JP3045184B2 - 耐摩耗性硬質皮膜及びその形成方法と、耐摩耗性硬質皮膜被覆工具 - Google Patents
耐摩耗性硬質皮膜及びその形成方法と、耐摩耗性硬質皮膜被覆工具Info
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Description
れた硬質皮膜とその形成方法、及び耐摩耗性硬質皮膜が
形成された工具に関するものである。
する場合は、耐摩耗性等の性能をより優れたものとする
ことを目的として、工具基材の表面にTi等の窒化物や
炭化物よりなる耐摩耗性皮膜を形成することが行なわれ
ている。
は、従来よりCVD法(化学的蒸着法)及びPVD法
(物理的蒸着法)が知られている。但し前者の方法では
母材が高温処理に曝されて母材特性が劣化するおそれが
あることから、母材特性も重要視される工具の場合では
後者の方法が好まれており、中でも比較的低温条件でコ
ーティング処理できるイオンプレーティング法等による
TiN皮膜等の形成が汎用されている。
が良好であって、切削時の加工熱や摩擦熱による工具す
くい面のクレータ摩耗を抑制する機能を発揮する。しか
しながらTiN皮膜はTiC皮膜に比べると硬度が低い
為被削材と接する逃げ面に発生するフランク摩耗に対し
ては脆弱であり、フランク摩耗に対してはむしろTiC
皮膜の方が高い耐久性を示す。
て、イオンプレーティング法やスパッタリング法等のP
VD法によるTiAlN,TiAlCまたはTiAlC
N等(以下TiAlN等ということがある)の皮膜が提
案されている[特開昭62−56565、ジャーナル・
バキューム・ソサエティ・テクノロジー(J. Vac.Sci.Te
chnol.) A第4(6)巻,1986年,第2717頁、ジャーナ
ル・オブ・ソリッド・ステート・ケミストリー(J. of S
olid State Chemistry),70,1987 年,第 318〜322
頁]。
ーを利用するコーティング法であり、低温状態で蒸着が
おこなわれることから、CVD法に見られるような母材
特性の劣化は招かないものの、母材とコーティング皮膜
との間に熱による拡散層が形成されないので、密着性に
関してはPVDコーティング膜はCVDコーティング膜
に劣るのが一般的である。
に比べて密着性が低いので、前記TiAlN等の皮膜が
有する耐摩耗性や高硬度という本来の機能も十分発揮さ
れていない。
例えば特公昭59−18474号公報や特公昭59−1
8475号公報に開示されており、金属元素成分のイオ
ン化が主として金属元素蒸気自身の放電によってなされ
るタイプのものであって、反応ガスの分圧を1×10-4〜
9×10-4Torrの高真空度とすることによって密着性の高
い被覆鋼や被覆超硬合金を得ようとする手法が提案され
ている。
法は高真空度を前提とするものであることから窒素導入
ガスの量も制限され、反応速度及び成膜速度が遅くなっ
て逆に膜組成の均一性の点で安定を欠くという問題を有
している。
目してなされたものであって、耐摩耗性及び密着性に優
れた硬質皮膜と、上記硬質皮膜が形成された工具、並び
に上記硬質皮膜を効率よく形成することのできる皮膜形
成方法を提供しようとするものである。
の耐摩耗性硬質皮膜とは、基材表面に形成される硬質皮
膜であって、 (Vx Ti1-x)( Ny C1-y ) 但し 0.25≦x≦0.75 0.6 ≦y≦1 で示される化学組成からなることを要旨とするものであ
り、皮膜の厚さは0.8 〜10μmであることが推奨され
る。
Torrの真空条件下で、蒸発源としてカソードを用いるア
ーク放電方式により基材表面に形成することが望まし
く、上記基材として工具を用いれば、耐摩耗性硬質皮膜
被覆工具を得ることができ、上記基材として耐摩耗性が
要求される部材を用いれば、耐摩耗性硬質皮膜被覆部材
を得ることができる。
質皮膜の開発を目的として、鋭意研究を重ねた結果、皮
膜の組成を (Vx Ti1-x)( Ny C1-y ) 但し 0.25≦x≦0.75 0.6 ≦y≦1 とすることにより、耐摩耗性及び密着性を同時に優れた
ものにすることができることを見出した。尚、xの値
は、0.25≦x≦0.75であることが必要であり、0.3≦x
≦0.7 であると好ましく、0.4 ≦x≦0.6 であるとより
望ましい。
[但しx=0.2 ,0.4 ,0.6 ,0.8 ]および(Al0.6
Ti0.4 )Nをイオンプレーティング法により3μm形
成したものについて、マイクロビッカースによる硬度を
測定した結果を示すグラフである。これより(Vx Ti
1-x )Nの場合は0.4 ≦x≦0.6 の範囲において従来の
(Al,Ti)Nコーティングより高硬度な膜が得られ
ることがわかる。
ラッチテストにより評価した結果を示すグラフである。
上記スクラッチテストは粒径0.2mm の球状のダイヤモン
ド圧子を試料表面に押しつけ、定速で荷重を加えながら
ひっかき、膜のはがれはじめる荷重を臨界荷重として読
みとり、密着性を評価した。
0.8 以上の範囲では従来の(Al,Ti)Nコーティン
グより高い密着性が得られず、xは0.6 以下の範囲が好
ましいことがわかる。
性を向上させるには、コーティング膜の硬度が高くかつ
母材との密着性が良好であることが必要である。図1,
2より、従来の(Al,Ti)Nコーティングより硬度
及び密着性がいずれも優れた皮膜を得るには(Vx Ti
1-x )Nにおいて0.25≦x≦0.75とすべきであることが
わかる。
よってTiCの高硬度性(常温硬度Hv:約3200kg
/mm2)を発揮させるものである。即ち本発明に係る組成
式におけるyの値が減少すると、それに応じて硬度は大
となり耐摩耗性が向上する。図3は、超硬チップ(WC
−10%Coを主成分とする)に(V0.6 Ti0.4 )
(Ny C1-y )[但しy=0.4 ,0.6 ,0.8 ,1]を3
μm厚で被覆し、被削材S50C(HB :180〜20
0)を切削速度170m/min ,送り速度0.25mm/rev,切
り込み0.1mm で切削した時の15分後のクレータ摩耗量
を測定した結果を示す。この結果にみられるように、y
が0.6 未満になると耐酸化性が低下してクレータ摩耗を
起こし易くなるのでyは0.6 以上であることが必要であ
る。
に、膜厚が0.8 μm未満の場合は耐摩耗性が不十分とな
り、一方10μmを超えると膜自体にクラックが入り易
く、強度が不十分となる。従って本発明に係る耐摩耗性
硬質皮膜の膜厚は0.8 μm以上10μm以下に限定し
た。
源とするアーク放電によって金属成分をイオン化するこ
とにより形成されるものであって、イオンプレーティン
グ法やスパッタリング法等に代表されるPVD法を採用
することが望ましい。以下では基材表面に形成すること
ができる。上記PVD法のうちイオンプレーティング法
で皮膜を形成する場合を代表的に取り上げて説明する。
は、皮膜を効率良く形成すると共に、硬質皮膜を結晶質
とし、耐摩耗性などの工具としての切削性能を向上させ
る上で、1×10-3〜5×10-2Torrとすることが望まし
い。上記ガス分圧が低すぎると成膜速度が遅くなって効
率よく皮膜を形成することができず、しかも結晶質の硬
質皮膜を得ることができない。一方高すぎると化学組成
中のNが増加して皮膜の靭性が劣化して望ましくない。
るにあたっては、カソードを蒸発源とするアーク放電に
よってイオン化させた金属成分を、N2 雰囲気又はN2
/CH4 雰囲気中で反応させ、目的の化学組成からなる
皮膜を形成する。上記カソードとしてはV及びTiをそ
れぞれ個別に用いてもよいが、目的組成と同一組成から
なるVx Ti1-x をターゲットとすれば、下記の理由に
よって皮膜組成のコントロールが容易であり好ましい。
即ち本発明方法においては、各合金成分の蒸発が数十ア
ンペア以上の大電流域で行なわれるため、カソード物質
の組成ずれが殆んど生じないからである。さらにイオン
化効率を高くすることや反応性を高めること、基板にバ
イアス電圧を印加すること等によって一層密着性の優れ
た皮膜を得ることができる。
るものではなく、WC基超硬合金やサーメットあるいは
高速度鋼等、耐摩耗性が要求される工具や部材の用途に
応じて適宜選択すればよい。
を以下に示す。 ・実施例1 V0.6 Ti0.4 をカソード電極とするカソードアーク方
式イオンプレーティング装置の基板ホルダーに超硬合金
製チップ(WC−10%Coを主成分とする)を取付け
た。尚本装置には、耐摩耗性皮膜形成状態の均一性を確
保する為の基材回転機構及びヒータを設置した。
度を400℃に加熱保持したまま、基材に−70Vのバ
イアス電圧を印加すると共に、装置内に高純度N2 ガス
を7×10-3Torrまで導入してアーク放電を行い基材表面
に膜厚4μmの皮膜を形成した。尚、膜厚は、基板ホル
ダーに同時に取り付けた基材の内の1個を破断し、膜断
面を走査型電子顕微鏡で観察して測定したものである。
また、皮膜組成の定量分析は、同じく同時に取り付けた
基材につきオージェ分光分析法により膜深さ方向の分析
を行なった。その結果、膜厚さ方向にはV,Ti,Nの
濃度変化がなく一定であり、各成分元素のピーク高さか
ら膜組成は(V0.61Ti0.39)Nと同定した。従って、
膜中の金属成分比Ti/Vはカソード成分比とずれがな
く殆んど同一といえる。
一条件で成膜を行なった。膜厚は3.5 μmであり、膜組
成は(V0.5 Ti0.5 )Nであった。
実施例2と同一条件で成膜を行なった。膜厚は4.1 μm
であり、膜組成は(V0.51Ti0.49)(N0.7C0.3 )
であった。また比較の為に次の超硬合金製チップを用意
した。
し実施例1と同一条件で超硬合金製チップにTiNの成
膜を行なった。膜厚は4.2 μmであった。
一条件で成膜を行なった。膜厚は4.3 μmであり、膜組
成は(Al0.61Ti0.39)Nであった。
同様にして成膜を行った。膜組成は(V0.61Ti0.39)
Nであった。
同様にして成膜を行った。膜組成は(V0.6 Ti0.4 )
Nであった。
られた超硬合金製チップを、下記切削条件により10分
間の切削試験に供したフランク摩耗幅及びクレータ摩耗
深さを表1に示す。 切削条件: 被削材 S50C(HB:180 〜200) 切削速度 170m/min 送り速度 0.25 mm/rev 切り込み 1 mm
来例であり、いずれの摩耗量も多い。比較例2,3は硬
質皮膜の成分組成が本発明と異なる従来例であり、比較
例1と比べると耐摩耗性は改善されているものの、実施
例1〜3と比べると、耐摩耗性は十分でない。比較例
4,5は硬質皮膜の膜厚が薄過ぎるか、厚過ぎる場合の
比較例であり、試験中に欠損した。これに対して、実施
例1〜3は、いずれもフランク摩耗量が少なく、クレー
タ摩耗深さも浅く、非常に耐摩耗性が優れていることが
分かる。
に示す。 ・実施例4 6mmφの超硬ドリル(WC−8%Coを主成分とする)
に実施例1と同一条件にて成膜を行なった。膜厚は4.5
μmであり膜組成は(V0.65Ti0.35)Nであった。
膜した。膜厚は4.4 μmであった。
なった。膜厚は4.3 μmであり、膜組成は(Al0.61T
i0.39)Nであった。
した。膜厚は0.7 μmであり、膜組成は(V0.6 Ti
0.4 )Nであった。
なった。膜厚は12μmであり、膜組成は(V0.6 Ti
0.4 )Nであった。
覆超硬ドリルに対して、下記の切削条件で行なった穴明
け個数の結果を表2に示す。 切削条件: 被削材 S50C,13mmt (貫通穴加工) 切削速度 50 m/min 送り速度 0.2 mm/rev 潤 滑 エマルジョンによる
た工具は、比較例に比べて加工個数の大幅な増加が認め
られ、しかも耐摩耗性が良好であった。
以下に示す。 ・実施例5 6mmφハイスドリルに実施例1と同一条件にて成膜を行
った。膜厚は5.5 μmであり、膜組成は(V0.63Ti
0.37)Nであった。
膜した。膜厚は4.2 μmであった。
った。膜厚を4.0 μmであり膜組成は(Al0.60Ti
0.40)Nでぁった。
様にして成膜を行った。膜組成は(V0.61Ti0.39)N
であった。
様にして成膜を行った。膜組成は(V0.61Ti0.39)N
であった。
膜被覆ハイスドリルに対して、下記の切削条件で行なっ
た穴明け個数の結果を表3に示す。 切削条件: 被削材 S50C,10 mmt 切削速度 30 m/min 送り速度 0.15 mm/rev 潤 滑 エマルジョンによる
膜被覆工具は、比較例に比べて加工個数の大幅な増加が
みられ、しかも耐摩耗性が良好であった。
で、耐摩耗性及び密着性に優れた硬質皮膜と、上記硬質
皮膜が形成された工具、並びに上記硬質皮膜を効率よく
形成する皮膜形成方法が提供できることとなった。
物で代表)と硬度の関係を示すグラフである。
の関係を示すグラフである。
yを変化させた時の超硬チップの切削時のクレータ摩耗
量を示すグラフである。
Claims (4)
- 【請求項1】 基材表面に形成される硬質皮膜であっ
て、 (Vx Ti1-x)( Ny C1-y ) 但し 0.25≦x≦0.75 0.6 ≦y≦1 で示される化学組成からなることを特徴とする耐摩耗性
硬質皮膜。 - 【請求項2】 皮膜の厚さが0.8 〜10μmである請求
項1に記載の硬質皮膜。 - 【請求項3】 請求項1または2に記載の硬質皮膜が、
1×10 -3 〜5×10 -2 Torrの真空条件下で、蒸発源として
カソードを用いるアーク放電方式により基材表面に形成
されてなることを特徴とする耐摩耗性硬質皮膜被覆工
具。 - 【請求項4】 請求項1または2に記載の硬質皮膜を、
1×10 -3 〜5×10 -2 Torrの真空条件下で、蒸発源として
カソードを用いるアーク放電方式により基材表面に形成
することを特徴とする耐摩耗性硬質皮膜の形成方法。
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---|---|---|---|
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JPH04221057A JPH04221057A (ja) | 1992-08-11 |
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TW542761B (en) * | 1997-07-07 | 2003-07-21 | Mitsubishi Heavy Ind Ltd | Gear shaper cutting method and apparatus |
BR9906311A (pt) | 1998-04-01 | 2000-07-11 | Mitsubishi Heavy Ind Ltd | Processo e aparelho para fresar engrenagens para gerar uma engrenagem cÈnica, e, ferramenta de fresa de engrenagens cÈnicas em espiral |
KR100633286B1 (ko) | 1998-10-27 | 2006-10-11 | 미츠비시 마테리알 고베 툴스 가부시키가이샤 | 내마모성이 우수한 경질피막 피복부재 |
GB2425780B (en) * | 2005-04-27 | 2007-09-05 | Univ Sheffield Hallam | PVD coated substrate |
-
1990
- 1990-12-21 JP JP2413405A patent/JP3045184B2/ja not_active Expired - Lifetime
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