JP3113651B1 - 細長化獣毛繊維およびその製造方法 - Google Patents

細長化獣毛繊維およびその製造方法

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Abstract

【要約】 【課題】 延伸状態を固定し、クリンプの復元性を損な
うことなく繊維直径を減少させ、繊維長を増加させた光
沢を有する細長化獣毛繊維およびその製造方法を提供す
る。 【解決手段】 塩基による膨潤可塑化後、実質1.20
〜1.60倍に延伸して得られた細長化形態が固定され
た細長化獣毛繊維。a)獣毛スライバーに実撚を加える
工程、b)加撚獣毛スライバーを塩基性水溶液により膨
潤可塑化処理する工程、c)膨潤可塑化繊維中のジサル
ファイド結合を切断する還元工程、d)還元された膨潤
可塑化繊維を実質1.20〜1.60倍に延伸する延伸工
程、e)酸化剤により延伸獣毛繊維の酸化工程、f)酸
による中和工程、を含む上記の細長化獣毛繊維の製造方
法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、延伸により細長化
したのちこの状態を一時的または永久に固定した細長化
獣毛繊維およびその製造方法、およびこの細長化獣毛繊
維を混合して得られる紡績糸に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、獣毛繊維のバルキー化、軽量
化、保温性の改良やより細番手紡績糸を製造するため、
延伸処理を施す試みがなされている。特公昭44‐15
136号公報では、羊毛トツプを1本子、2本子、多本
子の加撚様式に従って撚掛けし、浸透剤、非イオン活性
剤を含む70℃の水中で30%の延伸を与え約50℃に
て約1時間延伸セット処理し、水中を通して冷却し解
撚、風乾する方法が開示されている。その処理目的は延
伸仮セットであり、そのため、後の工程で緩和処理を施
し仮セットを崩壊させ、羊毛の捲縮を再発現させるもの
である。
【0003】特公昭46‐33141号公報では、羊毛
スライバーを1本子、2本子、多本子の加撚様式で20
g/mの羊毛スライバーでは約0.05〜0.4回/cm
程度に加撚し、100℃の水中で30%延伸し、約1時
間延伸およびセット処理するかあるいは約80℃のモノ
エタノールアミンバイサルファイドの2%水溶液中で2
0%延伸し、40分間セット処理を継続し、水洗、解撚
し、風乾、あるいは乾燥することによる潜在収縮および
潜在クリンプ性を付与する方法が開示されている。しか
し、羊毛繊維の繊維直径を減少させ、繊維長を増加させ
る方法ではない。
【0004】特開平5‐500989号公報では、羊毛
のステープルファイバーを細長化するために仮撚方式に
よる複雑な延伸装置および延伸方法が開示されている
が、50〜110g/m無撚スライバーあるいはロービ
ングを0.25〜1g/lの湿潤剤、蛋白質繊維内にメ
ルカプトアニオンを生成させる可塑剤として、1〜75
g/lのナトリウム、アンモニウム、カリウムの亜硫酸
塩、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、単なるアルカリ、ア
ルカリ塩、ナトリウムまたはアンモニウムチオグリコー
レートの記載があるが、これらによるメルカプトアニオ
ンの生成は、アルカリ側ではじめて可能である。従っ
て、蛋白繊維のアルカリ下の延伸であるが、可塑化させ
るためには、十分な浸漬時間と比較的に高い温度が必要
である。低温で、数秒程度の浸漬時間では、スライバー
束を100%延伸、実質60%延伸しても、単繊維の切
断が発生し、短繊維の多い延伸スライバーとなる。無撚
のスライバーの蛋白繊維を可塑化するために13.2m
/minあるいは3m/minあるいは6m/minの速度で浸漬
バスに送り、合成繊維の紡績工程でよく用いられる仮撚
方法を用いて撚係数120あるいは180程度に撚掛し
100%程度延伸し、2分間の滞留時間でスチーム還元
セットし、無撚の状態に戻して過酸化水素浴で酸化し、
水洗、乾燥する方法であるが、永久セットを安定化させ
るために酸化・還元セットは行われているが、酸・塩基
による中和処理は行われていない。従って、アルカリ性
を帯びた延伸蛋白質繊維となり、後の工程での熱処理等
によって黄変化の傾向をもたらす方法である。
【0005】特開平7‐3556号公報では繊維長30
mm以上の獣毛繊維無撚スライバーを80℃の熱水や1.
0%チオグリコール酸、1.5モルの尿素、25%アン
モニア水でpH2.5に調整した80℃の水溶液や2.
0%チオグリコール酸、1.5モルの尿素、28%アン
モニア水でpH3.7に調整した80℃の水溶液に浸漬
処理し、小径のニップローラーを用いて、最初6個のニ
ップローラー間で各々1.05倍づつ延伸し、次に、6
個のニップローラー間で1.49倍延伸し、同時に2kg
/cm2の蒸気圧でスチーミング処理して還元セットを行
い、後の工程で、トップ染色機を用いて、1%の過酸化
水素でpH7、40℃、10分間酸化処理し、バックウ
ォシャーで洗浄、乾燥する方法であるが、無撚のスライ
バーをローラー延伸しているため、工程操作上のトラブ
ル、特にローラーへの繊維の巻き付きやスライバーのす
ぬけ、それに伴う低生産性、コスト高等が問題である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】天然羊毛の場合、最高
の細番手繊維として繊維直径で15〜16ミクロンが限
度である。その産毛量は極端に少なく、非常に高価であ
り、それ故に、安価に供給できる工業的な技術が望まれ
ている。獣毛繊維、特に羊毛繊維の単繊維を水中で十分
に膨潤させ延伸すると50%〜60%まで延伸できるこ
とが知られている。しかし、この状態をバイラテラル構
造を崩すことなく、永久的に伸長状態を保持し、繊維長
を増加させた細長化繊維を得る方法は知られていない。
本発明は、上記のような細長化獣毛繊維およびそれを得
るための製造方法を提供するものである。
【0007】本発明は、塩基により膨潤可塑化してバイ
ラテラル構造からなる獣毛繊維に異方性膨潤を与えた
後、実質1.20〜1.60倍に延伸して得られた細長化
形態が固定されたクリンプを有する細長化獣毛繊維に関
する。また、本発明は、以下の工程: a)獣毛スライバーに実撚を加える工程、 b)加撚獣毛スライバーを塩基性水溶液により膨潤可塑
化して、バイラテラル構造からなる獣毛繊維に異方性膨
潤を付与する工程、 c)異方性膨潤可塑化繊維中のジサルファイド結合を切
断する還元工程、 d)還元された異方性膨潤可塑化繊維を実質1.20〜
1.60倍に延伸する延伸工程、 e)延伸獣毛繊維を酸化することによりジサルファイド
結合を再生する工程、 f)酸により中和処理して脱膨潤させる工程、 g)弛緩状態での乾燥工程、 を含む上記の細長化獣毛繊維の製造方法に関する。
【0008】更に、本発明は、塩基により膨潤可塑化し
てバイラテラル構造からなる獣毛繊維に異方性膨潤を与
えた後、実質1.20〜1.30倍に延伸して得られた細
長化形態が一時的に固定され、酸による脱膨潤と湿熱処
理によりクリンプを復元する能力を有する細長化獣毛繊
維に関する。更にまた、本発明は、以下の工程: a)獣毛スライバーに実撚を加える工程、 b)加撚獣毛スライバーを塩基性水溶液により膨潤可塑
化して、バイラテラル構造からなる獣毛繊維に異方性膨
潤を付与する工程、 c)異方性膨潤可塑化繊維を実質1.20〜1.30倍に
延伸する延伸工程、 d)酸により中和処理して脱膨潤する工程、 e)緊張下での乾燥工程、 を含む上記の細長化獣毛繊維の製造方法に関する。
【0009】より詳しくは、本発明は、異方性膨潤可塑
化処理が、加撚獣毛スライバーを膨潤剤および可塑化剤
を含むpH7.6〜10.5の塩基性水溶液中に、30℃
〜80℃で5分〜40分間浸漬して行われる上記いずれ
かに記載の製造方法に関する。加えて、本発明は、上記
クリンプ復元能を有する細長化獣毛繊維と未延伸獣毛繊
維とを混合し紡績した後、一時的に形態固定された獣毛
繊維を元の長さに戻すことによる膨らみのある獣毛紡績
糸の製造方法に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の細長化獣毛繊維は、獣毛
繊維を実質1.20〜1.60倍、または1.20〜1.3
0倍に延伸することにより細長化され、細長化された状
態が一時的または永久的に固定されたものである。ひと
つの態様では、本発明の細長化獣毛繊維は、細長化形態
が実質的に永久的に固定された、天然の獣毛では存在し
ない細さを有し、且つ羊毛本来のクリンプを有する繊維
である。また、もうひとつの態様では、本発明の細長化
獣毛繊維は、細化状態が一時的に固定されており、緩和
処理によりクリンプを復元することのできる繊維であ
る。通常繊維に延伸を加えた場合、完全な塑性変形とい
うことはありえず、弾性変形が含まれるため、延伸後弾
性変形の部分は変形を回復する。そのため印加した延伸
倍率の大きさと繊維に残る実質延伸倍率とは異なる。本
発明において、これを区別して表すため、加撚された繊
維束の実質延伸倍率を「実質」を加えて表現した。ま
た、「細長化形態が永久的に固定されている」とは、紡
績や染色工程などを含む通常の繊維の取り扱いや処理に
よっては形成された細長形態が実質的に失われないこと
を意味する。また、「細長化形態が一時的に固定されて
いる」とは、細長化形態の固定が永久的または半永久的
でなく、何らかの緩和処理によって、細長化形態が失わ
れ得る固定状態のことを言う。また、「クリンプ復元
能」とは、緩和処理することにより、獣毛がもともと有
していたクリンプを再生することができることをいう。
クリンプ復元や一次的に固定された細長化状態からの開
放をもたらすための緩和処理としては温水、熱水、スチ
ーム処理等の湿熱処理が挙げられる。特に好ましい緩和
処理方法は熱水またはスチーム処理である。
【0011】本発明における獣毛繊維の可塑化、膨潤化
処理は延伸処理を円滑に行い、しかも細長化状態を永久
的に固定化するために最も重要な工程であり、本発明の
細長化獣毛繊維の製造方法の本質をなすものである。以
下、本発明の基礎をなす技術思想について説明する。 1)獣毛繊維はスピンドル形状をした細胞組織から成り
立っており、緻密な組織からなるパラコルテックスと、
緻密性と規則性が低い組織からなるオルソコルテックス
からなり、したがってパラコルテックスの密度(1.2
80より高い)はオルソコルテックスの密度(1.28
0より低い)より高く、バイラテラル構造を有しクリン
プの形成に深く関与している。パラコルテックスは、常
にクリンプ湾曲の内側に位置し、一方オルソコルテック
スは外側に位置し、量的にはパラコルテックスよりもオ
ルソコルテックスが支配的である。オルソコルテックス
は、塩基性染料により染色されやすく、一方パラコルテ
ックスは酸性染料に染色されやすい。この意味から、オ
ルソコルテックスは、親塩基性であり、パラコルテック
スは親酸性である。獣毛繊維を苛性ソーダや炭酸ソー
ダ、あるいは有機アミン等の塩基性の薬剤の水溶液に浸
漬すると、当然、塩基性薬剤は親酸性のパラコルテック
スよりも親塩基性のオルソコルテックスに選択的吸収
(即ち、異方性膨潤)され、オルソコルテックスは繊維
の断面方向に、その量的関係もあって、約2倍程度膨潤
し、その結果、ケラチン蛋白質の高分子鎖の結合が弛
み、当然延伸性を高めることになる。本発明はこの性質
を十分に利用したものである。
【0012】2)パラコルテックスはシスチン含量がオ
ルソコルテックスよりも高く、当然パラコルテックスは
シスチン架橋密度が高く可塑化、膨潤化されにくいが、
重亜硫酸ソーダ等の還元剤であるシスチン架橋切断剤を
用いてシスチン架橋結合を切断することにより延伸性を
高めることができる。切断された架橋は、延伸後の工程
で、酸化剤の作用によってシスチン/システイン(−S
S−/−SH)の交換反応を利用して再架橋され、細長
化された獣毛繊維の構造が固定される。
【0013】3)羊毛繊維を細長化するためには、実質
1.2倍〜1.6倍もの高延伸をする必要があり、そのた
めには可塑化、膨潤化処理を温度を高め、時間を掛けて
丹念に行わなければならず、常温、数秒程度の該可塑
化、膨潤化水溶液への浸漬では十分に延伸されずに該繊
維は切断され、繊維切れの多い短繊維含有量の多い延伸
処理スライバーを製造することになる。
【0014】4)該可塑化、膨潤化処理は塩基性下での
処理であるため、ケラチン蛋白質分子のポリペプタイド
構造を安定化するためには中和処理を施すことが必須の
条件となるが、酸と塩基のバランスをとることは該構造
をより安定化させるために必要にして十分な条件とな
る。したがって塩基量が多ければ、それだけ酸量を多く
とる必要がある。5)獣毛繊維のコルテックス細胞は、
紡錘状の細胞であり、オルソコルテックスの紡錘状の細
胞の長さはパラコルテックスのそれよりもいくぶん長
く、クリンプの湾曲に影響し、塩基性条件下の還元処理
では、オルソコルテックス側で極端に断面方法に膨潤し
ており、その結果長さ方向には収縮する。これを酸で中
和することによりオルソコルテックスを脱膨潤させ、断
面方向に収縮するとともに、長さ方向に伸びて、長さお
よびクリンプともに原状に復することになる。
【0015】6)獣毛繊維スライバーに実撚を掛け、該
可塑化、膨潤化水溶液に浸漬して高延伸し、該酸化処理
を施すと、強い撚と、高い延伸のため、該繊維束の各繊
維に横圧力が加わり該繊維は偏平化され、その繊維内部
から、細胞と細胞との間に存在する低シスチン含量の可
溶性蛋白質接合物質であるセメント質が流出し、該繊維
の表面を覆う。このため表面光沢の低下をもたらし、ま
た、セメント質が乾燥すると獣毛繊維束の各繊維を接着
することになり該繊維束は硬直化し、ギル開繊が非常に
難しくなり、繊維切れを引き起こす。この段階で蛋白質
の膨潤剤、変性剤である酸、例えばギ酸で処理すること
により繊維表面に覆っていたセメント質は取り除かれ、
光沢も回復することができる。このギ酸等の酸による処
理は、上記塩基性下の還元処理を中和する効果をも同時
に奏することができる画期的な処方である。
【0016】本発明で使用する獣毛繊維としては、蛋白
質繊維から構成された繊維であって、羊毛、モヘア、ア
ルパカ、カシミヤ、ラマ、ビキューナ、キャメル類であ
る。その中でも羊毛、モヘア、アルパカが好ましい。
【0017】本発明の細長化形態が永久的に固定され、
復元されたクリンプを有する細長化獣毛繊維の第1の態
様、および細長化形態の固定が一時的でありクリンプ発
現能を有する細長化獣毛繊維の第2の態様を含む製造方
法について、工程を追って説明する。細長化獣毛繊維は a)獣毛スライバーに実撚を加える工程、 b)加撚獣毛スライバーを塩基性水溶液により膨潤可塑
化処理する工程、 c)膨潤可塑化繊維中のジサルファイド結合を切断する
還元工程、 d)還元された膨潤可塑化繊維を実質1.20〜1.60
倍に延伸する延伸工程、 e)酸化剤により延伸獣毛繊維の酸化工程、 f)酸による中和工程、 g)弛緩状態での乾燥工程、 の工程を経て製造することができる。なお、通常は、前
の工程で加えられた処理剤や反応物を除去するために、
延伸工程、酸化工程および中和工程の後に、洗浄工程、
好ましくは温水による湯洗工程を設けるのが好ましい。
温洗を行う場合は、その熱により構造が緩和されて好ま
しくない収縮が生じるのを防ぐために、好ましくは、繊
維をわずかに緊張した状態で行う。
【0018】先ず、第1の工程として、獣毛繊維には、
スライバー状態で実撚を加える。延伸に先だって実撚を
掛けておくことにより、ローラーへの捲き付きやスライ
バーのす抜けを防止することができ、そのようなトラブ
ルによる生産性の低下を回避することができる。
【0019】本発明における撚掛方法については、撚掛
機の種類は特に制限はなく、フライヤー式撚掛機を用い
て実撚を掛けする場合を例にとると、羊毛スライバーの
場合は20〜40g/m程度、例えば約37g/m程度に調
整し、実撚を16回/m〜25回/m程度加えるのが好
ましい。モヘア、アルパカの場合は、繊維自体に抱合性
が乏しいため、例えば約37g/mのスライバーに対し
て、20回/m〜30回/m程度の撚掛が必要である。
【0020】第2の工程では、加撚獣毛スライバーを塩
基によって膨潤可塑化する。上記したように膨潤可塑化
により、獣毛繊維は径を増すとともに長さ方向に収縮す
るが、獣毛繊維はクリンプの外側は大部分オルソコルテ
ックスからなり、一方クリンプの内側は大部分パラコル
テックスからなるバイラテラル構造を有している。ま
た、オルソコルテックスは塩基に対してより親和性を有
するため、塩基による膨潤、可塑化はオルソコルテック
スにおいてより大きい(異方性膨潤)。したがって、塩
基を用いて膨潤する場合、クリンプの外側であるオルソ
コルテックスがより繊維断面方向に膨潤し、逆に、長さ
方向が収縮するため、クリンプは失われ、直線状または
それに近い形態となる。本発明において、必要な膨潤の
程度は、体積膨潤度が少なくとも2.0倍であることが
好ましく、2.0〜2.5倍であることがより好ましい。
特に好ましくは2.0〜2.1倍である。
【0021】本発明における有用な膨潤化剤としては、
例えばナトリウム、アンモニウムまたはカリウムの炭酸
塩、カセイソーダ、水酸化カリウムを挙げることができ
る。また可塑化剤としては、モノエタノールアミン、ジ
エタノールアミン等のアミン類が挙げられる。これらは
単独で使用することもできるし、併用して用いてもよ
い。好ましくは1g/l〜3g/lのモノエタノールアミン
およびpHを7.5〜9.0に調整するための苛性ソーダ
約8g/l〜13g/lを併用して含む水溶液を用い
る。特に好ましくは、2g/lのモノエタノールアミン
および10g/lの苛性ソーダを含む水溶液である。処理
された獣毛繊維に対してこれらの水溶液は大過剰で用い
られるか、水溶液に常時処理剤を補給して水溶液濃度が
一定に保持される。浸漬温度については、30℃〜60
℃、好ましくは、40℃、浸漬時間としては、20分〜
50分、好ましくは30分である。
【0022】膨潤可塑化された獣毛繊維を、延伸に先だ
って、繊維組織中のジスルフィド結合-S-S-を切断す
るために還元処理を行う。還元処理に用いることのでき
る還元剤としては、ナトリウム、カリウムまたはアンモ
ニウムの亜硫酸塩、重亜硫酸塩またはメタ重亜硫酸塩、
チオグリコール酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモ
ニウム、モノエタノールアミンサルファイド、モノエタ
ノールアミンバイサルファイド等を例示できる。好まし
くは重亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸ナトリウムであ
る。これらの還元剤による還元処理は還元剤の種類およ
び濃度によって異なるが、通常は60〜100℃で1分
〜3分間、好ましくは80〜100℃で1分〜2分間で
ある。また水溶液中での還元剤の濃度は10〜50g/
l、好ましくは20〜40g/lである。還元の程度
は、全ジスルフィド結合の少なくとも25%であること
が好ましく、25〜40%であることがより好ましい。
特に好ましくは25〜30%である。本発明の第2の態
様の細長化獣毛繊維の製造においては、この還元工程は
行うことなく、膨潤可塑化した獣毛スライバーをそのま
ま延伸工程にかける。
【0023】可塑化、膨潤化処理、または更に還元処理
を十分に行った獣毛繊維は、実質倍率として1.20倍以
上、好ましくは1.20〜1.60倍、特に好ましくは1.
30〜1.60倍に延伸される。延伸は80〜100℃
の熱水中、または90〜95℃の水蒸気中で行うことに
より粗糸切れを少なくして延伸することができる。延伸
は異なる表面速度で回転するローラー間で行なうことが
できる。また延伸は必ずしも1段で行う必要はなく、多
段に行ってもよく、一般には後者の方がより安定に高延
伸倍率まで可能となる。
【0024】延伸後の獣毛繊維は、通常は、膨潤可塑化
剤および還元剤を除去するために、30〜60℃、好ま
しくは45〜50℃の熱湯中で洗浄する。洗浄を行うに
は、延伸状態が緩和されないように緊張化で行うのが好
ましい。延伸、湯洗後の獣毛繊維は、繊維中の酸化還元
状態を平衡化させるために、羊種によって多少異なる
が、シスチン/システイン(−SS−/−SH)比を9
00(μmol/gWool)/10(μmol/gW
ool)〜700/50、好ましくは800/10〜7
00/30の範囲にバランスさせるために酸化剤で処理
を行う。還元量が多ければ、当然酸化量も多くする必要
があり、そのバランスをとることが化学セットを永久的
に固定化させることになる。この処理により、先の還元
工程で開裂した-S-S-架橋が再架橋され、原毛の状態
にほぼ近い架橋状態が形成される。酸化剤としては、過
酸化水素、臭素酸カリ、臭素酸ナトリウム、硼酸ナトリ
ウム、硼酸カリ等を用いることができる。好ましくは過
酸化水素である。過酸化水素は該繊維に残留した過酸化
水素を容易に除去できる点で好ましい。酸化剤として過
酸化水素を用いる場合、水溶液としての過酸化水素の濃
度は好ましくは1〜3重量%、特に好ましくは2.8重
量%である。酸化剤による処理温度および時間は、例え
ば過酸化水素濃度が2.8重量%の場合、50〜90℃
で90秒〜150秒、好ましくは、120秒である。還
元処理を行わない本細長化獣毛繊維の第2の態様の場合
は、当然この酸化処理工程も必要がない。
【0025】酸化剤による上記処理を受けた獣毛繊維
は、通常は、繊維中の酸化剤を除去するために40〜6
0℃の湯を用いて洗浄する。次いで獣毛繊維は、残存す
る塩基成分の中和と延伸工程中に繊維内部からしみ出し
て繊維表面に付着している可溶性蛋白質を除去するため
に、酸による中和処理を行う。中和剤として、無機酸と
して、塩酸、硫酸、有機酸として、酢酸、ギ酸、シュウ
酸が好ましく、特に、ギ酸が好ましい。処理条件として
は、pH2.0〜pH4.5の水溶液中に常温で、40秒
〜80秒浸漬して洗浄すればよい。好ましい条件とし
て、pH2.5のギ酸水溶液中で、常温で、30秒洗浄
すれば、該繊維に含まれている塩基成分は中和され、同
時に、該繊維内部から流出した可溶性蛋白質も除去され
て、光沢のある細長繊維が得られる。
【0026】第1の態様の細長化獣毛繊維の場合、中和
を終え、洗浄した繊維は実撚を解撚し、次いで無緊張下
で乾燥にかける。乾燥とともに膨潤状態が解除されるた
め、直径方向に膨潤し長さ方向に収縮していた獣毛繊維
は、直径方向に収縮するとともに長さ方向に伸張する。
こうして繊維は細長化するが、バイラテラル構造を有す
る獣毛繊維においては、膨潤は均一ではなく、獣毛繊維
の断面うちのオルソコルテックス側、即ち獣毛繊維が元
々有していたクリンプの外側部分においてより大きかっ
たため、脱膨潤での長さの伸張の度合いもオルソコルテ
ックス側でより大きい。そのため脱膨潤によってオルソ
コルテックス側が外側になるようにクリンプが復元す
る。このようにして実長を変化することなく、クリンプ
を有する細長化獣毛繊維が形成される。以上の工程操作
により、獣毛繊維の種類にもよるが、繊維直径で約15
〜20%減少し、繊維長は約35〜45%増加する。
【0027】第2の態様の細長化獣毛繊維の場合、中和
を終え、洗浄した繊維は実撚を解撚し、次いで緊張下で
乾燥にかける。乾燥とともに膨潤状態が解除されるが緊
張下にあるため繊維はクリンプすることなく、細長化さ
れ且つクリンプ発現能を有する形で形成される。こうし
て得られた第2の態様の細長化獣毛繊維は、クリンプ発
現能を有するため、無緊張下で緩和処理を行うと残留歪
が解除されてクリンプを発現することができる。クリン
プを発現するための好ましい緩和処理は、水蒸気中また
は熱水中での湿熱処理である。特に好ましいのは水蒸気
を用いる緩和処理である。
【0028】以下、一例として添付の図面に基づいて、
本発明をさらに詳細に説明する。図1、図2、図3は、
獣毛繊維の細長化工程の概略図である。獣毛スライバー
(1)をフライヤー式撚掛機(2)でZ方向に16回/
mの実撚を掛けてボビンに巻取る(図1)。これを図2
に示すようにクリール(3)に装填したのち、引き出し
て可塑化、膨潤化のための前処理槽(4)に送り込む。
可塑化、膨潤化した獣毛を、トップローラー(5)、
(6)とボトムローラー(7)、(8)、(9)、(1
0)で構成されるニップローラー群でニップし、このニ
ップローラー群と、トップローラー(11)、(12)
とボトムローラー(13)、(14)、(15)で構成さ
れたニップローラー群間で、その間に置かれた還元処理
液槽(16)、スチーム処理機(17)内を通しなが
ら、両ローラー群の回転速度の差を利用して延伸をかけ
る。この装置では延伸倍率は速度比から、1.4倍(実
質、1.20倍)から2.5倍(実質、1.80倍)まで
可変である。次に、延伸された獣毛繊維を湯洗槽(1
8)に送るが、湯洗槽内では通常弛みが生じるため、こ
れを避けるためにローラー(12)とローラー(19)
との間でスライバーに1.01倍程度の延伸をかける。
次に、酸化槽(20)、(22)および(24)に送
り、それぞれの酸化槽内ではローラー(19)と(2
1)、(21)と(23)および(23)と(25)の
間で1.01倍程度の延伸を掛けながら酸化処理を行
い、次いで湯洗槽(26)に送る。湯洗槽内でもローラ
ー(25)と(27)の間で1.01倍程度の延伸を掛
けておく。湯洗処理した繊維を中和槽(28)に送る。
中和槽中でも繊維をローラー(27)と(29)間で
1.01倍程度の延伸をかけてわずかに緊張がかかった
状態を保つ。中和した繊維を湯洗槽(30)に送り、ロ
ーラー(29)と(31)間で1.01倍程度に延伸し
ながら湯洗いし、さらにローラー(31)と(32)間
で1.01倍延伸してコイラー式解撚機(33)で実撚
を解き乾燥する。無緊張下で乾燥を行う場合は例えば図
3に示すようなサクション式乾燥機(34)を用いて乾
燥する。
【0029】上記工程において、1本のトップローラー
は2本のボトムローラーと対をなして構成されており、
トップローラー(5)ボトムローラー(7)、(8)、
トップローラー(6)ボトムローラー(9)、(1
0)、トップローラー(11)ボトムローラー(1
3)、(14)には、それぞれローラーの両端に600k
g〜1000kgの荷重がかけられ、トップローラー
(5)、(6)、(11)の直径は例えば80mmであり、
表面はゴム層で被覆され80度前後のゴム硬度が適当で
ある。ボトムローラーは横溝が刻まれたステンレス製が
好ましく、スライバーをローラー延伸により1.4倍〜
2.2倍(実質、1.20〜1.60倍)に延伸するに際
しスヌケが生じないような構造になっている。前処理槽
(4)には該処理溶液の補給タンク(35)が装備され
ており定量ポンプで薬剤が補給され、また還元処理槽
(16)には前処理槽(4)と同じ液が補給タンク(3
6)から定量ポンプで補給される。更に、酸化槽(2
0)、(22)、(24)には補給タンク(37)、(3
8)、(39)と定量ポンプが、中和槽(28)には補
給タンク(40)と定量タンクが装備されている。
【0030】第1の態様では、前処理槽(4)で獣毛ス
ライバーを塩基性下で可塑化、膨潤化処理して高延伸し
やすくし、前記還元剤を含む還元処理槽(16)、スチ
ーマー(17)では獣毛繊維のシスチン架橋結合を該還
元剤で切断して1.4〜2.2倍程度(実質、1.20〜
1.60倍)に延伸して細長化を施す。酸化槽(20)、
(22)、(24)では酸化剤で酸化してシスチン架橋
を再架橋して、繊維が細長化した状態で獣毛蛋白質の分
子構造を安定化させる。中和槽(28)では獣毛繊維に
吸収させた塩基をギ酸等で中性付近まで中和すると同時
に該繊維表面に溶出して繊維表面を被覆している可溶性
蛋白質を除去して、クリンプ復元能を備えた光沢度の高
い細化繊維を製造する。
【0031】第2の態様では、上記の図面を用いて詳細
に説明した工程のうち、可塑化、膨潤化前処理工程
(4)に1g/lの重炭酸ソーダ、0.15g/lの炭酸ソ
ーダで緩衝液を作り、浴のpHを9.0前後に調整し
て、30℃〜70℃、好ましくは40℃〜60℃、特に
好ましくは60℃で、5分〜30分、好ましくは10分
間浸漬し、還元処理槽(16)を通すことなく(例えば
槽を空にして通し)、95℃で1分〜3分、好ましくは
2分間スチーム処理(17)し、中和処理工程(28)
でpH3〜5、好ましくはpH4.0〜4.5で、酢酸等
で中和し、解撚して乾燥した該獣毛スライバーは、永久
的セットではなく、一時的に伸長固定された潜在収縮性
のある仮セットの状態にある。該スライバーにスチーム
処理、温熱、熱湯処理を施すと該スライバーは元の長さ
に復元する。この性質を利用して嵩高い、膨らみのある
獣毛紡績糸を得ることができ、また、該潜在収縮性のあ
る獣毛繊維とその他の繊維、例えばポリエステル、ポリ
アミド、アクリル、綿などと混毛して紡績し、得られた
紡績糸を温熱または熱湯で処理すると該潜在収縮性のあ
る繊維は紡績糸の内部でもとの長さに収縮し復元するた
め糸全体に膨らみがあり、嵩高性のある紡績糸が得られ
る。編物、織物にすると軽量で、嵩高性のある獣毛製品
が得られる。
【0032】
〔可塑化膨潤処理水溶液組成〕
モノエタノールアミン 2g/l 苛性ソーダ 約10g/l (水溶液pHを8.00とするに要する量) 可塑化膨潤前処理の終わったスライバーを下記の組成の
水溶液の入った還元槽(16)に送り80℃、30秒処
理することにより、高温下での強力な還元処理を該繊維
の内部まで到達できるように熱水状態で処理した。 〔還元処理水溶液組成〕 重亜硫酸ソーダ 30g/l 更にスチーム槽(17)中で95℃、70秒間、スチー
ム処理を行って還元処理を完結し、同時に、ローラー
(5)、(6)群のローラーの表面速度に対してローラ
ー(11)、(12)群のローラー表面速度を2.1倍に
設定し、両ローラー間で該スライバーを2.1倍延伸
(実質、1.40倍)した。次に湯洗槽(18)に送り
1.01倍の延伸を掛けて緊張状態で80℃、30秒間
湯洗いし、更に80℃に設定した2.8重量%濃度の過
酸化水素水溶液の入った酸化槽(20)、(22)およ
び(24)に送り、ローラー間の速度比1.01倍で緊
張状態を保ちながら酸化処理した。処理時間は各槽でそ
れぞれ40秒となるようにした。これを1.01倍に緊
張しながら70℃の湯洗槽(26)を通して30秒間湯
洗いした後、やはり1.01倍の緊張下でpH2.5のギ
酸水溶液の入った中和槽(28)に導いて常温で30秒
間中和処理を行った。1.01倍の緊張下で湯洗槽(3
0)を通して、70℃、30秒間湯洗いし、コイラー式
解撚機(33)に送って、撚を解きサクション式乾燥機
(34)を用いて無緊張下で乾燥した。
【0033】得られた延伸羊毛スライバーは、白く光沢
性があり、細長化され、表1に示す性状を有していた。
この繊維は、1〜2気圧の水蒸気でスチーム処理をする
と、繊維の実長は変化せず豊かなクリンプが復元し、細
くて、長い羊毛繊維に改質されていた。
【0034】比較例 1 前処理槽(4)を空にした以外はすべて実施例1の処理
条件に従って処理した。得られた細化獣毛繊維の性状を
表1に記載した。可塑化、膨潤化処理が十分に行われな
かったため、羊毛繊維の高延伸処理が円滑に行われず、
延伸過程で繊維の切断が発生した。そのためスライバー
中に短繊維の発生が多くなり、このスライバーを紡績す
ると糸斑の原因となった。
【0035】比較例 2 ギ酸中和処理を省略すること以外は、すべて実施例1の
方法に従って処理した。得られた細化獣毛繊維の性状を
表1に示す。還元処理羊毛に撚を加え、スチーム下で高
延伸すると、繊維間に働く横圧力により羊毛繊維内部か
ら可溶性蛋白質が流出し繊維表面に沈着し、乾燥すると
繊維・繊維間の接着を生じるため、酸による中和処理を
省略した場合、ギル開繊工程で繊維の切断をもたらした
ため短繊維含量の増加が認められた。それと同時に、ス
チーム処理を該延伸スライバーに施しても捲縮の回復は
乏しかった。これは羊毛の親塩基性であるオルソコルテ
ックスが中和されずに膨潤状態にあるためであり、酸中
和することにより初めてオルソコルテックスが脱膨潤し
た天然の羊毛の形態に戻り、スチーム処理でクリンプが
復元できることを示している。
【0036】比較例 3 獣毛繊維として平均繊維直径27.4ミクロン、平均繊
維長78.3mmのキッドモヘアからなる37g/mのスラ
イバーを用い、フライヤー式撚掛機(2)で20回/m
に撚を加えた以外は、実施例1の処理方法に従って細長
化獣毛繊維を得た。しかし本繊維は異方性バイラテラル
構造を持たないためクリンプは発現しなかた。得られた
延伸獣毛繊維の性状を表1に示す。なお、この処理によ
り光沢のあるソフトなキッドモヘアが得られた。
【0037】
【表1】
【0038】実施例 2 平均繊維直径27.0ミクロン、平均繊維長70.0mm
の羊毛スライバー37g/mをフライヤー式撚掛機(2)
で16回/mに撚を加え、下記の処理条件以外実施例1
の処理方法に従って処理を行った。 1.可塑化、膨潤化前処理槽(4)の組成および処理時
間、温度を変更: 重炭酸ソーダ 1.5g/l 炭酸ソーダ 0.15g/l 浸漬条件:60℃、10分間 2.延伸倍率1.7倍(実質延伸倍率1.25倍)に変
更、 3.還元処理槽(16)を通さず、且つ過酸化水素によ
る酸化処理(20、22、24)を省略し、80℃の熱水
に変える、 4.ギ酸処理槽(28)を酢酸に変え、pH4.5で中
和処理を行う 得られた繊維は構造が一時固定されたクリンプ発現能を
有していた。処理前後の繊維の平均繊維直径および平均
繊維長を表2に示した。この処理によって得られた羊毛
スライバー70%と未延伸該27.0ミクロンスライバ
ー30%とを用いて3/4Nmに紡績し、スチームによ
る緩和処理を施し糸の比容積を調べ、結果を表3に示し
た。
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【発明の効果】本発明によると、天然繊維の持つクリン
プ性を損なうことなく、獣毛繊維の繊維直径を減少さ
せ、繊維長を増加させる細長化繊維に改質することがで
きた。羊毛繊維は、天然繊維であるが故に、必然的に細
さ(繊維直径)、長さ(繊維長)に制約があり、その結
果、細番手の紡績糸を製造することにおいてもその制約
があった。本発明はこの制約を打破して、より細番手の
獣毛糸を製造することが工業的に可能になり、一方、延
伸条件を緩慢な条件処理、即ち、延伸仮セット程度のセ
ット条件を採用すれば、膨らみがあり、軽量で、含気率
の高く保温性に富む獣毛製品を得ることのできる細長化
獣毛繊維の工業的製造をも可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に用いる細長化獣毛繊維製造の撚掛工
程およびその装置の1例の概略図。
【図2】 本発明に用いる細長化獣毛繊維の製造工程お
よびその製造装置の概略図。
【図3】 本発明に用いる細長化獣毛繊維製造の乾燥工
程およびその装置の1例の概略図。
【符号の説明】
(1)実撚に加撚された獣毛スライバー (2)フライヤー式撚掛機 (3)クリール (4)可塑化・膨潤化のための前処理槽 (5)(6)(7)(8)(9)(10)高延伸用ロー
ラー群 (11)(12)(13)(14)(15)高延伸用ロ
ーラー群 (16)還元槽 (17)スチーマー (18)湯洗槽 (20)(22)(24)酸化槽 (26)湯洗槽 (28)中和槽 (30)湯洗槽 (33)コイラー式撚戻・解撚機 (35)(36)(37)(38)(39)(40)薬
剤供給タンクおよびポンプ (34)サクション式乾燥機
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 唐川 忠士 三重県津市江戸橋3−85 倉敷紡績株式 会社津工場内 (56)参考文献 特開 平10−158976(JP,A) 特表 平5−500989(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D02J 1/22 D06M 11/38 D06M 11/50 D06M 11/54 D06M 101:10

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 塩基により膨潤可塑化してバイラテラル
    構造からなる獣毛繊維に異方性膨潤を与えた後、実質
    1.20〜1.60倍に延伸して得られた細長化形態が固
    定されたクリンプを有する細長化獣毛繊維。
  2. 【請求項2】 塩基により膨潤可塑化してバイラテラル
    構造からなる獣毛繊維に異方性膨潤を与えた後、実質
    1.20〜1.30倍に延伸して得られた細長化形態が一
    時的に固定され、酸による脱膨潤と湿熱処理によりクリ
    ンプを復元する能力を有する細長化獣毛繊維。
  3. 【請求項3】 以下の工程: a)獣毛スライバーに実撚を加える工程、 b)加撚獣毛スライバーを塩基性水溶液により膨潤可塑
    化して、バイラテラル構造からなる獣毛繊維に異方性膨
    潤を付与する工程、 c)異方性膨潤可塑化繊維中のジサルファイド結合を切
    断する還元工程、 d)還元された異方性膨潤可塑化繊維を実質1.20〜
    1.60倍に延伸する延伸工程、 e)延伸獣毛繊維を酸化することによりジサルファイド
    結合を再生する工程、 f)酸により中和処理して脱膨潤させる工程、 g)弛緩状態での乾燥工程、 を含む請求項1に記載の細長化獣毛繊維の製造方法。
  4. 【請求項4】 以下の工程: a)獣毛スライバーに実撚を加える工程、 b)加撚獣毛スライバーを塩基性水溶液により膨潤可塑
    化して、バイラテラル構造からなる獣毛繊維に異方性膨
    潤を付与する工程、 c)異方性膨潤可塑化繊維を実質1.20〜1.30倍に
    延伸する延伸工程、 d)酸により中和処理して脱膨潤する工程、 e)緊張下での乾燥工程、 を含む請求項2に記載の細長化獣毛繊維の製造方法。
  5. 【請求項5】 異方性膨潤可塑化と還元とを1工程で行
    う請求項3に記載の細長化獣毛繊維の製造方法。
  6. 【請求項6】 異方性膨潤可塑化処理が、加撚獣毛スラ
    イバーを膨潤剤および可塑化剤を含むpH7.6〜10.
    5の塩基性水溶液中に、30℃〜80℃で5分〜40分
    間浸漬して行われる請求項3または4に記載の製造方
    法。
  7. 【請求項7】 異方性膨潤可塑化剤がモノエタノールア
    ミン、アルカリ金属またはアンモニウムの炭酸塩または
    重炭酸塩から選ばれる塩基である請求項3〜6のいずれ
    かに記載の製造方法。
  8. 【請求項8】 還元剤がアルカリ金属またはアンモニウ
    ムの重亜硫酸塩または亜硫酸塩から選ばれる請求項3に
    記載の製造方法。
  9. 【請求項9】 延伸処理が熱水中または加熱水蒸気中で
    行われる請求項3〜6のいずれかに記載の製造方法。
  10. 【請求項10】 延伸獣毛繊維の酸化が過酸化水素を用
    いて行われる請求項3に記載の製造方法。
  11. 【請求項11】 中和処理がギ酸を用いて行われる請求
    項3〜6のいずれかに記載の製造方法。
  12. 【請求項12】 請求項2に記載の細長化獣毛繊維と未
    延伸獣毛繊維とを混合し紡績した後、一時的に形態固定
    された獣毛繊維を元の長さに戻すことによる膨らみのあ
    る獣毛紡績糸の製造方法。
  13. 【請求項13】 元の長さに戻すために混紡糸を40〜
    100℃の温熱水または1〜2気圧の水蒸気で処理する
    請求項12に記載の方法。
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