JP3122357B2 - 中空セグメントとこの中空セグメントの連結方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は地中に地下構造物の
外殻等の壁体を形成するための中空セグメントとその中
空セグメント同士の連結方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来から、地中にトンネル等の地下空間
を築造するには、地表から計画地下空間の長さと幅でも
って所望深さまで地盤を掘削したのち、壁体を構築す
る、所謂開削工法や、シールド掘削機によって地盤を掘
削しながら該掘削機のテール部でセグメントを順次組立
てゝいく工法が一般的に知られているが、開削工法によ
れば、既設の鉄道や建築物等の存在によって施工が行え
ない場合が生じるばかりでなく、施工に当たっては地上
の設備機能を長期間に亘って阻害する虞れがあり、その
上、効率的な施工が困難である等の問題点がある。

【０００３】一方、シールド工法によれば、地盤を掘削
するカッター板が大径になる程、地盤との摩擦の関係か
らその回転数を低くしなければ掘削できないために、最
大掘削径が16ｍ程度までの掘削しか行えず、20ｍ以上の
大断面の地下空間を築造することが困難であり、その
上、掘削径が大きくなる程、回転駆動機構やその他の構
造が複雑化し、且つ強度や精度が要求されて製作費が高
くつくという問題点がある。又、地下深層部における掘
削には適していても比較的浅い地盤中を掘削する場合に
は地盤の崩壊が生じるために、地下浅層部に大空間を建
設する工法としては適さなく、さらに、地下街のような
断面矩形状の空間部の掘削はできないものである。

【０００４】そこで、本願出願人等は特開平４ー１５５
０９４号公報に記載しているような地下空間の築造方法
を開発した。この工法は、所定間隔を存して掘削した立
坑間の計画地下空間の外周に沿ってパイロット管を２
本、１組として複数組を一定間隔毎に並行に埋設したの
ち、隣り合う組の対向するパイロット管の後端面に平板
形状のセグメントの前端両側部を当接させた状態でパイ
ロット管間の地盤を掘削しながら該セグメントを推進さ
せることによりパイロット管を他方の立坑側に押し出す
と共に掘削跡に該セグメントを埋設し、この作業を順次
繰り返すことによってセグメント列よりなる地下空間の
外殻を築造する方法であって、この方法によれば、地表
から浅い地中であっても断面矩形状の大きな地下空間を
能率よく築造することが可能である。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな地下構造物の壁体を形成するセグメントは、コンク
リート製であるために重量が大きくて運搬等の取扱いに
困難をきたすと共に埋設後における隣接するセグメント
同士の継手部の剛性や水密性が不充分であって継手強度
が弱い上に地下水が浸入する等の問題点があった。ま
た、壁体を形成する際に、セグメントの対向側面に互い
に摺動自在に係合する凹凸条片を突設しておいても、セ
グメントはその側部の前端面でパイロット管を押し出し
ながら該パイロット管をガイドとして推進するものであ
るから、各組のパイロット管が上下左右方向にずれた状
態で埋設されていると、先に埋設したセグメントの凹条
片に次に埋設するセグメントの対向側面から突設した凸
条片を正確な位置で係合させながら推進させることがで
きなくなる。特に、長距離施工になればなる程、上記パ
イロット管の埋設精度に狂いが生じることから、長い地
下構造物の築造が困難であるという問題点があった。

【０００６】さらに、既に埋設したセグメントの側面に
設けている条片は地盤中に露出状態で埋設され、この条
片に次のセグメントの条片を係合させながら該セグメン
トを推進させるので、これらの凹凸条片の係合部分に土
砂が入って円滑な推進の妨げになるばかりでなく、セグ
メントの対向側面間を一体化が困難であり、セグメント
列よりなる地下構造物等の壁体に弱体部分ができるとい
う問題点があった。本発明はこのような問題点を全面的
に解消し得る地中壁体形成用中空セグメントとこの中空
セグメントの連結方法を提供することを目的とするもの
である。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の中空セグメントは、平面四角形状の鋼製中
空ボックスよりなる中空セグメントの一側面に突条部
を、他側面に該突条部に係合可能な形状を有する凹溝部
を夫々全長に亘って形成し、この中空セグメントの中空
内部の一側方に複数のシアコネクタを突設してなる継手
部材を収納していると共に中空内部の他側方に、隣接す
る中空セグメントの継手部材の端部を連結させるブラケ
ットを固着してなる構造を有している。

【０００８】上記構造の中空セグメントにおいて、請求
項２に係る発明は、上記ブラケットを中空セグメントの
上下壁面の対向面に固着しておき、これらの上下ブラケ
ットの対向面に、この中空セグメントに隣接する中空セ
グメント側から上記継手部材のシアコネクタを突設して
いない端部を介入させて上下ブラケットに継手部材の端
部を溶接又はボルトにより一体に固着させるように構成
しているものであり、請求項３に係る発明は、中空セグ
メントの前後壁面に連結用ボルト挿通孔と作業員が出入
り可能な透孔を設けていることを特徴としている。

【０００９】また、上記中空セグメントの連結方法とし
ては、請求項４に記載したように、上記構成の中空セグ
メントの凹溝部に仮管を嵌合した状態で該中空セグメン
トを地中に順次直列状に埋設すると共にこの中空セグメ
ント列の側方に隣接して次の中空セグメント列を埋設す
る際に、埋設すべきこの中空セグメントの突条部で先に
埋設した中空セグメントの凹溝部に嵌合している仮管を
押し出し撤去しつつその突条部を凹溝部に係合させた状
態にして埋設したのち、互いに接合した左右の中空セグ
メントの突条部と凹溝部とを形成している側板部を切除
してこれらの左右中空セグメントの内部を連通させ、し
かるのち、一方の中空セグメント内に収納している継手
部材の端部を他方の中空セグメント内に挿入して該端部
を他方の中空セグメントのブラケットに固着し、次いで
中空セグメント内部にコンクリートを充填することを特
徴とするものである。

【００１０】

【発明の実施の形態】中空セグメントは鋼製中空ボック
スよりなるので、重量が軽くて運搬その他の取扱性が良
くなる。この中空セグメントを複数個、地中に埋設して
地中壁体を形成する際に、まず、その一側面に設けてい
る凹溝部に仮管を嵌合した状態で該中空セグメントを地
中に順次直列状に埋設する。この時、凹溝部に嵌合して
いる仮管によって凹溝部に土砂が入るのを確実に防止す
ることができる。また、中空セグメントの前後壁面に連
結用ボルト挿通孔と作業員が出入り可能な透孔を設けて
いるので、作業員が中空セグメント内に入って前後の中
空セグメント同士の連結作業を行うことができ、これら
の中空セグメントは互いに連通した挿通孔間をボルト連
結することによって正確に一体的に連結される。

【００１１】次いで、この中空セグメント列の側方に隣
接して次の中空セグメントを埋設する。この時、該中空
セグメントの他側面に設けている突条部で先に埋設した
中空セグメントの上記凹溝部に嵌合している仮管を押し
出し撤去しつつその突条部を凹溝部に係合させた状態に
して埋設する。従って、凹溝部内に土砂の侵入を防止し
ながら且つ左右の中空セグメント同士を突条部と凹溝部
との嵌合によって正確に接合させながら、先に埋設した
中空セグメント列に沿ってその側方に中空セグメントを
順次、円滑且つ精度よく圧入、埋設することができる。

【００１２】上記のようにして中空セグメント列を並列
状態に埋設すると、中空セグメントの厚みを有する壁体
が構築される。一方、左右に隣接した中空セグメント同
士を一体に連結するには、まず、互いに嵌合したこれら
の中空セグメントの突条部と凹溝部とを形成している側
板部を切除してこれらの左右中空セグメントの内部を連
通させる。この際、切除部の上下開口幅および前後開口
幅は中空セグメント内に収納している継手部材の上下面
間の高さ寸法及び前後幅よりも夫々大きくなるように切
除しておく。

【００１３】次いで、一方の中空セグメント内に収納し
ている継手部材の端部を他方の中空セグメント内に挿入
して該端部を他方の中空セグメントの上下壁面に固着し
ている上下ブラケット間に介入させる。これらの上下ブ
ラケットの対向面は互いに平行な平坦面に形成され、そ
の対向面に上記継手部材の上下面を摺接状態に介在させ
る。なお、このブラケットは中空セグメントの上下壁面
のいずれか一方に設けておいてもよい。

【００１４】一方の中空セグメント側からの継手部材を
他方の中空セグメントの上下ブラケット間に介入させる
時に、継手部材の周囲と切除部の開口周縁との間の隙間
が設けられるので、左右の中空セグメント同士が前後方
向や上下方向に多少ずれた状態で接合していても、或い
は、一方の中空セグメントに対して他方の中空セグメン
トが僅かに上下方向に傾斜した状態で接合していても、
このようなずれや狂いを上記隙間により吸収して継手部
材の端部を上下ブラケットに正確且つ確実に沿わせた状
態で溶接又はボルトによって固着することができる。

【００１５】左右に接合した中空セグメント同士の上記
連結作業が完了した後、中空セグメントに設けている透
孔を通じて全ての中空セグメント内にコンクリートを充
填すると、中空セグメント内の継手部材がコンクリート
内に埋設されてその上下面に突設しているシアコネクタ
を介してコンクリートと強固に一体化すると共にこの継
手部材を介して隣接する中空セグメントとの連結が強固
となり、全体的に均一な強度を有する耐圧性に優れた壁
体を形成することができる。

【００１６】

【実施例】次に本発明の具体的な実施例を図面について
説明すると、図１は本発明の中空セグメント１によって
形成した地下構造物の天壁部の壁体Ｗを示すもので、こ
の壁体Ｗの両側端下面側の両側壁部W₁、W₁と底壁部W₂と
は現場打ちコンクリートによって形成されて大断面の空
間を有する地下構造物を築造しているものである。

【００１７】図２は中空セグメント１を示すもので、こ
の中空セグメント１は鋼板製でボックス形状に形成され
てあり、平面横長長方形であって形成すべき壁体Ｗを複
数分割した幅と長さを有していると共に厚さ（高さ）が
２メートル程度に形成されている。そして、その一側面
の中央部に断面コ字状の突条部２を、該一側面に平行な
他側面の中央部に該突条部２が嵌合可能な大きさの断面
コ字状の凹溝部３をそれぞれ全長に亘って形成してい
る。さらに、この中空セグメント１の内部において、そ
の一側方に一定長のＩ形鋼よりなる継手部材４を収納し
てあり、他側方には中空セグメント１の上下板1a、1bの
対向面に夫々溶接等によって固着した断面Ｔ字状の鋼製
上下ブラケット５、６を配設してある。

【００１８】上記継手部材４の互いに平行な上下面にお
いて、その他側端部4aを除く部分には図７、図９に示す
ように、ボルト形状の突起部材からなる複数個のシアコ
ネクタ７を一体に突設している。この継手部材４の長さ
は、中空セグメント１、１同士を接合した際に、その対
向側端部内に継手部材４の左右半部分が夫々配設される
程度の長さであればよく、又、上下シアコネクタ７、７
の突出端面間の高さ寸法は中空セグメント１の上下板1
a、1bの対向面間の寸法よりも小さく形成されている。
さらに、継手部材４のシアコネクタ７を突設していない
他側端部4aは、その上下面間の寸法を上記突条部２の上
下対向内面間の間隔よりも小さく形成していると共に該
端部4aの上下縁部に長さ方向に一定間隔毎に複数個のボ
ルト取付孔８を穿設している。このように構成した継手
部材４は、中空セグメント１内に数個（図においては３
個）収納されているが、１個であってもよい。

【００１９】一方、中空セグメント１の上下板1a、1bに
固着した上記上下ブラケット５、６の互いに平行な対向
面間の間隔は、継手部材４の上下面間の寸法に略等しく
形成して継手部材４が対向面に摺接しながら挿入可能に
構成している。これら上下ブラケット５、６は上記継手
部材４の数に対応して数対、設けているが、ブラケット
５、６の上下対向面を幅広く形成しておいて、数個の継
手部材４の端部を並列状態に挿入させるように構成して
おいてもよい。上下ブラケット５、６にはその両縁部に
継手部材４に穿設している上記ボルト取付孔８と同一間
隔毎に複数個のボルト取付孔９を穿設している。

【００２０】中空セグメント１の上下板1a、1bは無孔の
平坦な面に形成されている一方、横長長方形状の鋼板よ
りなる前後壁面1c、1dの中央部には作業員が出入り可能
な大きさの横長長方形状透孔10、11を設けてあり、さら
に、該透孔10、11の周囲に複数個のボルト挿通孔12、13
を夫々穿設している。

【００２１】このように構成した中空セグメント１を地
中に埋設する際に、図３に示すようにその他側面側の凹
溝部３内にこの溝長と同一長さを有し、且つ縦幅がセグ
メントＡの厚みに等しい鋼製角パイプよりなる仮管14を
添設しておく。この仮管14の一側面中央部には全長に亘
って上記凹溝部３と同一形状を有する断面コ字状のガイ
ド条部14a を突設してあり、該ガイド突条部14a を上記
凹溝部３にパッキン15（図７に示す）を介して摺動自在
に嵌合させてある。なお、パッキン15は凹溝部３の対向
面に全長に亘って固着して地下水や土砂が内部に浸入す
るのを防止するものである。

【００２２】次に、この中空セグメント１を地中に縦横
に並列状態で埋設して互いに連結することにより地下構
造物の壁体Ｗを築造する方法について説明する。まず、
図４に示すように、地下構造物の壁体Ｗの長さ間隔を置
いて、地盤に発進立坑Ａと到達立坑Ｂとを掘削したの
ち、発進立坑Ａ側から中空セグメント１の厚みに等しい
縦幅と横幅（両幅とも２メートルの寸法を有する）に形
成されている断面矩形状の鋼製角パイプからなるパイロ
ット管16を到達立坑Ｂに向かって水平方向に圧入して築
造すべき壁体Ｗの断面位置の一部に埋設する。このよう
な埋設方法は公知のように適宜な掘削機（図示せず）に
パイロット管16を後続させながら行うことができる。
又、壁体Ｗの長さが大きい場合、一定長のパイロット管
16を順次直列状に継ぎ足しながら埋設すればよい。な
お、パイロット管16の上面には鋼製縁切板17が載置され
てあり、最前部のパイロット管16上の縁切板17のみをそ
の先端を該パイロット管16の先端に溶接等によって固着
して到達縦坑Ｂ側に達した時にその固着部を切断等によ
って分離させるようにすると共に後続するパイロット管
16上の縁切板17同士は圧入時に溶接等によって連結して
おく。

【００２３】パイロット管16を両立坑Ａ、Ｂ間に亘って
貫通状態に埋設されると、該パイロット管列の側方にお
ける計画壁体Ｗの断面位置の一部に上記同様にしてパイ
ロット管16を埋設し、この作業を繰り返し行って計画壁
体Ｗの断面位置に図５に示すように、パイロット管16を
並列状態に埋設する。

【００２４】次いで、これらのパイロット管16と中空セ
グメント１との置換作業を行う。まず、凹溝部３に仮管
14を嵌合させた状態でこの中空セグメント１の前端面を
発進立坑Ａ内において、数本のパイロット管16の後端面
に当接させると共に、到達立坑Ｂ側の最前部のパイロッ
ト管16の上面に載置している縁切板17の先端を該パイロ
ット管16から切り離し、さらに、発進立坑Ａ側の最後部
のパイロット管16上の縁切板17を発進立坑Ａの壁面部分
にターンバックル18等によって固定する。この状態にし
て図４に示すように、発進立坑Ａ内に設置した押圧ジャ
ッキ19のロッドを伸長させて中空セグメント１の後端面
を押圧することにより発進立坑Ａの壁面に反力をとって
中空セグメント１を仮管14と一体的に推進させると、中
空セグメント１を介してパイロット管16の前端側が到達
立坑Ｂ内に押し出されると共に中空セグメント１と仮管
14とがパイロット管16の推進跡に埋入する。

【００２５】この時、パイロット管16の上面に配設した
縁切板17は固定されているので、上方側の地盤を移動さ
せることなくこの縁切板17の下面にパイロット管16と中
空セグメント１及び仮管14との上面を摺接させながら円
滑に推進させることができる。なお、仮管14を別な押圧
ジャッキによって推進してもよいが、予め、中空セグメ
ント１の凹溝部３の溝底壁面にボルト取付孔（図示せ
ず）を設けておき、このボルト取付孔とガイド突条部14
a に設けているボルト取付孔（図示せず）間をボルト結
合によって一体化しておき、埋設後、ボルトを撤去する
ように構成しておいてもよい。このボルト結合は、仮管
14内又は中空セグメント１内に作業員が入って行うこと
ができる。ボルトの撤去作業も同様である。

【００２６】こうして、一枚の仮管付中空セグメント１
が埋設されると、この中空セグメント１の後端面に次の
仮管付中空セグメント１の前端面を接合し、その接合し
た前後壁面1c、1dのボルト挿通孔12、13間をボルト（図
示せず）によって一体的に連結したのち、上記同様に押
圧ジャッキ19により推進、埋設させ、以下、順次、仮管
付中空セグメント１を継ぎ足し連結しながら推進させ
て、パイロット管16と仮管付中空セグメント１とを置換
する。さらに、両立坑Ａ、Ｂ間に亘って仮管付中空セグ
メント１を直列状に埋設したのち、この埋設仮管付中空
セグメント１の側方に隣接して次の仮管付中空セグメン
ト１の埋設作業を行う。

【００２７】この作業は、先に埋設した中空セグメント
１の凹溝部３に嵌合させている仮管14のガイド突条部14
a の後端面に次に埋設すべき中空セグメント１の突条部
２の前端面を突き合わせ状態にして該中空セグメント１
を数本のパイロット管16の後端面に当接させ、しかるの
ち、押圧ジャッキ19によって押し進める。この際、凹溝
部３に仮管14がボルトで連結している場合には、そのボ
ルトを除去しておく。そうすると、埋設すべき中空セグ
メント１の突条部２側の前端面で先に埋設した仮管14が
押し進められると共に該仮管14によって被覆されていた
埋設中空セグメント１の凹溝部３に次の中空セグメント
１の突条部２が係合し、且つパッキン15に摺接しながら
前進する。

【００２８】この中空セグメント１の埋設が完了する
と、再び仮管付中空セグメント１を後続させてボルトに
より連結したのち推進、埋設し、先に埋設した中空セグ
メント１の仮管14を到達立坑Ｂ内にパイロット管16と共
に押し出し、この作業を繰り返して既に埋設した中空セ
グメント１の側方に隣接して仮管付中空セグメント列を
両立坑Ａ、Ｂ間に亘って並列状態に埋設する。同様にし
てこの仮管付中空セグメント列の側方に次の仮管付中空
セグメント１を、既に埋設した中空セグメント１の仮管
14を突条部２で押し出しながら埋設し、以下、この作業
を繰り返し行って全てのパイロット管16の埋設跡、即
ち、地下構造物の計画壁体Ｗの断面位置に中空セグメン
ト１を縦横に並列した状態に埋設する。

【００２９】なお、計画外壁Ｗの両側端側に埋設される
中空セグメント１は、その外側端側に中空セグメント１
を並設させることがないので、その継手用としての突条
部２又は凹溝部３を設けておく必要はない。さらに、図
１においては中空セグメント１を３列状に埋設した構造
を示しているが、それ以上の複数列であっても上記の手
順によって埋設することは勿論である。

【００３０】そして、中空セグメント１の埋設後、左右
に隣接する中空セグメント１、１内に作業員が入ってこ
れらの中空セグメント１、１の互いに嵌合した突条部２
と凹溝部３間を継手部材４により一体に連結する。この
連結作業は、まず、図７図に示す一方の中空セグメント
１の突条部２の端板2aと、この端板2aに接した他方の中
空セグメント１凹溝部３の底面板3aとを突条部２の上下
対向内面間の寸法に相当する縦幅だけ、全面的に切除し
て取り除き、これらの中空セグメント１、１の内部を互
いに連通させた開口部20を設ける（図８参照）。

【００３１】次いで、一方の中空セグメント１内に収納
している継手部材４の端部4aを開口部20を通じて他方の
中空セグメント１内に挿入して該端部を他方の中空セグ
メント１の上下壁面に固着している上下ブラケット５、
６間に介入させる。この作業は中空セグメント１内に継
手部材４を支持するためのジャッキ等の扛上装置や押圧
装置を搬入し、これらの装置を使用して行うことができ
る。この際、継手部材４の他側端部4aの周面と開口部20
との間には継手部材４が上下左右に移動調整可能な充分
な隙間21が設けられるので、左右の中空セグメント１、
１同士が上下方向や前後方向に多少のずれが生じた状態
で接合していても、或いは一方の中空セグメント１の平
面方向に対して他方の中空セグメント１が僅かに角度的
な狂いが生じた状態で接合していても、このようなずれ
や狂いを上記隙間21により吸収させながら継手部材４の
端部4aを上下ブラケット５、６の対向面に平行に向けて
正確に且つ容易にこれらの上下ブラケット５、６間に挿
入することができる。なお、上下ブラケット５、６と継
手部材４の端部4aの上下面との間に隙間が生じる場合に
は、その隙間に適宜な材料を介在させればよい。

【００３２】継手部材４の端部4aを上下ブラケット５、
６間に挿入すると、その挿入方向の最前側に突設してい
るシアコネクタ７が段状に屈折した突条部２の基端部の
垂直な壁面2bに当接してそれ以上の挿入が阻止されると
共にこの当接によって端部4aを上下ブラケット５、６の
対向面の所定位置に位置合わせをした状態で接合させ
る。この状態にして互いに合致した継手部材４の端部側
のボルト取付孔８とブラケット側の取付孔９と間にボル
ト22を挿通してナットを螺締させることにより継手部材
４を上下ブラケット５、６に一体的に連結させる。な
お、このボルトよる連結ではなく、継手部材４の端部を
上下ブラケット５、６に溶接によって一体に連結しても
よい。また、ブラケット５、６を上下に設けることなく
いずれ一方、好ましくは、下側にのみ設けておいてよ
い。

【００３３】このように前後に接合した中空セグメント
１、１同士は埋設時に順次ボルトによって連結され、左
右に接合した中空セグメント１、１同士は上記のように
ブラケット５、６に継手部材４を固着することにより連
結されて地下構造物の中空壁体が構築される。この中空
壁体の構築後、或いは、上記左右に接合した中空セグメ
ント１、１同士の連結後、中空セグメント１の内部に必
要に応じて補強鉄筋を組立て、しかるのち、その内部に
互いに連通した前後壁面1c、1dに穿設している透孔５、
６を通じてコンクリート23を打設、充填する。このコン
クリート23の充填によって中空セグメント１内の継手部
材４がコンクリート23内に埋設されてその上下面に突設
しているシアコネクタ７を介してコンクリートと強固に
一体化すると共にこの継手部材４を介して隣接する中空
セグメント１との連結が強固となり、全体的に均一な強
度を有する耐圧性に優れた壁体Ｗが築造される。

【００３４】次いで、両立坑Ａ、Ｂをさらに深く掘削し
てこの壁体Ｗの下方地盤を適宜な掘削手段により掘削し
ながら支保工Ｃ（図１に示す）を建て込み、地下構造物
の両側壁部W₁、W₁と底壁部W₂とを現場打ちコンクリート
によって形成して地下構造物を構築するものである。な
お、中央部の支保工C₁は構築完了後、撤去する。

【００３５】また、地下構造物の両側壁部W₁、W₁と底壁
部W₂も上記のようにしてパイロット管16と中空セグメン
ト１との置換により築造してもよく、また、地下構造物
の外殻は図１に示したように、断面矩形状に限らず、断
面円形状の外殻であっても上記同様にして築造し得るも
のである。

【００３６】なお、地下構造物の壁体Ｗの築造時におい
て、上記実施例では該壁体Ｗの断面位置にパイロット管
16を互いにその側面同士を密接状態にして並設したの
ち、中空セグメント１と置換したが、パイロット管16を
仮管付中空セグメント１の幅間隔毎に左右に離間した状
態で両立坑Ａ、Ｂ間に貫通状態で埋設しておき、これら
のパイロット管16、16間の土砂を適宜な掘削機により掘
削しながら該掘削機に後続させて中空セグメント１を推
進、埋設させることによりパイロット管16と置換しても
よい。

【００３７】

【発明の効果】以上のように本発明の中空セグメントに
よれば、鋼板よりなる中空ボックス形状に形成している
ので、重量が軽減して運搬その他の取扱性、及び施工性
が良好となると共に左右に隣接するセグメント主体を対
向側面に設けている突条部と凹溝部との嵌合によって正
確に接合させることができ、その上、中空セグメントの
前後壁面に連結用ボルト挿通孔と作業員が出入り可能な
透孔を設けているので、前後に接合した中空セグメント
同士をボルトによって強固に結合できると共にその結合
作業は中空セグメント内に作業員が入って容易に行うこ
とができる。

【００３８】また、左右に隣接する中空セグメント同士
を連結する本発明方法において、地中に中空セグメント
を埋設する際に、中空セグメントの他側面凹溝部に仮管
を嵌合させた状態で埋設するので、凹溝部を該仮管によ
り保護して溝内に土砂等が浸入するのを阻止しながら埋
設することができ、その上、埋設された中空セグメント
の側方に次の中空セグメントを埋設する時に、該中空セ
グメントの突条部で先に埋設した中空セグメントの凹溝
部に嵌合している仮管を押し出し撤去しつつその突条部
を凹溝部に係合させた状態にして埋設するので、壁体形
成予定部分に中空セグメントを正確に埋設することがで
きると共にこれらの突条部と凹溝部との間に土砂が入る
のを仮管によって防止しながらセグメントを円滑に推進
させることができる。

【００３９】また、中空セグメントの埋設後、中空セグ
メントに設けている透孔から作業員が中空セグメント内
に入って突条部と凹溝部とを形成している側板部の切除
を行うことにより、左右の中空セグメントの内部間を連
通させる開口部を形成することができ、この開口部の形
成後、一方の中空セグメント内に収納している継手部材
の端部を該開口部を通じて他方の中空セグメントのブラ
ケットに固着することにより、中空セグメント間に継手
部材を配することができる。この際、上記開口部を継手
部材よりも大きく形成しておくことができるので、左右
の中空セグメント同士が前後方向や上下方向に多少ずれ
た状態で接合していても、或いは、一方の中空セグメン
トに対して他方の中空セグメントが僅かに上下方向に傾
斜した状態で接合していても、継手部材の端部をブラケ
ットに対する取付個所に正確且つ容易に添設して溶接又
はボルトによって固着することができる。

【００４０】さらに、中空セグメント同士の上記連結作
業後、中空セグメントに設けている透孔を通じて全ての
中空セグメント内にコンクリートを効率よく充填するこ
とができ、このコンクリートの充填によって中空セグメ
ント内の継手部材がコンクリート内に埋設されてその上
下面に突設しているシアコネクタを介してコンクリート
と強固に一体化すると共にこの継手部材を介して隣接す
る中空セグメントとの連結が強固となり、全体的に均一
な強度を有する耐圧性に優れた壁体を形成することがで
きるものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】地下構造物の外殻の簡略縦断正面図、

【図２】鋼製中空セグメントの一部切欠斜視図、

【図３】仮管を取付けた状態の中空セグメントの簡略斜
視図、

【図４】パイロット管と中空セグメントとを置換してい
る状態の簡略縦断側面図、

【図５】パイロット管を埋設した状態の簡略縦断正面
図、

【図６】中空セグメントと置換する場合を説明するため
の簡略縦断正面図、

【図７】左右中空セグメントを接合させた状態を示す要
部の縦断正面図、

【図８】左右中空セグメントを継手部材によって連結し
た状態を示す縦断正面図、

【図９】そのＸーＸ線における縦断側面図。

【符号の説明】

１ 中空セグメント ２ 突条部 ３ 凹溝部 ４ 継手部材 ５、６ ブラケット ７ シアコネクタ 10、11 透孔 14 仮管 20 開口部 23 コンクリート

フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) E21D 9/04 E21D 11/14

Claims (4)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 平面四角形状の鋼製中空ボックスよりな
   る中空セグメントの一側面に突条部を、他側面に該突条
   部に係合可能な形状を有する凹溝部を夫々全長に亘って
   形成し、この中空セグメントの中空内部の一側方に複数
   のシアコネクタを突設してなる継手部材を収納している
   と共に中空内部の他側方に、隣接する中空セグメントの
   継手部材の端部を連結させるブラケットを固着してなる
   ことを特徴とする中空セグメント。
2. 【請求項２】 ブラケットは中空セグメントの上下壁面
   の対向面に固着してあり、これらの上下ブラケットの対
   向面に、この中空セグメントに隣接する中空セグメント
   側から上記継手部材のシアコネクタを突設していない端
   部を介入させて上下ブラケットに継手部材の端部を溶接
   又はボルトにより一体に固着させるように構成したこと
   を特徴とする請求項１記載の中空セグメント。
3. 【請求項３】 中空セグメントの前後壁面に連結用ボル
   ト挿通孔と作業員が出入り可能な透孔を設けていること
   を特徴とする請求項１又は請求項２記載の中空セグメン
   ト。
4. 【請求項４】 一側面に突条部を、他側面に該突条部に
   係合可能な形状を有する凹溝部を夫々全長に亘って形成
   した平面四角形状の鋼製中空ボックスよりなる上記中空
   セグメントを複数個、地中に埋設して地中壁体を形成す
   るに際して、互いに接合した中空セグメント同士を連結
   する方法であって、中空セグメントの凹溝部に仮管を嵌
   合した状態で該中空セグメントを地中に順次直列状に埋
   設すると共にこの中空セグメント列の側方に隣接して次
   の中空セグメント列を埋設する際に、埋設すべきこの中
   空セグメントの突条部で先に埋設した中空セグメントの
   凹溝部に嵌合している仮管を押し出し撤去しつつその突
   条部を凹溝部に係合させた状態にして埋設したのち、互
   いに接合した左右の中空セグメントの突条部と凹溝部と
   を形成している側板部を切除してこれらの左右中空セグ
   メントの内部を連通させ、しかるのち、一方の中空セグ
   メント内に収納している継手部材の端部を他方の中空セ
   グメント内に挿入して該端部を他方の中空セグメントの
   ブラケットに固着し、次いで中空セグメント内部にコン
   クリートを充填することを特徴とする中空セグメントの
   連結方法。