JP3051237B2 - 無方向性電磁鋼板用薄鋳片の製造方法 - Google Patents

無方向性電磁鋼板用薄鋳片の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、0.1〜8.0%のS
iを含む、靭性に優れ、板厚精度が良好である無方向性
電磁鋼板用薄鋳片の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】無方向性電磁鋼板は回転機および中小型
変圧器等の鉄心材料として広く利用されており、磁気特
性として励磁特性と鉄損特性が良好でなくてはならな
い。しかも近年、特にエネルギーロスの少ない低鉄損素
材への市場要求が強まっている。しかし、従来の製造方
法では、熱延、冷延、焼鈍などの複雑な工程処理が必要
なため、製造コストが非常に高いという問題がある。そ
こで最近、電磁鋼の溶鋼を急冷凝固法で直接薄帯にする
技術が開発された。この方法によれば、溶鋼から直接成
品または半成品ができるので、製造コストを大幅に下げ
ることが可能である。
【0003】急冷凝固法で無方向性電磁鋼板を製造する
方法は、磁気特性向上のため開示されているものが主流
である。たとえば、特開昭56−3625号公報では、
急冷凝固法により直接的に薄帯となし、磁気特性上好ま
しい(100)面内無方向性の集合組織を有する電磁鋼
薄帯を製造する方法が提案されている。また、特開平2
−194123号公報には、Si:0.1〜4.0%重
量を含有する溶湯を急冷凝固して、再加熱することなく
圧化率60%以下、圧延仕上げ温度600〜1000℃
で熱延し、次いで、得られた熱延鋼帯に冷延および仕上
げ焼鈍を施すことを特徴とする磁気特性に優れた無方向
性電磁鋼板の製造方法について開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記の従来開示されて
きた急冷凝固法による一方向性電磁鋼板の製造方法は、
いずれも望ましい磁気特性を得ることを目的としたもの
である。しかしながら、本発明者らは、従来技術による
急冷凝固法を工業的に実施する場合、後工程での薄鋳片
の靭性を解決することが必要であるという問題点に直面
した。つまり、従来技術による急冷凝固鋳片では、その
繰り曲げ回数が非常に悪く、連続焼鈍ライン、冷延時な
どに鋳片割れが発生し通板性が非常に悪いという、工業
上の大きな問題が発生した。
【0005】本発明者らは、かかる無方向性電磁鋼板用
薄鋳片の脆性問題を解決することを課題に取り組んでき
た。さらに、本発明者らは、これまで急冷凝固法によ
り、薄鋳片板厚精度の向上に取り組んできたが、凝固時
に冷却体表面にヒートクラウン等の熱歪みが生じ、十分
な薄鋳片の板厚精度が得られないという問題点にも直面
した。
【0006】すなわち本発明はこのような従来の問題点
を解消するものであり、靭性に優れ、板厚精度の良好な
無方向性電磁鋼板用薄鋳片の製造方法を提供することを
目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明では、上記目的を
達成すべく検討を重ねた結果、重量でSi:0.1〜
8.0%を含有し、Al,Mn,P,B,Ni,Cr,
Sb,Sn,Cuの一種または二種以上を0.01〜1
0%含み、残部実質的にFeからなる溶鋼を、移動更新
する冷却体表面により急冷凝固せしめて薄鋳片にするに
際し、凝固完了後、5%以上の圧下率で減厚を行い、圧
延仕上温度1050℃以上とすることにより、靭性
優れ、板厚精度が良好であることを特徴とする無方向性
電磁鋼板用薄鋳片が得られることを見出だした。
【0008】以下に本発明を詳細に説明する。本発明者
らは、繰り曲げ試験後の破断面を観察した結果、いずれ
も粒内破断であることが判明した。このことから、無方
向性電磁鋼板用薄鋳片の脆化の原因として、従来の熱延
プロセスの熱延板と比較して薄鋳片での結晶粒径が大き
いことの他に、Si添加によりフェライト地そのものの
靭性が低下し、薄鋳片繰り曲げ時の交差すべりが困難に
なっていることを見出した。さらに、急冷凝固された薄
鋳片では、通常の連続鋳造材に比べて、溶湯の大きな収
縮率または冷却時の熱応力により導入される鋳物中の欠
陥が多いことも見出した。これは、急冷凝固法では0.
1秒オーダの瞬時に凝固が起こることに起因しているも
のと思われる。そこで種々実験を行った結果、所定の温
度において減厚し加工歪みを与えることにより、交差す
べりを容易にし、鋳片に内蔵される欠陥も減少するの
で、靭性が改善されることを見出し、本発明を完成し
た。さらに、この減厚時に板厚制御することにより板厚
精度の向上が同時に望めることもわかった。以下に本発
明を詳細に説明する。
【0009】
【作用】本発明において、鋼組成および製造条件を前記
のように限定した理由を、詳細に説明する。まず、この
鋼成分の限定理由は下記のとおりである。Siは鉄損を
良くするために下限を0.1%とするが、多すぎると冷
間圧延の際に割れ易く加工が困難となるので上限を8.
0%とする。なお、本発明において、Si以外の鋼成分
としては、磁気特性の向上、機械的性質の向上、耐銹性
の向上などの目的のために、Al,Mn,P,B,N
i,Cr,Sb,Sn,Cuの一種または二種以上を
0.01〜10%含有させても良い。
【0010】次に、この溶鋼を双ロール法等により急冷
凝固するが、得られる鋼板の板厚は0.3〜4.0mm厚
が好ましい。これは、最終板厚0.03〜1.00mmの
製品を想定したとき、良好な磁気特性を得るためには
0.3mm未満では冷延圧下率が不足であり、4.0mm超
では冷延圧下率は過剰となるからである。
【0011】さらに、5%以上の圧下率で圧延仕上温度
1050℃以上の熱延を行う理由は次の通りである。図
1の熱間圧延率と繰り曲げ回数の各圧延仕上温度におけ
る関係を示す。この図は半径8mmの90°曲げ試験機に
て破断するまでの回数を示した。回数は90°曲がった
時を1回として示した。この図から、靭性を良好にする
には、圧下率5%以上が必要であることがわかる。さら
に、このときの上限は、圧延設備が巨大なものとなるこ
とを考慮し、50%が望ましい。また、圧延仕上温度の
下限を1050℃としたのは、これ以下では常温靭性の
向上が得られないからである。なお、熱延条件としては
圧延仕上温度1100〜1200℃で、圧下率15〜2
0%で実施することが好ましい。以上の条件で熱間圧延
を施すことにより、靭性に優れた一方向性電磁鋼板用薄
鋳片を得ることができる。
【0012】ここで、最初に記したように、無方向性電
磁鋼板は電気機器の鉄心材料に用いられるが、この場
合、板厚精度や形状が厳しく要求される。ところが、急
冷凝固法により得られた薄帯は、そのままでは溶鋼温度
によるヒートクラウン等が原因で板厚精度や形状も悪
い。そこで、本発明のような圧延により板厚精度を上
げ、かつ形状を整えることも可能である。次に本発明の
実施例を挙げて説明する。
【0013】
【実施例】
(実施例1)表1に示す成分組成を含む溶鋼を、双ロー
ル急冷凝固法により、(A)2.7mm、(B)2.0m
m、(C)1.7mm厚の薄鋳片に鋳造した。鋳造条件
は、ロール径が300mmφ、溶鋼のロール接触時間は約
0.3秒である。凝固後、(A)),(B)については
圧延仕上温度1150℃において熱間圧延を施し、1.
7mm厚とした。それぞれの圧下率を表2に示す。また表
2に、得られた鋼帯の繰り曲げ回数を示す。これは半径
8mmの90°曲げ試験機にて破断するまでの回数を示し
た。条件(A),(B)で良好な靭性が得られた。さら
に、得られた鋼板の板厚偏差も表2に示す。条件
(A),(B)で良好な板厚精度が得られた。
【0014】ついで、得られた鋼板を酸洗した後、冷間
圧延を行い0.35mm厚にした。その後、1000℃で
30秒間、連続仕上げ焼鈍を施し、磁気特性を測定し
た。この時、得られた製品の磁気特性を表2に併せて示
す。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】(実施例2)表3示す成分組成を含む溶鋼
を、双ロール急冷凝固法により、(D)2.1mm(E)
1.8mm、(F)1.5mm厚の薄鋳片に鋳造した。鋳造
条件は、ロール径が300mmφ、溶鋼のロール接触時間
は約0.3秒である。(D),(E)については、圧延
仕上温度1150℃において熱間圧延を施し、1.5mm
厚とした。この時の圧下率を表4に示す。また表4に、
得られた鋼帯の繰り曲げ回数を示す。条件(D),
(E)で良好な靭性が得られた。ついで、得られた鋼帯
を酸洗した後、冷間圧延を行い0.50mm厚にした。そ
の後、950℃で20秒間、連続仕上げ焼鈍を施し、磁
気特性を測定した。得られた製品は、表4に示すような
磁気特性が得られている。
【0018】
【表3】
【0019】
【表4】
【0020】
【発明の効果】本発明によれば、急冷凝固法により良好
な靭性を有し、通板性に優れた珪素鋼薄鋳片を得ること
ができ、無方向性電磁鋼板を、安価かつ省エネルギーに
製造することができるので、工業上の貢献するところが
極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】薄鋳片の圧下率と、得られた鋼帯の繰り曲げ回
数との各圧延仕上温度における関係を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 熊野 知二 福岡県北九州市戸畑区飛幡町1番1号 新日本製鐵株式会社 八幡製鐵所内 (72)発明者 久保田 猛 福岡県北九州市戸畑区飛幡町1番1号 新日本製鐵株式会社 八幡製鐵所内 (56)参考文献 特開 平2−194123(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 8/12 B21B 3/02

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量でSi:0.1〜8.0%を含有
    し、Al,Mn,P,B,Ni,Cr,Sb,Sn,C
    uの一種または二種以上を0.01〜10%含み、残部
    実質的にFeからなる溶鋼を、移動更新する冷却体表面
    により急冷凝固せしめて薄鋳片にするに際し、凝固完了
    後、5%以上の圧率で減厚を行い、圧延仕上温度
    050℃以上とすることを特徴とする、靭性に優れ、板
    厚精度が良好な無方向性電磁鋼板用薄鋳片の製造方法。
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