JP3086738B2 - 高純度トコフェリルレチノエートの製造方法 - Google Patents

高純度トコフェリルレチノエートの製造方法

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JP3086738B2 JP04013497A JP1349792A JP3086738B2 JP 3086738 B2 JP3086738 B2 JP 3086738B2 JP 04013497 A JP04013497 A JP 04013497A JP 1349792 A JP1349792 A JP 1349792A JP 3086738 B2 JP3086738 B2 JP 3086738B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高純度トコフェリルレチ
ノエートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】レチノイン酸すなわちビタミンA酸とト
コフェロールとのエステルであるトコフェリルレチノエ
ートは、消化管潰瘍治療剤(特公昭60−26770号公
報)、皮膚疾患治療剤(特開昭61−207332号公報)など
の医薬用途、および化粧料の成分(特開昭51−73137号
公報)の用途に有用な化合物として知られている。
【0003】これまでにトコフェリルレチノエートの製
造方法として、ジシクロヘキシルカルボジイミドや無水
トリフルオロ酢酸などの脱水試薬の存在下にレチノイン
酸とトコフェロールとを直接縮合させる方法や、レチノ
イン酸またはそのアルカリ塩を塩化オキザリルのような
塩素化剤で処理してレチノイン酸クロライドとし、この
レチノイン酸クロライドをピリジン、トリエチルアミン
などの塩基の存在下にトコフェロールと反応させる方法
が知られている(特公昭49−26632号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記した無水トリフル
オロ酢酸の存在下におけるレチノイン酸とトコフェロー
ルとの直接縮合によるトコフェリルレチノエート製造の
従来法にあっては、レチノイン酸の溶媒への溶解度のた
め使用溶媒がテトラヒドロフランやジオキサンに限定さ
れ、またこのエステル化反応において同時にトコフェロ
ールのトリフルオロ酢酸も競合的に生成しトコフェロー
ルをそれだけ余分に使用する必要がある他にこの副生成
物の分離を必要とした。しかもこの副生トリフルオロ酢
酸トコフェロールは精製のための吸着剤例えばシリカゲ
ルに対してトコフェリルレチノエートからトリフルオロ
酢酸トコフェロールの分離が困難で製品の純度に問題が
ありまた収率も低かった。従って、これらの問題点の解
決が求められていた。
【0005】また上記したレチノイン酸クロライドを経
由する酸クロライド法にあっては、使用溶媒が限定され
るという上記直接縮合法と同じ問題がある他に、工程が
複雑で所望のトコフェリルレチノエートの収率が低いと
いう問題点があった。
【0006】従ってこれらの問題点のない高純度トコフ
ェリルレチノエートの製造方法の解明が求められてい
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記した
課題を解決すべく鋭意研究の結果、レチノイン酸を無水
トリフルオロ酢酸と反応させ、ついで、トコフェロール
を反応させ得られる反応生成物を加水分解条件に付すこ
とにより上記の反応で副生するトリフルオロ酢酸トコフ
ェロールを選択的に加水分解し、高収率で、高純度のト
コフェリルレチノエートが得られることを見いだし本発
明を完成させたのである。
【0008】すなわち本発明は、レチノイン酸、無水ト
リフルオロ酢酸、トコフェロールと順次反応させて得ら
れる反応生成物を加水分解条件に付し副生成物のトリフ
ルオロ酢酸トコフェロールを選択的に消去し、所望のト
コフェリルレチノエートが高純度かつ高収率で得る方法
に関するものである。
【0009】上記した本発明において、レチノイン酸と
無水トリフルオロ酢酸との反応はレチノイン酸1モルに
対して無水トリフルオロ酢酸1.0〜1.5モル、好まし
くは1.0〜1.1モルを用い0〜30℃、好ましくは0
〜20℃の温度で不活性有機溶媒中で行うことができ
る。使用する不活性有機溶媒としては、炭化水素溶媒例
えばヘキサン、ベンゼン、トルエンなど、エーテル系溶
媒例えばエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テト
ラヒドロフラン、ジオキサンなど、ケトン系溶媒例えば
アセトン、メチルエチルケトンなど、ハロゲン化炭化水
素溶媒例えばクロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素
などの非プロトン性有機溶媒が挙げられる。そしてこれ
らの溶媒中でイソプロピルエーテルが工業的製法に適す
る溶媒である。
【0010】このようにレチノイン酸と無水トリフルオ
ロ酢酸を反応させた後、反応生成物は単離するかまたは
単離することなく次のトコフェロールとのエステル化反
応に用いることができる。
【0011】ついで行うトコフェロールとのエステル化
反応は、レチノイン酸1モルに対してトコフェロール
1.0〜2.0モル、好ましくは当モル量で、0〜50℃
好ましくは0〜20℃の温度で1〜20時間不活性有機
溶媒中で行うことができる。使用する不活性有機溶媒と
しては、上記したレチノイン酸と無水トリフルオロ酢酸
との反応に用いたものと同様のものが用いられる。この
反応には上記したように広範囲の不活性有機溶媒を用い
ることができるので、特に反応生成物を単離することな
くエステル化反応に用いる場合に溶媒の選択に自由度が
あり有利である。
【0012】このように反応させて得られた反応生成物
は次いで加水分解に付される。
【0013】加水分解は反応生成物に水性の塩基性物質
を加えることによって行われる。水性の塩基性物質とし
ては、NaOH、KOH、Na2CO3、K2CO3、NH
3などの無機塩基の水溶液の他に公知の有機アミン、例
えばジメチルアミン等の水溶液などを用いうる。しかし
てこれら水性の塩基性物質はアンモニアが好ましく用い
られる。
【0014】この分解反応はアンモニア水を用いる場合
1N〜15Nのアンモニア水を通常生成するトリフルオ
ロ酢酸に対して1.2〜2.0モル(無水トリフルオロ酢
酸に対して2.4〜4.0モル)の量を加え、−5〜50
℃の温度、好ましくは15〜35℃の温度で0.5〜2
4時間程度処理することによって行われる。NaOH、
KOH、Na2CO3、K2CO3を用いる場合1N〜10
Nの水溶液を通常生成するトリフルオロ酢酸に対して
1.2〜2.0モル(無水トリフルオロ酢酸に対して2.
4〜4.0モル)の量を加え、−10〜20℃の温度、
好ましくは0〜5℃の温度で0.5〜24時間程度処理
することによって行われる。
【0015】この加水分解処理によりトリフルオロ酢酸
トコフェロールが選択的に加水分解されるが、トコフェ
リルレチノエートは加水分解を受けないために所望のト
コフェリルレチノエートの純度が著しく向上する。しか
して加水分解処理は水性の塩基性水溶液を反応生成物中
に加えるだけの処理であるので、エステル化と同一の反
応容器中で行いうる。従って特別の設備、装置を必要と
しない。
【0016】このようにして副生成物のトリフルオロ酢
酸トコフェロールが消失した反応生成物からトコフェリ
ルレチノエートは反応溶媒の留去による濃縮・抽出、抽
出物のクロマトグラフィ精製などの手段によって単離さ
れ精製物として取り出される。この場合のクロマトグラ
フィによる精製には、吸着剤として公知のもの、例えば
シリカゲル、アルミナなどを用いることができる。かか
る吸着剤による精製においてトリフルオロ酢酸トコフェ
ロールが消失しているため、吸着剤処理の効率が向上
し、高純度のトコフェリルレチノエートが収率良く得ら
れることになる。
【0017】この方法で用いるトコフェロールは、α
−、β−、γ−およびδ−トコフェロールまたはこれら
の混合物のいずれであっても良い。またこれらのトコフ
ェロールは天然物由来のものであっても、また合成的に
得られるものであっても良い。しかしてその生理活性を
考えるとα−トコフェロールが好ましいが、これに限ら
れるものではない。
【0018】次に本発明を実施例によってさらに詳細に
示すことにする。
【0019】実施例1 レチノイン酸15gをイソプロピルエーテル150mlに
3気流下中懸濁し、撹拌下にトリフルオロ酢酸無水物
11.5gを一度に加える。15分間撹拌を行った後d
l−α−トコフェロール23.9gを10分間を要して
滴下する。26〜28℃で1時間以上撹拌を行い、次に
反応液に28%アンモニア水18mlを加え、27〜32
℃で1時間撹拌を行う。反応液を水中に注ぎイソプロピ
ルエーテルにて抽出を行う。中性となるまで水洗し、飽
和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。溶
媒を減圧下に留去し残渣約40gをシリカゲルカラムク
ロマトグラフィーに付す(メルク社製シリカゲル70〜
230メッシュ300g使用)。2%エーテル−ヘキサ
ン溶液で溶出を行いそれぞれの溶出区分を薄層クロマト
グラフィーで確認する。目的物区分を合わせ濃縮を行い
油状トコフェリルレチノエート31.0gを得る。
【0020】実施例2 レチノイン酸30gをn−ヘキサン300mlに懸濁し2
1〜23℃で無水トリフルオロ酢酸22gを加えた。1
5分間撹拌後、α−トコフェロール45gを10分間で
滴下した。徐々に昇温し、27℃そのまま約10時間撹
拌反応した。次に濃アンモニア水30mlを加え、1時間
撹拌後、中性まで水洗し、溶媒を減圧下に濃縮し、8
2.1gの粗生成物を得た。シリカゲル550gを用い
て2%エーテル−ヘキサン溶液で溶出し、トコフェリル
レチノエート60.8gを得た。
【0021】実施例3 レチノイン酸15.0gをイソプロピルエーテル100m
lに懸濁させ、無水トリフルオロ酢酸12.8gを加え、
室温で15分間撹拌する。そこへトコフェロール23.
9gを5分で滴下し、室温で60分撹拌後、濃アンモニ
ア水32mlを加えさらに90分室温下撹拌する。有機層
を水、飽和食塩水で洗浄後無水硫酸マグネシウムで乾燥
する。溶媒を減圧下留去し粗生成物48.5gを得る。
シリカゲル350gを用いて2%エーテル−ヘキサンで
溶出し、溶媒を減圧下留去してトコフェリルレチノエー
ト33.4gを得る。
【0022】実施例4 レチノイン酸15.00gをイソプロピルエーテル10
0mlに懸濁させ、無水トリフルオロ酢酸12.0gを加
え室温で15分撹拌する。そこへdl−α−トコフェロ
ール28.30gを5分で滴下し、室温で2時間撹拌し
た。次に水3.0mlを加え、イソプロピルエーテル50m
lを追加し、2〜5℃に冷却した。反応液を撹拌しなが
ら同温度で苛性カリ6.8gを含むメタノール溶液50m
lを30分間で滴下し、更に10分間撹拌後、反応液を
水中に注ぎイソプロピルエーテルで抽出し水洗後、無水
硫酸ナトリウムで乾燥した。以下実施例3と同様な操作
を行い、トコフェリルレチノエート30.7gを得た。
【0023】比較例 レチノイン酸30.00g、dl−α−トコフェロール
56.60g、テトラヒドロフラン130mlを四ツ口フ
ラスコに入れ、撹拌しながらトリフルオロ酢酸無水物2
3mlを10〜15℃で30分間滴下し、更に15〜18
℃で2時間撹拌した。次に水3.0mlを加え反応を停止
したが、反応液は全量で240.0gであった。
【0024】反応液119.4gを水中に注ぎ、イソプ
ロピルエーテルで抽出し水洗後、無水硫酸ナトリウムで
乾燥した。溶媒を減圧下で留去した結果、油状物40.
9gが得られた。
【0025】以下実施例1と同様な操作を行いトコフェ
リルレチノエート15.5gを得た。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07D 311/72 CA(STN)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 レチノイン酸と無水トリフルオロ酢酸と
    を反応させ、ついでトコフェロールを反応させて得られ
    る反応生成物を加水分解条件に付した後に精製すること
    を特徴とする高純度トコフェリルレチノエートの製造
    法。
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