JP2000227045A - ディーゼルエンジンの燃料噴射装置 - Google Patents

ディーゼルエンジンの燃料噴射装置

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JP2000227045A
JP2000227045A JP11027715A JP2771599A JP2000227045A JP 2000227045 A JP2000227045 A JP 2000227045A JP 11027715 A JP11027715 A JP 11027715A JP 2771599 A JP2771599 A JP 2771599A JP 2000227045 A JP2000227045 A JP 2000227045A
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正寛 明田
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悦 棚谷
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】燃料の予備噴射と主噴射とを行えるように
したディーゼルエンジンの燃料噴射装置において、運転
領域を予備噴射実施領域51と予備噴射不実施領域52
とに区分し、予備噴射実施領域51は、高回転高負荷領
域53を含み、予備噴射不実施領域52は、低負荷領域
54と低回転領域55とを含むように設定されている。 【効果】未燃成分の排出量を低減する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ディーゼルエンジ
ンの燃料噴射装置に関し、詳しくは、未燃燃料、未燃ガ
ス、HC、CO等の排出量を低減できるものに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ディーゼルエンジンの燃料噴射装
置として、燃料の予備噴射と主噴射とを行えるようにし
たものが知られている。このディーゼルエンジンによれ
ば、予備噴射によって燃焼室内に予備混合気を形成し、
この予備混合気に主噴射を行うことにより、主噴射燃料
の着火期間の短縮し、NOxや黒煙の排出量低減を図る
ことができるものとされている。しかし、このディーゼ
ルエンジンでは、全ての運転領域、すなわち低負荷領域
や低回転領域でも予備噴射が実施されるため、次の問題
が生じる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】低負荷領域では、中負
荷領域や高負荷領域に比べ、燃料の総噴射量が少ないた
め、燃焼温度が低い。また、燃料の総噴射量が少ないの
に比例して、予備噴射量も少なくなるため、予備混合気
の濃度が薄くなり過ぎる。このため、低負荷領域で予備
噴射を実施すると、主噴射による燃焼火炎が燃焼室内全
体に拡散した予備混合気の隅々まで伝播せず、予備混合
気が燃え残りやすく、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO
の排出量が多くなる。
【0004】低回転領域では、中回転領域や高回転領域
に比べ、燃焼室の室壁の放熱量が多くなるため、低回転
領域で予備噴射を行うと、燃焼室の室壁付近の予備混合
気が燃え残りやすく、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO
等の排出量が多くなる。
【0005】本発明の課題は、未燃燃料、未燃ガス、H
C、CO等の排出量を低減できるディーゼルエンジンの
燃料噴射装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明の構成
は、次の通りである(図3(E)参照)。燃料の予備噴射
(1)と主噴射(2)とを行えるようにしたディーゼルエン
ジンの燃料噴射装置において、運転領域を予備噴射実施
領域(51)と予備噴射不実施領域(52)とに区分し、予
備噴射実施領域(51)では予備噴射(1)と主噴射(2)と
を行い、予備噴射不実施領域(52)では主噴射(2)のみ
を行うようにし、予備噴射実施領域(51)は、高回転高
負荷領域(53)を含み、予備噴射不実施領域(52)は、
低回転から高回転に至る回転域の低負荷領域(54)と、
低負荷から高負荷に至る負荷域の低回転領域(55)とを
含むように設定されている。
【0007】
【発明の作用及び効果】(請求項1の発明)請求項1の発
明は、次の作用効果を奏する(図1、図2、図3(E)、
図4参照)。予備噴射実施領域(51)は、高回転高負荷
領域(53)を含むため、次の利点がある。高回転高負荷
領域(53)で予備噴射(1)が実施されると、予備噴射燃
料が燃料室(3)内で気化し、予備混合気となって燃料室
(3)内全体に拡散し、燃焼室(3)内に極めて着火しやす
い雰囲気を作る。ここに主噴射(2)が行われると、主噴
射燃料の着火が助けられ、着火遅れが短くなる。また、
着火後の燃焼も促進される。更に、燃料と空気との混合
もよくなるので、吸入空気の利用度が上がる。これらの
理由で、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量が
低減され、その分燃費も安くなる。また、熱効率と同時
に出力も向上し、排煙もきれいになる。同時に振動や騒
音も下がり、滑らかな運転が得られる。汎用エンジンで
は、高回転高負荷領域(53)の使用頻度が高いので、本
発明は汎用エンジンには特に有用である。
【0008】予備噴射不実施領域(52)は、低回転から
高回転に至る回転域の低負荷領域(54)を含むため、次
の利点がある。先に説明したように、低負荷領域(54)
は燃焼温度が低いうえ、予備噴射(1)を実施すると、予
備混合気の濃度が薄くなり過ぎるため、予備混合気が燃
え残りやすい。このため、低負荷領域(54)では予備噴
射(1)を実施しないことにより、未燃燃料、未燃ガス、
HC、CO等の排出量を低減できる。
【0009】予備噴射不実施領域(52)は、低負荷から
高負荷に至る回転領域の低回転領域(55)を含むため、
次の利点がある。先に説明したように、低回転領域(5
5)で予備噴射(1)を実施すると、燃焼室(3)の室壁付
近の予備混合気が燃え残りやすく、未燃燃料や未燃ガス
の排出量が多くなる。このため、低回転領域では予備噴
射を実施しないことにより、未燃燃料、未燃ガス、H
C、CO等の排出量を低減できる。
【0010】以上のように、予備噴射の実施に適する領
域と適さない領域とを明確に区分し、予備噴射(1)の実
施と不実施を使い分けることにより、広い運転領域で、
未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量を低減でき
る。
【0011】(請求項2の発明)請求項2の発明は、請求
項1の発明の作用効果に加え、次の作用効果を奏する
(図1、図2、図3(E)、図4参照)。予備噴射実施領域
(51)と予備噴射不実施領域(52)の境界(30)(31)
は、低回転側に近づくにつれて高負荷側に近づくように
設定されているので、次の利点がある。低回転側に近づ
くにつれて、燃焼室(3)の室壁からの放熱量が増加し、
予備混合気が燃え残りやすいため、境界(30)(31)を
高負荷側に近づけることにより、燃焼温度が十分に高く
なる領域に至るまでは、予備噴射(1)を実施しない。こ
のため、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量を
低減できる。
【0012】(請求項3の発明)請求項3の発明は、請求
項1または2の発明の作用効果に加え、次の作用効果を
奏する(図1、図2、図4、図5参照)。1の燃焼室(3)
に対する予備噴射(1)と主噴射(2)とが、燃料噴射ポン
プ(8)に接続された1の燃料噴射管(20)と、この燃料
噴射管(20)に接続された1の燃料噴射ノズル(19)と
を介して行われるように構成されているため、次の利点
がある。1の燃焼室(3)に対する予備噴射(1)と主噴射
(2)とが単一の噴射系で行われるため、燃料噴射装置の
構造が簡素化され、製造コストが安くなるとともに、故
障が起こりにくい。
【0013】(請求項4の発明)請求項4の発明は、請求
項3の発明の作用効果に加え、次の作用効果を奏する
(図2、図5参照)。1の燃料噴射カム(9)に対して1の
予備噴射用突起(10)と1の主噴射用突起(11)とが設
けられているため、次の利点がある。既存の燃料噴射カ
ム(9)に予備噴射用突起(10)を追加して製作すること
ができ、製作が容易である。
【0014】(請求項5の発明)請求項5の発明は、請求
項4の発明の作用効果に加え、次の作用効果を奏する
(図2、図3(C)(D)参照)。逃げ孔式の燃料噴射ポンプ
(8)が用いられ、負荷が増加するにつれてプランジャ
(12)の予備噴射有効ストローク(29)が増加するた
め、次の利点がある。逃げ孔式の燃料噴射ポンプ(8)
は、プランジャ(12)のプレストローク中、プランジャ
室(37)の燃料が逃げ孔(23)から逃げるようになって
いる。その逃げ量は、エンジン回転速度が低下するにつ
れて増加し、プレストローク終了時のプランジャ室(3
7)の燃料油圧は低くなる。
【0015】このため、負荷の増加によってエンジン回
転が低下すると、プランジャ室(37)の燃料油圧も低下
するが、負荷が増加してもプランジャ(12)の予備噴射
有効ストローク(29)が変化しない場合には、この油圧
低下が補われず、図2(E)の境界(30)によって示され
るように、エンジン回転速度が未だ高い回転位置(26)
にあるにも拘わらず、予備噴射(1)が中止されてしま
う。
【0016】しかし、本発明では、負荷の増加によって
エンジン回転速度が低下しても、プランジャ(12)の予
備噴射有効ストローク(29)が増加し、燃料油圧の低下
が補われるので、図3(E)の境界(31)によって示され
るように、より低い回転位置(27)まで予備噴射(1)が
維持される。このため、黒煙の発生を抑制しながら出力
を向上させる機能が、より低い回転位置(27)まで維持
される。
【0017】また、図3(C)(D)に示すように、負荷が
減少するにつれてプランジャ(12)の予備噴射ストロー
ク(29)が減少するため、次の利点がある。逃げ孔式の
燃料噴射ポンプ(8)では、エンジンの回転が上昇するに
つれて、プレストローク終了時のプランジャ室(37)の
燃料油圧は低くなる。
【0018】このため、負荷の減少によってエンジン回
転が上昇すると、プランジャ室(37)の燃料油圧も上昇
するが、負荷が減少してもプランジャ(12)の予備有効
ストローク(29)が変化しない場合には、この油圧上昇
が抑制されず、図3(E)の境界(30)によって示される
ように、かなり低い負荷位置(32)まで予備噴射(1)が
維持される。このため、予備混合気が燃え残りやすく、
未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量が多くな
る。
【0019】しかし、本発明では、負荷の減少によって
エンジン回転速度が上昇しても、プランジャ(12)の予
備噴射ストローク(29)が減少し、油圧上昇を抑制する
ため、図3(E)の境界(31)によって示されるように、
より高い負荷位置(33)で早期に予備噴射(1)が停止さ
れる。このため、予備混合気が燃え残りにくく、未燃燃
料、未燃ガス、HC、CO等の排出量を低減できる。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づ
いて説明する。図1〜図4は、本発明の第1実施形態を
説明する図である。この第1実施形態では、直接噴射式
の多気筒ディーゼルエンジンが用いられている。
【0021】このエンジンの概要は、次の通りである。
図2に示すように、シリンダ(16)にピストン(4)が内
嵌され、ピストン(4)の頂面(5)にキャビティ(6)が設
けられ、このキャビティ(6)内が燃焼室(3)とされてい
る。シリンダ(16)にシリンダヘッド(17)が組み付け
られ、このシリンダヘッド(17)に燃料噴射ノズル(1
9)が取り付けられている。図2中の符号(18)は吸気
弁である。このエンジンでは、燃料の予備噴射(1)と主
噴射(2)とが燃焼室(3)内に直接に行われようになって
おり、図1に示すように、吸気行程(42)の初期に過減
圧過程(42a)を備えている。
【0022】過減圧過程(42a)の内容は、次の通りで
ある。図1に示すように、過減圧過程(42a)は、吸気
行程(42)中に吸気弁の開弁を開始(34)することによ
り設定され、この過減圧過程(42a)中は、排気行程
(41)中に吸気弁の開弁を開始する場合に比べて、燃焼
室(3)の内圧が低圧になるように設定されている。この
過減圧過程(42a)中に、予備噴射(1)が行われ、予備
噴射燃料の全部または一部が過減圧過程(42a)中に気
化される。過減圧過程(42a)前に、予備噴射(1)が行
われるようにしてもよい。なお、図1中の符号(18a)
で示す実線は、吸気行程(42)中に吸気弁の開弁を開始
(34)した場合の吸気弁のバルブリフト曲線であり、符
号(18b)で示す鎖線は、排気行程(41)中に吸気弁の
開弁を開始した場合の吸気弁のバルブリフト曲線であ
る。また、符号(3d)で示す実線は、吸気行程(42)中
に吸気弁の開弁を開始(34)した場合の燃焼室内圧曲
線、符号(3e)で示す鎖線は、排気行程(41)中に吸気
弁の開弁を開始した場合の燃焼室内圧曲線である。
【0023】過減圧過程(42a)を用いる利点は、次の
通りである。図1に示すように、過減圧過程(42a)中
は、排気行程(41)中に吸気弁の開弁を開始する場合に
比べて、燃焼室(3)の内圧が低圧になる。この過減圧過
程(42a)中または過減圧過程(42a)前に、予備噴射
(1)が行われると、予備噴射燃料が燃焼室(3)の低い内
圧によって急速に気化する。気化した予備噴射燃料は、
吸気弁の開弁の開始(34)後に急速に燃焼室(3)内に導
入される吸気によって拡散され、予備混合気になって燃
焼室(3)内全体に行き渡る。そして、圧縮行程中に低温
酸化反応(燃焼前反応)を起こし、燃焼室(3)内に極めて
着火しやすい雰囲気を作る。
【0024】ここに主噴射(2)が行われると、主噴射燃
料の着火が助けられ、着火遅れが短くなる。また、着火
後の燃焼も促進される。更に、燃料と空気の混合もよく
なるので、吸入空気の利用度が上がる。これらの理由
で、未燃燃料、未燃ガス、HC、COの排出量が低減さ
れ、その分燃費も安くなる。また、熱効率と同時に出力
も向上し、排煙もきれいになる。同時に振動や騒音も下
がり、滑らかな運転が得られる。
【0025】吸気弁の望ましい開弁タイミングは、次の
通りである。図1に示す吸気弁の開弁の開始(34)は、
クランク角で上死点後10゜〜60゜の範囲内で行うの
が望ましく、20゜〜50゜の範囲内がより望ましく、
30゜〜40゜の範囲で行うのが最も望ましい。吸気弁
の開弁の開始(34)が、上死点後10゜よりも前に行わ
れる場合には、過減圧過程(42a)中に燃焼室(3)の内
圧が十分に低下しないことがある。また、上死点後60
゜よりも後に行われる場合には、吸気の充填効率が低く
なり過ぎることがある。これに対し、吸気弁の開弁の開
始(34)が、上死点後10゜〜60゜の範囲内で行われ
る場合には、過減圧過程(42a)中に燃焼室(3)の内圧
が十分に低下するとともに、吸気の充填効率も高く維持
される。同様の理由で、20゜〜50゜の範囲内で行う
場合には、この機能がより確実に発揮され、30゜〜4
0゜の範囲内で行う場合には、この機能が最も確実に発
揮される。
【0026】排気弁の望ましい閉弁タイミングは、次の
通りである。図1に示す排気弁の閉弁の終了(35)は、
クランク角で上死点前10゜〜上死点後20゜の範囲内
で行うのが望ましい。排気弁の閉弁の終了(35)が、上
死点前10゜よりも前に行われる場合には、排気効率が
低下し過ぎることがある。また、上死点後20゜よりも
後に行われる場合には、過減圧過程(42a)で排気が燃
焼室(3)内に逆流し、燃焼室(3)の内圧が十分に低下し
ないことがある。これに対し、排気弁の閉弁の終了(3
5)が、クランク角で上死点前10゜〜上死点後20゜
の範囲内で行われる場合には、排気効率が高く維持され
るとともに、過減圧過程(42a)で燃焼室(3)の内圧が
十分に低下する。
【0027】この第1実施形態で採用した弁の開閉タイ
ミングは、次の通りである。図1に示すように、排気弁
の閉弁の終了(35)は、クランク角で上死点後5゜に行
い、吸気弁の開弁の開始(34)は、上死点後35゜に行
っている。この場合、過減圧過程(42a)は、クランク
角度で上死点0゜から上死点後70゜まで継続し、上死
点後45゜で最減圧点(42b)が現れ、この最減圧点
(42b)での燃焼室内圧は0.5気圧以下まで低下す
る。
【0028】予備噴射(1)の望ましい噴射タイミング
は、次の通りである。図1に示すように、予備噴射(1)
の開始(1a)は、吸気弁の開弁の開始(34)前に行うの
が望ましい。燃焼室(3)の内圧が最も低下する最減圧点
(42b)は、過減圧過程(42a)中、吸気弁の開弁が開
始(34)した後に現れる。このため、吸気弁の開弁の開
始(34)前に、予備噴射(1)を開始(1a)すると、少な
くとも予備噴射燃料の一部は、最減圧点(42b)を経る
ため、予備噴射燃料の気化効率が高まる。
【0029】予備噴射(1)の終了(1b)は、吸気弁の開
弁の開始(34)前に行うのが望ましい。吸気弁の開弁の
開始(34)前に予備噴射(1)を終了(1b)すると、予備
噴射燃料の全部が、最減圧点(42b)を経るため、予備
噴射燃料の気化効率が高まる。
【0030】この第1実施形態で採用した噴射タイミン
グは、次の通りである。図1に示すように、予備噴射の
開始(1a)は上死点0゜で行い、終了(1b)は上死点後
20゜で行う。主噴射(2)の開始は圧縮行程(43)の上
死点前20゜で行っている。予備噴射(1)や主噴射(2)
の噴射タイミングは、エンジン回転速度に応じてある程
度変動する。これらの噴射タイミングをエンジン回転速
度に対応して意図的に変化させる場合には、タイマ機構
を用いる。
【0031】図4に示すこの第1実施形態の変形例で採
用した弁の開閉タイミングと噴射タイミングは、次の通
りである。排気弁の閉弁の終了(35)は、クランク角で
上死点後35゜で行い、吸気弁の開弁の開始(34)は、
上死点後10゜で行っている。この場合、過減圧過程
(42a)は、クランク角度で上死点0゜から上死点後6
5゜まで継続し、上死点後40゜で最減圧点(42b)が
現れ、この最減圧点(42b)での燃焼室内圧は0.5気
圧程度まで低下する。他は、図1の場合と同じであり、
図4中、図1と同一の要素には、図1と同一の符号を付
しておく。
【0032】予備噴射量の望ましい設定は、次の通りで
ある。予備噴射量は、主噴射量と同様、負荷が小さくな
るにつれて、少なくなるようにする。また、予備噴射量
は、同一負荷で比較して、予備噴射量が主噴射量よりも
少なくなるようにする。予備噴射(1)と主噴射(2)との
総噴射量に対する予備噴射量の割合は、同一負荷で比較
して、総噴射量の2〜25%とするのが望ましい。2%
未満であると、燃焼室(3)内で生じる混合気が希薄にな
り過ぎ、主噴射(2)の着火遅れを短くできず、25%を
越えると、燃焼室(3)内で生じる混合気が濃くなり過
ぎ、過早着火が起こるおそれがある。これに対し、2〜
25%では、このような問題が生じにくい。これらの問
題を確実に回避するためには、予備噴射量を5〜20%
とするのがより望ましい。なお、予備噴射(1)は、後述
するように、特定の運転領域では実施しない。
【0033】予備噴射(1)の使い分けの区分は、次の通
りである。図3(E)に示すように、運転領域を予備噴射
実施領域(51)と予備噴射不実施領域(52)とに区分
し、予備噴射実施領域(51)では予備噴射(1)と主噴射
(2)とを行い、予備噴射不実施領域(52)では主噴射
(2)のみを行うように構成されている。予備噴射実施領
域(51)は、高回転高負荷領域(53)を含み、予備噴射
不実施領域(52)は、低回転から高回転に至る回転域の
低負荷領域(54)と、低負荷から高負荷に至る負荷域の
低回転領域(55)とを含むように設定されている。予備
噴射実施領域(51)は、高回転高負荷領域(53)の全部
又は一部を含み、予備噴射不実施領域(52)は、低回転
低負荷領域の全部又は一部と、中回転低負荷領域の全部
又は一部と、高回転低負荷領域の全部又は一部と、低回
転中負荷領域の全部又は一部と、低回転高負荷領域の全
部又は一部とを含むように設定する。望ましくは、予備
噴射実施領域(51)は、高回転高負荷領域(53)の全部
と、高回転中負荷領域の一部と、中回転高負荷領域の一
部を含み、予備噴射不実施領域(52)は、高回転中負荷
領域の一部と、中回転中負荷領域の全部又は一部と、低
負荷領域(54)の全部と、低回転領域(55)の全部を含
むように設定する。
【0034】予備噴射実施領域(51)で予備噴射(1)を
行う利点は、次の通りである。図3(E)に示すように、
予備噴射実施領域(51)は高回転高負荷領域(53)を含
む。高回転高負荷領域(53)で予備噴射(1)が実施され
ると、予備噴射燃料が燃料室(3)内で気化し、予備混合
気となって燃料室(3)内全体に拡散し、燃焼室(3)内に
極めて着火しやすい雰囲気を作る。ここに主噴射(2)が
行われると、主噴射燃料の着火が助けられ、着火遅れが
短くなる。また、着火後の燃焼も促進される。更に、燃
料と空気との混合もよくなるので、吸入空気の利用度が
上がる。これらの理由で、未燃燃料、未燃ガス、HC、
CO等の排出量が低減され、その分燃費も安くなる。ま
た、熱効率と同時に出力も向上し、排煙もきれいにな
る。同時に振動や騒音も下がり、滑らかな運転が得られ
る。汎用エンジンでは、高回転高負荷領域(53)の使用
頻度が高いので、汎用エンジンには特に有用である。
【0035】予備噴射不実施領域(52)で予備噴射(1)
を行わない利点は、次の通りである。図3(E)に示すよ
うに、予備噴射不実施領域(52)は、低回転から高回転
に至る回転域の低負荷領域(54)を含む。低負荷領域
(54)では、中負荷領域や高負荷領域に比べ、燃料の総
噴射量が少ないため、燃焼温度が低い。また、燃料の総
噴射量が少ないのに比例して、予備噴射量も少なくなる
ため、予備混合気の濃度が薄くなり過ぎる。このため、
低負荷領域(54)で予備噴射(1)を実施すると、主噴射
(2)による燃焼火炎が燃焼室(3)内全体に拡散した予備
混合気の隅々まで伝播せず、予備混合気が燃え残りやす
く、未燃燃料、未燃ガス、HC、COの排出量が多くな
る。このため、低負荷領域(54)では予備噴射(1)を実
施しないことにより、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO
等の排出量を低減できる。
【0036】図3(E)に示すように、予備噴射不実施領
域(52)は、低負荷から高負荷に至る回転領域の低回転
領域(55)を含む。低回転領域(55)では、中回転領域
や高回転領域に比べ、燃焼室(3)の室壁の放熱量が多く
なるため、低回転領域(55)で予備噴射を行うと、燃焼
室(3)の室壁付近の予備混合気が燃え残りやすく、未燃
燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量が多くなる。こ
のため、低回転領域(55)では予備噴射(1)を実施しな
いことにより、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排
出量を低減できる。
【0037】以上のように、予備噴射(1)の実施に適す
る領域と適さない領域とを明確に区分し、予備噴射(1)
の実施と不実施を使い分けることにより、広い運転領域
で、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量を低減
できる。
【0038】予備噴射不実施領域(52)と過減圧過程
(42a)との組み合わせによる利点は、次の通りであ
る。予備噴射不実施領域(52)での運転中、過減圧過程
(42a)は、予備噴射燃料の気化を促進する機能は果た
す余地はないが、この過減圧過程(42a)によって負荷
が生じるため、これがない場合に比べ、主噴射量が多く
なる。このため、燃焼温度が適度に高くなり、始動後の
暖機促進を図ることができるとともに、低負荷領域(5
4)での青白煙を低減できる。なお、動弁カムの位相を
調節自在とし、予備噴射不実施領域(52)での運転中
は、図1に示す吸気弁の開弁の開始(34)が上死点前に
行われるようにし、過減圧過程(42a)が生じないよう
にしてもよい。
【0039】この第1実施形態で使用する運転領域の定
義は、次の通りである。低回転領域とは定格回転の25
%未満の領域をいい、中回転領域とは定格回転の25%
〜75%の領域をいい、高回転領域とは定格回転の75
%を越える領域をいう。また、低負荷領域とは全負荷の
25%未満の領域をいい、中負荷領域とは全負荷の25
%〜75%の領域をいい、高負荷領域とは全負荷の75
%を越える領域をいう。
【0040】予備噴射(1)を使い分ける境界(30)(3
1)の設定とその利点は、次の通りである。図3(E)に
示す2つの境界(30)(31)は、図3に示す2種類のプ
ランジャ(12)を使い分けることにより、いずれか一方
を選択する。予備噴射実施領域(51)と予備噴射不実施
領域(52)の境界(30)(31)は、低回転側に近づくに
つれて高負荷側に近づくように設定されている。低回転
側に近づくにつれて、燃焼室(3)の室壁からの放熱量が
増加し、予備混合気が燃え残りやすいため、境界(30)
(31)を高負荷側に近づけることにより、燃焼温度が十
分に高くなる領域に至るまでは、予備噴射(1)を実施し
ない。このため、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の
排出量を低減できる。
【0041】境界(30)(31)の回転に対する望ましい
設定位置は、次の通りである。境界(30)(31)の全負
荷位置での回転位置(26)(27)は、定格回転の20%
〜60%の範囲内にあるのが望ましく、40%〜60%
の範囲内にあるのがより望ましい。
【0042】上記回転位置(26)(27)が、定格回転の
20%未満である場合には、境界(30)(31)が低回転
側に寄り過ぎ、予備噴射実施領域(51)の予備混合気が
燃え残りやすい範囲が拡張され、未燃燃料、未燃ガス、
HC、CO等の排出量が多くなる傾向がある。また、6
0%を越える場合には、境界(30)(31)が高回転側に
寄り過ぎ、黒煙の発生を抑制しながら出力を向上させる
予備噴射(1)の機能が、比較的高回転側で停止してしま
う。これに対し、20%〜60%の範囲内にある場合に
は、境界(30)(31)が回転に対して適性に位置に配置
され、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量を少
なくできると同時に、黒煙の発生を抑制しながら出力を
向上させる予備噴射(1)の機能を比較的低回転側まで維
持することができる。同様の理由で、40%〜60%の
範囲内にある場合には、この機能が一層確実に発揮され
る。
【0043】境界(30)(31)の負荷に対する望ましい
設定位置は、次の通りである。境界(30)(31)の定格
回転位置での負荷位置(32)(33)は、全負荷の20%
〜80%の範囲内にあるのが望ましく、40%〜60%
の範囲内にあるのがより望ましい。
【0044】上記負荷位置(32)(33)が、全負荷の2
0%未満である場合には、境界(30)(31)が低負荷側
に寄り過ぎ、予備噴射実施領域(51)の予備混合気が燃
え残りやすい範囲が拡張され、未燃燃料、未燃ガス、H
C、CO等の排出量が多くなる傾向がある。また、80
%を越える場合には、境界(30)(31)が高負荷側に寄
り過ぎ、黒煙の発生を抑制しながら出力を向上させる予
備噴射(1)の機能が、比較的高負荷側で停止してしま
う。これに対し、20%〜80%の範囲内にある場合に
は、境界(30)(31)が負荷に対して適度な位置に配置
され、未燃燃料、未燃ガス、HC、CO等の排出量を少
なくできると同時に、黒煙の発生を抑制しながら出力を
向上させる予備噴射(1)の機能を比較的低負荷側まで維
持することができる。同様の理由で、40%〜60%の
範囲内にある場合には、この機能が一層確実に発揮され
る。
【0045】この実施形態で採用した境界(30)(31)
の設定は、次の通りである。境界(30)の全負荷位置で
の回転位置(26)は、定格回転の70%の位置にあり、
定格回転位置での負荷位置(32)は全負荷の20%の位
置にある。境界(30)が設定された場合、予備噴射実施
領域(51)には、高回転高負荷領域(53)の全部と、高
回転中負荷領域のほぼ半分と、高回転低負荷領域の極め
て僅かな部分と、中回転高負荷領域の極めて僅かの部分
とが含まれ、予備噴射不実施領域(52)には、高回転中
負荷領域のほぼ半分と、中回転高負荷領域のほぼ全部
と、中回転中負荷領域の全部と、低回転から高回転に至
る回転領域の低負荷領域(54)のほぼ全部と、低負荷か
ら高負荷に至る負荷領域の低回転領域(55)の全部とが
含まれる。
【0046】境界(31)の全負荷位置での回転位置(2
7)は、定格回転の55%の位置にあり、定格回転での
負荷位置(33)は全負荷の50%の位置にある。境界
(31)が設定された場合、予備噴射実施領域(51)に
は、高回転高負荷領域(53)の全部と、高回転中負荷領
域の一部と、中回転高負荷領域の一部とが含まれ、予備
噴射不実施領域(52)には、高回転中負荷領域の大半
と、中回転高負荷領域の大半と、中回転中負荷領域の全
部と、低回転から高回転に至る回転領域の低負荷領域
(54)の全部と、低負荷から高負荷に至る負荷領域の低
回転領域(55)の全部とが含まれる。
【0047】燃料噴射装置の構成は、次の通りである。
図2に示すように、燃料噴射ポンプ(8)に燃料噴射管
(20)が接続され、この燃料噴射管(20)の先端に燃料
噴射ノズル(19)が接続されている。図1に示す予備噴
射(1)と主噴射(2)とは、燃焼室(3)に直接に行われ、
1の燃焼室(3)への予備噴射(1)と主噴射(2)とが、燃
料噴射ポンプ(8)に接続された1の燃料噴射管(20)
と、この燃料噴射管(20)に接続された1の燃料噴射ノ
ズル(19)とを介して行われる。予備噴射(1)と主噴射
(2)は、キャビティ(6)内に向けて行われる。このた
め、シリンダ(16)の内周面の潤滑油の洗い流しが抑制
され、ピストン(4)の焼き付きが抑制される。
【0048】燃料噴射ポンプ(8)の構成は、次の通りで
ある。図2に示すように、この燃料噴射ポンプ(8)は逃
げ孔式の列型ポンプである。バレル(21)にプランジャ
(12)が内嵌されている。プランジャ(12)は燃料噴射
カム(9)によってリフトされ、戻しバネ(36)によって
戻される。プランジャ(12)のリフト側にはプランジャ
室(37)が設けられる。バレル(21)の周囲に燃料溜め
室(22)が設けられている。バレル(21)の周壁に燃料
入口(24)と逃げ孔(23)とが設けられ、これらを介し
てプランジャ室(37)と燃料溜め室(22)とが連通され
ている。
【0049】プランジャ(12)に斜め溝(14)が設けら
れている。斜め溝(14)は縦溝(38)でプランジャ室
(37)と連通されている。バレル(21)は燃料調量ラッ
ク(25)を介してガバナ部に連動連結されている。1の
燃料噴射カム(9)に対して1の予備噴射用突起(10)と
1の主噴射用突起(11)とが設けられ、予備噴射突起
(10)と主噴射突起(11)とが燃料噴射カム(9)の回転
中心(9a)を間に挟んで、相互反対側に配置されてい
る。
【0050】燃料噴射ポンプ(8)の作動は、次の通りで
ある。プランジャ(12)が燃料噴射カム(9)の主噴射用
突起(11)でリフトされた後、戻しバネ(36)によって
戻されると、バレル(21)内のプランジャ室(37)が負
圧になり、燃料溜め室(22)内の燃料が燃料入口(24)
からプランジャ室(37)に吸入される。予備噴射用突起
(10)でプランジャ(12)が下死点からリフトされ、プ
ランジャ(12)の周面で燃料入口(24)と逃げ孔(23)
とが塞がれると、予備噴射(1)が開始される。予備噴射
用突起(10)の突出寸法は短く、斜め溝(14)が逃げ孔
(23)に到達する前に、プランジャ(12)のリフトが終
了して、予備噴射(1)は終了する。
【0051】次に、プランジャ室(37)に燃料が吸入さ
れた後、主噴射用突起(11)でプランジャ(12)が下死
点からリフトされ、プランジャ(12)周面で燃料入口
(24)と逃げ孔(23)とが塞がれると、主噴射(2)が開
始される。そして、斜め溝(14)が逃げ孔(23)に到達
すると、プランジャ室(37)の燃料が縦溝(38)と斜め
溝(14)と逃げ孔(23)とを順に介して燃料溜め室(2
2)に逃げ、主噴射(2)が終了する。以降、同様の動作
が繰り返される。
【0052】エンジンにかかる負荷が減少すると、エン
ジンの回転速度が増加するので、ガバナ部から燃料調量
ラック(25)を介してバレル(21)が燃料減量方向に回
転連動される。逆に、エンジンにかかる負荷が増加する
と、バレル(21)が燃料増量方向に回転連動される。
【0053】燃料噴射ポンプ(8)に用いられるプランジ
ャ(12)の種類は、次の通りである。プランジャ(12)
には、図2(A)(B)のものと、図2(C)(D)に示すもの
のいずれかを用いることができる。
【0054】図3(A)(B)に示すプランジャ(12)の構
成と機能は、次の通りである。このプランジャ(12)は
周面のリフト側端縁(13)のうちの中高負荷部分(13
a)と低負荷部分(13b)とがプランジャ(12)のリフ
ト方向と実質的に直交する向きに段差なく連続形成され
ている。
【0055】このプランジャ(12)の場合、負荷の高低
に拘わらず予備噴射有効ストローク(29)は一定になる
が、予備噴射量は主噴射量と同様、負荷が高くなるにつ
れて増加するようになっている。理由は次の通りであ
る。負荷が高いほど、主噴射量が多くなり、燃料噴射管
(20)内の残圧も高くなる。また、負荷が高いほど、予
備噴射有効ストローク(29)の途中、斜め溝(14)から
逃げ孔(23)までの距離が遠くなるので、斜め溝(14)
からプランジャ(12)の周面とバレル(21)との隙間を
介して逃げ孔(23)に漏れ出る燃料が少なくなる。これ
らの理由により、予備噴射量は負荷が高くなるにつれて
増加する。
【0056】図3(C)(D)に示すプランジャ(12)の構
成と機能は、次の通りである。このプランジャ(12)
は、その周面のリフト側端縁(13)のうちの低負荷部分
(13b)が、プランジャ(12)のリフト方向に対して実
質的に直交し、中高負荷部分(13a)が低負荷部分(1
3b)の端部からプランジャ(12)のリフト方向に上り
傾斜し、負荷が増加するにつれてプランジャ(12)の予
備噴射有効ストローク(29)が増加するとともに、負荷
が減少するにつれてプランジャ(12)の予備噴射有効ス
トローク(29)が減少する。
【0057】図3(C)(D)に示すプランジャ(12)を用
いた場合の利点は、次の通りである。この図3(C)(D)
に示すものは、負荷が増加するにつれてプランジャ(1
2)の予備噴射有効ストローク(29)が増加する。逃げ
孔式の燃料噴射ポンプ(8)は、プランジャ(12)のプレ
ストローク中、プランジャ室(37)の燃料が逃げ孔(2
3)から逃げるようになっている。その逃げ量は、エン
ジン回転速度が低下するにつれて増加し、プレストロー
ク終了時のプランジャ室(37)の燃料油圧は低くなる。
【0058】このため、負荷の増加によってエンジン回
転が低下すると、プランジャ室(37)の燃料油圧も低下
するが、図3(A)(B)に示すもののように、負荷が増加
してもプランジャ(12)の予備噴射有効ストローク(2
9)が変化しない場合には、この油圧低下が補われず、
図3(E)の境界(30)によって示されるように、エンジ
ン回転速度が未だ高い回転位置(26)にあるにも拘わら
ず、予備噴射(1)が中止されてしまう。
【0059】しかし、図3(C)(D)に示すものを用いる
と、負荷の増加によってエンジン回転速度が低下して
も、プランジャ(12)の予備噴射有効ストローク(29)
が増加し、燃料油圧の低下が補われるので、図3(E)の
境界(31)によって示されるように、より低い回転位置
(27)まで予備噴射(1)が維持される。このため、黒煙
の発生を抑制しながら出力を向上させる予備噴射(1)の
機能が、より低い回転位置(27)まで維持される。
【0060】この図3(C)(D)に示すものは、負荷が減
少するにつれてプランジャ(12)の予備噴射ストローク
(29)が減少する。逃げ孔式の燃料噴射ポンプ(8)で
は、エンジンの回転が上昇するにつれて、プレストロー
ク終了時のプランジャ室(37)の燃料油圧は低くなる。
このため、負荷の減少によってエンジン回転が上昇する
と、プランジャ室(37)の燃料油圧も上昇するが、図3
(A)(B)で示されるもののように、負荷が減少してもプ
ランジャ(12)の予備有効ストローク(29)が変化しな
い場合には、この油圧上昇が抑制されず、図3(E)の境
界(30)によって示されるように、かなり低い負荷位置
(32)まで予備噴射(1)が維持される。このため、予備
混合気が燃え残りやすく、未燃燃料、未燃ガス、HC、
CO等の排出量が多くなる。
【0061】しかし、図3(C)(D)で示されるものを用
いると、負荷の減少によってエンジン回転速度が上昇し
ても、プランジャ(12)の予備噴射ストローク(29)が
減少し、油圧上昇を抑制するため、図3(E)の境界(3
1)によって示されるように、より高い負荷位置(33)
で早期に予備噴射(1)が停止される。このため、予備混
合気が燃え残りにくく、未燃燃料、未燃ガス、HC、C
O等の排出量を低減できる。
【0062】尚、図3(C)(D)のものの斜め溝(14)の
リフト側端縁(15)のうちの中高負荷部分(15a)は、
低負荷部分(15b)の中高負荷側の仮想延長線(15c)
よりもプランジャ(12)のリフト方向にずらされてい
る。周面のリフト側端縁(13)の中高負荷部分(13a)
をリフト側に傾斜させるのみでは、主噴射有効ストロー
クが増大しすぎるため、これを調節するためである。
【0063】境界(30)(31)の設定上の留意点は、次
の通りである。予備噴射用突起(10)が高くなり過ぎる
と、予備噴射有効ストローク(29)が長くなり過ぎ、境
界(30)(31)が図2(E)の左下、すなわち低回転低負
荷領域側に大きくずれ、高回転低負荷領域や低回転低負
荷領域が予備噴射不実施領域(52)に含まれなくなるこ
とがある。更に、予備噴射突起(10)が高くなると、中
回転低負荷領域や低回転中負荷領域さえも、予備噴射不
実施領域(52)に含まれなくなることがある。また、図
3(C)(D)のプランジャ(12)のリフト側端縁(13)の
中高負荷部分(13a)の傾斜の仰角が大きくなり過ぎる
と、高負荷側への予備噴射有効ストローク(29)の増加
率が大きくなり過ぎ、境界(31)の傾斜が水平に近くな
り、低回転高負荷領域が予備噴射不実施領域(52)に含
まれなくなることがある。上記中高負荷部分(13a)の
傾斜の仰角が更に大きくなると、低回転中負荷領域さえ
も予備噴射不実施領域(52)に含まれなくなることがあ
る。
【0064】また、プレストロークの長さ、斜め溝(1
4)の位置や傾斜の大きさ、プランジャ(12)の周面と
バレル(21)との隙間の大きさ、逃げ孔(23)の大き
さ、カムプロフィールに基づくプランジャ(12)のリフ
ト速度、プランジャ室(37)の吐出口に設けられる吐出
弁の開弁圧、燃料噴射管(20)の内径や内圧に対する膨
張率、燃料噴射ノズル(19)の開弁圧等が調和していな
ければ、境界(30)(31)は適性に設定されず、低負荷
領域(54)や低回転領域(55)が予備噴射不実施領域
(52)に含まれなくなる。
【0065】以上のように、燃料噴射装置全体の調和が
必要であり、予備噴射用突起(10)を備えた燃料噴射カ
ム(9)と逃げ孔式の燃料噴射ポンプ(8)とを、単純に組
み合わせるだけでは、適性な境界(30)(31)は得られ
ない。
【0066】第2実施形態の構成は、次の通りである。
上記第1実施形態では、燃焼室(3)として直接噴射式の
ものが用いられているが、図5に示す第2実施形態で
は、副室式のものが用いられている。この燃焼室(3)は
主燃焼室(3a)と副燃焼室(3b)とで構成され、これら
は噴口(3c)で連通されている。副燃焼室(3b)はうず
室として構成されている。燃料噴射ノズル(19)は副燃
焼室(3b)に臨み、予備噴射燃料の一部と主噴射燃料の
一部は、噴口(3c)内を介して主燃焼室(3a)に噴射さ
れる。他の構成及び機能は、第1実施形態と同一であ
り、図3中、第1実施形態と同一の要素には、同一の符
号を付しておく。
【0067】本発明で採用できる他の構成は、次の通り
である。燃料噴射装置には、コモンレールのような電子
制御方式のものを用いてもよい。その他、本発明の趣旨
に反しない範囲で、自由に他の構成を採用することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るエンジンの燃料噴
射率と燃焼室内圧とバルブリフトとピストン位置との関
係を説明する図である。
【図2】第1実施形態に係るエンジンの燃焼室と燃料噴
射装置の縦断面図である。
【図3】第1実施形態の燃料噴射装置に用いるプランジ
ャの説明図で、図2(A)はプランジャの要部斜視図、図
2(B)は同プランジャの周面の展開図、図2(C)は他の
プランジャの要部斜視図、図2(D)は同プランジャの周
面の展開図、図2(E)は各プランジャを用いた場合の領
域区分の説明図である。
【図4】第1実施形態の変形例の図1相当図である。
【図5】第2実施形態に係るエンジンの燃焼室と燃料噴
射装置の縦断面図である。
【符号の説明】
(1)…予備噴射、(2)…主噴射、(3)…燃焼室、(8)…
燃料噴射ポンプ、(9)…燃料噴射カム、(10)…予備噴
射用突起、(11)…主噴射用突起、(12)…プランジ
ャ、(13)…リフト側端縁、(13a)…中高負荷部分、
(13b)…低負荷部分、(19)…燃料噴射ノズル、(2
0)…燃料噴射管、(29)…予備噴射有効ストローク、
(30)(31)…境界、(51)…予備噴射実施領域、(5
2)…予備噴射不実施領域、(53)…高負荷高回転領
域、(54)…低負荷領域、(55)…低回転領域。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中平 敏夫 大阪府堺市築港新町3丁8番 株式会社ク ボタ堺臨海工場内 Fターム(参考) 3G066 AA07 AC08 BA17 BA22 BA26 CA09 CA19 CA35 CA41 CE04 CE13 DA09 DB08 DB09 DB12 DB13 DC01 DC09 3G301 HA02 HA04 HA05 JA02 JA26 JA37 KA08 KA09 KA24 KA25 LB11 LB14 LC08 MA18 MA26 PA17Z PE01Z

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 燃料の予備噴射(1)と主噴射(2)とを行
    えるようにしたディーゼルエンジンの燃料噴射装置にお
    いて、 運転領域を予備噴射実施領域(51)と予備噴射不実施領
    域(52)とに区分し、予備噴射実施領域(51)では予備
    噴射(1)と主噴射(2)とを行い、予備噴射不実施領域
    (52)では主噴射(2)のみを行うようにし、 予備噴射実施領域(51)は、高回転高負荷領域(53)を
    含み、予備噴射不実施領域(52)は、低回転から高回転
    に至る回転域の低負荷領域(54)と、低負荷から高負荷
    に至る負荷域の低回転領域(55)とを含むように設定さ
    れている、ことを特徴とするディーゼルエンジンの燃料
    噴射装置。
  2. 【請求項2】 請求項1のディーゼルエンジンの燃料噴
    射装置において、 予備噴射実施領域(51)と予備噴射不実施領域(52)の
    境界(30)(31)は、低回転側に近づくにつれて高負荷
    側に近づくように設定されている、ことを特徴とするデ
    ィーゼルエンジンの燃料噴射装置。
  3. 【請求項3】 請求項1または2いずれかのディーゼル
    エンジンの燃料噴射装置において、 1の燃焼室(3)に対する予備噴射(1)と主噴射(2)と
    が、燃料噴射ポンプ(8)に接続された1の燃料噴射管
    (20)と、この燃料噴射管(20)に接続された1の燃料
    噴射ノズル(19)とを介して行われるように構成されて
    いる、ことを特徴とするディーゼルエンジンの燃料噴射
    装置。
  4. 【請求項4】 請求項3のディーゼルエンジンの燃料噴
    射装置において、 1の燃料噴射カム(9)に対して1の予備噴射用突起(1
    0)と1の主噴射用突起(11)とが設けられている、こ
    とを特徴とするディーゼルエンジンの燃料噴射装置。
  5. 【請求項5】 請求項4のディーゼルエンジンの燃料噴
    射装置において、 逃げ孔式の燃料噴射ポンプ(8)が用いられ、プランジャ
    (12)の周面のリフト側端縁(13)のうちの中高負荷部
    分(13a)が低負荷部分(13b)の端部からプランジャ
    (12)のリフト方向に上り傾斜し、負荷が増加するにつ
    れてプランジャ(12)の予備噴射有効ストローク(29)
    が増加するとともに、負荷が減少するにつれてプランジ
    ャ(12)の予備噴射有効ストローク(29)が減少するよ
    うに構成されている、ことを特徴とするディーゼルエン
    ジンの燃料噴射装置。
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