JP3128610B2 - 車輌用灯具の照射方向制御装置 - Google Patents

車輌用灯具の照射方向制御装置

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JP3128610B2 JP3710996A JP3710996A JP3128610B2 JP 3128610 B2 JP3128610 B2 JP 3128610B2 JP 3710996 A JP3710996 A JP 3710996A JP 3710996 A JP3710996 A JP 3710996A JP 3128610 B2 JP3128610 B2 JP 3128610B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車輌姿勢を検出し
て灯具の照射方向を常時一定に保つように補正する車輌
用灯具の照射方向制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】車体の傾きが変化した場合でも、灯具の
照射方向が所定の状態に保たれるように灯具の照射方向
を自動的に調整する装置(所謂オートレベリング装置)
が知られており、この種の装置は、乗車条件(乗員数や
乗員の配置等)や積荷の積載条件、走行状態等に起因す
る車体の傾きや高さを検出する検出手段を有し、該検出
手段によって得られる情報に基づいて車輌の傾きの変化
量を算出して、灯具の照射状態が常に所定の状態となる
ように灯具の照射角等をその初期の調整値に対して補正
して所定の配光を得るように制御するものである。
【0003】例えば、車輌の後部に荷重が加わった場合
には、その際の車体の前後方向の傾斜角を求め、そのま
までは照射方向が基準方向より上向きにずれることにな
る灯具を下向きに傾動させることによって灯具の照射方
向が常に基準方向に保たれるように調整(所謂レベリン
グ調整)が行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来の装置
にあっては、車輌が路面に凹凸の多い悪路を走行してい
る場合に上記のような灯具の照射方向の自動調整が行わ
れたときに、悪路による車輌の振動に対して検出手段が
過敏に反応してしまい、灯具の照射方向について過剰な
調整制御がなされてしまうことがあり、これに伴う灯具
の配光や視界の変化が運転者に違和感を与えたり、ある
いは対向車の運転者や歩行者等に眩惑を与えてしまう虞
があるという問題がある。
【0005】例えば、車輌がある程度の速度をもって悪
路に侵入した場合には、車輪が路面から受ける振動等が
サスペンションの伸縮によって緩和されるので、車高等
の検出手段の出力の変化程には車体の傾きが変化しない
ことが起こり得る。このため、検出手段の出力に忠実に
レベリング調整を行ったのでは、実際の車体の傾きに比
べて過剰な補正がなされてしまうという不都合が生じる
ことになる。
【0006】そこで、本発明は、車輌の悪路走行中にお
いて灯具の照射方向に過剰な補正がかからないように制
御することで、視認性を向上させ、対向車等に眩惑を与
えないようにして車輌走行の安全性を保証することを課
題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、車輌の定速走
行時や悪路走行時における車輌の姿勢変化が車輌の加速
又は減速走行時における車輌の姿勢変化に比して比較的
小さいことに鑑み、上記した課題を解決するために、静
止及び/又は運動中の車輌の姿勢を検出するための車輌
姿勢検出手段と、車輌が加速走行又は減速走行中である
か否かを判定する加減速走行判定手段と、灯具の照射光
を所望の方向に向けるための駆動手段と、車輌姿勢検出
手段からの信号に応じて灯具の照射光を所定の方向に保
つための補正信号を駆動手段に送出する補正計算手段と
を設け、加減速走行判定手段により車輌が加速走行又は
減速走行中であることが判明した場合に、補正計算手段
から駆動手段に送出される信号によって灯具の照射方向
が制御され、また、加減速走行判定手段により車輌が加
速走行又は減速走行中でないことが判明した場合に、駆
動手段が灯具の照射光の方向を所定の方向に固定し又は
照射光の方向の許容範囲を限定し又は駆動手段の応答速
度が遅くなるようにしたものである。
【0008】従って、本発明によれば、車輌が加速走行
又は減速走行中でないと判明した場合には、灯具の照射
光の方向を所定の方向に固定したり、又は照射光の方向
を限られた範囲としたり又は駆動手段の応答速度が遅く
なるように制御することで、灯具の照射方向が無闇に変
化しなくなり、悪路走行時に灯具の照射方向が過剰に補
正されることがなくなる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下に、本発明車輌用灯具の照射
方向制御装置について説明する。
【0010】図1は本発明の基本構成を示すものであ
り、照射方向制御装置1は、車輌姿勢検出手段2、制御
手段3(補正計算手段3aと加減速走行判定手段3bと
からなる。)、駆動手段4(駆動制御手段4aと駆動機
構4bとからなる。)、灯具5とから構成されている。
【0011】車輌姿勢検出手段2は、静止及び/又は運
動中の車輌の姿勢(車輌の進行方向における上下の傾斜
を含む。)を検出するために設けられ、例えば、路面の
凹凸による車体の高さを検出するための車高検出手段6
を用いる場合には、図2に示すように車高検出手段6と
路面Gとの間の距離Lを超音波やレーザー光等の検出波
を使って計測する方法や、車軸の上下変動を検出するた
めに車高検出手段6がサスペンションSの伸縮量xを検
出する方法を挙げることができ、いずれの場合も、車輌
における既存設備の利用が可能であるという利点があ
る。
【0012】車輌姿勢検出手段2の出力は制御手段3を
構成する補正計算手段3a及び加減速走行判定手段3b
に送出され、これらの出力は駆動手段4への制御信号と
なり、灯具5の照射状態を補正するための指令とされ
る。
【0013】即ち、補正計算手段3aは車輌姿勢検出手
段2からの検出信号に応じて灯具5の照射方向が常に所
定の方向を向くように制御信号を駆動手段4に送出する
ようになっている。例えば、図3に示すように水平線H
−Hや鉛直線V−Vを基準線として設定される配光パタ
ーンPN(図に実線で示す。)に対して、車体が前上り
の状態になった場合には灯具5の照射方向が水平線H−
Hに対して上向きに変化して配光パターンがパターンP
U(図に1点鎖線で示す。)のように上方に変化するこ
とになるため、このような場合には灯具5の照射方向を
下向きに変化させて図に矢印Aに示すようにパターンを
下げて配光パターンPNに一致させるための信号を補正
計算手段3aが駆動制御手段4aに送出する。また、逆
に、車体が前下がりの状態になった場合には灯具5の照
射方向が水平線H−Hに対して下向きに変化して配光パ
ターンがパターンPD(図に2点鎖線で示す。)のよう
に下方に変化することになるため、このような場合には
灯具5の照射方向を上向きに変化させて図に矢印Bに示
すようにパターンを上げて配光パターンPNに一致させ
るための信号を補正計算手段3aが駆動制御手段4aに
送出する。
【0014】加減速走行判定手段3bは、車輌が加速走
行又は減速走行中であるか否かを判定するために設けら
れており、車輌が加速走行中又は減速中であると判定し
た場合には、補正計算手段3aから駆動制御手段4aに
送出される制御信号に基づいて灯具5の照射方向を所定
の方向に補正するための信号を駆動制御手段4aに送出
する。また、加減速走行判定手段3bは、車輌が加速走
行中又は減速走行中でないと判定した場合(つまり、定
速走行中、悪路走行中等)に、駆動手段4に制御信号を
送出して、灯具5の照射方向を所定の方向に固定したり
又は照射方向を所定の範囲内に限定し、あるいは灯具5
の照射方向を変化させるための駆動機構4bの応答速度
を低下させて照射方向の変化がゆっくりとなるように制
御する。尚、車輌が加速走行又は減速走行中であるか否
かを判定するための基礎情報としては、車輌姿勢検出手
段2からの情報の他、例えば、図1に示すように、車速
を検出するための車速検出手段7や、アクセルベダルの
踏み込み量やスロットルバルブの開度の変化等から加減
速指令又は該指令に関する情報を検出する加減速指令検
出手段8、あるいは、エンジンの回転数を検出するため
のエンジン回転数検出手段9等を設けて、これらの検出
手段によって得られる情報を加減速走行判定手段3bに
送出するように構成すれば良いが、車輌が加速走行又は
減速走行中であるか否かの判定方法については後述す
る。
【0015】駆動制御手段4aは、補正計算手段3aや
加減速走行判定手段3bからの信号を受けて、駆動機構
4bの制御を通して灯具5の照射方向を変化させるため
に設けられており、灯具5の照射方向の変更制御につい
ては灯具全体を傾動させたり、あるいはレンズや反射
鏡、シェード等の灯具5の構成部分の一部を移動させる
方法を挙げることができるが、その詳細については後述
する。
【0016】先ず、加減速走行判定手段3bにおける判
定方法を下記の4つの方法に分けて説明する。
【0017】i)車速検出手段7を用いる方法 ii)加減速指令検出手段8を用いる方法 iii)エンジン回転数検出手段9を用いる方法 iv)車輌姿勢検出手段2を用いる方法。
【0018】先ず、方法i)は、車輌の走行速度を検出
することによって速度の時間的変化、即ち、加速度を算
出することにより車輌が加速走行中又は減速走行中であ
るか否かの判定を行う方法であり、車速検出手段7が車
輌において既存の設備であり、その検出信号を利用する
ことによって車輌の加減速走行に係る判定を容易に行う
ことができるという利点がある。
【0019】図4は、横軸に時間tをとり、縦軸に車輌
の速度v(t)をとって、速度の時間的変化の一例を示
すものであり、図中に「Ta」で示す期間が車輌の加速
期間を示し、「Tb」で示す期間が車輌の減速期間を示
し、「Tc」で示す期間が車輌の定速期間を示し、「T
d」で示す期間が車輌の悪路走行期間を示している。
【0020】車速検出手段7から得られる速度vに基づ
いてその時間微分である加速度dv(t)/dtを算出
すれば、加速期間Taにおいて加速度が正値、減速期間
Tbにおいて加速度が負値となり、定速期間Tcや悪路
走行期間Tdでは加速度がゼロ又は小さな値となるた
め、加速度又はその絶対値を、所定の基準値と比較する
ことによって車輌が加速走行中又は減速走行中であるか
否かを判定することができる。
【0021】図5は加減速走行判定処理の流れを示すフ
ローチャート図であり、上記した加減速走行判定手段3
bにおける処理の手順を示すものである。
【0022】先ず、ステップS1において車速v(t)
の検出を行った後、次ステップS2では加速度dv
(t)/dt又はその絶対値を算出する。そして次ステ
ップS3において加速度又はその絶対値が基準値以上で
あるか否かを判断し、加速度又はその絶対値が基準値以
上である場合にはステップS4に進み、加速度又はその
絶対値が基準値未満であればステップS5に進む。
【0023】ステップS4では、車輌が加速走行又は減
速走行中であるという判定を下した後最初のステップS
1に戻り、また、ステップS5では、車輌が加速走行中
又は減速走行中でないという判定を下した後最初のステ
ップS1に戻る。
【0024】方法i)は車輌の速度変化を監視する方法
であり、運転者が車輌の加速指令又は減速指令を発した
ことが車輌の速度に瞬時に反映されない場合には、加速
又は減速の判定に時間の遅れが生じることが危惧される
が、このようなときには、方法ii)に示すように、車
輌の加減速指令に係る情報としてアクセルベダルの踏み
込み量の変化やスロットルバルブの開度の変化量に係る
検出情報を用いることができる。
【0025】つまり、アクセルベダルの踏み込み量の変
化量やスロットルバルブの開度の変化量が、車輌の加速
時や減速時(以下、「加減速時」という。)において大
きく、定速時や悪路走行時において小さいために、その
相違を検出することによって車輌が加速走行中又は減速
走行中であるか否かを判定することができる。つまり、
図5においてステップS1をアクセルベダルの踏み込み
量やスロットルバルブの開度の検出に置き換え、ステッ
プS2でこれらの変化量を算出した後、これをステップ
S3で所定の基準値と比較して条件分岐を行えば良い。
【0026】また、これとは別の方法としては、車輌の
駆動源の状態変化に着目して、上記方法iii)に示す
ように、エンジンの回転数の変化を検出することによっ
て加減速走行に係る判定を行うことができる。
【0027】即ち、車輌の加減速時においてはエンジン
の回転数の変化が大きいのに対して、定速時や悪路走行
時においては回転数の変化が比較的小さいために、その
相違を検出することによって車輌が加速走行中又は減速
走行中であるか否かを判定することができる。この場合
には、図5のステップS1においてエンジンの回転数を
検出して、次ステップS2で回転数の変化量を算出した
後、これをステップS3で所定の基準値と比較して条件
分岐を行えば良い。
【0028】以上のように、車輌の速度変化や、速度指
令に係る変化、あるいは駆動源の状態変化等について時
間的な変化量を算出して、各々の情報あるいはこれらを
組み合せることによって得られる情報に基づいて車輌の
加減速状態の変化を捉えることができる。
【0029】残る方法iv)は車輌姿勢検出手段2によ
って得られる情報に基づいて車輌の加減速走行に係る判
定を行う方法である。車輪が路面から受ける振動を吸収
する機構の振動変位又は車軸の高さを検出する手段とし
て、例えば、車高センサー等の車高検出手段から得られ
る情報に基づいて、検出レベルの時間微分あるいはその
絶対値を求めた後、これを所定の基準値と比較すること
によって、車輌が加減速走行中であるか否かを判定する
ことができ、また、複数の車高検出手段を車輌の各所、
例えば前後及び/又は左右に配置して、これらによる検
出情報に基づいて車輌のピッチング方向の傾斜角(所謂
ピッチ角)を検出することによって車輌の走行状態をあ
る程度知ることができるが、このような車高検出手段の
みでは車輌の加減速走行と悪路走行との区別が難しい状
況が存在する。
【0030】図6は車輌に付設された車高センサーの検
出信号のレベル変化の一例を示すものであり、横軸が時
間tを示し、縦軸が検出信号のレベルVを示している。
【0031】図中に「T1」で示す期間は車輌が加減速
走行をしている期間を示し、「T2」で示す期間は車輌
が定速走行をしている期間を示し、「T3」で示す期間
は車輌が悪路を走行している期間をそれぞれ示してお
り、期間T1、T3において車高センサーの出力信号の
振幅変動の幅が大きいことが分かる。
【0032】つまり、車輌が加減速走行中であるか悪路
走行中であるかを判定するためには、期間T1と期間T
3における検出レベルの変化を区別する必要がある。例
えば、検出レベルの変動の仕方の違いに着目し、期間T
3における検出レベルの方が振幅変化が激しいことを判
定に利用することができるが、さらに判定の確実さを期
すことができる方法として、車高検出手段と角速度検出
手段とを併用して検出する方法を挙げることができる。
【0033】図7は、車高センサーと角速度センサーと
を併用して加減速走行の判定を行う方法について示すも
のであり、同図において、上段に示すグラフ図は車高セ
ンサーの検出レベルVから算出した車輌のピッチ角の時
間微分量(これを「dθ/dt」と記す。)の時間的な
変化を示し、また、下段に示すグラフ図は車輌のサスペ
ンションより上方の位置に取り付けられたピッチ角の角
速度センサーの出力レベル(これを「ω」とする。)の
時間的な変化を示している。尚、図中に示す期間T1は
車輌が凹凸の少ない道路を定速で走行している期間を示
し、期間T2は車輌の加減速走行期間、期間T3は悪路
走行期間をそれぞれ示している。
【0034】図から分かるように、期間T2においてd
θ/dtやωには加減速に伴う変化がみられるのに対し
て、期間T1ではdθ/dtやωの変化が小さく、ま
た、期間T3ではdθ/dtの振動成分が大きく、ωに
は大きな変化が認められないため、dθ/dtとωとの
間には相関がないか又は低いことが分かる。これは、車
輌の悪路走行時にはサスペンションの振動を車高センサ
ーが検出するため、これから算出したdθ/dtにも振
動の影響が及んでしまうのに対して、サスペンションの
バネ上の荷重部分への振動の影響がサスペンションの伸
縮によって吸収されるため当該部分がピッチング方向に
それ程大きく傾斜しないためであり、よって、これに取
り付られたピッチ角に係る角速度センサーの出力にもサ
スペンションのバネ下荷重に関する大きな振動成分が反
映されないことになる。
【0035】このように、dθ/dtとωとに相関性の
ある変化が見られる場合に、車輌が加速又は減速走行中
であると判定することができ、それ以外の場合、つまり
dθ/dtやωの変化が小さかったり、両者の相関がな
いか又は低い場合には、車輌が定速走行中か又は悪路走
行中であると判定することができる。
【0036】尚、角速度センサー(図1において車輌姿
勢検出手段2の中に含まれる。)の個数は1つとは限ら
ず、複数のセンサーからの情報に基づいて角速度計算に
必要な情報を得るようにしても良いことは勿論である。
【0037】しかして、上記の各方法によれば、車輌が
加速走行又は減速走行中であるか否かを判定することが
可能となるが、各方法を単独で用いることも、またこれ
らの方法のうちの幾つかを組み合せることによって判定
の確実性を高める等、各種形態での実施が可能である。
【0038】次に駆動手段4による灯具5の照射光の方
向制御について説明する。
【0039】灯具5の照射パターンを鉛直面内で変化さ
せる場合に最も簡単な方法は、図8に示すように、灯具
全体をその回動軸の回りに回動させることによって、水
平面に対する灯具5の照射角を変化させる方法である。
例えば、灯具5の左右の側面部を回動自在に支持すると
ともに、灯具5の回動軸をモータ等の駆動源によって直
接回動させたり、あるいは、灯具5に固定され又は灯具
と一体に形成された部材を駆動手段4によって回動させ
る駆動機構等が挙げられる。このような灯具例として
は、モータの回転力をウォーム及びウォームホィールを
使った伝達機構により灯具の回動力とした機構(例え
ば、特開昭63−166672号公報参照。)を挙げる
ことができる。
【0040】加減速走行判定手段3bにより車輌が加速
走行又は減速走行中であると判定された場合には、駆動
制御手段4aが補正計算手段3aからの指示通りの照射
角となるように灯具全体を鉛直面内で回動させる。
【0041】また、加減速走行判定手段3bにより車輌
が加速走行又は減速走行中でないと判定された場合に
は、駆動制御手段4aが加減速走行判定手段3bからの
指令を受けたときに、灯具5の照射角の制御について下
記の方法を採ることができる。
【0042】1)照射角を固定する方法 2)照射角の範囲を制限し又は範囲の一部を禁止する方
法 3)アクチュエータの応答速度や制御速度を変化させる
方法。
【0043】先ず、上記3方法の中で最も簡単な方法
1)は、加減速走行の判定時に灯具5の照射角をある一
定の角度に常に保持する方法である。即ち、車輌が加速
又は減速走行中でない場合に灯具5の照射光が無闇に上
向き光にならないように、灯具の照射方向がやや下向き
になる状態で灯具を保持すれば良い。
【0044】この時の下向きの照射角の設定について
は、車輌が加減速走行状態でないと判定される前の照射
角とは無関係な値に設定しても良いし、あるいは、当該
判定直前の照射角又は該照射角に対して補正(やや下向
きにする等。)を加えた角度に設定したり、あるいは、
判定前の平均的な照射角又はこれに補正を加えた角度に
設定することができる。
【0045】照射角範囲を制限する方法2)は、車輌が
加減速走行中でないと判定された時の灯具5の照射角の
許容範囲が、加速走行又は減速走行中であると判定され
た時の照射角の許容範囲に比べて小さくなるように角度
範囲を狭める方法である。
【0046】例えば、図9に示すように、加減速時以外
における灯具5の照射角の許容範囲を「θa」とし、加
減速時における照射角の許容範囲を「θb」としたとき
に、比率「n」(0<(1/n)<1)を導入して、
「θa=θb/n」となるように角度範囲を狭めれば、
車輌の加減速時以外において灯具5の照射光が上向き光
になる頻度を低減することができる。
【0047】また、図10に示すように、車輌の加減速
時以外における灯具5の照射角に上限を設定してこれよ
り上向きの状態にならないように規制することができ
る。例えば、加減速時の照射角の許容範囲「θb」に対
して上限θmを設定し、灯具5の照射角の許容範囲θa
がこの上限θmを越えないようにすれば、加減速時以外
において灯具5の照射光が上向き光にならないように制
御することができる。
【0048】残る方法3)は、前2者が照射角そのもの
に対する制御であったのに対して、駆動手段4の応答速
度を制御することによって、加減速時以外において灯具
5の照射方向が無闇に変化しないようにする方法であ
る。
【0049】つまり、駆動手段4の応答速度に係る制御
は、駆動手段の構成によって千差万別であるが、駆動手
段を構成するアクチュエータ等への供給電圧や電流、制
御信号等を変化させることによって加減速時以外におけ
る灯具5の姿勢制御を鈍化させることができる。
【0050】例えば、アクチュエータがDC(直流)モ
ータを内蔵しており、アクチュエータの制御目標位置
(あるいは角度)と現在位置(あるいは角度)との差を
検出して、これに応じたデューティーサイクルをもった
パルス信号をDCモータに供給することによってアクチ
ュエータの位置制御を行っている場合には、図11に示
すように、位置差Δxに対するデューティーサイクルD
Tの特性を、破線10で示す応答速度の比較的速い状態
から、実線11で示す応答速度の遅い状態に変化させれ
ば、同じ位置差Δx=Δxaに対して加減速時以外の場
合のデューティーサイクルDTが加減速時のデューティ
ーサイクルに比べて小さくなるため、アクチュエータに
よる灯具5の駆動制御が緩慢になる。
【0051】尚、駆動手段4の応答速度を車輌の走行速
度に応じて変化させたり、あるいは、定速走行時か悪路
走行時かに応じて変化させる等の各種の実施の形態が可
能であり、また、1)乃至3)の方法を車輌の状況(走
行状態や車輌の姿勢変化等)に応じて組み合せることが
できることは勿論である。
【0052】上記の説明では、駆動手段4により灯具全
体を回動させることでその照射方向を変化させたが、灯
具5の構成部材の一部について位置制御を行っても良
い。
【0053】例えば、図12に示すように、駆動手段4
によって反射鏡12を鉛直面内で回動させることによっ
て反射光の向きを変化させるようにした構成、例えば、
反射鏡の一部を灯具のボディに回動可能に支持するとと
もに、他の部分に取り付けられた反射鏡の傾動角調整用
のネジ部材をモータで回転させるために、ウォーム及び
ウォームホィールを含む伝達機構を使ったものを用いた
り(例えば、特開昭59−195441号公報参
照。)、あるいは、図13に示すように、駆動手段4に
よってレンズ13を傾動させることでレンズ13を通過
した照射光の向きを変化させるようにした構成(例え
ば、特開平7−37405号公報参照。)を挙げること
ができる。尚、反射鏡やレンズについてはその全体を傾
動させる代わりに、それらの一部分の位置制御を行うこ
とによって照射光の主要部を所望の方向に変化させるよ
うにしても良い。
【0054】また、図14に示すように、灯具5におい
て反射鏡12とレンズ13との間に位置されるシェード
14を駆動手段4によって移動させることによって、灯
具5の配光パターンにおける明暗境界(所謂カットライ
ン)を上下に変化させるようにしても良い(例えば、特
開平7−29401号公報参照。)。
【0055】この他、反射鏡及び光源、レンズ及び反射
鏡、あるいはレンズ及びシェードを駆動手段4により一
緒に移動することによって照射光の向きを上下方向に変
化させる等、灯具5の光学的な構成部材の組み合わせの
如何に応じて各種の実施形態が可能である。
【0056】
【発明の効果】以上に記載したところから明らかなよう
に、請求項1に係る発明によれば、車輌が加速走行中又
は減速走行中でないことが判明した場合には、灯具の照
射光の方向を所定の方向に固定したり、又は照射光の方
向を限られた範囲としたり、又は駆動手段の応答速度が
遅くなるように制御することで、灯具の照射方向が無闇
に変化しなくなり、悪路走行時に灯具の照射方向が過剰
に補正されることがないので、灯具の配光や視界の過敏
な変化が運転者に与える違和感や対向車の運転者や歩行
者等に与える眩惑等を抑えることがことができる。
【0057】また、請求項2に係る発明によれば、車輌
の駆動源への加速指令又は減速指令、あるいは車輌の駆
動源の駆動状態を検出することによって、車輌の速度が
変化するのに要する時間的な遅れを待つことなく加減速
走行状態に係る判定を行うことができる。
【0058】請求項3に係る発明によれば、車輌姿勢検
出手段からの車輌姿勢に係る検出信号を、加減速走行状
態に係る判定の基礎情報として流用することができる。
【0059】請求項4に係る発明によれば、車高検出手
段からの検出信号に基づく車輌の傾斜角の時間的変化
と、角速度検出手段によって検出される傾斜角の角速度
との間の時間的な相関性を調べ、相関の高低によって車
輌が加速又は減速走行中であるのか、悪路を走行中であ
るのかを区別することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る車輌用灯具の照射方向制御装置の
構成を示すブロック図である。
【図2】車高検出手段について説明するための車輌の概
略図である。
【図3】灯具の照射方向の補正制御について説明するた
めの図である。
【図4】車速検出手段による検出レベルの時間的変化の
一例を示す図である。
【図5】加減速走行に係る判定処理の流れを示すフロー
チャート図である。
【図6】車高センサーの検出レベル変化の一例を示す図
である。
【図7】車高センサーと角速度センサーとを併用して悪
路判定を行う方法について説明するための図である。
【図8】灯具全体の駆動制御によってその照射方向を変
化させる例を示す概略図である。
【図9】加減速走行中であるとの判定時に灯具の照射角
の許容範囲を限定する方法について説明するための概略
図である。
【図10】加減速走行中であるとの判定時に灯具の照射
角の許容範囲を限定して上向き光を禁止する方法につい
て説明するための概略図である。
【図11】加減速走行中であるとの判定時に駆動手段の
応答速度を遅くする方法について説明するための図であ
る。
【図12】反射鏡の駆動制御によってその照射方向を変
化させる例を示す概略図である。
【図13】レンズの駆動制御によってその照射方向を変
化させる例を示す概略図である。
【図14】シェードの駆動制御によってその照射方向を
変化させる例を示す概略図である。
【符号の説明】
1…照射方向制御装置、2…車輌姿勢検出手段、3a…
補正計算手段、3b…加減速走行判定手段、4…駆動手
段、5…車輌用灯具
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60Q 1/115

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車輌の進行方向における上下の傾きに応
    じて灯具の照射光の方向を変化させるようにした車輌用
    灯具の照射方向制御装置において、 静止及び/又は運動中の車輌の姿勢を検出するための車
    輌姿勢検出手段と、 車輌が加速走行又は減速走行中であるか否かを判定する
    加減速走行判定手段と、 灯具の照射光を所望の方向に向けるための駆動手段と、 車輌姿勢検出手段からの信号に応じて灯具の照射光を所
    定の方向に保つための補正信号を駆動手段に送出する補
    正計算手段とを備え、 上記加減速走行判定手段により車輌が加速走行又は減速
    走行中であることが判明した場合に、補正計算手段から
    駆動手段に送出される信号によって灯具の照射方向が制
    御され、 また、加減速走行判定手段により車輌が加速走行又は減
    速走行中でないことが判明した場合に、駆動手段が灯具
    の照射光の方向を所定の方向に固定し又は照射光の方向
    の許容範囲を限定し又は駆動手段の応答速度が遅くなる
    ようにしたことを特徴とする車輌用灯具の照射方向制御
    装置。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の車輌用灯具の照射方向
    制御装置において、 加減速走行判定手段が、車輌の駆動源への加速指令又は
    減速指令を検出し、あるいは車輌の駆動源の駆動状態を
    検出することによって、車輌が加速走行又は減速走行中
    であるか否かを判定することを特徴とする車輌用灯具の
    照射方向制御装置。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の車輌用灯具の照射方向
    制御装置において、 加減速走行判定手段が、車輌姿勢検出手段からの車輌姿
    勢に係る検出信号の時間的な変化を検出することによっ
    て、車輌が加速走行又は減速走行中であるか否かを判定
    することを特徴とする車輌用灯具の照射方向制御装置。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の車輌用灯具の照射方向
    制御装置において、 車輪が路面から受ける振動を吸収する機構の振動変位又
    は車軸の高さを検出する車高検出手段と、 進行方向における車輌の傾斜角に係る角速度を検出する
    角速度検出手段とを設け、 加減速走行判定手段が、車高検出手段からの検出信号に
    基づいて車輌の進行方向における車輌の傾斜角の時間的
    変化を検出し、これと角速度検出手段からの検出信号の
    時間的変化とを比較して両者の相関性の高低から車輌が
    加速走行又は減速走行中であるか否かを判定することを
    特徴とする車輌用灯具の照射方向制御装置。
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