JP3071496B2 - 高水素系すみ肉溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents
高水素系すみ肉溶接用フラックス入りワイヤInfo
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- JP3071496B2 JP3071496B2 JP3145169A JP14516991A JP3071496B2 JP 3071496 B2 JP3071496 B2 JP 3071496B2 JP 3145169 A JP3145169 A JP 3145169A JP 14516991 A JP14516991 A JP 14516991A JP 3071496 B2 JP3071496 B2 JP 3071496B2
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は造船、鉄骨、橋梁等の分
野で多用されているプライマー塗装鋼板の溶接に使用し
て、優れた耐ピット性が得られるいわゆる高水素系すみ
肉溶接用フラックス入りワイヤに関する。
野で多用されているプライマー塗装鋼板の溶接に使用し
て、優れた耐ピット性が得られるいわゆる高水素系すみ
肉溶接用フラックス入りワイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、ガスシールドアーク溶接用フラッ
クス入りワイヤは、その高能率性および良好な溶接作業
性が高く評価され、各種鋼構造物の製作に汎く使用され
つつある。しかしながら、鋼材の多くは発錆を防止する
ためにプライマーが塗装されており、特にすみ肉溶接に
おいては、溶接アーク熱により発生した水素や一酸化炭
素等のプライマー熱分解ガスが溶融金属中に侵入するこ
とによりビード表面にピットが発生しやすい。この傾向
は上記熱分解ガスの発生量が多いウオッシュプライマー
塗装鋼板の溶接において非常に大きく、グラインダーに
よるプライマー除去あるいは手直しが必要となり作業能
率が悪いという問題がある。
クス入りワイヤは、その高能率性および良好な溶接作業
性が高く評価され、各種鋼構造物の製作に汎く使用され
つつある。しかしながら、鋼材の多くは発錆を防止する
ためにプライマーが塗装されており、特にすみ肉溶接に
おいては、溶接アーク熱により発生した水素や一酸化炭
素等のプライマー熱分解ガスが溶融金属中に侵入するこ
とによりビード表面にピットが発生しやすい。この傾向
は上記熱分解ガスの発生量が多いウオッシュプライマー
塗装鋼板の溶接において非常に大きく、グラインダーに
よるプライマー除去あるいは手直しが必要となり作業能
率が悪いという問題がある。
【0003】これに対し、溶接材料面からは、例えば特
開平1−91996号公報や特公平2−42595号公
報のフラックス入りワイヤが提案されている。また、本
発明者等も先に特開平1−262096号公報のフラッ
クス入りワイヤを提案した。これらはいずれもフラック
ス中に各種の水素源化合物を含有しており、これによ
り、溶融金属中の水素を著しく過飽和にし、溶融金属か
らのガス放出速度を速くして溶融金属の凝固前にガスを
放出させることによってピットの発生を防止するという
いわゆる高水素系すみ肉溶接用フラックス入りワイヤで
ある。しかし、溶接施工現場においては、プライマーの
膜厚管理が不十分であったり、溶接速度を上げて行なう
ことが多く、さらに耐ピット性の改善要望が強い。
開平1−91996号公報や特公平2−42595号公
報のフラックス入りワイヤが提案されている。また、本
発明者等も先に特開平1−262096号公報のフラッ
クス入りワイヤを提案した。これらはいずれもフラック
ス中に各種の水素源化合物を含有しており、これによ
り、溶融金属中の水素を著しく過飽和にし、溶融金属か
らのガス放出速度を速くして溶融金属の凝固前にガスを
放出させることによってピットの発生を防止するという
いわゆる高水素系すみ肉溶接用フラックス入りワイヤで
ある。しかし、溶接施工現場においては、プライマーの
膜厚管理が不十分であったり、溶接速度を上げて行なう
ことが多く、さらに耐ピット性の改善要望が強い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明はウオ
ッシュプライマー塗装鋼板の溶接に使用した場合でも十
分な耐ピット性が得られる高水素系すみ肉溶接用フラッ
クス入りワイヤを提供することを目的とする。
ッシュプライマー塗装鋼板の溶接に使用した場合でも十
分な耐ピット性が得られる高水素系すみ肉溶接用フラッ
クス入りワイヤを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明の要旨は、
鋼製のワイヤ外皮の内側に水素源化合物を含有すること
により溶着金属の拡散性水素量を20から50ml/1
00gとするフラックスを充填後、伸線加工してなる高
水素系すみ肉溶接用フラックス入りワイヤにおいて、ワ
イヤ全重量に対して鋼製外皮からのS量とフラックスか
らのS量および残留伸線潤滑剤からのS量の総和が0.
010から0.025重量パーセント、かつ上記残留伸
線潤滑剤からのS量が0.003重量パーセント以上で
あることを特徴とする高水素系すみ肉溶接用フラックス
入りワイヤにある。
鋼製のワイヤ外皮の内側に水素源化合物を含有すること
により溶着金属の拡散性水素量を20から50ml/1
00gとするフラックスを充填後、伸線加工してなる高
水素系すみ肉溶接用フラックス入りワイヤにおいて、ワ
イヤ全重量に対して鋼製外皮からのS量とフラックスか
らのS量および残留伸線潤滑剤からのS量の総和が0.
010から0.025重量パーセント、かつ上記残留伸
線潤滑剤からのS量が0.003重量パーセント以上で
あることを特徴とする高水素系すみ肉溶接用フラックス
入りワイヤにある。
【0006】
【作用】以下に本発明を詳細に説明する。まず、図2に
高水素系フラックス入りワイヤを使用してウオッシュプ
ライマー塗装鋼板の水平すみ肉溶接を行なった場合に発
生するピット発生状況例を示す。図2において、1a、
1bは鋼板、2a、2bは溶接ビード、3は特に1st
ビード側に発生しやすくビード中央部位置に発生するサ
イズ2から5mm径程度の比較的大きなピット(以下ピ
ットAという)、4は1stビード側、2ndビード側
いずれにも同様に発生しビード止端部位置に発生するサ
イズ0.5から2mm径程度の比較的小さなピット(以
下ピットBという)である。
高水素系フラックス入りワイヤを使用してウオッシュプ
ライマー塗装鋼板の水平すみ肉溶接を行なった場合に発
生するピット発生状況例を示す。図2において、1a、
1bは鋼板、2a、2bは溶接ビード、3は特に1st
ビード側に発生しやすくビード中央部位置に発生するサ
イズ2から5mm径程度の比較的大きなピット(以下ピ
ットAという)、4は1stビード側、2ndビード側
いずれにも同様に発生しビード止端部位置に発生するサ
イズ0.5から2mm径程度の比較的小さなピット(以
下ピットBという)である。
【0007】従来の高水素系フラックス入りワイヤによ
ってもピットAの発生頻度は、汎用のフラックス入りワ
イヤに比較して非常に少なくなっていることから、ピッ
トAはワイヤの水素量を多くすることによってほとんど
防止できるピットである。しかし、ピットBについては
特にウオッシュプライマーの塗装膜厚が厚い部分や溶接
速度を上げた場合、あるいは小脚長である5から6mm
のビードを得ようとしてワイヤサイズを1.4mm径、
1.2mm径と小さくした場合に発生しやすくなり、ビ
ード外観の劣化や溶接部の疲労強度向上の観点からも問
題となるので、この種のワイヤの改善課題となってい
た。
ってもピットAの発生頻度は、汎用のフラックス入りワ
イヤに比較して非常に少なくなっていることから、ピッ
トAはワイヤの水素量を多くすることによってほとんど
防止できるピットである。しかし、ピットBについては
特にウオッシュプライマーの塗装膜厚が厚い部分や溶接
速度を上げた場合、あるいは小脚長である5から6mm
のビードを得ようとしてワイヤサイズを1.4mm径、
1.2mm径と小さくした場合に発生しやすくなり、ビ
ード外観の劣化や溶接部の疲労強度向上の観点からも問
題となるので、この種のワイヤの改善課題となってい
た。
【0008】そこで、本発明者らは、従来のこの種のフ
ラックス入りワイヤを使用した水平すみ肉溶接ビードの
止端部に特徴的に見られるピットBの発生防止対策につ
いて種々の試作ワイヤにより検討した。その過程で、ワ
イヤ成分としてTiO 2、SiO 2、Fe 2O 3などの
スラグ形成剤、C、Mnなどの脱酸剤および水素源化合
物を同一量含有させた試作ワイヤにおいてもピットBの
発生頻度がかなり異なる場合があることが注目された。
ラックス入りワイヤを使用した水平すみ肉溶接ビードの
止端部に特徴的に見られるピットBの発生防止対策につ
いて種々の試作ワイヤにより検討した。その過程で、ワ
イヤ成分としてTiO 2、SiO 2、Fe 2O 3などの
スラグ形成剤、C、Mnなどの脱酸剤および水素源化合
物を同一量含有させた試作ワイヤにおいてもピットBの
発生頻度がかなり異なる場合があることが注目された。
【0009】そこで、ピットBの発生原因はワイヤに含
有させる上記のような主成分よりも微量成分にあると考
え、鋼製外皮材、フラックス原料、伸線潤滑剤の種類お
よび伸線方法を変化させてその発生状況を詳細に調査し
た。その結果、特にSの作用に着目するに至ったもので
ある。即ち、鋼製外皮からのS量とフラックスからのS
量および残留伸線潤滑剤からのS量の総和(以下ワイヤ
のトータルS量という)がピットBの発生頻度と密接な
関係にあることがわかった。
有させる上記のような主成分よりも微量成分にあると考
え、鋼製外皮材、フラックス原料、伸線潤滑剤の種類お
よび伸線方法を変化させてその発生状況を詳細に調査し
た。その結果、特にSの作用に着目するに至ったもので
ある。即ち、鋼製外皮からのS量とフラックスからのS
量および残留伸線潤滑剤からのS量の総和(以下ワイヤ
のトータルS量という)がピットBの発生頻度と密接な
関係にあることがわかった。
【0010】図1にワイヤのトータルS量を変化させた
試作ワイヤ(ワイヤ径1.2mm)を使用し、ウオッシ
ュプライマー塗装鋼板の水平すみ肉溶接を行なった場合
の溶接作業性の観察結果とピット発生状況例を示す。表
1、表2にこの時のワイヤ組成および試験条件を示す。
試作ワイヤ(ワイヤ径1.2mm)を使用し、ウオッシ
ュプライマー塗装鋼板の水平すみ肉溶接を行なった場合
の溶接作業性の観察結果とピット発生状況例を示す。表
1、表2にこの時のワイヤ組成および試験条件を示す。
【表1】
【表2】
【0011】図1において、ワイヤのトータルS量を
0.025重量パーセント以下に抑えた場合のピット発
生防止効果は明らかである。ワイヤのトータルS量が増
加した場合、耐ピット性に対して悪影響をおよぼすの
は、プライマーの熱分解ガスおよび外部からの水素源化
合物によって溶融金属中に水素が十分に過飽和状態とな
っているところにS濃度の高い溶滴が供給されるのでH
2Sガスが生成しやすくなり、そしてビード止端部はビ
ード中央部よりも冷却速度が大きいので生成したH2S
ガスが脱出しきれないうちに溶融金属が凝固状態にな
り、ピットBが発生すると考えられる。
0.025重量パーセント以下に抑えた場合のピット発
生防止効果は明らかである。ワイヤのトータルS量が増
加した場合、耐ピット性に対して悪影響をおよぼすの
は、プライマーの熱分解ガスおよび外部からの水素源化
合物によって溶融金属中に水素が十分に過飽和状態とな
っているところにS濃度の高い溶滴が供給されるのでH
2Sガスが生成しやすくなり、そしてビード止端部はビ
ード中央部よりも冷却速度が大きいので生成したH2S
ガスが脱出しきれないうちに溶融金属が凝固状態にな
り、ピットBが発生すると考えられる。
【0012】次に、ワイヤのトータルS量をあまり少な
くした場合にもピットBは発生しやすくなることがわか
った。この原因として、図1はサイズ1.2mm径のワ
イヤを使用して脚長約5から6mmのビードが得られる
溶接条件で実施した結果であるが、このような小さな溶
融池を形成して溶接を行なうには、流動性のよい溶融金
属にして鋼板とのなじみを良好に維持しつつ溶接を進行
させる必要がある。ワイヤのトータルS量が0.010
重量パーセント未満のワイヤによる溶接状況を詳細に観
察すると、ワイヤの送給性に特に問題はなかったにもか
かわらず鋼板と接するビード止端部における溶融状態が
スムーズでなく、瞬間的に不安定になる場合があり、そ
の位置に対応する近傍でピットBの発生が見られた。こ
のことからSは溶融金属の粘性を小さくし、表面張力を
弱める効果があると考えられる。また、ビードのなじみ
性が劣化傾向を示すことやスパッタの発生量も多目にな
ることから、下限を0.010重量パーセントに限定し
た。
くした場合にもピットBは発生しやすくなることがわか
った。この原因として、図1はサイズ1.2mm径のワ
イヤを使用して脚長約5から6mmのビードが得られる
溶接条件で実施した結果であるが、このような小さな溶
融池を形成して溶接を行なうには、流動性のよい溶融金
属にして鋼板とのなじみを良好に維持しつつ溶接を進行
させる必要がある。ワイヤのトータルS量が0.010
重量パーセント未満のワイヤによる溶接状況を詳細に観
察すると、ワイヤの送給性に特に問題はなかったにもか
かわらず鋼板と接するビード止端部における溶融状態が
スムーズでなく、瞬間的に不安定になる場合があり、そ
の位置に対応する近傍でピットBの発生が見られた。こ
のことからSは溶融金属の粘性を小さくし、表面張力を
弱める効果があると考えられる。また、ビードのなじみ
性が劣化傾向を示すことやスパッタの発生量も多目にな
ることから、下限を0.010重量パーセントに限定し
た。
【0013】さらに本発明において、残留伸線潤滑剤か
らのS量を0.003重量パーセント以上に限定したこ
とは、ワイヤ表面にSを付着させておくことによってワ
イヤの送給性を良好にし、かつ通電チップの摩耗を緩和
し、アークを安定に維持したまま溶接を行なうためであ
る。ワイヤの送給性や通電性が瞬間的であれ不良になる
と、アークが乱れ溶融池が急激に変動しピットBのみな
らずピットAも発生しやすくなる。これは高水素系フラ
ックス入りワイヤのピット防止が溶融金属中に水素を過
飽和状態にすることによってその脱出を容易にすること
にあるため、溶融池が不安定になると凝固速度が瞬間的
に変動し、ガスの放出速度と溶融金属の凝固速度とのバ
ランスが崩れピットが発生すると考えられる。
らのS量を0.003重量パーセント以上に限定したこ
とは、ワイヤ表面にSを付着させておくことによってワ
イヤの送給性を良好にし、かつ通電チップの摩耗を緩和
し、アークを安定に維持したまま溶接を行なうためであ
る。ワイヤの送給性や通電性が瞬間的であれ不良になる
と、アークが乱れ溶融池が急激に変動しピットBのみな
らずピットAも発生しやすくなる。これは高水素系フラ
ックス入りワイヤのピット防止が溶融金属中に水素を過
飽和状態にすることによってその脱出を容易にすること
にあるため、溶融池が不安定になると凝固速度が瞬間的
に変動し、ガスの放出速度と溶融金属の凝固速度とのバ
ランスが崩れピットが発生すると考えられる。
【0014】一方、残留伸線潤滑剤からのS量の上限に
ついては特に限定しないが、あまり多くなるとチップに
潤滑剤がつまりやすく通電性に悪影響をおよぼし、同様
に溶融池を不安定にするので0.020重量パーセント
以下に少なくすることが好ましい。上記ワイヤのトータ
ルS量を調整する手段としては、鋼製外皮、フラックス
原料の選択および伸線潤滑剤の種類(S成分の割合、粒
度)、伸線工程の工夫(カセットローラ伸線、伸線速
度、ワイヤの清浄化処理)等により行なうことができ
る。
ついては特に限定しないが、あまり多くなるとチップに
潤滑剤がつまりやすく通電性に悪影響をおよぼし、同様
に溶融池を不安定にするので0.020重量パーセント
以下に少なくすることが好ましい。上記ワイヤのトータ
ルS量を調整する手段としては、鋼製外皮、フラックス
原料の選択および伸線潤滑剤の種類(S成分の割合、粒
度)、伸線工程の工夫(カセットローラ伸線、伸線速
度、ワイヤの清浄化処理)等により行なうことができ
る。
【0015】なお、本発明において、フラックス中に含
有させる水素源化合物とは、TiやZr等の金属水素化
合物、Fe−Ti,Mg 2Ni等の金属合金の水素化合
物、澱粉やセルロシン等の有機物、マイカやセリサイト
等の含水鉱物、FeやNiベースの水素吸蔵合金、珪酸
ソーダや珪酸カリ等の水ガラス成分などのフラックス原
料でよく特に限定するものではない。しかし、高水素系
すみ肉溶接用フラックス入りワイヤとは、上記のような
水素源化合物を必須成分として含有し、これとフラック
ス原料の吸湿水分やワイヤに付着した水分等により溶着
金属の拡散性水素量が20から50ml/100g(J
IS Z3118、ガスクロマトグラフ法に準拠した測
定試験による)となる非常に水素量の高いフラックス入
りワイヤに限定され、このような高水素系のフラックス
入りワイヤにおけるワイヤのト−タルS量がおよぼす悪
影響について解決したものである。
有させる水素源化合物とは、TiやZr等の金属水素化
合物、Fe−Ti,Mg 2Ni等の金属合金の水素化合
物、澱粉やセルロシン等の有機物、マイカやセリサイト
等の含水鉱物、FeやNiベースの水素吸蔵合金、珪酸
ソーダや珪酸カリ等の水ガラス成分などのフラックス原
料でよく特に限定するものではない。しかし、高水素系
すみ肉溶接用フラックス入りワイヤとは、上記のような
水素源化合物を必須成分として含有し、これとフラック
ス原料の吸湿水分やワイヤに付着した水分等により溶着
金属の拡散性水素量が20から50ml/100g(J
IS Z3118、ガスクロマトグラフ法に準拠した測
定試験による)となる非常に水素量の高いフラックス入
りワイヤに限定され、このような高水素系のフラックス
入りワイヤにおけるワイヤのト−タルS量がおよぼす悪
影響について解決したものである。
【0016】また、水素源化合物以外のフラックス成分
としては、TiO 2を主成分としSiO 2、鉄酸化物、
Mn酸化物等のスラグ剤、Na、K等のアーク安定剤、
C,Mn等の脱酸剤、あるいは溶接金属の材質向上のた
めにNi、Mo等の合金剤を含有させることができ、フ
ラックス充填率は15から30重量パーセントの範囲に
あることが好ましい。なおワイヤの断面構造については
例えば図3(a)、(b)、(c)、(d)に示すよう
ないずれの形状でもよく特に限定されるものではない。
としては、TiO 2を主成分としSiO 2、鉄酸化物、
Mn酸化物等のスラグ剤、Na、K等のアーク安定剤、
C,Mn等の脱酸剤、あるいは溶接金属の材質向上のた
めにNi、Mo等の合金剤を含有させることができ、フ
ラックス充填率は15から30重量パーセントの範囲に
あることが好ましい。なおワイヤの断面構造については
例えば図3(a)、(b)、(c)、(d)に示すよう
ないずれの形状でもよく特に限定されるものではない。
【0017】
【実施例】以下に実施例により本発明の効果をさらに具
体的に示す。表3に示す化学成分の帯鋼(S1、S2)
を用いて、フラックス入りワイヤを製造する通常の成
形、フラックス充填、伸線、巻取りの各工程を経て表4
に示す組成のフラックス入りワイヤ(W1からW10)
を試作した。なお、ワイヤの断面構造は図3(a)に示
す形状である。ワイヤのトータルS量は、帯鋼のS量と
MoS 2の含有量を変化させた伸線潤滑剤を使用するこ
と、伸線工程でのカセットロールの部分的使用および巻
取り工程での機械的清浄化処理などにより調整した。
体的に示す。表3に示す化学成分の帯鋼(S1、S2)
を用いて、フラックス入りワイヤを製造する通常の成
形、フラックス充填、伸線、巻取りの各工程を経て表4
に示す組成のフラックス入りワイヤ(W1からW10)
を試作した。なお、ワイヤの断面構造は図3(a)に示
す形状である。ワイヤのトータルS量は、帯鋼のS量と
MoS 2の含有量を変化させた伸線潤滑剤を使用するこ
と、伸線工程でのカセットロールの部分的使用および巻
取り工程での機械的清浄化処理などにより調整した。
【表3】
【表4】
【0018】次に、板厚12.7mm×幅150mm×
長さ1500mmのSM−50B(市販のウオッシュプ
ライマーを塗装、膜厚15から30μm)を図4(a)
に示す試験片形状に仮組し(上板端面ガスカット、加圧
状態で仮付溶接、ギャップ約0mm)、サイズ1.2m
m径のワイヤは220A−29から30V−45cm/
min、サイズ1.4mm径のワイヤは240A−29
から30V−50cm/min(いずれもDC、ワイヤ
+)、ワイヤ突出し長さ20から25mm、シールドガ
ス流量20l/minの溶接条件で図4(b)に示すよ
うに1st側、次いで2nd側の水平すみ肉溶接を行な
った。表4に示した各ワイヤについての溶接試験結果を
表5にまとめて示す。
長さ1500mmのSM−50B(市販のウオッシュプ
ライマーを塗装、膜厚15から30μm)を図4(a)
に示す試験片形状に仮組し(上板端面ガスカット、加圧
状態で仮付溶接、ギャップ約0mm)、サイズ1.2m
m径のワイヤは220A−29から30V−45cm/
min、サイズ1.4mm径のワイヤは240A−29
から30V−50cm/min(いずれもDC、ワイヤ
+)、ワイヤ突出し長さ20から25mm、シールドガ
ス流量20l/minの溶接条件で図4(b)に示すよ
うに1st側、次いで2nd側の水平すみ肉溶接を行な
った。表4に示した各ワイヤについての溶接試験結果を
表5にまとめて示す。
【表5】
【0019】試験No.1からNo.5は本発明ワイヤ
(W1からW5)を使用したことにより、耐ピット性、
溶接作業性とも良好であった。これに対し、No.6か
らNo.10は本発明のワイヤを使用しない比較例であ
る。No.6(W6)は、水素源化合物を含有しないフ
ラックスを充填したことにより、溶着金属の拡散性水素
量が20ml/100g未満であり、ピットA、ピット
Bともビード全線にわたって発生した。No.7、N
o.8、No.9はワイヤ(W7からW9)のトータル
S量が0.025重量パーセント超と多すぎるためにピ
ットBの発生が多く、またピットAも発生しやすくなっ
ている。なお、No.7は残留伸線潤滑剤からのS量が
多すぎること(即ち潤滑剤の付着量大)により、アーク
がやや不安定でビード形状が劣化した。No.10はワ
イヤ(W10)の表面に付着している残留伸線潤滑剤か
らのS量が0.003重量パーセント未満と少なすぎる
ために、ワイヤ送給性が劣り、溶融池がかなり不安定に
なり、これにともないピットAおよびピットBが多発
し、またスパッタの発生量が多くビード形状も劣化し
た。
(W1からW5)を使用したことにより、耐ピット性、
溶接作業性とも良好であった。これに対し、No.6か
らNo.10は本発明のワイヤを使用しない比較例であ
る。No.6(W6)は、水素源化合物を含有しないフ
ラックスを充填したことにより、溶着金属の拡散性水素
量が20ml/100g未満であり、ピットA、ピット
Bともビード全線にわたって発生した。No.7、N
o.8、No.9はワイヤ(W7からW9)のトータル
S量が0.025重量パーセント超と多すぎるためにピ
ットBの発生が多く、またピットAも発生しやすくなっ
ている。なお、No.7は残留伸線潤滑剤からのS量が
多すぎること(即ち潤滑剤の付着量大)により、アーク
がやや不安定でビード形状が劣化した。No.10はワ
イヤ(W10)の表面に付着している残留伸線潤滑剤か
らのS量が0.003重量パーセント未満と少なすぎる
ために、ワイヤ送給性が劣り、溶融池がかなり不安定に
なり、これにともないピットAおよびピットBが多発
し、またスパッタの発生量が多くビード形状も劣化し
た。
【0020】
【発明の効果】以上のように、本発明の高水素系すみ肉
溶接用フラックス入りワイヤは、ウオッシュプライマー
塗装鋼板のすみ肉溶接で問題となる耐ピット性を大幅に
改善したものである。従って、溶接速度のアップや欠陥
手直しの軽減ができ、溶接の高能率化に大きく貢献する
ものである。また、本発明によるフラックス入りワイヤ
は無機ジンクプライマー塗装鋼板や水で濡れた状態にあ
る鋼板を溶接しても良好な耐ピット性が得られるので種
々分野への適用拡大が期待できる。
溶接用フラックス入りワイヤは、ウオッシュプライマー
塗装鋼板のすみ肉溶接で問題となる耐ピット性を大幅に
改善したものである。従って、溶接速度のアップや欠陥
手直しの軽減ができ、溶接の高能率化に大きく貢献する
ものである。また、本発明によるフラックス入りワイヤ
は無機ジンクプライマー塗装鋼板や水で濡れた状態にあ
る鋼板を溶接しても良好な耐ピット性が得られるので種
々分野への適用拡大が期待できる。
【図1】ワイヤのトータルS量とピット発生状況との関
係を示す図
係を示す図
【図2】高水素系のフラックス入りワイヤを使用した場
合に発生するピット発生状況を示す模式側面図
合に発生するピット発生状況を示す模式側面図
【図3】ワイヤの断面構造を示す模式断面図
【図4】試験板形状を示す模式側面図
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭57−202997(JP,A) 特開 昭61−219496(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 35/368
Claims (1)
- 【請求項1】 鋼製のワイヤ外皮の内側に水素源化合物
を含有することにより溶着金属の拡散性水素量を20か
ら50ml/100gとするフラックスを充填後、伸線
加工してなる高水素系すみ肉溶接用フラックス入りワイ
ヤにおいて、ワイヤ全重量に対して、鋼製外皮からのS
量とフラックスからのS量および残留伸線潤滑剤からの
S量の総和が0.010から0.025重量パーセン
ト、かつ上記残留伸線潤滑剤からのS量が0.003重
量パーセント以上であることを特徴とする高水素系すみ
肉溶接用フラックス入りワイヤ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP3145169A JP3071496B2 (ja) | 1991-05-22 | 1991-05-22 | 高水素系すみ肉溶接用フラックス入りワイヤ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP3145169A JP3071496B2 (ja) | 1991-05-22 | 1991-05-22 | 高水素系すみ肉溶接用フラックス入りワイヤ |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH04344889A JPH04344889A (ja) | 1992-12-01 |
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Family Applications (1)
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JP (1) | JP3071496B2 (ja) |
-
1991
- 1991-05-22 JP JP3145169A patent/JP3071496B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH04344889A (ja) | 1992-12-01 |
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