JP3087903B2 - 被覆用油脂組成物 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は融点が40℃以上である油脂の固化調節に関す
る。

詳しくは、ショ糖脂肪酸エステルの構成脂肪酸が炭素
数12〜22の飽和脂肪酸であり、かつ平均置換度が２〜６
であることを特徴とするショ糖脂肪酸エステルを有効成
分とする、融点が40℃以上である油脂の固化調節に関す
る。

［従来の技術］ 従来から、融点が40℃以上である油脂を各種有機酸、
各種アミノ酸、核酸などの被覆剤として利用することが
知られている。

例えば、ソルビン酸やフマール酸を融点が40℃以上で
ある油脂で被覆した製剤は、蒲鉾などの水産練り製品の
保存剤として利用されている。また特開昭57−85317号
では、油脂で被覆されたＬ−アスコルビン酸が小麦粉生
地改良剤として利用されることが示されている。

また、特開昭61−195653号には、DL−メチオニン、Ｌ
−リジンといった各種アミノ酸やビタミン類等の生理活
性物質を油脂で被覆した製剤が、反すう動物用飼料添加
剤として利用される事が示されている。

油脂で被覆された製剤がその使用目的において利用さ
れる際、熱やPHやその他の化学的、物理的要因により、
油脂による被覆が破壊され、漏出した内容物によって本
来の機能が発揮される。このように、種々の機能性物質
を被覆して製剤化する技術により、機能性物質の流通、
取扱い性が向上され、また、機能性物質の応用分野も広
がっている。

ここで被覆に使用されている油脂は、融点40℃以上の
牛脂、菜種油、大豆油などの植物油、動物油の硬化油等
である。又油脂を被覆する方法としては、溶融した被覆
剤である油脂中に被覆される物質を分散させたスラリー
を調整し、該スラリーを噴霧して粒状化する方法や、撹
拌しながら除冷する方法などで行われる。

［発明が解決しようとする課題］ このように被覆製剤を製造する場合、工業的にきわめ
て容易な操作で、かつ被覆量を少なくするためには、ス
ラリーの粘度、流動性を調節したり噴霧温度を調節した
るする必要がある。又撹拌しながら造粒する方法におい
ても同様に、スラリーの粘度、流動性を調節したり撹拌
温度、時間などを調節する必要がある。しかしながら、
被覆剤である油脂が、高融点であるため固化が急激に起
こり易く、被膜形成時の固化速度が大きすぎて被覆が不
完全なものとなったり、形状や粒度分布が不揃いになっ
たりして、工業的に製造する場合、工程管理に細心の注
意を払わねばならないという欠点があった。更には、被
覆がきわめて脆く、衝撃によりクラッキングが生じ易く
なり、特に温度の調節も重要であり、困難であった。

このような問題を解決するために、油脂の種類を変え
たり、又乳化剤を添加したり、さらに造粒を工夫したり
する方法が試みられているが、いまだ十分満足な結果は
得られていない。

［課題を解決するための手段］ 本発明の目的は、このような高融点の油脂を被覆剤と
して用いる際に、少量の固化調節剤を添加することによ
り油脂の急激な固化を防止して、固化速度を調節し、被
覆操作を容易ならしめると同時に、被覆を完全なものに
し、さらに固化した油脂のひび割れなどを防止した、被
覆用油脂組成物を提供することにある。

即ち、本発明の固化調節剤を添加することにより、高
融点油脂の冷却時に起こる急激な固化が遅延され、固化
時間を任意に調節することにより、被覆製剤の製造を安
定的かつ容易にすることができる。

本発明の目的は、ショ糖脂肪酸エステルの構成脂肪酸
が炭素数12〜22の飽和脂肪酸であり、かつ平均置換度が
２〜６であることを特徴とするショ糖脂肪酸エステルを
有効成分とする、融点が40℃以上である油脂の固化調節
剤によって達成される。

以上本発明を詳細に説明する。

本発明で使用されるショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖
に結合する構成脂肪酸が炭素数12〜22の飽和脂肪酸であ
り、その平均置換度が２〜６のものが用いられる。ここ
で平均置換度とは、ショ糖脂肪酸エステルを構成するシ
ョ糖１分子にエステル化された脂肪酸の平均結合数をい
う。結合脂肪酸としてはラウリン酸、ミリスチン酸、パ
ルミチン酸、ステアリン酸等が好ましく用いられる。構
成脂肪酸中の飽和脂肪酸含量としては、50％以上、好ま
しくは60％以上である。これらのショ糖脂肪酸エステル
はショ糖のモノ、ジ、トリ、テトラエステル及びそれ以
上の部分エステルを主成分とするものであり、とくに、
ジ、トリ、テトラエステルを多く含むものが好ましい。

また、平均置換度が２を下回ると油脂に対する溶解性
が著しく低下して、固化調節の効果が期待できない。平
均置換度が６を上回るとやはり固化調節の効果が期待で
きない。

本発明の固化調節剤が適用できる油脂は、融点が40℃
以上、好ましくは50〜80℃であり、牛脂、ラード、魚
油、パーム油、菜種油、大豆油、椰子油、ひまし油等の
硬化油で、これらは１種もしくは２種以上を混合して用
いることが出来る。

ここで油脂の融点は、基準油脂分析試験法（日本油化
学協会制定）の融定（上昇融点）測定法による。

本発明の固化調節剤は、使用される油脂に溶解して使
用すればよく、その使用量は油脂に対しショ糖脂肪酸エ
ステルとして通常、0.05〜５重量％であれば効果があ
り、好ましくは0.25〜２重量％である。少なすぎると、
固化調節効果が乏しく、また過剰に用いるとコスト高を
招く。また油脂に対する溶解方法としては、油脂の融点
以上、好ましくは80℃程度の温度において撹拌溶解すれ
ば良い。

本発明の固化調節剤を配合して構成される油脂組成物
には、ショ糖脂肪酸エステルの他に、その使用目的に応
じて適宜他の成分、例えば乳化剤など及び炭酸カルシウ
ムなどの低pH液での溶解調整剤を配合することができ
る。

［実施例］ 以下に本発明を実施例により更に詳細に説明するが、
本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定さ
れるものでない。

実施例 １〜11、比較例 １〜７ 極度硬化牛脂（融点61.0℃）に第１表に示す割合で、
乳化剤を混合し加熱溶解した。その一部を示差走査熱量
計（以下DSCと略す）のサンプルパンに採取し、以下の
条件でDSC測定した。

示差走査熱量計（DSC）：セイコー電子工業社製、SSC
2000シリーズ、DSC200 試料重量:7mg 試料容器：アルミニウムサンプルパン 試料は80℃より、10℃/minで50℃まで冷却した後、引
き続き50℃に放置して試料の固化による発熱ピークを観
察した。

結果は第１表に示したが、表中の固化時間は、第１図
のDSC測定曲線に示した様に試料が50℃に到達してか
ら、出現した固化による発熱ピークの頂上（図中、ａ、
ｂ、ｃ点）までの時間で表した。尚、第１図では、実施
例２、比較例１及び６を代表として示した。

実施例12 極度硬化牛脂1kg、ショ糖パルミチン酸エステル（Ｐ
−270）5gをニーダー中に仕込み80℃で加熱溶融し、平
均粒径80μのソルビン酸を2kg加えてよく撹拌した。次
に温度を50℃に下げて30分間、引き続き撹拌したのち、
２℃/minの冷却速度で室温まで冷却した。得られた被覆
ソルビン酸は、均一粒径の良好なものであった。

［発明の効果］ 本発明によれば、優れた被覆用油脂組成物が提供さ
れ、従って油脂を原料とする被覆製剤の製造に寄与する
ところが大である。

※ 使用した乳化剤は以下の通り ショ糖ラウリン酸エステル 商品名Ｌ−195 ショ糖パルミチン酸エステル 〃 Ｐ−070 〃 Ｐ−170 〃 Ｐ−270 ショ糖ステアリン酸エステル 〃 Ｓ−070 〃 Ｓ−170 〃 Ｓ−270 〃 Ｓ−370 〃 Ｓ−570 ショ糖オレイン酸エステル 〃 Ｏ−170 ショ糖カプリン酸エステル 〃 CE−195 ショ糖パルミチン酸ジエステル 実験室精製品 ショ糖ステアリン酸ジエステル 実験室精製品 （上記ショ糖脂肪酸エステルはいずれも三菱化成食品
（株）製） ソルビタントリステアレート商品名スパン65 ソルビタンモノステアレート商品名スパン60 （上記ソルビタンモノステアレートはいずれも花王アト
ラス（株）製）

【図面の簡単な説明】

第１図は、油脂の固化に要する時間を定量的に説明する
ためのDSC測定曲線である。図中、横軸は50℃での等温
保持時間（分）、縦軸は試料油脂の結晶化に伴う発熱量
（μｗ）を示す。曲線Ａ、Ｂ、Ｃは、下記の場合の発熱
曲線を示す。 曲線A:比較例１（乳化剤無添加） 曲線B:比較例６（乳化剤スパン65添加） 曲線C:実施例２（乳化剤Ｐ−170添加）

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 西村 彰夫 神奈川県横浜市緑区鴨志田町1000番地 三菱化成株式会社総合研究所内 (56)参考文献 特開 昭63−226245（ＪＰ，Ａ) 特開 昭54−109962（ＪＰ，Ａ)

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ショ糖脂肪酸エステルの構成脂肪酸が炭素
   数12〜22の飽和脂肪酸であり、かつ平均置換度が２〜６
   であるショ糖脂肪酸エステルを、融点40℃以上である硬
   化油中に0.05〜５重量％含んでなる被覆用油脂組成物。