JP3078891B2 - 高水分油中水型乳化油脂組成物 - Google Patents

高水分油中水型乳化油脂組成物

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高水分油中水型乳化油
脂組成物、例えばマーガリン類、スプレッドに関する。
【0002】
【従来の技術】マーガリンやファットスプレッドなど
は、油相と水相よりなる油中水型乳化物を冷却、固化、
練圧して製造される油中水型乳化油脂組成物の一種であ
る。近年、特に、脂肪含量を減じたファットスプレッド
の需要が大幅に伸長してきている。
【0003】これらを製造する際、油相と水相という、
そのままでは混ざり合わない性質を持つ二つの相を油中
水型乳化物になるように乳化、分散させるが、両相の比
率や乳化、分散の方法によっては、乳化時やその後の殺
菌工程、冷却、固化工程において相の転換が生じ、油中
水型乳化油脂組成物が得られなかったり、あるいは製造
後の製品表面に離水が生じたり、製品組織が粗くなった
りするなど、生産性や製品の品質を著しく低下させると
いう問題点があった。
【0004】このような製造上の問題を解決するため
に、従来、乳化剤、安定剤等を用い、その種類、添加量
等を検討する多くの試みがなされている。また、場合に
よっては蛋白濃縮物を使用することなどが行われてき
た。
【0005】このような例としてポリグリセリン縮合リ
シノレイン酸エステルやヨウ素価が高いグリセリンモノ
リノレートといった不飽和グリセリン脂肪酸エステルを
乳化剤として使用することが試みられている。しかし、
これらの乳化剤は、それ自体風味が極めて悪い。従っ
て、油相原料の風味が最終製品の風味に反映されるよう
な油中水型のマーガリン、スプレットなどでは、風味の
点からこのような乳化剤を乳化安定に必要な量使用する
ことは好ましくない。
【0006】また、特開昭56-38168号公報にはローカス
トビーンガムやグアガムなどに代表される増粘多糖類
を、乳化の安定や、離水防止の目的のために使用するこ
とが記載されている。しかし、これらを必要とされる量
使用すると、口中の食感を著しく損なうことが多い。ま
た、特公昭57-35622号及び特公昭54-17019号公報には、
蛋白濃縮物の使用が記載されているが、作業性や生産コ
スト、微生物による汚染の面で不利な点が多かった。
【0007】更に、特開昭61−119137号公報には、ロー
ルイン用マーガリンの製造方法がある。この公報には、
乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エス
テル、脂肪酸モノグリセリド、蔗糖脂肪酸エステル
及び/又は重合度3以上のポリグリセリン脂肪酸エステ
ルの使用が開示されている。しかし、これらの乳化剤を
使用しただけでは、マーガリンに水分が多量に含有され
ているので、マーガリンを用いて加熱調理したときに油
がとびはねる、いわゆるスパッタリングを生じるという
問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来技術に
おけるこのような欠点を解決しようとするものである。
すなわち、新規な高水分油中水型乳化油脂組成物を提供
し、油相及び水相の調製作業の簡便化、乳化、分散、殺
菌、冷却、練圧、充填にいたる油脂組成物製造工程全般
における乳化の安定化、離水の防止、スパッタリングの
防止、口中における食感の改善などの課題を解決しよう
とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、25
〜50重量%の乳化剤を含有する油相に75〜50重量%の水
相を乳化、分散させて得られる、油中水型の高水分乳化
油脂組成物に関する。ここでいう油相とは、油脂および
油溶性原料から構成されるものをいう。また、水相と
は、水および水溶性原料から構成されるものをいう。本
発明で使用される油脂は、植物油脂、動物油脂およびこ
れらの硬化油、エステル交換油、分別油、乳脂等のいず
れでも、あるいはこのような油脂を組合せたものであっ
ても、それがスプレッドとして要求される製品硬度を満
足するような固体脂であるならば、いずれでも使用する
ことができる。
【0010】固体脂含量としては、5℃において6〜40
%、好ましくは10〜30%の範囲である。また10℃では5
〜35%、15℃では4〜25%程度の範囲とすることが好ま
しい。
【0011】乳化剤としては、モノグリセリン脂肪酸エ
ステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、
蔗糖脂肪酸エステル及びレシチンを使用する。
【0012】本発明で使用されるグリセリン脂肪酸エス
テルは、グリセリンと脂肪酸とのモノエステルであり、
ヨウ素価30〜100 の不飽和脂肪酸を主体とするグリセリ
ン脂肪酸エステルが用いられる。好ましくは、ヨウ素価
50〜80の蒸留不飽和モノグリセリン脂肪酸エステルが適
している。上記モノグリセリン脂肪酸エステルの添加量
は、0.1 〜2.0 重量%、好ましくは 0.2〜1.0 重量%で
ある。ヨウ素価30〜100 の不飽和脂肪酸にはグリセリン
モノオレエート、グリセリンモノリノレート、脂肪酸が
オレイン酸を主成分とする混合物からなるグリセリン脂
肪酸エステル等がある。本発明でこのようなヨウ素価を
もつ不飽和脂肪酸エステルを使用するのは冷却時におけ
る乳化液の相の安定化をはかるためである。飽和脂肪酸
からなるモノグリセリン脂肪酸エステルは冷却時の温度
変化に対してしばしば相転換を生じることがある理由に
よる。
【0013】また、本発明で使用されるポリグリセリン
縮合リシノレイン酸エステルは、ポリグリセリンと縮合
リシノレイン酸とのエステルであり、平均重合度6のヘ
キサグリセリンと縮合度6〜10(平均8)の縮合リシノ
レイン酸のエステルであり、HLBは3以下である。ヨ
ウ素価は、70〜100のものであれば良い。上記ポリグリ
セリン縮合リシノレイン酸エステルの添加量は0.01〜1.
0重量%であり、好ましくは0.03〜0.5 重量%である。
1.0 %を越えると、乳化剤の風味が強く出て、最終製品
の風味が損なわれ、0.01%以下では乳化安定の点で効果
が期待出来ない。HLB3以下であるヘキサグリセリン
縮合リシノレイン酸エステルを使用するのは該乳化剤は
乳化力が強く本発明のような高水分油中水型の乳化物で
は製造工程中あるいは製品の保存中最も安定な乳化力を
保持することができるという理由による。特に、特開昭
61−119137号公報では、グリセリン重合度2〜3のポリ
グリセリン縮合リシノレイン酸エステルを使用している
が、本発明では前記したヘキサグリセリン縮合リシノレ
イン酸エステルを使用することによって、上記の効果を
達成することができる。
【0014】また、本発明で使用される蔗糖脂肪酸エス
テルは、蔗糖と脂肪酸のエステルであり、蔗糖と炭素数
が18以上のモノ不飽和脂肪酸のエステルで、エステル化
度が1〜7の混合物であり、HLBは1〜3の蔗糖ポリ
エステルである。上記蔗糖エステルの添加量は0.01〜1.
0 重量%であり、好ましくは0.03〜0.3 重量%である。
1.0 %を越えると乳化は極めて良くなるが製品の風味が
出にくくなるといった問題が生じる。また、0.1 以下で
は、乳化安定の効果が期待出来ない。本発明ではこのよ
うな蔗糖脂肪酸エステルを使用するのは、高温度(60℃
以上)における攪拌に際し、乳化が破壊されず、安定な
乳化液を得るためである。これは、乳化液の殺菌工程に
おいて、重要な働きを示すなどの理由からであり、これ
以外の蔗糖脂肪酸エステルを使用してもこのような効果
が達成されない。
【0015】さらに、本発明におけるもう一つの特徴
は、レシチンを配合することにある。レシチンの配合の
目的は、製品を加熱調理する際におけるスパッタリング
の防止にある。本発明のように高水分油中水型のスプレ
ッドは、加熱調理において水分蒸発による油のはねが多
く、そのはねを抑止する目的でレシチンを使用する。し
かし、レシチンの添加は高水分の油中水型乳化物を調製
する際に、好ましくない乳化破壊を引き起こすことがし
ばしばあり、レシチンの効果を引き出しながらより安定
な乳化物を得るためには、上述の乳化剤との組合せが必
須である。このレシチンの添加量は、スパッタリング防
止の点から見れば多い方がその効果も大きいが、逆に加
熱したときの風味や色調が悪くなるという結果となる。
従って、その添加量は0.01〜2.0 重量%であり、好まし
くは、0.05〜0.5 重量%である。レシチンは種々の起源
のものがあり特定するものではないが、大豆レシチンお
よびその改質レシチンが望ましい。また乳脂肪中のレシ
チンも本発明において使用するのに好都合である。
【0016】本発明に使用される乳化剤は、上記グリセ
リン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン
酸エステル、蔗糖脂肪酸エステルおよびレシチンを必須
成分とするものであり、いずれか1つを欠いても本発明
の効果に達成されない。例えば、グリセリン脂肪酸エス
テルをステアリン酸主体の飽和タイプのものを使用した
場合は、加熱、冷却などのヒートショックによって転相
を生じることや、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エ
ステルと不飽和タイプのグリセリン脂肪酸エステルとだ
けを組合せの場合は、熱交換機内で同様に転相を生じ
る。また、蔗糖脂肪酸エステルと不飽和タイプのグリセ
リン脂肪酸エステルとだけを組合せた場合では、冷却、
固化後の製品組織が粗く、ボソボソした状態になるなど
の問題が生じる。また、グリセリン脂肪酸エステルとレ
シチンの組合せでは乳化が不安定であったり、離水を生
じることがある。
【0017】本発明における油相原料としてはこのよう
な乳化剤、βカロチンなどの着色料、ビタミンA、ビタ
ミンDなどの脂溶性ビタミンなどを使用することができ
る。また、水相原料としては、脱脂粉乳、クリームなど
の乳成分、食塩などを適宜使用することができる。
【0018】本発明の高水分油中水型乳化油脂組成物
は、前記した油相中に水相を添加し、乳化分散し、殺
菌、冷却、練圧を行なうことによって得ることができ
る。これらの方法は、マーガリンあるいはスプレッド製
造において通常行なわれている手段を用いることができ
る。
【0019】
【実施例】以下に実施例および比較例を上げ、本発明を
さらに詳細に説明する。実施例1〜3および比較例1〜3 表1および表2に示す配合組成により、以下に述べる方
法によって油中水型乳化油脂組成物を調製した。まず表
に示す油脂と乳化剤とを混合槽に入れ、70℃前後に加熱
し均一に溶解させて油相を調製した。次に水を別の混合
槽に入れ、60℃前後に加熱し表に示す水相原料の脱脂粉
乳食塩を溶解し、殺菌冷却して水相を調製した。次に油
相に水相をエマルジョン全体が均一になるように、充分
な撹拌のもとに添加していき、均一な油中水型乳化油脂
組成物を得た。これを殺菌冷却した後、密閉型表面掻取
り式熱交換機により急冷固化させ、ピンマシン型練圧機
により練圧を行って油中水型乳化油脂組成物であるスプ
レッドを得た。
【0020】このものの、表面および組織内部を目視に
より、製品品質の評価を行った。乳化安定性の評価は、
上記の油中水型乳化油脂組成物を1000mlのビーカーに取
り、ヒーターで80℃に温度を調節しながら卓上型のホモ
ミキサーにより10分間、7000rpm で撹拌を行い、次にこ
れを 100mlのメスシリンダーに取り、静置させて分離状
態を目視により観察した。なお、表1及び表2において
は、グリセリン脂肪酸エステルをMG、ポリグリセリン
縮合リシノレイン酸エステルをPGPR、蔗糖脂肪酸エ
ステルをSPEとそれぞれ略して表す。なお、比較例3
と比較例4の場合は、製造工程中で転相が生じたため、
油中水型のスプレッドを得ることができなかった。
【0021】表3に示す結果から明らかなように、本発
明により得られた油中水型乳化油脂組成物により、通常
の油中水型のスプレッドの製造工程において転相を生じ
させることなく、組織的にも風味的にも優れた品質の高
水分油中水型スプレッドを製造することができた。ま
た、この乳化油脂組成物は、料理に使用する際、加熱し
てもスパッタリングが起こらなかった。
【0022】
【表1】
【表2】
【表3】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−150235(JP,A) 特開 平4−262740(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヨウ素価30〜100 の範囲にある不飽和脂
    肪酸を主成分とするモノグリセリン脂肪酸エステル、ポ
    リグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、HLB3以
    下のジ蔗糖脂肪酸エステル及び/又はトリ蔗糖脂肪酸エ
    ステル、及びレシチンよりなる乳化剤と油脂とよりなる
    油相25〜50重量%と、水相75〜50重量%とが均質に乳化
    されている高水分油中水型乳化油脂組成物。
  2. 【請求項2】 ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エス
    テルが、HLB3以下のヘキサグリセリン縮合リシノレ
    イン酸エステルである請求項1記載の高水分油中水型乳
    化油脂組成物。
JP03242639A 1991-08-28 1991-08-28 高水分油中水型乳化油脂組成物 Expired - Fee Related JP3078891B2 (ja)

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