JP3036304B2 - 反射、干渉作用による発色構造体 - Google Patents

反射、干渉作用による発色構造体

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自然光の反射、干渉に
よって発色する新規な発色構造体に関し、詳しくは織物
や塗装などに用いられる発色用の繊維やチップ(小片)
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車用塗装は、最近の高級化に伴い、
アルミフレーク光輝材を用いた従来のメタリック塗装だ
けでなく、雲母片や加工雲母片あるいは炭素繊維チップ
などを光輝材として用い、アニソトロピックな特性を付
与し、顔料とあいまって塗装面の質感向上を表現しよう
としている。また、内装織物材などにおいても、その材
質、色調は質感向上において大変重要視されている。し
かし、前者においては、色調に対して光輝材の影響はあ
るものの、その主因子は顔料を含む塗料にあり、その塗
料が紫外線や赤外線等によって劣化退色することによっ
て色調を著しく損なってしまう。また、後者において
も、染料や顔料などの上記と同様の劣化、退色が避けら
れないのが現状である。上記のごとき問題を解決するた
め、染料や顔料などの色素を使わず、自然光の反射、干
渉作用で発色する、あるいはその作用と染料や顔料とを
組み合わせることによって、より深く鮮やかな発色をす
る構造体が鋭意研究されてきた。例えば、特公昭43−
14185号公報に記載の発明においては、屈折率の異
なる2種類以上の樹脂からなる被覆型の複合繊維を形成
することにより、真珠光沢を発する複合繊維が記載され
ている。また、「繊維機械学会誌Vol.42,No.
2,p.55、およびVol.42,No.10,p.16
0、1989年」に記載のように、偏光フィルムを分子
配向異方性フィルムでサンドイッチ構造とすることによ
って発色する材料も発表されている。また、特開昭59
−228042号、特公昭60−24847号、特公昭
63−64535号等に記載されているように、南米産
のモルフォ蝶の発色を基にして、通常の顔料や染料を使
わずに光の干渉で発色するものも提案されている。さら
に、特開昭62−170510号公報では、繊維表面に
一定幅の細隙を設けることによって干渉色を発する構造
体が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の偏光フ
ィルムを用いるものにおいては、細い繊維や微小なチッ
プを形成することが困難であり、また、反射する主波長
を制御することが困難である、という問題があり、実用
的でない。また、上記の特開昭59−228042号、
特公昭60−24847号、特公昭63−64535号
公報などや特開昭62−170510号公報において
は、その構造体の諸元(形状の厚さや長さ、構成材料の
屈折率など)が曖昧であり、そのままでは所望の発色構
造体を得ることが困難であった。上記の問題点に鑑み、
本発明者らは、従来技術では得られなかった鮮やかな色
調を呈し、しかも経時変化のない新規な発色構造体を既
に出願(特願平4−172926号)している。
【0004】本発明は、上記のごとき本発明者らの先行
発明をさらに改良、発展させ、発色をさらに鮮やかで高
級感のある発色とした発色構造体を提供することを目的
とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明においては、特許請求の範囲に記載するよう
に構成している。すなわち、請求項1に記載の発明にお
いては、光学屈折率の異なる2種類以上の構成物質が少
なくとも一部で積層された構造を有し、自然光の反射、
干渉作用によって可視光を発色する構造体と、上記構造
体に含有され、上記構造体の発色に対応した蛍光を発す
る蛍光色素と、を有するように構成している。上記の構
造体としては、例えば、後記図1に記載の凸型翼部およ
び芯部からなる物体と空気とによる構造体(本発明者の
先行出願:特願平4−172926号に記載のものと同
じ構造体)や後記図6に記載のような2種の高分子薄膜
を積層した構造体を用いることが出来る。また、上記蛍
光色素の含有率は、請求項2に記載のように、構造体の
0.01〜1.0重量%の範囲が特に好ましい。
【0006】
【作用】本発明においては、構造体における反射、干渉
による発色効果と、その発色とほぼ同じ波長の光を発色
する蛍光物質による発色効果との相乗作用により、反射
率が100%以上になって、より一層の鮮やかな色調を
呈する。なお、本発明の発色構造体において、反射率が
100%以上になる理由は明確ではないが、次のように
考えられる。すなわち、本発明の発色構造体における反
射スペクトルは、基本的には(1)構造体の反射、干渉
作用に基づく成分と、(2)蛍光色素による蛍光成分と
の和、(1)+(2)と考えられる。しかし、両成分を
実験的に分離してみても、蛍光成分の寄与は高々、5%
程度である。にも関わらず、反射率が100%以上を示
し、場合によっては200%近いものもある。このこと
は、単純に(1)と(2)の和ではなく、両者の相乗効
果によって発現しているものと考えられる。蛍光色素の
役割を考えてみると、基本的には、構成物質中に含有さ
れている蛍光色素が自然光の中の紫外あるいは可視光の
一部(紫〜青)を吸収し、それ以上の波長(長波長側)
で蛍光を発する(いわゆる、ストークスの定理)ことを
利用している。したがって、蛍光を発した光も、前記
(1)と同様の光学距離を経て反射、干渉光として構成
物質から出射される。ところが、構造体を形成する層数
も多いので、蛍光を発する光はその途中(層間)で何ら
かの増幅作用を受け、最終的に反射率を大にしているも
のと考えられる。
【0007】
【実施例】本発明に使用される発色構造体の構成物質と
しては、成型性と透明性を備え、かつ、光学屈折率nが
1.0〜1.8のものであり、好ましい例としては空気
(n=1.0)および各種の高分子、とりわけ、熱可塑
性高分子、液晶高分子樹脂等が挙げられる。高分子材料
の光学屈折率nは、一般に、1.2〜1.8程度であり、
上記特性を兼ね備えたものとしては、例えばポリエステ
ル、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ナイロン、
ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリフェ
ニレンサルファイド等がある。なお、構成物質中に無機
物のフィラー、その他を含有させることにより、光学屈
折率を1.8以上とすることも可能であるが、成型性を
損ね、さらに、その含有物の吸収に基づく反射スペクト
ルへの寄与が大きくなり、不適である。また、反射、干
渉によって発色する構造体の構造としては、その効果を
顕著に発揮させるには、本発明者らが先に出願した構造
体(特願平4−172926号、例えば図1に記載の構
造)が最良である。その他、多層膜構造体や回折構造体
等の各種の発色構造体への適用も可能である。また、蛍
光色素としては、有機系および無機系蛍光色素のいずれ
でも良いが、長期安定性(光退色性、ブルーミング等)
に優れ、かつ、蛍光量子放出量の大きいもので、波長3
80〜780nmの可視光領域で蛍光を発するものでな
ければならない。なお、各種の高分子樹脂や液晶高分子
樹脂との相溶性や混練り性に優れたものでなければなら
ないのは言うまでもない。その点から有機系蛍光色素の
方が適している。
【0008】上記のごとき蛍光色素としては、最大蛍光
発光を与える波長:λfmaxごとに例を挙げると、有機系
では、波長380〜400nmでは、ピレン(Pyrene)、
カーボストリル(Carbostril)124など、波長400〜
500nmでは、クマリン(Coumarin)1、クマリン(Cou
marin)151、クマリン(Coumarin)152、クマリン
(Coumarin)339やプテリン(Pterin)、バイオプテ
リン(Biopterin)、ネオプテリン(Neopterin)、イソ
キサントプテリン(Isoxanthopterin)など、波長50
0〜600nmでは、ローダミン6G(Rhodamine6
G)、サルファローダミンB(SulforhodamineB)、ロ
ーダミンB(hodamineB)など、波長700nm以上で
は、スティリル17(Styryl7)、DOTCアイオダイ
ド(Iodide)など、また、無機系ではZnS+Cu(緑
色蛍光)、CaS+Bi(紫青色蛍光)などである。
【0009】また、本発明においては、可視光領域での
反射、干渉に基づく発色を向上させる、換言すれば、こ
の波長域で反射スペクトル(反射率)を増大させること
を目的としているので、当然のことながら同様の波長域
で蛍光を発する色素でなければならない。したがって、
含有される蛍光色素は波長380〜780nmの可視光
領域で蛍光を発するものでなければならない。どの蛍光
色素を採用するかは反射、干渉に基づく反射スペクトル
との関係で一義的には決定できないが、図4に示すよう
に、最大反射率を与える波長:λrmaxと蛍光色素の最大
蛍光強度を与える波長:λfmaxが近いものが望ましく、
その場合、両者の相乗効果によって反射スペクトルのピ
ークも大(100%以上)となる。なお、λfmaxとλrm
axに大きな差異がある場合(40nm<)は、最終的に
得られる反射スペクトルにおいて、そのピークが短波長
側あるいは長波長側にシフトするか、ショルダーが現わ
れるため、スペクトルはよりブロードで、ピークも余り
増大せず、結局、鮮やかな色からは遠くなる。なお、上
記のように、λfmaxとλrmaxとの差異によって反射スペ
クトルのピークがシフトすることは、含有する蛍光色素
の種類によって、反射スペクトルのピークをコントロー
ルできることをも意味している。ここで、「鮮やかな
色」とは一般的に人間の視覚心理に基づくものであり、
定量性に乏しい。そこで、CIE(国際照明委員会)表
色系のXYZ値による評価のY値(明度Y)を用いて表
現することにする。これによれば、一般に明度Yが15
%以下では暗色と判断されており、鮮やかな色とは言え
ない。例えば、波長560nm付近に反射スペクトルの
ピークを有する発色構造体を作ろうとする場合には、反
射、干渉作用に基づく波長560nmの発色設計をした
構造体に、波長560nm付近で最大蛍光強度を与える
蛍光色素を用いれば良いことになる。この場合の有機系
蛍光色素としては、ローダミン(Rhodamine)6G(λf
max=555nm)あるいは、ローダミン(Rhodamine)
B(λfmax=565nm)などを選択すれば良いことに
なる。また、図5に示す明度Yと蛍光含有量wとの関係
からも明らかなように、構成物質内に含有される蛍光色
素の濃度が0.01重量%未満では蛍光発光強度が弱
く、目的とする鮮やかな明度や色調を呈することが困難
である。一方、1.0重量%以上では構成物質の透明性
が損なわれるため、反射、干渉に基づく本来の発色が発
現しにくくなると共に、濃度消光のためか、明度も低下
する。さらに、光学屈折率も大きく変化し、構成物質中
に含有されている蛍光色素からの発光が屈折、散乱して
所望の反射スペクトルを精密にコントロールできなくな
ってしまい、反射スペクトルがブロードとなる。したが
って、構造体に含有される蛍光色素の濃度としては、
0.01〜1.0重量%の範囲が特に適していることにな
る。ただし、1〜3重量%程度の範囲では、反射スペク
トルのピーク値は低下するが或る程度の効果は得られ
る。なお、蛍光発光の波長の異なる数種類の有機系蛍光
色素を含有することにより、反射スペクトル全体を増大
させることも可能であるが、その場合は、反射スペクト
ルはよりブロードとなる。
【0010】以下、本発明の具体的な実施例を示すが、
これによって本発明が限定されるものではない。図1
は、本発明に用いる発色構造体の一実施例図であり、
(a)は斜視図、(b)は断面図を示す。なお、この構
造は、本発明者の先行出願:特願平4−172926号
に記載のものと同じ構造体であり、凸型翼部1と空気層
との積層構造体である。図1において、1は凸型翼部、
2は芯部、3は台座部、4は孔部である。この実施例に
おいては、中空の孔部4を有する台座部3に、凸型翼部
1と芯部2とからなる構造体が複数個つながった構造を
有している。また、凸型翼部1の横方向の幅Wbは、台
座部3に近い方が大きくなり、台座部3から見て端の方
(紙面上部方向)が小さくなっている。これは光が奥ま
で届きやすいように端部を狭くしたものであり、横方向
の幅Wbが全て同じ構造体を用いてもよい。また、台座
部3の孔部4は次のごとき理由で設けたものである。す
なわち、射出あるいは押出し等の方法で製造する場合
に、溶融材料の流動量の片寄りなどによって形の維持が
困難になることがあるため、台座部の面積と台座部上の
構造体の面積とを同程度にすることが望ましい。しか
し、一般に台座部の面積の方が大きくなるので、孔部4
を設け、孔部を除いた台座部の面積と構造体の面積とが
同程度となるように調節している。図1の構造において
は、可視光線領域の波長の反射、干渉による発色を行う
微細な凸型翼部1と、複数個の凸型翼部1を接続する芯
部2とからなり、断面形状で、複数個の凸型翼部1が連
なっている方向を縦方向、それと直角方向を横方向とし
て、芯部2の横方向の幅をWa、凸型翼部1の横方向の
幅をWbとした場合に、Wb≧3Waを満足し、凸型翼
部1の間は空気層であり、該空気層の縦方向の厚さをd
a、凸型翼部1の縦方向の厚さをdb、凸型翼部1を構
成する材料の屈折率をnbとした場合に、0.02μm
≦da≦0.4μm、0.02μm≦db、1.2≦nb
≦1.8を満足し、かつ、凸型翼部1の縦方向の厚さd
bのばらつき、すなわち厚さdbにおける基準値からの
製造誤差の最大値が40%以下であるように構成してい
る。上記のように構成すると、可視光領域で反射、干渉
による発色機能が生じ、例えば青紫乃至青緑の色調を有
し、かつ見る角度によって異なった色に見える美麗な色
調を発色することが出来る。
【0011】また、上記の構造体に含有させる蛍光色素
としては、青色の蛍光を発する有機系蛍光色素:バイオ
プテリン(Biopterin:Dr.Shricks Lab.製)を用い、そ
れを構造体の構成物質となるポリエチレンテレフタレー
ト(PET:帝人製)と混合し、25mmφ押出機で溶
融混練して、蛍光色素0.5重量%を含むマスターチッ
プ(蛍光色素含有PETチップ)を準備した。このマス
ターチップ(光学屈折率n=1.6)を島部6用とし、
また、ポリスチレン(PS:旭化成製)チップを海部5
用の材料として選択し、図2(a)に示すように、凸型
翼部1、芯部2、台座部3、孔部4とからなる島部6
(島部6の断面形状は図1と同じ)と、それを保持する
海部5との海島複合繊維(中間体)を溶融紡糸法によっ
て作製した。なお、芯部2の本数は8本である。また、
その際の紡糸条件は、スクリュー部温度をそれぞれ28
0℃(PETチップ)、270℃(PSチップ)とし、
ノズル部温度を290℃とし、また、フィラメント数を
1とし、紡糸後の冷却固化は自然空冷とした。なお、延
伸処理による極細化も合わせて行なうため、ここでは4
000m/minの高速紡糸を行なった。その後、この
海島複合繊維の海側部(PS)をメチルエチルケトン
(MEK)で溶解除去し、最終的に図2(b)に示すよ
うな、有機系蛍光色素8を含有するポリエチレンテレフ
タレート層(n=1.6)と空気層7(n=1.0)とか
らなる構造体を得た。この発光構造体は、図示のごと
く、最大幅0.52μmの凸型翼部1を備えた長さ1.5
8μmの芯部2が8本、10μm程度の台座部3に支持
された断面形状の糸である。なお、台座部3の寸法は、
上記芯部2を支持することが出来る大きさであればよ
い。
【0012】上記の構造体の反射スペクトルを顕微分光
光度計(モデルU−6000:日立製作所)を用い、入
射0°/受光0°にて評価した。反射率は、いずれも標
準白色板を基準にして表示している。図3は上記の測定
結果を示す特性図である。図3において、特性曲線Aは
上記構造体の特性スペクトルであり、極めて鮮やかな青
色を発した。なお、その反射率は波長470nm付近で
最大となり、130%を得た。一方、図3において、特
性曲線Bは蛍光色素を含有していない場合の特性であ
る。この構造体は、蛍光色素が含有されていない光学屈
折率n=1.6のポリエチレンテレフタレート(PE
T:帝人製)を島部用材料に、ポリスチレン(PS:旭
化成製)を海部用材料とし、前記図2の実施例と同様の
工程で製造した構造体である。すなわち、この比較例は
図2と同じ形状寸法であり、蛍光色素が含有されていな
い点のみが異なるものである。この構造体の反射スペク
トルは特性曲線(B)に示すようになり、青色を呈する
発色が認められた。そして、その反射率は波長470n
m付近で最大となり、90%を得た。したがって、蛍光
色素を含有させることにより、反射率を40%程度向上
させることが出来ることが判る。
【0013】次に、上記図1、図2のごとき複雑な形状
をした微小構造体の実際の製造方法について説明する。
このような構造体を製造する方法としては、蒸着技術や
樹脂(特に感光性樹脂)などの技術や紡糸技術の応用技
術等を用いることが出来る。以下、紡糸技術の例で説明
する。所定の微細構造を安定的に得るには、芯(前記の
島部6に相当)と鞘(前記の海部5に相当)のダブル溶
融紡糸方法が好適である。例えば、最終的に得たい微細
構造断面(例えば図1や図2の構造)の断面寸法の90
0倍程度の形状を有するノズルをダブル紡糸用ヘッドに
設置し、芯と鞘とに溶融温度または溶媒可溶性の異なる
高分子材料を用いる。例えば、ノズルを通過する芯側材
料としてはポリエチレンテレフタレートを用い、鞘側を
形成する材料としては約230℃の溶融ポスチレンなど
を用い、ヘッドに連結されたそれぞれのエクストリュー
ダからノズル温度290℃、射出圧力600〜850k
g/cm2程度で同時に射出する。そして3〜4mの空
気冷却層を通過させた後、凸型翼部の厚さや凸型翼部間
の間隔等が所望の波長領域の寸法となるように、例えば
1000〜8000m/min程度で延伸させる。その
後、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ベンゾールある
いはトリオールなどのような鞘側材料に対して溶解性の
高い溶媒で処理し、芯側のみを残すことにより、図1や
図2に示すごとき断面形状を有する構造体(例えば糸)
を得ることが出来る。上記の工程で例えば直径が10μ
m程度の糸が得られる。そしてその糸を複数本撚り合わ
せて繊維状にし、紡績することによって織物とすること
が出来る。また、上記のごとき工程で得られた糸をフリ
ージング処理し、それを粉砕することにより、例えば1
0×20×30μm程度の寸法のチップとすることが出
来る。このチップを車体塗装用の塗料の発色光輝材とし
て用い、透明な塗料を用いて車体塗装時のクリア層(最
上層の保護艶出し層)として塗布すれば、美麗な色を実
現することが出来る。なお、本発明の構造体における凸
型翼部間の空隙は極めて微小なので、粘度の大きな塗料
は殆ど入り込むことが出来ず、したがって空気層が保た
れる。
【0014】次に、図6は、本発明の第2の実施例の断
面図である。この実施例は、光学屈折率の異なる2種の
高分子薄膜を積層した構造体に本発明を適用した場合の
例である。まず、光学屈折率1.82のポリフェニレン
サルファイド(PPS:呉羽化学製)に、青色の蛍光を
発する有機蛍光色素:ネオプテリン(Neopterin:Dr.Sh
ricks Lab.製)を1重量%混入させ、25mmφの押出
機で溶融混練して糸状ロッドを作製した。その後、それ
を裁断してマスターチップ(小片)♯1とした。同様
に、光学屈折率1.41のポリフッ化ビニリデン(PV
DF:呉羽化学製)に上記と同じ蛍光色素を1重量%混
入させ、25mmφの押出機で溶融混練して糸状ロッド
を作製し、それを裁断してマスターチップ(小片)♯2
とした。次に、両チップをそれぞれ複合紡糸装置に投入
し、多層並列紡糸法により、図6に示すような交互積層
数が10の交互積層型繊維を製造した。この繊維は、直
径が約20μmであり、蛍光色素を含有したPPS層7
とPVDF層8とが交互に10層積層されたものであ
る。紡糸条件は、紡糸温度300℃、フィラメント数1
とし、また、巻取速度は延伸処理による極細化も合わせ
て行なうため、5000m/minの高速紡糸とし、冷
却固化は自然冷却とした。なお、このような光学屈折率
の異なる2種の物質を交互積層した構造体において、一
方の物質の光学屈折率をna、1層の厚さをdaとし、他
方の物質の光学屈折率をnb、1層の厚さをdbとし、反
射ピーク波長をλとした場合に、光学屈折率に関して
は、1.3≦na、1.1≦nb/na≦1.4であり、1層
の厚さに関しては、λ=2(naa+nbb)を満足す
る範囲(好ましくは4分の1波長であるda=λ/4
a、db=λ/4nb)、に設定すると、自然光の反
射、干渉作用によって鮮やかな色を発色することが出来
る。本実施例の場合には、PPS層7の1層の厚さは
0.08μm、PVDF層8の1層の厚さは0.14μm
であり、この2つの層を形成する高分子の光学屈折率比
は1.82/1.41≒1.3であるため、上記の条件を
満足し、蛍光色素を含有しない場合でも自然光の反射、
干渉作用による発色構造体となっている。上記のように
して得られた図6の交互積層繊維の反射スペクトルを、
前記第1の実施例と同様の方法で評価した結果を図7に
示す。図7において、特性曲線Aは本実施例の特性、特
性曲線Bは蛍光色素を含有しない場合の特性である。図
7に示すように、本実施例の反射率は150%と極めて
高く、しかもシャープなスペクトルを示し、鮮やかなコ
バルトブルーを発色した。なお、蛍光色素を含有しない
場合は、反射率が約60%程度であり、蛍光色素を用い
た効果が明確に示されている。なお、この実施例におい
ては、PPS層7とPVDF層8に含有させる蛍光色素
の含有率を共に1重量%とした場合を例示したが、両者
の含有率を異なった値としてもよい。その場合には、含
有率の多い方に従って特性が決定される傾向がある。
【0015】
【発明の効果】以上、述べたように本発明によれば、従
来にない鮮やかな色調を呈し、見る方向によって色相が
変化する新規な発色構造体を提供することができる。ま
た、暗闇で紫外線を照射した場合でも、構造体自身によ
る成分と蛍光成分の相乗効果で比較的鮮やかな色を呈す
るという副次的な効果も得られる。また、容易に細い繊
維状や微小なチップ状に加工することが出来るので、実
用に適している、という優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例図であり、(a)は構造
体の斜視図、(b)は構造体の断面図。
【図2】図1の構造体の断面図であり、(a)は製造途
中の中間体の断面図、(b)は最終製品の断面図。
【図3】図2の構造体における波長と反射率との関係を
示す特性図。
【図4】本発明における反射スペクトルと蛍光スペクト
ルとの関係を示す特性図。
【図5】本発明における蛍光含有量と明度との関係を示
す特性図。
【図6】本発明の第2の実施例の断面図。
【図7】図6の構造体における波長と反射率との関係を
示す特性図。
【符号の説明】
1…凸型翼部 2…芯部 3…台座部 4…孔部 5…海部(鞘) 6…島部(芯) 7…蛍光色素を含有するポリフェニレンサルファイド
(PPS)層 8…ポリフッ化ビニリデン(PVDF)層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI D01F 1/06 D01F 1/06 6/62 303 6/62 303F 8/14 8/14 Z D03D 15/00 102 D03D 15/00 102Z

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】光学屈折率の異なる2種類以上の構成物質
    が少なくとも一部で積層された構造を有し、自然光の反
    射、干渉作用によって可視光を発色する構造体と、 上記構造体に含有され、上記構造体の発色に対応した蛍
    光を発する蛍光色素と、を有することを特徴とする反
    射、干渉作用による発色構造体。
  2. 【請求項2】上記構造体における上記蛍光物質の含有率
    が、上記構造体の0.01〜1.0重量%の範囲である、
    ことを特徴とする請求項1に記載の反射、干渉作用によ
    る発色構造体。
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