JP2004162220A - 部分酸化獣毛繊維およびそれから得られる繊維製品 - Google Patents

部分酸化獣毛繊維およびそれから得られる繊維製品 Download PDF

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Abstract

【課題】樹脂加工等の風合いを損なう方法を用いることなく、縮絨風の風合いを有し、且つ、防縮性と抗ピル性と撥水性とを備えた獣毛製の繊維製品およびその製造技術を提供する。
【解決手段】シスチン結合が開裂されることなく部分酸化状態にあり、縮絨処理を施したのち、または施さない状態で、還元処理によってシスチン結合を開裂することにより防縮性を付与することができる部分酸化獣毛繊維。部分酸化状態で保存しておいたのち、必要時に縮絨処理および/または還元処理することによりフェルト化および/または防縮性の付与が可能な上記の部分酸化獣毛繊維。部分酸化獣毛繊維がスライバーであり、これから製造された紡績糸から製造された獣毛繊維製品を縮絨処理し、またはしないで還元処理によりシスチン結合を開裂することによって得られる防縮性に優れた獣毛繊維製品。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂加工等の獣毛本来の風合いを損なう処理を施すことなく製造されたミルド調の風合いを有し、且つ防縮性を有する獣毛繊維および繊維製品、および還元処理によって上記獣毛繊維または繊維製品とすることのできる部分酸化獣毛繊維に関する。また本発明は、上記部分酸化獣毛繊維の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
毛織物の整理工程では、獣毛繊維の本来のセット性と縮絨性を巧妙に利用して、毛織物独特の風合いを生み出している。しかし、過度に縮絨処理を施すと、獣毛本来の性質により、水溶液中でスケールの先端が立ち上がり、絡み合ってフェルト化を生じる。このようなフェルト化は、獣毛製品を硬直化したフェルト風の風合いにする。特に、繊維長の短い紡毛織物の製造においては、ミルド調の風合いを生み出すために、熟練した管理が必要である。
一般的な毛織物の整理工程は、洗絨 → 縮絨 → 洗絨 → 乾燥 → 起毛 → 剪毛 → ハケ → プレス → 蒸絨 である。この縮絨の段階で毛織物の風合いが創出されるが、縮絨性と防縮性とは相反する作用のため、縮絨を伴う防縮加工の研究開発は殆ど行なわれず、毛織物の染色整理仕上げの終了後に、場合によっては、編物類を、特許文献1〜5に記載のように脂肪族炭化水素あるいは芳香族炭化水素に結合したイソシアネート基(NCO基)を酸性亜硫酸ナトリウムで付加した水溶性のポリマーであるバイサルファイド・アダクト・ポリマー(BAP)のような樹脂で獣毛の繊維と繊維間を接着する方法が、現在に至っても、一般的に行われている。これは毛織物や編物類の樹脂加工処理であるため、防縮性は所期の目的に叶うものの、柔軟性の高いポリマーを用いて樹脂加工処理を行ったとしても風合いが剛直になる。そのため、市場にはそれ程普及していないのが現状である。
【0003】
特許文献6〜17等に記載された方法は、酸化・還元処理からなる防縮加工であるが、強力な酸化剤で獣毛繊維を酸化し、シスチン架橋結合を切断し、この酸化過程で防縮性を付与する方法であり、残留の酸化剤を駆除するために還元剤で処理する方法が主なものである。この酸化プロセスは一般的に次式で表される:
【0004】
【化2】
Figure 2004162220
【0005】
即ち、−S―S−結合がモノ(mono)酸化、ジ(di)酸化、トリ(tri)酸化、テトラ(tetra)酸化のように部分酸化の過程を経ることなく、完全に、直接、酸化切断されて、−SO −2になり、場合によっては、スケール全体が獣毛繊維の本体からは剥離されることになり獣毛繊維に防縮性が付与されることになる。このような処理では防縮性は付与されるが、獣毛繊維の特徴であるフェルト様の風合いを生み出すことは不可能である。また獣毛繊維本来の優れた撥水性も損なわれる。
【0006】
【特許文献1】
特開昭51−82100号公報
【特許文献2】
特公昭58−2972号公報
【特許文献3】
特開昭52−37900公報
【特許文献4】
特公昭60−10054号公報
【特許文献5】
特開平10−266077号公報(特許第3136354号)
【特許文献6】
特公昭41−18440号公報
【特許文献7】
特公昭42−6039号公報
【特許文献8】
特公昭42−6038号公報
【特許文献9】
特公昭42−6040号公報
【特許文献10】
特公昭42−6399号公報
【特許文献11】
特公昭42−13436号公報
【特許文献12】
特公昭42−133437号公報
【特許文献13】
特公昭42−19396号公報
【特許文献14】
特公昭57−53470号公報
【特許文献15】
特公昭62−38469号公報(特許第1429354号)
【特許文献16】
特公昭62−19540号公報
【特許文献17】
特開平8−209532号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、樹脂加工等の風合いを損なう方法を用いることなく、縮絨風の風合いを有し、且つ、防縮性と抗ピル性と撥水性とを備えた獣毛製の繊維製品(例えば毛織物あるいは編物)およびその製造技術を提供するものである。また、本発明は、有害な塩素を含有しない薬剤を使用する環境に配慮した上記獣毛繊維および繊維製品の製造方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、シスチン結合が次式
【化3】
Figure 2004162220
のいずれかで表される部分酸化状態またはこれらの混合状態にあり、縮絨処理を施したのち、または施さない状態で、還元処理によってシスチン結合−S―S−を開裂することにより防縮性を付与することができる部分酸化獣毛繊維に関する。
詳しくは、本発明は、部分酸化状態で保存しておいたのち、必要時に縮絨処理および/または還元処理することによりフェルト化および/または防縮性の付与が可能な上記の部分酸化獣毛繊維に関する。
また、本発明は、上記の部分酸化獣毛繊維がスライバーであり、このスライバーから製造された紡績糸を主成分として製造された獣毛繊維製品に関する。
更に、本発明は、上記繊維製品を還元処理によって−S―S−結合を開裂することによって得られる防縮性に優れた獣毛繊維製品に関する。
特に、本発明は、上記部分酸化獣毛繊維がスライバーであり、このスライバーを用いて紡績糸を製造し、次いでこの紡績糸を主成分として布帛に製造した後、縮絨処理を施し、次いで還元処理によって−S―S−結合を開裂することによって得られる、ミルド調の風合いを有し且つ防縮性に優れた獣毛繊維製品に関する。
【0009】
また、本発明は、獣毛繊維をそのシスチン結合−S―S−開裂しない緩慢な反応条件で部分酸化することを特徴とする上記部分酸化獣毛繊維の製造方法に関する。
詳しくは、本発明は、シスチン結合−S―S−の部分酸化状態を酸素系酸化剤で実質的にモノ酸化程度の状態である一次酸化状態に酸化される第1段酸化工程と、次いで一次酸化された獣毛繊維に水中で5μm以下の超微細気泡としてオゾン・酸素混合気体を一定時間衝突させて獣毛繊維を水中で気相酸化反応させることにより、獣毛繊維のシスチン結合を実質的にジ酸化状態以上の混合酸化状態である高次酸化状態に酸化する第2段酸化工程によって形成することを特徴とする上記の部分酸化獣毛繊維の製造方法に関する。
更に詳しくは、第1段酸化工程が、室温以下に調整した酸素系酸化剤を含む水溶液中に獣毛繊維をパッドし、直ちに、マングルにかけて酸化剤水溶液の付着量を一定範囲となるように絞ったのち、80〜100℃の水蒸気中で加熱する処理である請求項7に記載の部分酸化獣毛繊維の製造方法に関する。
【0010】
なお、上記において、「部分酸化された獣毛繊維スライバーから製造された紡績糸を主成分とする獣毛繊維製品」とは、この獣毛繊維からなる紡績糸以外の繊維を含んでもよい繊維製品を言う。
また、繊維製品とは織物および編物等の生地およびその生地から仕立てられた衣類を言う。
更に、「実質的にモノおよび/またはジ酸化の混合状態である一次酸化状態」とは、トリおよび/またはテトラ酸化状態のものを含んでもよいことを意味し、また「実質的にトリおよび/またはテトラ酸化の混合状態である高次酸化状態」とは、モノおよび/またはジ酸化状態のものを含んでもよいことを意味する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、獣毛繊維中に−S―S−結合の化学反応性を巧みに利用したものであり、部分酸化した状態では、未処理の獣毛繊維と同様の性質を保持しているとともに、一旦部分酸化処理された獣毛繊維は、本来の未処理獣毛よりも容易に還元され得ること、即ち、低濃度、短時間で還元処理が可能となることを見出し、その特性を生かしたものである。しかも、この部分酸化された状態の獣毛繊維に縮絨処理を施せば、本来の未処理の獣毛繊維と同様な方法で縮絨処理ができること、更には、縮絨処理後に還元処理を加えれば、縮絨処理により発現される特有の風合いを保持した状態で防縮性のを付与できることに着目し、本発明するに至ったものである。
【0012】
本発明の部分酸化獣毛繊維は、シスチン結合−S―S−が酸化されてはいるが、この結合が切断開裂されるまでには完全に酸化されてない状態にあるもので、次のいずれかの酸化状態
【化4】
Figure 2004162220
またはその混合状態にあるものである。
【0013】
このような部分酸化状態にある獣毛繊維は、次のようないくつかの特徴を有している:
・この状態で縮絨処理することによりフェルト化することができる。
・部分酸化獣毛繊維を更に還元処理することによって、容易にシスチン結合を切断することができ、もって防縮性を付与することができる。
・したがって、部分酸化された獣毛繊維を縮絨処理してから防縮処理をすることによって防縮性が付与された縮絨獣毛繊維を得ることもできるし、縮絨処理が加えられていない防縮獣毛繊維を得ることもできる。
・部分酸化状態は、その状態で保存しておくことができ、必要な時点で還元して防縮処理を施すことができる。
【0014】
上記のようなシスチン結合が部分酸化された部分酸化状態の獣毛繊維は、シスチン架橋の特異的な性質を利用したものであり、獣毛繊維を緩慢な条件で酸化処理することによって得ることができる。ここで言う「緩慢な条件での酸化処理」とは、急激な酸化が進まず、シスチン結合が切断されて、−SOH、−SOH、−SOH等が生成する前の状態で酸化状態を停止することができるような制御可能な酸化処理を言う。具体的には、例えば、オゾン、過酸化水素、過硫酸水素カリ、過硫酸カリ、過酢酸、過蟻酸等の酸素系酸化剤を用いて、薬剤濃度、溶液のpH、反応温度、反応時間等を制御して部分酸化条件を決定するものである。
こうした得られた部分酸化状態にあるシスチン結合は、還元処理または加水分解によって開裂することができる。
【0015】
上記のような本発明の部分酸化獣毛繊維は、還元処理によってシスチン結合を開裂することによって獣毛繊維に防縮性を付与することができるが、このようにして防縮性を付与された本発明の防縮性獣毛繊維は、次の2つの態様を含む。
第1の態様の防縮性獣毛繊維は、縮絨処理されてフェルト化した防縮性獣毛繊維である。このような縮絨処理された獣毛繊維は布帛の状態では、当業者の間でミルド調と言われている風合いを有する。そのような第1の態様の防縮性獣毛繊維は、部分酸化された獣毛繊維に縮絨処理を施したのち、還元処理することによって得ることができる。
【0016】
第1の態様のフェルト化され防縮性を有する獣毛繊維は、特に限定されるものではないが、一般には、部分酸化処理は獣毛をスライバーの状態で行い、これを紡績し、生地としたのち縮絨処理を施し、次いで防縮処理を行う繊維製品の形態で得ることができる。
すなわち、酸化処理と還元処理からなる獣毛繊維の防縮加工において、酸化処理を施した後、縮絨処理、染色を行ない、次に還元処理を施してミルド調の風合いを有する防縮加工製品を提供することができる。特に、獣毛繊維の本来の撥水性能を損傷することなく、ミルド調の風合いを有し、尚且つ防縮性と抗ピル性を有する獣毛繊維を製造することができる。また、部分酸化された獣毛繊維からなる布帛を、後の整理仕上げの工程で還元処理して、防縮性を付与することができる。
【0017】
本発明で言う縮絨処理とは、獣毛繊維を湿らせた状態でもみ、組織を密なものとする加工のことであり、その現象としては、獣毛で作った織物やメリヤスを水で濡らして、たたいたり、もんだりして獣毛繊維が相互移動して、長さ、幅、布面などを収縮し、厚さを増し、糸から毛羽が出てそれが互いにもつれからみ、緻密な構造となる。縮絨に使用する機械としては、ストック縮絨機、杵搗機、ロール縮絨機等が挙げられる。
【0018】
部分酸化獣毛繊維のシスチン結合を開裂するための還元処理には、亜硫酸塩、酸性亜硫酸塩、ハイドロサルファイト、二硫化チオ尿素等の硫黄含有還元剤を使用することができる。
適用する還元剤の濃度としては、10g/Lから50g/Lが好ましいが、特に好ましいのは20g/Lから40g/Lであり、反応温度としては、30℃から50℃が好ましく、特に好ましいのは、30℃から40℃である。還元浴のpHとしては、還元剤の種類もよるが、獣毛繊維のシスチン結合の加水分解の性質を考慮して、強アルカリ側の還元処理よりも、弱アルカリから中性付近での還元が好ましい。特に好ましいのは、pH6.5からpH8.0の範囲である。還元剤の使用にさいしては、該還元剤単独、或いは、該還元剤を併用して所定のpHに調整すればよい。例えば、酸性亜硫酸ナトリウム(NaHSO)50%、 亜硫酸ナトリウム(NaSO)50%を併用すれば、溶液内に緩衝作用を示し、同時にpH6.5からpH7.0付近に調整できる。また、pH調整剤として、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)を使用して、所定のpHに調整してもよい。
【0019】
本発明の第2の態様の防縮性獣毛繊維は、部分酸化獣毛繊維を、縮絨処理にかけることなく還元処理して得られる防縮性獣毛繊維である。
第2の態様の場合、防縮処理はスライバーの状態、紡績糸の状態、または編地、織物、不織布の段階で行うこともできるが、好ましくは編地、織物、不織布の段階で行う。
【0020】
部分酸化された状態の獣毛繊維は、その状態で保存しておくことが可能であり、必要なときに、あるいは後工程の業者のところで、縮絨処理または還元剤による防縮処理にかけることができる。
染色を行う場合は、還元処理後に通常の染色を施せばよい。前酸化処理後、染色し還元処理する工程では、還元剤によって変色する場合がある。
【0021】
ここで、本発明の部分酸化獣毛繊維を得ることができる酸化工程を従来の防縮工程で使用されてきた酸化工程と比較する。
獣毛繊維を構成するシスチン結合は下記式で表されるいずれかのルートを経由して最終的な酸化形態であるRSOHに到る。
ここでRはポリペプチド鎖を意味する。
【0022】
ルートB或いはルートCでは、−S―S−架橋の酸化が進行し加水分解されて切断された状態であり、これに属する反応系として過酷な反応条件からなり、次亜塩素酸、塩素ガス、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム等による酸性塩素処理が、これに相当する。
ルートAでは、−SO―S−(I)、−SO―S−(II)を生成した後、酸性亜硫酸ナトリウムや亜硫酸ナトリウムで還元処理することにより、−S―S−結合は切断されてブンテ塩(−SSONa)が生成される。この反応を化学反応式で表すと次のようになる。
【0023】
【化5】
Figure 2004162220
【0024】
塩素剤よる酸化と酸素酸による酸化とでは、その−S―S−結合に対する化学反応性が異なり、塩素剤による酸化では、−S―S−結合を直接攻撃して切断して−SOHを生成するが、酸素酸による酸化は、−S―S−結合を該述したごとくモノ、ジ、トリ、テトラと段階的に酸化状態が進行する。これらの状態は、−S―S−結合は切断しておらず、該述した如く未処理の獣毛繊維と同様の縮絨性を示す。従って、本発明においては、塩素系酸化剤を用いないで酸素系酸化剤を使用する。塩素系の酸化剤の場合は、上記のように段階的に酸化が進まないだけでなく、廃液処理中に河川の有機化合物と反応して所謂、吸着性有機ハロゲン化合物(AOX)を誘発することにつながり推奨すべき薬剤とは言えない。酸素系薬剤として、本発明に有効なものは、オゾン、過酸化水素、過硫酸水素ナトリウム、過硫酸ナトリウム、過蟻酸、過酢酸等である。
【0025】
更に、本発明では、部分酸化された状態の−S―S−結合を持つ獣毛を得るために、上記酸素系酸化剤を用いて酸化を行うとともに、更に、緩慢な反応条件を選択する。緩慢な反応条件とは、−SOH、−SOH、−SOHを生成しない条件である。
−SOHが形成されているかどうかの評価は、繊維表面から1ミクロン程度の深さまでの酸化状態を検出できるFT−IRを用いて、1040cm−1吸収を測定することによって容易に検出できる。
また、−SOH化することにより獣毛繊維の表面はアニオン性になり、塩基性染料で容易に染色されるようになるため、塩基性染料の染着性によっても評価することができる。このような塩基性染料としては、例えばAstrazon Blue 3RL(バイエル社製)を例示できる。
その染色方法としては、1g/L濃度のAstrazon Blue 3RL 水溶液と、1mL/L濃度の非イオン性浸透剤を含む水溶液に、浴比 1:100、20℃、5分間獣毛繊維を浸漬し、次に水洗して着色状態を観測する方法を用いることができる。
【0026】
部分酸化状態の−S―S−結合を有する獣毛繊維を本発明の方法によって還元処理し、これを開裂することによって、シスチン架橋密度の高いエキソ−クチクルの架橋密度を低下させて水に対する膨潤度をエンド−クチクルと同程度にし、スケールのバイメタル構造をなくし、スケール先端部の立ち上がりをなくすことになり獣毛繊維に防縮性を付与することができる。
【0027】
本発明を更に詳細に説明するために、獣毛繊維の表皮組織の形態学的性質と組織化学的な反応性、および防縮性が付与される機構について、説明を加える。
図1に示すように、獣毛の表皮組織(スケール)は、エピ−クチクル、エキソクチクル(a)および(b)、エンド−クチクル、細胞間充填物(セメント質)から構成され、それぞれのシスチン含有量は、12重量%、35重量%(a)、15重量%(b)、3重量%および1重量%であることが報告されている。シスチン架橋密度が高いポリペプチド鎖が多い領域では水に対する膨潤性は少ないが、逆に、シスチン含量の少ないところでは膨潤性が高い。獣毛繊維を水に浸漬すると、獣毛全体では、約35%程度膨潤するが、エキソ−クチクルでは、11%、エンド−クチクルでは、110%、細胞感充填物(セメント質)では、260%程度膨潤する。従って、エキソ−クチクルの(a)あるいは(b)のシスチン架橋結合を切断してやれば、当然、エキソ−クチクル(a)および(b)はより水膨潤するようになり、エキソとエンド間の膨潤差は是正され、獣毛スケールの先端の立ち上がりは防止され、その結果、繊維の絡み合いも防止されることになる。
獣毛繊維を湿潤下で膨潤した獣毛繊維の表面状態を低真空走査型電子顕微鏡を用いて観測したものを図1に示した。
【0028】
本発明で言う獣毛繊維の防縮性は、ISO 6330法に基づいて設定されWMTM31法(Wool Mark Test Method 31)を採用して評価した。本発明でいう防縮性を有するとは、この評価基準に従って、セーター等の編物類では、該述した5A×2回で面積収縮率が8%以下、肌着では5A×5回で面積収縮率が8%以下、織物類では5A×3回で経、緯の収縮率で各々3%以下であることをいう。
【0029】
また、図4で示されている、繊維自体の防縮性(すなわち、撚り等で獣毛繊維を拘束しない状態の防縮性)とは、次のような方法でスライバーを処理したときの繊維同士の絡み合いの程度によって主観的に評価したものである。すなわち、トップ・スライバー2.5gを秤量しそのスライバーの中点を綿糸で結び毬藻状に丸め、耐水堅牢度を調べるための装置、ラウンダオメーターの200ccのガラス容器に入れ、その容器に水100ccと浸透剤を入れて2時間運転したあとの、繊維同士の絡み合いの度合いが小さく、フェルト・ボールが大きくなったものを防縮性を有すると評価した。
【0030】
本発明は、獣毛繊維の防縮性や縮絨性を取り扱うものであり、その改質は、表皮組織、即ち、スケール組織の改質を目的にしているため、加工方法も表層酸化であり、且つ表層還元に集約される。
「浸漬」方法では獣毛繊維内部まで薬剤が浸透拡散し、獣毛繊維の内部組織まで変質してしまう可能性がある。これに対して「パッド」方法であれば、絞り率と薬剤の水溶液濃度とを変えることにより、一定濃度の薬剤を獣毛繊維に含浸させることができ、更に、「スチーム」方法を用いることによって、含浸された量だけ迅速に反応させることができる。そのため、本発明の部分酸化処理および還元処理の方法としては、「パッド」+「スチーム」方法が本発明の目的である表層酸化処理に好都合である。
【0031】
本発明の部分酸化獣毛繊維は、獣毛繊維の表皮部分のみのシスチン結合を効率よく、斑なくかつ短時間で部分酸化させるために、2段階で酸化を行うことを特徴とする。第1段の酸化工程では獣毛繊維のシスチン−S―S−結合を酸化する能力のある酸化剤を用いて、パッド・スチーム処理して一次酸化処理を行う。次いで第2段の酸化工程では、水中でオゾンを5μm以下の超微細気泡として獣毛繊維に吹き付けてシスチン結合を更に高次の酸化状態に部分酸化する。
本発明で−S―S−結合の一次酸化状態とは、−SO−S−で表されるモノ酸化状態であり、高次酸化状態とは、−SO−S−、−SO−SO−で表されるジ酸化以上の酸化状態をいう。
【0032】
第1段酸化工程での一次酸化は、一般にパッド(含蓄)・スチーム(反応)方法、場合によっては、パッド・ストアー(室温放置反応)で酸化する。この工程では、使用する酸化剤の種類およびその繊維との反応性によって、−SOHまでの酸化を経由しないモノ酸化程度の酸化処理条件を設定する必要がある。過硫酸水素カリウムを使用する場合は、パッド・スチーム方法が該繊維の内部の酸化を防止しつつ、表皮部分のシスチン結合だけを酸化し、それによって後続する第2段酸化工程でのオゾンによる表皮部分の高次酸化を容易にする。また、過酸化水素を用いた弱酸性下のパッド・スチーム処理も有効な処理方法である。
【0033】
第1段の酸化工程では、酸化剤水溶液を入れた浴中に、浸透剤を入れ、浴温度をできるだけ室温以下の温度に調整し、獣毛繊維との液接触時間を数秒になるようにパッドし酸化剤水溶液が該繊維内部まで到達せず、しかし表皮に十分浸透した段階でパッドから取り出し、直ちに、マングルにかけて酸化剤水溶液の付着量を一定範囲、例えば獣毛繊維に対して60〜120重量%、好ましくは80〜100重量%となるように絞る。このように一定の酸化剤水溶液を含んだ該繊維を、次に繊維の乾燥を避けつつ一次酸化反応を促進するために、水蒸気中で95℃前後の温度で処理を行うものである。
【0034】
第2段階の酸化工程では、オゾン発生装置から製造させたオゾン・酸素の混合ガスを液循環ポンプに吹き込み、更にライン・ミキサーを通してオゾンを5ミクロン以下の超微細気泡として含有する水生オゾン処理液を調整し、この液を一次酸化された獣毛繊維に水中で吹き付けて衝突させて、前もってシスチン結合が酸化されたエキソ・クチクルb層部分を優先的に、迅速にオゾン酸化して高次の部分酸化状態にする。こうしてシスチン結合を温存した部分酸化獣毛繊維が得られる。
【0035】
第2段の酸化工程は、酸化剤によって一次酸化された獣毛繊維をオゾンにより高次酸化する段階であるが、通常、オゾンによる酸化では長時間を要し、シスチン結合を切断するには十分な酸化状態に持っていくことは困難であった。即ち、獣毛繊維をオゾン酸化する場合、高濃度のオゾンガスやオゾン水を用いて、10分ないし30分間処理する必要があり、そのような条件では、連続処理は不可能であった。これに対して本発明では、前処理方法として第1段酸化工程で一次酸化しておき、且つオゾンを特定の状態にするとともに、繊維への接触方法を工夫することによってオゾンによる高次酸化を容易に、且つ短時間で可能にしたものであり、それによって連続処理工程が可能となった。
【0036】
即ち、本発明は、オゾンを5ミクロン以下の超微細気泡として高濃度で水中に分散させるものであり、更にこのような状態でオゾンを含有するこの水性処理液を獣毛繊維に吹き付けて、気相オゾンによる気固反応させることを特徴とするものである。ライン・ミキサーから出た5ミクロン以下の超微細気泡を多孔性のサクション・ドラム面に収集させる超微細気泡飛散防止装置を開発して、超微細気泡を繊維に衝突させる回数を増やしたことも本発明を完成させることに貢献した。
【0037】
水中に分散された気泡状態のオゾンによって酸化処理するに当たって、一般に気泡が水中に存在すると、繊維への液の濡れを妨害し液の浸透に悪影響を及ぼすものである。本発明ではこの障害を解決する手段として、先ず、獣毛繊維のスライバーをロータリー・ギルで十分開繊して薄い帯状にし、多孔性のサクション・ドラム面上に巻き付け、オゾン・酸素混合ガスをライン・ミキサーを用いて5ミクロン以下の超微細気泡とし、繊維と繊維との間にこの超微細気泡を貫通させるために、液をサクションして繊維への衝突回数を増加させ、もつてオゾン酸化を促進する手段を採用している。
【0038】
本発明の部分酸化された獣毛繊維を製造する工程の代表的な例を図2を用いて詳細に説明する。使用する獣毛スライバーは、例えば、25g/m程度のトップであり、例えば9本の該トップをギルを用いて開繊して帯状にし、ドラフト倍率は、獣毛の繊度によって異なるが、1.4倍から4倍程度であり、好ましくは、1.66程度とする。獣毛トップの供給速度は、0.2〜8m/minであり、好ましくは、3〜6m/minである。
【0039】
帯状に整形された獣毛トップは、酸化剤と浸透剤を含む水溶液に浸漬し、絞りマングルで絞る。酸化剤としては、過硫酸水素カリウム、過硫酸水素ナトリウム、過硫酸、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムのような過硫酸塩または酸性過硫酸塩が好ましく、過酸化水素、過酢酸またはその塩類,過蟻酸またはその塩類等がより好ましい。特に、好ましいのは、粒状であること、溶解し易いこと、溶解した水溶液が32℃以下の温度で貯蔵安定であることから過硫酸水素カリウム〔商品名「オキソン」(2KHSO・KHSO・KSO活性組成としてKHSOで42.8%である);デュポン社製〕である。浸透剤としては、酸化剤に対して安定であることから、「アルコポール650」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製)が好ましい。酸化剤の濃度としては、酸化剤の種類や反応温度、液のpH、反応時間等によって異なるが、獣毛繊維のシスチン架橋結合を切断しないまでの条件、即ち、モノ酸化、ジ酸化程度の酸化状態までで酸化条件が選ばれる。この条件を達成するための条件として、例えば、「オキソン」を使用して場合、絞り率100%であれば、10g/Lから50g/L、好ましくは、20g/Lから40g/Lである。浸透剤は「アルコポール650」の場合、2g/L程度が適当である。パッド液の温度としては、液中で反応させないためにできるだけ低温が好ましい。特に好ましいのは、15℃から25℃である。液のpHとしては、酸性側が好ましい。より好ましくは、pH2.0である。
【0040】
過酸化水素を使用する場合は、酢酸ナトリウムと酢酸でpH 5.5の緩衝液を作成し、その液に2g/Lの浸透剤「アルコポール650」を入れ、更に35%原液の過酸化水素を濃度100ml/Lから300ml/L程度になるように希釈して、パッド浴に入れ液の温度を室温、好ましくは、15℃から25℃に調節して、帯状の獣毛繊維をこのパッド液に浸漬して100%に絞る方法も例示できる。
【0041】
絞りマングルで絞った後、酸化剤を獣毛スライバーに反応させるのであるが、酸化剤の種類によって処理条件は異なる。過蟻酸、過酢酸、過マンガン酸カリの場合は、室温に放置させる方法がよい。放置時間は、酸化剤の種類と濃度によって異なるが、2分から10分程度でよい。また、過硫酸水素カリウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸過水素の場合は、これらの水溶液をパット後、常圧下のスチーミング処理として、95℃で、5分から15分程度であり、好ましくは、10分程度で十分、一次酸化は行なわれる。
【0042】
本発明のもう一つの特徴は、酸化剤、例えば、過硫酸水素カリウムや過酸化水素をパッド・スチーム方法で反応させて、−S―S−結合を、実質的にモノ酸化状態までに留めておき、後の工程でオゾンを使用して更に高次酸化する点にある。この操作を踏むことによって、オゾン単独による酸化速度よりも、あるいは、過硫酸水素カリウムや過酸化水素単独よりも、前もって−S―S−結合を一次酸化しておき、次にオゾン酸化する方がオゾン酸化反応速度が著しく迅速になり、獣毛繊維スライバーの連続処理が初めて可能になり、工業化に成功するに至った。
【0043】
本発明の一次酸化された獣毛繊維を高次酸化状態に酸化するオゾン酸化は、オゾン・酸素混合ガスを5ミクロン以下の超微細気泡として獣毛スライバーに水中で吹き付けて衝突させ、気相反応により高次酸化を行なうことを特徴とするものである。オゾン発生装置としては、発生速度250g/hr程度の発生装置(例えば、クロリン・エンジニアリング(株)製)で、十分獣毛繊維スライバーの連続処理が可能であり、例えば、酸素ガスを40L/minの速度で発生装置に送り込み発生したオゾンガスは、混合ガス中、質量濃度で6.5重量%、体積濃度で0.1g/Lであり、一次酸化の程度その他によっても異なるが、一つの例では4g/minのオゾン・酸素混合ガスで処理する条件が最適であった。獣毛繊維をミルド調で縮絨風合いを有する製品に防縮性と抗ピリング性とを付与するためのオゾンの供給量は、羊種にもよるが獣毛重量に対して、6%owf以下、好ましくは、1.5%owfから5%owfが最適である。
【0044】
オゾンガスを効率よく獣毛に反応させるために、水中でできるだけ微細な気泡にし、その気泡を獣毛に衝突させ、そこで酸化反応を起こさせることが本発明の特質の一つである。そのために、オゾンの水溶解度が非常に低いこともあいまって、獣毛の表皮組織のみを酸化させる結果となり、内部組織である皮質組織は保護されて獣毛の表皮改質効果は一段と高まる結果となる。オゾン・酸素混合ガスを5ミクロン以下の超微細な気泡にする方法としては、該混合ガスを水流ポンプに導入し、水圧を高めて円筒内の突起物にたてて泡を超微細気泡にする方法が好ましい。
【0045】
ラインミキサーで製造された超微細気泡を集めて、帯状の獣毛スライバーに吹き付け衝突させるために、図3に示す特殊装置を用いることが有効である。一次酸化処理された帯状の獣毛スライバー(2)をステンレス製のメッシュベルト(1)(3)に挟み、サクション・ドラム(5)を備えたオゾン処理槽(9)に送り、ラインミキサー(13)から超微細気泡を帯状の獣毛スライバーに吹出口(6)を通して吹き付けるのであるが、この超微細気泡を帯状の獣毛スライバー上に集めるために、サクション・ドラムの外周に超微細気泡収集装置(4)を装填し、更に、サクション・ドラムの中心部(7)から超微細気泡を含む液をサクションして、帯状の獣毛スライバーに超微細気泡を衝突させる方法である。オゾン発生装置(11)から製造されたオゾン・酸素混合ガスは水流ポンプ(12)に導入して気液混合し、水圧を高めてラインミキサー(13)に送り超微細気泡を製造して、ステンレス製のメッシュベルトに挟まれた帯状の獣毛スライバーに吹き付ける。更に、サクション口(7)からサクションする装置を用いることより、獣毛繊維の表層酸化を完成する。
【0046】
オゾンはフッ素に次ぐ強力な酸化剤であると言われているが、酸性側とアルカリ側では、その性質が異なる。即ち、酸性側では、
+ 2H + 2e = O + HO E = 2.07V
であり、アルカリ側では、
+ HO + 2e = O + 2OH = 1.24V
であり、酸性側の方がアルカリ側より酸化力は強く、またオゾンの水に対する溶解性は高く、半減期もはるかに長い(pH 10.5では半減期1秒、pH2.0では半減期105秒)。
【0047】
本発明は、pH 1.5からpH 2.5の酸性側で行い、好ましい条件としては、pH 1.7からpH 2.0がよい。オゾンは冷水中では溶解度は高いが、反応性は低い。反応性を高めるために処理温度を高める必要があるが、その温度範囲として、30℃から50℃がよいが、あまり温度が高いとオゾン・酸素の混合ガスの分子運動が高くなり、処理液槽から飛散することになる。特に好ましい温度は、40℃である。反応時間は、獣毛スライバーの供給速度、即ち、オゾン処理槽の液接触時間によって反応を制御することができる。スライバーの供給速度が0.5m/minの場合、接触時間は2分であり、速度2m/minの場合33秒となるが、反応時間の制御によって、防縮性の制御、抗ピリング性の制御が可能である。
【0048】
図2に示すように、前処理酸化、オゾン酸化処理後、帯状の獣毛スライバーは、温水洗、水洗され、最終浴槽で獣毛スライバーの風合いや紡績性を考慮して、柔軟剤や紡績油剤処理し、次に乾燥処理される。油剤としては、例えば、1g/L アルカミン CA New〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)〕および1g/L クロスルーベ GCL〔クロスフィールズ/ミキ(株)社製〕を最終浴槽に添加して40℃で処理することもできる。
【0049】
乾燥処理された獣毛スライバーは、特に限定しないが、通常の紡績方法に従って、所定の番手、撚数に設定して紡績する。酸化処理された紡績糸は、特に限定しないが、通常の織物やセーター類からなる編物を作成し、特に限定しないが、通常の洗縮絨機を用いて、洗絨や縮絨処理を施して、ミルド調の風合いを創出し、次の工程である還元処理に供される。場合によっては、該方法に従って、酸化処理され乾燥処理された獣毛トップ・スライバーは、数日間放置後、下記の方法に従って還元処理することもできる。
【0050】
洗絨、縮絨処理された織物或いはセーターの様な編物は、或いは、酸化された状態で数日間放置された獣毛トップ・スライバーを還元処理を施して、はじめて次式に示すように−S―S−結合は切断される:
【化6】
Figure 2004162220
還元処理装置としては、特に限定しないが、連続式、バッチ式いずれの方式でもよい。
【0051】
この方法では、表皮組織のうち、特に、エキソ・クチクルb層が攻撃され、シスチン−S―S−架橋密度が低下して水に対する膨潤性が増し、エンド・クチクルと同程度の水膨潤性になるため、獣毛繊維のスケールのバイメタル特性は失われ、水中でのスケールの立ち上がりを防止することになる。このため獣毛繊維の特性である撥水機能は失われることなく、撥水性を保持したままで、高度の防縮性と抗ピリング性を付与することができる。還元剤としては、特に限定されないが、亜硫酸塩が好適である。亜硫酸塩の中では酸性亜硫酸ナトリウムNaHSO(pH5.5)よりも亜硫酸ナトリウムNaSO (pH9.7)の方が好ましい。一次酸化およびオゾン酸化が酸性側で行なわれているため、還元処理をアルカリ側で処理することは中和処理の点からも好ましい。亜硫酸ナトリウムの濃度としては、10g/Lから40g/Lの範囲が好ましいが、特に、20g/L付近が好ましい。温度としては、40℃前後で行なうとよい。
【0052】
還元処理後、水洗し、風合いを強く要求する場合は、1g/L アルカミン CA New〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製〕を処理浴に添加し、40℃で処理することもできる。
乾燥は、熱黄変性を避けるために、80℃前後で乾燥するとよい。
【0053】
このように本発明の方法では、獣毛繊維をシスチン結合が切断されない程度の酸化処理を施して乾燥して−SO―S−、−SO―S−、−SO―SO−の状態の酸化レベル、すなわち部分酸化状態に留めることができ、この状態では未処理の獣毛繊維と同様の縮絨特性を示し、また、その酸化状態を保ったまま保存もできるので、この性質を利用して、該酸化処理された獣毛繊維の織物或いはセーター等の編物に、別のミリング仕上げ装置で水縮絨処理して、ミルド調の風合いを創出した後、還元処理を施すことによって、シスチン−S―S−結合は均一に、完全に切断されることになり、処理工程が完全に2段に分離可能な、所謂半連続処理方法が可能である。こうして得られた処理獣毛繊維は、エキソ・クチクルb層が選択的に攻撃され、組織構造的に硬い構造のエピ・クチクルa層の一体的な構造体は温存される結果、撥水性を帯びたエイコサン酸も温存され、該繊維全体の撥水性が保たれ繊維強度も保持される。
【0054】
これに対して、従来の防縮処理方法として採用されてきた獣毛繊維の塩素化反応では、シスチン(−S―S−)結合が塩素酸化処理の段階で切断されてスルホン酸(−SOH)が生成されている。即ち、酸化処理の段階で既に獣毛繊維に防縮性が付与されたことになる。従って、縮絨を伴うミルド調の防縮加工はできず、後の還元処理は、単に残留する塩素剤を還元駆除する目的でのみ実施されるに過ぎない。
【0055】
こうして部分酸化処理された獣毛繊維スライバーは、次いで水洗・乾燥し、通常の方法に従って、紡績し、織編して布帛の状態にし、バッチ式あるいは連続式いずれの方式でもよいが、洗絨処理、縮絨処理を施して、フェルト状、ミルド調に布帛を調整した後、バッチ式あるいは連続式いずれの方式でもよいが、還元剤例えば、亜硫酸塩で還元処理して、シスチン結合を切断して、エキソ・クチクルb層のシスチン架橋密度を低下させ、水に対する膨潤化、流動化、可溶化を促進させ、一部のタンパク質を該繊維外に流出させる。還元処理においては、弱アルカリ(例えば、pH9)の方が弱酸性(例えばpH5)よりもシスチン架橋は容易に切断され流出タンパク質の量も多い。
【0056】
本発明の方法により、シスチン結合が部分酸化された状態(−SO―S−、−SO―S−、−SO―SO−)では、−S―S−結合は切断されておらず、未処理の獣毛繊維と同様の縮絨性能を有し獣毛繊維独特のミルド調風合いを創出することができる。尚、且つ本発明の部分酸化獣毛繊維は、縮絨処理を加えたのち、この縮絨状態を保つために、還元処理を施して防縮性能を付与することができる。更に、本発明は、酸化処理と還元処理とを連続して行う必要がなく、酸化処理したのち水洗・乾燥して貯蔵し、必要な時に、縮絨処理を省略して還元処理して、通常の防縮加工製品を製造することもできる全く今までに開発されなかった画期的な方法を提供するものである。
【0057】
本発明の方法により、このエキソ・クチクルb層の水膨潤度をシスチン架橋密度を前酸化(一次酸化)、オゾン酸化(高次酸化)し、縮絨を加える場合もあるが、亜硫酸塩による還元処理を施すことによってエンド・クチクルの水膨潤率と同程度にして、両者の間に生じたバイラテラル的機能を失わせているため、得られた獣毛繊維は水に浸漬してもスケールの先端が立ち上がらず、水洗濯中の収縮は発生しない。且つ、エピ・クチクル層内に存在し、撥水機能をつかさどるエイコサン酸チオエステル層が依然として温存されているため、撥水性を損なうことなく、高度の防縮性を付与することができる。更に、繊維にスケールが温存されていることから、スケールを剥離した防縮加工方法やスケール表面を樹脂で被覆した防縮加工方法よりも、繊維の単繊維引き抜き摩擦抵抗が高く、繊維同士の移動が抑制され、それだけピリングしにくい結果となる。
【0058】
獣毛繊維の一つの特徴は、既に該述したようにシスチン(−S―S−)含量が表皮や皮質を構成する各組織によって異なることである。本発明は、シスチン結合の特異性を利用して、−SO―S−、−SO―S−、−SO―SO−までの部分酸化の状態に留めておき、この状態では未処理獣毛と同程度の縮絨性を示すことにより、毛製品をミルド調に仕上げ、場合によっては染色を施した後、還元処理や加水分解処理似かけてシスチン架橋結合を完全に切断してスルホン酸(−SOH)とブンテ塩(−SSONa)が生成されることになる。従って、本発明の特質は、いかに前酸化を施すかが決め手となる。
【0059】
なお、本発明における獣毛繊維には、羊毛、モヘア、アルパカ、カシミヤ、ラマ、ビキューナ、キャメル、アンゴラが含まれる。
【0060】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前述の趣旨に適合しうる範囲で適当に変更して実施することは、いずれも本発明の技術範囲にふくまれる。
〔抗ピリング性および撥水性の測定方法および評価基準〕
(1)抗ピリング性の測定方法
JIS L 1076.6.1Aに準拠して測定して定量的に表した。
ピリング3級以上を抗ピリング性を有するとして評価した。
(2)撥水性の測定方法
当該繊維を用いて仕上げた織物上に水滴を滴下し、織物への水滴の浸透性によって定性的に評価した。
評価の基準は次の通りである。
○:30分後も水滴が織物上に残存している(天然獣毛繊維と同等)
△:2〜30分でほぼ水滴全量が織物に浸透する。
×:2分未満でほぼ水滴全量が織物に浸透する。
また、獣毛繊維に撥水性を与えているエピークチクルの表層の存在は、アルベルデン反応(Wool Science Review Vol.63(1986)、に記載)により、表面に気泡が生成することによっても確認することもできる。
【0061】
実施例
図2に記載の工程図に従って、獣毛スライバーを連続的に処理した。各工程、即ち、一次酸化処理工程(パッド処理およびスチーム処理)、オゾン処理工程、水洗工程および乾燥工程を通してのスライバーの走行速度は、2m/minであった。各工程での処理条件は以下の通りである。
〔一次酸化処理工程〕
(1)パッド処理
オーストラリア産メリノ種獣毛20.7ミクロンのスライバー(25g/m)9本をロータリー・ギルに送り、1.66倍にドラフトして獣毛スライバーを帯状に開繊した。この帯状スライバーを下記の組成の水溶液にパッドし、マングルで絞った。
パッド水溶液組成
40g/L濃度の過硫酸水素カリウムKHSO(デュポン(株)社製、商品名「オキソン」、および
2g/L濃度の浸透剤「アルコポール650」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製)
処理条件
パッド時間: 2秒
温度: 常温
pH: 2.0
絞り率: 100%
マングル絞り後、スチーム処理工程に搬送した。
【0062】
(2)スチーム処理
湿潤した帯状の獣毛スライバーをコンベアー・ネット上で下記の条件でスチーム処理した。
スチーム処理条件
95℃、10min
スチーム処理後、オゾン処理槽に搬送した。
【0063】
〔オゾン処理工程−高次酸化処理〕
スチーム処理したスライバーを図3に示すサクション式オゾン処理槽に送り下記の条件でオゾン酸化を行った。
オゾン処理条件
250g/hr オゾナイザー〔クロリン・エンジニアリング(株)社製、商品名「OZAT CFS−3」〕を使用し、酸素源として酸素ボンベを用いた。
オゾナイザーへの酸素供給速度: 40L/min
オゾン発生質量濃度: 6.5重量%
オゾン発生体積濃度: 0.1g/L
オゾン発生量: 4g/min
獣毛への見掛けのオゾン供給量: 1.48%OWF
25g/m × 9 × 1/1.66 = 135.5g/m wool
135.5g/m × 2m/min × 接触時間0.55min(33sec) = 149.05g wool
4g/min(O) × 0.55min = 2.2g O
2.2g/149.05 × 100 = 1.48%owf O
【0064】
発生したオゾンガスを、揚水量80L/minからなる4つのポンプから各々4つのライン・ミキサーに送った。各々のライン・ミキサーのオゾン吹込量は、10L/minであり、合計、40L/minであった。
図3に示す超微細気泡飛散防止装置4を用いて、超微細気泡をサクション・ドラム5上の獣毛スライバー2に吹き付けて衝突させ、更に、その回数を増加させるためにドラムの内部から処理液をサクションしてドラムの外側に循環させて、下記の条件でオゾン処理を行った。
オゾンの気泡:5ミクロン程度の超微細気泡
処理温度: 40℃
pH: 1.7(硫酸調整)
接触時間: 33秒
オゾン処理後、3槽からなる水洗処理槽17、18、19(図2)に搬送した。
【0065】
〔水洗処理〕
酸化処理された帯状のスライバーをサクション式水洗処理槽17中で、40℃の温水で33秒間処理し、更に、次の水洗処理槽18に搬送して同条件で温水洗いし、次に、水洗処理槽19に搬送して同条件で冷水洗いして、最終処理槽(油剤処理槽20)に搬送した。
【0066】
〔紡績油剤・柔軟剤処理〕
水洗された帯状のスライバーを最終処理槽20に送り、下記の処理剤を含む処理液中で40℃、33秒間処理して乾燥機に搬送した。
処理液組成
1g/L濃度の「アルカミンCA New」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製)
1g/L濃度の「クロスルーベ GCL」(クロスフィールズ/ミキ(株)社製)
【0067】
〔乾燥工程〕
乾燥は、サクション式熱風乾燥機21を用いて、80℃で乾燥した。
【0068】
〔紡績・製織工程〕
乾燥を終えた帯状の処理済みスライバーをギル掛けし、Z670t/m × S640t/m の撚りで2/60Nmの梳毛織糸に紡績して、織密度 58本/inch、目付け280g/mのツイード織物を製織した
【0069】
〔煮絨工程〕
上記で製織したツイード織物を連続煮絨機 VS〔木村鉄工(株)社製〕を用いて、90℃で縮絨し、全体の処理時間は5分であった。
〔縮絨工程〕
バッチ式縮絨機 RMA−4S〔木村鉄工(株)社製〕を用い、80℃で50分間縮絨処理をおこなった。
〔ロープ洗絨工程〕
バッチ式 SMM−4〔木村鉄工(株)社製〕を用いて、洗縮絨剤「エマール71」(花王(株)製)の1%溶液で、40℃、50分間洗縮絨処理を行い、40℃、80分間水洗処理を行った。
〔脱水乾燥工程〕
バッチ式 KDH−63〔木村鉄工(株)社製〕を用い、乾燥処理を行った。
【0070】
乾燥処理された織物を常圧液流染色機 ADU−S−1.5M〔旭工業(株)社製〕を用い、下記の組成液を調製し、50℃、30分間還元処理を行った。
脱気浸透消泡剤「MAC−100S」(共栄社化学(株)社) 1g/L
酸性亜硫酸ナトリウムNaHSO 7.5g/L
亜硫酸ナトリウムNaSO 7.5g/L
組成液のpH 6.5
【0071】
還元処理された織物を常圧液流染色機 ADU−S−1.5M〔旭工業(株)社製〕を用い、反応性染料で下記の条件で染色した。
染色助剤
SFN 800(大阪ケミカル工業(株)社製) 1g/L
アルベガール(チバ・スペシャルティ・ケミカルス(株)社製) 2% OWF
酢酸 2% OWF
ボウ硝 5g/L
上記染色助剤を用いて、40℃、10分間処理し、10分後下記の染料を常圧液流染色機に投入した。
染料組成
Lanasol Yellow CE (Ciba) 0.6% OWF
Lanasol Red CE 0.7% OWF
Lanasol Black CE 4.0% OWF
昇温速度は、2℃/minに制御し、98℃まで昇温した後、120分間この温度を保持し、その後、廃液し、新液を染色機に入れて、3g/Lのアンモニア水で、80℃、20分間処理し、最後に水洗、湯洗した。
【0072】
〔剪毛工程〕
織物の染色乾燥後、岩倉精工(株)社製の剪毛機を用いて、シャーリングした。
〔蒸絨工程〕
蒸絨機 SD47WS〔木村鉄工(株)社製〕を用いて、圧力10kg、スチーミング処理 2分、冷却処理 2分で整理仕上げした。
【0073】
処理された織物の防縮性能、抗ピリング性、撥水性を調べるため、WM TM 31 洗濯試験方法、ICIピリング試験、織物の表面に水滴を滴下して、その浸透性から評価する撥水性の試験を行なった。その結果を表1に示す。ウール・マーク洗濯機洗い基準の面積収縮率の基準に合格しており、ICIピリング試験においても、4級の抗ピル性を示している。織物表面に水滴が60分間放置しても織物の裏面に浸透せず十分な撥水機能が備わっているものと認められる。
【0074】
また、本発明の根幹をなす、酸化状態では防縮性は付与されていないが還元処理を施して始めて防縮性が付与されることについて、簡単で、明確な実験をするために、実施例1の比較参照用試料として次の(A)〜(E)を作製しフェルト・ボール試験を行った。
比較試料(A):未処理獣毛スライバー、
比較試料(B):実施例1のオゾン処理の条件で過硫酸水素カリウム「オキソン」とオゾンを用いて逐次部分酸化したスライバー、
比較試料(C):スライバー(B)を20g/L亜硫酸ナトリウム溶液で還元処理したスライバー、
比較試料(D):スライバー(B)を30g/L亜硫酸ナトリウム溶液で還元処理したスライバー、
比較試料(E):スライバー(B)を40g/L亜硫酸ナトリウム溶液で還元処理したスライバー、
比較試料(C)〜(E)はいずれも、還元処理条件を50℃、30分間、バッチ式のトップ染色試験機で行ない、次いで、水洗乾燥したものである。
フェルト・ボール試験
試験法:ラウンダオメーター試験機を用いて連続2時間、試験機を回転させて2.5gの羊毛繊維塊をフェルト化させた。防縮性のない羊毛繊維塊は、フェルト化して、その体積は減少し、逆に繊維塊の密度は増加することから防縮性を評価した。
評価法:フェルト・ボールの状態を視覚的に観察し、防縮性の高いものは、フェルト・ボールの直径が大きく、防縮性のないものは、逆にその直径は小さいことから、防縮処理羊毛の性能を評価する。
この結果を図4に示す。この結果からも、酸化処理のみでは、フェルト・ボールは小さく防縮性は付与されていないが、還元処理を施して初めて、フェルト・ボールは大きくなり防縮性が付与されていることがわかる。
【0075】
比較例
実施例1の方法に従って「オキソン」とオゾンを用いて逐次部分酸化し、次に、紡績、製織、染色、整理仕上を行ったが、縮絨および還元処理を省略した。この織物の評価結果を表1に示す。毛織物は、酸化漂白されているのみで、防縮性、ピリング性は未処理と同程度であり、処理効果は全くなかった。
【0076】
比較例
実施例1の方法に従って「オキソン」とオゾンを用いて逐次部分酸化し、次に、紡績、製織、洗絨、縮絨、染色、整理仕上を行なったが、還元処理のみを省略した。この織物の評価結果を表1に示す。毛織物は洗絨、縮絨されているため、織物の洗濯収縮率が少し減少しているのみで、防縮性、ピリング性は未処理と同程度であり処理効果は認められない。
【0077】
実施例
過硫酸水素カリウム「オキソン」酸化処理を下記の「過酸化水素」酸化に代えた以外、すべて実施例1の方法に従った。
パッド液の組成
過酸化水素(35%) 200ml/L
酢酸ナトリウム 25g/L
パッド液の温度およびpH 25℃、pH5.5(酢酸にて調整)
表1に示すように、過硫酸水素カリウム「オキソン」を過酸化水素に置き換えても、毛織物の防縮性、ピリング性、撥水性において同程度の効果を示していることがわかった。
【0078】
【表1】
Figure 2004162220
【0079】
【発明の効果】
本発明は、獣毛繊維の撥水性を損なうことなく防縮性と抗ピリング性を有し、なお且つミルド調の風合いを有する獣毛繊維を製造することができる。また、酸化処理後、半製品の形に留めて置き、必要に応じて還元処理して撥水性を損なうことなく防縮性と抗ピリング性を付与できる。また本発明は、塩素系等の有害な薬剤を使用することなく、上記の特性を有する獣毛繊維の製造方法を提供する。本発明に従えば、二段階の処理操作に別れ、即ち、酸化操作、還元操作に別れ、その間に縮絨操作、染色操作、一次保存操作を加えることができ、工業化の点でも極めて利用価値、応用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】吸水による羊毛繊維の表面構造の変化およびスケール立ち上がりの説明図。
【図2】本発明の部分酸化獣毛繊維の連続製造法に使用する装置の一例の断面図。
【図3】本発明で使用することのできるオゾン処理装置の断面図。
【図4】比較試料のスピンボール試験結果の写真。
【符号の説明】
1:オゾン処理装置のメッシュベルト(外)
2:原料獣毛繊維(一次酸化処理を受けた獣毛繊維)
3:オゾン処理装置のメッシュベルト(内)
4:オゾン処理装置のドラムカバー(超微細気泡飛散防止装置)
5:オゾン処理装置のサクションドラム
6:オゾン・酸素混合ガス含有液の吹出口
7:サクション口
8:液吸込防止板
9:オゾン処理槽
10:オソン処理液液面
11:オゾン発生器
12:オゾン・酸素混合ガス含有液循環用ポンプ
13:ラインミキサー、
14:パッド処理、
15:スチーム処理、
16:オゾン処理、
17:水洗処理、
18:水洗処理、
19:水洗処理、
20:油剤処理、
21:乾燥、
22:エピクチクル層、
23:エキソクチクル、
24:エンドクチクル層、
25:細胞間充填物、
A:比較試料Aのフェルト・ボール、
B:比較試料Bのフェルト・ボール、
C:比較試料Cのフェルト・ボール、
D:比較試料Dのフェルト・ボール、
E:比較試料Eのフェルト・ボール。

Claims (11)

  1. シスチン結合が次式
    Figure 2004162220
    のいずれかで表される部分酸化状態またはこれらの混合状態にあり、縮絨処理を施したのち、または施さない状態で、還元処理によってシスチン結合−S―S−を開裂することにより防縮性を付与することができる部分酸化獣毛繊維。
  2. 部分酸化状態で保存しておいたのち、必要時に縮絨処理および/または還元処理することによりフェルト化および/または防縮性の付与が可能な請求項1に記載の部分酸化獣毛繊維。
  3. 請求項1または2に記載の部分酸化獣毛繊維がスライバーであり、このスライバーから製造された紡績糸を主成分として製造された獣毛繊維製品。
  4. 請求項3に記載の繊維製品を還元処理によって−S―S−結合を開裂することによって得られる防縮性に優れた獣毛繊維製品。
  5. 請求項1または2に記載の部分酸化獣毛繊維がスライバーであり、このスライバーを用いて紡績糸を製造し、次いでこの紡績糸を主成分として布帛に製造した後、縮絨処理を施し、次いで還元処理によって−S―S−結合を開裂することによって得られる、ミルド調の風合いを有し且つ防縮性に優れた獣毛繊維製品。
  6. 防縮性がWM TM31( Wool Mark Test Method 31)で測定したフェルト収縮率が、肌着類では5A プログラム・サイクルで5回繰返す方法(5A×5)で面積収縮率が8%以下、セーター類では5A×2回で面積収縮率が8%以下、織物類では5A×3回で経、緯の収縮率で各々3%以下である請求項4または5に記載の獣毛繊維製品。
  7. 獣毛繊維をそのシスチン結合−S―S−開裂しない緩慢な反応条件で部分酸化することを特徴とする請求項1または2に記載の部分酸化獣毛繊維の製造方法。
  8. シスチン結合−S―S−の部分酸化状態を酸素系酸化剤で実質的にモノ酸化程度の状態である一次酸化状態に酸化される第1段酸化工程と、次いで一次酸化された獣毛繊維に水中で5μm以下の超微細気泡としてオゾン・酸素混合気体を一定時間衝突させて獣毛繊維を水中で気相酸化反応させることにより、獣毛繊維のシスチン結合をジ酸化以上の高次酸化状態の混合酸化状態である高次酸化状態に酸化する第2段酸化工程によって形成することを特徴とする請求項1または2に記載の部分酸化獣毛繊維の製造方法。
  9. 第1段酸化工程が、室温以下に調整した酸素系酸化剤を含む水溶液中に獣毛繊維をパッドし、直ちに、マングルにかけて酸化剤水溶液の付着量を一定範囲となるように絞ったのち、80〜100℃の水蒸気中で加熱する処理である請求項8に記載の部分酸化獣毛繊維の製造方法。
  10. 酸素系酸化剤が、オゾン、過酸化水素、過硫酸水素ナトリウム、過硫酸水素カリウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酢酸、過蟻酸から選ばれる請求項8または9に記載の部分酸化獣毛繊維の製造方法。
  11. 還元処理を、亜硫酸塩、酸性亜硫酸塩、ハイドロサルファイト(Na)、二酸化チオ尿素(CHS)から選ばれる還元剤を用いて行う請求項4または5に記載の獣毛繊維製品の製造方法。
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