JP3122928B2 - ルバーブ飲料の製造方法 - Google Patents

ルバーブ飲料の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ルバーブ飲料の
製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ルバーブはシベリア原産のタデ科の多年
草である。日本では食用大黄といい、漢方薬の大黄と同
族の植物である。太く多汁質である葉柄が食用に用いら
れ、欧米では古くから、ジャムやパイの材料に用いられ
てきた。日本では明治初期から導入されているが、独特
の香気と酸味のため、また、利用方法も限られているた
め、なかなか定着していない。
【0003】ルバーブは、約95%が水分で、残りを有
機酸や繊維が占めている。ルバーブの有機酸組成は、約
70%がリンゴ酸、約20%がシュウ酸、約10%がク
エン酸である。リンゴ酸は食品に上品な酸味を与える
が、シュウ酸は人体に悪影響を与えるといわれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、発明者は、ル
バーブの特徴を生かした新たな機能性食品として期待さ
れるリハーブ飲料を開発することとした。
【0005】すなわち、この特徴的なルバーブの有用な
有機酸を利用することを考え、清澄度が高く、鮮やかな
赤色をしたルバーブ抽出液の抽出法とルバーブ抽出液中
の人体に有害なシュウ酸を除去する方法及びその抽出液
に適当な糖を加え飲料とすることを検討した。
【0006】その結果、遠心分離及びカルシウム塩の添
加によりシュウ酸を除去したルバーブ抽出液を得ること
ができた。また、この抽出液にショ糖、果糖、ブドウ糖
で11.8%、またはミカンハチミツで10%の糖を加
えることにより、所期の良好な飲料を得ることができ
た。以下に、その内容を詳説する。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明に係るルバーブ
飲料の製造方法は、次の(1)及び(2)の工程を備え
ているものである。
【0008】(1)ルバーブの搾汁の濾過液を、少なく
とも8600×gの遠心力で少なくとも4分間、遠心分
離してルバーブ抽出液を得る工程。
【0009】(2)得られたルバーブ抽出液に塩化カル
シウムを少なくとも0.1%添加して同抽出液中のシュ
ウ酸を除去する工程。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を説
明する。
【0011】この実施の形態においては、図1に示す工
程でルバーブ飲料を製造した。
【0012】実施に供した「原料のルバーブ」として
は、1993年から1994年に発明者が属する農業総
合研究所葉根菜科で栽培された、品種'Myatt's Victori
a'を用いた。
【0013】上記工程における「切断」から「濾過」ま
での工程は、次の要領で行った。
【0014】「切断」の工程では、ルバーブ葉柄を1〜
2cm程度に切断し、「加水」の工程では、切断したルバ
ーブに水を加えた。加水量は、原料ルバーブの酸含量
と、製品の酸含量を考慮して決める。「搾汁」の工程で
は、加水したルバーブをジューサー等で攪拌細断した。
これを「濾過」の工程でガーゼ程度の濾布等で濾過し濾
液を得た。
【0015】「遠心分離」工程は、濾過液の遠心分離工
程であり、「上清」は分離されたルバーブ抽出液の回収
工程であり、「脱シュウ酸」は回収されたルバーブ抽出
液中に含まれるシュウ酸の除去工程である。「糖添加」
は脱シュウ酸後のルバーブ抽出液へ糖を添加する工程で
ある。
【0016】「遠心分離」工程における遠心分離条件、
「脱シュウ酸」工程におけるシュウ酸除去法、及び「糖
添加」工程における糖添加条件は、下記(1)〜(3)
に記載の要領で検討した。
【0017】(1)遠心分離条件の検討 遠心分離は、遠心分離器(日立製作所CR20)を用い
て行った。遠心力は62〜15400×g、遠心分離時
間は2〜15分を設定した。遠心分離後、カラーコンピ
ュータ(東京電色工業カラーコンピュータTX−150
0)を用いて抽出液の色を測定した。試料溶液を光路長
10mmの測定セルに入れ、透過光測定により測定した。
測定結果は、L、a、b表色系で表した。溶液の清澄度
をL値により、色の変化をa、b値により比較検討し
た。また、有機酸含量を高速液体クロマトグラフ(島津
製作所LC−9A)(以下、HPLCという。)を用い
て測定した。
【0018】
【表1】
【0019】(2)シュウ酸除去法の検討 シュウ酸カルシウムが水に不溶であることを利用して、
シュウ酸除去法を検討した。カルシウムの供給源として
炭酸カルシウム(CaCO3 )、水酸化カルシウム(C
a(OH)2 )、塩化カルシウム(CaCl2 )、硫酸
カルシウム(CaSO4 )、の4種類のカルシウム塩を
用いた。
【0020】モデル溶液によるシュウ酸除去法の検討 1%シュウ酸溶液を調製し、その5mlに4種類の塩を
それぞれ5g加え、よく攪拌した。1390×gで10
分間遠心分離後、シュウ酸含有をHPLCにより測定し
た。
【0021】ルバーブ抽出液のシュウ酸除去法の検討 モデルテストの結果をふまえ、ルバーブ抽出液の脱シュ
ウ酸法を検討した。塩として、上記の結果から3種類
のカルシウム塩を用い、それぞれ0.1〜10%になる
よう加え、良く攪拌し、1390×gで10分間遠心分
離し、有機酸含有量をHPLCで測定した。同時にこの
溶液のpHを測定した。
【0022】(3)ルバーブ抽出液への糖添加の検討 脱シュウ酸ルバーブ抽出液に糖を加え、飲料とする方法
を検討した。糖として表2に示すような糖源と濃度のも
のを用いて官能検査を行った。官能検査は発明者の属す
る研究所の職員をパネルとした。
【0023】評価は、色、におい、甘さ、酸っぱさ、味
の6項目について行った。評価点は、よい=2点、やや
よい=1点、どちらでもない=0点、やや悪い=−1
点、悪い=−2点の5段階とし、全パネルの得点を合計
した。評価は基準を置かずパネルの嗜好により判断され
た。また、各糖を加えたときの抽出液の色変化をカラー
コンピュータを用いて測定した。
【0024】
【表2】
【0025】次に、上記検討結果を示し、これについて
考察する。
【0026】(1)遠心分離条件の検討結果とその考察 遠心力による色調の変化を表3に示した。清澄度の指標
としたL値は3860×gまでは大きく増加している
が、それ以後は緩やかな増加になっている。従って、清
澄度は3860×gで充分であるといえる。赤色の指標
にしたa値は、620〜15400×gで緩やかに増加
していた。しかし、620×gの5.0でも肉眼では充
分赤色であった。緑色の指標としたb値は、8680×
gまで急激に減少し、その後緩やかに減少した。従っ
て、8680×gの遠心力が必要と考えられる。
【0027】
【表3】
【0028】次に、遠心分離時間による色調の変化を検
討した。その結果を表4に示した。
【0029】L値は2分で87.9になり、その後緩や
かに増加し、10分で94.1と最高値を示した。15
分では91.8に減少していた。L値は92〜94が限
界値と思われる。a値は2分から15分までほとんど変
化しなかった。b値は緩やかに減少した。
【0030】これらの結果から、遠心分離時間は、L値
が最高を示す10分が最適と考えられる。
【0031】
【表4】
【0032】表5に遠心分離による有機酸含量の変化を
示した。その結果、遠心分離による有機酸含量の変化は
無いことが分かった。
【0033】以上のことから遠心分離条件は、8680
×g、10分が最適であると考えられる。しかし、86
80×g以上、4分以上であれば、許容範囲であろう。
【0034】
【表5】
【0035】(2)シュウ酸除去法の検討結果とその考
察 モデル溶液によるシュウ酸除去 シュウ酸の除去結果を表6に示した。CaCO3 、Ca
(OH)2 ではシュウ酸がすべて除去された。CaCl
2 では僅かに残留し、CaSO4 では全く除去されなか
った。CaSO4 でシュウ酸が除去されないのは、強酸
性ではシュウ酸が溶解してしまうためと考えられる。
【0036】
【表6】
【0037】ルバーブ抽出液のシュウ酸除去 上記の結果、ここではCaCO3 、Ca(OH)2
CaCl2 の3種類のカルシウム塩を用いた。この場合
のシュウ酸の除去結果を表7から表9に示した。いずれ
のカルシウム塩も0.5%以上ではシュウ酸を除去する
ことができた。
【0038】CaCO3 とCa(OH)2 の区で、pH
が中性付近になると抽出液の色が赤色から無色に変化
し、さらにアルカリ性になると緑色に変化した。中性付
近で無色に変化した抽出液に酸を加え酸性にもどすと赤
色にもどったが、アルカリ性で緑色変化したものはもど
らなかった。CaCl2 では、pHの低下と共に赤色が
強くなった。これらのことから、ルバーブ抽出液の赤色
はアントシアン系の色素であると考えられる。
【0039】
【表7】
【0040】
【表8】
【0041】
【表9】
【0042】これらの結果から、添加量が少量で、より
赤色の鮮やかになる塩化カルシウムがシュウ酸除去に適
していると判断される。添加量は、シュウ酸が除去さ
れ、ややpHが低下し赤色度が増す、0.25%程度が
最適であると思われる。しかし、0.1%程度までは、
赤色度がやや劣るが、実用範囲である。
【0043】(3)ルバーブ抽出液の糖添加の検討結果
とその考察 糖添加による色調の変化 糖添加によるルバーブ抽出液の色調の変化を表10に示
した。糖源として試薬を用いたNo.1,No.2では
測定値に大きな変化はなかった。糖源にハチミツを用い
たNo.3〜No.6は、L値、a値が減少しb値が増
加した。中でも、レンゲのハチミツの方が大きく変化し
ていた。この変化は、透明赤色の原液と比較すると、や
や濁り、赤色が薄くなり、緑色が極微量混ざる方向にあ
る。すなわち肉眼でやや透明感が損なわれることが確認
できる程度である。
【0044】
【表10】
【0045】官能検査による評価 検査結果を表11に示した。パネルは発明者の属する研
究所の職員22人であり、年齢構成は21歳から62
歳、男性15人、女性7人であった。総合評価および、
その他の項目の和の得点から見ても、No.2が飛び抜
けて高い評価を得た。また、ハチミツを糖源とした中で
は、No.3がよい評価を得た。これは、ルバーブ飲料
中の酸濃度が約0.8%であり、それに見合う糖含量の
ものが高い評価を得たことと、ミカンハチミツに比べレ
ンゲのハチミツは特有の風味があり、ルバーブ抽出液と
合わなかったことによると考えられる。
【0046】パネルの男女別嗜好について見てみると、
一番得点の低かったNo.1は、男性15人中7人が、
女性7人全員がマイナス点を付けた。この区は糖含量が
6%と低いため、特に女性には嗜好されなかったと思わ
れる。男性でも嗜好したパネルは高齢側に偏っていた。
No.2では、男性が1人マイナスに嗜好しているが、
他の21人はプラスに嗜好していた。また、糖源として
のハチミツの種類については、男性がミカンを女性がレ
ンゲを好む傾向にあった。
【0047】以上のことから、糖源としては、評価の高
かった、No.2またはNo.3,No.4が最適であ
ると考えられる。しかし、糖添加によってルバーブ抽出
液の色調、透明感は左程損なわれないので、糖源の種類
は余り問題にならない。
【0048】
【表11】
【0049】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれ
ば、ルバーブの搾汁の濾過液を一定条件の下で遠心分離
し、分離して得られたルバーブ抽出液中のシュウ酸を一
定量の塩化カリウムの添加によって除去するようにした
から、次の特性を備えたルバーブ飲料を得ることが可能
になった。
【0050】(1)高い清澄度 (2)鮮やかな赤色 (3)リンゴ酸の有する上品な酸味
【図面の簡単な説明】
【図1】 ルバーブ飲料の製造工程を示す工程図
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−195483(JP,A) Confructa Studie n,30(1986)p.117−120 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23L 2/38 JICSTファイル(JOIS) WPI(DIALOG)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 次の(1)及び(2)の工程を備えてい
    ることを特徴とするルバーブ飲料の製造方法。 (1)ルバーブの搾汁の濾過液を、少なくとも8600
    ×gの遠心力で少なくとも4分間、遠心分離してルバー
    ブ抽出液を得る工程。 (2)得られたルバーブ抽出液に塩化カルシウムを少な
    くとも0.1%添加して同抽出液中のシュウ酸を除去す
    る工程。
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