JP3061649B2 - 抗アレルギー性調製乳 - Google Patents

抗アレルギー性調製乳

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JP3061649B2
JP3061649B2 JP3039087A JP3908791A JP3061649B2 JP 3061649 B2 JP3061649 B2 JP 3061649B2 JP 3039087 A JP3039087 A JP 3039087A JP 3908791 A JP3908791 A JP 3908791A JP 3061649 B2 JP3061649 B2 JP 3061649B2
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興三 川瀬
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、抗原性が低く、食餌ア
レルギーの予防及び治療に有効であり、コレステロール
代謝、鉄吸収等の栄養面でも優れた作用を有する抗アレ
ルギー性調製乳に関する。
【0002】
【従来の技術】乳児における食餌アレルギーの発生頻度
は、近年増加する傾向にあり、小児保健上重要な問題と
なっている。その予防及び治療には、一般に蛋白質の抗
原性を低減した抗アレルギー性調製乳が使用されてい
る。このため蛋白質源としては、蛋白質を加水分解して
抗原性を低減した分解物が主として使用されており、特
に、牛乳蛋白質の分解物である乳清蛋白質加水分解物又
はカゼイン加水分解物が使用されている例が多い。しか
しながら、これらの抗アレルギー性調製乳の大部分は乳
清蛋白質加水分解物又はカゼイン加水分解物を単独に使
用しており、通常の育児用調製乳におけるように栄養学
的な根拠に基づき、抗原性を十分低減した乳清蛋白質加
水分解物とカゼイン加水分解物とを混合し、その混合比
率を調整した抗アレルギー性調製乳は従来開発されてい
ない。
【0003】このことは、通常の育児用調製乳において
はアミノ酸バランス、蛋白質利用効率、ミネラル吸収、
コレステロール代謝等乳児の栄養生理に与える影響等に
ついての多くの研究に基づいて乳清蛋白質とカゼインと
の混合比率が設定されているのに対して、分解物を用い
た調製乳では、充分な栄養学的な研究がなされていなか
ったことに起因している。
【0004】したがって、従来から抗アレルギー用とし
て牛乳蛋白質の分解物を蛋白質源とした多くの調製乳及
びその製造法が報告されているが、それらの多くは、乳
清蛋白質加水分解物単独、カゼイン加水分解物単独、又
は乳清蛋白質とカゼインとを約20:80の割合で含む
牛乳蛋白質そのものを単に分解した牛乳蛋白質加水分解
物を単独の蛋白質源としたものであった。それらの幾つ
かを例示すれば次の通りである。
【0005】特公昭45ー31912号公報には、牛乳
を放線菌蛋白質分解酵素のごとき、強い蛋白質分解作用
をもつ酵素を使用して分解し、パッシブ・キュタネアス
・アナフィラキシス(Passive Cutaneo
us Anaphylaxis)反応を陰性ならしめる
ことを特徴とする液状乳製品及び粉乳の製造方法が開示
されている。
【0006】特公昭50ー156666号公報には、食
餌アレルギーの予防及び治療に有効な食品の蛋白質源と
して、苦味及び抗原性のない蛋白質分解物の製造法が開
示されている。
【0007】特公平1ー182745号公報には、乳清
蛋白質の部分加水分解物、同加水分解物を製造するため
の酵素的方法及び同加水分解物を含有する低アレルギー
性滋養特別食用乳製品が開示されている。
【0008】以上のように、抗原性が低く食餌アレルギ
ーの予防及び治療に有効であり、栄養学的にも優れた抗
アレルギー性調製乳及びその製造法について、エライザ
抑制試験法により測定した残存抗原活性が10 -4 以下で
ある乳清蛋白質加水分解物とカゼイン加水分解物の配合
比率を調製した調製乳は従来知られていなかった。
【発明が解決しようとする課題】前記特公昭45−31
912号公報の発明では、乳清蛋白質加水分解物とカゼ
イン加水分解物との割合について栄養学的な見地からの
配慮はなされておらず、その割合について、何等言及さ
れておらず、前記特公昭50−156666号公報の発
明では、蛋白質源の栄養学的意義についての考慮はされ
ておらず、前記特公平1−182745号公報の発明で
は、加水分解の対象は乳清蛋白質のみであり、乳清蛋白
加水分解物とカゼイン加水分解物とを配合するという
点については、何等考慮されていなかった。
【0009】本発明者等は、前記のような実情に鑑み
て、抗原性が低く、食餌アレルギーの予防及び治療に有
効であり、アミノ酸バランス、蛋白質利用効率、ミネラ
ル吸収、またはコレステロール代謝等、乳児の栄養生理
上、優れた抗アレルギー性調製乳を開発するために鋭意
研究を行い、本発明を完成した。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、下記の
(a)と(b)との混合物を窒素源として含む抗アレル
ギー性調製乳が提供される。 (a)少なくとも70%(重量、以下とくに断りのない
限り同じ)の純度の乳清蛋白質を酵素により加水分解し
て得られ、抗乳清蛋白質結成を用いたエライザ(ELISA:
Enzyme linked immunosorbent assay)抑制試験法により
測定した残存抗原活性が10-4以下である乳清蛋白質
酵素加水分解物、及び (b)少なくとも80%の純度のカゼインを酵素により
加水分解物して得られ、抗カゼイン血清を用いたエライ
ザ抑制試験法により測定した残存抗原活性が10-4以下
であるカゼインの酵素加水分解物。
【0011】上記の(a)と(b)との混合比率は、4
0〜80%:60〜20%であることが望ましい。
【0012】本発明の抗アレルギー性調製乳の原料とし
て使用する抗乳清蛋白質血清を用いたエライザ抑制試験
方法により測定した残存抗原活性が10-4以下である乳
清蛋白質の酵素加水分解物(以下、単に乳清蛋白質加水
分解物と記載する)及び抗カゼイン血清を用いたエライ
ザ抑制試験方法により測定した残存抗原活性が10-4
下であるカゼインの酵素加水分解物(以下、単にカゼイ
ン加水分解物と記載する)は、それぞれ次のようにして
製造される。
【0013】乳清蛋白質加水分解物は、ホエー等から常
法(例えば、ウルトラフィルトレーションイオン交換
法等)により分離精製した乳清蛋白質、望ましくは純
度が少なくとも70%の乳清蛋白質を、10%以下の濃
度で水又は精製水に溶解し、pHを6.5〜10に調整
し、通常使用されている蛋白質分解酵素を添加し、常法
により加水分解し、加熱して酵素を失活させるか、
ウルトラフィルトレーションにより酵素を除去し、残存
抗原活性が10-4以下の乳清蛋白質加水分解物を得る。
蛋白質分解酵素はパンクレアチン等の動物由来の酵素、
パパイン等の植物由来の酵素、又は細菌黴等の微生物
由来の酵素等、何れでも使用できる。
【0014】特に望ましい実施態様では、使用する酵素
はトリプシンを主体とし、キモトリプシン及びエキソペ
プチダーゼを含むパンクレアチン、パパイン若しくは
スペルギルス・オリーゼ(Aspergillus oryzae)由来のエ
ンドペプチダーゼ、又はバシラス・サチリス(Bacillus
subtilis) 由来のエンドペプチダーゼを用いる。これ
らの酵素はいずれも市販品であって良い。
【0015】これらの酵素の活性単位は、次の定義によ
る。ミルクカゼイン〔ハマーシュタイン(Hammarsten)、
メルク社製〕に酵素を作用させ、30℃で1分間に1μ
gのチロシンに相当するアリルアミノ酸フォリン試薬で
の呈色反応を示す酵素活性度を1単位とする(以下、こ
の単位をPUN単位と記載する)。
【0016】これらの酵素の使用量は、乳清蛋白質1g
当たりパンクレアチンが200〜2,000PUN単
位、望ましくは300〜1,000PUN単位、パパイ
ンが250〜2,000PUN単位、望ましくは300
〜1,000PUN単位、アスペルギルス・オリーゼ由
来のエンドペプチダーゼが200〜2,000PUN単
位、望ましくは300〜1,000PUN単位、バシラ
ス・サチリス由来のエンドペプチダーゼが200〜2,
000PUN単位、望ましくは300〜1,000PU
N単位が適当である。
【0017】前記乳清蛋白質の水溶液に、乳清蛋白質の
量に応じて前記の酵素の所定量を添加し、45〜52℃
の温度で3〜24時間、望ましくは6〜20時間加水分
解する。
【0018】次いで加熱処理により酵素を失活させるか
又はウルトラフィルトレーション処理により酵素を除去
する。加熱処理は70℃で10分間から140℃で2秒
間までの範囲で適宜行う。ウルトラフィルトレーション
処理は酵素が透過せずペプチドが透過でき回収が容易な
分画分子量15,000から2,000の範囲で行う。
その後セライト等により濾過し、噴霧乾燥又は凍結乾燥
し、乳清蛋白質加水分解物を得る。以上により得られた
乳清蛋白質加水分解物の残存抗原活性は10-4以下であ
る。
【0019】カゼイン加水分解物は、常法により分離
精製された牛乳カゼイン、望ましくは純度が少なくとも
80%のカゼインを12%の濃度で水に溶解し、pHを
7〜8.5に調整し、通常使用されている蛋白質分解酵
素を添加し、常法により加水分解し、残存抗原活性が1
-4以下のカゼイン加水分解物を得る。使用する蛋白
解酵素は、パンクレアチン等の動物由来の酵素、パパ
イン等の植物由来の酵素、若しくは細菌黴等の微生物
由来の酵素の単品又は混合物であって良い。
【0020】特に望ましい実施態様では、使用する酵素
はトリプシンを主体とし、キモトリプシン及びエキソペ
プチダーゼを含むパンクレアチン、パパイン若しくは
スペルギルス・オリーゼ (Aspergillus oryzae) 由来の
エンドペプチダーゼ、又はバシラス・サチリス(Bacillu
s subtilis) 由来のエンドペプチダーゼが用いられ
る。これらの酵素は、何れも市販品であって良い。これ
らの酵素の活性の単位は前記と同様の定義による。これ
らの酵素使用量は、カゼイン1g当たり、パンクレアチ
ンが200〜2,000PUN単位、望ましくは300
〜1,000PUN単位、パパインが250〜2,00
0PUN単位、望ましくは300〜1,000PUN単
位、アスペルギルス・オリーゼ由来のエンドペプチダー
ゼが200〜2,000PUN単位、望ましくは300
〜1,000PUN単位、バシラス・サチリス由来のエ
ンドペプチダーゼが200〜2,000PUN単位、望
ましくは300〜1,000PUN単位が適当である。
前記カゼインの水溶液に、カゼインの量に応じて前記酵
素の所定量を添加し、45〜52℃の温度で3〜24時
間、望ましくは6〜20時間加水分解する。次いで、加
熱処理により酵素を失活させるか又はウルトラフィルト
レーション処理により酵素を除去する。加熱処理は、7
0℃で10分間から140℃で2秒間までの範囲で適宜
行う。ウルトラフィルトレーション処理は、酵素が透過
せずペプチドが透過でき回収が容易な分画分子量15,
000から2,000の範囲で行う。その後セライト等
により濾過し、濾液を噴霧乾燥、は凍結乾燥し、カゼ
イン加水分解物粉末を得る。以上の方法により得られた
カゼイン加水分解物の残存抗原活性は10-4以下であ
る。
【0021】次に調製乳の製造法について記載する。
【0022】抗アレルギー性調製乳は、液状、粉末状の
何れでも良いが、特に望ましい粉末製品の製造法につい
て以下に例示する。前記により製造した乳清蛋白質加水
分解物とカゼイン加水分解物との混合比率が40〜80
%:60〜20%であって、最終製品の全固形物中に占
める蛋白質(等量)が5〜20%の割合にそれぞれの加
水分解物を計量し、水に5〜15%の濃度で溶解し、所
定のミネラル類を加えて40〜65℃に加熱し、更に脂
肪、糖、ビタミン類の所定量を混合し、高圧ホモジナイ
ザーにより乳化し、常法により加熱殺菌し、噴霧乾燥
し、粉乳を得る。
【0023】液状の抗アレルギー性調製乳についても、
粉末製品と同様に製造し得る。ただし、最終製品の濃度
が5〜40%の液状物となるため、腐敗防止の点から加
水分解物を溶解する際の液量を増加すること、及び加熱
殺菌を120℃以上、望ましくは135℃以上の温度で
行う必要がある。
【0024】以上のようにして得られた本発明の抗アレ
ルギー性調製乳は、後述する試験によれば、アレルギー
の予防及び治療に有効な性質を有し、更にアミノ酸バラ
ンス、蛋白質利用効率においても優れている。
【0025】次に試験例を示して本発明を詳述するが、
これら試験例において用いられた残存抗原活性の測定方
法及びアミノ酸組成測定方法の概要について先ず説明す
る。 (1)残存抗原活性の測定方法 エライザ抑制試験法により、次のようにして残存抗原活
性を測定した。96穴プレート(ヌンク社製)に乳清蛋
白質をコーティングし、洗浄し、ウサギ抗乳清蛋白質血
清と加水分解物試料の混合液をプレートの穴に供給して
反応させ、洗浄後アルカリホスファターゼ標識ヤギ抗ウ
サギIgG抗体(ツァイメド・ラボラトリー社製)を反
応させ、のち洗浄し、p−ニトロフェニル燐酸ナトリウ
ムを添加し、30分後に5N水酸化ナトリウムを添加し
て反応を停止させ、反応生成物をマイクロプレートリー
ダーで測定した(日本小児アレルギー学会誌、第1巻、
第36ページ、1987年)。 (2)アミノ酸組成の測定方法 トリプトファン、システイン及びメチオニン以外のアミ
ノ酸については、試料を6NのHClで110℃、24
時間加水分解し、トリプトファンについては水酸化バリ
ウムで100℃、22時間アルカリ分解し、システイン
及びメチオニンについては過蟻酸処理後6NのHClで
110℃、18時間加水分解し、夫々アミノ酸分析機
(日立製作所製:835型)により分析し、アミノ酸の
質量を求めた。 試験例1 この試験は乳清蛋白質分解物について残存抗原活性とア
レルギー性との関係を調べるために行われた。 (1)試料の調製 各種乳清蛋白質と酵素を用いて、種々の程度に抗原性を
残存する次の8種類の乳清蛋白質分解物を調製した。
【0026】試料1:純度75%の乳清蛋白質を10%
の濃度で水に溶解し、水酸化ナトリウムでpH8.0に
調整し、パンクレアチン(天野製薬社製)を乳清蛋白質
に対して1%の割合で添加し、50℃で2時間加水分解
し、85℃で10分間加熱処理を行った。この溶液をハ
イフロースーパーセルを用いて濾過し、凍結乾燥した。
得られた分解物の残存抗原活性は10-3.5であった。
【0027】試料2:純度75%の乳清蛋白質を10%
の濃度で水に溶解し、水酸化ナトリウムでpH8.0に
調整し、パンクレアチン(天野製薬社製)を乳清蛋白質
に対して3%の割合で添加し、50℃で6時間加水分解
し、85℃で10分間加熱処理した。この溶液をハイフ
ロースーパーセルを用いて濾過し、凍結乾燥した。この
分解物の残存抗原活性は10-4.5であった。
【0028】試料3:純度75%の乳清蛋白質を10%
の濃度で水に溶解し、水酸化ナトリウムでpH7.0に
調整し、パパイン(長瀬生化学工業社製)を乳清蛋白質
に対して3%の割合で添加し、50℃で6時間加水分解
し、85℃で10分間加熱処理を行った。この溶液をハ
イフロースーパーセルを用いて濾過し、凍結乾燥した。
この分解物の残存抗原活性は10-5であった。
【0029】試料4:純度75%の乳清蛋白質を10%
の濃度で水に溶解し、水酸化ナトリウムでpH7.5に
調整し、アクチナーゼ(科研製薬社製)を乳清蛋白質に
対して1%の割合で添加し、50℃で2時間加水分解
し、85℃で10分間加熱処理した。得られた溶液をハ
イフロースーパーセルを用いて濾過し、凍結乾燥した。
得られた分解物の残存抗原活性は10-4であった。
【0030】試料5:純度90%の乳清蛋白質を10%
の濃度で水に溶解し、水酸化ナトリウムでpH7.5に
調整し、パンクレアチン(天野製薬社製)を乳清蛋白質
に対して1%の割合で添加し、50℃で6時間加水分解
し、85℃で10分間加熱処理した。得られた溶液をハ
イフロースーパーセルを用いて濾過し、凍結乾燥した。
得られた分解物の残存抗原活性は10-3.5であった。
【0031】試料6:純度90%の乳清蛋白質を10%
の濃度で水に溶解し、水酸化ナトリウムでpH7.5に
調整し、パンクレアチン(天野製薬社製)を乳清蛋白質
に対して3%の割合で添加し、50℃で6時間加水分解
し、85℃で10分間加熱処理した。得られた溶液をハ
イフロースーパーセルを用いて濾過し、凍結乾燥した。
得られた分解物の残存抗原活性は10-4.5であった。
【0032】試料7:純度90%の乳清蛋白質を10%
の濃度で水に溶解し、水酸化ナトリウムでpH7.0に
調整し、パパイン(長瀬生化学工業社製)を乳清蛋白質
に対して3%の割合で添加し、50℃で6時間加水分解
し、85℃で10分間加熱処理した。得られた溶液をハ
イフロースーパーセルを用いて濾過し、凍結乾燥した。
得られた分解物の残存抗原活性は10-4であった。
【0033】試料8:純度90%の乳清蛋白質を10%
の濃度で水に溶解し、水酸化ナトリウムでpH7.5に
調整し、アクチナーゼ(科研製薬社製)を乳清蛋白質に
対して3%の割合で添加し、50℃で6時間加水分解
し、85℃で10分間加熱処理した。得られた溶液をハ
イフロースーパーセルを用いて濾過し、凍結乾燥した。
得られた分解物の残存抗原活性は10-5であった。 (2)試験方法 アレルギー性の測定方法は次の通りである。生後3週齢
の雄モルモット5匹を1群とした複数群に、1日に体重
100g当たり50mg、3週間連続的に各試料を経口
投与した。3週間後、静脈より純度90%以上の乳清蛋
白質の10%溶液を注入し、アナフィラキシーショック
の発現を観察し、次の基準によってアレルギー性を判定
した。
【0034】アレルギー性+3:アナフィラキシーによ
りショック死。
【0035】アレルギー性+2:ショックは起こすが死
には至らず。
【0036】アレルギー性+1:鼻擦りや立毛など弱い
症状を呈する。
【0037】アレルギー性0:特に、変化を認めず。 (3)試験結果 この試験の結果は表1に示すとおりであった。表1から
明らかなように、残存抗原活性が10-4以下の乳清蛋白
質分解物にはアレルギー性がないことが判明した。
【表1】 試験例2 この試験はカゼイン加水分解物について残存抗原活性と
アレルギー性との関係を調べるために行われた。 (1)試料の調製 各種カゼインと酵素を用いて、種々の程度に抗原性を残
存する次の4種類のカゼイン加水分解物を調製した。 試料1:純度85%の食用乳酸カゼイン(ニュージラン
ド・デイリー・ボード製)を10%の濃度で水に分散
し、水酸化ナトリウムでpHを8.0に調整しながら溶
解し、パンクレアチン(天野製薬社製)を食用乳酸カゼ
インに対して1%の割合で添加し、50℃で2時間加水
分解し、85℃で10分間加熱して酵素を失活させた。
この溶液をハイフロースーパーセルを用いて濾過し、の
ち凍結乾燥た。得られた分解物の残存抗原活性は10
-3.5であった。 試料2:純度85%の食用乳酸カゼイン(ニュージラン
ド・デイリー・ボード製)を10%の濃度で水に分散
し、水酸化ナトリウムでpHを8.0に調整しながら溶
解し、パンクレアチン(天野製薬社製)を食用乳酸カゼ
インにたいして1%の割合で添加し、50℃で6時間加
水分解し、85℃で10分間加熱して酵素を失活させ
た。この溶液をハイフロースーパーセルを用いて濾過
し、のち凍結乾燥した。得られた分解物の残存抗原活性
は10-4.5であった。 試料3:純度85%の食用乳酸カゼイン(ニュージラン
ド・デイリー・ボード製)を10%の濃度で水に分散
し、水酸化ナトリウムでpHを7.0に調整しながら溶
解し、パパイン(長瀬生化学工業社製)を食用乳酸カゼ
インにたいして1%の割合で添加し、50℃で6時間加
水分解し、85℃で10分間加熱して酵素を失活させ
た。この溶液をハイフロースーパーセルを用いて濾過
し、のち凍結乾燥した。得られた分解物の残存抗原活性
は10-4であった。 試料4:純度85%の食用乳酸カゼイン(ニュージラン
ド・デイリー・ボード製)を10%の濃度で水に分散
し、水酸化ナトリウムでpHを7.5に調整しながら溶
解し、アクチナーゼ(科研製薬社製)を食用乳酸カゼイ
ンに対して1%の割合で添加し、50℃で6時間加水分
解し、85℃で10分間加熱して酵素を失活させた。こ
の溶液をハイフロースーパーセルを用いて濾過し、のち
凍結乾燥した。得られた分解物の残存抗原活性は10-4
であった。 (2)試験方法 アレルギー性の測定法は試験例1と同一の方法によっ
た。 (3)試験結果 この試験の結果は表2に示すとおりであった。表2から
明らかなように、残存抗原活性が10-4以下のカゼイン
分解物にはアレルギー性がないことが判明した。
【表2】 試験例3 この試験は乳清蛋白質分解物とカゼイン加水分解物の配
合比率がコレステロール代謝に及ぼす影響を調べるため
に行われた。 (1)飼料の調製 表3に示す乳清蛋白質加水分解物とカゼイン加水分解物
との配合比率が異なる6種類のコレステロール添加飼料
を調製した。
【表3】 尚、乳清蛋白質加水分解物は、試験例1の試料6と同一
の方法で調製した試料を用いた。この乳清蛋白質加水分
解物の蛋白質含量(蛋白質量を窒素量×6.38として
算出した値)は81.0%であった。カゼイン加水分解
物は、試験例2の試料2と同一の方法で調製した試料を
用いた。このカゼイン加水分解物の蛋白質含量(蛋白質
量を窒素量×6.38として算出した値)は85.2%
であった。 (2)試験方法 生後1カ月のSD系雄ラットの5匹を1群として6群に
分け、各群に、蛋白質源として乳清蛋白質加水分解物、
カゼイン加水分解物、又はそれらの各種比率の混合物を
用いたコレステロール添加飼料を3週間摂取させた。1
週間毎に3回採血し、血清中のコレステロール濃度を、
コレステロールEテスト(和光純薬工業社製)を用いた
酵素法により測定した。各群、各週の血清中コレステロ
ール濃度の平均値を算出し、コレステロール値の変動を
試験した。 (3)試験結果 この試験の結果を表4に示した。飼料1、飼料2、飼料
3及び飼料4で飼育した群では、血清中のコレステロー
ル含量に顕著な増加は認められなかった。しかしなが
ら、飼料5及び飼料6で飼育した群ではコレステロール
が顕著に増加した。この試験の結果は、乳清蛋白質加水
分解物に血中コレステロール濃度の調節作用があるこ
と、その効果は乳清蛋白質加水分解物が全窒素量の40
%以上存在する場合に発揮されることを示している。
【表4】 試験例4 この試験は乳清蛋白質加水分解物とカゼイン加水分解物
の配合比率が鉄の吸収に及ぼす影響を調べるために行わ
れた。 (1)飼料の調製 表5に示す乳清蛋白質加水分解物とカゼイン加水分解物
の配合比率が異なる6種類の飼料を調製した。
【表5】 (2)試験方法 初体重100gのSD系雄ラット8匹を1群として6
群に分け、各群に蛋白質源として乳清蛋白質加水分解
物、カゼイン加水分解物、又はそれらの各種比率の混合
物を用いた飼料を50日間摂取させた。この間の糞尿中
の鉄量を原子吸光法により測定し、吸収率、尿中排泄量
及び体内保留率を求め、乳清蛋白質加水分解物とカゼイ
ン加水分解物の比率が鉄吸収に及ぼす影響を試験した。 (3)試験結果 この試験の結果を表6に示した。飼料1で飼育した群に
おける鉄の吸収率は他の群と比較して有意に低かった。
この試験の結果から、カゼイン加水分解物が鉄吸収に何
等かの効果を有すること、その効果を発現させるために
は、カゼイン加水分解物が少なくとも全窒素量の20%
以上存在する必要があること、が判明した。
【表6】
【実施例】次に実施例を示して本発明を更に詳述する
が、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。 実施例1 試験例1の試料3と同一の方法で純度75%の乳清蛋白
質を加水分解して得た残存抗原活性10-4の乳清蛋白質
加水分解物(蛋白質等量79.4%)10.6Kg、及
び試験例2の試料3と同一の方法で純度85%のカゼイ
ンを加水分解して得た残存抗原性10-4のカゼイン加水
分解物(蛋白質等量87.4%)6.4Kgを水140
Kgに溶解し、5Kgの水に溶解した所定量のミネラル
類を加え、60℃に加熱し、植物性脂肪25.0Kg、
マルツデキストリン50.0Kg、砂糖5.0Kg、及
び所定量のビタミン類を混合し、この混合液を高圧ホモ
ジナイザーで充分に乳化し、120℃で2秒間殺菌し、
噴霧乾燥し、約96Kgの粉末状の抗アレルギー性調製
乳を得た。この粉末抗アレルギー性調製乳の全蛋白質等
量に対する乳清蛋白質加水分解物の割合は60%であ
り、カゼイン加水分解物の割合は40%であった。ま
た、常法により測定した一般成分組成、及び前記の方法
により測定したアミノ酸組成の分析値は次のとおりであ
った。 一般成分組成 蛋白質(窒素量×6.38) 14.5% 脂肪 24.7% 炭水化物 55.3% 灰分 2.5% 水分 3.0% アミノ酸組成(粉末100g) L−アラニン 615mg L−アルギニン 440mg L−アスパラギン酸(L−アスパラギンを含む) 1405mg L−システイン 294mg L−グルタミン酸(L−グルタミンを含む) 2840mg リシン 268mg L−ヒスチジン 333mg L−イソロイシン 772mg L−ロイシン 1677mg L−リジン 1339mg L−メチオニン 300mg L−フェニルアラニン 576mg L−プロリン 977mg L−セリン 669mg L−スレオニン 696mg L−トリプトファン 264mg L−チロシン 414mg L−バリン 851mg 実施例2 試験例1の試料8と同一の方法で純度90%の乳清蛋白
質を加水分解して得た残存抗原活性10-5の乳清蛋白質
加水分解物(蛋白質等量85.1%)11.4Kg、及
び試験例2の試料4と同一の方法で純度85%のカゼイ
ンを加水分解して得た残存抗原活性10-4のカゼイン
分解物(蛋白質等量84.7%)14.0Kgを水1
300Kgに溶解し、25Kgの水に溶解した所定量の
ミネラル類を加え、60℃に加熱し、植物性脂肪37.
5Kg、マルツデキストリン105.0Kg、乳化剤、
及び所定量のビタミン類を混合し、この混合液を高圧ホ
モジナイザーで充分に乳化し、150℃で2.7秒間殺
菌し、200ml容のアセプティク・パックに無菌的に
充填し、7370個の液状抗アレルギー性調製を得
た。この液状抗アレルギー性調製乳の全蛋白質等量に対
する乳清蛋白質加水分解物の割合は45%であり、カゼ
イン加水分解物の割合は55%であった。また、常法に
より測定した一般成分組成、及び前記の方法により測定
したアミノ酸組成の分析値は次のとおりであった。 一般成分組成 蛋白質(窒素量×6.38) 1.40% 脂肪 2.59% 炭水化物 6.98% 灰分 0.35% アミノ酸組成(液体100g) L−アラニン 56.2mg L−アルギニン 47.3mg L−アスパラギン酸(L−アスパラギンを含む) 125.8mg L−システイン 26.1mg L−グルタミン酸(L−グルタミンを含む) 295.4mg リシン 25.8mg L−ヒスチジン 33.6mg L−イソロイシン 70.6mg L−ロイシン 156.4mg L−リジン 121.5mg L−メチオニン 28.2mg L−フェニルアラニン 57.0mg L−プロリン 105.1mg L−セリン 66.7mg L−スレオニン 60.5mg L−トリプトファン 24.9mg L−チロシン 33.5mg L−バリン 83.0mg
【発明の効果】本発明によって奏せられる効果は次のと
おりである。 (1)本発明の抗アレルギー性調製乳は、実質的にアレ
ルギー性がないので、食餌アレルギー疾患を有する乳幼
児の栄養補給に使用できる。 (2)本発明の抗アレルギー性調製乳は、実質的にアレ
ルギー性がないので、アレルギー素因を有する乳幼児の
食餌アレルギーの予防に使用できる。 (3)本発明の抗アレルギー性調製乳の摂取により、コ
レステロール値の上昇を防止することができる。 (4)本発明の抗アレルギー性調製乳の摂取により、ア
レルギー疾患を有する乳幼児における鉄の吸収率及び体
内保持率を正常に維持できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23C 9/00 - 9/16 A23J 3/08 - 3/10 A23J 3/30 - 3/34 A23L 1/305

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 次の(a)及び(b)、 (a)少なくとも70%(重量)の純度の乳清蛋白質を
    酵素により加水分解して得られ、抗乳清蛋白質結成を用
    いたエライザ(ELISA: Enzyme linked immunosorbent as
    say)抑制試験法により測定した抗原残存活性が10-4
    下である乳清蛋白質の酵素加水分解物、 (b)少なくとも80%(重量)の純度のカゼインを
    素により加水分解物して得られ、抗カゼイン血清を用い
    たエライザ抑制試験方法により測定した残存抗原活性が
    10-4以下であるカゼインの酵素加水分解物、 の混合物を窒素源とする抗アレルギー性調製乳。
  2. 【請求項2】 次の(a)及び(b)、 (a)少なくとも70%(重量)の純度の乳清蛋白質を
    酵素により加水分解して得られ、抗乳清蛋白質結成を用
    いたエライザ(ELISA: Enzyme linked immunosorbent as
    say)抑制試験方法により測定した抗原残存活性が10-4
    以下である乳清蛋白質の酵素加水分解物、 (b)少なくとも80%(重量)の純度のカゼインを
    素により加水分解物して得られ、抗カゼイン血清を用い
    たエライザ抑制試験方法により測定した残存抗原活性が
    10-4以下であるカゼインの酵素加水分解物、 の混合物を窒素源とし、それらの混合比率が40〜80
    %(重量):60〜20%(重量)である抗アレルギー
    性調製乳。
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