JP3059297B2 - 非晶質シリコン系半導体薄膜の形成方法 - Google Patents

非晶質シリコン系半導体薄膜の形成方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は気相反応を用いた非晶質
シリコン系半導体薄膜の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、例えば光起電力素子(太陽電池)
等に使用される水素化非晶質シリコン(a−Si:H)
等の非晶質半導体を形成する方法として、プラズマCV
D法(PCVD法)が多用されている。PCVD法にお
いては、原料の低圧気体ガスを導入し、電気的エネルギ
ーを加えてプラズマ状態を作り出し、反応を行わせて基
板上に半導体薄膜を形成する。電気的エネルギーを加え
る方法としては、電極間に直流電圧を印加してグロー放
電を行う直流グロー放電法、高周波電力を印加する高周
波グロー放電法等のグロー放電法が一般的である。
【0003】グロー放電法で作製される水素化非晶質シ
リコンはGDa−Siと呼ばれ、このGDa−Siの作
製に最も多用されているガスはモノシラン(SiH4
であり、このSiH4 をアルゴン(Ar)、ヘリウム
(He)等の不活性ガスや水素(H2 )で希釈したガス
が多く用いられる。
【0004】SiH4 を用いたGDa−Siには多量の
水素が含まれるが、この水素の中には、焼鈍(アニー
ル)を行うことにより、例えば図1に示すように、40
0℃〜500℃程度で容易に分離される遊離型水素と、
550℃〜800℃程度で分離される分散型水素とがあ
ることが知られている。
【0005】遊離型水素としては、ポリシラン(SiH
2 )nまたはクラスター化水素等が含まれ、強い光を当
て続けるとこれら遊離型水素が膜中を移動して欠陥が増
加して光導電率等が低下する、いわゆる、光劣化と呼ば
れる現象が生じることが知られている。
【0006】分散型水素としては、 孤立SiH、孤立
SiH2 (シリレン)、孤立SiH3(シリル)が代表
的であり、結合の切れの欠陥を終端する役割を果たして
いる。
【0007】光劣化を防止する方法としては、従来、基
板温度を高く設定して、膜中の水素量全体を減少させる
という方法が採られている。この従来方法によれば、ネ
ットワークの緻密化を図り、光劣化を現象できる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この従
来方法によれば、膜中水素としての分散型水素も少なく
なり、光学的バンドギャップが低下し、この光学的バン
ドギャップの低下に伴う光起電力素子としての開放電圧
の低下や、水素量全体の減少に伴う非晶質半導体中の欠
陥準位密度の増加を引き起こすという問題がある。
【0009】本発明が目的とするところは、開放電圧の
低下や欠陥準位密度の増加を伴わずに光劣化を防止でき
るようにした非晶質シリコン系半導体薄膜の形成方法を
提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、減圧下におけ
る放電分解による気相反応を用いて、所定の基板上に水
素化非晶質シリコン系半導体薄膜を形成する非晶質シリ
コン系半導体薄膜の形成方法であって、前記基板の温度
を400℃以上550℃以下とし、毎秒3Å以上の堆積
速度で水素化非晶質シリコン系半導体薄膜を1堆積工程
あたりに10Å以上300Å以下の膜厚で基板上に堆積
する堆積工程と、放電分解を停止した上で同じ基板温度
で1分以上放置して一部の水素を脱離させる脱水素工程
とを交互に繰り返すことを特徴とする。
【0011】
【作用】本発明においては、基板温度を高くするととも
に、膜堆積速度を毎秒3Å以上に高めることにより、
晶質シリコン系半導体薄膜が高速で形成され、これに伴
非晶質シリコン系半導体薄膜に多量の水素、特に、分
散型水素が取り込まれ、緻密な膜構造が形成される。ま
た、堆積工程に引き続いて脱水素工程を行うことによ
り、クラスター化水素等の遊離型水素を離脱させること
ができる。
【0012】更に、これらの工程を交互に繰り返すこと
により、1回の堆積膜厚を一定以下にして、短時間で効
率良く脱水素を行えるようになるとともに、各回の堆積
工程で形成された非晶質シリコン系半導体薄膜を均等に
脱水素して、全膜厚にわたって均質に脱水素された非晶
質シリコン系半導体薄膜を得ることができる。
【0013】
【実施例】以下、本発明の一実施例に係る非晶質シリコ
ン系半導体薄膜の形成方法を図面に基づき具体的に説明
する。
【0014】この方法は、例えば図2の模式図に示す公
知の高周波グロー放電法に用いられる高周波プラズマC
VD装置(RFプラズマCVD)を用いて実施される。
【0015】すなわち、チャンバー1内に互いに対向す
る1対の電極2を配置し、基板3を載せた一方の電極2
の周囲に配設したガス入口リング4より原料ガスを放出
しながら、該電極2の中央部から排気を排気系5に排出
させる一方、両電極2間に高周波電源6から高周波電流
を供給する。上記一方の電極2の下方には基板3を加熱
するヒータ7が設けられる。
【0016】原料ガスとしてはSiH4 を用い、図3の
フロー図および表1に示すように、基板温度450℃、
作製圧力(ガス圧)13Pa、SiH4 流量50SCC
M、RFパワー50W、成膜速度5Å/秒で、1回当た
り所定の膜厚の成膜をする堆積工程と、放電分解を停止
した後、所定時間にわたって同じ基板温度(450℃)
に放置して一部の水素を離脱させる脱水素工程とを交互
に繰り返し、約4時間かかって1μmの非晶質シリコン
膜8を形成した。
【0017】ここで、1回の堆積工程において形成され
る非晶質シリコンの膜厚は、一定以上の光導電率を得る
ため、10Å以上300Å以下とすることが好ましい。
図4に示すように、1回の堆積工程において形成される
非晶質シリコンの膜厚が10Åを下回る場合には、放電
初期のプラズマダメージの影響が大きくなって特性(光
導電率)が低下するので好ましくない。また、1回の堆
積工程において形成される非晶質シリコンの膜厚が30
0Åを上回る場合には、短時間で十分な水素の離脱を行
えなくなって特性(光導電率)が低下するので好ましく
ない。
【0018】この実施例では、1回の堆積工程で形成す
る膜厚を最も良好な特性が得られた50Åとした。脱水
素工程の工程時間は、1回の堆積工程で形成する膜厚を
50Åとした場合には、図5に示すように、1分以上で
あれば500時間光照射後の光劣化が一定以下に抑えら
れることが確かめられたので、この実施例では1分間と
した。
【0019】
【従来例1】原料ガスとしてはSiH4 を用い、基板温
度450℃、作製圧力(ガス圧)13Pa、SiH4
量50SCCM、RFパワー50W、成膜速度5Å/秒
で、脱水素工程を行わずに、膜厚1μmの非晶質シリコ
ン膜を形成した。
【0020】
【従来例2】原料ガスとしてはSiH4 を用い、基板温
度200℃、作製圧力(ガス圧)13Pa、SiH4
量50SCCM、RFパワー50W、成膜速度1Å/秒
で、脱水素工程を行わずに、膜厚1μmの非晶質シリコ
ン膜を形成した。
【0021】
【従来例3】原料ガスとしてはSiH4 を用い、基板温
度450℃、作製圧力(ガス圧)13Pa、SiH4
量50SCCM、RFパワー50W、成膜速度1Å/秒
で、脱水素工程を行わずに、膜厚1μmの非晶質シリコ
ン膜を形成した。
【0022】
【従来例4】原料ガスとしてはSiH4 を用い、基板温
度200℃、作製圧力(ガス圧)13Pa、SiH4
量50SCCM、RFパワー50W、成膜速度5Å/秒
で、脱水素工程を行わずに、膜厚1μmの非晶質シリコ
ン膜を形成した。
【0023】
【従来例5】従来例1によって得た非晶質シリコン膜
を、基板温度450℃で5時間放置して熱離脱した。
【0024】
【表1】
【0025】これらの実施例1、従来例1〜5の各非晶
質シリコンにAM−1.5,100mW/cm2 の光を
500時間照射した後の光導電率を、照射前の光導電率
と併せて表2に示す。
【0026】
【表2】
【0027】表2から、低温条件(基板温度200℃)
の従来例2、4は、明らかに光劣化が高温条件に比べて
大きいことがわかる。また、単に高温、高速成膜条件
(基板温度450℃、成膜速度5Å/秒)の従来例1に
おいては、膜の中にクラスタ化水素が取り込まれてしま
った結果、光劣化が見られており、照射後の光導電率で
比べた場合には、本実施例が一番高い値となっている。
【0028】また、従来例5では、水素離脱のためにこ
れだけの時間をかけても、まだ光劣化が見られており、
さらに長い時間が必要と思われる。しかしながら、これ
以上の熱脱離はプロセス上困難であるため、行わなかっ
た。
【0029】400℃以上になって初めて(Si−H
2 )n やクラスタ化水素などの遊離型水素の熱的脱離が
起こるが、550℃を越えるとSi−Hのような必要な
水素(分散型水素)まで脱離してしまう。また、従来例
3に示すように、400℃以上で作製する場合に、成膜
速度が毎秒3Åを下回った場合には、光導電率が光起電
力素子に応用できる1×10-5S/cmを得ることはで
きなかった。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
基板温度を400℃以上550℃以下とし、膜厚成長速
度を毎秒3Å以上とすることにより、非晶質シリコン系
半導体薄膜を高速形成して非晶質シリコン系半導体薄膜
内に多量の水素を取り込み、分散型水素の量を増やすこ
とができるので光起電力素子としての非晶質シリコン系
半導体薄膜の開放電圧の低下や欠陥準位密度の増加を小
さく抑えることができる。
【0031】また、堆積工程に引き続いて脱水素工程を
行うので、堆積工程で非晶質シリコン系半導体薄膜に取
り込まれた遊離型水素を効率良く離脱させることがで
き、光劣化を軽減させることができる。
【0032】しかも、堆積工程と脱水素工程とを交互に
行うことにより、最終膜厚が分厚い場合にも全膜厚にわ
たって均等に脱水素された均質な非晶質シリコン系半導
体薄膜を得ることができる。
【0033】特に、本発明において、非晶質半導体がシ
リコンを主材としており、膜堆積する工程において作製
される膜厚が、1堆積工程あたりに10Å以上300Å
以下であり、水素を脱離させる工程が1分以上である場
合には、光導電率が高く、しかも、光劣化が少ない光起
電力素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】脱水素量と焼鈍(アニール)温度との関係を示
す脱水素特性図である。
【図2】高周波プラズマCVD装置の構成を示す模式図
である。
【図3】本発明のフロー図である。
【図4】1回の堆積工程で堆積する膜厚と光照射後の光
導電率との関係を示す光導電特性図である。
【図5】脱水素工程の工程時間と光照射後の光導電率と
の関係を示す光導電特性図である。
【符号の説明】
3 基板 8 非晶質シリコン膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−342122(JP,A) 特開 昭63−131512(JP,A) 特開 平3−217014(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 21/205 H01L 31/04

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 減圧下における放電分解による気相反応
    を用いて、所定の基板上に水素化非晶質シリコン系半導
    体薄膜を形成する非晶質シリコン系半導体薄膜の形成方
    法であって、前記基板の温度を400℃以上550℃以
    下とし、毎秒3Å以上の堆積速度で水素化非晶質シリコ
    ン系半導体薄膜を1堆積工程あたりに10Å以上300
    Å以下の膜厚で基板上に堆積する堆積工程と、放電分解
    を停止した上で同じ基板温度で1分以上放置して一部の
    水素を脱離させる脱水素工程とを交互に繰り返すことを
    特徴とする非晶質シリコン系半導体薄膜の形成方法。
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