JP3095534B2 - 真空蒸着における原料ペレット供給方法 - Google Patents

真空蒸着における原料ペレット供給方法

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JP3095534B2
JP3095534B2 JP04175902A JP17590292A JP3095534B2 JP 3095534 B2 JP3095534 B2 JP 3095534B2 JP 04175902 A JP04175902 A JP 04175902A JP 17590292 A JP17590292 A JP 17590292A JP 3095534 B2 JP3095534 B2 JP 3095534B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は金属の蒸着方法に関し、
特にるつぼに収容された原料金属を電子ビームで溶解す
る肩の金属蒸着方法に使用する原料ペレット供給方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】真空室内において、電子銃から電子ビー
ムを発生させ、これをレンズにより絞ってスポットと
し、るつぼ内に収容された蒸発すべき金属に衝突させ
れを溶解させ、溶解した高温度金属からの金属蒸気を
蒸発させて基体に蒸着させる方法が行われている。この
ような技術は特公平3−41897号、特公平3−38
340号、特開昭59−178626、特開平3−12
6823号等に記載されている。
【0003】このような電子銃を使用する真空蒸着装置
では、電子銃から出た高エネルギー電子ビームをるつぼ
に向けて直進させる。るつぼは通常基体の幅方向に細長
く延びた長方形をしており、電子ビームはるつぼの金属
表面をほぼ均一に加熱する目的で偏向磁界または電界の
作用下にるつぼの長さ方向に走査される。例えば、斜め
配向型の蒸着金属磁気記録媒体を製造する場合には、C
oまたはCo合金を数十cmの長さの高純度マグネシア
(MgO)製のるつぼ(ボート)に収容し、電子銃から
最大30kV程度の加速電圧で電子ビームをるつぼに向
けて直進させて金属に衝突させる。その際に、電子ビー
ムをるつぼの長さ方向に(場合により更に幅方向にも)
走査させて金属を均一に加熱する。
【0004】このような従来の蒸着方法では、蒸着金属
の基体への十分な接着強度が確保できず、十分な耐久性
のある蒸着膜を提供できない。その原因は、電子ビーム
の電力を約120〜150kW(30kVで4〜5A程
度)以上にすると、溶融金属表面から金属蒸気と共に飛
び出す電子と電子銃からの電子が互いに反発して電子の
収束ができず、実効電力を約100kW以上には出来
ず、蒸気速度を十分に向上させることができなかったか
らである。なおここに実効電力とは蒸発速度が電子銃の
電力に依存して変化する範囲の電力である(例えば、1
00〜150kW加えても蒸発速度が変化しない場合、
最大実効電力は100kWである)。
【0005】電子銃が放出する電子ビームの軸線と前記
るつぼから放出される金属蒸気の軸線とをほぼ直角に交
差して配置し、前記電子ビームを磁界によりほぼ直角に
偏向して前記るつぼ内に結像させると、従来不可能であ
った150〜300kW(実効電力120〜240k
W)で電子銃を駆動することができ、接着強度の高い緻
密な蒸着膜を提供できることが分かった(特願平4−1
75037)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】原料金属を高エネルギ
ー電子ビームで溶解させると、溶融金属の粘度が低下
し、供給管を通って供給される原料金属ペレットが溶融
金属表面に衝撃を与えて溶融金属のスプラッシュを生
じ、周囲の部材を汚染しあるいは搬送系等の部材に付着
して蒸着装置の機能を阻害する問題が生じる。例えば特
開平3−126824号、同3−126823号等に記
載されているような傾斜の緩い供給路を用い、原料ホッ
パからペレットを一個ずつ取り出して管に一個づつ送り
出すことにより解決できるが、機構部分はできるだける
つぼから離して熱の影響を避けなければならないから、
比較的長い供給路の摩擦に抗して円滑な供給を行うには
ある程度の勢いがつく角度にしなければならない。この
ため上記のスプラッシュを回避することが困難となる。
従って、本発明の目的は、スプラッシュを最小限度に抑
制した原料金属ペレット供給方法を提供することにあ
る。
【0007】また、このような供給管では特別な供給装
置を使用しないとペレットが2個以上同時に供給される
可能性があり、供給管が詰まってその後の供給ができな
くなる場合がある。本発明の他の目的はこのような原料
ペレット供給方法において、供給路が詰まることのない
ようにする方法を提供することである。
【0008】本発明は、原料金属ペレットを傾斜した供
給路を通してるつぼに供給し、該るつぼ内で該原料金属
に電子ビームを照射して加熱することにより該金属を蒸
発させ、蒸発金属を基体に蒸着させる真空蒸着方法にお
いて、前記るつぼ近傍で前記供給路を下方へ湾曲させ次
いで水平方向に湾曲させた部分を設け、前記原料ペレッ
トを、前記下方へ湾曲した部分の壁に衝突させて一旦減
速させてから、前記るつぼに導くことを特徴とする、原
料ペレット供給方法である。これに加えて供給路から出
たペレットをるつぼの周壁の面またはブロックに当て
工程を追加しても良い。
【0009】本発明は更に、供給路を管で構成し、該管
の内径を原料金属ペレットの最大寸法の2.0〜3.0
倍としたことを特徴とする。これにより供給時の詰まり
は生じないことが分かった。
【0010】本発明に使用する蒸着装置は、蒸発すべき
金属を収容する細長いるつぼ、前記るつぼ内に指向する
電子ビームを発生させるための電子銃、前記るつぼに対
向して設けられた回転ドラム、前記回転ドラムの面に沿
ってプラスチック基体を送るための供給及び巻取り手
段、前記回転ドラムの面に沿って設けられ一部が前記る
つぼに対向した開口を有するマスク、及び前記マスクを
開閉するためのシャッタ部材よりなる真空蒸着装置であ
る。このような蒸着装置は、例えばCoまたはCo合金
をポリエステル(PET等)に斜め蒸着して斜めの異方
性を有する磁気記録媒体を製造するのに使用できる。大
電力電子銃では、上記のように接着性の向上のほか、更
に、プラスチック基体の走行速度を従来よりも高速度
でき、生産性を上げることができる。
【0011】
【実施例】以下図面を参照して本発明の実施例を詳しく
説明する。図1は本発明の蒸着装置1を示す。ただし図
示の部分は図示しない真空チャンバーに収容されてお
り、所定の排気装置を有するものとする。3は矢印の方
向(またはその逆方向)に回転する回転ドラムで、蒸着
基体を構成するポリエステル等の基体フィルム5がその
周りにかけ通され、繰り出しロール9ら回転ドラム
3の周面を通って巻き取りロール7巻き取られる。回
転ドラム3に近接して一部が開口したマスク11が設け
てあり、蒸着金属が所定の角度以外ではフィルム5に蒸
着しないようにしている。マスク11の外面(または内
面)に沿ってシャッタ13が設けてあり、蒸着の初期及
び終期に矢印の方向にスライドしてマスク11の開口を
遮蔽することにより不要な蒸着を防止する。マスク11
の開口の寸法は回転ドラム3の軸線方向には、フィルム
5上に所定の蒸着幅が得られるように、回転ドラムの周
方向にはフィルム上に所定の蒸着角度θが得られるよう
に選択する。
【0012】マスク11の開口に対向して高純度マグネ
シア(MgO)製等のるつぼ15が配置され、その内部
に蒸着すべき原料金属17が装入されている。るつぼ1
5は必要な蒸着幅を得るのに十分なだけ回転ドラム3の
軸線方向に細長く伸びている。るつぼ15は所定の蒸着
角度θ(マスクの開口内の位置により若干変動する)が
得られるように配置される。るつぼ15に装入した原料
金属17は電子銃19から放出される電子ビーム21に
より加熱される。本発明では電子銃19の電子ビーム2
1の放出方向はるつぼ15とマスク11の開口を結ぶ線
に対してほぼ90度をなす方向に電子ビーム21を放出
する。この電子ビームは図示しない適当なコンデンサレ
ンズ、収束レンズ、及び偏向コイルによる磁界23の作
用により約90度曲げられると同時に小スポット状に収
束されて原料金属17に衝突する。実験によると、図1
の鎖線位置に配置された従来の直進型電子銃19’に比
較して、大幅な電力増大が達成できる。
【0013】最小入射角度θminは用途により最適角
度は異なるが、特に磁気記録媒体としてCo、またはC
o−Ni合金をポリエチレンテレフタレート等のポリエ
ステル等の基体フィルムに斜め蒸着して、磁化容易方向
を基体に対して斜めにしたい場合には、最小入射角θm
inを10゜〜60゜、好ましくは20゜〜50゜とす
る。
【0014】電子銃19を電力約300kWまでの値
で駆動した時最大240kW程度の実効電力が得られる
ことが分かった。なお上限300kWを越えるとるつ
ぼ15内の溶融金属が激しく踊り、均一な蒸着が期待で
きなくなる。先に述べたように、この値は従来の直進型
電子銃(図1に鎖線で表示した電子銃19’)では到底
不可能であった。このため、本発明による蒸着膜の基体
への結合力(接着性)が向上し、例えば磁気記録媒体の
磁気ヘッドやガイド部分との接触・摩擦による摩耗、剥
離が減少し、耐久性が向上する。上記のように接着性の
向上のほか、更に、プラスチック基体の走行速度を従来
の100m/min程度であったものを、最大250m
/minの移動速度に出来、製造を迅速化できる。
【0015】具体例を挙げれば、平均の最小入射角θmi
n を30度、るつぼの液面と回転ドラム3の蒸着面の平
均距離を約300mm、マスクの開口幅を500mmと
し、真空チャンバーを1×10-5Torrに排気し、厚
さ7μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PE
T)を100〜250m/minで走行させ、Co−N
i合金(80:20)のペレットをるつぼ15に間欠供
給しながら、電子銃19の駆動電力40kV×(3〜5
A)=120〜200kWで溶解し、蒸着を行う。電子
銃電力を一定に保ちながらフィルム搬送速度を調整して
蒸着膜厚を約1800Å等とする。また蒸着時に導入す
る酸素主成分のガス量も適宜調整して同等の磁気特性が
得られるように成膜する。
【0016】実施例1 図2は図1のるつぼ15の部分を図1の右から見た図で
あり、本発明の実施例に従って、原料ペレット供給装置
30が使用される。32は原料金属ペレットを収容した
ホッパーであり、金属製の傾斜した供給路34を通して
原料ペレットがるつぼに供給される。供給路34はペレ
ットが途中で止まらないで円滑に供給できるためにはあ
る程度の傾斜が必要である。供給路34には先に引用し
た特開平3−126824号、同3−126823号等
に記載された送り装置を使用してもよいし、他の任意の
送り装置を使用してもよい。供給路34はるつぼ15に
近接した位置に下方に湾曲部38を有し、その下端には
供給路34と同様な傾斜の供給路40が接続されてい
る。供給路40の出口には好ましくは図4に示すような
出口カラー46が着脱自在に固着されている。なお、
カラー46は本発明の主題ではないがるつぼの材料で
あるマグネシアまたは原料金属であるCoまたはCo−
Ni合金等のCo合金同じ組成の材料を使用する。こ
れによりるつぼの汚染を防止し、供給路の溶融毀損を防
止することができる。
【0017】更に、供給路34には先に引用した特開平
3−126824号、同3−126823号等に記載さ
れた送り装置を使用しないで、端にホッパーから直接供
給路40にペレットを供給する場合には、供給路を管で
構成し、該管の内径を原料金属ペレットの最大寸法の
2.0〜3.0倍とすると、意外にも原料金属ペレット
が供給路内に詰まることがなくなることが分かった。こ
の実施例は、一個づつペレットを送り出す装置を省略で
きる点で優れている。
【0018】以上の構成であるから、原料金属ペレット
はホッパー32から送り装置36を経て供給路34を滑
り落ち、次いで湾曲部38の壁に当たって減速される。
次いで供給路40を滑り落ちてるつぼ内に落下する。供
給路40は短いからほとんど加速されないでるつぼに落
下し、出口が十分溶融金属面に接近していればスプラッ
シュを生じない。
【0019】実施例2 図3は本発明の他の実施例を示す。この実施例では図2
の供給装置をそっくり使用してもよいし、あるいは図2
の湾曲部38がないものを使用してもよい。しかし、本
例では供給路42の出口をるつぼ15よりも後退させ、
供給路から出たペレットを矢印のように一旦るつぼ15
の縁に当てて減速し、それからるつぼ内に入れるように
する。こうしてスプラッシュを防止することができる。
この例はまた、供給路の出口の溶融を防ぎ、その寿命を
延ばすことができる。
【0020】
【作用効果】以上の構成であるから、原料金属ペレット
は供給路を滑り落ち、次いで湾曲部38の壁またはるつ
ぼの壁面に当たって減速され、スプラッシュを防止する
ことができる。また、原料ペレットの最大寸法と供給路
の内径の関係を所定の範囲に納めることによりペレット
の円滑な供給を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の真空蒸着方法に使用される蒸着装置の
略図である。
【図2】本発明の実施例の方法を実施する原料金属供給
装置を示す図である
【図3】本発明の他の実施例による原料供給方法を示す
図である
【図4】本発明の更に他の実施例による原料供給路を示
図である
【符号の説明】
1 蒸着装置 3 回転ドラム 5 基体フィルム 7 巻き取りロール 9 繰り出しロール 11 マスク 13 シャッタ 15 るつぼ 17 原料金属 19 電子銃 21 電子ビーム 23 偏向磁界 30 原料金属ペレット供給装置 32 ホッパー 34、40、42 供給路 38 湾曲部 44 るつぼ縁部 46 出口カラー
フロントページの続き (72)発明者 大塚 俊幸 東京都中央区日本橋一丁目13番1号ティ ーディーケイ株式会社内 (72)発明者 比護 政志 東京都中央区日本橋一丁目13番1号ティ ーディーケイ株式会社内 (56)参考文献 特開 昭61−104332(JP,A) 特公 昭53−24913(JP,B2) 実公 昭59−29951(JP,Y2) 実公 平2−26934(JP,Y2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 14/00 - 14/58

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 原料金属ペレットを傾斜した供給路を通
    してるつぼに供給し、該るつぼ内で該原料金属に電子ビ
    ームを照射して加熱することにより該金属を蒸発させ、
    蒸発金属を基体に蒸着させる真空蒸着方法において、
    記るつぼ近傍で前記供給路を下方へ湾曲させ次いで水平
    方向に湾曲させた部分を設け、前記原料ペレットを、前
    記下方へ湾曲した部分の壁に衝突させて一旦減速させて
    から、前記るつぼに導くことを特徴とする、原料ペレッ
    ト供給方法。
  2. 【請求項2】 更に、前記供給路から出たペレットをる
    つぼの周壁の面またはブロックに当てることにより更に
    減速する工程を含む請求項1に記載の原料ペレット供給
    方法。
  3. 【請求項3】 供給路を管で構成し、該管の内径を原料
    金属ペレットの最大寸法の2.0〜3.0倍とした請
    項1に記載の原料ペレット供給方法。
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