JP3073656B2 - 光沢性と加工耐食性に優れた透明樹脂フイルム被覆めっき鋼板 - Google Patents

光沢性と加工耐食性に優れた透明樹脂フイルム被覆めっき鋼板

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属クロムの光沢性と
加工耐食性に優れた透明樹脂フイルム被覆めっき鋼板に
関する。
【0002】
【従来の技術】金属クロムの被膜はその優れた光沢性の
ため屋内裸用途に数多く使用されているが、加工後めっ
きされる装飾クロムめっき品とステンレス鋼板が主で、
プレめっきのクロムめっき鋼板はほとんど見受けられな
い。これはクロムめっき被膜は下地に銅めっきやニッケ
ルめっきを施すことにより硬質で光沢性、耐傷付性や耐
食性に優れた被膜が得られるが、金属クロム自体硬く、
加工性に劣るためめっき後成形されるプレめっき鋼板に
適さないからである。
【0003】この欠点である加工耐食性を向上させるた
めに、めっきと熱拡散とを組み合わせた公開特許が、種
々開示されている。例えば、(1)特開昭61ー766
60は鋼板表面にニッケルで2〜10μmの厚さに被覆
した後、クロムを1〜10μmの厚さにめっきした鋼板
を800〜1200℃の温度で熱処理することにより耐
食性の優れた鋼板を得ている。また、(2)特開昭61
−79758では真空槽内でニッケルとクロムを続けて
蒸着、またはスパッタリング方法で、例えば厚さ10μ
mのニッケル層と厚さ23μmのクロム層を付着させた
後、更に合金化処理炉にてニッケルとクロムを地鉄に拡
散させて、Ni−Cr合金層を形成させた部分にステン
レスに劣らない光沢度のものを得ている。しかし、
(1)の方法の如く表面がクロムめっき層である鋼板を
一般的な保護ガス中で拡散処理した場合、Crの酸素親
和力が大きいためCrの酸化を抑止することは困難で変
色する。したがってこの酸化被膜を除去する必要があ
る。またいずれの方法もクロム厚さが2μm以上付着さ
せており、鋼板のめっきとしては長いめっき槽を要し経
済的でないという欠点を有している。
【0004】また、(3)特開平5−294911では
ニッケルめっき後、熱拡散し、さらに光沢ニッケルと光
沢クロムの2層めっきを行うことにより光沢性と耐食性
に優れたクロムめっき鋼板を得ている。この方法はめっ
き被膜量は少なく安価であるが、板厚が厚く加工歪みが
大きい用途は表層にクラックが入り易く、このクラック
により耐食性が低下するため、結果的に板厚が薄い鋼板
に較べ、厚い鋼板は拡散前のニッケルを多く付着させね
ばならず経済的でないという欠点を有している。
【0005】さらにめっき鋼板やステンレス鋼板に樹脂
被膜塗布や樹脂フイルムの被覆する公開特許も種々開示
されている。例えば(4)特開昭63−72379では
ステンレス鋼材の表面に透明な樹脂層を設けた後、さら
に該樹脂表面に親水性モノマー層を設けて、放射線同時
照射法によりグラフト重合させることを特徴とする指紋
付着防止性に優れた表面処理ステンレス鋼材の製造方法
が開示されている。しかし、この方法は苛酷な腐食環境
下で使用される用途を目的として開発されたもので、後
者は使用原板がステンレスで、かつ、樹脂被膜層および
その処理のためのコストが高価であり、経済的でないと
いう欠点を有している。
【0006】また、めっき鋼板に樹脂フイルムを被覆す
ることにより耐食性を付与し、かつ金属そのものの感じ
をだすことを目的として(5)特開昭53ー88077
が開示されている。これは厚さ1〜30μmの錫メッ
キ、ニッケルメッキ、クロムメッキ等の白輝性メッキ層
上に、透明接着剤を介して、厚さ15〜100μmのア
クリル、ポリフッ化ビニルや塩化ビニルの透明樹脂フイ
ルムを積層するもので、表層の透明樹脂フイルムにエン
ボスやスクラッチ模様を入れることにより下地の白輝性
めっきとあいまって、さらに意匠性のある透明樹脂フイ
ルム被覆鋼板を得ている。しかし、通常使用される表面
粗さのめっき原板を使用した場合、この方法により得ら
れる被膜の外観は白輝性はあるものの光沢性のあるめっ
き被膜は得られない。またクロムめっきの場合、厚さ1
μmのクロムめっきでも、クロムめっきの陰極電解析出
効率が低いため長い電解めっき槽を要し経済的でないと
いう欠点を有している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は安価で少なく
とも片面は光沢クロムの光沢性を有する加工耐食性に優
れた透明樹脂フイルム被覆めっき鋼板を提供することに
ある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
原板の粗度、光沢ニッケルめっき、光沢クロムめっきお
よび透明樹脂フイルム被膜条件が意匠性に及ぼす影響に
ついて種々研究した結果、原板粗さは光沢性のためには
小さいほど好ましいが、コイル搬送時の表面への疵付き
性や生産性の点で不経済となるため、原板に直接クロム
めっきを施す場合は原板表面の中心線平均粗さを0.1
μm以下、かつ最大粗さを1μm以下とする。さらに、
光沢の優れた表面にするために、ニッケルとクロムの2
層めっきを施す場合は原板の中心線平均粗さ0.2μm
以下である低炭素鋼板を使用する。上述の規定された表
面粗さのめっき原板を使用し直接または下地として厚さ
1〜3μmの光沢ニッケルめっきを介して金属Cr量で
50〜300mg/m2(比重を7.1とした場合、厚
さ0.0070〜0.042μmに相当する。)の光沢
クロムめっきを行い、さらに上層にクロメート処理を施
すことなく、直接ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹
脂、ポリプロピレン樹脂やフッ素樹脂などの透明樹脂フ
イルムを、または接着剤層を介してこれらのフイルムを
被覆し、約150〜300℃で焼き付けることにより金
属クロムの光沢を有し、加工耐食性に優れた安価な透明
樹脂フイルム被覆めっき鋼板が得られることを見いだし
た。
【0009】以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】本発明において使用される原板は一般に使
用されている低炭素鋼で焼鈍・調質圧延を行ったフルフ
ィニッシュ仕上げの板厚0.1〜1.5mm、中心線平
均粗さ0.1μm、かつ最大粗さが1μm以下または中
心線平均粗さ0.2μm以下の冷延鋼板である。原板板
厚は厚いほど、折曲げ加工時の部分的な加工歪みに伴う
光沢や耐食性の劣化が大きいので1.5mm以下、好ま
しくは1.0mm以下である。また、原板の表面粗度は
製品の意匠性に大きな影響を与えるが、特に下地に光沢
ニッケルを施さない場合、光沢クロムめっきによる光沢
性向上に効果がある中心線平均粗さで0.1μm以下か
つ最大粗さが1μm以下が好ましい。下地めっきとして
光沢ニッケルを施す場合は原板の中心線平均粗さが0.
2μm以下とするが、より好ましくは中心線平均粗さ
0.1μm以下の冷延鋼板である。
【0011】図1は低炭素鋼板上に、光沢ニッケルめっ
きを施すことなく、めっき量200mg/m2の光沢ク
ロムめっきを直接行った場合の表面光沢に及ぼす原板粗
さの影響を記したものである。光沢度は日本電色(株)
製光沢計“VG−2PD”(反射角度:20゜)で測定
した値であるが原板の平均粗さが0.1μmを越えると
めっきしても光沢度の高い被膜が得られない。原板粗さ
は光沢性のためには小さいほど好ましいが、0.03μ
m以下であるとコイル搬送時の表面への疵付き性や生産
性の点で不経済である。
【0012】また、原板の上に光沢ニッケルめっきと光
沢クロムめっきの2層めっきを施す場合においても、原
板の平均粗さが0.2μm以上であると光沢ニッケルめ
っきを行っても目的とする光沢性のある鋼板が得られな
い。従って原板の中心線平均粗さは0.2μm以下、好
ましくはニッケルめっきを施さないめっき原板と同じく
0.10μm以下のものが推奨される。
【0013】下地として光沢ニッケルめっきを施す場合
は一般的なワット浴やスルファミン酸浴、その他いずれ
の光沢ニッケルめっき浴を用いてもよいが、厚さ1〜3
μmめっきする。光沢ニッケルめっきのめっき厚が光沢
に及ぼす影響は添加する光沢剤の種類と量により異なる
が一般的に1μm以下であると所定の光沢が得られな
い。また3μm以上付着させてもその効果は飽和し不経
済であるので1〜3μmの範囲とする。
【0014】光沢のあるめっき原板または下地として光
沢ニッケルめっきしためっき鋼板の片面または両面に電
解クロムめっきを施すが、表1の原板サンプルNo.2
をめっき原板とした場合のクロムめっき量が光沢に及ぼ
す影響を図2に示す。クロムめっき量は50〜300m
g/m2が好ましい。50mg/m2以下では光沢クロム
としての光沢性が確保できず、また300mg/m2
上では光沢度に及ぼす効果が飽和に達し、またストリッ
プ状でのめっきとして生産性が低下し経済的でないから
である。より好ましくは光沢があり、かつ経済的な10
0〜200mg/m2である。この光沢クロムめっき条
件については特に規定されるものでなく、一般に用いら
れているTFS(ティンフリースチール)用のめっき浴
やサージェント浴を用いることができる。クロムオキサ
イドはクロムの酸素親和力が強いため必然的に生成し、
この被膜は耐食性向上に寄与するが過剰であると光沢を
劣化させるので30mg/m2以下、好ましくは20m
g/m2以下である。
【0015】上述の表面処理した鋼板に一般的に用いら
れるクロメート処理やリン酸処理を施すことなく、熱可
塑性の性質を有する厚さ10〜50μmのポリエステ
ル、ポリエチレンやフッ化エチレンなどの単層の透明樹
脂フイルム、またはこの樹脂フイルムより低融点の接着
剤層を有する透明樹脂フイルムを被覆した後、この鋼板
を100〜300℃に加熱し、フイルムを熱融着させ
る。
【0016】フイルムの厚さを規定した理由は10μm
以下であるとコイル被覆ラインにおいて、経済的速度で
均一に被覆することが困難となり、また50μm以上に
なると経済的でなくなるとともに透明フイルムといえど
も光沢度が低下するからである。
【0017】
【実施例】以下、本発明の実施例について詳細に説明す
る。
【0018】実施例1 表1に示す表面粗度が異なる3種類の板厚0.4mmの
低炭素鋼板を供試材としてアルカリ脱脂及び硫酸酸洗に
よる清浄化処理と活性化処理を施した後、下記低濃度の
クロムめっき浴にてめっきした200mg/m2の光沢
クロムめっき鋼板を被覆処理原板として、表2に示す8
種類の透明フイルム樹脂を被覆し、さらに板温を150
〜300℃に加熱し、熱融着させた。これらの特性評価
はフイルムの密着性、光沢度と耐食性で評価した。その
評価方法と結果を下記および表3に示すが、色調はステ
ンレスに類似し、光沢性と加工耐食性に優れた樹脂フイ
ルム被覆めっき鋼板が得られた。
【0019】なお、比較例9はクロムめっき鋼板に透明
樹脂フイルムの被覆を施さないもの、また比較例10は
フイルム被覆後の加熱温度が低い場合で、前者は耐食
性、後者は密着性が劣った。比較例11と12は原板表
面の最大粗さが規定した値より高い、特に比較例12は
通常ブリキ用などのめっき原板として使用されているも
のでいずれも光沢度が劣った。
【0020】
【表1】
【0021】クロムめっき条件 めっき浴組成 無水クロム酸 :100g/l 硫酸 :0.4g/l ホウフッ化水素酸:0.4g/l 電解条件 PH :0.1 温度 :50℃ 電流密度:60A/dm2
【0022】
【表2】
【0023】フイルム密着強度試験 樹脂フイルム積層鋼板のフイルムにカッターナイフを用
いて素地に達するまで1mm間隔の碁盤目の疵を入れ、
次いで碁盤目模様の中心にエリクセン試験機で6mmの
張り出しを行い、セロテープを用いて碁盤目張り出し部
のフイルムの剥離状態を観察した。 判定 「◎」:剥離なし 「△」:クロス部の一部が剥離 「×」:1mm各の1個以上が剥離
【0024】光沢度評価方法:日本電色(株)製 光
沢計“VG−2PD”(反射角度:20゜)光沢度を測
定し、結果を「◎」「○」「△」「×」で表示した。そ
の意味するところは下記に準じた。 「◎」:光沢度; 901以上 「○」:光沢度; 701〜900 「△」:光沢度; 501〜700 「×」:光沢度; 500以下
【0025】耐食性評価方法 樹脂フイルムを被覆(一部はクロムめっきのみ)した鋼
板を 1)大きさ5x12cmのサンプルを内側曲げ半径1m
mで90度折曲げ加工したもの 2)ブランク径88mm、絞り比 2で成形したカップ
状のもの の2種類のサンプルを塩水噴霧試験(JIS Z237
1)に供した。評価は未加工部を除いて、塩水噴霧72
時間後の赤錆発生面積比を測定し、結果を「◎」「○」
「△」「×」で表示した。その意味するところは下記に
準じた。 「◎」:0 〜0.02%未満[耐食性;優] 「○」:0.02〜0.05%未満 「△」:0.05〜0.1%未満 「×」:0.1%以上 [耐食性;劣]
【0026】
【表3】
【0027】実施例2 表4に示す4種類の低炭素鋼板を供試材としてアルカリ
脱脂および硫酸酸洗による清浄化処理と活性化処理を施
した後、下記ワット浴にて1.5μmの光沢ニッケルめ
っきを行い、さらに水洗後、乾燥することなく実施例1
で記した条件で付着量100〜200mg/m2の光沢
クロムめっきを行った。このめっき鋼板に厚さ16μm
のポリエステル樹脂フイルムを被覆した後、板温を24
0℃に加熱し、被覆したフイルムに密着性を付与した。
フイルム被覆めっき鋼板の特性評価は密着性、光沢度と
耐食性で評価し、その結果を表5に示す。めっき原板の
板厚が厚いほど90度折曲げ加工部のフイルムの伸び率
は大きくなるが塩水噴霧試験72時間ではいずれのサン
プルも錆の発生は認められなかった。実施例5は光沢ニ
ッケルに直接、透明樹脂フイルム被覆をしたもので外観
は金属クロムのごとき白輝性ではないが黄味がかった光
沢のものが得られた。比較例6は光沢ニッケルと光沢ク
ロムめっきは実施例と同様に処理したが透明樹脂フイル
ムを被覆しない、また、比較例7は厚さ3μmの無光沢
ニッケルめっき後、非酸化性雰囲気中で550℃、5時
間熱拡散し、さらに厚さ1.5μmの光沢ニッケルめっ
きと光沢クロムめっきを実施例と同様に処理したが、め
っき原板が厚く、加工により、めっき層にクラックが生
じ、透明樹脂フイルム被覆をしていないため加工部の耐
食性が劣った。
【0028】
【表4】
【0029】光沢ニッケルめっき条件 ワット浴組成 硫酸ニッケル:240 g/l 塩化ニッケル: 45 g/l ほう酸 : 30 g/l 光沢剤 : 添加 電解条件 PH :4.3 温度 :50℃ 電流密度:6 A/dm2
【0030】使用樹脂フイルム 1)帝人(株)製 厚さ:16μmのポリエステル樹脂
フイルム
【0031】評価方法 フイルム密着試験、光沢度;実施例1に準じた。耐食性
の評価は90度折曲げと平板部(未加工部)で行った
が、その評価方法は実施例1に準じた。
【0032】
【表5】
【0033】
【発明の効果】原板表面の粗さを規定した低炭素鋼板の
表面に直接、または下地として光沢ニッケルめっきを施
した表面に光沢クロムと透明樹脂フイルムを被覆した鋼
板は安価で光沢性と加工耐食性に優れ、屋内裸用鋼板と
して用いることができる。
【0034】
【図面の簡単な説明】
【図1】光沢クロムめっき後の光沢に及ぼすめっき原板
の中心線平均粗さの影響を示す図面である。
【図2】表面光沢に及ぼす光沢クロムめっき厚さの影響
を示す図面である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C25D 1/00 - 7/12 B32B 15/08

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 めっき原板表面の平均粗さが0.1μm
    以下、かつ最大粗さが1μm以下である低炭素鋼板の表
    面に金属Cr量で50〜300mg/m2の光沢クロム
    めっき層と、さらにそのめっき表面の片面もしくは両面
    に熱可塑性を有する厚さ10〜50μmの透明樹脂フイ
    ルムを熱融着させた光沢性と加工耐食性に優れた透明樹
    脂フイルム被覆めっき鋼板。
  2. 【請求項2】 前記樹脂フイルムが、この樹脂フイルム
    より融点の低い接着層を塗布した樹脂フイルムである請
    求項1記載のフイルム被覆めっき鋼板。
  3. 【請求項3】 めっき原板の平均粗さが0.2μm以下
    である低炭素鋼板の表面に光沢ニッケルめっきとそのニ
    ッケルめっき表面の片面もしくは両面に金属Cr量で5
    0mg〜300mg/m2の光沢クロムめっき層、さら
    にその光沢クロムめっき表面の片面もしくは両面に熱可
    塑性を有する厚さ10〜50μmの透明樹脂フイルムを
    熱融着させた光沢性と加工耐食性に優れた透明樹脂フイ
    ルム被覆めっき鋼板。
  4. 【請求項4】 めっき原板の平均粗さが0.2μm以下
    である低炭素鋼板の両面に光沢ニッケルめっきとそのニ
    ッケルめっき表面の片面に金属Cr量で50mg〜30
    0mg/m2の光沢クロムめっき層を有する片面光沢ニ
    ッケル、片面光沢クロムのめっき鋼板の少なくとも光沢
    クロムめっき面に熱可塑性を有する厚さ10〜50μm
    の透明樹脂フイルムを熱融着させた光沢性と加工耐食性
    に優れた透明樹脂フイルム被覆めっき鋼板。
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