JP3106400B2 - 耐候性に優れた耐火鋼用溶接ワイヤ - Google Patents

耐候性に優れた耐火鋼用溶接ワイヤ

Info

Publication number
JP3106400B2
JP3106400B2 JP04010401A JP1040192A JP3106400B2 JP 3106400 B2 JP3106400 B2 JP 3106400B2 JP 04010401 A JP04010401 A JP 04010401A JP 1040192 A JP1040192 A JP 1040192A JP 3106400 B2 JP3106400 B2 JP 3106400B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
wire
weather resistance
welding
present
fire
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP04010401A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH05200582A (ja
Inventor
一師 須田
汎司 小山
洋三 鈴木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP04010401A priority Critical patent/JP3106400B2/ja
Publication of JPH05200582A publication Critical patent/JPH05200582A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3106400B2 publication Critical patent/JP3106400B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Nonmetallic Welding Materials (AREA)
  • Arc Welding In General (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、建築、土木及び海洋構
造物などの分野における各種建造物に使用される溶接ワ
イヤに関するもので、特に海浜部での使用に対し局部腐
食が防止でき、かつ耐候性に優れた耐火鋼用溶接ワイヤ
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】周知の通り建築、土木及び海洋構造物な
どの分野における各種建造物用建築材として、一般構造
用圧延鋼材(JIS G 3101)、溶接構造用圧延
鋼材(JIS G 3106)、溶接構造用耐候性熱間
圧延鋼材(JIS G 3114)、高耐候性圧延鋼材
(JIS G 3125)及び一般構造用炭素鋼鋼管
(JIS G 3444)、一般構造用角形鋼管(JI
S G 4366)などが広く利用されている。これら
の溶接材料としては、軟鋼及び高張力鋼マグ溶接用ソリ
ッドワイヤ(JIS Z 3312)、耐候性鋼用炭酸
ガスアーク溶接ソリッドワイヤ(JIS Z 331
5)及び軟鋼及び低合金鋼のティグ溶接用鋼棒及びワイ
ヤ(JIS Z 3316)が広く使用されている。た
とえば、特開昭61−242785号公報や特開昭62
−267096号公報には、溶滴移行性の改善のための
ワイヤ成分が、特開昭59−61592号公報、特開昭
61−159296号公報や特開平1−170598号
公報には、スパッタ低減のためのワイヤ成分が、特開昭
61−195793号公報では、スラグ剥離性の改善目
的のワイヤ成分が、さらに特開昭62−158595号
公報では、ワイヤ送給性改善目的のワイヤ成分が開示さ
れている。
【0003】ところで、各種建造物のうち、特に生活に
密着したビルや事務所及び住居などの建造物に前記鋼材
及び前記溶接材料を用いて施工された溶接部は、火災に
おける安全性を確保するため、十分な耐火被覆を施すこ
とが義務づけられており、建築関係諸法例では、火災時
に鋼材及び溶接部温度が350℃以上にならぬように規
定している。
【0004】つまり、前記鋼材及び溶接部は、建造物に
使用する場合350℃程度で耐力が常温時の60〜70
%に低下し、建造物の倒壊を引き起こすおそれがあるた
め、このようなことがないようにして利用しなければな
らない。たとえば、鋼材及び溶接部の表面にスラグウー
ル、ロックウール、ガラスウールなどを基材とする吹き
付け材やフェルトを展着するほか、防火モルタルで包被
する方法及び前記断熱材層の上に、さらに金属薄板、即
ちアルミニウムやステンレススチール薄板等で保護する
方法など耐火被覆を入念に施し、火災時における熱的損
傷を防止するようにしている。そのため、溶接材料価格
そのものより耐火被覆施工費が高額になり、建設コスト
が大幅に上昇することを避けることができない。そこ
で、前述のような建造物に従来の溶接ワイヤを利用する
場合、価格は安いが、高温特性が低いため、本来の溶接
材料特性を発揮できず、無被覆や軽被覆で利用すること
もできず、割高な耐火被覆を施さねばならない。このた
め建設コストが高くなると共に建造物の利用空間が狭く
なり、経済効率を低下させるという課題がある。また、
モリブデン鋼及びクロムモリブデン鋼やステンレス鋼に
代表されるような耐熱鋼用のマグ溶接ソリッドワイヤ
(JIS Z 3317)並びに特開昭57−1008
92号公報や特開昭58−100994号公報などに開
示されている耐熱鋼用ワイヤによれば、高温特性は良好
であるが、溶接施工技術面に加え経済的な面での利用は
非常に困難である。さらに、近年建築物の高層化が進展
し、設計技術の向上とその信頼性の高さから、耐火設計
について見直しが行われ、昭和62年建築物の新耐火設
計法が規定されるに至った。その結果、前述の350℃
の温度制限によることなく、鋼材及び溶接部の高温強度
と建物に実際に加わっている荷重により、耐火被覆の能
力を決定できるようになり、場合によっては無被覆で鋼
材を使用することも可能になった。
【0005】このような状況から耐火特性を有する溶接
ワイヤが、たとえば特開平2−52196号公報に示さ
れるように、はじめて検討された。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、各種建
造用建築材料向けの溶接材料が保持すべき重要な特性に
ついて種々検討した結果、より経済性に富み、耐火特性
に加え耐候性能にも優れた溶接部が得られる溶接ワイヤ
が必要であるとの結論に達した。現在考えられている耐
火鋼用溶接ワイヤとして、上述のような耐候性能まで付
加した溶接ワイヤは、現在存在していない。
【0007】一方、現在使用されている耐候性鋼用溶接
材料には、ある程度耐候性を犠牲にした溶接部を得、こ
れに塗装を施すことを前提としたものと、本来の耐候性
を有する溶接部を裸で、または錆安定化処理を施して使
用することを前提としたものとの2通りがあるが、溶接
部に本来の耐候性能を持たせるためには、耐候性寄与元
素であるCu、Cr及びNiのすべてを含有した溶接ワ
イヤで施工することが一般的に行われている。しかし、
本発明者らが耐候性能についてのみ種々検討した結果、
確かに内陸部での耐候性能については、従来通りの考え
方で問題はなかったが、海浜部での使用に対して、特に
局部腐食の観点から問題があることが判明した。しか
し、この問題点を解決でき、かつ従来通りの耐候性能に
優れた溶接金属を得ることのできる溶接ワイヤも、現在
存在しない。
【0008】このような状況から、本発明者らは、上記
したように非常に困難極まりない溶接ワイヤの開発に着
手し、種々検討した結果、ここにはじめて経済性に富
み、かつ優れた耐候性能を持ち、さらに良好な耐火特性
をも有する溶接金属を同時に得ることのできる画期的な
溶接ワイヤを発明した。本発明の目的を詳細に述べる
と、上述のごとく海浜部での使用に対し局部腐食が防止
でき、かつ耐候性に優れ、さらに経済的価格で市場に供
給し得る耐火特性、特に600℃での高温特性に優れ、
かつ良好な衝撃靱性や溶接作業性に優れたガスシールド
アーク溶接ワイヤを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は前述の課題を克
服し、目的を達成するもので、その具体的手段は下記の
とおりである。 (1) 重量比で、C:0.01〜0.12%、Si:
0.40〜1.00%、Mn:1.00〜2.20%、
Cu:0.25〜0.65%、Ni:0.10〜0.5
0%、Mo:0.05〜0.60%、Ti:0.05〜
0.35%、V:0.004〜0.10%、N:0.0
100%以下を含有し、(C+Si/24+Mn/6+
Cu/35+Ni/40+V/14+Mo/4)が0.
30〜0.60%であり、残部が鉄及び不可避不純物か
らなることを特徴とする耐候性に優れた耐火鋼用溶接ワ
イヤ。
【0010】(2) 重量比で、C:0.01〜0.1
2%、Si:0.40〜1.00%、Mn:1.00〜
2.20%、Cu:0.25〜0.65%、Ni:0.
10〜0.50%、Mo:0.05〜0.60%、T
i:0.05〜0.35%、V:0.004〜0.10
%、N:0.0100%以下を含有し、(C+Si/2
4+Mn/6+Cu/35+Ni/40+V/14+M
o/4)が0.30〜0.60%であり、さらに、B:
0.002〜0.0070%、Al:0.020%以下
の1種または2種を含有し、残部が鉄及び不可避不純物
からなることを特徴とする耐候性に優れた耐火鋼用溶接
ワイヤ。
【0011】
【作用】まず、耐火特性について本発明者らは、火災時
における溶接金属強度について研究した結果、無被覆使
用を目標とした場合、火災時の最高到達温度が1000
℃であることから、該当部分が常温時の70%以上の耐
力を備えるためには、周知の溶接ワイヤに高価な合金元
素を多量に添加せねばならず、経済性の面から利用する
ことができないことを確かめた。
【0012】そこで、さらに研究を進めた結果、600
℃での高温耐力が常温時の70%以上となる溶接部が最
も経済的であることをつきとめ、高価な添加元素の量を
少なくし、かつ溶接部の耐火被覆を薄くすることが可能
で、火災荷重が小さい場合は、無被覆で使用することが
できる耐火性能の優れた溶接ワイヤ成分系を見出した。
さらに、この溶接ワイヤに一層の経済的効果を狙い、従
来にない特性、すなわち海浜部での使用に対して局部腐
食が防止でき、かつ従来通りの耐候性能が得られるとい
う画期的な性能付加をした溶接ワイヤを発明した。
【0013】本発明の特徴である耐火特性は、微量のV
添加と適当量のMoの複合添加、あるいは微量のV添加
と適当量のMoの複合添加に微量のB添加によって60
0℃の溶接金属強度を確保することができるようにした
点にある。そして、耐候性については、上述のごとく従
来の知見から耐候性に極めて有効な元素であるCu、N
i、Crをそれぞれ適当量含有させるのではなく、海浜
部での使用に対する局部腐食防止の観点から、Crを添
加しないで適当量のCu及びNiの複合添加によって、
局部腐食が防止できると共に従来通りの耐候性が得られ
るようにした。
【0014】さらに、本発明の溶接ワイヤの特徴は、前
述の成分をただ添加すればよいのではなく、溶接作業性
を損なうことなく、600℃での耐火性能及び常温での
衝撃靱性確保並びに耐候性が同時に得られる指数として
定義した、(C+Si/24+Mn/6+Cu/35+
Ni/40+V/14+Mo/4)が、0.30〜0.
60%の範囲にあることである。
【0015】そこで、まず火災時の溶接部温度の上昇挙
動を考慮して、V添加量と600℃での耐火強度を求め
てみると、V添加量と共に耐火強度は向上するが、それ
と共に常温での衝撃靱性の低下を招くことが判明した。
そのため、耐火強度の確保と衝撃靱性の改善のために、
微量Vに適当量のMoを複合添加することにより、著し
い改善効果が認められた。さらに、より一層の改善効果
を得るためには、微量のB添加が有効であることが判明
した。
【0016】それぞれの有効添加量については下記のと
おりである。V添加量は、0.004%未満ではその効
果が得られず、0.1%超では耐火強度向上の効果が飽
和し、衝撃靱性の低下を招く。Mo添加量は0.05%
未満ではその効果が得られないため、Mo添加量の下限
を0.05%とした。また、0.60%超では添加に見
合った効果が認められないため、添加量の上限を0.6
0%とする。
【0017】B添加量は、0.002%未満では衝撃靱
性の改善効果が得られないため、下限を0.002%と
した。0.0070%超では溶接金属の結晶粒を逆に粗
大化させ、衝撃靱性の低下を招くと共に高温割れが発生
し易くなるので上限を0.0070%とする。なお、高
温強度を上昇せしめるため、Moを利用することは、従
来の耐熱鋼では知られているが、建築用に用いる耐候性
耐火鋼材用溶接ワイヤとして前述のように微量のVと適
当量のMoを複合添加した溶接ワイヤは知られていな
い。
【0018】このように、VとMoの複合添加、あるい
はさらにBの添加で耐火性能が得られるとなれば、さら
にこの溶接部に耐火被覆を施さずに海浜部での局部腐食
を防ぎ、溶接部を裸のまま使用できる耐候性を付加でき
れば、建築物の利用空間をより拡大すると共に建設コス
トの大幅な削減となり、経済効率が極めて高められると
いう大きなメリットが得られる。
【0019】また、耐候性能については、局部腐食の防
止の観点から、従来から耐候性に有効な元素であるCr
に着目し、局部腐食との関係を調査したところ、図1に
示すように、Cr添加量の増加にともない、ほぼ一義的
に腐食板厚減少量が増加することが判明した。なお、参
考にCu及びNi無添加のものも併記したが、Cr添加
によって若干腐食が軽減される傾向が認められるが、腐
食量はCu及びNiを適当量添加したものより大幅に増
加している。そのため、従来知見とは異なったCrを添
加しないで従来通りの耐候性を得るためにCu及びNi
をそれぞれ0.25〜0.65%、0.10〜0.50
%含有させることによって、海浜部のような苛酷な暴露
状態であっても局部腐食を防止でき、かつ非常に錆難
く、腐食進行を阻止できるという画期的なワイヤを発明
した。そこで、Cu及びNi量が上記範囲を超える高値
になると、溶接性が著しく悪化し、靱性が劣化するの
で、Cu及びNi含有量の上限をそれぞれ0.65%及
び0.50%とする必要がある。また下限は耐候性能が
得られる最小量として、それぞれ0.25%及び0.1
0%を含有せしめる必要がある。
【0020】なお、Cu量については、Cuめっきがワ
イヤ表面に施されている場合には、そのCu量も含んだ
ものである。本発明ワイヤでは、ワイヤ心線そのものに
Cuを添加すると共にワイヤの耐錆性・送給性及び通電
性の観点からCuめっきを施しており、この両者の合計
量がCu量である。さらに、本発明の溶接ワイヤは、前
述の成分をただ添加すればよいのではなく、溶接作業性
を損なうことなく、600℃での耐火性能及び常温での
衝撃靱性確保並びに耐候性が同時に得られる指数として
定義した、(C+Si/24+Mn/6+Cu/35+
Ni/40+V/14+Mo/4)の和(以下、特性指
数と略す。)が、0.30〜0.60%の範囲にあるこ
とが必須要件である。
【0021】次に、本発明における前記のV、Mo、
B、Cu、Ni以外の成分限定理由について詳細に説明
する。Cは、常温強度及び耐火強度を高めるのに有効な
元素であり、0.01%未満では強度確保が難しいので
下限は0.01%とする。また、0.12%を超えると
高温割れ感受性が増加すると共に靱性を劣化させるので
上限を0.12%とする。
【0022】Siは、主脱酸材として不可欠な元素であ
り、0.40%未満では脱酸不足により、溶接金属中に
ブローホール等の溶接欠陥を発生させるので下限を0.
40%とする。また、1.00%を超えるとフェライト
の固溶硬化の原因となり、靱性を低下させるので上限を
1.00%とする。Mnは、Siと同様な脱酸剤であ
り、強度、靱性を確保する上で不可欠な元素であり、強
度、靱性を確保できる最小限として1.00%含有する
必要があり、その下限は1.00%とする。一方、2.
20%を超えると高温割れ感受性を増加させると共に靱
性を劣化させるので上限を2.20%とする。
【0023】Tiは、Ti酸化物を形成し、溶接金属の
ミクロ組織を微細化し、靱性改善に有効であるが、0.
05%未満ではこの効果が望めないため、下限を0.0
5%とするる。また、0.35%を超えると靱性を著し
く損なうので、上限を0.35%とする。Nは、一般に
不可避不純物としてワイヤ中に含まれるものであるが、
N量が多くなると靱性低下を招くと共に溶接金属にブロ
ーホール等の溶接欠陥を発生させるので、その上限を
0.0100%とする。
【0024】Alは、一般にワイヤを溶解する上で含ま
れる元素であるので、本発明ではAlについて下限は限
定しない。しかし、Al量が多くなると溶接部の清浄度
が悪くなり、溶接部の衝撃靱性が劣化するので上限を
0.020%とした。なお、本発明ワイヤには、不可避
不純物としてP及びSを含有する。P、Sは高温強度に
与える影響は小さいので、その量について特に限定はし
ないが、一般に粒界に偏析し、粒界を酸化させ、靱性低
下の原因となるのでP、S量が少ないほど靱性が向上す
る。望ましいP、S量はそれぞれ0.020%以下であ
る。
【0025】
【実施例】
(実施例1)表1に試験に用いた耐候性に優れた耐火鋼
板の化学成分、表2に試験に用いた耐候性に優れた耐火
鋼用溶接ワイヤの化学成分を示す。板厚25mmの表2
に示す耐候性に優れた耐火鋼板を図2に示す開先形状
(T=25mm、D=12mm、φ=45°)に加工し
た後、表2に示すワイヤを用い、表3に示す溶接条件で
溶接継手を作製した。
【0026】溶接終了後、試験材の板厚中央よりJIS
G 3111 A−1号引張試験片と同4号シャルピ
ー試験片及び高温引張試験片はJIS G 0567
10φ試験片を採取し、機械試験を実施した。この試験
結果を表4に示す。ワイヤ記号1〜10は、本発明に係
るワイヤで、溶接作業性に富み、高温強度に優れ、衝撃
靱性が良好で、溶接部の腐食減少量も少なく、耐候性能
も十分有している。これに対して、ワイヤ記号11〜2
3は、比較のために挙げた本発明範囲外のワイヤであ
る。
【0027】ワイヤ記号11は、現在市場において使わ
れている一般的な490N/mm2 級高張力鋼用ワイヤ
であり、溶接作業性については良好であるが、耐火特性
を考慮しているものでないため、600℃の高温強度が
低く、本発明ワイヤが対象とする構造物には使用でき
ず、耐候性能もワイヤのCuめっきのみであることから
腐食量も本発明ワイヤより10倍と大きくなっている。
【0028】ワイヤ記号12は、Tiが0.02%と本
発明を下回り、特性指数が本発明範囲を超える0.67
5%になっているもので、従来の局部腐食を考慮しない
耐候性耐火鋼用ワイヤである。このワイヤでの溶接作業
性はややスパッタが多いもののアークの安定性等は良好
で、常温強度が841N/mm2 と非常に高く、溶接部
に高温割れが一部発生しており、腐食量も本発明ワイヤ
より倍ぐらい多くなっている。このことから、安心して
溶接するためには、ワイヤへの各添加成分がほぼ本発明
範囲にあっても、特性指数を本発明範囲内の0.30〜
0.60%に抑えることが、溶接作業性を損なうことな
く、溶接金属部の強度と靱性のバランスを取り、かつ局
部腐食防止ができると共に耐候性能及び耐火特性が同時
に得られる重要な要素であることがわかる。
【0029】ワイヤ記号13は、強度向上を目的にCを
本発明範囲を超える0.15%に増加させ、Ni及びC
uを含まない耐候性能を考慮しないワイヤである。強度
は、確かに高値を示すものの、溶接部に高温割れが一部
発生しており、耐候性能も考慮されていないため溶接部
の腐食量も、本発明ワイヤよりも多いことは勿論のこ
と、他の比較ワイヤに比べても多くなっている。
【0030】ワイヤ記号14は、靱性改善及び耐候性能
を高める目的で、主にNiを本発明範囲を超える2.6
0%添加し、Tiを無添加にしたワイヤである。確か
に、耐候性に影響を与えるNiが多く添加されているの
で、腐食量は他の比較ワイヤに比べ少なく、参考値では
あるが、靱性についても改善される方向にあるが、Si
量が本発明範囲未満の0.39%であるため、スパッタ
発生が多く溶接作業性が著しく悪く、溶接部には脱酸不
足による微少なブローホールが発生した。
【0031】ワイヤ記号15は、高温強度向上をVの無
添加の代わりに、Moの単独添加により図り、併せて耐
候性能付与のためにCu及びNiをそれぞれ本発明範囲
未満の0.20%及び0.08%添加し、さらにCrを
本発明範囲を超える0.30%添加したワイヤである。
靱性はBの添加もあって、ほぼ良好な値であるが、やは
り高温強度はMo単独添加では得られず、溶接部の腐食
量も0.112mmと多くなっている。
【0032】ワイヤ記号16及び18は、局部腐食を考
慮しない、Crが添加されている内陸用耐候性耐火鋼用
ワイヤである。このワイヤは、各添加成分は本発明範囲
にあるものの前述のようにCrが添加されているため、
溶接部の強度及び靱性は良好であるが、腐食量は本発明
ワイヤの約2〜3倍と大きくなっている。ワイヤ記号1
7は、強度向上を目的に主にC、Siをそれぞれ本発明
範囲を超える0.14%、1.12%に増加させたワイ
ヤである。しかし、強度はワイヤ記号11と同程度であ
る反面、靱性の低下が大きく、さらに溶接部に高温割れ
が発生するという大きな欠陥がある。また、耐候性能や
耐火特性を考慮していないので高温強度も低く、腐食量
もワイヤ記号11同様大きくなっている。
【0033】ワイヤ記号19は、Vを添加せず、高温強
度をMoの単独添加で確保することを目的に、Mo量を
本発明範囲内の0.44%にし、耐候性能を考慮してC
uを若干含んだワイヤである。高温強度は本発明ワイヤ
より大きく下回っており、耐火特性が確保されておら
ず、耐候性能を得るための元素であるNiが無添加で、
Cuも本発明範囲未満になっているため、溶接部の腐食
量もかなり多くなっている。
【0034】ワイヤ記号20は、強度・靱性のバランス
を考慮してVを本発明範囲を超える0.15%添加し、
Siを0.37%と本発明範囲未満とし、Mnも本発明
範囲下限値近くにし、従来の耐候性向上を目的にCrが
0.26%添加されたワイヤである。常温強度はほぼ満
足できる値が得られているが、本発明範囲未満のSi量
となっているため、溶接時に脱酸不足による微少ブロー
ホールが発生し、それに加えてスパッタ多発で溶接作業
性も著しく悪く、さらに本発明範囲を超えるV量により
初層に高温割れが一部発生した。また、Cr添加により
溶接部の腐食量も大きくなっている。
【0035】ワイヤ記号21は、現在市場において使わ
れている耐熱鋼の0.5%Mo鋼用ワイヤであるが、M
n、B、Nがそれぞれ本発明範囲を超える2.44%、
0.0079%、0.0134%で、特性指数も0.6
39%と本発明範囲を超えているもので、耐候性につい
ては何ら考慮されていないワイヤである。溶接作業性は
良好であるが、若干の強度向上に留まり、当初の高温強
度を満足できず、耐候性も考慮されていないので、腐食
量は非常に大きく本発明ワイヤの10倍程度になってい
る。
【0036】ワイヤ記号22は、先のワイヤ記号19と
同じ耐熱鋼用ワイヤで、1.25%Cr−0.5%Mo
鋼用ワイヤである。このワイヤによる溶接部は、溶接後
熱処理を実施することが前提になっており、溶接のまま
での使用においては強度が高く、靱性が低値になってい
る。また、この種のワイヤは特殊な用途であるためワイ
ヤ単価が非常に高く、経済的価格での市場供給には無理
がある。さらに、耐候性の観点からも腐食量は多くなっ
ている。
【0037】ワイヤ記号23は、高温強度向上をMoの
単独添加で確保することを目的に、Moを本発明範囲を
超える0.74%に増加させ、特性指数も若干本発明範
囲を超えたワイヤである。この結果、特性指数が本発明
範囲を若干超えていても強度は本発明ワイヤに比べかな
り低く、Moの単独添加では耐火特性を十分に確保でき
ず、耐候性能を得るための元素であるNiは無添加で、
Cuも本発明範囲未満を大きく下回っているため溶接部
の腐食量も多くなっている。このことから、各種成分を
ただ添加すればよいのではなく、特性指数も本発明範囲
にすることが必須要件であることがわかる。
【0038】以上のことから明らかなように、本発明に
係るワイヤであれば、溶接作業性に富み、高温強度に優
れ、衝撃靱性も良好で、局部腐食を防止でき、従来通り
の耐候性能も十分有している溶接部が得られるのに対し
て、比較ワイヤによる溶接部はことごとく強度が高すぎ
たり、あるいは低すぎたり、靱性劣化や耐候性能不足に
よる腐食減量が多いなどの欠陥があり、比較ワイヤは耐
候性に優れた耐火鋼用ワイヤとしては不適である。 (実施例2)表2のワイヤの中から、ワイヤ記号4、1
0、14、20のワイヤを選び、表5に示す溶接条件で
溶接継手を作製した。溶接終了後、実施例1と同様にし
て各種試験片を採取し、機械試験を実施した。この試験
結果を表6に示す。
【0039】ワイヤ記号14、20は、本発明範囲未満
のSi量であるため、実施例1では脱酸不足によるブロ
ーホールが発生したが、本実施例では、シールドガス組
成にAr−20%CO2 を用いているため、このような
溶接欠陥は発生しない代わりに、Si、Mn等の溶接金
属部への歩留りが高くなり、強度が向上する。しかし、
比較例は、根本的にCrが添加されているため腐食減量
が大きく、本発明ワイヤが目的とする海浜部での局部腐
食防止と共に従来通りの耐候性能と耐火特性を同時に得
ることは非常に難しい。
【0040】このように、本発明に係るワイヤ記号4、
10であれば、シールドガス組成をAr−CO2 混合ガ
スに変更して使用してもなんら性能に影響を及ぼすこと
なく、良好な耐候性に優れた耐火特性を有する溶接継手
が得られる。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
【表5】
【0046】
【表6】
【0047】
【発明の効果】以上のように、本発明のワイヤによれ
ば、優れた高温強度と良好な衝撃靱性と同時に海浜部で
の局部腐食に特に優れていると共に従来通りの耐候性能
も十分有しているという画期的な性能を持つ溶接部ない
し溶接継手が得られ、さらに溶接施工時の溶接作業性も
良く、溶接部への耐火施工にかかるコストを大幅に引き
下げることが可能である。しかも本発明のワイヤは価格
も安く市場に提供することができ、また本発明のワイヤ
を用いれば、施工が容易で、建設工期を短縮でき、全体
として建築費が低廉で済むという大きな効果をもたら
す。
【図面の簡単な説明】
【図1】ワイヤ中のCr添加量と腐食板厚減少量との関
係を示す図である。
【図2】実施例1及び実施例2で用いた開先形状を示す
正面断面図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−294891(JP,A) 特開 平3−174978(JP,A) 特開 平2−163341(JP,A) 特公 昭54−32623(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 35/30

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量比で、 C:0.01〜0.12% Si:0.40〜1.00% Mn:1.00〜2.20% Cu:0.25〜0.65% Ni:0.10〜0.50% Mo:0.05〜0.60% Ti:0.05〜0.35% V:0.004〜0.10% N:0.0100%以下を含有し、 (C+Si/24+Mn/6+Cu/35+Ni/40
    +V/14+Mo/4)が0.30〜0.60%であ
    り、残部が鉄及び不可避不純物からなることを特徴とす
    る耐候性に優れた耐火鋼用溶接ワイヤ。
  2. 【請求項2】 重量比で、 C:0.01〜0.12% Si:0.40〜1.00% Mn:1.00〜2.20% Cu:0.25〜0.65% Ni:0.10〜0.50% Mo:0.05〜0.60% Ti:0.05〜0.35% V:0.004〜0.10% N:0.0100%以下を含有し、 (C+Si/24+Mn/6+Cu/35+Ni/40
    +V/14+Mo/4)が0.30〜0.60%であ
    り、さらに、 B:0.002〜0.0070%、 Al:0.020%以下の1種または2種を含有し、 残部が鉄及び不可避不純物からなることを特徴とする耐
    候性に優れた耐火鋼用溶接ワイヤ。
JP04010401A 1992-01-23 1992-01-23 耐候性に優れた耐火鋼用溶接ワイヤ Expired - Fee Related JP3106400B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP04010401A JP3106400B2 (ja) 1992-01-23 1992-01-23 耐候性に優れた耐火鋼用溶接ワイヤ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP04010401A JP3106400B2 (ja) 1992-01-23 1992-01-23 耐候性に優れた耐火鋼用溶接ワイヤ

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH05200582A JPH05200582A (ja) 1993-08-10
JP3106400B2 true JP3106400B2 (ja) 2000-11-06

Family

ID=11749123

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP04010401A Expired - Fee Related JP3106400B2 (ja) 1992-01-23 1992-01-23 耐候性に優れた耐火鋼用溶接ワイヤ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3106400B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP3225349A4 (en) * 2014-11-27 2018-05-30 Baoshan Iron & Steel Co., Ltd. Super high strength gas protection welding wire containing v and manufacturing method therefor

Families Citing this family (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102267020A (zh) * 2010-06-07 2011-12-07 鞍钢股份有限公司 一种具有耐火特性的金属粉芯埋弧焊丝
CN102717206A (zh) * 2011-03-29 2012-10-10 鞍钢股份有限公司 一种具有耐火特性的埋弧实芯焊丝
CN104400253A (zh) * 2014-11-19 2015-03-11 钢铁研究总院 一种用于海洋平台建造的埋弧焊丝
CN106312365A (zh) * 2015-06-16 2017-01-11 鞍钢股份有限公司 一种高强度高韧性耐候钢用气体保护焊丝
CN111299900A (zh) * 2019-12-11 2020-06-19 天津市永昌焊丝有限公司 一种耐海洋大气腐蚀钢配套气保焊丝盘条、焊丝、应用
CN111299899A (zh) * 2019-12-11 2020-06-19 天津市永昌焊丝有限公司 一种耐海洋大气腐蚀钢配套气保焊丝盘条、焊丝、应用
CN115502610A (zh) * 2022-10-14 2022-12-23 成都先进金属材料产业技术研究院股份有限公司 一种含钒钛的高强钢用焊丝钢水和高强钢用焊丝及其生产方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP3225349A4 (en) * 2014-11-27 2018-05-30 Baoshan Iron & Steel Co., Ltd. Super high strength gas protection welding wire containing v and manufacturing method therefor

Also Published As

Publication number Publication date
JPH05200582A (ja) 1993-08-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4478059B2 (ja) 耐火構造用鋼のガスシールドアーク溶接ワイヤ。
US3726668A (en) Welding filling material
JP3892782B2 (ja) 耐塩酸性および耐硫酸性に優れた低合金鋼のガスシールドアーク溶接用ワイヤおよびそれを用いたガスシールドアーク溶接方法
JP3106400B2 (ja) 耐候性に優れた耐火鋼用溶接ワイヤ
JP2780140B2 (ja) 耐候性に優れた耐火鋼用溶接ワイヤ
JP3329261B2 (ja) 高温高強度鋼用溶接材料および溶接継手
JP4767592B2 (ja) 耐火構造用鋼のサブマージアーク溶接方法
JP3657135B2 (ja) ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ
WO2020196431A1 (ja) 高Crフェライト系耐熱鋼用被覆アーク溶接棒
JPH02217195A (ja) 耐火鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP3251424B2 (ja) 高強度Cr−Mo鋼用溶接ワイヤ
JP6829111B2 (ja) Tig溶接用溶加材
JP2594623B2 (ja) 耐火鋼用溶接ワイヤ
JP2007054878A (ja) 耐火構造用鋼の被覆アーク溶接棒
JP2001001181A (ja) ガスシールドアーク溶接用ワイヤ
JP2742201B2 (ja) 高強度Cr−Mo鋼用TIG溶接ワイヤ
JPH08257789A (ja) サブマージアーク溶接方法
JP2565998B2 (ja) 耐火性に優れた全姿勢用低水素系被覆アーク溶接棒
JPH02192894A (ja) 耐火鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JPH08132238A (ja) 高Cr鋼の溶接方法
JPH07214374A (ja) 高Ni合金溶接ワイヤ
JPH09277083A (ja) 大入熱用耐候性鋼サブマージアーク溶接方法
JP3115484B2 (ja) 低水素系被覆アーク溶接棒および溶接方法
JPH07303991A (ja) 780MPaまたは960MPa鋼のサブマージアーク溶接用ワイヤおよびボンドフラックス
JPH0520199B2 (ja)

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20000718

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees