JP3054211B2 - 耐熱性卵黄 - Google Patents

耐熱性卵黄

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JP3054211B2
JP3054211B2 JP3044613A JP4461391A JP3054211B2 JP 3054211 B2 JP3054211 B2 JP 3054211B2 JP 3044613 A JP3044613 A JP 3044613A JP 4461391 A JP4461391 A JP 4461391A JP 3054211 B2 JP3054211 B2 JP 3054211B2
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芳徳 峯
理 古越
達志 納富
浩之 佐野
紀夫 澤村
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キユーピー株式会社
不二製油株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐熱性卵黄に関する。
本発明に於いて、耐熱性卵黄とは、100℃で30分間
程度加熱しても熱凝固の生じ難い性状の卵黄のことであ
る。
【0002】
【従来の技術】一般に卵黄は、独特の風味を有するの
で、製菓・製パンはもとより、いろいろな加工食品の原
料として用いられている。ところで、卵黄は加熱によっ
て凝固しやすいため、加熱工程を経て作られる製品、例
えば、プリン、卵飲料、或いはクリーム類などを製する
際には、通常の卵黄よりも、その使用原料として、熱凝
固性が少なく、しかも清水に対する分散性の良い卵黄が
望まれている。そこで、従来より熱凝固性の少ない卵黄
を得るために、プロテアーゼ等の酵素で処理して得られ
る酵素処理卵黄(特公昭45─9215号公報)や、卵
黄に糖を加えた後加熱して卵黄の蛋白質を完全に熱変性
させて得られる加糖変性卵黄(特公昭59─23778
号公報)等が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記提
案による酵素処理卵黄は、熱凝固性は少ないものの、酵
素により卵黄蛋白質が低分子のペプタイドに分解された
ものになっているため、苦味を生ずるものとなりやす
い。また、加糖変性卵黄は、卵黄蛋白質を完全に熱変性
させたものであるため、清水への分散性が悪いものにな
りやすい。いずれにしても従来の加工卵黄は、プリン、
卵飲料或いはクリーム類などの加熱卵製品の原料として
使用した場合、食感が悪くなりやすく(ザラツキが多
く)不適である。
【0004】本発明の目的は、加熱処理する製品の原料
として使用しても製品にザラツキ感がなく、そのまま食
しても苦味がなく、かつ清水への分散性の優れた耐熱性
卵黄を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の目的
を達成するため種々検討を重ね、本発明に到達したもの
である。すなわち、本発明の耐熱性卵黄は、蛋白質の未
変性率が14乃至86%の、不完全に変性した卵黄であ
って、この卵黄が均質化されていることを特徴とする。
ただし未変性率は、卵黄のサンプル2.5gを0.3M
食塩水溶液100ml中に溶解し、この溶液を15,0
00r.p.mで30分間攪拌分離して上澄液を採取
し、この上澄液中の蛋白質の量をLowry法で測定し
たとき、次の式で表される数値とする。 未変性率(%)=(上澄液の蛋白質の質量(mg))/
(卵黄中の蛋白質の質量(375mg))×100
【0006】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
耐熱性卵黄において、蛋白質の未変性率とは、卵黄中の
全蛋白分の一部又は全部を変性凝固させた後の残りの未
変性蛋白分の割合であって、これを数値で表わすと、以
下のようになる。すなわち、常法によって採取した卵黄
のサンプル2.5gを0.3M食塩水溶液100ml中
に溶解し、この溶液を15,000r.p.mで30分
間攪拌分離して上澄液を採取し、この上澄液中の蛋白質
の量をLowry法で測定したとき、次の式で表される
数値(NSI値)をいう。
【0007】
【数1】 また、本発明において卵黄とは、割卵して採取する通常
の卵黄の他、全卵液から卵白液を除去したものでもよ
く、卵黄液に若干(5乃至10%程)の卵白液が混入し
たものを含む。本発明の耐熱性卵黄は、蛋白質の未変性
率が14乃至86%の不完全に変性した卵黄であるが、
さらにこの卵黄は均質化されてある。ここで均質化と
は、卵黄全体の変性率を均一にすることである。すなわ
ち、この場合、不完全に変性した卵黄は、ペースト状を
呈するとともにその部位によって変性の程度も微妙に異
なっているので、これを、例えば物理的に砕き攪拌する
ことにより、元の卵黄の物性に近い状態に戻すとともに
全体の変性率を均一にするのである。卵黄の均質化の手
段としては、常法に従う。例えば、均質機としてティー
・ケー食品機械(株)製の商品名「ロボクープ」などを
使用して均質化する。このようにして製した卵黄は、後
の試験例にも示すように、熱凝固しにくく、また、清水
に対しての分散性にも優れ、かつこれを加熱して製造す
るミルクプリン、卵飲料、クリーム等の原料として使用
しても、製品の食感にザラツキ感や苦味を生じないもの
となる。
【0008】本発明の不完全に変性した卵黄を製造する
方法としては、卵黄をあらかじめ加熱処理しておく方
法、加圧処理しておく方法、酸やアルカリ、あるいはア
ルコール等を補助材として添加し処理しておく方法など
があり、卵黄の蛋白を部分的に変性させて得る方法であ
ればどのような方法を用いてもよい。次に、本発明の不
完全変性卵黄を製造する例として、加熱処理法を示す。
【0009】まず、鶏卵を割卵して常法により卵白液を
除去し生卵黄液を用意する。この生卵黄液をプレートヒ
ーター等の加熱装置を用いて、65乃至85℃で0.5
乃至20分間加熱し、ペースト状の不完全変性卵黄にす
る。この際、加熱工程においては、例えば、70℃で1
0分間の加熱条件とすれば、蛋白質の未変性率が55%
程の卵黄を得ることができるので、卵黄の未変性率が1
4乃至86%の範囲で所望の変性率のものを得るには、
加熱温度と時間を適宜調製すればよい。なお、加熱前に
卵黄に砂糖を加えておく場合などは卵黄蛋白変性率も違
ってくるので、必要に応じて加熱温度・時間を調整すれ
ばよい。
【0010】なお、不完全変性卵黄を得るその他の製造
方法として、加圧処理法、補助材添加法等があるが、加
圧処理法による場合、例えば卵黄を加圧する装置として
は高圧加圧装置(三菱重工業(株)MSP−700型)
を使用する。この際卵黄液をこの装置の使用方法に従い
5000kg/cm2で10分間の状態に保持すれば、
未変性率34%の卵黄を得ることができるので、適宜圧
力と時間を調製することによって所望の変性率の卵黄を
得ることができる。
【0011】また、補助材添加による場合は、例えばエ
タノールなどの食品補助材を用いる。このエタノールの
30%溶液を卵黄(乾燥卵黄)に添加することによっ
て、未変性率55%の卵黄となるので、エタノール溶液
濃度を調製することによって、所望の未変性率の卵黄を
得ることができる。なお、この際に用いるエタノールは
食品添加物として許可されているものであるが、その他
塩酸、クエン酸、水酸化ナトリウムなどの酸・アルカリ
などを補助剤として使用して卵黄蛋白質を変性させる場
合は、処理後に中和しておく。
【0012】このように処理して得られた不完全変性
(部分変性)卵黄はペースト状を呈しているので、これ
を均質機等にて均質化すれば、本発明の耐熱性卵黄を得
ることができる。なお、この耐熱性卵黄に砂糖等の糖類
を添加・混合すれば加糖耐熱性卵黄となる。
【0013】
【実施例1】生卵黄100kgをプレートヒーターにて
70℃になるまで徐々に加熱し、その品温が70℃にな
ったところで品温を70℃に保持して、さらに10分間
加熱した後プレートクーラーにて50℃に冷却し、不完
全変性卵黄のペーストを得た。次に、このペーストを均
質機〔ホソカワミクロン(株)製、商品名「フィッツミ
ル」〕にて均質化し、液状の耐熱性卵黄90kgを得
た。得られた耐熱性卵黄の蛋白質の未変性率を測定した
ところ55%であった。この際、加熱時間を一定(10
分間)にし、加熱温度を種々変えた場合の卵黄蛋白質の
未変性率を測定した結果は、次表1中に示すとおりの値
となった。
【0014】
【実施例2】生卵黄300gを耐圧性ポリ袋に入れて密
封し、超高圧装置(三菱重工業(株)MSP−700
型)を用いて、5,000kg/cm2で10分間保持
しペースト状の卵黄を得た。このペーストを均質機にて
均質化し、液状の耐熱卵黄280gを得た。得られた耐
熱卵黄の蛋白質の未変性率を測定したところ34%であ
った。この際、圧力を種々変えた場合の卵黄蛋白質の未
変性率は、次表1中に示すとおりの値となった。
【0015】
【実施例3】乾燥卵黄20kgに30%エタノール水溶
液を30kg加え、よく攪拌し、さらに均質機(ティー
・ケー食品機械(株)製、商品名「T.K.ホモミキサ
ー」)にて均質化後、減圧下でエタノールを除去するこ
とにより耐熱性卵黄35kgを得た。この際、エタノー
ル水溶液の濃度を種々変えた場合の卵黄蛋白質の変性率
を測定した結果は、次表1中に示すとおりの値となっ
た。
【0016】
【表1】
【0017】
【試験例】表1で得たそれぞれの未変性率の卵黄(均質
化したもの)を試料とし、その熱凝固性、清水分散性、
食感(ザラツキ感)等を調べるため、次の試験1、2、
3を実施し、表2の結果を得た。
【試験例1】(熱凝固性)各試料の熱凝固性をみるた
め、各々を100℃の温度で30分間加熱した後、常温
(25℃)に冷却し、各試料の状態を観察した。
【試験例2】(分散性)各試料の清水に対する分散性を
みるため、各々100gを各別に清水1,000cc中
に加えて、ホバートミキサーにて高速で、2分間攪拌し
た後60分間静置し、溶液中に生じた沈澱物の量(c
c)を測定した。
【試験例3】(食感・食味)各試料を用いて、加熱製品
を製造した際の、製品の食感(ザラツキ感)をみるた
め、各試料を原料として使い次の配合で、常法によりミ
ルクプリンを製造し、得られた各ミルクプリンについて
の食感・食味を観察した。
【0018】[原料配合] 試 料 150(単位:g) 砂 糖 150 牛 乳 645 ゲル化剤 5 ヤシ油 50 ────────────── 合 計 1,000
【0019】
【表2】 表中の記号、◎は熱凝固していないこと、○は部分的に
熱凝固していること、△はゆるく熱凝固、×は固く熱凝
固していることを示す。この表から、未変性率が14乃
至86%の卵黄は熱凝固し難く、かつ清水への分散性が
よいことが理解できる。また、そのうち、未変性率14
乃至34%の卵黄を原料として加熱処理した製品(プリ
ン)はザラツキ感の全くない優れたものとなることが理
解できる。
【0020】
【発明の効果】以上、説明したとおり、本発明の耐熱性
卵黄は、高温で加熱しても熱凝固しにくく、また、清水
への分散性が良い上、これを使用した加熱加工製品は、
ザラツキ感や苦味の生じ難い食味のものとなるので、卵
加工食品の原料として好適である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 澤村 紀夫 和歌山県橋本市中道226番地 審査官 吉田 一朗 (56)参考文献 特開 平2−203768(JP,A) 特開 昭52−15859(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23L 1/32

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 蛋白質の未変性率が14乃至86%の不
    完全に変性した卵黄であって、この卵黄が均質化されて
    いることを特徴とする耐熱性卵黄。ただし未変性率は、
    卵黄のサンプル2.5gを0.3M食塩水溶液100m
    l中に溶解し、この溶液を15,000r.p.mで3
    0分間攪拌分離して上澄液を採取し、この上澄液中の蛋
    白質の量をLowry法で測定したとき、次の式で表さ
    れる数値とする。 未変性率(%)=(上澄液の蛋白質の質量(mg))/
    (卵黄中の蛋白質の質量(375mg))×100
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