子
に対向する磁束面を形成する電動機において、前記第1
補極、前記第2補極及び前記一対の歯部の軸向きに伸び
る部分の幅をそれぞれほぼ同じ幅に形成し、前記一対の
歯部の先端部をそれぞれ第2補極に向かって周方向へ延
出して歯部の延出部分を形成することにより、前記一対
の歯部の延出部分の磁束面を、前記第1補極及び前記第
2補極の内径側の先端部によって生じる磁束面より大き
くして、前記一対の歯部の延出部分の磁束密度を前記第
1補極及び前記第2補極の磁束密度より小さくしたこと
を特徴とする電動機である。
【0011】
【作 用】第1補極、あるいは第2補極に対して、その
両側に形成される歯部の延出部分の磁束密度が小さくな
るため、第1補極、第2補極部分をそれぞれ山とする正
弦波状に近い磁束密度分布を形成することができる。こ
のため、振動、騒音が低減できる。
【0012】
【実施例】本発明を図面に示された一実施例に基づいて
説明すると、図1は、本発明による電動機の固定子鉄心
を示す要部斜視図であり、図2は、固定子鉄心の磁束の
流れを示す要部平面図であり、図3は、スロットピッチ
を示す要部平面図であり、図4(a)及び(b)は、そ
れぞれ磁束分布が正弦波状に近くなる状態を示す図であ
る。図5は、固定子鉄心の一つの極に分布する磁束の幅
(電気角)によって発生する高調波成分を表すものであ
る。図6は、本発明の電動機の特性の一例を示した図で
ある。
【0013】図1において、電動機は、ド―ナツ状の継
鉄部5で外郭を構成する固定子鉄心6に第1巻線7と第
2巻線8とが巻装されており、第1巻線7は、外周側に
6個備えられ補助巻線を構成しており、第2巻線8は、
内周側に6個備えられており、主巻線を構成している。
そして、第1巻線7は、固定子鉄心6の内周に軸心に向
かって形成された主極を構成する第1巻線部9に巻装さ
れており、第2巻線8は、第1巻線部9の内径側にE字
状に形成された歯部10に巻装されている。ここで、第
1巻線7は、コンデンサが接続される補助巻線を構成し
ており、第2巻線8は、主巻線を構成している。このた
め、第1巻線7は、線径が小さく、第2巻線8の線径が
少し大きくなっている。
【0014】この様な固定子鉄心6は、図示されないが
鋼板をプレスで打抜き、外表面の特に第1巻線7及び第
2巻線8が巻装される部分が絶縁されている。そして、
その絶縁は、樹脂を成型型に入れて行うプレモ―ルド、
あるいは、薄い絶縁部材を固定子鉄心6に密着する形状
に形成しておき、被着するなどの方法によるものであ
る。さらに、第1巻線7及び第2巻線8が巻装された
後、その端末をリ―ド線11により引き出し、図示され
ないコンデンサ及び電源に接続されている。
【0015】図2において、電動機は、固定子鉄心6に
第1巻線7及び第2巻線8によって発生する磁束7a、
8aは、それぞれ線7a、8aによって示され、継鉄部
5を介して第1補極12、第2補極13及び第1巻線部
9から周方向へ延出されて磁路となる支持部から内径側
向かって延出される歯部14、15を介して内装され図
示されない回転子に作用するように構成されている。
【0016】図3において、固定子鉄心6は、歯部1
4、15がそれぞれ中央の第2補極13と共にE字状に
形成されており、歯部14、15の内径側に形成される
磁束面14a、15aがそれぞれ第2補極13に向かっ
て周方向へ延出されており、スロットピッチc、dがそ
れぞれ決定されている。そして、スロットピッチcに対
してスロットピッチdの幅が大きく形成されている。
【0017】図4(a)において、図3に示される固定
子鉄心6を展開して示すと、継鉄部5から磁束面14
a、15aなどの磁束の通過する部分となる歯部14、
15及び第1補極12、第2補極13の磁路eがそれぞ
れほぼ同じ幅に形成されている。そして、歯部14、1
5の磁束面14a、15aの幅gが大きくなっており、
この幅gより第1補極12、第2補極13の磁束面12
a、13aの幅fが小さく形成されている。このように
磁束面12a、13a、14a、15aがそれぞれ形成
されることによってスロットピッチc、dが異なる寸法
となり、第1補極12と歯部14との間から、第1補極
12と歯部15との間に形成される極の幅が図4(b)
に示されるように148度になっている。そして、磁束
面13a、14a、15aを通過する磁束の密度がそれ
ぞれ13b、14b、15bによって示されており、磁
束面14a、15aに対向するエアギャップを通過する
磁束の量Aに対して第2補極13、磁束面13aに対向
するエアギャップを通過する磁束の密度Bが約2倍にな
っている。
【0018】図5は、H3、―H3が第3高調波を示し
ており、H5、―H5が第5高調波を示しており、線X
が図9に示される電動機の第3高調波成分の割合であ
り、線Yが本発明による電動機の第3高調波成分の割合
を示すものである。
【0019】図6において、曲線イが50Hzにおける
特性、曲線ロが60Hzにおける特性を示してる。
【0020】この様な構成において、電動機は、固定子
鉄心6を形成し、第1巻線7及び第2巻線8をそれぞれ
所定の部分に巻装する。この巻装は、固定子鉄心6の中
空部分を軸方向に上下し、かつ固定子鉄心6の端面で周
方向に振れることができるノズルによって巻線を第1巻
線部9及び歯部14、15にそれぞれ直接巻き付けるこ
とができる巻線機によって行う。そして、巻装された第
1巻線7及び第2巻線8にそれぞれリ―ド線11を接続
し、図示されないフレ―ムなどに収められる。さらに、
フレ―ムに収められた後、ブラケットなどにをよって回
転子を取り付けて組み立てる。この様な組み立ては、従
来の電動機と同じである。
【0021】そして、本発明による電動機は、第1巻線
7及び第2巻線8によって固定子鉄心6が励磁されると
1極の構成磁束面14a,13a,15aに対向するエ
アギャプに図4(b)に示されるような磁束密度が分布
する。磁束分布がこのようになるのは、それぞれの磁路
eがほぼ同じ幅であり、それぞれ磁気抵抗が同じとなる
にも係わらず、回転子に対向する磁束面12a、13
a、14a、15aがそれぞれ異なる面積を形成してお
り、歯部14、15の間に形成される第2補極13の磁
束面13aが小さく、歯部14、15の磁束面14a、
15aがそれぞれ大きくなっているため、回転子に対す
る周方向の磁束密度が変化するものである。そして、図
4(b)に示すような磁束密度分布になると、矩形波に
比べ正弦波状に近くなり、回転子に与える衝撃が少なく
なり、振動や騒音を低減することができるのである。し
かし、この様な磁束は、幅が電気角で148度になるた
め、図5によれば、第3高調波H3が増加することにな
るが、それに増して正弦波状に近くなる磁束分布の効果
が大きく、振動、騒音が低減できることになる。
【0022】この様な電動機を実験によって確認する
と、図6に示される通り、第3高調波によるトルクリッ
プルは、ほとんど現れず、良好な特性が得られているこ
とがわかる。もし、第3高調波H3などの影響が大きく
現れるとなると、曲線イでは330RPM、曲線400
RPM付近にリップルが現れることになる。
【0023】
【発明の効果】本発明によれば、固定子鉄心に巻装され
る巻線が直接第1巻線部および歯部に巻装されるため、
固定子鉄心の端面に端部が大きく延出するといった巻線
の無駄がなく、従来のトロイダル巻線における固定子鉄
心の分割などの問題を生じることなく、しかも、磁束の
分布が矩形波状になることはなく、電気角が135度と
は異なるものになるにも係わらず、振動騒音が改善さ
れ、例えば、冷房装置などの小形で低騒音が要求される
電動機として極めて大きな効果が得られるものとなり、
その産業的価値は大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電動機の固定子鉄心を示す要部斜
視図である。
【図2】固定子鉄心の磁束の流れを示す要部平面図であ
る。
【図3】スロットピッチを示す要部平面図である。
【図4】(a)及び(b)は、それぞれ磁束分布が正弦
波状に近くなる状態を示す図である。
【図5】固定子鉄心の一つの極に分布する磁束の幅によ
って発生する高調波振動を表すものである。
【図6】本発明の電動機の特性の一例を示した図であ
る。
【図7】従来の電動機を説明するための図である。
【図8】従来の電動機を説明するための図である。
【図9】従来の電動機を説明するための図である。
【図10】従来の電動機を説明するための図である。
【符号の説明】
5……継鉄部 6……固定子鉄心 7……第1巻線 8……第2巻線 9……第1巻線部 10……歯部 12……補極 13……補極

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】外周にリング状の継鉄部を形成し、 この継鉄部の内周に軸向きに突出する複数の第1補極を
    備え、 この第1補極の間に軸向きに突出する主極を形成し、 この主極の内径側に周方向に延設される支持部を形成
    し、 この支持部の両端に軸向きに突出する2個の歯部を形成
    し、 この2個の歯部の間で前記主極の延長線上に第2補極を
    形成してE字状に形成し、 前記第1補極、第2補極及び歯部の内径側に回転子に対
    向する磁束面を形成する電動機において、前記第1補極、前記第2補極及び前記一対の歯部の軸向
    きに伸びる部分の幅をそれぞれほぼ同じ幅に形成し、 前記一対の歯部の先端部をそれぞれ第2補極に向かって
    周方向へ延出して歯部の延出部分を形成することによ
    り、 前記一対の歯部の延出部分の磁束面を、前記第1補極及
    び前記第2補極の内径側の先端部によって生じる磁束面
    より大きくして、前記一対の歯部の延出部分の磁束密度
    を前記第1補極及び前記第2補極の磁束密度より小さく
    した ことを特徴とする電動機。
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