JP3876089B2 - ディーゼルエンジンの燃料噴射装置 - Google Patents

ディーゼルエンジンの燃料噴射装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディーゼルエンジンの燃料噴射装置に関し、詳しくは、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量を低減できるものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ディーゼルエンジンの燃料噴射装置として、燃料の予備噴射と主噴射とを行えるようにしたものが知られている。
このディーゼルエンジンによれば、予備噴射によって燃焼室内に予備混合気を形成し、この予備混合気に主噴射を行うことにより、主噴射燃料の着火期間の短縮し、NOxや黒煙の排出量低減を図ることができるものとされている。
しかし、このディーゼルエンジンでは、全ての運転領域、すなわち低負荷領域や低回転領域でも予備噴射が実施されるため、次の問題が生じる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
低負荷領域では、中負荷領域や高負荷領域に比べ、燃料の総噴射量が少ないため、燃焼温度が低い。また、燃料の総噴射量が少ないのに比例して、予備噴射量も少なくなるため、予備混合気の濃度が薄くなり過ぎる。このため、低負荷領域で予備噴射を実施すると、主噴射による燃焼火炎が燃焼室内全体に拡散した予備混合気の隅々まで伝播せず、予備混合気が燃え残りやすく、未燃燃料、未燃ガス、HC、COの排出量が多くなる。
【0004】
低回転領域では、中回転領域や高回転領域に比べ、燃焼室の室壁の放熱量が多くなるため、低回転領域で予備噴射を行うと、燃焼室の室壁付近の予備混合気が燃え残りやすく、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量が多くなる。
【0005】
本発明の課題は、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量を低減できるディーゼルエンジンの燃料噴射装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明の構成は、次の通りである(図3(E)参照)。
燃料の予備噴射(1)と主噴射(2)とを行えるようにしたディーゼルエンジンの燃料噴射装置において、
運転領域を予備噴射実施領域(51)と予備噴射不実施領域(52)とに区分し、予備噴射実施領域(51)では予備噴射(1)と主噴射(2)とを行い、予備噴射不実施領域(52)では主噴射(2)のみを行うようにし、
予備噴射実施領域(51)は、高回転高負荷領域(53)を含み、予備噴射不実施領域(52)は、低回転から高回転に至る回転域の低負荷領域(54)と、低負荷から高負荷に至る負荷域の低回転領域(55)とを含むように設定されている。
【0007】
【発明の作用及び効果】
(請求項1の発明)
請求項1の発明は、次の作用効果を奏する(図1、図2、図3(E)、図4参照)。
予備噴射実施領域(51)は、高回転高負荷領域(53)を含むため、次の利点がある。
高回転高負荷領域(53)で予備噴射(1)が実施されると、予備噴射燃料が燃料室(3)内で気化し、予備混合気となって燃料室(3)内全体に拡散し、燃焼室(3)内に極めて着火しやすい雰囲気を作る。ここに主噴射(2)が行われると、主噴射燃料の着火が助けられ、着火遅れが短くなる。また、着火後の燃焼も促進される。更に、燃料と空気との混合もよくなるので、吸入空気の利用度が上がる。これらの理由で、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量が低減され、その分燃費も安くなる。また、熱効率と同時に出力も向上し、排煙もきれいになる。同時に振動や騒音も下がり、滑らかな運転が得られる。汎用エンジンでは、高回転高負荷領域(53)の使用頻度が高いので、本発明は汎用エンジンには特に有用である。
【0008】
予備噴射不実施領域(52)は、低回転から高回転に至る回転域の低負荷領域(54)を含むため、次の利点がある。
先に説明したように、低負荷領域(54)は燃焼温度が低いうえ、予備噴射(1)を実施すると、予備混合気の濃度が薄くなり過ぎるため、予備混合気が燃え残りやすい。このため、低負荷領域(54)では予備噴射(1)を実施しないことにより、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量を低減できる。
【0009】
予備噴射不実施領域(52)は、低負荷から高負荷に至る回転領域の低回転領域(55)を含むため、次の利点がある。
先に説明したように、低回転領域(55)で予備噴射(1)を実施すると、燃焼室(3)の室壁付近の予備混合気が燃え残りやすく、未燃燃料や未燃ガスの排出量が多くなる。このため、低回転領域では予備噴射を実施しないことにより、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量を低減できる。
【0010】
以上のように、予備噴射の実施に適する領域と適さない領域とを明確に区分し、予備噴射(1)の実施と不実施を使い分けることにより、広い運転領域で、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量を低減できる。
【0011】
(請求項2の発明)
請求項2の発明は、請求項1の発明の作用効果に加え、次の作用効果を奏する(図1、図2、図3(E)、図4参照)。
予備噴射実施領域(51)と予備噴射不実施領域(52)の境界(30)(31)は、低回転側に近づくにつれて高負荷側に近づくように設定されているので、次の利点がある。
低回転側に近づくにつれて、燃焼室(3)の室壁からの放熱量が増加し、予備混合気が燃え残りやすいため、境界(30)(31)を高負荷側に近づけることにより、燃焼温度が十分に高くなる領域に至るまでは、予備噴射(1)を実施しない。このため、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量を低減できる。
【0012】
(請求項3の発明)
請求項3の発明は、請求項1または2の発明の作用効果に加え、次の作用効果を奏する(図1、図2、図4、図5参照)。
1の燃焼室(3)に対する予備噴射(1)と主噴射(2)とが、燃料噴射ポンプ(8)に接続された1の燃料噴射管(20)と、この燃料噴射管(20)に接続された1の燃料噴射ノズル(19)とを介して行われるように構成されているため、次の利点がある。
1の燃焼室(3)に対する予備噴射(1)と主噴射(2)とが単一の噴射系で行われるため、燃料噴射装置の構造が簡素化され、製造コストが安くなるとともに、故障が起こりにくい。
【0013】
(請求項4の発明)
請求項4の発明は、請求項3の発明の作用効果に加え、次の作用効果を奏する(図2、図5参照)。
1の燃料噴射カム(9)に対して1の予備噴射用突起(10)と1の主噴射用突起(11)とが設けられているため、次の利点がある。
既存の燃料噴射カム(9)に予備噴射用突起(10)を追加して製作することができ、製作が容易である。
【0014】
(請求項5の発明)
請求項5の発明は、請求項4の発明の作用効果に加え、次の作用効果を奏する(図2、図3(C)(D)参照)。
逃げ孔式の燃料噴射ポンプ(8)が用いられ、負荷が増加するにつれてプランジャ(12)の予備噴射有効ストローク(29)が増加するため、次の利点がある。
逃げ孔式の燃料噴射ポンプ(8)は、プランジャ(12)のプレストローク中、プランジャ室(37)の燃料が逃げ孔(23)から逃げるようになっている。その逃げ量は、エンジン回転速度が低下するにつれて増加し、プレストローク終了時のプランジャ室(37)の燃料油圧は低くなる。
【0015】
このため、負荷の増加によってエンジン回転が低下すると、プランジャ室(37)の燃料油圧も低下するが、負荷が増加してもプランジャ(12)の予備噴射有効ストローク(29)が変化しない場合には、この油圧低下が補われず、図2(E)の境界(30)によって示されるように、エンジン回転速度が未だ高い回転位置(26)にあるにも拘わらず、予備噴射(1)が中止されてしまう。
【0016】
しかし、本発明では、負荷の増加によってエンジン回転速度が低下しても、プランジャ(12)の予備噴射有効ストローク(29)が増加し、燃料油圧の低下が補われるので、図3(E)の境界(31)によって示されるように、より低い回転位置(27)まで予備噴射(1)が維持される。このため、黒煙の発生を抑制しながら出力を向上させる機能が、より低い回転位置(27)まで維持される。
【0017】
また、図3(C)(D)に示すように、負荷が減少するにつれてプランジャ(12)の予備噴射ストローク(29)が減少するため、次の利点がある。
逃げ孔式の燃料噴射ポンプ(8)では、エンジンの回転が上昇するにつれて、プレストローク終了時のプランジャ室(37)の燃料油圧は低くなる。
【0018】
このため、負荷の減少によってエンジン回転が上昇すると、プランジャ室(37)の燃料油圧も上昇するが、負荷が減少してもプランジャ(12)の予備有効ストローク(29)が変化しない場合には、この油圧上昇が抑制されず、図3(E)の境界(30)によって示されるように、かなり低い負荷位置(32)まで予備噴射(1)が維持される。このため、予備混合気が燃え残りやすく、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量が多くなる。
【0019】
しかし、本発明では、負荷の減少によってエンジン回転速度が上昇しても、プランジャ(12)の予備噴射ストローク(29)が減少し、油圧上昇を抑制するため、図3(E)の境界(31)によって示されるように、より高い負荷位置(33)で早期に予備噴射(1)が停止される。このため、予備混合気が燃え残りにくく、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量を低減できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜図4は、本発明の第1実施形態を説明する図である。この第1実施形態では、直接噴射式の多気筒ディーゼルエンジンが用いられている。
【0021】
このエンジンの概要は、次の通りである。
図2に示すように、シリンダ(16)にピストン(4)が内嵌され、ピストン(4)の頂面(5)にキャビティ(6)が設けられ、このキャビティ(6)内が燃焼室(3)とされている。シリンダ(16)にシリンダヘッド(17)が組み付けられ、このシリンダヘッド(17)に燃料噴射ノズル(19)が取り付けられている。図2中の符号(18)は吸気弁である。このエンジンでは、燃料の予備噴射(1)と主噴射(2)とが燃焼室(3)内に直接に行われようになっており、図1に示すように、吸気行程(42)の初期に過減圧過程(42a)を備えている。
【0022】
過減圧過程(42a)の内容は、次の通りである。
図1に示すように、過減圧過程(42a)は、吸気行程(42)中に吸気弁の開弁を開始(34)することにより設定され、この過減圧過程(42a)中は、排気行程(41)中に吸気弁の開弁を開始する場合に比べて、燃焼室(3)の内圧が低圧になるように設定されている。この過減圧過程(42a)中に、予備噴射(1)が行われ、予備噴射燃料の全部または一部が過減圧過程(42a)中に気化される。過減圧過程(42a)前に、予備噴射(1)が行われるようにしてもよい。なお、図1中の符号(18a)で示す実線は、吸気行程(42)中に吸気弁の開弁を開始(34)した場合の吸気弁のバルブリフト曲線であり、符号(18b)で示す鎖線は、排気行程(41)中に吸気弁の開弁を開始した場合の吸気弁のバルブリフト曲線である。また、符号(3d)で示す実線は、吸気行程(42)中に吸気弁の開弁を開始(34)した場合の燃焼室内圧曲線、符号(3e)で示す鎖線は、排気行程(41)中に吸気弁の開弁を開始した場合の燃焼室内圧曲線である。
【0023】
過減圧過程(42a)を用いる利点は、次の通りである。
図1に示すように、過減圧過程(42a)中は、排気行程(41)中に吸気弁の開弁を開始する場合に比べて、燃焼室(3)の内圧が低圧になる。この過減圧過程(42a)中または過減圧過程(42a)前に、予備噴射(1)が行われると、予備噴射燃料が燃焼室(3)の低い内圧によって急速に気化する。気化した予備噴射燃料は、吸気弁の開弁の開始(34)後に急速に燃焼室(3)内に導入される吸気によって拡散され、予備混合気になって燃焼室(3)内全体に行き渡る。そして、圧縮行程中に低温酸化反応(燃焼前反応)を起こし、燃焼室(3)内に極めて着火しやすい雰囲気を作る。
【0024】
ここに主噴射(2)が行われると、主噴射燃料の着火が助けられ、着火遅れが短くなる。また、着火後の燃焼も促進される。更に、燃料と空気の混合もよくなるので、吸入空気の利用度が上がる。これらの理由で、未燃燃料、未燃ガス、HC、COの排出量が低減され、その分燃費も安くなる。また、熱効率と同時に出力も向上し、排煙もきれいになる。同時に振動や騒音も下がり、滑らかな運転が得られる。
【0025】
吸気弁の望ましい開弁タイミングは、次の通りである。
図1に示す吸気弁の開弁の開始(34)は、クランク角で上死点後10゜〜60゜の範囲内で行うのが望ましく、20゜〜50゜の範囲内がより望ましく、30゜〜40゜の範囲で行うのが最も望ましい。吸気弁の開弁の開始(34)が、上死点後10゜よりも前に行われる場合には、過減圧過程(42a)中に燃焼室(3)の内圧が十分に低下しないことがある。また、上死点後60゜よりも後に行われる場合には、吸気の充填効率が低くなり過ぎることがある。これに対し、吸気弁の開弁の開始(34)が、上死点後10゜〜60゜の範囲内で行われる場合には、過減圧過程(42a)中に燃焼室(3)の内圧が十分に低下するとともに、吸気の充填効率も高く維持される。同様の理由で、20゜〜50゜の範囲内で行う場合には、この機能がより確実に発揮され、30゜〜40゜の範囲内で行う場合には、この機能が最も確実に発揮される。
【0026】
排気弁の望ましい閉弁タイミングは、次の通りである。
図1に示す排気弁の閉弁の終了(35)は、クランク角で上死点前10゜〜上死点後20゜の範囲内で行うのが望ましい。排気弁の閉弁の終了(35)が、上死点前10゜よりも前に行われる場合には、排気効率が低下し過ぎることがある。また、上死点後20゜よりも後に行われる場合には、過減圧過程(42a)で排気が燃焼室(3)内に逆流し、燃焼室(3)の内圧が十分に低下しないことがある。これに対し、排気弁の閉弁の終了(35)が、クランク角で上死点前10゜〜上死点後20゜の範囲内で行われる場合には、排気効率が高く維持されるとともに、過減圧過程(42a)で燃焼室(3)の内圧が十分に低下する。
【0027】
この第1実施形態で採用した弁の開閉タイミングは、次の通りである。
図1に示すように、排気弁の閉弁の終了(35)は、クランク角で上死点後5゜に行い、吸気弁の開弁の開始(34)は、上死点後35゜に行っている。この場合、過減圧過程(42a)は、クランク角度で上死点0゜から上死点後70゜まで継続し、上死点後45゜で最減圧点(42b)が現れ、この最減圧点(42b)での燃焼室内圧は0.5気圧以下まで低下する。
【0028】
予備噴射(1)の望ましい噴射タイミングは、次の通りである。
図1に示すように、予備噴射(1)の開始(1a)は、吸気弁の開弁の開始(34)前に行うのが望ましい。燃焼室(3)の内圧が最も低下する最減圧点(42b)は、過減圧過程(42a)中、吸気弁の開弁が開始(34)した後に現れる。このため、吸気弁の開弁の開始(34)前に、予備噴射(1)を開始(1a)すると、少なくとも予備噴射燃料の一部は、最減圧点(42b)を経るため、予備噴射燃料の気化効率が高まる。
【0029】
予備噴射(1)の終了(1b)は、吸気弁の開弁の開始(34)前に行うのが望ましい。吸気弁の開弁の開始(34)前に予備噴射(1)を終了(1b)すると、予備噴射燃料の全部が、最減圧点(42b)を経るため、予備噴射燃料の気化効率が高まる。
【0030】
この第1実施形態で採用した噴射タイミングは、次の通りである。
図1に示すように、予備噴射の開始(1a)は上死点0゜で行い、終了(1b)は上死点後20゜で行う。主噴射(2)の開始は圧縮行程(43)の上死点前20゜で行っている。予備噴射(1)や主噴射(2)の噴射タイミングは、エンジン回転速度に応じてある程度変動する。これらの噴射タイミングをエンジン回転速度に対応して意図的に変化させる場合には、タイマ機構を用いる。
【0031】
図4に示すこの第1実施形態の変形例で採用した弁の開閉タイミングと噴射タイミングは、次の通りである。
排気弁の閉弁の終了(35)は、クランク角で上死点後35゜で行い、吸気弁の開弁の開始(34)は、上死点後10゜で行っている。この場合、過減圧過程(42a)は、クランク角度で上死点0゜から上死点後65゜まで継続し、上死点後40゜で最減圧点(42b)が現れ、この最減圧点(42b)での燃焼室内圧は0.5気圧程度まで低下する。他は、図1の場合と同じであり、図4中、図1と同一の要素には、図1と同一の符号を付しておく。
【0032】
予備噴射量の望ましい設定は、次の通りである。
予備噴射量は、主噴射量と同様、負荷が小さくなるにつれて、少なくなるようにする。また、予備噴射量は、同一負荷で比較して、予備噴射量が主噴射量よりも少なくなるようにする。予備噴射(1)と主噴射(2)との総噴射量に対する予備噴射量の割合は、同一負荷で比較して、総噴射量の2〜25%とするのが望ましい。2%未満であると、燃焼室(3)内で生じる混合気が希薄になり過ぎ、主噴射(2)の着火遅れを短くできず、25%を越えると、燃焼室(3)内で生じる混合気が濃くなり過ぎ、過早着火が起こるおそれがある。これに対し、2〜25%では、このような問題が生じにくい。これらの問題を確実に回避するためには、予備噴射量を5〜20%とするのがより望ましい。なお、予備噴射(1)は、後述するように、特定の運転領域では実施しない。
【0033】
予備噴射(1)の使い分けの区分は、次の通りである。
図3(E)に示すように、運転領域を予備噴射実施領域(51)と予備噴射不実施領域(52)とに区分し、予備噴射実施領域(51)では予備噴射(1)と主噴射(2)とを行い、予備噴射不実施領域(52)では主噴射(2)のみを行うように構成されている。
予備噴射実施領域(51)は、高回転高負荷領域(53)を含み、予備噴射不実施領域(52)は、低回転から高回転に至る回転域の低負荷領域(54)と、低負荷から高負荷に至る負荷域の低回転領域(55)とを含むように設定されている。予備噴射実施領域(51)は、高回転高負荷領域(53)の全部又は一部を含み、予備噴射不実施領域(52)は、低回転低負荷領域の全部又は一部と、中回転低負荷領域の全部又は一部と、高回転低負荷領域の全部又は一部と、低回転中負荷領域の全部又は一部と、低回転高負荷領域の全部又は一部とを含むように設定する。
望ましくは、予備噴射実施領域(51)は、高回転高負荷領域(53)の全部と、高回転中負荷領域の一部と、中回転高負荷領域の一部を含み、予備噴射不実施領域(52)は、高回転中負荷領域の一部と、中回転中負荷領域の全部又は一部と、低負荷領域(54)の全部と、低回転領域(55)の全部を含むように設定する。
【0034】
予備噴射実施領域(51)で予備噴射(1)を行う利点は、次の通りである。
図3(E)に示すように、予備噴射実施領域(51)は高回転高負荷領域(53)を含む。
高回転高負荷領域(53)で予備噴射(1)が実施されると、予備噴射燃料が燃料室(3)内で気化し、予備混合気となって燃料室(3)内全体に拡散し、燃焼室(3)内に極めて着火しやすい雰囲気を作る。ここに主噴射(2)が行われると、主噴射燃料の着火が助けられ、着火遅れが短くなる。また、着火後の燃焼も促進される。更に、燃料と空気との混合もよくなるので、吸入空気の利用度が上がる。これらの理由で、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量が低減され、その分燃費も安くなる。また、熱効率と同時に出力も向上し、排煙もきれいになる。同時に振動や騒音も下がり、滑らかな運転が得られる。汎用エンジンでは、高回転高負荷領域(53)の使用頻度が高いので、汎用エンジンには特に有用である。
【0035】
予備噴射不実施領域(52)で予備噴射(1)を行わない利点は、次の通りである。
図3(E)に示すように、予備噴射不実施領域(52)は、低回転から高回転に至る回転域の低負荷領域(54)を含む。低負荷領域(54)では、中負荷領域や高負荷領域に比べ、燃料の総噴射量が少ないため、燃焼温度が低い。また、燃料の総噴射量が少ないのに比例して、予備噴射量も少なくなるため、予備混合気の濃度が薄くなり過ぎる。このため、低負荷領域(54)で予備噴射(1)を実施すると、主噴射(2)による燃焼火炎が燃焼室(3)内全体に拡散した予備混合気の隅々まで伝播せず、予備混合気が燃え残りやすく、未燃燃料、未燃ガス、HC、COの排出量が多くなる。このため、低負荷領域(54)では予備噴射(1)を実施しないことにより、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量を低減できる。
【0036】
図3(E)に示すように、予備噴射不実施領域(52)は、低負荷から高負荷に至る回転領域の低回転領域(55)を含む。低回転領域(55)では、中回転領域や高回転領域に比べ、燃焼室(3)の室壁の放熱量が多くなるため、低回転領域(55)で予備噴射を行うと、燃焼室(3)の室壁付近の予備混合気が燃え残りやすく、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量が多くなる。このため、低回転領域(55)では予備噴射(1)を実施しないことにより、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量を低減できる。
【0037】
以上のように、予備噴射(1)の実施に適する領域と適さない領域とを明確に区分し、予備噴射(1)の実施と不実施を使い分けることにより、広い運転領域で、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量を低減できる。
【0038】
予備噴射不実施領域(52)と過減圧過程(42a)との組み合わせによる利点は、次の通りである。
予備噴射不実施領域(52)での運転中、過減圧過程(42a)は、予備噴射燃料の気化を促進する機能は果たす余地はないが、この過減圧過程(42a)によって負荷が生じるため、これがない場合に比べ、主噴射量が多くなる。このため、燃焼温度が適度に高くなり、始動後の暖機促進を図ることができるとともに、低負荷領域(54)での青白煙を低減できる。なお、動弁カムの位相を調節自在とし、予備噴射不実施領域(52)での運転中は、図1に示す吸気弁の開弁の開始(34)が上死点前に行われるようにし、過減圧過程(42a)が生じないようにしてもよい。
【0039】
この第1実施形態で使用する運転領域の定義は、次の通りである。
低回転領域とは定格回転の25%未満の領域をいい、中回転領域とは定格回転の25%〜75%の領域をいい、高回転領域とは定格回転の75%を越える領域をいう。また、低負荷領域とは全負荷の25%未満の領域をいい、中負荷領域とは全負荷の25%〜75%の領域をいい、高負荷領域とは全負荷の75%を越える領域をいう。
【0040】
予備噴射(1)を使い分ける境界(30)(31)の設定とその利点は、次の通りである。
図3(E)に示す2つの境界(30)(31)は、図3に示す2種類のプランジャ(12)を使い分けることにより、いずれか一方を選択する。
予備噴射実施領域(51)と予備噴射不実施領域(52)の境界(30)(31)は、低回転側に近づくにつれて高負荷側に近づくように設定されている。低回転側に近づくにつれて、燃焼室(3)の室壁からの放熱量が増加し、予備混合気が燃え残りやすいため、境界(30)(31)を高負荷側に近づけることにより、燃焼温度が十分に高くなる領域に至るまでは、予備噴射(1)を実施しない。このため、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量を低減できる。
【0041】
境界(30)(31)の回転に対する望ましい設定位置は、次の通りである。
境界(30)(31)の全負荷位置での回転位置(26)(27)は、定格回転の20%〜60%の範囲内にあるのが望ましく、40%〜60%の範囲内にあるのがより望ましい。
【0042】
上記回転位置(26)(27)が、定格回転の20%未満である場合には、境界(30)(31)が低回転側に寄り過ぎ、予備噴射実施領域(51)の予備混合気が燃え残りやすい範囲が拡張され、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量が多くなる傾向がある。また、60%を越える場合には、境界(30)(31)が高回転側に寄り過ぎ、黒煙の発生を抑制しながら出力を向上させる予備噴射(1)の機能が、比較的高回転側で停止してしまう。これに対し、20%〜60%の範囲内にある場合には、境界(30)(31)が回転に対して適性に位置に配置され、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量を少なくできると同時に、黒煙の発生を抑制しながら出力を向上させる予備噴射(1)の機能を比較的低回転側まで維持することができる。同様の理由で、40%〜60%の範囲内にある場合には、この機能が一層確実に発揮される。
【0043】
境界(30)(31)の負荷に対する望ましい設定位置は、次の通りである。
境界(30)(31)の定格回転位置での負荷位置(32)(33)は、全負荷の20%〜80%の範囲内にあるのが望ましく、40%〜60%の範囲内にあるのがより望ましい。
【0044】
上記負荷位置(32)(33)が、全負荷の20%未満である場合には、境界(30)(31)が低負荷側に寄り過ぎ、予備噴射実施領域(51)の予備混合気が燃え残りやすい範囲が拡張され、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量が多くなる傾向がある。また、80%を越える場合には、境界(30)(31)が高負荷側に寄り過ぎ、黒煙の発生を抑制しながら出力を向上させる予備噴射(1)の機能が、比較的高負荷側で停止してしまう。これに対し、20%〜80%の範囲内にある場合には、境界(30)(31)が負荷に対して適度な位置に配置され、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量を少なくできると同時に、黒煙の発生を抑制しながら出力を向上させる予備噴射(1)の機能を比較的低負荷側まで維持することができる。同様の理由で、40%〜60%の範囲内にある場合には、この機能が一層確実に発揮される。
【0045】
この実施形態で採用した境界(30)(31)の設定は、次の通りである。
境界(30)の全負荷位置での回転位置(26)は、定格回転の70%の位置にあり、定格回転位置での負荷位置(32)は全負荷の20%の位置にある。境界(30)が設定された場合、予備噴射実施領域(51)には、高回転高負荷領域(53)の全部と、高回転中負荷領域のほぼ半分と、高回転低負荷領域の極めて僅かな部分と、中回転高負荷領域の極めて僅かの部分とが含まれ、予備噴射不実施領域(52)には、高回転中負荷領域のほぼ半分と、中回転高負荷領域のほぼ全部と、中回転中負荷領域の全部と、低回転から高回転に至る回転領域の低負荷領域(54)のほぼ全部と、低負荷から高負荷に至る負荷領域の低回転領域(55)の全部とが含まれる。
【0046】
境界(31)の全負荷位置での回転位置(27)は、定格回転の55%の位置にあり、定格回転での負荷位置(33)は全負荷の50%の位置にある。境界(31)が設定された場合、予備噴射実施領域(51)には、高回転高負荷領域(53)の全部と、高回転中負荷領域の一部と、中回転高負荷領域の一部とが含まれ、予備噴射不実施領域(52)には、高回転中負荷領域の大半と、中回転高負荷領域の大半と、中回転中負荷領域の全部と、低回転から高回転に至る回転領域の低負荷領域(54)の全部と、低負荷から高負荷に至る負荷領域の低回転領域(55)の全部とが含まれる。
【0047】
燃料噴射装置の構成は、次の通りである。
図2に示すように、燃料噴射ポンプ(8)に燃料噴射管(20)が接続され、この燃料噴射管(20)の先端に燃料噴射ノズル(19)が接続されている。図1に示す予備噴射(1)と主噴射(2)とは、燃焼室(3)に直接に行われ、1の燃焼室(3)への予備噴射(1)と主噴射(2)とが、燃料噴射ポンプ(8)に接続された1の燃料噴射管(20)と、この燃料噴射管(20)に接続された1の燃料噴射ノズル(19)とを介して行われる。予備噴射(1)と主噴射(2)は、キャビティ(6)内に向けて行われる。このため、シリンダ(16)の内周面の潤滑油の洗い流しが抑制され、ピストン(4)の焼き付きが抑制される。
【0048】
燃料噴射ポンプ(8)の構成は、次の通りである。
図2に示すように、この燃料噴射ポンプ(8)は逃げ孔式の列型ポンプである。バレル(21)にプランジャ(12)が内嵌されている。プランジャ(12)は燃料噴射カム(9)によってリフトされ、戻しバネ(36)によって戻される。プランジャ(12)のリフト側にはプランジャ室(37)が設けられる。バレル(21)の周囲に燃料溜め室(22)が設けられている。バレル(21)の周壁に燃料入口(24)と逃げ孔(23)とが設けられ、これらを介してプランジャ室(37)と燃料溜め室(22)とが連通されている。
【0049】
プランジャ(12)に斜め溝(14)が設けられている。斜め溝(14)は縦溝(38)でプランジャ室(37)と連通されている。バレル(21)は燃料調量ラック(25)を介してガバナ部に連動連結されている。1の燃料噴射カム(9)に対して1の予備噴射用突起(10)と1の主噴射用突起(11)とが設けられ、予備噴射突起(10)と主噴射突起(11)とが燃料噴射カム(9)の回転中心(9a)を間に挟んで、相互反対側に配置されている。
【0050】
燃料噴射ポンプ(8)の作動は、次の通りである。
プランジャ(12)が燃料噴射カム(9)の主噴射用突起(11)でリフトされた後、戻しバネ(36)によって戻されると、バレル(21)内のプランジャ室(37)が負圧になり、燃料溜め室(22)内の燃料が燃料入口(24)からプランジャ室(37)に吸入される。予備噴射用突起(10)でプランジャ(12)が下死点からリフトされ、プランジャ(12)の周面で燃料入口(24)と逃げ孔(23)とが塞がれると、予備噴射(1)が開始される。予備噴射用突起(10)の突出寸法は短く、斜め溝(14)が逃げ孔(23)に到達する前に、プランジャ(12)のリフトが終了して、予備噴射(1)は終了する。
【0051】
次に、プランジャ室(37)に燃料が吸入された後、主噴射用突起(11)でプランジャ(12)が下死点からリフトされ、プランジャ(12)周面で燃料入口(24)と逃げ孔(23)とが塞がれると、主噴射(2)が開始される。そして、斜め溝(14)が逃げ孔(23)に到達すると、プランジャ室(37)の燃料が縦溝(38)と斜め溝(14)と逃げ孔(23)とを順に介して燃料溜め室(22)に逃げ、主噴射(2)が終了する。以降、同様の動作が繰り返される。
【0052】
エンジンにかかる負荷が減少すると、エンジンの回転速度が増加するので、ガバナ部から燃料調量ラック(25)を介してバレル(21)が燃料減量方向に回転連動される。逆に、エンジンにかかる負荷が増加すると、バレル(21)が燃料増量方向に回転連動される。
【0053】
燃料噴射ポンプ(8)に用いられるプランジャ(12)の種類は、次の通りである。
プランジャ(12)には、図2(A)(B)のものと、図2(C)(D)に示すもののいずれかを用いることができる。
【0054】
図3(A)(B)に示すプランジャ(12)の構成と機能は、次の通りである。
このプランジャ(12)は周面のリフト側端縁(13)のうちの中高負荷部分(13a)と低負荷部分(13b)とがプランジャ(12)のリフト方向と実質的に直交する向きに段差なく連続形成されている。
【0055】
このプランジャ(12)の場合、負荷の高低に拘わらず予備噴射有効ストローク(29)は一定になるが、予備噴射量は主噴射量と同様、負荷が高くなるにつれて増加するようになっている。理由は次の通りである。負荷が高いほど、主噴射量が多くなり、燃料噴射管(20)内の残圧も高くなる。また、負荷が高いほど、予備噴射有効ストローク(29)の途中、斜め溝(14)から逃げ孔(23)までの距離が遠くなるので、斜め溝(14)からプランジャ(12)の周面とバレル(21)との隙間を介して逃げ孔(23)に漏れ出る燃料が少なくなる。これらの理由により、予備噴射量は負荷が高くなるにつれて増加する。
【0056】
図3(C)(D)に示すプランジャ(12)の構成と機能は、次の通りである。
このプランジャ(12)は、その周面のリフト側端縁(13)のうちの低負荷部分(13b)が、プランジャ(12)のリフト方向に対して実質的に直交し、中高負荷部分(13a)が低負荷部分(13b)の端部からプランジャ(12)のリフト方向に上り傾斜し、負荷が増加するにつれてプランジャ(12)の予備噴射有効ストローク(29)が増加するとともに、負荷が減少するにつれてプランジャ(12)の予備噴射有効ストローク(29)が減少する。
【0057】
図3(C)(D)に示すプランジャ(12)を用いた場合の利点は、次の通りである。
この図3(C)(D)に示すものは、負荷が増加するにつれてプランジャ(12)の予備噴射有効ストローク(29)が増加する。
逃げ孔式の燃料噴射ポンプ(8)は、プランジャ(12)のプレストローク中、プランジャ室(37)の燃料が逃げ孔(23)から逃げるようになっている。その逃げ量は、エンジン回転速度が低下するにつれて増加し、プレストローク終了時のプランジャ室(37)の燃料油圧は低くなる。
【0058】
このため、負荷の増加によってエンジン回転が低下すると、プランジャ室(37)の燃料油圧も低下するが、図3(A)(B)に示すもののように、負荷が増加してもプランジャ(12)の予備噴射有効ストローク(29)が変化しない場合には、この油圧低下が補われず、図3(E)の境界(30)によって示されるように、エンジン回転速度が未だ高い回転位置(26)にあるにも拘わらず、予備噴射(1)が中止されてしまう。
【0059】
しかし、図3(C)(D)に示すものを用いると、負荷の増加によってエンジン回転速度が低下しても、プランジャ(12)の予備噴射有効ストローク(29)が増加し、燃料油圧の低下が補われるので、図3(E)の境界(31)によって示されるように、より低い回転位置(27)まで予備噴射(1)が維持される。このため、黒煙の発生を抑制しながら出力を向上させる予備噴射(1)の機能が、より低い回転位置(27)まで維持される。
【0060】
この図3(C)(D)に示すものは、負荷が減少するにつれてプランジャ(12)の予備噴射ストローク(29)が減少する。
逃げ孔式の燃料噴射ポンプ(8)では、エンジンの回転が上昇するにつれて、プレストローク終了時のプランジャ室(37)の燃料油圧は低くなる。
このため、負荷の減少によってエンジン回転が上昇すると、プランジャ室(37)の燃料油圧も上昇するが、図3(A)(B)で示されるもののように、負荷が減少してもプランジャ(12)の予備有効ストローク(29)が変化しない場合には、この油圧上昇が抑制されず、図3(E)の境界(30)によって示されるように、かなり低い負荷位置(32)まで予備噴射(1)が維持される。このため、予備混合気が燃え残りやすく、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量が多くなる。
【0061】
しかし、図3(C)(D)で示されるものを用いると、負荷の減少によってエンジン回転速度が上昇しても、プランジャ(12)の予備噴射ストローク(29)が減少し、油圧上昇を抑制するため、図3(E)の境界(31)によって示されるように、より高い負荷位置(33)で早期に予備噴射(1)が停止される。このため、予備混合気が燃え残りにくく、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量を低減できる。
【0062】
尚、図3(C)(D)のものの斜め溝(14)のリフト側端縁(15)のうちの中高負荷部分(15a)は、低負荷部分(15b)の中高負荷側の仮想延長線(15c)よりもプランジャ(12)のリフト方向にずらされている。周面のリフト側端縁(13)の中高負荷部分(13a)をリフト側に傾斜させるのみでは、主噴射有効ストロークが増大しすぎるため、これを調節するためである。
【0063】
境界(30)(31)の設定上の留意点は、次の通りである。
予備噴射用突起(10)が高くなり過ぎると、予備噴射有効ストローク(29)が長くなり過ぎ、境界(30)(31)が図2(E)の左下、すなわち低回転低負荷領域側に大きくずれ、高回転低負荷領域や低回転低負荷領域が予備噴射不実施領域(52)に含まれなくなることがある。更に、予備噴射突起(10)が高くなると、中回転低負荷領域や低回転中負荷領域さえも、予備噴射不実施領域(52)に含まれなくなることがある。また、図3(C)(D)のプランジャ(12)のリフト側端縁(13)の中高負荷部分(13a)の傾斜の仰角が大きくなり過ぎると、高負荷側への予備噴射有効ストローク(29)の増加率が大きくなり過ぎ、境界(31)の傾斜が水平に近くなり、低回転高負荷領域が予備噴射不実施領域(52)に含まれなくなることがある。上記中高負荷部分(13a)の傾斜の仰角が更に大きくなると、低回転中負荷領域さえも予備噴射不実施領域(52)に含まれなくなることがある。
【0064】
また、プレストロークの長さ、斜め溝(14)の位置や傾斜の大きさ、プランジャ(12)の周面とバレル(21)との隙間の大きさ、逃げ孔(23)の大きさ、カムプロフィールに基づくプランジャ(12)のリフト速度、プランジャ室(37)の吐出口に設けられる吐出弁の開弁圧、燃料噴射管(20)の内径や内圧に対する膨張率、燃料噴射ノズル(19)の開弁圧等が調和していなければ、境界(30)(31)は適性に設定されず、低負荷領域(54)や低回転領域(55)が予備噴射不実施領域(52)に含まれなくなる。
【0065】
以上のように、燃料噴射装置全体の調和が必要であり、予備噴射用突起(10)を備えた燃料噴射カム(9)と逃げ孔式の燃料噴射ポンプ(8)とを、単純に組み合わせるだけでは、適性な境界(30)(31)は得られない。
【0066】
第2実施形態の構成は、次の通りである。
上記第1実施形態では、燃焼室(3)として直接噴射式のものが用いられているが、図5に示す第2実施形態では、副室式のものが用いられている。この燃焼室(3)は主燃焼室(3a)と副燃焼室(3b)とで構成され、これらは噴口(3c)で連通されている。副燃焼室(3b)はうず室として構成されている。燃料噴射ノズル(19)は副燃焼室(3b)に臨み、予備噴射燃料の一部と主噴射燃料の一部は、噴口(3c)内を介して主燃焼室(3a)に噴射される。他の構成及び機能は、第1実施形態と同一であり、図3中、第1実施形態と同一の要素には、同一の符号を付しておく。
【0067】
本発明で採用できる他の構成は、次の通りである。
燃料噴射装置には、コモンレールのような電子制御方式のものを用いてもよい。その他、本発明の趣旨に反しない範囲で、自由に他の構成を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るエンジンの燃料噴射率と燃焼室内圧とバルブリフトとピストン位置との関係を説明する図である。
【図2】第1実施形態に係るエンジンの燃焼室と燃料噴射装置の縦断面図である。
【図3】第1実施形態の燃料噴射装置に用いるプランジャの説明図で、図2(A)はプランジャの要部斜視図、図2(B)は同プランジャの周面の展開図、図2(C)は他のプランジャの要部斜視図、図2(D)は同プランジャの周面の展開図、図2(E)は各プランジャを用いた場合の領域区分の説明図である。
【図4】第1実施形態の変形例の図1相当図である。
【図5】第2実施形態に係るエンジンの燃焼室と燃料噴射装置の縦断面図である。
【符号の説明】
(1)…予備噴射、(2)…主噴射、(3)…燃焼室、(8)…燃料噴射ポンプ、(9)…燃料噴射カム、(10)…予備噴射用突起、(11)…主噴射用突起、(12)…プランジャ、(13)…リフト側端縁、(13a)…中高負荷部分、(13b)…低負荷部分、(19)…燃料噴射ノズル、(20)…燃料噴射管、(29)…予備噴射有効ストローク、(30)(31)…境界、(51)…予備噴射実施領域、(52)…予備噴射不実施領域、(53)…高負荷高回転領域、(54)…低負荷領域、(55)…低回転領域。

Claims (5)

  1. 燃料の予備噴射(1)と主噴射(2)とを行えるようにしたディーゼルエンジンの燃料噴射装置において、
    運転領域を予備噴射実施領域(51)と予備噴射不実施領域(52)とに区分し、予備噴射実施領域(51)では予備噴射(1)と主噴射(2)とを行い、予備噴射不実施領域(52)では主噴射(2)のみを行うようにし、
    予備噴射実施領域(51)は、高回転高負荷領域(53)を含み、予備噴射不実施領域(52)は、低回転から高回転に至る回転域の低負荷領域(54)と、低負荷から高負荷に至る負荷域の低回転領域(55)とを含むように設定されている、ことを特徴とするディーゼルエンジンの燃料噴射装置。
  2. 請求項1のディーゼルエンジンの燃料噴射装置において、
    予備噴射実施領域(51)と予備噴射不実施領域(52)の境界(30)(31)は、低回転側に近づくにつれて高負荷側に近づくように設定されている、ことを特徴とするディーゼルエンジンの燃料噴射装置。
  3. 請求項1または2いずれかのディーゼルエンジンの燃料噴射装置において、
    1の燃焼室(3)に対する予備噴射(1)と主噴射(2)とが、燃料噴射ポンプ(8)に接続された1の燃料噴射管(20)と、この燃料噴射管(20)に接続された1の燃料噴射ノズル(19)とを介して行われるように構成されている、ことを特徴とするディーゼルエンジンの燃料噴射装置。
  4. 請求項3のディーゼルエンジンの燃料噴射装置において、
    1の燃料噴射カム(9)に対して1の予備噴射用突起(10)と1の主噴射用突起(11)とが設けられている、ことを特徴とするディーゼルエンジンの燃料噴射装置。
  5. 請求項4のディーゼルエンジンの燃料噴射装置において、
    逃げ孔式の燃料噴射ポンプ(8)が用いられ、プランジャ(12)の周面のリフト側端縁(13)のうちの中高負荷部分(13a)が低負荷部分(13b)の端部からプランジャ(12)のリフト方向に上り傾斜し、負荷が増加するにつれてプランジャ(12)の予備噴射有効ストローク(29)が増加するとともに、負荷が減少するにつれてプランジャ(12)の予備噴射有効ストローク(29)が減少するように構成されている、ことを特徴とするディーゼルエンジンの燃料噴射装置。
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