JP3102197B2 - ウエハの誘電体分離方法 - Google Patents

ウエハの誘電体分離方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高性能の集積回路装置等
に適するウエハの誘電体分離方法であって、ウエハが1
対の半導体基板を誘電体膜を介して相互に接合してなる
いわゆる基板接合形である場合の誘電体分離方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】集積回路を作り込むに適する半導体ウエ
ハとしては周知のとおり接合分離形がかなり一般的であ
るが、回路要素ないし回路部分が半導体を介して繋がっ
ていてそれらの相互間に動作上の干渉が発生するおそれ
が若干は残るので、高周波用や高精度用の集積回路では
回路要素や回路部分の相互間を絶縁によってほぼ完全に
隔離できる誘電体分離ウエハが用いられる。この誘電体
分離では、よく知られているように半導体基板の表面か
ら分離溝をまず掘り込み、その溝面を誘電体膜で覆い、
かつ溝内を多結晶シリコンや絶縁性の酸化物で充填する
のが通例であり、従来からそのために種々の試みがなさ
れている。
【0003】例えば、米国特許第3534234 号公報等には
V形状の分離溝を切ってその溝面を酸化による誘電体膜
で被覆する技術の開示があり、米国特許第3892608 号公
報等には分離溝内に多結晶シリコンや酸化物を充填する
技術の開示があり、米国特許第3966577 号公報やIBM Te
chnical Disclosure Bulletin Vol.20, No.1, p144,Jun
e 1977 等には分離溝をトレンチ状に切る技術の開示が
ある。本発明が誘電体分離の対象とする基板接合形のウ
エハは特公昭39-17869号公報によりかなり古くから知ら
れていたが、比較的最近に至りウエハの研磨や表面清浄
化技術の進展により実用化の段階に入り、Proc. IEEE 1
987 Custom IC Conference p.443-446,May 1987にはこ
の基板接合形ウエハにトレンチ溝を切って誘電体分離す
る技術が発表されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述の基板接合形ウエ
ハにドライエッチングによるトレンチ状の溝切り技術を
適用することにより各回路要素や回路部分を作り込むべ
き半導体領域を誘電体により完全に絶縁して相互に分離
でき、かつ分離溝に要する面積も節約できるが、分離溝
を多結晶シリコン等の充填材で完全に埋めてしまう必要
があり、この埋め込みの際にウエハに反りが出やすい問
題がある。
【0005】分離溝を埋めるには充填材を溝内だけでな
くウエハの全面にCVD法等により堆積させた後に、溝
内を除く余分な充填材をウエハ面からエッチング法等に
より除去する必要があるが、充填材を所定温度下で全面
堆積する際にウエハに反りが出て、これが余分の充填材
を除去した後も元に戻らないので、ウエハプロセスに際
してウエハの取り扱いが困難になるだけでなく、フォト
プロセスの精度が低下してとくに集積回路を高集積化す
る際に重大な支障になる。
【0006】この反りが出る主な原因は充填材の熱膨張
係数がウエハの半導体と一致しない点にあるが、さらに
分離溝が深くなるに従ってウエハが非常に反りやすくな
る。すなわち、分離溝が深くなると溝幅も広げる必要が
あり、従って溝の埋め込みの際に堆積させる充填材の厚
みが増してウエハの反りが大きくなる。さらに都合の悪
いことに、溝が深くなるとその幅と深さの比が増加する
傾向があるので反りが一層著しくなる。かかる問題点を
解決するため、本発明の目的はウエハの反りを減少でき
る誘電体分離方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的は本発明によれ
ば、冒頭記載のように1対の半導体基板を誘電体膜を介
して相互に接合した基板接合形ウエハを複数の半導体領
域に誘電体分離するに当たり、ウエハ面から基板間誘電
体膜に達するまで分離溝を切って基板を半導体領域に分
割して溝面を含めて全面に誘電体膜を被覆し、分離溝内
を部分的に充填するように全面に充填材を堆積した後に
溝の側面を除くウエハ面上から充填材を選択的に除去
し、さらに分離溝の全体を充填するように全面に充填材
を堆積した上でウエハの表面上から充填材を除去して誘
電体分離されたウエハとすることによって達成される。
【0008】なお、本発明による誘電体分離用の誘電体
膜には基板相互間を含めて酸化シリコン膜を用いるのが
最も簡単かつ有利であり、分離溝用の充填材には多結晶
シリコンを用いるのが有利である。この充填材の分離溝
への充填回数は溝幅に応じて適宜選定することでよい
が、ふつうは上記構成にいう部分的充填と全体的充填の
2回とするのがよい。また、分離溝の側面を除くウエハ
面上の充填材を選択的に除去するにはドライエッチング
法を用いるのがよく、とくにリアクティブイオンエッチ
ング法によるのが有利である。
【0009】
【作用】本発明方法は、ウエハの半導体と分離溝の充填
材の熱膨張係数の差に起因する反りが発生する程度が充
填材を堆積させる厚みにより大きく影響される点に着目
したものであり、充填材による分離溝の充填を複数回に
分けて1回に堆積させる充填材の厚みを減らすことによ
り、熱膨張係数の差に基づく熱応力を減少させてウエハ
の反りを軽減するとともに、充填材を堆積させたつどに
溝内を除くウエハ面上から余分な充填材を除去してウエ
ハをほぼ元の状態に戻した上で、充填材の堆積とその不
要分の除去を繰り返すことにより、充填材を堆積させる
全体厚みが大な場合にもウエハに発生しやすい反りを実
用上支障がない程度に抑えることに成功したものであ
る。さらに本発明方法では、1回に堆積させる充填材の
厚みを薄めにするのでその結晶粒を微細化して分離溝内
の充填組織を緻密にすることができ、かつ最後の充填材
の堆積厚みが少ないので誘電体分離の完成後の充填材の
表面を含むウエハ面の凹凸を最低に抑えることができ
る。
【0010】
【実施例】以下、図1を参照して本発明による誘電体分
離方法の実施例を説明する。図はその主な工程ごとの状
態をウエハ10の一部の断面で示すものである。図1(a)
に本発明が対象とする基板接合形のウエハ10を示す。こ
のウエハ10は周知のように1対の半導体基板1と2を誘
電体膜3,ふつうは酸化シリコン膜を介し高温下で相互
に接合したものであり、下側の支持用基板2は数百μm
の元の厚みのままとされるが、複数個の半導体領域に誘
電体分離すべき上側の基板1の方は接合後に所望の厚み
まで研磨しかつ鏡面仕上げされる。この実施例のウエハ
10は数百Vの高耐圧の縦形の電界効果トランジスタやバ
イポーラトランジスタが組み込まれる集積回路用なので
例えばn形の基板1の厚みは50μm程度とされる。
【0011】図1(b) は溝切り工程と誘電体膜被覆工程
を終えた状態を示す。最初の溝切り工程では、図1(a)
の基板1の表面に例えば1μmの酸化膜で付けた後にフ
ォトプロセスによって枠状のパターンで開口を明け、こ
れをマスク膜とする異方性のプラズマエッチング法等に
より分離溝4を誘電体膜3に達するまでトレンチ状に掘
り込むことにより、基板1を複数の半導体領域1aに分割
する。分離溝4の幅はこの実施例では20μm程度とされ
る。次の誘電体膜被覆工程では誘電体膜5用に例えば酸
化膜を通常の熱酸化法によって1μm程度の膜厚に付け
て、図のように分離溝4の溝面を含むウエハ10の全面を
被覆する。なお、必要に応じ図1(a) のウエハ10に接合
する前の基板1の下面にn形の埋込層を拡散しておき、
誘電体膜被覆工程の前に分離溝4の溝面からこの埋込層
を各半導体領域1aの表面側に導出するためにn形の接続
層を拡散する。
【0012】図1(c) に充填材6の部分充填工程を示
す。この実施例では充填材6に多結晶シリコンを用い、
通例のようにシランのふん囲気内の 600℃程度の温度下
の減圧CVD法により充填材6を分離溝4内を部分的に
充填するよう5μm程度ないし若干それを上回る膜厚で
ウエハ10の全面に堆積させる。この際、分離溝4内では
充填材6はもちろん主にその側面上に堆積する。なお、
この実施例の分離溝6の溝幅は上述のように20μmであ
るから、この部分充填工程後に分離溝6の溝幅の半分程
度ないしは半分強が充填材6で充填され、残りの半分は
後述の図1(e) の全体充填工程で充填される。
【0013】図1(d) は充填材除去工程であり、ウエハ
10の表面上の充填材6を分離溝4の側面上の充填材6aを
除いてプラズマエッチング法,この実施例ではリアクテ
ィブイオンエッチング法により選択的に除去する。リア
クティブイオンエッチング法では4塩化炭素等の塩素系
のエッチングガスにより非常に鋭い異方性で側面上の充
填材6a以外の充填材6だけを選択的に除去でき、同時に
分離溝4の底面からも充填材6が図のように除去され
る。図1(c) の部分充填工程でウエハ10に反りが発生す
るが、その際に堆積させる充填材6の膜厚をウエハ10の
直径や分離溝4の深さにより決まるある限界値以下,こ
の実施例では数μm以下に設定することにより、図1
(d) の充填材除去工程後のウエハ10の反りをほぼなくし
て元の平坦な状態に戻すことができる。
【0014】図1(e) は全体充填工程であり、ウエハ10
の全面に充填材6を再度堆積させて図1(c) の工程で埋
め切れなかった分離溝4を図のように完全に充填する。
この際に充填材6を堆積させる膜厚はこの実施例では5
μm程度でよい。すなわち、この実施例の20μmの溝幅
の分離溝4を図1(c) と図1(e) の2工程で埋め切るに
は、容易にわかるように各工程で堆積させる充填材6の
膜厚をその4分の1の5μmに設定することでよく、実
際上は部分充填工程の方の膜厚を全体充填工程よりも若
干厚いめに設定するのが望ましい。この全体充填工程後
の分離溝4上の充填材6の表面には凹みDが図のように
発生するが、本発明方法ではその深さは分離溝4を1回
で埋める場合と比べて数分の1以下になる。
【0015】最後の図1(f) の充填材除去工程では、ウ
エハ10の表面上の充填材6を例えば6ふっ化硫黄等のエ
ッチングガスを用いるプラズマエッチング法で除去ない
しはいわゆるエッチバックすることにより、図示のよう
な誘電体分離ウエハ10の完成状態とする。この充填材除
去工程のエッチバックによる充填材6の除去は通例のよ
うにウエハ10の表面上に誘電体膜5が露出するタイミン
グで停止されるので、分離溝4の内部の充填材6はこの
図1(f) の充填材除去工程後もそのまま残り、図のよう
にその上面から上述の凹みDが消えてウエハ10は凹凸の
ない平滑な表面状態になる。また、前述と同様に図1
(e) の全体充填工程ではウエハ10に反りが若干発生する
が、この図1(f) の充填材除去工程の後にはウエハ10は
ほぼ反りのない平坦な状態に戻る。
【0016】以上説明した実施例に限らず本発明は種々
の態様で実施をすることができる。例えば、上述の実施
例では分離溝4内に充填材6を2回に分けて充填するよ
うにしたが、溝幅等に応じて充填材6を1回に堆積させ
る膜厚を適宜選択しながら、図1(c) の部分充填工程と
図1(d) の充填材除去工程とを繰り返すことによって分
離溝4を3回以上に分けて充填するようにしてもよい。
また、誘電体膜5には酸化シリコン膜のほか窒化シリコ
ン膜等を適宜に利用でき、充填材6にも多結晶シリコン
のほか酸化物等の誘電体を利用することができる。
【0017】
【発明の効果】以上のように本発明方法では、1対の基
板を誘電体膜を介して相互に接合した基板接合形ウエハ
を誘電体分離するため、ウエハ面から基板間誘電体膜に
達するまで分離溝を切って基板を半導体領域に分割して
溝面を含めた全面に誘電体膜を被覆し、分離溝を部分的
に充填するよう全面に充填材を堆積した後に溝の側面を
除くウエハ面上から充填材を選択的に除去し、かつ分離
溝の全体を充填するよう全面に充填材を堆積した上でウ
エハ面上から充填材を除去することにより、次の効果を
上げることができる。
【0018】(a) 分離溝を埋め込む充填材を複数回に分
割して堆積させ1回に充填材を堆積させる膜厚を薄くす
ることにより、充填材とウエハの半導体の熱膨張係数の
差に起因する熱応力を減少させ、かつ堆積のつどにウエ
ハ面上の余分な充填材を除去するようにしたので、誘電
体分離ウエハに生じやすかった反りを従来の数分の1以
下に減少させることができる。
【0019】(b) 分離溝を両側面から部分的に充填した
上で最後の全体充填工程で分離溝を充填材で完全に埋め
込み、かつこの最後に堆積させる充填材の膜厚を薄くで
きるので、分離溝の充填材の表面に従来のような凹みが
ない平滑な表面をもつ誘電体分離ウエハが得られ、従っ
て充填材の上側に配設される絶縁膜や配線膜の下地の凹
凸や段差による欠陥や断線の発生をほぼ完全に防止でき
る。
【0020】(c) 分離溝を埋め込む充填材を複数回に分
けて堆積させることにより、1回で埋め込むため充填材
を厚く堆積させる従来のように充填材の結晶粒が粗大化
するおそれがなく、分離溝を微細結晶粒の緻密な組織の
充填材で埋め込んで、ウエハプロセスや使用中に狂いが
発生するおそれをなくすことができる。本発明方法によ
る誘電体分離ウエハは、反りがほとんど発生しないので
フォトプロセスに高精度を要する高集積度の集積回路装
置の製造に好適である。また、本発明方法は基板から分
割すべき半導体領域の厚み,従って分離溝の深さや幅が
大な場合にも適するので、高耐圧の回路要素や回路部分
を作り込むべき集積回路装置用のウエハの誘電体分離に
好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の誘電体分離方法の一実施例を主な工程
ごとの状態で示し、同図(a) は誘電体分離前、同図(b)
は溝切り工程と誘電体膜被覆工程、同図(c) は部分充填
工程、同図(d) は充填材除去工程、同図(e) は全体充填
工程、同図(f) は充填材除去工程の状態をそれぞれ示す
ウエハの一部の断面図である。
【符号の説明】
1 半導体領域に分割される基板 1a 半導体領域 2 ウエハの支持基板 3 基板間の誘電体膜 4 分離溝 5 誘電体膜 6 充填材ないしは多結晶シリコン 6a 分離溝の側面の充填材 10 ウエハ
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−271176(JP,A) 特開 平4−225259(JP,A) 特開 平4−88657(JP,A) 特開 平2−298047(JP,A) 特開 昭60−121737(JP,A) 特開 昭59−135743(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 21/762 H01L 27/12

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】1対の半導体基板を誘電体膜を介して相互
    に接合してなる基板接合形のウエハを複数個の半導体領
    域に誘電体分離する方法であって、ウエハ面から接合誘
    電体膜に達するまで分離溝を切って基板を半導体領域に
    分割する工程と、分離溝面を含む全面に誘電体膜を被覆
    する工程と、分離溝内を部分的に充填するよう全面に充
    填材を堆積する工程と、分離溝の側面を除く表面上の充
    填材を選択的に除去する工程と、分離溝の全体を充填す
    るよう全面に充填材を堆積する工程と、ウエハ面上の充
    填材を除去する工程とを含むことを特徴とするウエハの
    誘電体分離方法。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の方法において、分離溝の
    充填材として多結晶シリコンを用いることを特徴とする
    ウエハの誘電体分離方法。
  3. 【請求項3】請求項1に記載の方法において、充填材を
    ドライエッチングにより選択的に除去することを特徴と
    するウエハの誘電体分離方法。
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