JP3079890B2 - 水素吸蔵合金粉末とニッケル−水素電池 - Google Patents

水素吸蔵合金粉末とニッケル−水素電池

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、初期活性化特性に優れ
たニッケル−水素電池用の水素吸蔵合金粉末とこれを負
極活物質として用いたニッケル−水素二次電池とに関す
る。
【0002】
【従来の技術】今日、エネルギー事情に関して、化石燃
料による大気汚染や温暖化等の地球環境問題が課題とな
っており、水素はこれら化石燃料に変わるクリーンな燃
料として注目されている。これは水素が、水を原料とし
ていること、燃焼生成物が水であること、さらに電力・
熱・動力へのエネルギー変換システムに適用しうる材料
であるからである。
【0003】この水素の貯蔵体として水素吸蔵合金が存
在し、貯蔵、ヒートポンプ、アクチュエータ等への応用
開発がなされてきている。近年では、水素吸蔵合金を負
極活物質とするニッケル−水素二次電池 (以下、Ni−H
電池と称する)への適用が精力的に進められ、既に携帯
用電気・電子製品などの電源として実用化されている。
特にこの分野では、これまで主流であったNi−Cd二次電
池の公害問題とCdの資源的問題、そして機器のポータブ
ル化に伴う高容量化のニーズへの対応等により、Ni−H
電池の需要は急増している。
【0004】水素吸蔵合金として検討されてきた主な合
金系は、Mg系、LaNi5 やMmNi5 等のAB5 系、ZrV2
代表されるAB2 系 (ラーベス相を有する系) 等であ
る。現在実用化されている二次電池向け用途ではAB5
系合金が一般に用いられているが、AB系、AB2 系も
将来有望である。Ni−H電池においては、水素吸蔵合金
の粉末を適当な結着剤と混合してペースト化し、集電体
に固定化したものを負極として利用する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、Ni−H電池の
量産に当たり、いくつかの問題点がクローズアップされ
てきた。その1つが、Ni−H電池を構成した後の初期活
性化処理 (電池の放電容量を所定の定常値まで増大させ
る処理) に非常に時間がかかり、生産性が著しく阻害さ
れることである。現在行われている初期活性化処理は、
低電流で長時間の充電後に放電する操作を、所定の放電
容量が得られるようになるまで、数回繰り返すことから
なる。このため、電池を組み立ててから出荷するまで
に、初期活性化処理として、工場内で充電・放電を数日
間繰り返す必要があった。
【0006】この問題点を解決するために、特開平3−
219036号公報には、水素吸蔵合金中にホウ素を添加する
ことで、粉化し易いホウ素リッチ相を生成させ、粉化に
よる比表面積の増加によって初期の活性化特性を向上さ
せることが提案されている。しかし、この方法では、生
成したホウ素リッチ相が可逆的に水素を吸収・放出する
量は少なく、合金全体としては水素吸蔵量が低下し、そ
の結果放電容量が低下する。しかも、粉化の進行により
電極としての集電性が低下し、早期に放電容量が低下す
る。
【0007】一方、水素吸蔵量の増加のために、球形粉
末を用いて充填率を向上させる方法が特開平3−116655
号公報に記載されている。しかし、本発明者らが検討し
たところ、比較的容易に球形粉末が得られるガスアトマ
イズ法や回転電極法により製造された水素吸蔵合金粉末
は、そのままの使用では充分な初期活性化特性が必ずし
も得られないことが判明した。
【0008】本発明の目的は、初期活性化処理が容易ま
たは不要の、Ni−H電池用水素吸蔵合金粉末とそれを用
いたNi−H電池とを提供することである。本発明の別の
目的は、単位体積当たりの水素吸蔵量が多い、すなわち
単位体積当たりの放電容量が大きい充電・放電特性に優
れたNi−H電池用水素吸蔵合金粉末とそれを用いたNi−
H電池とを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
の達成を目指して検討を重ねた結果、水素吸蔵合金粉末
を酸洗処理するとその比表面積が増大すること、そし
て、このように増大した比表面積と平均粒径との積が一
定値より大きくなると、初期活性化処理が非常に容易に
なることを見出し、本発明に到達した。
【0010】ここに、1態様において、本発明は、水素
吸蔵合金の実質的に球形の粉末であって、その比表面積
S (μm2/g) と平均粒径dm (μm) との積が、 10.0×10 12 ≧S・d m ≧ 2.0×10 12 なる式を満たすことを特徴とする、Ni−H電池用水素吸
蔵合金粉末である。
【0011】別の態様において、本発明は、水素吸蔵合
金の粉砕粉末であって、その比表面積S (μm2/g) と
平均粒径dm (μm) との積が 20.0×10 12 ≧S・d m ≧ 4.0×10 12 なる式を満たすことを特徴とする、Ni−H電池用水素吸
蔵合金粉末である。
【0012】ここで平均粒径とは、市販のレーザー光式
粒度分布測定器等で測定した合金粉末の粒度分布より求
めた積算50%径 (メジアン径) を意味する。また、水素
吸蔵合金粉末の比表面積はBET法により測定した値で
ある。
【0013】本発明によればまた、上記の水素吸蔵合金
粉末を負極活物質に用いたNi−H二次電池も提供され
る。本発明において、水素吸蔵合金の「実質的に球形
の」粉末とは、その粉末が球形もしくは略球形であれば
よく、例えばガスアトマイズ法や回転電極法等により製
造された粉末がこれに相当する。一般に粒子直径の最大
と最小の比 (アスペクト比) が2以下程度であることを
意味する。一方、粉砕粉末は不規則形状の粒子からな
る。本発明の水素吸蔵合金粉末は、Ni−H電池の負極活
物質として使用可能な任意のものでよいが、一般にAB
5 系、AB2 系またはAB系のものである。AB5 型合
金の例は、LaNix またはMmNix (xは 4.7〜5.2)を基本構
造とし(Mmは希土類金属合金であるミッシュメタル) 、
Niの一部をCo、Mn、Al、Fe、Cr、Cu、V、Be、Zr、Ti、
Mo等の1種または2種以上の元素で置換したものであ
る。LaNix は高価格である上、寿命低下が早いので、実
用的にはMmNix が好ましい。
【0014】AB2 型合金の例は、ZrNiy (yは 1.9〜2.
25) を基本構造とし、Niの一部をV、Mn、Cr、Co、Fe、
Al、Mo、Cu、Beなどの1種もしくは2種以上の元素で置
換したものである。具体例としては、 Zr1.00.4N
i1.6, Zr1.0Mn0.6Cr0.2Ni1.2, Zr1.0Ni1.2Mn0.6V0.2Co
0.1, Zr1.0Ni1.2Mn0.6V0.2Fe0.1, Zr1.0V0.4Ni1.6など
がある。AB型合金の例はTiNiX (xは0.9 〜1.3)を基本
構造とし、Niの一部をCo、Mn、V、Cr、Al、Fe、Mo、C
u、Zr、Beなどの1種もしくは2種以上の元素で置換し
たものである。
【0015】水素吸蔵合金粉末の製造方法は特に制限さ
れず、従来より公知の任意の方法を採用することができ
る。例えば、通常の溶製法、即ち、アーク溶解炉、高周
波誘導炉等で水素吸蔵合金を溶製し、これを鋳造して得
たインゴットを、ボールミルなどの適当な粉砕機により
粉砕して水素吸蔵合金粉末を得ることができる。
【0016】別の方法として、特開平2−253558号公報
や特開平3−116655号公報に記載のように、粉砕工程を
経ずに水素吸蔵合金粉末を直接製造する方法がある。具
体的には、回転円板法、回転電極法、ガスアトマイズ法
などにより、合金粉末を直接製造できる。これらの直接
製造方法では、一般に実質的に球形の水素吸蔵合金粉末
を得ることができる。また、冷却速度が溶製法に比べて
著しく速く、急冷凝固になるために、成分偏析が少な
く、偏析に伴う問題点 (部分的な耐食性劣化や脆化、そ
の結果生ずる繰り返し充電・放電による容量低下) の少
ない合金粉末を得ることができるという利点もある。但
し、こうして製造された合金粉末には急冷歪みがあるの
で、粉末に歪取りのための熱処理を施すことが好まし
い。この熱処理は、例えば、真空または不活性雰囲気中
550〜950 ℃で2〜5時間行うことができる。
【0017】本発明による水素吸蔵合金粉末の形状は、
好ましくは球形の方がよい。これは球形粉末の方が粉砕
工程を経て製造された水素吸蔵合金の粉末 (本発明で
は、これを粉砕粉末という) よりも充填率 (単位体積当
たりの充填重量) が大きいため、単位体積当たりの水素
吸蔵量が増大し、電池に組み込んだ時に容量を大きくす
ることができるためである。
【0018】しかし、本発明は粉砕粉末に対しても適用
でき、その場合にも初期活性化特性の大幅な向上が可能
である。即ち、粉砕粉末に適用した場合にも本発明の工
業的な意義は大きいので、合金粉末の形状は特に制限さ
れない。
【0019】水素吸蔵合金の特に好ましい製造方法は、
真円に近い球形の合金粉末を安価に大量生産できるガス
アトマイズ法である。ガスアトマイズ法は、所定組成に
調整して溶解した溶湯を細径ノズルから流下させ、この
溶湯流に向けてガスノズルより高圧の不活性ガスを噴霧
して溶湯を粉末化し、冷却・凝固させて粉末を得る方法
であり、各種の金属・合金粉末の製造で工業的に利用さ
れている。ガスアトマイズ法によって得られた粉末は、
球形もしくは略球形である。
【0020】
【作用】本発明によれば、水素吸蔵合金粉末の比表面積
S (μm2/g) と平均粒径dm(μm) との積を一定値以
上に増大させる。即ち、S・dm 値を、粉末が実質的に
球形の場合には 2.0×1012以上、粉砕粉末の場合には
4.0×1012以上とする。粉砕粉末の方が大きな値を必要
とするのは、粉砕粉末は形状が不規則であるため、同じ
平均粒径の球形粉末に比べて比表面積が大きくなるため
である。
【0021】Ni−H電池の初期活性化特性を高める、即
ち、水素吸蔵の反応効率を高めるには、負極活物質であ
る水素吸蔵合金粉末の表面積を大きくして、合金と電解
液との接触面積 (反応界面) を大きくすればよい。一般
に、粉末の粒径が小さいほど、比表面積が増大するの
で、粉末の粒径を小さくすれば比表面積が増大し、初期
活性化特性は向上するはずである。しかし、表面積の増
大のために粉末を微細化すると、集電性が低下し、かえ
って反応効率が低下するといった現象が生じる。
【0022】従って、本発明では、平均粒径を大きく変
動させずに、比表面積が通常より大きい水素吸蔵合金粉
末を利用することにより、Ni−H電池の初期活性化特性
の改善を図る。そのために、比表面積と平均粒径との積
(S・dm ) で粉末の比表面積を規定するのである。な
ぜなら、比表面積の単位cm2/g (又はμm2/g) は次元と
してgがcm3(又はμm3) に比例することから、1/cm
(又は1/μm)に比例する、即ち、比表面積は粒径の逆
数に比例する。従って、粒径を小さくしても、表面状態
が同じであれば、S・dm の値に著しい変動はない。つ
まり、本発明では粒径を小さくして比表面積を増大させ
るのではなく、粒径はそのままで表面の微細な凹凸を増
やして比表面積を増大させ、S・dm 値を通常の水素吸
蔵合金粉末より増大させるのである。
【0023】なお、この比表面積の増大は、合金粉末の
表面粗さを大きくすることには必ずしもつながらない。
表面粗さは、表面の凹凸の高さを規定するものであり、
表面凹凸の密度が同じであれば表面粗さが大きい方が比
表面積は増大するが、比表面積に対する影響は、表面凹
凸の存在密度の方がより大きくなる。例えば、粉末表面
に微細な凹凸が密に存在すると、比表面積は著しく増大
する。即ち、本発明では合金粉末の表面形状 (例、表面
粗さ) を規定するのではなく、反応界面の大きさが反応
の初期段階を律速する因子の1つであるとの観点から、
あくまで合金の比表面積の量そのものを、平均粒径との
関係で規定するものである。従って、合金粉末の表面形
状は特に制限されず、比表面積Sが後述するS・dm
の下限以上であればよい。
【0024】実質的に球形粉末の場合を例にとると、例
えばガスアトマイズ法で製造した粒径範囲が45〜20μm
(45 /20μmと表記する) 、平均粒径dm =30μmの粉
末の比表面積Sは、大体 0.030〜0.050 ×1012μm2/g
の範囲内である。従って、S・dm 値は 0.9〜1.5 ×10
12となり、本発明で規定する 2.0×1012以上という要件
には達しない。このガスアトマイズ粉末に何らかの化学
的または機械的な表面処理を加えて比表面積を増大させ
ることにより、S・dm 値が 2.0×1012以上になる (即
ち、平均粒径dm =30μmの場合には、比表面積Sが
0.067×1012μm2/g以上に増大する) と、前述した比
表面積の増大による初期活性化特性の向上が顕著となっ
てくることが判明した。このように、平均粒径を微細化
せずに比表面積を増大させる点に本発明の特徴がある。
【0025】通常の溶製法 (インゴット化+粉砕) によ
り得られた水素吸蔵合金の粉砕粉末の場合、やはり45/
20μm (平均径dm =30μm) と上と同じ粒径で、粉末
の比表面積は大体 0.040〜0.060 ×1012μm2/gの範囲
内と、球形粉末より比表面積は大きくなる。この時のS
・dm 値は 1.2〜1.8 ×1012である。粉砕粉末の場合に
は、元来球形粉末に比べ大きな比表面積をもつのでS・
m 値が球形粉末の場合よりも大きい 4.0×1012以上に
増大した時に、本発明による初期活性化特性の向上を顕
著に得ることができる。即ち、平均粒径dm =30μmの
場合で、比表面積Sを0.13×1012μm2/g以上に増大さ
せることが必要となる。
【0026】S・dm 値の上限は特に制限されないが、
この値が過度に大きくなると、製造上の問題、例えば削
り出しや溶出による歩留りの低下等の問題も出てくるの
で、上記の下限値 (球形粉末では 2.0×1012、粉砕粉末
では 4.0×1012) の5倍以下、特に3倍以下とすること
が望ましい。
【0027】また、本発明は粒径に応じて比表面積を一
定値以上に増大させる点に特徴があるので、水素吸蔵合
金粉末の粒径は特に制限されない。しかし、あまりに粗
大であると充填率が低下し、あまりに微細であると寿命
低下につながるので、一般に平均粒径が10〜150 μm、
特に30〜70μmの範囲内であることが望ましい。
【0028】水素吸蔵合金粉末の比表面積を増大させる
手段は特に限定されるものではなく、機械的な加工、物
理的な加工 (例、イオンスパッタリング、プラズマエッ
チング) 、粉末製造時の製造条件の調整等のような手段
でもよいが、好ましい手段は酸処理 (酸溶液中の浸漬)
である。酸処理は安価で大量処理が可能であり、機械的
手段のように形状 (例、球形) を崩してしまう可能性も
低いため、特に適した方法であると言える。機械的手段
が粉砕を伴う場合には、最初の合金粉末が実質的に球形
であっても粉砕粉末となるので、S・dm 値が 4.0×10
12以上となるように比表面積を増大させる。
【0029】酸処理に用いる酸は特に制限されないが、
塩酸および/またはフッ化水素酸などの非酸化性の酸が
望ましい。これ以外の酸 (例、硝酸、硫酸等) では、酸
の持つ酸化機能により酸性水溶液による浸漬処理中に合
金表面に酸化膜が生じやすく、合金の初期活性化特性の
改善効果が充分には得られない場合がある。酸処理によ
り水素吸蔵合金粉末の比表面積が増大するのは、主に粒
界が優先的に侵食されることにより表面にピット (孔)
が多数生成するためであると推測される。なお、AB2
型合金にはフッ化水素酸が、AB5 型合金には塩酸が特
に好ましい酸である。
【0030】浸漬に使用する酸溶液は、試薬特級もしく
は1級またはそれと同程度の濃度の原液 (塩酸は35〜36
%、フッ化水素酸は44〜46%濃度) を水で希釈すること
によって調製することができる。酸溶液の酸濃度は、こ
の原液の含有量 (重量%) として、塩酸で2〜15%、フ
ッ化水素酸で 0.2〜10%、塩酸とフッ化水素酸との混酸
で 0.2〜15%の濃度が好ましい。酸濃度が低すぎると溶
液の反応性が低く、浸漬処理を長時間行っても、所望の
S・dm 値となるように比表面積を増大させることが困
難となる。酸濃度が高すぎると、合金内部にまで酸洗が
進んでしまい、本来の水素吸収・放出に必要な部分まで
除去してしまうことがある。より好ましい酸濃度は、上
記原液濃度で、塩酸で2〜8%、フッ化水素酸で 0.5〜
2%、塩酸とフッ化水素酸との混酸で 1.5〜5%であ
る。酸処理の温度は0〜80℃が好ましく、浸漬時間は、
酸処理後にS・dm 値が上記の下限値以上に増大するよ
うに選択すればよい。
【0031】酸処理後の水素吸蔵合金粉末は、次いで水
洗および乾燥することが好ましい。乾燥は真空中または
不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。本発明の水
素吸蔵合金粉末は、従来と同様に電極を構成してNi−H
電池の負極として使用することができる。例えば、水素
吸蔵合金粉末を適当なバインダ (ポリビニルアルコール
などの樹脂)および水(または他の液体)と混合してペ
ースト状とし、集電体となるニッケル多孔体に充填して
乾燥した後、所望の電極形状に加圧成形することによ
り、電極を製造することができる。或いは、バインダと
混合した後、加圧成形およびホットプレスにより成形体
を作製することによっても電極を製造できる。この場合
には、成形中または成形後に集電体を張り合わせる。
【0032】
【実施例】本発明の水素吸蔵合金粉末の効果を次の実施
例により実証する。実施例中、%は特に指定しない限り
重量%である。また、酸処理に用いた酸水溶液の濃度
は、前述した原液の含有量 (重量%) である。
【0033】実施例で用いた水素吸蔵合金粉末は、表1
に示す組成のAB5 型およびAB2型合金であった。表
1において、MmはLa:27%、Ce:48%、Pr:7%、Nd:
17%を含む希土類金属合金 (ミッシュメタル) で、Lmは
La:57%、Ce:15%、Pr:8%、Nd:19%を含むLa富化
希土類金属合金 (La富化ミッシュメタル) である。
【0034】
【表1】
【0035】各酸処理後に得られた合金粉末をふるい分
けして、45/20μm(平均粒径dm=30μm)および75/2
0μm(平均粒径dm =50μm)の粉末をそれぞれ集め
た。これらの各粉末の比表面積をBET−1点法により
測定した。また、各合金粉末の形状をSEM(走査式電
子顕微鏡)で確認したところ、いずれもアスペクト1.
3 以下の球形粒子であった。
【0036】各酸処理後に得られた合金粉末をふるい分
けして、45/20μm(平均粒径d=30μm)お
よび75/20μm(平均粒径d=50μm)の粉末
をそれぞれ集めた。これらの各粉末の比表面積をBET
−1点法により測定した。また、各合金粉末の形状をS
EM(走査式電子顕微鏡)で確認したところ、いずれも
アスペクト1.3以下の球形粒子であった。
【0037】各合金粉末をNi−H電池の負極活物質とし
て使用した場合の電池性能を、次の方法で評価した。合
金粉末5gに、10%のテフロンバインダー (テトラフル
オロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体) を
加え、冷間プレスにより板状に加圧成形し、次いで両面
をニッケルメッシュで挟んでから300 ℃で5t/cm2 の加
圧下でのホットプレスを1分間行い、試験用の電極を作
製した。この電極を負極に、市販の焼結式ニッケル電極
(公称4000mAh の容量) を正極とし、間にポリアミド不
織布をセパレーターとして介在させて容器内に収容し、
比重1.30の水酸化カリウム水溶液に水酸化リチウム20 g
/Lを加えた水溶液を電解液として注入して、負極容量規
制型Ni−H電池を構成した。この試験用電池に対して、
25℃において 500mA×4時間の充電と500mA で0.85Vま
での放電とを繰り返し、そのときの放電容量を測定し
た。
【0038】電池性能は、初期容量 (充電・放電サイク
ルでの最大放電容量mAh/g)と活性化サイクル数 (初期容
量=最大放電容量に達するまでに要した充電・放電サイ
クルの繰り返し回数) とで評価した。比表面積と電池性
能の結果を、45/20μm (平均径dm =30μm)の合金粉
末については表2に、75/20μm (平均径dm =50μm)
の合金粉末については表3にそれぞれ示す。
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】表2および表3からわかるように、粒径45
/20μmと75/20μmのどちらの合金粉末についても、
塩酸またはフッ化水素酸水溶液による酸処理によりS・
m値が 2.0×1012以上になるように比表面積Sを増大
させた本発明例の水素吸蔵合金粉末は、1回目の充電・
放電で初期容量に達し、しかも初期容量も高かった。即
ち、初期活性化処理が不要で、最初の充電時から使用に
供することができ、初期容量も高いという、優れた初期
活性化特性を示した。また、この効果は、粒径や酸の種
類に関係なく、S・dm 値が 2.0×1012以上であれば達
成されることがわかる。
【0042】これに対し、酸処理を行っても処理後の比
表面積がS・dm 値で 2.0×1012に達しない合金粉末
は、初期活性化特性、初期容量ともに、比表面積増大の
ための酸処理をしない粉末 (未処理粉末) とほとんど変
わらなかった。
【0043】なお、充電・放電サイクル試験における放
電容量の維持率 (500 サイクル) は、本発明例と従来
例、比較例とで著しい差は見られなかった。
【0044】(実施例2)表1に示す合金AおよびBの組
成を用い、通常溶製法 (合金を高周波誘導加熱により真
空溶解し、水冷鉄鋳型に鋳造) で得られたインゴットを
ボールミルで粉砕することにより製造した水素吸蔵合金
粉砕粉末を、表4に示す各種の酸水溶液で処理し、供試
材とした。酸処理条件は温度30℃、浸漬時間を20分間と
した。
【0045】酸処理した水素吸蔵合金粉末をふるい分け
して、45/20μm(平均粒径dm =30μm)の粉末を集め
た。これらの各粉末の比表面積および電池性能を、実施
例1と同様の方法で評価し、その結果を表4に併せて示
す。
【0046】
【表4】
【0047】本発明による比表面積増大の効果は、不規
則形状の通常溶製合金粉末 (粉砕粉末) の初期活性化に
おいても顕著に得られた。ただし、粉砕粉末の場合に
は、S・dm 値が 4.0×1012以上の場合に、初期活性化
特性が向上した。この場合、本発明例では2〜3回目の
充電・放電繰り返し後に初期容量に達しており、比較例
や従来例に比べて初期活性化サイクル数は著しく少な
く、初期活性化が容易になっていることがわかる。ただ
し、実施例1の球形粉末の場合のように、初期活性化処
理が不要になるほどの初期活性化特性の改善は得られな
かった。なお、充電・放電サイクル試験における放電容
量の維持率 (500 サイクル) は本発明例と従来例、比較
例とで差は見られなかった。
【0048】(実施例3)表1に示す合金Aの組成を用
い、アルゴンガスアトマイズ法により水素吸蔵合金粉末
を製造した。得られた合金粉末に実施例1と同様の熱処
理を施した後、イオンスパッタリングを施し、供試材と
した。スパッタリングには0.5 〜3.0 KeVのAr+ イオン
を用いた。
【0049】スパッタリング後に得られた合金粉末をふ
るい分けして、45/20 μm(平均粒径dm =30μm)の粉末
を集めた。これらの各粉末の比表面積および電池性能
を、実施例1と同様の方法で評価した。その結果を表5
に示す。また、各合金粉末の形状をSEM (走査式電子
顕微鏡) で確認したところ、いずれも球形であった。
【0050】
【表5】
【0051】本発明における比表面積増大の効果はその
手段によらず、イオンスパッタリング法においても、酸
処理同様の効果が得られた。すなわちS・dm 値が 2.0
×1012以上の場合に、初期活性化特性が向上した。な
お、充電・放電サイクル試験における放電容量の維持率
(500 サイクル) は本発明例と従来例、比較例とで差は
見られなかった。
【0052】また、水素吸蔵合金としてAB型であるTi
Niのアトマイズ粉を用い、同様に比表面積を大きくして
実験を行った結果、AB2 型、AB5 型と同様初期活
性化特性が得られることがわかった。
【0053】
【発明の効果】本発明のNi−H電池用水素吸蔵合金粉末
は、その平均粒径を著しく変化させずに比表面積が従来
の粉末より増大している点に特徴がある。この合金粉末
を負極活物質とするNi−H電池は、合金粉末の比表面積
が大きいため、反応に寄与する合金粉末の表面積が大き
くなり、初期活性化特性が著しく改善される。即ち、従
来より著しく少ない充電・放電サイクル数で所定の放電
容量が得られるように初期活性化できるか、初期活性化
処理を行わずに所定の放電容量を示す電池を直接得るこ
とができる。また、比表面積が大きいことから放電容量
が高くなる。しかも、微細化せずに比表面積を増大させ
ているため、比表面積を増大させても、繰り返し充電・
放電寿命 (放電容量維持率) は実質的に変化しない。
【0054】本発明の効果は、水素吸蔵合金粉末の粒径
や形状に関係なく達成することができるが、特に本発明
を実質的に球形の水素吸蔵合金粉末に適用することで、
合金粉末の最密充填による充填率の増大により、体積エ
ネルギー密度が高く、高放電容量で、初期活性化処理が
不要なNi−H電池の構成が可能となり、工業的に非常に
有利である。もちろん、粉砕粉末に適用した場合にも、
初期活性化特性は大幅に向上するので、その工業的意義
は大きい。
フロントページの続き (72)発明者 神代 光一 大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友 金属工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−3031(JP,A) 特開 平4−34849(JP,A) 特開 平5−225975(JP,A) 特開 平4−328252(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 4/38,4/24,10/30

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水素吸蔵合金の実質的に球形の粉末であ
    って、その比表面積S (μm2/g) と平均粒径dm
    m) との積が下式を満たすことを特徴とする、ニッケル
    −水素電池用水素吸蔵合金粉末。 10.0×1012≧S・dm ≧ 2.0×1012
  2. 【請求項2】 水素吸蔵合金の粉砕粉末であって、その
    比表面積S (μm2/g) と平均粒径dm (μm) との積
    が下式を満たすことを特徴とする、ニッケル−水素電池
    用水素吸蔵合金粉末。 20.0×1012≧S・dm ≧ 4.0×1012
  3. 【請求項3】 請求項1または2の水素吸蔵合金粉末を
    負極活物質とすることを特徴とする、ニッケル−水素二
    次電池。
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