JP3121872B2 - 蜂蜜発酵酒の製造方法 - Google Patents

蜂蜜発酵酒の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は蜂蜜発酵酒の製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】蜂蜜はビタミン類、ミネラル類といった栄
養成分を豊富に含んでおり、昔から健康食品として人々
に親しまれてきた。特に最近では養蜂技術あるいは回収
した蜂蜜の精製技術が進み、不純物をほとんど含まない
蜂蜜が製造されている。そして消費者はそのままの香味
あるいは他の食品と混合して蜂蜜を楽しむことが出来る
ようになっている。一方蜂蜜を発酵させて得られる酒
(Mead)は、ワインやビールと同様に古代より存在して
おり、現在でもヨーロッパを中心に飲まれている。しか
し地酒的なイメージが強く、またそれが特有の蜂蜜臭を
もった重い酒質であることから、日本ではほとんど普及
していないのが現状である。また蜂蜜のみを原料として
発酵させることはとても難しい。そこで通常、蜂蜜を水
で希釈し酵母を加えて発酵させる方法がとられるが、本
方法では、アルコール分2〜3%で発酵が停止する。こ
のため、生酸菌の侵入により酸敗してしまうという問題
がある。そこで発酵を容易に進行させるために蜂蜜以外
に果汁や麦芽、穀類などが加えられている。しかしなが
ら蜂蜜にこのような原料を添加することは、蜂蜜本来の
純粋な香りや味を消すこととなり好ましくない。蜂蜜だ
けでは発酵がスムーズに進行しない原因としては、発酵
の主役である酵母に必要な栄養分の不足によるものが大
きいと考えられる。そのため最初に添加した酵母が十分
に増殖せず、酵母の発酵力が衰えるために発酵が途中か
ら行われないのである。このことは特開昭62-272866 に
おいて既に報告されており、そこでは精製された特定の
アミノ酸を添加すれば、スムーズに発酵が行なわれ、良
好な蜂蜜酒が得られるとされている。しかしながらアミ
ノ酸添加による香味への影響や、その添加物が非常に高
価であることから価格面での問題が指摘されている。そ
のため果汁や麦芽などの他の原料あるいは添加物を加え
ることなく、発酵しにくい蜂蜜を完全に発酵させ蜂蜜の
持つ好ましい香り、味をそのまま保持した蜂蜜酒を安価
に製造する方法の確立が求められていた。
【0003】
【目的】本発明の目的は、酵母による発酵を促進させる
ような他の原料を使用しなくても、蜂蜜由来の香味と発
酵成分がよく調和した蜂蜜酒を効率的に製造する方法を
提供する点にある。
【0004】
【構成】本発明者らは、蜂蜜由来の香味を有する蜂蜜酒
を他の原料を添加せずに、効率的に製造する方法につい
て検討したところ、その結果、蜂蜜を水で希釈して発酵
させる際に、蜂蜜水1ml当り酵母を4×10個以上
といった通常のビール製造時に添加する酵母量の3〜8
倍量という多量の酵母を添加すると発酵が途中で停止す
ることなく、順調に発酵が進行することを見出し本発明
を完成するに至ったものである。すなわち、本発明は蜂
蜜水1mlあたり酵母を4×10〜12×10ce
lls添加してアルコール発酵を行うことを特徴とする
蜂蜜発酵酒の製造方法に関する。このときに添加する酵
母は、ワイン酵母、ビール酵母、清酒酵母等の醸造用酵
母を用いることができ、さらにこれらの2種以上の酵母
を混合して使用してもよい。これらの酵母は純粋培養法
により製造してもよいが、ビール、ワイン醸造時におい
て発酵の副産物として生産されるものを使用することも
可能である。この場合必要な多量の酵母を容易に手にい
れることができ、通常一部しか利用価値のなかった余剰
酵母を、有効に利用することができるという利点があ
る。
【0005】蜂蜜にはレンゲ蜂蜜、アカシア蜂蜜など花
起源によって各種の蜂蜜があるが、原料として使用され
る蜂蜜はいずれの蜂蜜でもよい。また、原料として使用
する蜂蜜は、採取された花、また産地により香味に違い
があるため、種類の異なった蜂蜜を用いることによっ
て、それぞれ特徴のある製品が得られる。さらに、目的
に応じて数種類の蜂蜜を混合して使用してもよい。
【0006】本発明を実施するに際しては、蜂蜜を水で
希釈し使用されるが、その濃度は、目的とする製品のア
ルコール分、糖分の濃度により計算して決定されるが、
その濃度が低すぎると発酵終了時のアルコール濃度が低
くなり、好ましい発酵成分の生成も抑えられるため、Br
ix 10〜30の範囲とすることが好ましい。
【0007】また、該蜂蜜水には任意の食品添加剤、例
えば乳酸等の防腐剤を含有させてもよく、さらに、所望
に応じ、pH調整、硬度調整、加熱殺菌の処理を発酵に先
立って行ってもよい。
【0008】本発明における発酵工程は、前記のように
多量の酵母を使用するためその増殖を必要としないた
め、20℃以下の低温で行うことができ、好ましい香気成
分を十分に生成させることができる。発酵液のアルコー
ル濃度が目的とするアルコール濃度となったところで急
冷し、発酵を終了させる。急冷は−5〜5℃まで行うの
が好ましい。急冷した発酵液は、必要に応じ、そのまま
保持し香味の安定化(熟成)を行ってもよい。得られた
蜂蜜液は、ろ過等の清澄化手段によって清澄化し、その
まま飲用に供してもよいが、特に、清澄化前に0.05〜0.
20%程度の活性炭を加えて、酵母の多量添加によって生
ずる好ましくない香味を除くことによって、香味が特に
優れた蜂蜜酒を製造することができる。活性炭処理して
得られた蜂蜜酒は、使用した蜂蜜の種類あるいは活性炭
の添加量によって異なるが、無色から薄いこはく色の非
常に透明感のあるものである。この場合、分光光度計に
よる試料層の厚さを10mmとしたときの430nm及
び530nmにおける吸光度の値は0.05以下及び
0.03以下を呈していることに特徴がある。その中で
も、特に430nmにおける吸光度が0.01以下、5
30nmにおける吸光度が0.01以下を示すことが好
ましい。
【0009】本発明の蜂蜜酒は、酵母による発酵を促進
させるような他の原料を使用しなくても十分な発酵が生
じることによって得られたものであり、かつ純粋な蜂蜜
の香味と発酵成分がよく調和したものである。このよう
なタイプの蜂蜜酒は従来知られていなかった。本発明に
より得られた蜂蜜酒は、アルコール分が5%以上であ
り、かつ香気成分として少なくとも酢酸エチル、酢酸イ
ソアミル、カプロン酸エチル、カプリル酸エチルおよび
酢酸フェネチルを含有するものである。
【0010】本発明の蜂蜜酒はそのまま飲用してもよい
が、これをベースに、果汁、酸味料あるいは蜂蜜を含め
た糖類を加えて味感を調整し、これを水あるいは炭酸水
等で希釈した低アルコール飲料は、女性やお年寄りなど
比較的アルコールに弱い人にも気軽に楽しめるものであ
る。
【0011】
【実施例】
実施例1 アカシアの蜂蜜を水で希釈してBrix 16の蜂蜜水を調整
し、80℃、30分殺菌処理して冷却後、酵母(サッカロミ
セス セレビシエ)を45×106個/mlとなるように添加
して、15℃で発酵を行った。対照として酵母を15×106
個/mlとなるように添加して同様な発酵試験を行った。
図1はその発酵経過を示すグラフであり、表1は発酵液
の香気成分値である。対照の試験では16日間発酵を行っ
ても5%弱のアルコールしか生成せず、多くの糖分が残
存していた。これに対し酵母の多量添加を実施した試験
では、発酵がスムーズに進行して、8日間でアルコール
濃度が8%以上となり、香気成分も比較対照の蜂蜜発酵
液に比較して著しく多量に生成しており、特にアルコー
ルの香気成分として重要な酢酸イソアミルエステルを多
量に含有している。 実施例2 実施例1で得られた約8%のアルコールを含む蜂蜜発酵
液に、活性炭を0.1%となるように添加して30分接触さ
せた後、珪藻土ろ過を行って蜂蜜酒を得た。得られた蜂
蜜酒の分析値を表2に示す。外観は非常に透明であり、
清涼感のあるものであった。また、官能特性を知るため
に、活性炭処理を行わないものを対照として習熟した官
能検査パネルによる嗜好試験を行った。結果は表2に示
すように明らかに活性炭処理を行ったものの方が風味お
よび香気ともに非常に優れていた。 実施例3 実施例2で得られた蜂蜜酒360mlに、リンゴ果汁100g、
クエン酸2g、蜂蜜36gそして炭酸水530mlを加えて、
アルコール分3%の低アルコール飲料を調製した。この
酒は蜂蜜酒の香味とリンゴ果汁がよく調和した、非常に
飲みやすい嗜好性の高い飲料であった。
【0012】
【表1】
【0013】
【表2】 A430:430nmにおける吸光度 A530:530nmにおける吸光度A530
【0014】
【表3】
【0015】
【効果】本発明は、蜂蜜以外に他の原料を添加すること
なく多量の酵母を使用して発酵を行い、蜂蜜由来の香味
と発酵成分がよく調和した、新しいタイプの蜂蜜発酵酒
が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】アカシアの蜂蜜と水で希釈したBrix 16の蜂蜜
と、酵母(サッカロミセス セレビシエ)を45×106
/mlとなるように添加したものの本発明の発酵試験例
と、上記酵母を15×106個/mlとなるように添加した発
酵試験例を対照試験例として示すものである。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12G 1/00 - 3/14 JICST/JAFIC(JOIS)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 蜂蜜水1mlあたり4×10〜12×
    10個の酵母を添加してアルコール発酵を行うことを
    特徴とする蜂蜜発酵酒の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記蜂蜜水の濃度がBrix10〜30
    のものである請求項1記載の蜂蜜発酵酒の製造方法。
  3. 【請求項3】 アルコール発酵終了後あるいは熟成終了
    後活性炭処理を行うものである請求項1または2記載の
    蜂蜜発酵酒の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3記載の製造方法により得ら
    れた蜂蜜発酵酒に、果汁、酸味料、糖類(蜂蜜を含む)
    等の香味料及び水あるいは炭酸水を添加することを特徴
    とする蜂蜜発酵酒の製造方法。
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