JP3114511B2 - 包装用積層体 - Google Patents

包装用積層体

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JP3114511B2 JP06201800A JP20180094A JP3114511B2 JP 3114511 B2 JP3114511 B2 JP 3114511B2 JP 06201800 A JP06201800 A JP 06201800A JP 20180094 A JP20180094 A JP 20180094A JP 3114511 B2 JP3114511 B2 JP 3114511B2
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敏則 町田
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、食品包装,医薬品包
装,タバコ包装,電子材料包装,化粧品包装,産業資材
包装等に用いられる包装用積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、食品包装,医薬品包装,タバコ包
装,電子材料包装,化粧品包装,産業資材包装等の包装
分野では、リサイクルや廃棄処理など地球環境に対する
安全性の要求が高まっている。この一例として、PVD
C(ポリ塩化ビニリデン)やPVC(ポリ塩化ビニル)
は、廃棄焼却時に酸性雨の原因となりうる塩化水素ガス
を発生するため、包装材料としての使用を見直されてい
る。同時に包装フィルムに対する印刷分野でも、トルエ
ンやメチルエチルケトン等の有機溶剤を使用した溶剤系
グラビアインキは、その印刷加工中に大量の有機溶剤を
蒸発乾燥するため、作業員に対する作業環境,また地球
環境の点からその使用を見直され、水性グラビアインキ
の使用必要性が強く求められている。
【0003】しかし、水性インキは水を含んでいるた
め、ポリエチレンテレフタレート等の疎水性プラスチッ
クフィルムには印刷可能であるが、ナイロン,セロハ
ン,ポリビニルアルコール,エチレン・ビニルアルコー
ル共重合体/エチレン・酢酸ビニル共重合体けん化物
(EVOH)等の親水性のプラスチックフィルムには、
フィルム自体が膨潤し伸びてしまうため、単色印刷では
問題ないが重ね印刷加工ではフィルムの伸びによるズレ
が発生し、適切な印刷が行えない。
【0004】実開平5−44526号公報には、けい素
酸化物を必須成分とするドライプレーティング層を1層
以上設けたプラスチックフィルムに水性被覆剤を塗布ま
たは印刷してなる包装用積層体が開示されている。この
考案によれば、ナイロン,ポリビニルアルコール,EV
OH等の親水性のプラスチックフィルムに対して、フィ
ルムの膨潤による伸びを引き起こすこと無しに水性イン
キを印刷することができるが、けい素酸化物が示す褐色
のため、印刷した色が変色してしまうという問題があっ
た。具体的に親水性プラスチックフィルムにけい素酸化
物を蒸着し、更にその上に白色の水性グラビアインキを
印刷すると、けい素酸化物の蒸着層のために、親水性プ
ラスチックフィルムに対する印刷は問題なく行えるが、
できあがった印刷フィルムを親水性プラスチックフィル
ム側から見てみると、白色が薄い黄色に変色してしまっ
ている(色再現性が悪い)。これは包装用積層体のデザ
イン上の制限となり、かなり大きな問題となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、水性
インキを用いて製造されるにもかかわらず、色ズレおよ
び変色の認められない(色再現性が良い)包装用積層体
の提供にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、プラス
チックフィルム(A)の片面または両面に、真空薄膜形
成技術によって、けい素酸化物及び金属フッ化物からな
る薄膜層(B)を形成し、更にその上に水性インキ層
(C)を形成してなる包装用積層体により達成できる。
【0007】プラスチックフイルム(A)としては、ナ
イロン,ポリビニルアルコール,セロハン,エチレン・
ビニルアルコール共重合体/エチレン・酢酸ビニル共重
合体けん化物(EVOH)等の親水性プラスチックフィ
ルム、ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレン−
2,6−ナフタレート,ポリエチレン,ポリプロピレ
ン,ポリカーボネート,ポリスチレン,フッ素樹脂等の
疎水性フィルムが挙げられるが、親水性プラスチックフ
ィルムを用いた場合に、特に高い効果が得られる。プラ
スチックフイルム(A)の中では、熱固定されたフィル
ムが好ましく、二軸延伸フィルム等は特に好適に用いら
れる。プラスチックフィルム(A)は、接着性付与のた
めに予めコロナ処理やプラズマ処理、火炎処理されてい
るものでも構わない。また、予め界面活性剤系や高分子
電解質系等の有機系の易接着剤が塗工されているもので
も構わない。プラスチックフィルム(A)の厚さは、用
途により種々であるが6〜50μの範囲であれば良く、
特に好ましくは12μ〜25μである。
【0008】薄膜層(B)は、真空蒸着,イオンプレー
ティング,スパッタリング等の一般的にPVDと呼称さ
れる真空薄膜形成技術によって、プラスチックフィルム
(A)の片面または両面に形成される。真空蒸着の加熱
方法としては、蒸着中にスプラッシュと呼称される蒸着
飛沫が発生しなければ、また支障なく取り除ける程度少
なければ特に制限はなく、高周波誘導加熱、抵抗加熱、
電子線加熱などの従来公知の加熱方法を用いることがで
きる。また、PVD方式は、巻き取り連続方式,枚葉方
式どちらでもよい。真空蒸着の蒸発源は一般的なルツボ
方式でもかまわないが、特開平1−252768号公報
に開示される蒸発原料を連続的に供給排出する方式も適
用できる。
【0009】薄膜層(B)を構成するけい素酸化物は、
SiOX (X=1.0以上、2.0未満)で称される範
囲内であれば特に限定されず、SiO,Si2 3 ,S
34 等が含まれる。また、物性に悪影響のない範囲
であれば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、フォ
ルステライトやステアタイトと呼称される酸化マグネシ
ウムと酸化けい素との共酸化物を含んでも構わない。け
い素酸化物として、けい素酸化物とマグネシウム酸化物
やけい素酸化物とマグネシウム酸化物の共酸化物を含む
混合原料を使用する場合、その組成比は、けい素酸化物
/マグネシウム酸化物または共酸化物=99.5〜80
モル%/0.5モル%〜20モル%程度である。
【0010】薄膜層(B)を構成する金属フッ化物とし
ては、フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化
ストロンチウムおよびフッ化バリウム等のアルカリ土類
金属のフッ化物,アルカリ金属のフッ化物,フッ化アル
ミニウム等が挙げられる。この中ではアルカリ土類金属
のフッ化物が好ましく、特にフッ化マグネシウム,フッ
化カルシウムが好ましい。特に色再現性と、ガス,水蒸
気,フレーバー等のバリヤー性とを両立したいときはア
ルカリ土類金属のフッ化物を用い、色再現性だけでよい
場合はアルカリ金属のフッ化物やフッ化アルミニウムを
用いる。
【0011】金属フッ化物としてアルカリ土類金属のフ
ッ化物を用いた場合に、ガスや水蒸気,フレーバーのバ
リヤー性能が向上する理由は、以下の様に考えられる。
けい素酸化物単独の薄膜層(B)における水分(水蒸
気)の透過は、薄膜層(B)の物理的な穴を通じてでは
なく、その薄膜層(B)に溶解するような形で起こると
推定される。つまり、薄膜層(B)はSiOX (xは
1.0以上,2.0未満)であり、完全な酸化状態(S
iO2 )になっておらず、シリコン原子に対し酸素原子
が不足しているため、この自由なシリコン原子の結合
(非共有電子対)を用いて、水分(水蒸気)が透過する
と推定される。この自由なシリコン原子の結合に−アル
カリ土類金属−Fを結合させることにより、自由なシリ
コン原子の結合を少なくし、結果的に水蒸気バリヤー性
が向上すると推定される。
【0012】薄膜層(B)を構成するけい素酸化物/金
属フッ化物の組成比は、それぞれ99.5〜80モル%
/0.5〜20モル%の範囲が好ましく、特に95〜9
0モル%/5〜10モル%の範囲が好ましい。
【0013】プラスチックフィルム(A)上に形成され
る薄膜層(B)は、結果的に積層状態の時に、けい素酸
化物と金属フッ化物が化合または混在している状態で有
れば良く、形成される膜の原料はけい素酸化物,金属フ
ッ化物,シリコン,有機けい素化合物等の無機化合物や
有機化合物の単独または混合物の何れでも構わない。つ
まり、けい素酸化物と金属フッ化物の混合物を原料とし
て真空蒸着等の方法により直接プラスチックフィルム
(A)上に薄膜層(B)を形成させても、金属または有
機金属酸化物のような金属を含む化合物を酸化またはフ
ッ化させながら真空蒸着し薄膜層(B)としても、金属
フッ化物とけい素をプラスチックフィルム(A)上に真
空蒸着により形成させ、後工程でその蒸着層を酸化処理
して薄膜層(B)としても構わない。酸化処理の方法と
してはプラスチックフィルム(A)の使用可能温度範囲
内で処理を行う方法なら特に限定されず、蒸着中の酸素
ガス導入法、放電処理法、酸素プラズマ法、熱酸化法等
が挙げられる。
【0014】薄膜層(B)の厚さは使用するプラスチッ
クフィルム(A)に合わせて選定されるが、本発明にお
いては50〜1500オングストロームが好ましい。さ
らに好ましくは100〜1000オングストロームであ
り、特に300〜600オングストロームが好ましい。
また、薄膜層(B)は、2重積層や多重積層になってい
てもよく、その時異種類のけい素酸化物や金属フッ化物
を積層しても構わない。
【0015】薄膜層(B)の上に水性インキ層(C)を
形成するのに用いられる水性インキは、主溶媒が水であ
れば良く、樹脂は特に限定されない。また、水性インキ
には、アルコール等の有機溶剤が含まれていても良く、
水性インキを使用する際の希釈溶剤にアルコールが含ま
れていても構わない。水性インキの塗布量には特に制限
はなく、水性インキが一般的に塗布される範囲(乾燥後
1〜5g/m2 程度)なら問題ない。水性インキ層
(C)を形成する方法としては、グラビアコート等の塗
工方法が挙げられるが、これらに限定されない。また、
塗工速度・乾燥手段も通常使用される範囲なら問題な
い。
【0016】色再現性が良い包装用積層体が得られるの
は、水性インキによるプラスチックフィルムの膨潤を抑
える薄膜層(B)が無色透明なためである。薄膜層
(B)が無色透明な理由を、物質の持つ光線波長の透明
領域の点から以下に説明する。けい素酸化物や金属フッ
化物には光線波長によりそれぞれ透明領域があり、けい
素酸化物であるSiOの場合は500nm〜8μmであ
り、黄色〜褐色を示す波長を含む500nm未満の波長
は不透明領域である。つまり、SiOの薄膜層や粉体は
黄色〜褐色を示す。一方、金属フッ化物の場合はその透
明領域が広がり、フッ化マグネシウムの場合は210n
m〜10μmである。そのため、けい素酸化物と金属フ
ッ化物からなる薄膜層は、500nm未満の波長での光
線透過性が改善されると推定される。なお、本発明で問
題となる褐色又は黄色の色を示す波長領域は380〜4
00nm程度である。具体的には、けい素酸化物とフッ
化マグネシウムの混合物をポリエチレンテレフタレート
フィルムに真空蒸着すると、可視域である380nm以
上の波長と近紫外域である350〜380nmの波長
で、未蒸着のフィルムと同等かそれ以上の光線透過性
(透明性)が得られる。
【0017】本発明の包装用積層体を実際に包装用の材
料として用いる場合は、積層体の片側または両側に接着
剤またはアンカーコート剤を用いて熱融着性のプラスチ
ックや熱融着性でないプラスチックをドライラミネート
やウエットラミネート,押し出しラミネート,ニーラム
加工するか、またはヒートシール剤やホットメルトワッ
クスを塗工する。そして、包装用袋(パウチ)やカッ
プ,トレイの蓋,紙カートンボックス,チューブ等に加
工することにより包装に用いる。
【0018】
【実施例】以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細
に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下
の実施例に限定されるものではない。なお、実施例にお
ける試験方法は以下のとおりである。 薄膜層(B)の組成分析:パーキンエルマー社のESC
A PHI−5400を使用し測定した。測定以前の試
料作成時に薄膜層表面に付着する有機物による炭素のピ
ークについては、組成比の計算から除外した。 印刷適性:フィルムに、5色刷りグラビア印刷機を用い
て、5色の水性インキ(東洋インキ製造社製「JW10
0アクワカラー63白,39藍,23黄,16紅,92
墨」)を印刷し(各色インキの乾燥後の塗布量3g/m
2 )、フィルムの伸びによる印刷ズレが発生していない
かを目視で評価した。 色再現性:フィルムに、水性インキ(東洋インキ製造社
製「JW100アクワカラー63白」)を印刷し(乾燥
後の塗布量3g/m2 )、印刷を行った反対面から、色
変化を目視で評価した。また、色彩色差計(ミノルタ社
製「CR−300」)を用いて、黄色を示すb* 値を評
価した。(黄色が濃くなるとb* 値は大きくなり、逆に
薄くなるとb* 値は0に近づく。)
【0019】〔実施例1〕特開平1−252768号公
報に記載された蒸発原料を連続的に供給排出する方式の
連続巻取り式抵抗加熱方式の真空蒸着装置を使い、厚さ
15μの二軸延伸ナイロンフィルムの片面に、けい素と
二酸化けい素とフッ化マグネシウムの混合物(混合比4
4モル%:44モル%:12モル%)を1350℃で加
熱真空蒸着した(厚みは約600オングストローム)。
その時の真空度は3×10-4torrであった。 〔実施例2〕実施例1と同様の蒸着装置を用い、厚さ1
4μの二軸延伸ポリビニルアルコールフィルムの片面
に、一酸化けい素とフッ化ナトリウムの混合物(混合比
98モル%:2モル%)を1300℃で加熱真空蒸着し
た(厚みは約300オングストローム)。その時の真空
度は4×10-4torrであった。
【0020】〔実施例3〕実施例1で用いた真空蒸着装
置の蒸発源の加熱方式を抵抗加熱方式から電子線加熱方
式に変更し、厚さ15μの二軸延伸EVOHフィルムの
片面に、けい素,二酸化けい素,フォルステライト(S
iO2 ・2MgO:二酸化けい素と酸化マグネシウムの
共酸化物),フッ化カルシウムの混合物(混合比42モ
ル%:42モル%:4モル%:12モル%)を1350
℃で加熱真空蒸着した(厚みは約200オングストロー
ム)。その時の真空度は3×10-4torrであった。 〔実施例4〕実施例3と同様の蒸着装置を用い、厚さ3
0μのセロハンフィルムの片面に、けい素,二酸化けい
素,フッ化アルミニウムの混合物(混合比48モル%:
48モル%:4モル%)を1330℃で加熱真空蒸着し
た(厚みは約800オングストローム)。その時の真空
度は5×10-4torrであった。
【0021】〔実施例5〕実施例3と同様の蒸着装置を
用い、厚さ12μの二軸延伸ポリエチレンテレフタレー
トフィルムの片面に、一酸化けい素とフッ化マグネシウ
ムの混合物(混合比60モル%:40モル%)を137
0℃で加熱真空蒸着した(厚みは約1000オングスト
ローム)。その時の真空度は4×10-4torrであっ
た。 〔比較例1〕実施例1で用いたナイロンフィルムに蒸着
を全く行わず、そのまま評価した。
【0022】〔比較例2〕実施例1と同様の蒸着装置を
用い、厚さ15μの二軸延伸ナイロンフィルムの片面
に、一酸化けい素とフォルステライト(二酸化けい素と
酸化マグネシウムの共酸化物:SiO2 ・2MgO)の
混合物(混合比90モル%:10モル%)を1400℃
で加熱真空蒸着した。(厚みは約300オングストロー
ム)。その時の真空度は4×10-4torrであった。 〔比較例3〕実施例1と同様の蒸着装置を用い、厚さ1
5μの二軸延伸ナイロンフィルムの片面に、けい素と二
酸化けい素の混合物(混合比50モル%:50モル%)
を1400℃で加熱真空蒸着した。(厚みは約500オ
ングストローム)。その時の真空度は2×10-4tor
rであった。
【0023】実施例1〜5,比較例1〜3で得られた蒸
着フィルムについて薄膜層の組成,印刷適性,色再現性
を評価した。結果を表1に示す。
【表1】
【0024】
【発明の効果】本発明により、親水性プラスチックフィ
ルムフィルムを基材フィルムとして用いた場合でも、色
再現性が非常によい包装用積層体が得られるようになっ
た。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】プラスチックフィルム(A)の片面または
    両面に、真空薄膜形成技術によって、けい素酸化物及び
    金属フッ化物からなる薄膜層(B)を形成し、更にその
    上に水性インキ層(C)を形成してなる包装用積層体。
  2. 【請求項2】プラスチックフィルム(A)が、ナイロ
    ン,セロハン,ポリビニルアルコールおよびエチレン・
    ビニルアルコール共重合体/エチレン・酢酸ビニル共重
    合体けん化物から選ばれるフィルムである請求項1記載
    の包装用積層体。
  3. 【請求項3】金属フッ化物が、フッ化マグネシウム,フ
    ッ化カルシウム,フッ化ストロンチウムおよびフッ化バ
    リウムから選ばれる一種または二種以上のアルカリ土類
    金属のフッ化物である請求項1または2記載の包装用積
    層体。
  4. 【請求項4】薄膜層(B)を構成するけい素酸化物と金
    属フッ化物の組成比が、それぞれ99.5〜80モル
    %,0.5〜20モル%である請求項1ないし3いずれ
    か1項に記載の包装用積層体。
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