JP3126381B2 - 減少されたクリアランスを有する組織プラスミノーゲンアクチベーター変異体 - Google Patents

減少されたクリアランスを有する組織プラスミノーゲンアクチベーター変異体

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Description

【発明の詳細な説明】 発明の背景 I.発明の分野 本発明は、特定の組織プラスミノーゲンアクチベータ
ー(t−PA)変異体、その変異体を製造するための方
法、並びにその変異体を医薬組成物中に利用する方法及
びその組成物に関する。より詳細には、本発明は、野生
型t−PAと比較して減少したクリアランス速度を有する
変異体を導く、少なくともt−PAのクリングル−1又は
クリングル−2ドメイン内に置換などの改変アミノ酸配
列を有しているt−PA変異体に関する。
II.発明の背景及び関連分野の説明 プラスミノーゲンアクチベーターは、プラスミノーゲ
ンのアミノ酸561及び562残基間のペプチド結合を開裂さ
せ、それをプラスミンに変換する酵素である。プラスミ
ンはフィブリンなどの種々のタンパク質を分解する活性
セリンプロテイナーゼである。幾つかのプラスミノーゲ
ンアクチベーターが同定されており、その中には、スト
レプトキナーゼ(細菌タンパク質)、ウロキナーゼ(腎
及び他の部位にて合成され、初めは尿から抽出され
た)、及びt−PAと命名されているヒト組織プラスミノ
ーゲンアクチベーター(血管壁を裏うちする細胞から産
生される)がある。
これらプラスミノーゲンアクチベーターそれぞれの作
用機序は幾分異なっている。ストレプトキナーゼはプラ
スミノーゲン又はプラスミンと複合体を形成してプラス
ミノーゲン活性化活性を生じるものであり、ウロキナー
ゼはプラミノーゲンを直接開裂し、t−PAは最適な活性
のためにフィブリン及びプラスミノーゲンの両者と相互
作用するものである。
t−PAは、その高いフィブリン特異性及びインビボに
おける強力な凝塊(血餅)溶解能のおかげで、心筋梗塞
などの血管疾患を処置するための重要な新規生物学的医
薬物質として認定されている。
実質的に純粋な形態のt−PAはコラン(Collen)らの
1988年6月21日発行の米国特許番号第4,752,603号によ
って、天然起源から初めて調製され、インビボ活性につ
いて試験された[さらに、リッケン(Rijken)らのJ.Bi
ol.Chem.256,7035(1981)も参照のこと]。ペニカ(Pe
nnica)ら[Nature 301,214(1983)]は、t−PAのDNA
配列を決定し、このDNA配列からアミノ酸配列を推定し
た[1988年8月23日発行の米国特許番号第4,766,075号
を参照のこと]。
ヒトの天然t−PAはアミノ酸117、184、218及び448位
に潜在的N−連結グリコシル化部位を有している。高度
マンノースオリゴサッカライドは117位に存在し、複合
オリゴサッカライドは184位及び448位に存在している。
117及び448部位は常にリコシル化されているようである
が、184部位はt−PA分子の約50%がグリコシル化され
ていると考えられる。184位のこの部分的なグリコシル
化パターンはt−PA分子の暴露されていない領域にこの
184部位が位置していることに由来すると思われる。184
位がグリコシル化されているt−PA分子はI型t−PAと
呼ばれ、184位がグリコシル化されていない分子はII型
t−PAと呼ばれる。天然のt−PAにおいて218位がグリ
コシル化されていることは見いだされていない。
t−PAの構造研究により、この分子は5つのドメイン
を有することが突き止められた。各ドメインは、トリプ
シン、キモトリプシン、プラスミノーゲン、プロトロン
ビン、フィブロネクチン及び表皮性成長因子(EGF)な
どの他のタンパク質中における相同的又は機能的領域に
照らして規定されている。これらのドメインは、t−PA
のアミノ酸のN−末端から言って、アミノ酸1から約44
までのフィンガー(F)ドメイン、アミノ酸約45から91
までの成長因子(G)ドメイン[EGFとの相同性に基づ
く]、アミノ酸約92−173のクリンブル−1(K1)ドメ
イン、アミノ酸約180から261までのクリングル−2(K
2)ドメイン、及びアミノ酸約264から527位のアミノ酸
のC−末端までのセリンプロテアーゼ(P)ドメイン、
と命名されている。これらのドメインは本質的に互いに
隣接して位置しており、幾つかは短い「リンカー」領域
によって連結されている場合もある。このリンカー領域
は成熟ポリペプチドのアミノ酸の総数を527に導いてい
るが、3つの付加的な残基(Gly−Ala−Arg)がそのア
ミノ末端に見いだされる場合があり、これはおそらく分
子の不完全な前駆体プロセッシングに由来するものであ
ろう。
上記の各ドメインは、生物学的に意義ある何らかの性
質をt−PA分子に付与していると考えられる。フィンガ
ードメインは、フィブリンに対するt−PAの高い結合親
和性にとって重要であると考えられる。この活性は、t
−PAがフィブリンに富む血栓の病巣において凝塊の溶解
に際して示す高い特異性にとって重要なようである。ク
リングル−1及びクリングル−2ドメインもフィブリン
結合性及び、t−PAの活性を刺激するフィブリンの刺激
能に関係しているようである。セリンプロテアーゼドメ
インは、プラスミノーゲンをプラスミンに変換させるt
−PAの酵素活性に関与している。t−PA分子は275位及
び276位間(このセリンプロテアーゼドメイン内に位置
している)で開裂され、2鎖形態の分子となることが多
い。
天然のt−PAは治療学的に有効な量で患者に投与した
場合、約6分又はそれ以下の血漿中半減期を有する。こ
の6分の半減期は、例えば心筋梗塞または肺塞栓症など
の致死性の疾患に対して急性の攻撃的治療を施すような
特定の場合には望ましい。この非常に危険な状況下、制
御できない出血傾向を引き起こす可能性が有意にあり、
又は認識できない患者はt−PAで処置することができ
る。このような出血が起こった場合は、薬物投与を中止
すれば、その原因となるt−PAレベルは急速に下降す
る。従って、このような患者を比較的短い生存形態のt
−PAで処置することは好ましい。
天然t−PAに凝塊溶解物質としてこの充分な利点があ
るとしても、天然に存在するこのタンパク質の形態がす
べての状況下で最適なt−PA物質を代表しているとは考
えられない。ある場合、例えば深部静脈血栓症を処置す
る場合、再灌流(reperfusion)を行って心筋梗塞を処
置する場合、肺塞栓症を処置する場合、又はボーラス注
入を使用して処置する場合などには、より長い半減期及
び/又は減少されたクリアランスを有するt−PA分子が
望ましい。野生型t−PA分子の幾つかの変異体は半減期
を増大させ、又はクリアランス速度(消失速度)を減少
させることを企図して創製されている。
このようなt−PA変異体を創製するために使用される
1つの方法は、この分子から個々のアミノ酸、部分的ド
メイン、又は完全なドメインを欠失させることである。
例えば、米国特許第4,935,237号(1990年6月19日発
行)に記載されているようにt−PAのフィンガードメイ
ンの一部又はそのすべてを除去すると、その分子のクリ
アランス速度は減少するが、それによりフィブリン結合
特性が実質的に減少してしまう。ブラウン(Browne)ら
[J.Biol.Chem.263:1599−1602(1988)]はアミノ酸57
及び81間の領域を除去し、それにより得られる変異体が
比較的ゆるやかな血漿からのクリアランスを有すること
を見いだした。コラン(Collen)ら[Bolld,71:216(19
88)]はアミノ酸6−86(フィンガー及び成長ドメイン
の一部)を欠失させ、野生型t−PAが5分の半減期であ
るのに対して、得られた突然変異体がウサギにおいて15
分の半減期を有することを見いだした。同様に、カイラ
ン(Kaylan)ら[J.Biol.Chem.,263:3971(1988)]は
アミノ酸1−89を欠失させ、野生型t−PAが約2分であ
るのに対して、この突然変異体のマウスにおける半減期
が約15分であることを見いだした。Cambierら[J.Cardi
ovasc.Pharmacol.,11:468(1988)]はフィンガー及び
成長因子ドメインが欠失され、3つのアスパラギングリ
コシル化部位が完全に破壊された変異体を構築した。こ
の変異体はイヌで試験した場合、野生型t−PAよりも長
い半減期を有することが見いだされた。成長因子ドメイ
ン又はフィンガードメインのみが欠失された変異体もウ
サギ、モルモット及びラットにおいてクリアランス速度
が減少していることが証明された[Higgins及びBennet
t,Ann.Rev.Pharmacol.toxical.,30:91(1990)及びそこ
の引用文献]。
成長因子領域を種々欠失させることが特許文献にも報
告されている。EPO特許公開第241,208号を参照のこと
(アミノ酸51−87の欠失、及びアミノ酸51−173の欠
失)。さらに、成熟した天然t−PAのアミノ酸領域67−
69につき、1つ又はそれ以上のアミノ酸を欠失又は置換
させることによるその修飾を開示しているEPO特許公開
第240,334号も参照のこと。
t−PAのクリアランス速度及び/又は半減期を改善す
るもう1つの手段は、t−PA分子を別の分子と複合化す
ることである。例えば、t−PA−ポリエチレン−グリコ
ールコンジュゲート体は、EPO第304,311号(1989年2月
22日公開)に報告されているように、t−PAのクリアラ
ンス速度を増大させると報告された。t−PAに対するモ
ノクローナル抗体は、その活性を減少させることなくt
−PAのインビボにおける機能的な半減期を増大させると
報告された(1989年11月2日公開のEPO第339,505号を参
照のこと)。
t−PAの種々のアミノ酸置換変異体が、t−PAの半減
期を増大させたり、そのクリアランス速度を減少させる
それらの能力について評価された。変異体R275E(天然
の成熟t−PAにおける275位のアルギニンがグルタミン
酸と置換されている)は、霊長動物及びウサギにおいて
試験した場合、野生型t−PAよりも約2倍遅いクリアラ
ンス速度を有していることが示された[HotchkissらのT
hromb.Hemost.,58:491(1987)]。成熟した天然t−PA
のアミノ酸63−72の領域における置換、及び特に67位及
び68位の置換は、t−PAの血漿中半減期を増大させると
報告されている[1989年12月28日公開のWO 89/1268
1]。
他の置換変異体の製造方法は、t−PAのグリコシル化
部位を非グリコシル代部位に変換する点に焦点を合わせ
ている。ホッチキス(Hotchkiss)ら[Thromb.Hemost.,
60:255(1988)]はt−PA分子からオリゴサッカライド
残基を選択的に除去し、ウサギにおいて試験した場合、
それらの残基の除去によりt−PAのクリアランス速度が
減少することを証明した。エンド−β−N−アセキルグ
ルコサミニダーゼH(Endo−H)酵素を使用して117位
の高度マンノースオリゴサッカライドを除去すると、約
2倍に減少したクリアランス速度が得られた。過ヨウ素
酸ナトリウムを使用して殆どすべてのオリゴサッカライ
ド残基を酸化すると、野生型t−PAと比較して約3倍低
いクリアランス速度となった。これらの研究者は、117
位のグリコシル化を防止するため、t−PA変異体N117Q
(天然の成熟t−PAの117位のアスパラギンがグルタミ
ンと置換している)も創製した。この変異体のクリアラ
ンス速度は野生型t−PAよりも低かった。1987年9月23
日公開のEP 238,304、及び1987年6月1日公開のEP 22
7,462も参照のこと。
延長された循環系半減期及び比較的ゆっくりしたクリ
アランスを有するt−PA変異体を製造するための別のア
プローチは、t−PA分子にグリコシル化部位を付加する
ことである。このアプローチの例示として、60、64、6
5、66、67、78、79、80、81、及び82位を適当なアミノ
酸と置換し、これらの残基のうち幾つかの残基又はその
近くの残基にグリコシル化部位を有する分子を創製する
ことが挙げられる(1989年11月30日公開のWO 89/11531
を参照のこと)。さらに、例えばアミノ酸103位又はそ
の近くにグリコシル化部位を有しているグリコシル化変
異体も製造することができる。
上述の研究の幾つかは半減期が増大し、又はクリアラ
ンス速度が減少したt−PA変異体を創製できるが、多く
の場合、その分子の活性、溶解性及び/又はフィブリン
結合特異性は減じられている。即ち、既知のt−PA変異
体は最適な特性を有していない。従って、本発明の目的
は、生物活性、溶解性及び/又はフィブリン溶解性を実
質的に保持している、クリアランス速度が減少されたt
−PA変異体を製造することである。これらの特性のいず
れか1つ又はその組合わせを有するクリアランス速度が
減少されたt−PA変異体が生産できれば、t−PAの治療
上の価値及び効能が改善される。本発明のさらなる目的
は、効能又は製薬的利用性が改善されたt−PA変異体を
製造することである。
発明の要約 本発明の目的は、生物学的活性を示し、野生型t−PA
と比較して減少されたクリアランス速度を有するt−PA
変異体を提供することである。
より詳細には、本発明は、94位又は95位、又は236
位、238位及び240位に改変を有するt−PAアミノ酸配列
変異体であって、生物学的活性を示し、野生型t−PAと
比較して減少されたクリアランス速度を有する変異体を
提供するものである。
他の好ましい態様では、94位又は95位の改変、又は23
6位、238位及び240位の改変は置換であり、それらの置
換されるアミノ酸はアラニン、グリシン、セリン又はス
レオニンと置き換えるのが好ましい。最も好ましい態様
では、それらをアラニンと置換するか、又は特定の部位
をグリシンと置換する。
他の態様では、94位及び95位、又は94位、236位、238
位及び240位、又は95位、236位、238位及び240位、又は
94生、95位、236位、238位及び240位などの1つ以上の
部位でt−PA変異体を改変する。この改変はアミノ酸置
換が好ましく、より好ましくはアラニン、グリシン、セ
リン又はスレオニンと置き換え、最も好ましくはアラニ
ンと置き換えるか、又は特定の部位をグリシンと置き換
える。
他の態様は、94位又は95位又はその両者、又は236
位、238位及び240位、又は94位、236位、238位及び240
位、又は95位、236位、238位及び240位、又は94位、95
位、236位、238位及び240位が置換された上述のt−PA
変異体について、さらにその103位及び/又は117位が改
変されたものであり、その改変は103位をアスパラギン
でアミノ酸置換し、117位をアラニン又はセリンで、又
は好ましはグルタミンでアミノ酸置換するのが好まし
い。
他の態様として、本発明は上記の変異体をコードする
DNA配列、このDNA配列を形質転換宿主細胞において発現
できる複製可能な発現ベクター、及び形質転換された宿
主細胞を提供する。
また別の態様として、本発明は、本発明のt−PA変異
体の治療学的有効量を製薬的に許容され得る担体と共に
含有してなる、血管状態又は血管疾患を処置するための
組成物を提供する。
本発明はさらに別の態様として、本発明のt−PA変異
体の有効量を哺乳動物に投与することを特徴とする、哺
乳動物の血管状態又は疾患を処置するための方法を提供
する。
また、本発明は、本発明のt−PA変異体の治療学的有
効量を製薬的に許容され得る担体と共に含有してなる、
フィブリン沈着又は接着形成もしくは再形成を予防する
ための組成物を提供する。
さらに、本発明は、潜在的なフィブリン又は接着形成
のある哺乳動物におけるその部位に本発明t−PA変異体
の有効量を投与することを特徴とする、フィブリン沈着
又は接着形成もしくは再形成を予防するための哺乳動物
の処置方法を提供する。
図面の簡単な説明 第1図は、ヒトt−PAの成熟形態のアミノ酸配列を示
している。このアミノ酸はアミノ末端から開始して番号
付けしている。5つのドメイン、ジスルフィド架橋、及
びt−PA分子が2本鎖分子に切り取られる活性化部位、
の各位置を示している。
第2図は、pRK.t−PAの構築を模式図として表したも
のである。ヒトt−PAのcDNAをHind III及びBal Iで消
化し、それを真核生物発現ベクターpRK7のHind III及び
Sma I部位間に挿入した。
第3図は、マウスの血流中に残存する放射線標識化t
−PA変異体の残存量(血液1ml当たりの毎分の1000カウ
ントで測定)を時間(分)に対してプロットしたもので
ある。放射線標識化t−PA変異体は通常タンパク質1ナ
ノグラム当たり1000cpmであった。検定した各変異体は
野生型t−PAと同様に明示している。
発明の詳細な説明 I.定義 「t−PA」、「ヒトt−PA」、及び「ヒト組織プラス
ミノーゲンアクチベーター」なる用語は、プラスミノー
ゲンをプラスミンに変換できるプロテアーゼドメイン
と、フィブリン結合性に関与していると考えられるN−
末端領域とからなる2つの機能領域を有するヒト外因性
(組織型)プラスミノーゲンアクチベーターを意味す
る。従って、これらの用語は、上記の機能ドメインをポ
リペプチドのアミノ酸配列の一部として含有している該
ポリペプチドを包含する。生物学的に活性な形態のt−
PAは、この分子の上記2つの機能領域及びt−PAの供給
源本来のそれら以外のt−PAの他の部分を含有する形態
として組換え細胞培養系によって生産することができ
る。各個体のt−PAのアミノ酸配列における1つ又はそ
れ以上のアミノ酸の相違によって示されるように、個体
間毎に自然のままのアレル変異体が存在し、また生じる
ことは理解されよう。
「野生型t−PA」及び「天然t−PA」なる用語は天然
の配列ヒトt−PA、即ち1988年8月23日発行の米国特許
番号第4,766,075にて報告されているcDNAによってコー
ドされているt−PAを意味する。このt−PA分子のアミ
ノ酸部位の番号又は位置は米国特許番号第4,766,075号
(前掲)に従って決められる。t−PAは天然起源から得
ることができ、ヒトなどの種々の動物の相当するタンパ
ク質が包含される。さらに、t−PAは、例えばチャイニ
ーズハムスター卵巣(CHO細胞)又はヒト腎胚293細胞な
どの組換え発現系から入手することもできる。
「アミノ酸」及び「アミノ酸群」なる用語はすべて天
然に存在するL−α−アミノ酸を意味する。この定義
は、ノルロイシン、オルニチン、及びホモシステインを
包含するものである。アミノ酸は、以下の1文字又は3
文字命名法によって特定される: Asp D アスパラギン酸 Ile I イソロイシン Thr T スレオニン Leu L ロイシン Ser S セリン Tyr Y チロシン Glu E グルタミン酸 Phe F フェニルアラニン Pro P プロリン His H ヒスチジン Gly G グリシン Lys K リジン Ala A アラニン Arg R アルギニン Cys C システイン Trp W トリプトファン Val V バリン Gln Q グルタミン Met M メチオニン Asn N アスパラギン これらのアミノ酸は化学組成及びそれらの側鎖の性質
に応じて分類することができる。これらのアミノ酸は、
帯電及び非帯電アミノ酸と大きく2つのグループに分類
される。これらのグループはそれぞれサブグループに分
割され、アミノ酸はさらに厳密に分類できる: I.帯電アミノ酸 酸性残基:アスパラギン酸、グルタミン酸 塩基性残基:リジン、アルギニン、ヒスチジン II.非帯電アミノ酸 親水性残基:セリン、スレオニン、アスパラギン、グ
ルタミン 脂肪族残基:グリシン、アラニン、バリン、ロイシ
ン、イソロイシン 非極性残基:システイン、メチオニン、プロリン 芳香族残基:フェニルアラニン、チロシン、トリプト
ファン 「改変」、「アミノ酸配列改変」、「変異体」及び
「アミノ酸配列変異体」なる用語は、アミノ酸配列が天
然t−PAと比較して何等かの相違点を有しているt−PA
分子を意味する。普通、変異体は天然t−PAと少なくと
も80%の相同性を有しているが、天然t−PAとは少なく
とも約90%相同的であるのが好ましい。本発明の範囲内
にあるt−PAのアミノ酸配列変異体は特定の位置に置
換、欠失、及び/又は挿入を有している。これらの位置
は、t−PAのクリアランス速度を調整するうえで影響を
与えるものとして本発明者らが同定した。
置換t−PA変異体は、天然のt−PA配列中の少なくと
も1つのアミノ酸残基が除去され、その同じ部位に別の
アミノ酸が挿入されているものである。この置換は、分
子内のアミノ酸1つだけを置換させる場合は1つでよ
く、あるいは分子内の2つ又はそれ以上のアミノ酸を置
換する場合は多数であってもよい。
あるアミノ酸を電荷及び/又は構造が元のアミノ酸と
有意に異なる側鎖で置換すれば、t−PA分子の活性を実
質的に変動させることができる。このタイプの置換は、
この分子の置換領域のポリペプチド骨格の構造及び/又
は電荷又はハイドロホビシティーに影響を与えると期待
できる。
t−PA分子の活性は、元の分子の側鎖と電荷及び/又
は構造が類似している側鎖でアミノ酸を置換すれば、穏
やかに変動させることができよう。このタイプの置換は
保存的置換と呼ばれるが、この分子の置換領域のポリペ
プチド骨格の構造又は電荷又はハイドロホビシティーの
いずれかを実質的に変化させると期待できる。
挿入t−PA変異体は、元のt−PA分子の特定の位置に
あるアミノ酸のすぐ隣に1つ又はそれ以上のアミノ酸が
挿入されたものである。「アミノ酸のすぐ隣に」とは、
アミノ酸のα−カルボキシ又はα−アミノ官能基のいず
れかに連結することを意味する。この挿入はアミノ酸1
つ又はそれ以上であってもよい。普通、挿入は1つ又は
2つの保存性アミノ酸から構成される。電荷及び/又は
構造が挿入部位に隣接するアミノ酸と類似しているアミ
ノ酸は保存的と規定される。別に、本発明は、挿入部位
に隣接するアミノ酸とは実質的に異なる電荷及び/又は
構造を有するアミノ酸の挿入も包含している。
欠失変異体は、天然t−PA分子の1つ又はそれ以上の
アミノ酸が除去されているものである。普通、欠失変異
体は、t−PA分子の特定の部位にある1つ又は2つのア
ミノ酸が欠失されている。
t−PAアミノ酸配列変異体を説明するために本明細書
全体で使用している命名法を次に説明する。t−PAのポ
リペプチド鎖の特定のアミノ酸の位置は数字で特定して
いる。この数字は、1988年8月23日発行の米国特許番号
第4,766,075号に記載されている成熟野生型ヒトt−PA
ポリペプチドのアミノ酸配列のアミノ酸位置を意味す
る。t−PA変異体の実際の残基番号はその分子の欠失又
は挿入によって上記のような番号の並びではないが、本
明細書では、t−PA変異体内の同様に位置した残基もこ
れらの数字によって命名している。これは例えば、部位
特異的な欠失又は挿入変異体に存在する。アミノ酸の特
定には1文字コードを使用している。置換アミノ酸は、
野生型アミノ酸のポリペプチド鎖の位置を示す数字の左
側に野生型アミノ酸を特定し、そしてその数字の右側に
置換されたアミノ酸を特定することで命名している。
例えば、t−PAの94位のアミノ酸グルタミン酸(E)
をアラニン(A)と置き換えた場合は、E94Aと命名され
る。94位のグルタミン酸(E)をアラニンと置き換え、
95位のアスパラギン酸(D)をアラニンと置き換えた場
合は、E94A,D95Aと示すことができる。欠失変異体は、
包括的な欠失のいずれかの端のアミノ酸残基及び位置を
示し、示したアミノ酸の左側にキリシヤ文字「Δ」を配
置することによって特定される。例えば、アミノ酸100
−101の欠失を含有するt−PA変異体はΔY100−R101
[ここにY及びRはそれぞれアミノ酸チロシン及びアル
ギニンを示す]と示される。1つのアミノ酸、例えばY1
00が欠失される場合は、ΔY100と示される。挿入t−PA
変異体は、挿入されたアミノ酸の回りを括弧「[]」で
くくり、挿入のいずれかの側のアミノ酸位置を示すこと
によって挿入の位置を示して命名される。例えば、94位
のグルタミン酸と95位のアスパラギン酸との間にアミノ
酸アラニン(A)及びバリン(V)が挿入される場合
は、E94[A,V]D95と示される。読み易くするために、
カンマ「,」を使用し、1つの分子に存在する多重突然
変異を分離して表し、また幾つかのt−PA変異体分子を
同時に挙げる場合には、セミコロン「;」を使用して、
構築された個々のt−PA変異体分子を分離して表す。
「クリアランス速度」及び「クリアランス」なる用語
は、t−PA分子が血流から除去される速度を意味する。
クリアランスは天然のt−PAについて測定され、その結
果、減少されたクリアランスとは天然t−PAよりもゆっ
くりとt−PA変異体が消失することを意味し、増大した
クリアランスとは天然t−PAよりも速くt−PA変異体が
消失することを意味する。
「生物学的活性」、「生物学的に活性」、「活性」、
及び「活性な」なる用語は、血漿凝塊又はフィブリンの
存在下のS−2251検定、S−2288検定、血漿凝塊溶解検
定又は他の適当な検定で測定した場合に、t−PA分子が
プラスミノーゲンをプラスミンに変換できるその変換能
を意味する。t−PA分子はその1又は2本鎖形態で検定
でき、それらの検定は、フィブリン、フィブリノーゲ
ン、血漿及び/又は血漿凝塊などの活性の有効な調整物
質の存在又は不存在下に行うことができる。
「コードするDNA配列」、「コードするDNA」及び「コ
ードする核酸」なる用語は、デオキシリボ核酸に沿った
デオキシリボヌクレオチドの順序又は配列を意味する。
これらデオキシリボヌクレオチドの順序によって、ポリ
ペプチド鎖に沿ったアミノ酸の順序が決められる。従っ
て、DNA配列はアミノ酸配列をコードしている。
「複製可能な発現ベクター」及び「発現ベクター」な
る用語は、外来DNA片を挿入することのできた、通常は
2本鎖であるDNA片を意味する。外来DNAは異種DNAと規
定され、これは宿主細胞内に天然では見いだされないDN
Aである。このベクターを使用し、外来即ち異種DNAを適
当な宿主細胞に輸送する。ベクターは宿主細胞内に入っ
たなら、宿主の染色体DNAとは独立して複製することが
でき、ベクター及びその挿入された(外来)DNAの幾つ
かのコピーが創製される。さらに、このベクターは、外
来DNAをポリペプチドに翻訳させる必須要素を含有して
いる。外来DNAによってコードされているポリペプチド
の多くの分子はこのようにして迅速に合成することがで
きる。
「形質転換宿主細胞」及び「形質転換」なる用語は、
DNAを細胞に導入することを意味する。この細胞は「宿
主細胞」と呼ばれ、原核生物又は真核生物細胞のいずれ
でもよい。通常の原核生物宿主細胞としては大腸菌の種
々の株が挙げられる。通常の真核生物宿主細胞は、チャ
イニーズハムスター卵巣細胞又はヒト腎胚293細胞など
の哺乳動物である。導入されるDNAは通常、挿入されたD
NA片を含有するベクターの形態にある。導入DNA配列は
宿主細胞と同じ種又は宿主細胞とは異なる種由来のいず
れでもよく、又はある種の外来及びある種の異種DNAを
含有する雑種DNA配列であってもよい。
II.一般的な方法 A.変異体の選択 t−PA分子のアミノ酸配列を変化させることにより、
t−PAのクリアランス速度を調節することができる。そ
の変化はアミノ酸の挿入、欠失及び/又は置換のいずれ
でもよい。好ましくは、この変化はt−PA分子の1つ又
はそれ以上の領域内の少なくとも1つのアミノ酸置換に
よるものである。置換させるアミノ酸(群)を選択する
ための適当な手法は、Cunningham及びWells[Science 2
44:1081(1989)]によって開示されているアラニン−
スキャニング突然変異法のそれである。この手法では、
帯電した側鎖を有する1つ又はそれ以上のアミノ酸を、
非帯電側鎖を有するアミノ酸と置換する。このような変
化は、周囲の水性環境とポリペプチドとの相互作用に影
響を与えると考えられる。
アラニン−スキャニング突然変異法では、置換に使用
するアミノ酸は、野生型t−PAの周囲のアミノ酸の電荷
を中和するものである。疎水性、脂肪族、芳香族、又は
非−極性アミノ酸を使用できる。これらの中では、バリ
ン、ロイシン及びイソロイシンなどの比較的大きな側鎖
を有するものよりも、アラニン、セリン及びスレオニン
などの小さな側鎖を有するアミノ酸が好ましい。置換す
るために使用されるアミノ酸としては、グリシン、アラ
ニン、セリン、スレオニン、グルタミン、アスパラギン
が好ましい。最も好ましい置換のためのアミノ酸はアラ
ニンであり、あるいは特定の部位ではアスパラギン、グ
リシン又はグルタミンである。アラニンはβ−炭素以外
の側鎖が排除されており、従って野生型t−PA分子の三
次元コンホーメーションを変化させ難いので、アラニン
がこの目的には最も好ましいアミノ酸である。さらに、
アラニンはタンパク質の埋設された領域及び暴露された
領域の両方に高い頻度で見いだされる[Chothia,J.Mol.
Biol.,150:1(1976)]。
クリアランスが減少され、及び/又は半減期が増大さ
れた典型的な変異体は、野生型t−PAのアミノ酸配列の
クリングル−1ドメイン又はクリングル−2ドメインの
いずれかに少なくとも1つの改変(アミノ酸置換、欠失
及び/又は挿入)を有している。変異体はさらに、野生
型配列の他のドメインに、t−PA分子の性質を強化する
さらなる改変を含有することができる。例えば、これら
の付加的な改変はt−PA変異体のフィブリイン結合特異
性、比活性、及び/又はチモーゲニシティー(zymogeni
city)を増大させるうえで役立ち得るものである。
1つの好ましい態様では、94位又は95位のアミノ酸、
又は236位、238位及び240位のアミノ酸、又はこれらの
部位の混合アミノ酸を、好ましくはアラニン又はグリシ
ンで置換する。これらの分子はそれぞれ、他のアミノ酸
の置換、欠失又は挿入をも含有することができ、好まし
くは103位のステレオニンをアスパラギンと置換し、及
び/又は117位のアスパラギンをアラニン又はセリン
と、又は好ましくはグルタミンと置換することもでき
る。本発明の代表的なt−PA変異体は、E94A;D95A;D95
G;E94A,D95A;D236A,D238A,K240A;E94A,D95A,N117Q;E94
A,D95A,D236A,D238A,K240A;T103N,D236A,D238A,K240A;
及びN117Q,D236A,D238A,K240Aなどである。
さらに、本発明の分子は特定の部位を置換又は欠失さ
せて、増大したフィブリン特異性又はチモーゲニシティ
ーなどのさらなる所望の性質を付与することができる。
これらの位置は例えば、アミノ酸92から179の欠失、ア
ミノ酸174−261領域の欠失、184位などのグリコシル化
部位の修飾、及び/又はアミノ酸244−255領域の修飾な
どである。修飾のために重要な他の位置はプロテアーゼ
ドメイン全体にわたって配置しており、それには例え
ば、275位(1987年8月19日公開のEPO 233,013、及び19
87年8月13日公開のWO 87/04722を参照)、277位(1988
年12月28日公開のEPO 297,066、及び1986年11月12日公
開のEPO 201,153を参照),及び1990年3月22日公開のW
O 90/02798に開示されている296−299などがある。
B.変異体の構築 本発明のt−PAアミノ酸配列変異体は好ましくは、野
生型t−PAをコードするDNA配列を突然変異させること
によって構築される。一般には、そのDNAの特定の領域
又は部位を突然変異誘発のために標的化するが、これを
行うための一般的方法は部位特異的突然変異誘発と呼ば
れる。この突然変異は、制限エンドヌクレアーゼ(特定
の部位でDNAを開列する)、ヌクレアーゼ(DNAを分解す
る)、及び/又はポリメラーゼ(DNAを合成する)など
のDNAを改変する酵素を使用して行う。
1.単純な欠失及び挿入 DNAを制限エンドヌクレアーゼで消化した後、連結さ
せれば、サムブルック(Sambrook)らの15.3項[Molecu
lar Cloning,A Laboratory Manual,2版,Cold Spring Ha
rbar Laboratory Press,ニューヨーク(1989)]に記載
されているように、欠失を生じさせることができる。こ
の方法を使用するためには、外来DNAをプラスミドベク
ターに挿入するのが好ましい。外来(挿入)DNA及びベ
クターDNAの両者の制限地図は利用可能でなければなら
ず、又は外来DNA及びベクターDNAの配列が知られていな
ければならない。外来DNAは、ベクターには存在しない
唯一の制限部位を有していなければならない。次いで、
適当な制限エンドヌクレアーゼをその酵素の製造元が教
示している条件下で使用し、これらの唯一の制限部位間
で消化し、外来DNAに欠失を施す。使用する制限酵素が
平滑末端又は適合する末端を生じさせるなら、バクテリ
オファージT4 DNAリガーゼなどのリガーゼを使用し、AT
P及びサムブルックら(前掲)の1.68項に記載されてい
るリガーゼ緩衝液の存在下に16℃で1−4時間得られた
混合物をインキュベートすることにより、それらの末端
は直接に連結させることができる。これらの末端が適合
しない場合は、消化DNAの突出した1本鎖末端を充填す
るために4つのデオキシリボヌクレオチド三リン酸が必
要であるDNAポリメラーゼIのクレノー断片又はバクテ
リオファージT4 DNAポリメラーゼを使用し、まずそれら
を平滑末端とする。あるいは、これらの末端は、DNAの
突出した1本鎖を切断(カッティング・バック)するこ
とにより共に機能するヌクレアーゼS1又はヤエナリ・ヌ
クレアーゼ(mung−bean nuclease)などのヌクレアー
ゼを使用して平滑末端にすることもできる。次いで、得
られたDNAをリガーゼを用いて再連結する。これにより
得られた分子がt−PA欠失変異体である。
同様の操作計画を使用すれば、サブルックら(前掲)
の15.3項に記載されているように、挿入変異体を構築す
ることができる。唯一の制限部位(群)において外来DN
Aを消化した後、オリゴヌクレオチドを、外来DNAが切断
された部位に連結する。このオリゴヌクレオチドは、挿
入する所望のアミノ酸をコードするように設計し、また
直接に連結できるように、消化した外来DNAの末端と適
合している5′及び3′末端をさらに有している。
2.オリゴヌクレオチド−媒介性突然変異誘発 オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発は本発明の置
換変異体を製造するための好ましい方法である。これ
は、本発明の欠失及び挿入変異体を簡便に製造するため
にも使用できる。この手法は、アデルマン(Adelman)
らによって開示されているように[DNA ,183(198
3)]、当業界に周知である。
一般に、少なくとも25長ヌクレオチドのオリゴヌクレ
オチドを使用し、t−PA分子の2つ又はそれ以上のヌク
レオチドを挿入、欠失又は置換する。最適なオリゴヌク
レオチドは、突然変異をコードするヌクレオチドのいず
れかの側のヌクレオチドと完璧に適合する12から15のヌ
クレオチドを有している。これにより、オリゴヌクレオ
チドが1本鎖DNA鋳型分子と適切にハイブリダイズする
ようになる。このオリゴヌクレオチドは、クレア(Cre
a)ら[Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.75,5765(1978)]
に記載されている手法などの当業界周知の手法によって
容易に合成することができる。DNA鋳型分子は、その野
生型cDNA t−PA挿入体を有するベクターの1本鎖形態で
ある。この1本鎖の鋳型は、バクテリオファージM13ベ
クター(市販されているM13mp18及びM13mp19が適当であ
る)、又はベイラ(Veira)ら[Meth.Enzymol.153,3(1
987)]に記載されている1本鎖ファージ複製起点を含
有するそれらのベクターのいずれかから誘導されるベク
ターによって作成することができるのみである。従っ
て、突然変異しようとするcDNA t−PAは、1本鎖の鋳型
を創製するためにこれらのベクターの1つに挿入しなけ
ればならない。1本鎖の鋳型の生産はサムブルックら
(前掲)の4.21−4.41項に記載されている。
野生型t−Paを突然変異するためには、適当なハイブ
リダイゼーションの条件下で1本鎖DNAの鋳型分子とア
ニーリングする。次いで、DNAポリマー化酵素、通常は
大腸菌(E.coli)DNAポリメラーゼIのクレノー断片を
加える。この酵素は、突然変異を有するDNA鎖を合成す
るためにプライマーとしてオリゴヌクレオチドを使用す
る。従って、DNAの1つの鎖がベクターに挿入される野
生型t−PAをコードしており、第2のDNAの鎖が同じベ
クターに挿入された突然変異形態のt−PAをコードして
いるヘテロ二重ラセン分子が形成される。次いで、この
ヘテロ二重ラセン分子を適当な宿主細胞、通常はE.coli
JM101などの原核生物に形質転換する。得られた細胞を
増殖させた後、それをアガロース平板にプレートし、32
−Pで放射線標識したオリゴヌクレオチドプライマーを
使用してスクリーニングし、突然変異t−PAを含有する
コロニーを同定する。そのようなコロニーを選択し、t
−PA分子に突然変異が存在しているかを確認するため、
DNAの配列を決定する。
1つ以上のアミノ酸が置換されている突然変異体は、
幾つかの方法の中の1つの方法によって生成させること
ができる。ポリペプチド鎖中に数個のアミノ酸を近接し
て一緒に配置させる場合は、それら所望のアミノ酸置換
のすべてをコードする1つのオリゴヌクレオチドを使用
して同時に突然変異することができる。しかし、アミノ
酸が互いに若干距離をおいて位置している場合(例え
ば、10アミノ酸以上で分割されている場合)は、所望の
変化をすべてコードしている単一のオリゴヌクレオチド
を生成させるのは比較的困難である。その場合は代わり
に、2つの代替方法のいずれかを使用すればよい。第1
方法では、置換させる各アミノ酸のオリゴヌクレオチド
を別々に創製する。次いで、それらのオリゴヌクレオチ
ドを1本鎖鋳型DNAに同時にアニーリングすれば、この
鋳型から合成された第2のDNA鎖は所望のアミノ酸置換
をすべてコードすることになる。別の方法は、2つ又は
それ以上の突然変異誘発工程によって所望の突然変異体
を生産することに関する。第1工程は単一突然変異体に
ついて記載しているとおりの方法である:野生型t−PA
DNAを鋳型として使用し、第1の所望のアミノ酸置換
(群)をコードするオリゴヌクレオチドをこの鋳型とア
ニーリングし、次いでヘテロ二重ラセンDNA分子を生成
させる。第2の突然変異誘発工程は、突然変異誘発の第
1工程で調製した突然変異DNAを鋳型として使用する。
従って、この鋳型は既に1つ又はそれ以上の突然変異を
含有している。次いで、付加的な所望のアミノ酸置換
(群)をコードしているオリゴヌクレオチドをこの鋳型
とアニーリングすると、得られるDNAの鎖は、第1及び
第2工程の突然変異誘発の両者に由来する突然変異を新
たにコードしている。この得られたDNAは、第3の突然
変異誘発工程、などにおいて鋳型として使用することが
できる。
t−PA変異体をコードするDNAをポリペプチドとして
発現させるため、このDNAをベクターから切り取り、真
核節物宿主細胞発現にとって適切な発現ベクターに挿入
する。長期の安定なt−PA生産のためには、チャイニー
ズハムスター卵巣(CHO)細胞が好ましい。しかし、本
発明はCHO細胞におけるt−PA変異体の発現に限定され
るものでなく、特に、実験目的にt−PA変異体を一時的
にしか発現させる必要がない場合などは、多くの他の細
胞型が使用できることが知られている。
C.宿主細胞培養及びベクター 1.原核生物細胞 本発明の最初のクローニング工程にとっては原核生物
が好ましい。原核生物は、DNAの迅速な大量生産、部位
特異的突然変異に使用される1本鎖DNAの鋳型の生産、
多くの突然変異体の同時スクリーニング、及び生成され
る突然変異体のDNAの配列決定にとって特に有用であ
る。適当な原核生物宿主細胞には、E.coli(大腸菌)K1
2株294(ATCC No.31,446)、E.coli株W3110(ATCC No.2
7,325)、E.coli X1776(ATCC No.31,537)、及びE.col
i Bなどがある。しかし、HB101、JM101、NM522、NM53
8、NM539などのE.coliの他の多くの株、並びに他の多く
の原核生物の種及び属も同様に使用することができる。
原核生物はDNA配列の発現のためにも宿主として使用
できる。上記に挙げたE.coli株の他、バシラス・ズブチ
リス(Bacillus subtilis)などのバシラス属、サルモ
ネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)又は
セラチア・マルセサンス(Serratia marcesanes)など
の他の腸内細菌、及び種々のシュードモナス(Pseudomo
nas)種などもすべて宿主として使用できる。
これらの宿主は、その宿主細胞と適合する種由来のレ
プリコン及び制御配列を含有するプラスミドベクターと
共に使用する。そのベクターは通常、複製部位、形質転
換された細胞内において表現型の選択性を付与できるマ
ーカー遺伝子、1つ又はそれ以上のプロモーター、及び
外来遺伝子を挿入するための幾つかの制限部位を含有す
るポリリンカー領域を含有する。E.coliを形質転換する
ために通常使用されるプラスミドには例えば、pBR322、
pUC18、pUC19、pUC118、pUC119、及びブルースクリプト
(Bluescript)M13などがあり、これらはすべてサムブ
ルックら(前掲)の1.12−1.20項に記載されている。し
かし、多くの他の適切なベクターも同様に利用可能であ
る。これらのベクターはアンピシリン及び/又はテトラ
サイクリン耐性をコードする遺伝子を含有しており、そ
れによりこれらのベクターによって形質転換された細胞
はそれらの抗生物質の存在下に増殖させることが可能と
なる。
原核生物ベクターに最も普通に使用されるプロモータ
ーとしては、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)及び
ラクトースプロモーター系[チェンジ(Chang)らのNat
ure 375,615(1978);イタクラ(Itakura)らのScienc
e 198,1056(1977);ゴーデル(Goeddel)らのNature
281,544(1979)]、並びにトリプトファン(trp)プロ
モーター系[ゴーデルらのNucleic Acids Res.,4057
(1980);EPO出願公開第36,776号]、並びにアルカリホ
スファターゼ系が挙げられる。これらは最も普通に使用
されるものであるが、他の微生物プロモーターも利用さ
れており、それらのヌクレオチド配列に関する詳細が開
示され、当業者ならば、それらをプラスミドベクターに
機構的に連結することができる[シーベンリスト(Sieb
enlist)らのCell 20,269(1980)を参照]。
2.真核微生物 本発明を実施するには酵母などの真核微生物が使用で
きる。パン酵母、サッカロマイセス・セレビシアエ(Sa
ccharomyces cerevisiae)が普通に使用される真核微生
物であるが、他の幾つかの株も利用することができる。
サッカロマイセスにおける発現ベクターとしては、プラ
スミドYRp7が普通に使用される[スチンクコム(Stinch
comb)らのNature 282:39(1979);キングスマン(Kin
gsman)らのGene :141(1979);シェンパー(Tschem
per)らのGene 10:157(1980)]。このプラスミドは、
トリプトファン環境下での増殖能を欠いている酵母の突
然変異株、例えばATCC No.44,076株又はPEP4−1株
[(ジョーンズ(Jones)のGenetics,85:12(197
7))]に選択マーカーを付与できるtrp1遺伝子を含有
している。酵母宿主細胞ゲノムの特徴としてtrp1欠損が
存在するので、トリプトファンの不存在下で増殖させれ
ば、形質転換を検出するために有効な環境が提供され
る。
酵母ベクターにおける適当なプロモーター配列には、
3−ホスホグリセレートキナーゼのプロモーター[ヒッ
ツェマン(Hitzeman)らのJ.Biol.Chem.255:2073(198
0)]、又はエノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リ
ン酸脱水素酵素、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカボキ
シラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−
リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセレートムター
ゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオセホスフェートイソメ
ラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ及びグルコキナ
ーゼなどの他の解糖系酵素[ヘス(Hess)らのJ.Adv.En
zyme Reg.:149(1968);ホーランド(Holland)らの
Biochemistry 17,4900(1978)]のプロモーターがあ
る。適当な発現プラスミドを構築するに当たっては、こ
れらの遺伝子に付随する終止配列も、発現させようとす
る配列の3′側で発現ベクターに連結させ、mRNAのポリ
アデニル欠及び終止機能を付与する。発育条件によって
転写が制御されるという付加的な利点を有している他の
プロモーターには、アルコール脱水素酵素2、イソチト
クロームC、酸ホスファターゼ、窒素代謝に関与する分
解酵素、及び上記のグリセルアルデヒド−3−リン酸脱
水素酵素及びマルトースとガラクトースの利用に関与す
る酵素、にかかるプロモーター領域がある。酵母に適合
するプロモーター、複製起点及び終止配列を含有するプ
ラスミドベクターが好適である。
3.真核他細胞生物 本発明を実施するためには、他細胞生物由来の細胞培
養も宿主として使用することができる。脊椎動物又は無
脊椎動物培養のいずれの由来であっても許容できるが、
脊椎動物細胞培養、特に哺乳動物培養が好ましい。適当
なセルラインとしては例えば、SV40によって形質転換さ
れたサル腎CV1ライン[COS−7、ATCC CRL 1651];ヒ
ト腎胚ライン293S[Grahamら,J.Gen.Virol.,36:59(197
7)];幼若ハムスター腎細胞[BHK,ATCC CCL 10];チ
ャイニーズハムスター卵巣細胞[Urlab and Chasin,Pro
c.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.77:4216(1980)];マウス・
スルトリ細胞(mouse sertoli)[TM4,Mather,Biol.Rep
rod.,23:243(1980)];サル腎細胞[CVI−76,ATCC CC
L 70];アフリカミドリザル腎細胞[VERO−76,ATCC CR
L 1587];ヒト子宮癌細胞[HELA,ATCC CCL 2];イヌ
腎細胞[MDCK,ATCC CCL 34];バッファロー・ラット肝
細胞[BRL 3A,ATCC CRL 1442];ヒト肺細胞[W138,ATC
C CCL 75];ヒト肝細胞[Hep G2,HB 8065];マウス哺
乳動物腫瘍細胞[MMT 060562,ATCC CCL 51];ラット肝
癌細胞[HTC,MI.54,ボウマン(Baumann)らのJ.Cell Bi
ol.,85:1(1980)];及びTRI細胞[MatherらのAnnals
N.Y.Acad.Sci.,388:44(1982)]が挙げられる。これら
の細胞のための発現ベクターは普通、(要すれば)複製
起点、発現すべき遺伝子の前に位置するプロモーター、
リボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニ
ル化部位、及び転写ターミネーター部位のDNA配列を含
有している。
哺乳動物発現ベクターに使用されるプロモーターは、
ウイルス起源のものが多い。これらウイルスプロモータ
ーはポリオーマウイルス、アデノウイルス2、及び最も
頻繁にはアカゲザルウイルス40(SV40)から誘導され
る。SV40ウイルスは初期及び後期プロモーターと呼ばれ
る2つのプロモーターを含有する。これらのプロモータ
ーは共にウイルスの複製起点をも含有する1つのDNA断
片として該ウイルスから容易に入手されるので、特に有
用である[フィールズ(Fiers)らのNature,273:113(1
978)]。また、このウイルスの複製起点内に位置するH
ind III部位からBgl I部位に伸長する約250bp配列を含
有する限りは、それよりも小さい、又は大きなSV40 DNA
断片を使用することもできる。
さらに、形質転換のために選択する宿主セルラインと
適合する限りは、外来遺伝子に天然で伴われているプロ
モーター(同種プロモーター)を使用することができ
る。
複製起点は、SV40又は他のウイルス(例えば、ポリオ
ーマ、アデノ、VSV、BPV)などの外因性供給源から入手
することができ、それをクローニングベクターに挿入す
ればよい。あるいは、複製起点は宿主細胞の染色体にお
ける複製メカニズムによって付与することができる。外
来遺伝子を含有するベクターが宿主細胞の染色体に組み
込まれるなら、後者で十分である場合が多い。
ヒトt−PAは形質転換された細胞培養によって満足の
いく量で生産される。しかし、第2のコード化配列を使
用すれば、さらに生産レベルを向上させることができ
る。この第2のコード化配列は通常、ジヒドロ葉酸還元
酵素(DHFR)を含有している。野生型のDHFRは正常では
化学物質メトトレキサート(MTX)によって阻害され
る。細胞内のDHFR発現レベルは、培養する宿主細胞にMT
Xのある量を加えることで変動する。DHFRを第2の配列
として特に有用とするさらなる性質は、それが形質転換
細胞を同定するための選択マーカーとして使用できるこ
とである。
DHFRを第2の配列として使用するには、野生型DHFR及
びMTX−耐性DHFRの2つの型が利用できる。個々の宿主
細胞に使用するDHFRの型は、宿主細胞がDHFR欠損である
か否か(例えば、非常に低いレベルでDHFRを内生的に産
生するか、又は機能的DHFRを全く産生しないか)によっ
て決定される。ウルローブ及びチャシン(Urlaub及びCh
asin)と[Proc.Natl.Acad,Sci.,U.S.A.77:4216(198
0)]に記載されているCHOセルラインなどのDHFR欠損セ
ルラインを野生型DHFRコード化配列で形質転換する。形
質転換された後では、これらのDHFR欠損セルラインは機
能的なDHFRを発現し、ヒポキサンチン、グリシン及びチ
ミジン栄養素を欠く培養培地中で増殖することができ
る。形質転換されていない細胞はこの培地中では生存し
ない。
MTX耐性型のDHFRは、MTX感受性の機構的DHFRの正常量
を内生的に産生する宿主細胞中にある形質転換宿主細胞
を選択する手段として使用できる。CHO−K1(ATCC No.C
CL 61)はこの特性を有しており、従ってこの目的にと
って有用なセルラインである。細胞培養培地にMTXを添
加すれば、MTX耐性DHFRをコードするDNFで形質転換され
た細胞のみを発育させることができる。形質転換されて
いない細胞はこの培地中で生存することはできない。
4.分泌系 細胞から普通分泌される多くの真核生物タンパク質
は、そのアミノ酸配列の一部として内生のシグナル配列
を含有している。この配列は小細胞及びゴルジ装置を介
して細胞からタンパク質を輸出させる。このシグナル配
列は通常タンパク質のアミノ酸末端に位置しており、約
13から約36のアミノ酸長の範囲にある。実際の配列はタ
ンパク質毎に異なっているが、既知のすべての真核生物
シグナル配列は、そのシグナル配列の中心付近に高い疎
水性強度の10−15アミノ酸(通常はロイシン、イソロイ
シン、アラニン、バリン及びフェニルアラニンに豊富で
ある)及び少なくとも1つの正に帯電した残基を含有し
ている。このシグナル配列は、タンパク質が小胞体に移
動する際に小胞体上に存在するシグナルペプチダーゼに
よって開裂されるので、分泌形態のタンパク質からは除
去されているのが正常である。そのシグナル配列が依然
として結合しているタンパク質は、「プレタンパク質」
又はタンパク質の非成熟型と呼ばれることが多い。
しかし、分泌されるタンパク質のすべてが、開裂され
るアミノ末端シグナル配列を含有しているわけでない。
オバルブミンなどのある種のタンパク質は、タンパク質
の内部領域に位置するシグナル配列を含有している。こ
の配列は移動時に正常では開裂されない。
細胞質中に通常見いだされるタンパク質は、そのタン
パク質にシグナル配列を連結させることにより分泌させ
ることができる。これは、シグナル配列をコードするDN
Aを、タンパク質をコードするDNAの5′末端に連結し、
次いでこの融合タンパク質を適当な宿主細胞において発
現させることにより、容易に実施することができる。シ
グナル配列をコードするDNAは、シグナル配列を有する
タンパク質をコードする遺伝子から制限断片として入手
できる。従って、本発明を実施するために利用する宿主
細胞の型に応じて、原核生物、酵母、及び真核生物シグ
ナル配列を本発明では使用できる。遺伝子のシグナル配
列部分をコードするDNAは適当な制限エンドヌクレアー
ゼを使用して切除され、次いでそれを分泌させようとす
るタンパク質、即ちt−PAをコードするDNAに連結す
る。
機能的なシグナル配列の選択には、シグナル配列が宿
主細胞シグナルペプチダーゼによって認識される結果、
シグナル配列の開裂及びタンパク質の分泌が起こること
が要件となる。幾つかの真核生物遺伝子のシグナル配列
部分をコードするDNA及びアミノ酸配列は既知であり
[例えば、ヒト成長因子、プロインスリン、及びプロア
ルブミン(StryerのBiochemistry,W.H.freeman and Com
pany,ニューヨーク(1988),769頁を参照)]、これら
は適当な真核生物宿主細胞においてシグナル配列として
使用することができる。例えば、酸ホスファターゼ[Ar
imaらのNuc.Acids Res.,11:1657(1983)]、α−因
子、アルカリホスファターゼ及びインベルターゼなどの
酵母シグナル配列は、酵母宿主細胞から分泌させるため
に使用できる。例えば、LamB又はOmpF[WongらのGene 6
8:193 1988]、MalE、PhoA、又はβ−ラクタマーゼをコ
ードする遺伝子、並びに他の遺伝子由来の原核生物シグ
ナル配列は、原核生物細胞から培養培地にタンパク質を
向かわせるのに使用できる。
目的のタンパク質が分泌できるようにするためにそれ
にシグナル配列を付与する別の手法は、シグナル配列を
コードするDNAを化学的に合成することである。この方
法では、選択したシグナル配列をコードするオリゴヌク
レオチドの両鎖を化学的に合成し、次いで互いにアニー
リングさせて二重ラセンを形成させる。次に、得られた
2本鎖オリゴヌクレオチドを、タンパク質をコードする
DNAの5′末端に連結させる。
次いで、タンパク質をそれに連結されたシグナル配列
と共にコードしているDNAを含有する構築物を適当な発
現ベクターに連結すればよい。この発現ベクターを適当
な宿主細胞に形質転換し、目的のタンパク質を発現さ
せ、分泌させる。
D.形質転換方法 哺乳動物宿主細胞及び頑強な細胞膜障壁を有していな
い他の宿主細胞の培養物は、グラハム(Graham)及びフ
ォン・デル(Van der Eb)[Virology 52,546(197
8)]に最初に開示され、サムブルックら(前掲)の16.
32−16.37項にて改変を施されたリン酸カルシウム法に
よって普通は形質転換される。しかし、ポリブデン(Po
lybrene)[Kawai及びNishizawa,Mol.Cell.Biol.,:11
72(1984)]、プロトプラスト融合[Schaffner,Proc.N
atl.Acad.Sci.,U.S.A.77:2163(1980)]、エレクトロ
ポレーション[Neumannら,EMBO J.,:841(1982)]、
及び核への直接的なマイクロインジェクション[Capecc
hi,Cell,22:479(1980)]などの、DNAを細胞に導入す
るための他の方法も使用できる。
酵母宿主細胞は、ハイネン(Hinnen)のProc.Natl.Ac
ad.Sci.,U.S.A.,75:1929−1933(1978)によって教示さ
れているように、ポリエチレングリコール法によって形
質転換するのが一般的である。
原核生物細胞又は頑強な細胞壁を有する細胞を形質転
換するには、サムブルックら(前掲)の1.82項に記載さ
れている塩化カルシウム法によって行うのが好ましい。
また、これらの細胞を形質転換するにはエレクトロポレ
ーションも使用できる。
E.クローニング法 複製配列、調節配列、表現型選択遺伝子をコードする
DNA及び目的の外来DNAを含有する適当なベクターの構築
には、標準的な組替えDNA手法を使用する。単離したプ
ラスミド及びDNA断片を開裂し、仕立て、そして特定の
順序で互いに連結し、所望のベクターを生成させる。
DNAの開裂は、適当な緩衝液中にて適当な制限酵素又
は酵素群を使用して行う。一般には、緩衝溶液約20μ
中、適当な制限酵素約1−2単位と共に、プラスミド又
はDNA断片約0.2−1μgを使用する(適当な緩衝液、DN
A濃度、及びインキュベート時間及び温度は、その制限
酵素の製造元によって特定されている)。一般には、37
℃での約1又は2時間のインキュベート時間が適当であ
るが、酵素の中にはそれよりも高い温度が必要であるも
のがある。インキュベートした後に、フェノール及びク
ロロホルムの混液で消化溶液を抽出することによって酵
素及び他の夾雑物を除去し、次いでエタノール沈殿によ
ってその水性画分からDNAを回収する。
DNA断片を共に連結して機能的ベクターを形成させる
ためには、それらDNA断片の末端は互いに適合していな
ければならない。ある場合には、エンドヌクレアーゼ消
化後に末端は直接適合になる。しかし、エンドヌクレア
ーゼ消化によって普通に生成される粘着末端を連結適合
性にするために、それをまず平滑末端に変換する必要の
ある場合がある。平滑末端にするためには、4つのデオ
キシヌクレオチド三リン酸の存在下、DNAポリメラーゼ
Iのクレノー断片(クレノー)10単位と共に少なくとも
15分間、15℃において適当な緩衝液中で得られたDNAを
処理する。次いで、それをフェノール−クロロホルム抽
出し、エタノール沈殿して精製する。
開裂させたDNA断片は、DNAゲル電気泳動によってサイ
ズ分離し、選択することができる。DNAはアガロース又
はポリアクリルアミドマトリックスのいずれかによって
電気泳動できる。マトリックスの選択は、分離しようと
するDNA断片のサイズ(大きさ)に左右される。電気泳
動した後に、電気溶離(electroelution)によってDNA
をマトリックスから抽出するか、あるいは低融解アガロ
ースをマトリックスとして使用した場合は、サムブルッ
クら(前掲)の6.30−6.33項に記載されているようにし
てアガロースを融解し、それからDNAを抽出する。
互いに連結させようとするDNA断片(適当な制限酵素
で消化しておき、それぞれの断片の連結末端を適合させ
ておく)は、等モル量で溶液中に存在させる。この溶液
はATP、リガーゼ緩衝液及びリガーゼ、例えばDNA0.5μ
g当たりT4DNAリガーゼ約10単位をさらに含有してい
る。DNA断片をベクターに連結する場合は、適当な制限
エンドヌクレアーゼ(群)によってベクターを切断して
まず線状化し、次いで細菌アルカリホスファターゼ又は
子牛腸内アルカリホスファターゼのいずれかでリン酸化
する。この操作によって、開裂したベクターが連結工程
の際に自己連結するのを防止できる。
連結した後に、新たに外来遺伝子が挿入されたベクタ
ーを適当な宿主細胞、最も普通にはE.coli K12株294(A
TCC番号31,446)又は別の適当なe.coli株などの原核生
物に形質転換する。形質転換された細胞は、抗生物質、
普通はテトラサイクリン(tet)又はアンピシリン(am
p)と増殖させることにより、ベクター内のtet及び/又
はamp耐性遺伝子のおかげでそれらに対して耐性になっ
ているものが選択される。連結混合物によって真核生物
宿主細胞を形質転換した場合は、形質転換細胞は上述の
DHFR/MTX系によって選択できる。形質転換細胞は培養物
中で増殖させ、次いでプラスミドDNA(プラスミドは、
目的の外来遺伝子に連結されたベクターを意味する)を
単離する。このプアスミドDNAは次に、制限マッピング
及び/又はDNA配列決定によって分析する。DNAの配列決
定は、メッシング(Messing)らのNucleic Acids Res.,
:309(1981)の方法又はマキサム(Maxam)らのMetho
ds of Enzymology,65499(1980)の方法のいずれかによ
って分析される。
哺乳動物宿主細胞をDNAで安定に形質転換した後、そ
の宿主細胞培養をMTX約200−500nM濃度の存在下で増殖
させ、それによりDHFRタンパク質をコードしている配列
の増幅を行う。MTXの有効な濃度範囲は、DHFR遺伝子及
びタンパク質の本質、及び宿主の特性に非常に左右され
る。一般に規定される上限及び下限は明瞭には確認する
ことができない。他の葉酸同族体又はDHFRを阻害する他
の化合物も適当な濃度で使用することができる。しか
し、MTXが簡便であり、容易に利用でき、かつ有効であ
る。
上述のように、t−PA変異体は、部位特異的突然変異
の方法を使用して生成される突然変異誘発の手段によっ
て製造するのが好ましい。この方法では、所望の突然変
異の配列をコードする特定のオリゴヌクレオチド及び、
そのオリゴヌクレオチドがDNAの鋳型と安定にハイブリ
ダイズできるほどに十分な数の隣接ヌクレオチド、を合
成し、使用することが必要である。
F.医薬組成物 本発明のt−PA産物を医薬的に許容され得る担体との
混合物中で混合することにより、本発明の化合物は医薬
的に有用な組成物を調製するための既知の方法によって
製剤化することができる。適当な担体及び製剤化法は、
オスロー(Oslo)ら編のRemington's Pharmaceutical S
ciences 16版、1980[マック・パブリッシングCo.]に
記載されている。このような組成物は通常、患者に効果
的に投与するのに適した医薬的に許容され得る組成物が
調製されるように適量のビヒクルと共に、本発明のt−
PA変異体を有効量で、例えば約0.5から約5mg/mlで含有
している。本発明のt−PA変異体は、心臓血管の疾患又
は症状の患者に非経口的に、又はその有効な型な血流に
供給されるような他の方法によって投与することができ
る。
本発明を実施する上で使用されるt−PA変異体を臨床
投与するのに特に適している組成物には、例えば滅菌水
溶液剤、又は凍結乾燥タンパク質などの滅菌水和性の粉
末剤などがある。このような製剤中にはさらに、医薬的
に許容され得る塩を適量使用し、製剤の等張性を変化さ
せるのが通常である。アルギニン塩基などの緩衝剤も、
適当なpH、一般にはpH5.5−7.5を維持するに適当な濃度
でリン酸と共に含有させるのが通常である。さらに、貯
蔵寿命を維持、長引かせるために、グリセリンなどの化
合物も含有させることができる。
本発明の医薬組成物の投与量及び望ましい薬物濃度
は、目的とする個々の用途に応じて変化し得る。例え
ば、深部静脈血栓又は末梢血管疾患の処置に当たって
は、約0.05から約0.2mg/kgオーダーの「ボーラス」投与
が通常好ましく、その後は、血中レベルがほぼ一定に、
好ましくは約3μg/mlのオーダーが維持されるよう約0.
1から約0.2mg/kgの投与を行うのが好ましい。
しかし、一般に灌流(infusion)が行えない場面であ
る緊急医療に関連して使用するためには、及び処置する
疾患が一般に危険性を孕む場合(塞栓症、心筋梗塞)に
は、多めの初期投与量、例えば約0.3mg/kgオーダーの静
脈内ボーラス投与が通常望ましい。
例えば、本発明のt−PA変異体は、心臓血管の疾患又
は症状に罹患した患者に非経口的に投与するのが適切で
ある。投与量及び投与速度は、他の心臓血管薬、血栓溶
解薬が臨床試験で通常使用されているものと同等又は高
い場合があり、例えば心筋梗塞、肺塞栓症などに罹患し
たヒト患者では、約1−2mg/kg体重で1.5−12時間かけ
て静脈内又は動脈内投与を行えばよい。
適当な投与剤形の1例として、50mg t−PA、アルギニ
ン、リン酸、及びポリソルベート80を含有するバイアル
を滅菌水50mlにより注射用に再構成し、それを適量の0.
9%塩化ナトリウム注射液と混合することが挙げられ
る。
本発明のt−PA変異体はフィブリン沈着又は接着の形
成もしくは再形成を防止するためにも有用である。この
用途の1態様は、1989年1月4日公開のEPO 297,860に
記載されている。一般には、このよな処置のタイプは、
可能性あるフィブリン又は接着形成の部位に治療学的有
効量のt−PA変異体がおよそ3日から2週間にわたって
持続的に放出されるような難溶性の形態で含有される組
成物をその部位に局所投与することを包含する。t−PA
変異体は通常、手術、感染、外傷又は炎症後に形成され
る接着又はフィブリン沈着を予防するに充分な投与量で
投与する。その量は普通、0.02mg/gのゲルから25mg/gの
ゲルであり、0.20mg/gから約2.5mg/gのゲルが好まし
く、最も好ましくは0.25mg/gから約1.0mg/gのゲルであ
る。
接着形成及び/又はフィブリン沈着を防止するために
使用する各t−PA変異体は、可能性ある接着形成の部位
にt−PA酵素を配置させるための半固形の粘液質の製薬
的に不活性な担体中で製剤化するのが普通である。この
ような担体には、長鎖の炭化水素又は植物油及び、飽和
及び不飽和脂肪酸グリセリドの混合物又は修飾された飽
和及び不飽和脂肪族グリセリドの混合物から構成される
ワックスなどがある。例えば、ワセリン又は半合成グリ
セリドなどの半固形ビヒクル、グリセリンなどのポリヒ
ドロキシ溶媒、長鎖炭化水素、生体侵食性ポリマー(bi
oerodable polymers)、又はリポソームなどが挙げられ
る。
本発明のt−PA変異体の減少されたクリアランス速度
は、迅速な静脈内注射、例えば特にボーラス投与に適す
るように改変できる。これは、t−Paの投与方法を単純
にし、それにより例えば診療補助者が看護する救急車な
どの、医療設備が限定されている状況下においてt−PA
が使用できるようになる。さらに、これらt−PA変異体
のクリアランス速度が延長されることにより、急性血栓
溶解後の再閉塞を回避するために必須となる場合のある
低量初期投与量が投与できるようになり、及び/又は低
量延長両方が可能となり、又は末梢血管閉塞の場合に必
須となる場合のある血栓溶解の延長を行うことができ
る。
以下に記載する実施例を平易にするため、普通に使用
している特定の方法を以下に説明する。
「プラスミド」は、小文字のpの後ろにアルファベッ
トの名称を付して表している。本発明における出発プラ
スミドは市販されているか、制限無く公に入手可能とな
っており、又はそのような入手可能なプラスミドから文
献開示の方法によって構築することができる。さらに、
他の同等のプラスミドも当業界既知であり、当業者には
明らかである。
DNAの「消化」、「切断」又は「開裂」とは、DNA内の
ある特定の場所でのみ働く酵素によってそのDNAを触媒
的に開裂することを意味する。このような酵素は制限エ
ンドヌクレアーゼと呼ばれ、DNA配列に沿った各酵素が
開裂する部位は制限部位と呼ばれる。本明細書で使用し
ている制限酵素は市販されており、その供給元から提示
されている教示に従って使用した。制限酵素は、大文字
の後ろに各制限酵素が得られる微生物を表す2又は3つ
の小文字を付して命名される。これらの文字は、次に個
々の酵素を示す1又はそれ以上のローマ数字を後続す
る。一般に、プラスミド又はDNA断片約1μgを緩衝溶
液約20μ中、酵素約2単位と共に使用する。個々の制
限酵素にとって適当な緩衝液、基質濃度、インキュベー
ト温度、及びインキュベート時間は製造会社によって特
定されている。インキュベートした後、フェノール−ク
ロロホルム溶液による抽出によってDNAから酵素及び他
の夾雑物を除去し、エタノール沈殿によって、消化され
たDNAを水性画分から回収する。制限酵素による消化の
後には、細菌アルカリホスファターゼ又は子牛腸内アル
カリホスファターゼで処理する。これは、別のDNA断片
が制限部位に挿入するのを妨げかねない「環化」又は閉
じたループの形成からDNA断片の2つの制限開裂末端を
護るためのものである。しかし、特に明記しない限り
は、プラスミドの消化後には5′末端の脱リン酸化は行
わない。脱リン酸化のためのこれらの操作法及び試薬は
サムブルックら(前掲)の1.60−1.61項及び3.38−3.39
項に記載されている。
特定のDNA断片を制限消化物から「回収」または「単
離」するとは、ポリアクリルアミド又はアガロースゲル
を使用して電気泳動法により、得られたDNA断片を分離
し、目的とする断片を既知の分子量のマーカーDNA断片
の移動度と比較してその同定を行い、所望の断片を含有
するゲル切片を取り出し、そしてDNAからゲルを分離す
ることを意味する。この操作法は一般に既知である。例
えば、ローン(R.Lawn)らのNucleic Acids Res.:610
3−6114(1981)、及びゴーデル(D.Goeddel)らのNucl
eic Acids Res.:4057(1980)を参照のこと。
「サザーン分析」とは、既知の標識化オリゴヌクレオ
チド又はDNA断片とハイブリダイズすることにより、消
化物またはDNA含有組成物中のDNA配列の存在を確かめる
方法である。サザーン分析とは、アガロースゲル上にて
消化DNAを分離し、そのDNAを変性させ、そしてサザーン
(E.Southern)のJ.Mol.Biol.98:503−517(1975)に記
載され、サムブルックら(前掲)の9.31−9.57項に改変
された方法により、そのゲル由来のDNAをニトロセルロ
ース又はナイロン膜に移動させることを意味する。
「形質転換」とは、DNAが染色体外要素または染色体
成分として複製できるようにそのDNAを生物に導入るこ
とを意味する。形質転換するために使用する方法は、宿
主細胞が真核生物であるか、又は原核生物であるかによ
って変わる。原核生物を形質転換する方法はサムブルッ
クら(前掲)の1.82項に記載されている塩化カルシウム
法である。真核生物は、サムブルック(前掲)らの16.3
2−16.37項に記載されているリン酸カルシウム法によっ
て形質転換される。
「連結」とは、ATPをも含有している適当な緩衝液
中、リガーゼ酵素を使用して、2つの2本鎖DNA断片間
にホスホジエステル結合を生成させる工程を意味する。
「オリゴヌクレオチド」は、ホスホジエステル結合に
よって結合されているデオキシリボヌクレオチドの短い
長さの1本鎖又は2本鎖配列を意味する。このオリゴヌ
クレオチドは既知の方法によって化学的に合成され、ポ
リアクリルアミドゲル上にて精製される。
以下に、本発明を実施する上で現在知られている最も
最良の方法を説明するために実施例を挙げるが、これは
本発明の限定を意図するものではない。
実施例1 Cunningham及びWells(前掲)に記載されているアラ
ニン−スキャニング突然変異誘発(ALA−スキャン)と
して知られている方法を使用し、本発明のt−PA変異体
を構築した。この方法は、帯電したアミノ酸側鎖を含有
するt−PA分子の小さな領域を同定することを包含す
る。1つの理論にとらわれないが、電荷のクラスターを
含有するこれらの領域、又はその隣接隣接、又はその両
者のいずれかはt−PA分子とその基質及び活性を調整で
きる他の種々の化合物との相互作用に関与していると考
えられる。各領域における帯電アミノ酸の幾つか(即
ち、Arg、Asp、His、Leu及びGlu)をアラニンと置換
し、t−PA分子のクリアランス速度全体に対するその特
定領域の重要性を評価した。
I.発現ベクターpRK.t−PAの構築 t−PA突然変異体を作成するためのベクターとしてプ
ラスミドpRK7を使用した。pRK7は、Cla I及びHind III
間のポリリンカー領域内のエンドヌクレアーゼ制限部位
の順序が逆である以外はpRK5(1989年3月15日公開のEP
公開番号第307,247号)と同一である。このベクターに
挿入するためのt−PA cDNA[ペニカ(Pennica)らのNa
ture 301:214(1983)]を、制限エンドヌクレアーゼHi
nd III(ATG開始コドンの5′側496塩基対を切断する)
及び制限エンドヌクレアーゼBal I(TGA終止コドンの顆
粒276塩基対を切断する)で切断することにより調製し
た。このcDNAを、サムブルック(Sambrook)ら(前掲)
の1.68−1.69項に記載されている標準的な連結法を使用
し、Hind III及びSma Iで前もって切断しておいたpRK7
に連結した。得られた構築物をpRK.t−PAと命名した。
II.pRK7−t−PAの部位特異的突然変異 アメルシャン・コーポレーション(Amersham Corpora
tion)から入手されるキット(カタログ番号RPN1253)
を使用し、テイラー(Taylor)らのNucl.Acids.Res.,1
3:8765(1985)の方法によってt−PA cDNAの部位特異
的突然変異を行った。所望の突然変異を生成させるた
め、所望のアミノ酸置換をコードする配列を有するオリ
ゴヌクレオチドを合成し、それをプライマーとして使用
した。このオリゴヌクレオチドを、標準的な手法[Vier
aらのMeth.Enz.,143:3(1987)]により調製した1本鎖
pRK−t−PAとアニーリングさせた。
デオキシリボアデノシン(dATP)、デオキシリボグア
ノシン(dGTP)、及びデオキシリボチミジン(dTTP)の
3つのデオキシリボヌクレオチドの混合物を、上記キッ
トの製造元から供されているそのキット中のdCTP(aS)
と呼ばれる改変チオ−デオキシリボシトシンと混合し、
それをオリゴヌクレオチドとアニーリングさせた1本鎖
pRK7−t−PAに加えた。
この混合物にDNAポリメラーゼを加えると、突然変異
した塩基以外はpRK7−t−PAと同一のDNAの鎖が生成し
た。さらに、この新たなDNAの鎖はdCTPの代わりに、そ
れが制限エンドヌクレアーゼ消化されことから保護する
のに役立つdCTP(aS)を含有していた。得られた2本鎖
ヘテロ二重鎖の鋳型の鎖に適当な制限酵素により切れ目
(ニック)を作成した後、その鋳型の鎖を、突然変異オ
リゴマーを含有している領域を通過するようExo IIIヌ
クレアーゼによって消化した。次いで、この反応を停止
させ、部分的にしか1本鎖でない分子を残した。次に、
4つすべてのデオキシリボヌクレオチド3リン酸、AT
P、及びDNAリガーゼの存在下にDNAポリメラーゼによ
り、完全な2本鎖DNAのヘテロ二重鎖分子を形成させ
た。
以下の表Aに挙げているオリゴヌクレオチドを合成
し、上記のALA−スキャン法を使用して、これも表Aに
挙げているpRK7−t−PA変異体を作成するためのプライ
マーとして使用した: 星印は、本発明を例示する変異体を示している。変異
体、E94A,D95A及びD236A,D238A,K240Aは1つ以上のアミ
ノ酸置換を含有しているので、実際上、多重突然変異体
であるが、それらはただ1つのオリゴヌクレオチドを使
用して生成させた。これは、置換アミノ酸がそれぞれポ
リペプチド鎖上で近接して位置しているので可能であっ
た。
上記の産生体を若干改変させ、本発明を例示する多重
突然変異体をさらに製造した。以下に説明するこれらの
突然変異体では、鋳型DNAは野生型t−PA(pRK,t−PA)
ではない。その代わりに使用した鋳型は、少なくとも単
一突然変異を含有するもの、即ち上記の単一突然変異体
を構築するうえで産生されるDNAであった。鋳型として
使用するDNA、及び各多重突然変異体にさらに作成され
る突然変異を生成させるために使用するオリゴヌクレオ
チドを以下の表Bに列記する。各オリゴヌクレオチドの
DNA配列は上記の表Aに示したものである: III.細菌形質転換及びDNA調製 コンピーテントな細胞を調製し、形質転換するための
標準的なCaCl2法[Sambrookら(前掲)の1.76−1.84
項]を使用し、上記のプロトコールを使用して作成した
突然変異t−PA構築物をE.coli宿主株MM294tonAに導入
した。Tn10トランスポゾンをtonA遺伝子に挿入した後、
不正確に切除することにより、E.coli株MM294tonA(こ
れはT1ファージに耐性である)を調製した。次いで、こ
の遺伝子をトランスポゾン挿入突然変異[Klecknerらの
J.Mol.Biol.,116:125−159(1977)]を使用し、E.coli
宿主MM294(ATTC No.31,446)に挿入した。
Sambrookら(前掲)の1.25−1.31項に記載されている
標準的なミニプレプ法を使用し、細菌形質転換体のコロ
ニーそれぞれからDNAを抽出した。得られたプラスミド
をセファクリルCL6Bスピンカラムに通してさらに精製
し、次いでDNA配列決定並びに制限エンドヌクレアーゼ
消化及びアガロースゲル電気泳動によって分析した。
IV.真核生物細胞の形質転換 ヒト腎胚293細胞を6ウエル平板にて70%全面成長ま
で増殖させた。t−PA突然変異体をコードするプラスミ
ド2.5μgを1mMトリス−HCl、0.1mM EDTA、0.227M CaCl
2(150μ)中に溶解した。これに、50mM HEPES緩衝液
(pH7.35)、280mM NaCl、1.5mM NaPO4(150μ)を加
え(旋回下に滴加)、25℃で10分間沈殿物を形成せしめ
た。次いで、得られた懸濁沈殿物を6ウエル平板の各ウ
エル中の細胞に加え、インキュベーター中に4時間放置
した。次いで、培地を吸引除去し、PBS(リン酸緩衝化
食塩水)中20%のグリセリン1mlを加えた。細胞をまず
血清不含培地3mlで、次いで同培地1mlで洗浄することで
2回洗浄した。次に、新たな培地3mlを加え、細胞を5
日間インキュベートした。次いで、培地を採取し、検定
した。
1本鎖t−PAが必要な場合の操作は、細胞の増殖期に
プラスミノーゲン枯渇血清を使用する以外は上記のよう
に行う。
V.生物学的検定 A.t−PAの定量 野生型t−PAに対して調製したポリクローナル抗体を
使用し、ELISA(酵素結合免疫吸着検定)法によって、
細胞培養上清中に存在するt−PAの濃度を測定した。以
下で説明する各検定に使用したt−PA量はこのELISA法
の結果に基づいている。
B.S−2288検定 S−2288検定を使用し、2本鎖形態の本発明突然変異
体のタンパク質分解活性を測定した。この検定は、t−
PAのタンパク質分解活性のための直接的な検定法であ
る;t−PAはこの小ペプチドとパラニトロアニリド発色団
との間の結合を開裂させる。
野生型組換えt−PA(rt−PA)を細胞培養培地で希釈
して標準曲線試料を調製する。この標準曲線試料及びrt
−PA突然変異体試料をマイクロタイター平板のウエルに
加えた。この検定法を使用して2本鎖rt−PAの活性を測
定するので、ヒトプラスミンとのインキュベーション工
程を操作中に包含させる。ヒトプラスミン(KabiVitru
m)は終濃度0.13CU(カゼイン単位)/mlまで加えた。試
料を室温で90分間インキュベートした。
アプチロニン[シグマ、約14TIU(トリプシンインヒ
ビター単位)/mg]を終濃度72μg/mlまで加えてプラス
ミン活性を阻害し、得られた試料を室温で15分間インキ
ュベートした。S−2288の2.16mM溶液を0.1Mトリス、0.
106mM NaCl、0.02%アジ化ナトリウム、pH8.4を用いて
1.45mMにまで希釈し、この溶液100μをマイクロタイ
ター平板の各ウエルに加えた(各ウエルにおける最終容
量は200μであった)。405nmにおいて発色をモニター
した。それぞれの標準及び試料についての吸光度対時間
の曲線勾配を測定した。標準曲線は、rt−PA標品につい
てのrt−PA濃度の関数として、吸光度対時間の曲線勾配
をプロットすることで作成した。次いで、突然変異体の
相対活性濃度を標準曲線から測定した。各突然変異体の
活性濃度をrt−PA ELISAにて得られた突然変異体につい
ての濃度で除し、得られた比活性を、1.0値と帰属され
る野生型T−PAに相対させて表した。
C.S−2251検定 この検定はt−PA活性の間接検定法である。この検定
法では、プラスミノーゲンをt−PAの作用によりプラス
ミンに変換させるが、そのプラスミンがS−2251基質を
開裂してパラニトロアニリド発色団を放出するものであ
る。次いで、この発色団の発色を経時的に測定する。
1.フィブリン刺激S−2251検定 S−2288検定について記載しているようにして標準曲
線試料を調製した。その試料をプラスミン−セファロー
スと共にインキュベートすることにより、試料を2本鎖
に変換した。プラスミン−セファロースは、ヒトプラス
ミン(KabiVitrum)約20.8CUを臭化シアン活性化セファ
ロース(ファルマシア)1mlとカップリングさせて調製
した。このプラスミン−セファロース(5%スラリー50
μ)を試料150μと共に室温で90分間撹拌させなが
らインキュベートした。インキュベートの後、得られた
樹脂を遠心によって除去し、試料10μをマイクロタイ
ター平板のウエルに加えた。
ヒトトロンビン(42単位/ml溶液10μ)を各ウエル
に加えた。ヒトGlu−プラスミノーゲン(5.3μM)28μ
、プラスミノーゲン不含のヒトフィブリノーゲン(10
μM)10μ、3mM S−2251(KabiVitrum)30μ、及
びPBS62μから構成される混合物(130μ)を加え、
各ウエル中の反応を開始させた。405nmにおいて発色を
モニターし、492nmの参考波長における吸光度を各時点
の吸光度から差し引いた。吸光度対時間の二乗の曲線勾
配を標準及び突然変異体試料について測定した。標準曲
線は、rt−PA標品についてのrt−PA濃度の関数として、
吸光度対時間の二乗の曲線勾配をプロットすることによ
り作成した。突然変異体の相対比活性は、S−2288検定
について記載したようにして測定した。
2.フィブリノーゲン刺激S−2251検定 この検定は、PBSをトロンビンと置き換える以外はフ
ィブリン刺激S−2251検定について記載しているように
して行った。
3.血漿凝塊S−2251検定 標準曲線試料の調製及び、プラスミン−セァロースを
使用する1本鎖rt−PAから2本鎖rt−PAへの変換をフィ
ブリン−刺激S−2251検定について記載しているように
して行った。ヒトトロンビン(31μg/ml溶液10μ)を
マイクロタイター平板の各ウエルに加えた。標準及び突
然変異体試料(40μ)をその平板に加え、酸クエン酸
デキトローストヒト血漿90μ及び9.1mM S−2251(Kab
iVitrum)10μの混合物100μを加え、反応を開始さ
せた。405nmにおいて発色をモニターし、492nmの参考波
長における吸光度を各時点の吸光度から差し引いた。得
られたデータの分析は、フィブリン刺激S−2251検定に
ついて記載したようにして行った。
上記のB及びC項に記載している検定の結果を以下の
第1表に示すが、ここでは星印が本発明の突然変異体を
表している。残りの突然変異体は従来から開示されてい
たものであり、これらは比較のために表に加えたもので
ある。
S−2288検定の結果は、本発明の例示変異体が野生型
t−PAと同等の、又はそれ以上の活性を有していること
を示している。
フィブリン刺激S−2251検定では、第1表に示してい
る本発明の単一突然変異体が野生型と同様の活性を有す
ることが示されている。多重突然変異体であるE94A,D95
A,N117Q、及びN117Q,D236A,D238A,K240Aは野生型t−PA
よりも実質的に活性が高い。この活性は驚べきことに、
単一突然変異体のいずれよりも高いことが見いだされ
た。
フィブリノーゲン刺激S−2251検定の結果から、本発
明の単一突然変異体の殆どの活性は野生型t−PAと同等
であることが見いだされた。予期せずに、2つの多重突
然変異体、E94A,D95A,N117Q及びN117Q,D236A,D238A,K24
0Aは単一突然変異体よりも実質的に高いことが見いださ
れた。
血漿凝塊S−2251検定により、本発明の突然変異体の
殆どが野生型t−PAに匹敵する活性を有していることが
見いだされた。
D.血漿凝塊溶解検定 上述のフィブリン刺激S−2251検定にて説明したプラ
スミン−セファロースを使用し、t−PA変異体のすべて
の試料を1本鎖から2本鎖形態に変換した。
血漿凝塊溶解検定は以下のようにして行った:0.15M塩
化カルシウム10mlをマイクロタイター平板ウエルに加え
た。次いで、各ウエルに、遠心し0.45マイクロン濾過し
たヒトクエン酸処理血漿プールを加えた。その内容物を
完全に混合し、血漿凝塊を形成させた。rt−PAの標準試
料及び検定すべきt−PA変異体を、それらの終濃度の2
倍(18−800nm/ml)にまで検定緩衝液で希釈した。希釈
緩衝液は0.1M NaCl、0.03M重炭酸ナトリウム(実験の開
始直前に新たに加える)、4mM KCl、1mM塩化カルシウ
ム、1mM二塩基性リン酸ナトリウム、0.3mM塩化マグネシ
ウム、0.4mM硫酸マグネシウム、20mM HEPES[4−[2
−ヒドロキシエチル]−1−ピペラジンエタンスルホン
酸]、及び0.01%ポリソルベート80、pH7.4を含有して
いる。次いで、各標品又は変異体を1容量の血漿プール
と混合した。この混合物100μ全体を、周囲温度で6
−8時間放置して血餅を生じさせた後の血漿凝塊の上に
重層した。次いで、各平板の光学密度を405nmにて読み
とった。次いで、その平板を37℃で約15時間インキュベ
ートし、光学密度の測定を繰り返した。各ウエルについ
て、0から15時間までの光学密度値の差異を引き算によ
って計算した。標品では、光学密度を標品の濃度のlog
の関数としてプロットした。この標準曲線から未知量を
内挿した。同じく処理した野生型t−PA対照に標準化し
た。標準曲線は4つのパラメーター適合プログラを使用
して決定した。使用した平板解読装置は、SLT−ラボラ
トリーズのEAR340AT型であった(オーストリア)。
得られた結果を以下の第2表に示すが、表中、星印は
本発明の変異体を示している。
本発明の単一変異体は、この検定において野生型t−
PAに匹敵する活性、及びN117Qよりも良好な活性を有し
ている。E94A,D95A,N117Q、及びT103N,D236A,D238A,K24
0Aなどの特定の多重変異体における凝塊溶解活性は、野
生型に匹敵している。
VI.クリアランス速度検定 マウスに125−I−標準化t−PAを注入し、その血流
中に残存する放射活性量を経時的にモニターすること
で、クリアランスを測定した。125−I−標識化t−PA
を製造するには、以下に説明する幾つかの工程が必要で
あった。
A.t−PA変異体の放射線標識化 放射線標識化t−PA変異体を製造するための第1工程
は、D−Tyr−Pro−Arg−クロロメチルケトン試薬[YPR
ck,ビーチャム・バイオサイエンス,Inc.,フィラデルフ
ィア,PAから入手した]を125−Iで標識化することであ
る。この試薬は、t−PAと不可逆的に結合し、t−PAの
自己不活化基質(suicide substrate)として作用す
る。従って、t−PA分子は、このYPRckによって形成さ
れる共有結合を介して間接的にヨウ素化される。
YPRck試薬は、Hunter及びGreenwood[Nature 194:495
(1962)]に記載されている方法を基礎とする方法を使
用し、クロラミンT触媒ヨウ素化により放射線標識す
る。通常の反応では、1Mトリス−HCl pH7.5(50μ)
を、栓付き反応容器中のヨウ化ナトリウム−125[4ミ
リキューリー,1.8nmol](40μ)に加える。この反応
物に、12mM塩酸中、100μg/mlの保存溶液として調製し
ておいたYPRck試薬(0.83μg、1.8nmol)8.3μを加
える。得られた混合物は、ヨウ化ナトリウム及びYPRck
の1:1の化学量論混合物であった。0.1Mリン酸ナトリウ
ム(pH7.5)中、1mg/mlクロラミンT(12.5μ)を添
加し、ヨウ素化反応を開始させた。60秒後、0.1Mリン酸
ナトリウム(pH7.5)中、1mg/mlメタ重亜硫酸ナトリウ
ム25μを添加し、ヨウ素化反応を停止させた。各添加
の後にこの反応容器を旋回させた。YPRckのヨウ素化の
直後に、0.01%Tween−20を含有するPBS2mlをその反応
容器に加え、旋回させて放射活性標識物を希釈した。本
発明のt−PA変異体をコードするDNAによって6日前に
形質転換しておいた293細胞から、細胞培養上清を採取
した。これらの細胞は変異体t−PAタンパク質を活動的
に分泌しており、その細胞培養培地は通常、約1μg/ml
のt−PAを含有している。希釈したYPRck−125−I試薬
20μを細胞培養上清900μに加えた。この混合物を2
5℃で1時間インキュベートし、次いで0.003%Tween−2
0を含有するPBS中、0.1%ゼラチンで前もって平衡化し
ておいたセファデックスG−25カラムに適用した。各カ
ラムから画分1mlを採取し、各画分の試料をトリクロロ
酢酸沈殿させて測定すると、通常は4番目の画分が、放
射活性結合した総タンパク質の85%を含有していた。
B.薬物動態検定 以下の検定法を使用し、YPRck−標識化t−PA変異体
のマウスにおけるクリアランスを計算した。各変異体の
評価には、それぞれ4匹のマウスを使用した。YPRck−
標識化t−PA変異体を濃度1百万cpm/mlにまで希釈し
た。各マウスの尾に、0.5%BSA及び0.01%Tween20を含
有するPBSの溶液中、YPRck−標識化t−PA100μを注
射した。マウスからの採血は尾から対で行った。第1の
対は最初の注射の後1、4、10、20及び30分後に採血し
た。第2の対は最初の注射の後2、7、15、25及び40分
後に採血した。血液70μを10%トリクロロ酢酸(TC
A)中で沈殿させた。ガンマ・シンチレーションカンタ
ーを使用し、TCA沈殿物質をカウントし、第3図に示す
ようにグラフ上に代表的結果をプロットした。次いで、
各マウスについての曲線下面積(AUC)を計算した。次
ぎに、式:クリアランス=投与量/AUC を使用し、クリ
アランス速度を計算した。t−PA変異体を投与したマウ
スの血液から得られたクリアランス速度を野生型t−PA
のそれに標準化した(野生型t−PAのクリアランス速度
を変異体のクリアランス速度で割る)。
この検定の結果をクリアランス率として表し、それら
を上記の第2表に示している。例示した本発明のt−PA
変異体は、野生型t−PAのそれよりも低いクリアランス
率を有している。このことは、本発明の変異体が野生型
t−PAと比較して減少されたクリアランスを有している
ことを示している。二重及び三重変異体の中には単一変
異体よりも低いクリアランス率を有しているものがあっ
た。突然変異変異体、T103N,D236A,D238A,K240A;N117Q,
D236A,D238A,K240A;E94A,D95A,T103N;及びE94A,D95A,N1
17Qはすべて、それらの位置のいずれの単一突然変異体
よりも低いクリアランス率を有していた。
さらなるクリアラアンス速度の結果を以下の第3表に
示す。
第3表の1欄に示したt−PA変異体(標的な命名法を
使用)は実質的に記述のようにして入手し、試験した。
番号付した残基のみを挙げているが、これはアラニンで
置換したアミノ酸を意味している。
各変異体をコードするDNAを、一時的発現のためにヒ
ト腎胚ライン293C細胞[GrahamらのJ.Gen.Virol.36:59
(1977)]に、又は安定な発現のためにCHO−K1セルラ
イン(ATCC番号CL61)にトランスフェクトした(第3表
の2欄に示している)。すべての試料は精製調製物とし
ての「PURIF」と明示していない限り、非精製細胞培養
上清として試験した。
t−PAの細胞培養上清中濃度を、野生型t−PAに対し
て調製したポリクローナル抗体を使用するELISA(酵素
連結免疫吸着検定)法によって測定した。このクリアラ
ンス検定に使用した各t−PA変異体の量は、このELISA
法の結果に基づくものである(第3表の3欄に示してい
る)。ELISAの値はμg/mlとして表している。
t−PA変異体の放射線標識化試料を用いて、126I−YP
Rckによってクリアランス試験を行った。第3表の4欄
に示しているマイクロキューリー/マイクログラム(μ
Ci/μg)のデータは、t−PA変異体の無傷の活性部位
の数を表示するものである。
5欄は、標準化クリアランスで表した、マウスにおけ
るインビボ薬物動態検定の結果を示している。各t−PA
変異体のクリアランスを野生型t−PAのクリアランスで
割り、それを率として表した。薬物動態クリアランスの
値が低ければ低い程、半減期が長いことを意味する。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C12N 15/09 ZNA A61K 37/54 //(C12N 1/21 C12R 1:19) (56)参考文献 特開 平3−127987(JP,A) 特開 昭62−289179(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 9/64 C12N 15/58 BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)

Claims (36)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】生物学的活性を示し、野生型t−PAと比較
    して減少されたクリアランスを有する94位又は95位、又
    は236位、238位及び240位(これらの位置は野生型t−P
    Aの位置番号に従う)にアミノ酸置換を有するt−PAの
    アミノ酸配列変異体であって、E94A,D95A;D95A,R101A;D
    236A,D238A,K240A;およびE94V,D95G変異体とは異なる変
    異体。
  2. 【請求項2】94位がグルタミン酸以外のアミノ酸によっ
    て置換されている請求項1に記載の変異体。
  3. 【請求項3】94位がアラニン又はグリシンによって置換
    されている請求項2に記載の変異体。
  4. 【請求項4】95位がアスパラギン酸以外のアミノ酸によ
    って置換されている請求項1に記載の変異体。
  5. 【請求項5】95位がアラニン又はグリシンによって置換
    されている請求項4に記載の変異体。
  6. 【請求項6】236位がアスパラギン酸以外のアミノ酸に
    よって置換され、238位がアスパラギン酸以外のアミノ
    酸によって置換され、そして240位がリジン以外のアミ
    ノ酸によって置換されている請求項1に記載の変異体。
  7. 【請求項7】236位がアラニン又はグリシンによって置
    換され、238位がアラニン又はグリシンによって置換さ
    れ、そして240位がアラニン又はグリシンによって置換
    されている請求項6に記載の変異体。
  8. 【請求項8】94位がグルタミン酸以外のアミノ酸によっ
    て置換され、95位がアスパラギン酸以外のアミノ酸によ
    って置換されている請求項1に記載の変異体。
  9. 【請求項9】94位がアラニン又はグリシンによって置換
    され、95位がアラニン又はグリシンによって置換されて
    いる請求項8に記載の変異体。
  10. 【請求項10】103位がアスパラギンによってさらに置
    換されている請求項2に記載の変異体。
  11. 【請求項11】117位がアスパラギン以外のアミノ酸に
    よってさらに置換されている請求項2に記載の変異体。
  12. 【請求項12】117位がアラニン、グルタミン又はセリ
    ンによってさらに置換されている請求項2に記載の変異
    体。
  13. 【請求項13】103位がアスパラギンによってさらに置
    換されている請求項4に記載の変異体。
  14. 【請求項14】117位がアスパラギン以外のアミノ酸に
    よってさらに置換されている請求項4に記載の変異体。
  15. 【請求項15】117位がアラニン、グルタミン、又はセ
    リンによってさらに置換されている請求項4に記載の変
    異体。
  16. 【請求項16】117位がアスパラギン以外のアミノ酸に
    よってさらに置換されている請求項6に記載の変異体。
  17. 【請求項17】117位がアラニン、グルタミン、又はセ
    リンによってさらに置換されている請求項6に記載の変
    異体。
  18. 【請求項18】103位がアスパラギンによってさらに置
    換されている請求項6に記載の変異体。
  19. 【請求項19】94位がアラニン又はグリシンによってさ
    らに置換されている請求項17または18に記載の変異体。
  20. 【請求項20】95位がアラニン又はグリシンによってさ
    らに置換されている請求項17または18に記載の変異体。
  21. 【請求項21】94位がアラニン又はグリシンによって、
    及び95位がアラニン又はグリシンによってさらに置換さ
    れている請求項17または18に記載の変異体。
  22. 【請求項22】236位がアラニン又はグリシンによっ
    て、238位がアラニン又はグリシンによって、そして240
    位がアラニン又はグリシンによってさらに置換されてい
    る請求項9に記載の変異体。
  23. 【請求項23】103位がアスパラギンによって、そして1
    17位がグルタミンによってさらに置換されている請求項
    9に記載の変異体。
  24. 【請求項24】117位がアラニン、グルタミン、又はセ
    リンによってさらに置換されている請求項9に記載の変
    異体。
  25. 【請求項25】103位がアスパラギンによってさらに置
    換されている請求項9に記載の変異体。
  26. 【請求項26】請求項1から25までのいずれかに記載の
    変異体をコードしているDNA配列分子。
  27. 【請求項27】形質転換宿主細胞において請求項26に記
    載のDNA配列分子を発現できる複製可能な発現ベクタ
    ー。
  28. 【請求項28】請求項27に記載のベクターによって形質
    転換された宿主細胞。
  29. 【請求項29】真核生物細胞である請求項28に記載の宿
    主細胞。
  30. 【請求項30】哺乳動物細胞である請求項29に記載の宿
    主細胞。
  31. 【請求項31】ヒト腎胚293細胞である請求項30に記載
    の宿主細胞。
  32. 【請求項32】請求項1から25までのいずれかに記載の
    t−PAのアミノ酸配列変異体の治療学的有効量を製薬的
    に許容され得る担体と共に含有する、血栓溶解を必要と
    する血管状態又は疾患を処置するための医薬組成物。
  33. 【請求項33】哺乳動物における、血栓溶解を必要とす
    る血管状態又は疾患を処置するための医薬の製造におけ
    る請求項1から25までのいずれかに記載の変異体の使用
    方法。
  34. 【請求項34】請求項1から25までのいずれかに記載の
    t−PAのアミノ酸変異体の治療学的有効量を製薬的に許
    容され得る担体と共に含有する、フィブリン沈着もしく
    は接着の形成又は再形成を予防するための組成物。
  35. 【請求項35】哺乳動物の可能性あるフィブリン又は接
    着形成部位に投与するための哺乳動物におけるフィブリ
    ン沈着もしくは接着形成又は再形成を処置または予防す
    るための医薬の製造における請求項1から25までのいず
    れかに記載の変異体の使用方法。
  36. 【請求項36】生物学的活性を示し、野生型t−PAと比
    較して減少されたクリアランスを有しているt−PAのア
    ミノ酸配列変異体を製造するための方法であって、 (a) 野生型t−PAの位置番号に従う位置として94位
    又は95位、又は236生、238位及び240位に改変を有する
    t−PA変異体を入手し、 (b) 得られたt−PA変異体のクリアランス速度を野
    生型t−PAのそれと比較し、 (c) 野生型t−PAに対して減少されたクリアランス
    を有するt−PA変異体を選択すること を特徴とする方法。
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