JP3077877B2 - アルミナ焼結体の製造方法 - Google Patents

アルミナ焼結体の製造方法

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JP3077877B2
JP3077877B2 JP06201475A JP20147594A JP3077877B2 JP 3077877 B2 JP3077877 B2 JP 3077877B2 JP 06201475 A JP06201475 A JP 06201475A JP 20147594 A JP20147594 A JP 20147594A JP 3077877 B2 JP3077877 B2 JP 3077877B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はアルミナ焼結体に関し、
詳しくは、半導体製造装置用部材や金属蒸気レーザー用
等の高純度、高密度、高均質性が要求される部材に適し
た高純度、高密度及び均質性に優れるアルミナ焼結体の
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アルミナ焼結体は、機械的強度、耐熱
性、耐薬品性等優れた特性を有し、各種用途に多用され
ている。しかし、その原料及び製造工程からのアルカリ
金属、アルカリ土類金属等の不純物を含有し、使用が制
限されることがある。例えば、近年、進展の著しい半導
体製造装置においては、セラミックスの耐熱性、化学的
安定性、高弾性率、電気的特性等を利用して各種部材に
セラミックスが多用されている。例えば、テフロン等の
耐熱性合成樹脂や金属では支障が生じ易いエッチング装
置、アッシング装置、CVD等プラズマに直接曝される
ような苛酷な条件や、搬送用フォークやチャック等の直
接ウエハーと接触する部所で使用されている。半導体ウ
エーハが各種汚染から厳しく管理されてることは周知で
あり、製造装置部材からの汚染もまた厳しく制限する必
要がある。部材を構成するセラミックス中のアルカリ金
属等の不純物も汚染源となるため、ppm以下にするこ
とが望まれている。
【0003】従来、アルミナ焼結体は、例えば、アルミ
ナ原料粉末の解砕、造粒、成形、脱バインダー及び焼結
等の一連の工程によって製造されている。高純度なアル
ミナ焼結体を得ようとする場合は、上記各工程での不純
物の混入をできるだけ防止しているが、第1には原料粉
末の純度を厳しくチェックすることにある。即ち、焼結
体の純度は、結局のところ、基本的に原料粉末の純度に
負うところが大きく、高純度アルミナセラミックスの製
造は、通常、できる限り高純度なアルミナ粉末を用いて
行われる。高純度アルミナ原料粉末は、バイヤー法、ド
ーソナイト法、アンモニウムミョウバン熱分解法、火花
放電法、エチレンクロルヒドリン法、有機金属加水分解
法等によって製造され、また、原料粉末に含有される不
純物元素の含有比率は上記製法により異なる。しかし、
上記製法により得られる高純度アルミナ原料粉末の純度
は、一般的に、フォー(4)ナインといわれる純度9
9.99重量%程度か、更に高純度のものでもファイブ
(5)ナイン程度であり、Fe、Si、アルカリ金属、
アルカリ土類金属類の酸化物等の不純物が数ppm以上
含有されることは避けられない。更に、アルミナ焼結体
を得るための成形の際に添加される成形バインダーの有
機物中にも、通常、アルカリ金属等不純物が含まれてお
り、アルミナ焼結体中の不純物は製造工程を経るにつれ
不純物含量が次第に増加するともいえる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のように従来の高
純度アルミナ焼結体は、高純度原料アルミナを用い、且
つ、製造各工程において不純物混入に細心の注意を払い
回避しても、不純物混入を完全に防止することは不可能
である。従って、従来法により得られるアルミナ焼結体
は、高純度のものでも不純物がそれぞれ数ppmから数
10ppm程度含有され、ppm以下の高純度が要求さ
れる半導体製造装置用部材に用いることは難しく、石英
やSiC系材料が専ら使用されている。また、金属蒸気
レーザー管用として従来から用いられているアルミナセ
ラミックスは、1500〜1600℃の高温で長時間使
用されることから、高温での変形速度が遅いことが望ま
れる。この変形に対する特性、即ちクリープ特性は、セ
ラミックスに含まれる不純物に左右され、高純度であれ
ばあるほど好ましい。更に、アルミナセラミックス中に
含まれている不純物が蒸発して、レーザー管内雰囲気を
汚染しレーザー出力を低下させることになる。上記した
ように金属蒸気レーザー管用アルミナセラミックスにお
いては、半導体製造装置用レベルの高純度は要求されな
いが、各不純物の含有量を10ppm程度までに高純度
化されたアルミナ焼結体が望まれている。更に、従来の
焼結体においては、成形時の原料粉末の挙動及び気孔分
布の不均一や、焼成時の気孔の挙動及び新たな気孔の発
生等により、密度が均一でなく、焼結体全体が均質とな
らず、それにより製品が欠陥を有することになり、ま
た、内部的な存在では欠陥を生じるまでにはならない場
合でも、製品加工においてそれらの部分が表出すること
があり問題となっていた。
【0005】本発明は、上記したようなアルミナ焼結体
の製造方法において、原料粉末精製及び製造工程におけ
る不純物混入防止等の細心処置を行いながらも、最終的
には不純物のある程度の混入を許容せざるを得ないとい
う現状を鑑み、従来と同等の原料粉末と各工程における
不純物混入防止処置を適用し、且つ、従来法で得られる
より高純度で、且つ、均質性に優れるアルミナ焼結体を
得ることを目的に鋭意検討した。また、一般に、アルミ
ナ原料粉末の価格は、精製度合、即ち、純度に比例して
高価格となり、高純度な原料を用いた場合はそれに応じ
て製品価格が高騰する。そのため、比較的低純度の原料
粉末を用いて、不純物含量の低い製品、特に、アルミナ
粉末原料の鉄含有量が数百ppmでも、製品中では数p
pmにすることができれば、その経済的、工業的効果が
著しい。本発明は、このことも考え併せ、原料純度を所
定以上とすることなく従来と同等の高純度なアルミナ焼
結体を得る方法を開発することをも目的とする。更に、
高純度に加え、高密度、高均質性のアルミナ焼結体を得
ることを目的とする。
【0006】発明者らは、上記目的達成のため、純化処
理工程を積極的に組み込むことを検討した。石英ガラス
やシリコン含浸SiCセラミックスを純化する方法とし
て、塩化水素ガスによる処理が既に公知であるが、この
場合の純化工程は、原料粉末の高純度化処理として工程
の初期に、あるいは製品の純化処理として製造工程の最
終段階に組み込まれていた。また、炭素材料について
は、塩素ガスによってアルカリ金属等を除去し、高純度
化する技術が旧来より行われている。しかし、従来、ア
ルミナセラミックスに限らず、一般的に、工業的に製造
されている酸化物セラミックス、例えば、ジルコニア、
マグネシア、スピネル等の製造工程中において純化処理
工程を組み込んだものはなく、焼結体製造における工程
増加は、上記したように却って不純物を増加させること
になるため、工程の省略の可能性を図っていた。発明者
らは、従来の酸化物セラミックスの製造法とは発想を逆
転させ、アルミナセラミックスの製造の中間工程とし
て、所定の焼成処理と共に積極的に純化工程を組み込む
ことにより、半導体製造装置部材や金属蒸気レーザー管
に適用可能な高純度で、且つ、高密度で均質なアルミナ
焼結体が得られることを見出し、本発明に到った。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、アルミ
ナ焼結体の製造方法であって、(1)アルミナ原料粉末
を用いて成形する成形工程、(2)成形工程で得られた
アルミナ成形体から有機バインダーを除去し、且つ、開
気孔を残存させつつ焼成する一次焼成工程、(3)一次
焼成体を塩化水素ガス含有雰囲気下で熱処理する熱処理
工程、及び、(4)熱処理工程後、更に焼成して焼結す
る焼結工程からなることを特徴とするアルミナ焼結体の
製造方法が提供される。
【0008】本発明の上記アルミナ焼結体の製造方法に
おいて、アルミナ原料粉末としてサブミクロン微粉を用
い、800〜1000℃で一次焼成するのが好ましい。
また、アルミナ原料粉末がミクロン微粉である場合は、
1000〜1200℃で一次焼成するのが好ましい。更
に、上記塩化水素ガス熱処理工程を、700〜1400
℃で行うのが好ましい。
【0009】
【作用】本発明は上記のように構成され、セラミックス
焼成過程に純化工程を組み込むと同時に、サブミクロン
またはミクロンオーダーの原料粉末を成形して得られた
成形体を十分に連通する開気孔が残存する条件下で焼成
する。このことにより多孔成形体中に開気孔を連通状態
に保持して、純化処理の塩化水素ガスを焼結中の多孔成
形体内部まで速やかに到達させると共に、不純物との反
応生成物の塩化物の排出を容易とすることができ、焼結
体を高純度とすることができる。また、本発明のアルミ
ナ焼結体の製造方法においては、上記のように焼成過程
において開気孔を連通状態に保持するようにするため、
気孔や粒界等において、微粒子アルミナは純化工程の塩
化水素と反応して塩化アルミニウムとなると同時に、蒸
発し、その後、再び酸化され凝縮し、それに伴いアルミ
ナ粒子が次第に成長する等して、焼結体内部まで高密度
化して全体として均質となり、高密度の焼結体を得るこ
とができる。
【0010】以下、本発明について詳細に説明する。先
ず、本発明のアルミナ一次焼成体について説明する。即
ち、本発明において、一次焼成をするアルミナ成形体
は、従来と同様にアルミナ粉体を、スリップキャスティ
ングや一軸加圧成形、CIP(冷間静水圧成形)等のプ
レス成形等により成形する。成形方法は種々な方法があ
るが、特に制限されるものでなく、従来のセラミックス
の製造に一般的に用いられている方法を用いることがで
きる。得られた成形体は、次いで、乾燥、硬化、脱バイ
ンダー等の処理工程を必要に応じて施した後、一次焼成
する。本発明の一次焼成は、通常、大気中、十分に連通
する開気孔が残る条件下で行うものであり、具体的には
焼成温度を適宜コントロールして、開気孔を残存させる
ことができる。この場合、アルミナ原料粉末の粒子径や
成形体の成形方法等によって好適な一次焼成温度は異な
り、また、一次焼成の温度が低過ぎると、開気孔率は十
分高くなり不純物除去にとっては好適となるが、得られ
る一次焼成体において粉体間の結合が不十分で強度が低
く、搬送等の作業時に破損し易く実用的な取扱いが困難
である。一方、一次焼成温度が高過ぎると、焼結が進行
して一次焼成体の強度は十分高くなるが、焼結体の粒子
成長が同時進行して、開気孔状態でも成長した粒子内に
不純物が取り込まれ、後続の純化熱処理を行っても排出
が困難となる。従って、一次焼成温度は、各条件に応じ
て適宜選択して行わねばならない。例えば、焼結活性の
高いサブミクロンの微粉末を原料粉末として成形体は、
低い温度でも焼成体の強度が高くなり易く、高純化効果
を得るためには一次焼成温度は低く設定するのが好まし
い。通常、約800℃〜1000℃である。また、数ミ
クロン程度の粒径を持つ焼結活性の低いアルミナ粉末の
場合は、通常、約1000〜1200℃で焼成するのが
好ましい。
【0011】本発明においては、上記一次焼成して得ら
れた連通する開気孔が十分残存する一次焼結体を、次い
で塩化水素(HCl)ガス含有雰囲気下に熱処理して純
化処理する。この純化のための熱処理は、温度700℃
〜1400℃で行うことが望ましい。700℃未満の低
温度では、不純物元素の濃度が低下するまでに長時間が
必要となり実用的ではない。また、1400℃より高い
温度で熱処理した場合は、得られた一次焼成体を構成す
るアルミナの粒子が、前記したように塩化水素と反応し
て塩化アルミニウムとして蒸発した後、再びアルミナと
して凝縮成長するため、粒子径が大きくなり焼結活性を
失い、後続の焼結工程において十分緻密なセラミックス
ができなくなる。目的とするアルミナセラミックスが多
少気孔を含んでもよい場合には、1400℃より高温で
熱処理することができる。しかし、HC1ガス雰囲気下
の熱処理温度が1400℃より高いと、一次焼成体のア
ルミナ粒子が塩化アルミニウムとして飛散する量が急激
に増加し、粒子成長より純化装置内に凝縮堆積する量が
多くなるため一次焼成体が消耗し、工業的に好ましくな
い。従って、結局、熱処理温度は700〜1400℃が
好適である。
【0012】上記熱処理工程における処理時間は、処理
温度までの昇温時間及び処理後の冷却時間を含めて、工
業的に処理サイクルとしては長くても数日程度が適当で
ある。熱処理時間は、熱処理する一次焼成体の厚み及び
大きさや、熱処理炉の熱容量により適宜選択すればよい
が、一般的には、昇温または冷却に要する時間が数時間
から一日程度であり、所定温度での熱処理が数時間〜数
十時間、例えば1〜10時間とすることができる。
【0013】本発明の熱処理による純化において、不純
物減少は、下記のような推移によるものと推定される。
即ち、 (1)塩化水素ガス分子が連通する気孔を通って、不純
物元素のところまで拡散して到達する。この場合、被処
理物の肉厚、連通する気孔の大きさ、HC1濃度、温度
に依存するが、殆ど時間がかからないと考えられる。 (2)不純物元素が、一次焼成体のアルミナ微粒子内部
から表面へ固体拡散する。セラミックス一次焼成体を構
成するアルミナ微粒子表面の不純物が除去された後、内
部不純物の表面への拡散は、一次焼成体のアルミナ粒子
の大きさが律速となり、その粒子が小さいほど拡散距離
が短くなり短時間となる。アルミナ粒径が大きな場合
は、粒子に固溶している不純物の工業的な除去は、実質
的には不可能である。 (3)HClと不純物元素が反応し、塩化物となって蒸
発する。この場合、不純物元素とHClとの反応平衡定
数と生成塩化物の平衡蒸気圧が律速となる。
【0014】(4)生成した塩化物が一次焼成体の連通
気孔を流通して一次焼成体外に流出する。例えば、一次
焼成体を構成するアルミナ粒子径が0.5μmであれ
ば、粒子間の連通気孔の径は約0.2μmである。一
方、純化ガスHClの蒸気圧を概略1気圧、熱処理温度
1000℃であるとき、気体分子が衝突する平均距離の
平均自由工程は約0.4μmとなり、上記気孔径0.2
μmより大きくなる。即ち、いわゆるクヌーセン拡散に
よって、反応生成物の塩化物が一次焼成体セラミックス
外に流出する。生成塩化物の一次焼結体からの流出速度
は、上記のように一次焼成体のアルミナ粒子径に依存
し、また、一次焼成体の肉厚にも関係するが、不純物が
一次焼成体の粒子表面に多い時の律速と考えられる。 (5)一次焼成体表面における不純物から生成した塩化
物蒸気を除去する。ppmオーダーの少量の不純物であ
れば、低流速でも除去が可能であるが、温度が高くなる
につれ除去速度が早くなる。発明者らの知見によれば7
00℃未満では十分でない。
【0015】本発明の純化熱処理はHClガス含有雰囲
気下で行う。HClガス含有雰囲気は、塩化水素ガス単
独または塩化水素ガス及び希釈ガスの混合ガスを熱処理
炉へ供給するにより形成することができる。希釈ガスと
しては、ヘリウム、アルゴン、窒素等の不活性ガスを単
独もしくは2種以上混合して用いることができる。塩化
水素ガスと希釈ガスの比率は、熱処理による純化速度、
アルミナ一次焼成体の変質挙動及び処理経費から適宜設
定することができる。例えば、一次焼成体重量が1kg
のとき、1ppmの不純物重量は1mgであり、熱処理
純化に必要なHC1ガスも約1mg即ち約20ccで足
りる。従って、HClガスの含有率は、それに見合う量
の低含有量でよい。また、熱処理炉内のHClガスの濃
度が低いと、焼結体を構成するアルミナ粒子とHClの
反応速度が遅くなり、アルミナ消耗を防止する点からも
好ましい。
【0016】また、HCl含有ガスの熱処理炉等反応室
への供給は、ガス流通方式、所定温度域とで循環させる
ガス循環方式、ガスを処理炉内に封入して所定時間熱処
理した後、排気し、更に、再度ガスを導入するバッチ式
ガス交換方式等のいずれの方式でもよい。ガス交換方式
において、反応容器の圧力を変動させる場合には、容器
を耐圧性にする必要がある。通常、流通方式が好まし
く、ガス交換方式では不純物と塩化水素が反応して生じ
る塩化物濃度が高くなり、不純物除去速度が遅くなるた
め好ましくないが、各種条件に応じて適宜選択すればよ
い。ガス流通方式におけるガス流速は、希釈ガス比率を
多くし全体の流速を高めることにより、一次焼成体表面
に拡散移動して表出してきた不純物塩化物を容易に下流
側に流去することができ好ましい。また、コスト面及び
ガスの冷却効果も考慮し、更に、熱処理炉の形状、容
積、被熱処理一次焼成体の形状等により、不純物とHC
lとで生成した塩化物の流去に必要最小限のガス流速を
適宜選択して設定することができる。
【0017】本発明は、上記のように一次焼成体から不
純物を除去するため、HClガス含有雰囲気下で熱処理
する。この場合、アルミナセラミックスの焼結時に、異
常粒子成長防止剤としてよく知られているマグネシウム
イオン(Mg2+)が、同時に除去されることがあり、そ
のような場合は、熱処理後Mg2+を添加するのが好まし
い。Mg2+の添加は、好ましくは、熱処理した一次焼成
体をマグネシウム塩の水溶液に浸漬し、その後乾燥して
行うことができる。この方法は、Mg2+を必要量まで補
給することができ効果的である。焼結に要するマグネシ
ウム量は、最終焼結温度や他の不純物含有量等により変
化するが、一般に、最終的高温焼成の焼結において数1
0ppm以上は必要である。
【0018】本発明は、上記のHClガス含有雰囲気下
の熱処理後、更に焼成してアルミナ焼結体とする。本発
明において、焼結工程の焼成方法は、特に制限されるも
のでないが、上記純化した一次焼成体をその後の本焼成
で汚染することは純化の意味がなく、本焼成での汚染
は、純化後の不純物含有量に対して十分小さくする必要
がある。この場合、水素雰囲気下や真空中の電気加熱焼
成は、汚染を少なくでき、且つ、高密度化でき、純化及
び均質化処理後の焼成方法として望ましい。また、雰囲
気置換率の大きいバーナーを用いる場合は、耐火物及び
雰囲気中汚染物を考慮すれば、空気中での焼成も可能で
ある。本発明の焼結工程における焼成は、特に従来の高
純度アルミナ焼結体の焼成と変わらず、通常、原料粉末
粒子や成形方法にもよるが、1600〜1850℃で行
うことができる。
【0019】本発明のアルミナ焼結体の製造方法におい
て、γ−アルミナが含有される場合、γ−アルミナはα
−アルミナに比し比表面積が大きく、例えばアルミナ原
料粉製造工程における焙焼雰囲気に存在する酸化鉄等の
不純物を選択的に吸着していることがある。この場合、
アルカリ金属、アルカリ土類金属系以外の不純物が含有
されることになるが、γ−アルミナを含むアルミナ原料
粉末を用いた成形体の一次焼成体を、純化のためにHC
1ガス含有雰囲気下で熱処理した場合には、γ−アルミ
ナがHC1に侵され易いことも相俟って、不純物除去が
急速に進行することになる。従って、不純物が同伴され
ること自体は好ましくないが、含有されることを積極的
に防止する必要性もない。
【0020】なお、アルミナ原料粉末に珪素が含まれる
場合、本発明の上記の純化処理、即ち、HC1含有ガス
雰囲気で熱処理しても珪素は除去されない。そのため、
不純物として珪素を含有し、アルミナ焼結体中の珪素の
存在が問題となる場合は、何らかの珪素除去処理を施す
必要がある。以上に説明したように、本発明は、従来と
同様なアルミナ焼結体の製造において、仮焼後の一次焼
結体を塩化水素ガス含有雰囲気下で熱処理を施すことに
より、アルカリ金属、アルカリ土類金属、酸化鉄等の不
純物を効率的に除去でき、その後、更に高温で焼成して
焼結させることにより、高緻密化し、均質性に優れる高
純度アルミナ焼結体を得ることができる。
【0021】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説
明する。但し、本発明は下記実施例により制限されるも
のでない。なお、下記実施例において、一次焼成体の気
孔状態は水銀ポロシメータを用いて観測して、開孔に連
通するか否かを確認した。また、気孔率は水銀ポロシメ
ータ及びアルキメデス法を用いて測定した値に基づき算
出した。成形体、一次焼成体及び焼結体の不純物含有量
は、約0.5gの試料を粉砕しフレームレス原子吸光光
度計を用いて化学分析して求めた値である。また、焼結
体の相対密度はアルキメデス法を用いて測定した。
【0022】実施例1〜11及び比較例1(α−アルミ
ナ原料粉末) 住友化学(株)製の平均粒径0.4μmのα−アルミナ
原料粉末(商品名:AKP−20)100重量部、イオ
ン交換水80重量部、分散剤としてポリアクリル酸アン
モニウム0.2部、バインダーとして高純度ポリビニル
アルコール0.2重量部をポットミルにて一昼夜混合し
てスラリーを調製した。得られたスラリーを多孔質アル
ミナセラミックス板上に流した後、放置乾燥して成形体
を得た。得られた成形体を大気中で1000℃で2時間
焼成して一次焼成体を得た。一次焼成体の気孔状態を検
査した結果、気孔が連通することが確認できた。気孔率
は56%であった。また、一次焼成体中の不純物は、化
学分析により元素基準で鉄(Fe)10ppm、ナトリ
ウム(Na)6ppm、珪素(Si)10ppm含んで
いた。上記一次焼結体をフライス盤を用い、厚さが2m
mと8mmの2種類で、20×20(mm)の板状体に
加工した。加工形成した一次焼成坂状体を、表1に示し
た条件下で塩化水素ガス含有雰囲気で熱処理した。な
お、実施例6〜11の雰囲気ガスとして、窒素ガスとH
Clとを表1に示したN2 /HCl比率で混合したガス
を用いた。熱処理後、得られた純化処理した一次焼成体
を化学分析して不純物除去効果を確認した。その結果を
表1に示した。
【0023】
【表1】
【0024】上記実施例及び比較例の結果から、純化処
理の塩化水素ガス含有雰囲気中での熱処理が700℃未
満の600℃では、HC1濃度を高くして時間をかけて
も純化が進行しないことが分かる。700℃以上では純
化が進行し、HC1濃度は低濃度でもまた流量が少なく
とも進行することが分かる。また1200℃では純化は
著しいが、同時にアルミナの減少も多いことが分かる。
アルミナに含まれるSiはHC1含有雰囲気の熱処理で
は除去されないことが分かる。
【0025】実施例12〜20及び比較例2〜4 γ−アルミナを含むバイコウスキー社製の平均粒径0.
05μmの高純度アルミナ原料粉末(商品名:CR−3
0)100重量部、イオン交換水150重量部、分散剤
としてポリアクリル酸アンモニウム少量、バインダーと
してポリビニルアルコール1.5重量部をポットミルに
て一昼夜混合してスラリーを調製した。得られたスラリ
ーをスプレードライヤーを用いて造粒し、得られた造粒
粉をCIPを用い1トン/cm2 の圧力で、直径25m
m、長さ110mmの円柱に成形した。円柱成形体を大気
中1000℃で焼成して一次焼成体を得た。得られた一
次焼成体は、不純物としてFeを元素基準で8ppm含
有していた。また、気孔率61%で全ての気孔が開気孔
であった。一次焼成体を加工し、直径20mm、長さ10
0mmの円柱とした。加工後の一次焼成体を、塩化水素雰
囲気下で処理温度を表2に示したように変化させて熱処
理して純化し、均質化した。熱処理後の一次焼成体の鉄
含有量を測定した結果は3ppmであり、実施例12と
して表2に示した。次いで、Mgが100ppmになる
ようにマグネシウム塩水溶液を用いてMgイオンを含浸
し、水素雰囲気中1800℃で2時間焼成して焼結し
た。得られた各焼結体のFe濃度を化学分析により、ま
た、相対密度を測定した。その結果を表2に示した。な
お、比較例2として熱処理をすることなく焼結した焼結
体の結果も表2に示した。
【0026】
【表2】
【0027】上記の実施例及び比較例の結果から、多孔
質の一次焼成体をHC1を含む雰囲気下で熱処理して純
化した後は、再び焼結のため焼成を経ても、熱処理後の
純化の効果が維持されていることが確認できた。また、
γ−アルミナを含むアルミナ粉末を原料にした場合は、
前記実施例1〜11のα−アルミナ原料のみの原料より
も純化効果が向上することが分かる。また、純化のため
の熱処理に伴い、熱処理温度が約900〜1100℃の
範囲で焼結体密度が向上するが、1200℃以上では逆
に焼結体相対密度が低下することが分かる。
【0028】実施例21〜32 表3に示した条件でHCl雰囲気下で熱処理した以外
は、実施例12と全く同様にして焼結体を得た。得られ
た各焼結体について蒸発減量を測定し、更に、各焼結体
を表面付近、中間部及び中心部に切断3分割し、各部分
のそれぞれの相対密度を測定して表3に示した。また、
前記比較例2で熱処理することなく得られた焼結体につ
いて、同様に3分割して各相対密度を測定し、その結果
を表3に示した。
【0029】これらの結果からも、一次焼成体をHCl
雰囲気下で700℃以上で熱処理することにより、最終
的に得られる焼結体の相対密度と均質性が向上し、高密
度化と均質化を達成できることが明らかである。また、
1100℃以上の高温でのHCl含有雰囲気下熱処理
は、焼結体の均質性は向上するが、前記実施例12〜2
0でも明らかな通り、密度が低下することが分かる。
【0030】
【表3】
【0031】実施例33〜50及び比較例6〜7(低純
度原料) 住友化学(株)製の平均粒径1.0μmの易焼結アルミ
ナ粉末(商品名:AES−11E)100重量部に、ポ
リビニルアルコール2重量部、イオン交換水60重量部
を添加しスラリーを作製した。得られたスラリーをスプ
レードライヤーを用いて噴霧乾燥し、造粒粉を得た。造
粒粉をCIPを用いて1トン/cm2 の圧力で加圧成形
した後、旋盤加工して外径30mm、肉厚2mm、長さ
100mmの円管を製作した。この加工円管を1250
℃で2時間空気中で加熱し、バインダーを焼散して一次
焼成体を得た。得られた一次焼成体は気孔率60%で、
その気孔は連通していることが確認された。また、不純
物含有量を測定し比較例7として表4に示した。次い
で、一次焼成体を、窒素ガスとHClとを表4に示した
2 /HCl比率で混合したガス雰囲気下で表4に示し
た条件で熱処理を行った。得られた熱処理後の一次焼成
体について実施例1と同様に不純物含有量及び重量減少
量を測定した。その結果を表4に示した。
【0032】
【表4】
【0033】上記実施例及び比較例の結果から、易焼結
低純度アルミナ原料粉末による一次焼成体は、高純度ア
ルミナ粉末の一次焼成体に比してより高温で初めて実質
的に純化することが分かる。従って、高温におけるアル
ミナ蒸発量との兼ね合いで、原料粉末の純度を選択する
必要がある。また、熱処理雰囲気中のHC1ガス濃度は
低くても純化に有効であり、含有HClガスが希薄雰囲
気下ではアルミナ蒸発が抑制され、低純度原料粉末を用
い、高温熱処理を要する場合に好適であることが分か
る。
【0034】実施例51〜62及び比較例8 実施例1で用いたアルミナ粉末100重量部、イオン交
換水80重量部、すべり剤としてポリエチレンオキサイ
ド1重量部、バインダーのポリビニルアルコールを2重
量部をポットミルにて一昼夜分散混合してスラリーを調
製した。得られたスラリーをスプレードライヤーを用い
て造粒し、得られた造粒粉をラバープレスを用い1トン
/cm2 の圧力で、直径60mm、長さ110mmの円柱に
成形した。円柱成形体を大気中1000℃で2時間焼成
して一次焼成体を得た。得られた一次焼成体の気孔は連
通し、気孔率50%であった。一次焼成体を加工し、直
径50mm、長さ100mmの円柱とした。加工後の一次焼
成体を、塩化水素雰囲気下で処理温度を表5に示したよ
うに変化させて熱処理して純化、均質化した。次いで、
Mgが100ppmになるようにマグネシウム塩水溶液
を用いてMgイオンを含浸し、水素雰囲気中1850℃
で2時間焼成して焼結した。得られた各焼結体を表面付
近、中間部及び中心部に切断3分割し、各部分のそれぞ
れの相対密度を測定して表5に示した。また、一次焼成
体を熱処理せずにマグネシウムイオン含浸、焼結して得
られた焼結体について、同様に3分割して各相対密度を
測定し、その結果を表5に示した。
【0035】これらの結果から、α−アルミナのみの原
料粉末からなる一次焼成体も、HCl雰囲気下で700
℃以上で熱処理することにより、最終的に得られる焼結
体の相対密度と均質性が向上し、高密度化と均質化を達
成できることが明らかである。また、1100℃以上の
高温でのHCl含有雰囲気下熱処理は、焼結体の均質性
は向上するが、密度は低下することが分かる。
【0036】
【表5】
【0037】実施例63及び比較例9 実施例25及び比較例2で得られたアルミナ焼結体であ
るアルミナセラミックスの耐酸性を評価した。即ち、3
分割された各アルミナセラミックス片をダイヤモンドグ
ラインダーで加工した後、白金るつぼ中で1000℃に
保持したホウ酸ナトリウム溶融塩中に浸漬して、加工に
より形成されたダメージ槽を除去した。その後、ホウ酸
ナトリウムの溶融塩中から取り出し室温で放置して乾燥
した。乾燥後、セラミックス表面のホウ酸ナトリウム固
化物を温希塩酸中に浸漬して除去して、試料セラミック
ス片とした。上記のようにして作製した各試料セラミッ
クス片を、それぞれ30℃のフッ化水素酸中に所定時間
浸漬して溶出量を測定した。その結果を表6に示した。
【0038】
【表6】
【0039】上記実施例及び比較例より明らかなよう
に、一次焼成体をHClガス含有雰囲気下で熱処理して
焼成し焼結して得たアルミナセラミックスが、熱処理す
ることなく焼結したセラミックスに比し、耐酸性の向上
が著しいことが分かる。
【0040】
【発明の効果】本発明のアルミナ焼結体の製造方法は、
簡便な純化操作を組み込むことにより、アルカリ金属等
の不純物含有量を低減し高純度化すると共に、全体とし
て緻密化され均質性に優れる高密度なアルミナ焼結体を
得ることができ、特に、汚染源の発生に厳しい半導体製
造装置用部材や、長時間高温に置かれる金属蒸気レーザ
ー管に好適なアルミナ質セラミックスを製造することが
でき、工業上極めて有用である。更に、本発明で製造さ
れるアルミナ質セラミックスは、緻密化され耐酸性にも
優れ、各種厳しい条件下で処理される装置等の部材料と
して汎用性に富み、工業性が高い。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 35/10 C04B 65/64

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミナ焼結体の製造方法であって、
    (1)アルミナ原料粉末を用いて成形する成形工程、
    (2)成形工程で得られたアルミナ成形体から有機バイ
    ンダーを除去し、且つ、開気孔を残存させつつ焼成する
    一次焼成工程、(3)一次焼成体を塩化水素ガス含有雰
    囲気下で熱処理する熱処理工程、及び、(4)熱処理工
    程後、更に焼成して焼結する焼結工程からなることを特
    徴とするアルミナ焼結体の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記アルミナ原料粉末がサブミクロン微
    粉であり、前記一次焼成工程が800〜1000℃で焼
    成する請求項1記載のアルミナ焼結体の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記アルミナ原料粉末がミクロン微粉で
    あり、前記一次焼成工程が1000〜1200℃で焼成
    する請求項1記載のアルミナ焼結体の製造方法。
  4. 【請求項4】 熱処理工程が、700〜1400℃で処
    理する請求項1〜3記載のアルミナ焼結体の製造方法。
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