JP3089603B2 - 内燃機関の燃料噴射装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 【０００１】 【産業上の利用分野】この発明は、内燃機関の燃料噴射
ポンプであって特にカムで駆動されるプランジャによっ
て、圧送室内に流入した燃料を吐出させるようにしたも
のに関する。 【０００２】 【従来の技術】図７は、この種の燃料噴射ポンプの構造
を示したもので、カム１によって駆動されるプランジャ
２がプランジャバレル３内を摺動可能に配置されてい
る。バレル３には、プランジャ２先端側の圧送室４内に
向けて開口する燃料供給口５が形成され、他方、プラン
ジャ２の外周には、その上端縁が斜め方向に傾斜した下
部リード６が設けられている。そして、前記カム１によ
ってプランジャ２が上方に摺動すると、そのプランジャ
２の外周面が図のように燃料供給口５を塞ぐことから圧
送室４内が高圧となって燃料が吐出され、次いで、下部
リード６がこの燃料供給口５を解放すると噴射が終了す
るようになっている。また、この噴射の終了時期は、下
部リード６が傾斜されていることから、プランジャ２を
円周方向に回動させて使用域を変えることによって、噴
射終了時期即ち噴射量を変更する事が出来、例えば、低
負荷時にはリードの浅い位置を使用することによって噴
射量を少なくし、高負荷時には深い位置を使用して噴射
量を増加させるようにしている。また、噴射の開始時期
を可変にするため、プランジャ２の先端に上部リードを
設けたものがある。 【０００３】更に、上記のような燃料噴射ポンプにおい
て、プランジャ２のストロークに応じて前記バレル３
（スリーブと呼ばれている）をも摺動させることで、初
期の噴射率制御を行うようにしたものがある。 【０００４】 【発明が解決しようとする課題】ディーゼル機関の燃料
噴射装置においては、確実に着火させることができ、か
つ、噴射圧力および噴射率を制御できることが求められ
る。特に、ＮＯx や黒煙の発生を抑制した低公害型のデ
ィーゼル機関では、噴射タイミングを可変とし、初期の
噴射率を抑制しながら負荷に応じた変更が可能であり、
更に、始動時には、噴射量を最大に増加して始動性を確
保することが必要とされる。中でも、この種ディーゼル
機関においてＮＯx を低減することが強く求められてい
るが、これは、初期噴射率を抑制して初期の燃焼圧力を
小さくすることで大幅に改善できることが知られてい
る。そして、この初期噴射率の抑制を負荷に応じて制御
することによって各負荷に応じた最適なパターンを選定
する必要がある。他方、ディーゼル機関に特有な黒煙の
発生は、その抑制後に噴射圧力を急激に増大させて、強
い圧力の下で燃焼させることによって抑制することがで
きる。 【０００５】しかるに、下部リード６のみによって噴射
量を変更する従来の燃料噴射ポンプでは、かかる制御は
まったく不可能であり、同じく上部リードを設けたプラ
ンジャにおいても、噴射開始タイミングを変更できるの
みで、負荷に応じた初期噴射率の制御を行うことが出来
ない欠点があった。 【０００６】他方、プランジャ２のストロークに対して
バレル３を摺動させるようにした前記従来の装置によれ
ば、このバレル３の摺動時期及び量を変更することによ
ってこのような制御が可能であるが、そのためには、負
荷を検出する何らかの検出手段とその検出結果に応じて
バレル３を摺動させるアクチュエータ等が必要で、構造
が複雑でかつ高価になるという欠点がある。 【０００７】即ち、この発明は、このようなプリストロ
ークの制御を行うことができるようにした安価な燃料噴
射装置を提供することを目的としてなされたものであ
る。 【０００８】 【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
め、この発明では、下部リードを備えたプランジャのス
トロークに応じて、圧送室に向けて開口する燃料供給口
をそのプランジャ先端が塞いでから前記リードによって
解放されるまでの間燃料を吐出させるようにした燃料噴
射ポンプにおいて、上記プランジャ先端の頂面から外周
面にかけて上部リードを設けるとともに、この上部リー
ドのプランジャ直径方向及び移動方向の深さを、プラン
ジャ円周方向の使用域に対してその使用域の低負荷域側
を浅くし、高負荷域になるに従って深くなるように形成
し、且つ、その上部リードの直径方向の深さを、０．０
５ミリ程度とすることによって、負荷に応じた初期噴射
率の制御を可能としたことを特徴とする。 【０００９】 【作用】上記の構成において、プランジャが摺動してそ
の先端が燃料供給口にかかるとと燃料の吐出が始まる
が、プランジャ先端には上部リードが形成されているの
で、この上部リードが燃料供給口にかかっている間は、
圧送室内の燃料が上部リードを介して燃料供給口に漏れ
ることになる。ここで、単にプランジャの先端に上部リ
ードを設けた従来の構造の場合には、上部リードを介し
て圧送室内の燃料を漏らすことによって噴射量を変更
し、図６に示すように、燃料噴射弁の開弁時期すなわち
噴射開始時期を遅らせることができる。しかし、上部リ
ードのプランジャの直径方向の深さを、本発明のように
非常に浅くしたものではなく、従って上部リードを介し
ての燃料の逃げ量が多いのが一般的で、上部リードが燃
料供給口にかかっている間の圧送室内の圧力特性は、圧
力上昇のほとんどない状態から急激に圧力が上昇すると
いった特性を示し、初期噴射率は急激に上昇して、燃料
噴射弁の開弁圧に達するまでの圧力の上昇勾配は急激に
なる。一方、本発明においては、上部リードのプランジ
ャ直径方向の深さを、０．０５ミリ程度としているた
め、従来の構造に比べて上部リードを介しての燃料の漏
れを抑制し、初期噴射率は抑制されて、燃料噴射弁の開
弁圧に達する迄の圧力の上昇勾配は緩やかになる。しか
も、この逃げ量は、上部リードの深さが深くなる高負荷
時において多くなり、相対的に高負荷時の方が噴射開始
時期が遅れることになる。そして、吐出圧力が開弁圧に
達するとノズルが開いて噴射が開始されるが、この開始
後も前記上部リードからの漏出が行われており、この間
噴射率の抑制が行われる。この抑制期間は、上部リード
が供給口を通過し終わるまでであり、上部リードの深さ
が高負荷側において深くなっていることによって、負荷
の増大にともなって噴射時期が遅れるよう制御される。 【００１０】 【実施例】図１は、この発明のプランジャ先端部の構造
を示したものであり、その外周の先端部近傍に、その上
端縁が円周方向に対して傾斜した下部リード６が形成さ
れている。また、下部リード６とプランジャ２先端面と
を連通するようにして、縦溝８が形成されて、下部リー
ド６が前記供給口５に合致すると、圧送室４が供給口５
に連通してその圧送室４を解放し、燃料の吐出を終了さ
せるようになっている。また、プランジャ２を回動させ
てこの縦溝８を供給口５に合致させることによって、ど
の負荷域でも燃料の吐出を終了させ機関を停止できるよ
うにしている。 【００１１】しかして、このような下部リード６を備え
たプランジャ２において、その先端のプランジャ２頂面
から外周にかけて、段状の上部リード７が形成されてい
る。この上部リード７の直径方向の深さは、０．０５ミ
リ程度の非常に浅いものであるが、図２で示すように、
プランジャ２の円周方向の使用域におけるアイドル位置
と始動時の使用位置を除いた範囲において、低負荷域か
ら高負荷域へ行くに従って深くなるように形成してあ
る。図３は、かかる上部リード７を形成したプランジャ
２先端を円周方向に展開して、各負荷毎の使用域との関
係を示したものであって、さらに、この図で示すよう
に、上部リード７のプランジャ２移動方向の深さは、そ
の下部リード６の下縁を円周方向に対して傾斜させるこ
とによって、高負荷側が長くなるように形成されてい
る。 【００１２】なお、上部リード７及び下部リード６等
は、この実施例では、２個の供給孔５に対応するよう直
径方向に対向して夫々２個形成されている。 【００１３】図４は、始動時及び各負荷時における噴射
時期線を示したもので、夫々の上部の曲線が吐出圧力を
下部の曲線がノズルリフト量を示している。このよう
に、負荷が高くなるに従って噴射開始後の吐出圧力の上
昇勾配α１〜α４が緩やかとなり、これに従って噴射開
始時期即ちノズルのリフトタイミングが遅れることにな
る。図の線Ｐは圧送が開始されるプランジャ２の先端面
の位置を、線Ｑは圧送抑制期間の終わりである上部リー
ド７下端縁の位置を示している。更に線Ｒは、各負荷の
開弁時期を結んだものであって、始動時及び低負荷時に
は、圧送抑制期間が終了するよりもかなり前に開弁圧Ｐ
0 に達するが、高負荷時特に全負荷時には殆ど近接した
位置まで遅れている。 【００１４】図５は、カムリフトの進行に伴う燃料噴射
時期との関係を示したもので、前記のように高負荷時の
噴射期間を遅らせることによって、カム速度の高い位置
で噴射を行うことになるので、高負荷時には噴射圧力を
急激に上昇させて急速燃焼させることができる。この急
速燃焼により黒煙排出量を大幅に低減できるのである。
また、始動時には、上部リード７は働かないので噴射量
を抑制することなく充分な燃料を噴射させ、従来通りの
始動性能を得ることができる。 【００１５】図６は、噴射曲線を上部リードを備えた従
来例と比較したものである。図のイ〜ニは噴射抑制期間
の終了時であり、Ｗ〜Ｚは噴射期間の終了時を示してい
る。このように従来の燃料噴射ポンプでは、単に噴射時
期を遅らせるのみであって、初期噴射率の制御を行うも
のではないことが解る。 【００１６】上記実施例では、上部リード７を段状に形
成しているがこれは斜めの切落とし形状にしても良い。 【００１７】 【発明の効果】以上のように、この発明では、プランジ
ャの先端に形成した上部リードにより、噴射時期と初期
噴射率を負荷に応じて制御することができ、これによっ
て、噴射初期には噴射を抑制することによってＮＯxを
低減し、噴射後期には急速燃焼させて黒煙の発生を低減
できるといったような制御が可能である。特に、上部リ
ードの直径方向の深さを、０．０５ミリ程度としている
ので、従来のようにプランジャに単に上部リードを形成
するときと比べて、燃料圧送時における上部リードを介
しての燃料の漏れを抑制して、初期噴射率を確実に抑制
することができ、噴射時期を遅らせるために生じる燃費
の悪化を防止しながらＮＯxを低減することができる。
しかも、このような制御を行うものでありながら、プラ
ンジャの先端に従来と異なる形状の上部リードを設ける
だけの簡単な構造で実現することができ、バレルを摺動
させる従来のものに比較して遙かに安価に製作すること
が出来るという効果がある。

【図面の簡単な説明】 【図１】この発明の実施例を示すプランジャ上端の斜視
図である。 【図２】同じくプランジャ先端面の平面図である。 【図３】プランジャ上端部の上部リードの部分を円周方
向に展開した展開図である。 【図４】各負荷における噴射圧力特性の変化を示すグラ
フである。 【図５】カムリフトと噴射時期との関係を示すタイミン
グチャートである。 【図６】本発明プランジャと上部リードを備えたプラン
ジャとの圧力特性等を比較して示すグラフである。 【図７】従来のプランジャを備えた燃料噴射ポンプの要
部縦断面図である。 【符号の説明】 ２ プランジャ ６ 下部リード ７ 上部リード

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大橋 良一 大阪市北区茶屋町１番32号 ヤンマーデ ィーゼル株式会社内 (56)参考文献 特開 昭48−53116（ＪＰ，Ａ) 特公 昭42−6612（ＪＰ，Ｂ２)

Claims (1)

1. (57)【特許請求の範囲】 下部リードを備えたプランジャのストロークに応じて、
   圧送室に向けて開口する燃料供給口をそのプランジャ先
   端が塞いでから前記リードによって解放されるまでの間
   燃料を吐出させるようにした燃料噴射ポンプにおいて、
   上記プランジャ先端の頂面から外周面にかけて上部リー
   ドを設けるとともに、この上部リードのプランジャ直径
   方向及び移動方向の深さを、プランジャ円周方向の使用
   域に対してその使用域の低負荷域側を浅くし、高負荷域
   になるに従って深くなるように形成し、且つ、その上部
   リードの直径方向の深さを、０．０５ミリ程度とするこ
   とによって、負荷に応じた初期噴射率の制御を可能とし
   たことを特徴とする内燃機関の燃料噴射装置。