JP3124618B2 - 電鋳による薄板状複製型製造方法及び同装置 - Google Patents

電鋳による薄板状複製型製造方法及び同装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電鋳による薄板状複製型
製造方法及び同装置に関し、特に微細形状パターンを付
与した光ディスクや光カードなどの光情報記録媒体、フ
レネルレンズやマイクロレンズそして平板レンズなどの
プラスチック光学デバイス、さらにはインクジェット記
録に用いる流体素子などプラスチック複製品を得るため
のスタンパーを電鋳法で製造するのに適する方法及び同
装置に関する。
【0002】
【従来の技術】上述のようなスタンパーなどを得る方法
としては、シリコン単結晶板、感光性ガラス板、金属
板、セラミックス板、ガラス板、高分子基板等の0.1
mm程度の薄肉の基板(母型)上にリソグラフィーによ
りミクロン、サブミクロンレベルの微細形状パターンを
刻み、電鋳により母型上の微細形状パターンを反転転写
する方法が一般的に知られている。例えば市販のシリコ
ン単結晶板(シリコンウエハー)を母型基板として用い
た場合、図9A、Bに示すようにフォトリソグラフィー
法により母型1の表面に所望の微細溝2を形成し、シリ
コンウエハーには半導体の性質上から直接メッキや電鋳
はできないため、蒸着やスパッタリングで導体金属(例
えばNi)の薄膜3(メタライズ層)を成膜して導体化
処理をした後、これを電鋳に供する。そして得られた電
鋳型(スタンパー)を用いて2P法(紫外線硬化樹脂に
よる微細形状転写)、射出成形法、注型法、加熱圧縮成
形などで前述のような光学デバイスや、プラスチック製
品を製作する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで上述のような
電鋳による複製型の製造方法には、母型からもう一度樹
脂注型などで反転転写した型を圧肉化して剛性付与した
電鋳に供する方法と、母型に直接電鋳する方法の2法が
ある。前者の方法では母型の厚肉化が可能だが、母型を
再度反転転写するので工程が増え、離型操作が複雑であ
り、形状転写精度が悪くなる。また後者の場合には母型
及びスタンパーの変形、反りなどが問題となるため、厚
さが0.1mm程度の薄い母型を用いて高精度なまたは
狙った平面度の複製型を得るには、薄い母型を接着剤な
どで剛性基板に接合固定する方法がとられるが、接着
剤、接着作業時の汚れ、異物付着などにより原盤の品質
を保つのが困難であり、接着剤硬化時の収縮(ヒケ)に
よる平面度変化も問題となる。
【0004】さらに、いずれの方法にしても電鋳方法は
電気メッキと同様に電解液中での反応なので、電析プロ
セスを目で具体的に確認することができず、電鋳開始か
ら電解液中から引き出すまで品質レベルはまったく不明
であり、出来上がり品質に頼らざるを得ないことはもち
ろんのこと、数十時間電鋳した後にようやく結果がわか
るというもので、再現性、生産性に劣るという問題もあ
る。
【0005】そこで、電鋳における複製型の変形原因が
電着応力にあり、電着応力は液組成の変動、不純物、電
解生成物などの影響で一定ではない点を考慮し、使用す
る電鋳浴について予め電流密度と電着応力及び平面度と
の関係を求めておき、その条件を参考にして、電気メッ
キと同様の原理で電解液中で連続して電析して所望の厚
さとした後に、電解液中より引き出して母型と電鋳複製
品を分離することが行なわれている。しかしながら、種
々の形状の母型と電鋳複製品の厚さとの関係が一定でな
い場合もあり、結局はねらいの型を得るのには長年の経
験と作業者の勘によるところが大きい。
【0006】本発明は、上述した従来の問題を解決し、
種々の母型への対応するという点において同一条件での
技術の一般化ができ、電鋳操作で任意の平面を得ること
ができる電鋳による薄板状複製型製造方法及び同装置方
法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る電鋳による
薄板状複製型製造方法は上記目的を達成するために、各
種微細加工法により微細凹凸形状を刻んだ薄板原盤を母
型として該母型と反転一致形状を有し、所望の反り、変
形量の面形状を有する薄板状複製型を電鋳により得る方
法であって、電鋳時の電着応力による上記母型及び電着
した複製型の反りや変形挙動を検出器で直接モニターす
るようにしたものである。
【0008】この電鋳による薄板状複製型製造方法は、
上記検出器を上記母型に一体的に配置したものである。
【0009】そして、この電鋳による薄板状複製型製造
方法は、上記検出器が上記母型に一体的に接合した変位
検出器であり、電着中の母型及び複製型の変位、変形量
をモニター可能とし、かつ電流路度調節による応力制御
並びに変形量調節を行なうことができる。
【0010】本発明に係る電鋳による薄板状複製型製造
装置は上記目的を達成するために、各種微細加工法によ
り微細凹凸形状を刻んだ薄板原盤を母型として該母型と
反転一致形状を有し、所望の反り、変形量の面形状を有
する薄板状複製型を電鋳により得る装置であって、電鋳
時の電着応力による上記母型及び電着した複製型の反り
や変形挙動を直接モニターする検出器を有する構成とし
たものである。
【0011】この電鋳による薄板状複製型製造装置は、
上記検出器が上記母型に一体的に接合した変位検出器で
あり、電着中の母型及び複製型の変位、変形量をモニタ
ー可能とし、かつ電流路度調節による応力制御並びに変
形量調節を行なう構成である。
【0012】本発明に係る電鋳による薄板状複製型製造
装置は、上記母型の周囲を金属導電部材を介した絶縁性
枠体で囲み、上記母型の非電着面を密封する構成とする
ことができる。
【0013】
【実施例】次に本発明の実施例を図面を参照して説明す
る。なお以下では従来と共通する部分には共通する符号
を付して説明する。図1は本発明に係る電鋳による薄板
状複製型製造装置の一実施例を示す概念図である。図中
10は電鋳槽で、電鋳液11として低電着応力の電析膜
が得られるものとして多用されているスルファミン酸ニ
ッケル浴を用いている。スルファミン酸ニッケル浴の液
組成は、スルファミン酸ニッケルg/l、硼酸30g/
l、pH4.0、温度50℃とした。なお、ニッケル電
鋳ではワット氏浴も用いられる。電鋳液11中には、正
極としてNi陽極12と、陰極として電鋳治具13を入
れ、電鋳電源14、電圧計15、電流計16を接続して
ある。
【0014】電鋳治具13は、図2、図3に示すように
底の浅い筒蓋状の保持板17に略環状の絶縁性遮蔽板1
8を螺合させて構成するもので、保持板17と絶縁性の
遮蔽板18との間に薄板状のシリコン基板を母型19と
してこれを挟んで構成してある。遮蔽板18と母型19
との間には通電板20を介在させてあり、この通電板2
0に図1に示すように電鋳電源14へのリード線を接続
している。そして母型19の非電着面側、即ち裏面側は
上述の構造によって密封される。
【0015】さらに、電鋳液11中にて母型19の平面
度変化を計測するために、密封した母型19の裏面には
変位検出器21を接着剤で貼り付けてある。この変位検
出器21としては本実施例では歪ゲージを用いたが、例
えば差動トランス、静電容量検出器などを用いることも
できる。歪ゲージ21から保持板17の外へ引き出した
リード線にはブリッジボックス22、増幅器23及びデ
ータ記録手段24を接続し、歪ゲージ21の変位デー
タ、即ち電着応力による母型19変形持の歪量を計測、
記録できるようにしてある。
【0016】本実施例は、図5に示すスルファミン酸ニ
ッケル浴の電流密度と電着応力との関係を用いて電鋳浴
の電流密度を調節することにより任意の平面度の電鋳複
製型を得るものである。図5によれば、低電流密度では
圧縮応力(図中矢印)を示し、この時母型19の表面に
電着したNi電鋳型25の転写面26は、図6に示すよ
うに凹状に変形する。一方、電流密度5A/dm2近傍
からは引張応力(図中矢印)となり、Ni電鋳型25の
転写面26は、図7に示すように凸状に反る。
【0017】次に本実施例装置を用いた電鋳による複製
型の製造方法について説明する。微細パターンの複製、
スパッタ膜による導体化処理した母型の電鋳では、微細
形状の精密転写と導体薄膜のジュール熱による破損を避
けるために、電鋳初期においては低電流密度で電析す
る。低電流密度で厚く電析するには長時間を要するの
で、生産性の点から電鋳開始後の低電流密度電着から所
望の電流密度まで段階的に上げて比較的高電流密度領域
で電析するのが一般的である。Ni電鋳型25の厚さが
所望の値に至ったら通電を止め、電鋳液11中から母型
19及びNi電鋳型25を引き出し、母型19とNi電
鋳型25を分離する。分離後、Ni電鋳型25の板厚、
外形状を機械加工で整え、成形型に組み込む。
【0018】このように、低電流密度で電着を開始する
と、電鋳初期では図5に示した電流密度と電着応力との
関係で、圧縮応力により転写面26が凹面に変形する
が、凹面状のNi電鋳型25を製作においてはこのとき
の変形量をモニターしつつ電鋳すれば所望の凹面形状の
ものが得られる。この際、所望の凹面形状を示したと
き、電着応力ゼロレベルの電流密度で一定厚さまで電析
して、電着応力と電析ニッケルの剛性がバランスするよ
うに保つ。周知のように、電析ニッケルの厚さはファラ
デー則に従い、電流と電析時間に比例する。厚い複製型
を製作するときは、前述のように電鋳開始直後の低電流
密度から段階的に電流密度を上げて行くが、このような
場合、図5に示した電流密度と電着応力との関係に従っ
て、電鋳初期は図6に示す圧縮応力、電流密度の上昇に
従って図7に示す引張応力(凸面)に変化させる。
【0019】次に本発明者らの行なった実際の複製型の
製造例であって、厚さが0.3mmの金属板の片面にス
ルファミン酸ニッケル浴で電析したときの歪挙動を図8
により説明する。前記金属板の片面に歪センサーを接合
し、反対面に電析したところ、最初は微少電流で電析し
たので圧縮側のひずみを示した(a)。この状態から電
流密度を6A/dm2に上げると、引張応力になって歪
量も引張側へと変化した(b)。この現象を平面度変化
としてみると、最初は凹面だったのが電流密度の上昇に
したがって凹面の程度が緩和されて行くことを示してい
る。この電流密度で電析を続ければ凸面になるが、電流
密度を6A/dm2で電析した後、電流密度を調節して
再度0.5A/dm2にすると、歪量の変化は緩やかに
なる(c)。この状態から、電流密度を再度6A/dm
2に上げてやると、引張側の電着応力の影響で引張側の
歪量が増加する(d)。即ち、歪量と平面度の関係を予
め求めておいて、電流密度と電着応力を調節することに
より平面及び任意の形状の電鋳型を製造できた。
【0020】
【発明の効果】本発明に係る電鋳による薄板状複製型製
造方法及び同装置は以上説明してきたように、電鋳時の
電着応力による薄板状の母型及び電鋳複製型の反りや変
形挙動を検出器で直接モニターするようにしたので、電
鋳浴から電析中の複製型と母型を空気中に引き出すこと
なく、使用する電鋳浴の電流密度と電着応力との相関関
係を利用して電流調節により発生する電着応力を電鋳複
製型の平面度制御に利用できるようになり、任意の面精
度、形状を有する電鋳複製型を製造することができ、高
価な母型製作費用、電析時間のロスもなく、失敗コスト
が低減できるるようになるという効果がある。
【0021】また狙いの面精度の複製型を製作するため
の特別な熟練、経験、液管理(応力管理など)などを必
要とせず、再現性、量産性良く電鋳金型が製造でき、製
作時間のロスがなく型製作における失敗のコストの低減
が図れるという効果もある。
【0022】さらに離型条件や成形収縮分を見込んだと
き、若干の変形(凹凸)を加味する場合でも、複製型の
成形情報を反映させ、ひけ、成形収縮分を見込んだ面精
度の金型を作ることができ、しかも電鋳浴の変動要因に
かかわらず、電鋳開始時点での電流密度−応力データが
あれば、それを用いることにより電鋳複製型の平面レベ
ルをモニターしかつ制御でき、失敗コストが著しく低減
できるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電鋳による薄板状複製型製造装置
の一実施例を示す概念図である。
【図2】図1の装置で用いている電鋳治具を示す縦断面
図である。
【図3】図1の装置で用いている電鋳治具を示す正面図
である。
【図4】母型への歪ゲージの取り付け状態を示す拡大部
分断面図である。
【図5】スルファミン酸ニッケル浴の電流密度と電着応
力との関係を示すグラフである。
【図6】圧縮応力によって母型の表面に電着した電鋳型
の転写面が凹状に変形する状態の断面図である。
【図7】引張応力によって母型の表面に電着した電鋳型
の転写面が凸状に変形する状態の断面図である。
【図8】厚さが0.3mmの金属板の片面にスルファミ
ン酸ニッケル浴で電析したときの歪挙動に関する実験結
果を示すグラフである。
【図9】フォトリソグラフィー法により母型の表面に導
体金属の薄膜を成膜する例を示す拡大部分断面図であ
る。
【符号の説明】
10 電鋳槽 11 電鋳液 12 Ni陽極 13 電鋳治具 14 電鋳電源 15 電圧計 16 電流計 17 保持板 18 絶縁性遮蔽板 19 母型 20 通電板 21 変位検出器(歪ゲージ) 22 ブリッジボックス 23 増幅器 24 データ記録手段 25 Ni電鋳型 26 転写面
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−70591(JP,A) 特開 平3−249191(JP,A) 特許2901989(JP,B2) 特許2936227(JP,B2) 特公 昭61−49397(JP,B2) 特公 平3−28517(JP,B2) 特公 昭58−18438(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C25D 1/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】各種微細加工法により微細凹凸形状を刻ん
    だ薄板原盤を母型として該母型と反転一致形状を有し、
    所望の反り、変形量の面形状を有する薄板状複製型を電
    鋳により得る方法であって、 電着時の電着応力に基づく前記母型及び前記複製型の反
    りや変形挙動をモニター可能とする検出器を備え、しか
    も前記検出器が前記母型と一体的に接合した変位検出器
    であり、 電着中の母型及び複製型変位、変形量を直接モニターす
    ること、及び、 電流密度調節による応力制御並びに変形量調節を行うよ
    うにすること を特徴とする電鋳による薄板状複製型製造
    方法。
  2. 【請求項2】各種微細加工法により微細凹凸形状を刻ん
    だ薄板原盤を母型として該母型と反転一致形状を有し、
    所望の反り、変形量の面形状を有する薄板状複製型を電
    鋳により得る装置であって、 電鋳時の電着応力による前記母型及び電着した前記複製
    に生じる反りや変形挙動を直接モニターできる変位
    出器を、前記母型と一体的に接合するように配置するこ
    とを特徴とする電鋳による薄板状複製型製装置。
  3. 【請求項3】前記変位検出器により、電着中の母型及び
    複製型の変位、変形量をモニター可能とし、かつ電流密
    度調節による応力制御並びに変形量調節を行なえるよう
    に為した請求項2に記載の電鋳による薄板状複製型製造
    装置。
  4. 【請求項4】上記母型の周囲を金属導電部材を介した絶
    縁性枠体で囲み、上記母型の非電着面を密封するを特徴
    とする請求項2又は請求項3に記載の電鋳による薄板状
    複製型製造装置。
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JP7087489B2 (ja) 2018-03-14 2022-06-21 株式会社リコー ヘッド用振動板部材、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置

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