JP3078983B2 - 油分濃度計 - Google Patents

油分濃度計

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、油分濃度計に関す
る。
【0002】
【従来の技術】例えば排水中に含まれる油分の濃度を測
定する装置として、従来、図4に示すような油分濃度計
を用いていた。すなわち、この図において、41はセル
ベンチで、内部に試料セル42と比較セル43とが並列
的に設けられている。両セル42,43はそれぞれの両
端部が赤外線透過性の良好な材料よりなるセル窓42
a,43aで封止されているとともに、例えば適宜の抽
出溶媒に油分(HC成分)を抽出した試料Sを供給・排
出するための試料入口42b、試料出口42cが設けら
れている。また、比較セル43には比較試料として赤外
線に吸収帯を持たない窒素ガス43bが封入されてい
る。
【0003】44はセルベンチ41の一方の側に設けら
れる光源部で、試料セル42、比較セル43にそれぞれ
対応するように赤外光をそれぞれ照射する2つの光源4
5,46が設けられており、所謂2セル、2光源タイプ
に構成され、各光路中には、油分の吸収帯域である波長
3.4μmの干渉フィルタ47,48が介装されてい
る。また、49は各光源45,46からの赤外光を所定
の周期で断続する光チョッパで、50はその駆動モータ
である。
【0004】51はセルベンチ41の他方の側に設けら
れるコンデンサマイクロホン型検出器で、隔壁51aで
仕切られた2つの受光室51b,51cを試料セル4
2、比較セル43にそれぞれ対応するようにして設けら
れている。52はコンデンサマイクロホン型検出器51
の出力を適宜増幅するアンプで、その出力は図示してな
い信号処理部に入力される。
【0005】53,54は2つの光源の光量のバランス
をとるための遮光板で、光源部44とセルベンチ41と
の間およびセルベンチ41とコンデンサマイクロホン型
検出器51との間に設けられている。
【0006】上記構成の油分濃度計においては、光源4
5,46をオンにし、光チョッパ49を動作させている
状態で、試料セル42に試料Sを供給すると、比較セル
43を透過した赤外光は、吸収を受けずにそのままコン
デンサマイクロホン型検出器51の受光室51cに強度
0 の光として入射し、試料セル42を透過した赤外光
は試料Sに含まれる油分によって吸収を受けて、受光室
51bに強度Iの光として入射する。したがって、コン
デンサマイクロホン型検出器51からは、I0−Iなる
差分が出力され、この出力を信号処理することにより、
試料S中に含まれる油分の濃度が得られる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の油分濃度計においては、試料セル42と比較セル4
3とを並設するとともに、これら2つのセル42,43
をそれぞれ照射する光源45,46を設け、さらに、コ
ンデンサマイクロホン型検出器51を用いていたため
に、装置の構成が大掛かりとなり、コストアップとなっ
ていた。
【0008】そして、試料セル42側の光路(測定側光
路)に介装される干渉フィルタ47と、比較セル43側
の光路(基準側光路)に介装される干渉フィルタ48と
が同じ吸収波長領域のフィルタよりなるため、油分以外
の成分の吸収があった場合、厳密な意味での基準光とは
ならなくなり、その結果、光源45,46のドリフト
や、セル窓およびセル内の汚れ(以下、セルの汚れとい
う)が生じるなど経時的変化によって誤差が生じやすく
なるといった欠点があった。
【0009】また、油分濃度は、コンデンサマイクロホ
ン型検出器51からの出力I0 −Iに基づいて得られる
が、この出力I0 −Iは、光源45,46の出力変化が
生じた場合、スパン付近に大きな測定誤差が生じること
になるといった不都合もあった。
【0010】さらに、測定に際しては、光源45,46
からの光量のバランス調整を行わなければならないな
ど、取扱いがかなり面倒であった。
【0011】この発明は、上述の事柄に留意してなされ
たもので、構成が簡単かつ安価、しかも、光源劣化など
経時的変化による影響を受けず、高精度で測定すること
ができ、調整作業などが不要で取扱いが簡単な油分濃度
計を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、この発明の油分濃度計は、溶媒中に油分を含む試料
が供給されるセルの一端側にセルに対して赤外光を照射
する光源を配置し、他方にセルを透過した赤外光をそれ
ぞれ受光する測定用検出器と比較用検出器と設けるとと
もに、測定用検出器の光路中に油分の吸収波長のみを通
過させる第1干渉フィルタを介装し、比較用検出器の光
路中に油分の吸収波長を含む広い帯域においてフラット
な透過特性を示す第2干渉フィルタを介装した点に特徴
がある。
【0013】この場合、測定用検出器の出力をIとし、
比較用検出器をI0 とするとき、I0 /Iに基づいて油
分濃度を求めるようにするのがよい。
【0014】そして、光源、セルがそれぞれ一つであ
り、測定用検出器と比較用検出器とをそれぞれ一つずつ
で構成するのがよい。
【0015】また、第1干渉フィルタは、その中心波長
が3.4μm、半値幅が約9%(約0.3μm)の光学
フィルタよりなり、第2干渉フィルタは、1μm〜5μ
mの範囲での透過率が20%以下である光学フィルタよ
りなるものが好ましい。
【0016】さらに、光源から検出器に至る光路中に光
断続用のチョッパを設けるなどして、変調を行うのがよ
い。
【0017】
【作用】上記構成の油分濃度計においては、一つのセル
に対して一つの光源を設けるだけであるので、光源のド
リフトやセルの汚れなどに起因する測定誤差をなくすこ
とができるとともに、測定用検出器側の光路中に油分の
吸収波長のみを通過させる第1干渉フィルタを設ける一
方、比較用検出器側の光路中に油分の吸収波長を含む広
い帯域においてフラットな透過特性を示す第2干渉フィ
ルタを設けているので、油分以外の吸収成分が存在して
いても、その影響を除去した高精度の測定が可能にな
る。
【0018】そして、上記油分濃度計においては、従来
のように、基準側の出力と測定側の出力との差をとるの
ではなく、それらの比をとるようにしているので、光源
光量に変動が生じても、測定誤差が生ずることがない。
また、構成が簡単であり、安価となるとともに、光源の
調整作業もなくなり、取扱いが容易である。
【0019】
【実施例】図1は、この発明の油分濃度計の構成の一例
を概略的に示す図であり、この図において、1はセルベ
ンチで、内部には一つのセル2が設けられている。この
セル2は、例えばステンレス鋼など耐腐蝕性に優れた材
料よりなり、その両端部が赤外線透過性の良好な材料
(例えば石英など)よりなるセル窓2aで封止されてい
るとともに、例えばフロンS−316などの抽出溶媒に
油分(HC成分)を抽出した試料Sを供給・排出するた
めの試料入口2b、試料出口2cが設けられている。
【0020】3はセルベンチ1の一方の側に設けられ、
セル2に赤外光を照射するための光源である。
【0021】4,5はセルベンチ1の他方の側に互いに
並列的に設けられる測定用検出器、比較用検出器で、両
者4,5は例えば焦電型赤外線検出器よりなる。そし
て、測定用検出器4の受光面側には、油分の吸収帯域で
ある波長3.4μmの第1干渉フィルタ6が設けられて
いる。より詳しくは、この第1干渉フィルタ6は、その
中心波長が3.4μm、半値幅が約9%(約0.3μ
m、従来の約2倍)の光学フィルタである。
【0022】また、比較用検出器5の受光面側には、前
記油分の吸収波長3.4μmを含む広い帯域(例えば1
〜5μm)においてフラットな透過特性を示す第2干渉
フィルタ7が設けられている。より詳しくは、この第2
干渉フィルタ7は、1μm〜5μmの範囲での透過率が
20%以下のワイドバンドパスフィルタ(光学フィル
タ)である。
【0023】比較用検出器5の光路中に、上記ワイドバ
ンドパスフィルタよりなる第2干渉フィルタ7を設けた
理由は、なるべく広い波長範囲の光を利用することによ
り、光源3の変動などによるバックグランドの影響を低
減するためである。つまり、ワイドバンドパスフィルタ
を用いることにより、比較用検出器5出力(基準光出
力)は、透過波長範囲で積分された透過波長範囲に比例
したものとなる。この場合、油分吸収波長も透過する
が、その出力レベルは、全体の1/10程度であり、し
たがって、その波長領域で何らかの変動があったとして
も、基準光全体に対しては、その影響も1/10とな
り、無視できる。
【0024】8はセルベンチ1と干渉フィルタ6,7と
の間に設けられる光チョッパで、モータ9によって駆動
され、セル2を通過してきた赤外光を所定の周期で断続
するように構成されている。
【0025】10,11は測定用検出器4、比較用検出
器5の出力をそれぞれ適宜処理する前置増幅器、12は
前置増幅器10,11の出力をそれぞれ増幅およびA/
D変換するアンプ、13はマイクロコンピュータなどよ
りなる演算部である。この演算部13においては、測定
用検出器4側の信号をI、比較用検出器5側の信号をI
0 とするとき、log(I0 /I)なる演算を行い、こ
れに基づいて油分濃度を得ることができる。
【0026】上述のように構成された油分濃度計におい
ては、測定用検出器4側からは、試料S中に含まれる油
分による油分吸収波長帯出力Iが出力される。また、比
較用検出器5からは、1〜5μmの範囲で積分された透
過赤外光に比例した基準光出力I0 が出力される。この
場合、基準光側には、油分吸収波長も通過するが、その
出力レベルは、図2に示すように、全体の1/10程度
であるので、ほとんど無視できる。そして、演算部13
において、log(I0 /I)なる演算(吸光度計算)
を行うことにより、試料S中に含まれる油分濃度を得る
ことができる。
【0027】そして、上記油分濃度計においては、一つ
のセル2に対して一つの光源3を設けるだけであるの
で、光源3のドリフトやセル2の汚れなどに起因する測
定誤差をなくすことができるとともに、測定用検出器4
側の光路中に油分の吸収波長のみを通過させる第1干渉
フィルタ6を設ける一方、比較用検出器5側の光路中に
油分の吸収波長を含む広い帯域においてフラットな透過
特性を示す第2干渉フィルタ7を設けているので、油分
以外の吸収成分が存在していても、その影響を除去した
高精度の測定が可能になる。
【0028】そして、上記油分濃度計においては、従来
のように、基準側の出力I0 と測定側の出力Iとの差を
とるのではなく、マイクロコンピュータなどの演算部1
3において、log(I0 /I)の計算処理を行うよう
にしているので、従来に比べて、正確に吸光度演算を行
うことができる。また、光源3の光量に変動が生じて
も、測定誤差が生ずることがない。さらに、構成が簡単
であり、安価となるとともに、光源の調整作業もなくな
り、取扱いが容易である。
【0029】図2は、上記油分濃度計を用いて重油濃度
を測定したときの吸収スペクトルの一例を示す図であ
り、また、図3は、抽出溶媒として用いたフロンS−3
16の吸収スペクトルを示す図である。
【0030】なお、上述の実施例においては、log
(I0 /I)の演算に基づいて油分濃度を求めるように
しているが、単にI0 /Iなる演算を行い、2次式以上
の線化処理を行うようにしてもよく、このようにした場
合、マイクロコンピュータの負担を軽くできる。
【0031】この発明は、上述の実施例に限られるもの
ではなく、種々に変形して実施することができる。例え
ば検出器4,5は焦電型赤外線検出器に限られるもので
はなく、半導体検出器など他の固体検出器や、コンデン
サマイクロホン型検出器で構成してあってもよい。ま
た、図示は省略するが、測定用検出器4を複数個設け、
それらの検出器4に油分吸収波長を透過しない干渉フィ
ルタと、油分吸収波長の中の特定の波長のみを透過させ
る干渉フィルタを複数個配置し、複数の油種を個別に濃
度測定できるようにしてもよい。
【0032】また、光チョッパ8を、セル2と光源3と
の間に設けてもよい。そして、光チョッパ8に代えて、
光源3を一定周期で断続させるようにして変調するよう
にしてもよい。
【0033】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれ
ば、一つのセルに対して一つの光源を設けるだけである
ので、光源のドリフトやセルの汚れなどに起因する測定
誤差をなくすことができるとともに、測定用検出器側の
光路中に油分の吸収波長のみを通過させる第1干渉フィ
ルタを設ける一方、比較用検出器側の光路中に油分の吸
収波長を含む広い帯域においてフラットな透過特性を示
す第2干渉フィルタを設けているので、油分以外の吸収
成分が存在していても、その影響を除去した高精度の測
定が可能になる。
【0034】そして、上記油分濃度計においては、従来
のように、基準側の出力と測定側の出力との差をとるの
ではなく、それらの比をとるようにしているので、光源
光量に変動が生じても、測定誤差が生ずることがない。
また、構成が簡単であり、安価となるとともに、光源の
調整作業もなくなり、取扱いが容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の油分濃度計の一例を概略的に示す構
成図である。
【図2】上記油分濃度計を用いて重油濃度を測定したと
きの吸収スペクトルの一例を示す図である。
【図3】抽出溶媒として用いたフロンS−316の吸収
スペクトルを示す図である。
【図4】従来の油分濃度計を概略的に示す構成図であ
る。
【符号の説明】
2…セル、3…光源、4…測定用検出器、5…比較用検
出器、6…第1干渉フィルタ、7…第2干渉フィルタ、
S…試料。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石田 正彦 京都府京都市南区吉祥院宮の東町2番地 株式会社堀場製作所内 (72)発明者 高田 秀次 京都府京都市南区吉祥院宮の東町2番地 株式会社堀場製作所内 (56)参考文献 特開 平4−160347(JP,A) 特開 平7−260685(JP,A) 特開 平5−240782(JP,A) 実開 平3−2244(JP,U) 福嶋良助、「油分濃度計(OCMAシ リーズ)」、Readout HORI BA Technical Repor ts、株式会社堀場製作所発行、1993年 7月30日発行、第7号、第39−44頁 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 21/00 - 21/61 G01N 33/28 JICSTファイル(JOIS)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶媒中に油分を含む試料が供給されるセ
    ルの一端側にセルに対して赤外光を照射する光源を配置
    し、他方にセルを透過した赤外光をそれぞれ受光する測
    定用検出器と比較用検出器と設けるとともに、測定用検
    出器の光路中に油分の吸収波長のみを通過させる第1干
    渉フィルタを介装し、比較用検出器の光路中に油分の吸
    収波長を含む広い帯域においてフラットな透過特性を示
    す第2干渉フィルタを介装したことを特徴とする油分濃
    度計。
  2. 【請求項2】 測定用検出器の出力をIとし、比較用検
    出器をI0 とするとき、I0 /Iに基づいて油分濃度を
    求めることを特徴とする請求項1に記載の油分濃度計。
  3. 【請求項3】 光源、セルがそれぞれ一つであり、測定
    用検出器と比較用検出器とがそれぞれ一つずつである請
    求項1または2に記載の油分濃度計。
  4. 【請求項4】 第1干渉フィルタは、その中心波長が
    3.4μm、半値幅が約9%(約0.3μm)の光学フ
    ィルタよりなり、第2干渉フィルタは、1μm〜5μm
    の範囲での透過率が20%以下である光学フィルタより
    なる請求項1〜3のいずれかに記載の油分濃度計。
  5. 【請求項5】 光源から検出器に至る光路中に光断続用
    のチョッパを設けている請求項1〜4のいずれかに記載
    の油分濃度計。
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福嶋良助、「油分濃度計(OCMAシリーズ)」、Readout HORIBA Technical Reports、株式会社堀場製作所発行、1993年7月30日発行、第7号、第39−44頁

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