JP4325147B2 - 光反射機能を有する物体 - Google Patents

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Description

【0001】
本発明は光の散乱・回折等の物理作用等により、可視光線、赤外線及び紫外線領域の少なくともいずれかの波長域の光を反射する光学機能物体に係わり、さらに詳しくは、顔料や染料を必要とせず、例えば可視光線領域において光の特定波長を反射して発色し、優れた濃色効果をも発現すると共に、水などによる膨潤・収縮による発色の不安定性を改良した耐水性・撥水性に優れた光反射機能物体と、このような光反射機能を有する物体を用いた物品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光エネルギーは、一般に我々の視覚で認知できる可視光線(波長380nm〜780nm)、それより短かい波長域の紫外線(波長290nm〜380nm)、可視光線より長い波長域の赤外線(波長780nm以上)に区分される。このうち可視光線域は、我々の視知覚と密接に関与しており、この光の下で各種物体の色を感知している。一般に、物体の色はその物体が光の一部を吸収することにより生じる。この原理を利用した着色が従来から用いられてきた顔料や染料を用いた方法であり、現在の我々の身の回りのほとんどの着色および発色はこの方法に基づいている。
【0003】
ところが、これらによる着色は各種顔料や染料自体が必要であるばかりでなく、これらを混練する工程や廃液処理等も必要になり、工程および環境上も問題視されてきている。また、品質的には、物体表面に溶出して質感低下を引き起こしたり、紫外線等による退色に基づく初期品質の低下に伴う意匠性や商品性を損ねたりするといった欠点も少なからず指摘されている。
【0004】
このような問題点を解決するため、顔料や染料などのいわゆる色素を用いることなく、光の干渉、回折などの物理作用を用いた発色手段(広義には構造性発色と称する)が知られている。これは、物体表面やその内部の微細構造と、光との相互作用によって発色するものであり、既にいくつかの公知技術が知られている。
【0005】
例えば、光の干渉反射作用を利用することにより発色する構造体としては、分子配向異方性フィルムを2枚の偏光フィルムで挟んだ構造とすることにより発色する材料が発表されている(繊維機械学会誌Vol.42,No.2,P55(1989)および同誌Vol.42,No.10,P160(1989))。
【0006】
この原理は、第1の偏光フィルムに法線方向からの光が入射すると、このフィルムを通った光は一定方向にのみ振動する光(直線偏光)となる。次に、この直線偏光が45°に配位した分子配向異方性フィルムを通ると、偏光面を回転させて楕円偏光に変わる。そして、この楕円偏光が第2の偏光フィルムを通ると再び直線偏光となるが、その際に、波長によって光の強さが異なるために、それが着色偏光となって色として認識されることになるものである(いわゆる偏光の干渉による発色)。
【0007】
また、屈折率の異なる2種類のポリマー物質を、交互に何十層と積層した構造とすることにより発色する材料も報告されている(特開平4−295804号公報、特許第3036305号)。この原理は、屈折率の異なる交互積層界面で生じるフレネル反射が重なって干渉を起こし、その結果として反射率の波長依存性や反射率そのものの増強や減少を生じるもので、特定波長で特定位相差をもって重なり合うときに現れる発色である(発色波長λ=2(n+n):発色波長λは互いの光学的厚みが等しいとき、すなわち、n=nのとき、最大となる)。
【0008】
例えば、特開平4−295804号公報には少なくとも第1と第2のポリマー物質の屈折率が互いに少なくとも0.03異なり、しかも100nm程度の厚さで積層させたフィルム状の反射性ポリマー物体を開示している。さらに本発明者らも特許第3036305号において、屈折率の異なる2種類の高分子物質からなる交互積層構造を有する繊維状の発色構造体を開示している。後者の発色繊維は非染色の発色繊維であって、見る方向によって色味が変わり、しかもこれと組合せる糸の色によってはその複合効果によって、干渉特有の独特の質感を呈するものである。
【0009】
一方、回折・干渉作用を利用した構造体としては、繊維表面に一定幅の細溝を設けることによって回折・干渉色を発する構造体が提案されている(特開平8−234007号公報)。この原理は、平面あるいは凹面上に多数の所定寸法の溝(間隔と深さ)を規則的に形成させたもの(いわゆる、回折格子のごとく)に光を入射させると、光路差ΔLが生じ、この光路差が波長λの整数倍のとき、反射光が強め合って明るくなるもの(光路差ΔL=mλ :但し、mは回折次数で、m=0,1,2・・・)で、実際には、ある入射角で入った入射光に対し、ある回折角で波長λの発色を与えるものである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のうち、分子配向異方性フィルムを偏光フィルムで挟んだ構造体においては、細い繊維や微小な光輝材用チップ(小片)を安価に、しかも安定して製造することが困難であると共に、色味の鮮やかさの点でも十分ではなかった。また、第1と第2の屈折率の異なるポリマーからなる反射性ポリマー物体においても、細い繊維や微小な光輝材用チップを安価に製造することが困難であるばかりでなく、見る角度によって、即ち、広視野角度になると干渉現象特有の、灰色に見えてしまう(死角がある)という本質的な問題もあった。ここで死角とは、干渉発色フィルムや繊維の照射面に対して、法線方向からの光が入射し、我々の眼でこの法線からαだけずれた位置で見る場合、このαが大きくなればなるほど、多層薄膜干渉理論に基づき、発色波長λが法線方向で見た場合よりも短波長側にシフトし、最終的にはλが可視光領域をはずれて紫外線領域にシフトしてしまい、色として認知できない角度を意味する。
【0011】
また、特許第3036305号において開示した繊維状の発色構造体においても見る方向によって色味が変わるというメリットと裏腹に、やはり広視野角度になると、干渉現象特有の灰色に見えてしまうという問題を内在していた。
【0012】
一方、回折・散乱作用を利用して発色する構造体においては上記のような欠点は少ないものの、CD盤のごとくレインボー色に見え、商品として安価なイメージを与えてしまうものであったり、膜状のものにおいては、特殊な装置や製造方法が必要となったり、実用性に乏しいといった問題があった。これらの問題点を克服するため、光の回折・散乱作用の両者を併用した新規な反射構造体を検討してきたが、いずれも物理現象により光の反射機能を発現させるものであり、当然のことながら各種環境下(雨雪などの高湿下での使用や水周りでの使用、さらにクリーニング処理等、すなわち温度変化、湿度変化、薬品浸漬などの条件下)において、光反射機能を有する構造体内部に規則配列されている微細構造体の寸法がこのような環境によって変化すると、光反射機能も変化することになる。特に可視域では、反射スペクトルにおいて反射強度のみならず、反射ピーク波長も変化してしまうため、色味も変化してしまい、場合によっては実用上問題となることがあり、このような問題点の解消が従来の発色構造体における課題となっていた。
【0013】
【発明の目的】
本発明は、構造性発色機能を備えた従来の発色構造体における上記課題に着目してなされたものであって、光の散乱、回折等の物理作用によって発現する優れた光反射機能を有すると共に、各種の加工条件や実使用環境下においても安定した光反射機能を発現し、このような機能を長期に亘って保持することができる光反射機能物体を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明に係わる光反射機能を有する物体は、可視光線、赤外線及び紫外線の反射特性のうちの少なくともいずれかの光学機能を有する繊維状あるいはフィルム状の物体であって、屈折率の異なる少なくとも第1及び第2の材料からなり、第1の材料からなる同一直径の円柱状微細構造体が第2の材料中に、光の散乱、回折の少なくともいずれかの物理作用に基づく光反射機能を発現するために互いに並列状態に配置され、横断面において一定のピッチで規則的に配置された構造を有する反射機能構造体の最表面に、フッ素系及び/又はシリコン系の撥水剤を含む撥水層を備えている構成としており、このような構成をもって前述した従来の課題を解決するための手段としたことを特徴としている。
【0015】
また、本発明に係わる物品は、織物、編物、あるいは不織布であって、本発明に係わる上記光反射機能物体がその少なくとも一部に用いられていることを特徴としている。さらに、本発明に係わる物品は、塗料、フィルム構造体、あるいはプラスチック部品であって、本発明に係わる上記光反射機能物体を所定の長さに切断した光反射機能チップ、あるいは所定の寸法に粉砕した光反射機能粉末を含有している構成としたことを特徴としている。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて具体的に説明するが、本発明は、これらの図面のみに限定されるものではない。
【0017】
図1ないし図2は、本発明に係わる光反射機能物体を繊維あるいはフィルム状の物体に適用した例を示す概念図であって、図1(a)に示す光反射機能を有する物体1は、反射機能構造体10と、その最表面に形成された撥水層20から構成され、当該反射機能構造体10は、図1(b)に拡大して示すように、第1の材料からなり円形断面を有する複数の微細構造体11(微細構造体群)が、これとは屈折率が異なる第2の材料からなり矩形断面をなすマトリックス12の内部に、直交配列状に規則的に配列されている。
【0018】
一方、図1(c)に示す光反射機能を有する物体1は、同様に反射機能構造体10と撥水層20からなるものであるが、反射機能構造体10の微細構造体11が、第2の材料からなるマトリックス12内において六角形配列状に規則的に配列されたものである。
【0019】
また、図2(a)に示す光反射機能を有する物体1は、径および配列の異なる微細構造体11を備えた2種類の反射機能構造体10a及び10bを積み重ねた構造を有する反射機能構造体10を備え、これら第1及び第2の反射機能構造体10a及び10bからなる反射機能構造体10の最表面に撥水層20を形成したものである。第1の反射機能構造体10aにおいては、微細構造体11が直交配列状に配列されており、第2の反射機能構造体10bにおいては、内部の微細構造体11が直交配列状に互いに密着して十分な規則性をもって配列したものとなっている。
【0020】
図2(b)に示す光反射機能を有する物体1は、上下に位置する第1の反射機能構造体10aの間に、第2の反射機能構造体10bを挟んだサンドイッチ構造をなす反射機能構造体10を有し、このような構造の反射機能構造体10の最表面に撥水層20を備えたものである。また、図2(c)に示すように、第1の反射機能構造体10a内部の微細構造体11の配列を図1(b)に示したような六角形配列とすることもできる。
【0021】
なお、当該光反射機能物体1の断面形状は、必ずしも上記したような矩形状である必要はなく、図3に示すように、円形、扁平、多角形等であっても構わない。
【0022】
これらの光反射機能を有する物体1は、可視光線、赤外線および紫外線の反射特性のうちの少なくともいずれかの光学機能を有する繊維状あるいはフィルム状の物体であるが、このような光学機能は、反射機能構造体10が屈折率の異なる少なくとも第1及び第2の材料からなり、第2の材料からなるマトリックス12によって取り囲まれた第1の材料からなる微細構造体11が、実質的に行列状に十分な規則性をもって配列形成されていることによって、光の散乱、回折の少なくともいずれかの物理作用に基づいた光反射機能を有することに基づく。
【0023】
なお、本発明において「物理作用に基づいて光反射機能を発現する物体」とは、光の散乱、回折等に基づいて可視光線、赤外線、紫外線等の反射特性のうちの少なくともいずれかの光反射機能を有するもので、単独現象で発現していても良いし、複数の現象で発現しても構わない。そして、そのためには、第2の材料からなるマトリックス12の内部に、第1の材料からなる微細構造体11が、同一直径で、しかも横断面におけるx方向およびy方向に、所定のピッチでもって規則的に配列していることが必要となる。なお、ピッチとは隣接する微細構造体11の中心間距離を意味する。
【0024】
なお、上記物理現象について、一般に、「光の散乱」とは主に、マクロな規則性を有している系に適用され、「散乱」を発現する中で、さらにミクロ領域まで規則性が進んだ系として、「回折現象」や「干渉現象」等が分類されており、本発明における「物理作用」とは、光の散乱、回折、干渉等の現象を含むものである。
【0025】
本発明に係わる光反射機能を有する物体1は、第1の材料からなる微細構造体11が第2の材料からなるマトリックス12の内部に、上記のように規則性をもって配列された反射機能構造体10の最表面に撥水層20を形成したものであり、これによって反射機能構造体10の各種環境下における水分などによる膨潤、収縮に基づく寸法変化を防止し、光反射機能の安定な発現と長期保持を可能にしたものである。
【0026】
一般に物体の吸水は、物体の表面状態にも支配されるが、物体の構造自身(分子構造や原子構造など)によるところが大きい。今、ポリマーを例にみると、吸水性の大きなポリマーとしては、セルロース系、酢酸ビニル系、ポリビニル系、ポリアミド系ポリマーなどを挙げることができ、特にポリアミド系ポリマー(ナイロン6、ナイロン66など)は吸水性が大きく、各種後加工処理の工夫や実使用時の取り扱いに留意する必要があることが知られている。
【0027】
なお、本発明でいう撥水層20、あるいは撥水剤とは、光反射機能に寄与する反射機能構造体10の最表面が撥水処理されるものであれば特に限定されないが、より好ましくは反射機能構造体10の最表面を構成する材料の屈折率nよりも低屈折率であることが望ましい。撥水層20の屈折率nが低いと、当初の目的である耐水性・撥水性機能による寸法変化抑制による発色安定性に加え,光反射機能を有する物体1の色味を視覚的によりはっきりさせる効果(濃色化効果)が発現できるようになる。
【0028】
このとき、反射機能構造体10の最表面を構成する材料の屈折率nと撥水層20の屈折率nの間の定量的な関係については、現時点では必ずしも明確になっていないが、両者の差(n −n)が0.03以上であることが望ましく、さらには0.1以上であることがより好ましい。これは、色味をはっきりさせる効果(濃色化)の定量的な値として、色の3属性(色相、明度、彩度)のうちの明度(L値)を一つの尺度としたとき、光反射機能物体1の最外面に位置する撥水層20の屈折率nとその明度(L値)との関係を調べたところ、反射機能構造体10の最表面を構成する材料の屈折率nに比べ、屈折率nの値が小さくなるに従って、その明度(L値)も小さくなり、(n −n)値が0.03以上となると、色味が視覚的にはっきりとしてくることによるものである。
【0029】
また、(n −n)値の上限値については使用材料糸の組み合せにより一義的には決定できないが、反射機能構造体10の最表面を構成する材料が例えばポリマー系であれば、化学構造(分子構造)から理論上計算される屈折率nが最大1.9程度であり、撥水層20の屈折率は、下記に示す撥水剤を考慮すると概ね1.4前後であることから0.5程度となる。
【0030】
なお、反射機能構造体10の最表面を構成する材料とは、図1に示した光反射機能を有する物体1のように、第1の材料からなる微細構造体11と第2の材料からなるマトリックス12のみからなる反射機能構造体10を使用した場合には、マトリックス12を構成する第2の材料が最表面の材料ということになるが、反射機能構造体10は、その強度を増したり、光反射機能や表面の光沢度を向上させたりするために、その表面を第1あるいは第2の材料、あるいはこれらとは異なる第3あるいは第4の材料によって一次被覆あるいは二次被覆して保護層を形成することも必要に応じて可能であり、このような保護層を設けた場合には、この被覆層材料が最表面の材料ということになる。
【0031】
このような撥水層20に用いられる撥水剤としては、フッ素系、シリコン系の撥水剤を挙げることができる。なお、シリコン系のものとしてはジメチルポリキロキサン等が、フッ素系撥水剤としては有機フッ素系(例えば、パーフルオロアルキルアクリレート系)が例示されるが、反射機能構造体10を構成する材料がポリマー系であれば、親和性や風合い等を考慮すると、フッ素系撥水剤が望ましく、中でも有機フッ素系(例えば、パーフルオロアルキルアクリレート系)がより好ましい。
【0032】
また、これら撥水性能の耐久性を向上させるため、前記撥水剤にさらに、ブロックイソシアネート系樹脂、メラミン樹脂等を架橋剤として用いても構わない。その場合、撥水層20の量としては、反射機能構造体10の重量に対し、0.1〜30質量%程度であることが望ましい。撥水層20が反射機能構造体10の質量に対して、0.1%に満たない場合は耐水性・撥水性の効果が乏しくなり、逆に30%を超えた場合は反射機能構造体10に対する厚みが増大し、フレキシビリティーや風合いを損ねるばかりでなく、反射機能構造体10との間に剥離が生じやすくなってくる。また、色味をはっきりさせる効果(濃色化効果)をより効率的にするためには、1.0〜30%程度であることが望ましい。
【0033】
この色味をはっきりさせる効果の因子は必ずしも明確ではないが、当該光反射機能物体1に入射した光の表面反射光の大小にも関係しているものと考えられる。すなわち、反射機能構造体10に付与される低屈折率の撥水層20の量が少ないと当該光反射機能物体1の最表面層も薄くなることから、層厚のムラが発生して、表面反射光量Rsのばらつきが大きくなるため、安定して表面反射光を低減し難くなってしまう。また、さらに撥水層20の量が少ないと、その最表面層が薄いため、この層から反射される反射光Rsと、物体内部における微細構造体11からの散乱・回折作用による位相のそろった反射光Riの両者で整合がとれ難くなり、結果的に反射強度Rが低下したり、変動しやすくなる。撥水層20の最表面層の厚さは、屈折率の大きさにより一義的には決定できないが、反射光の波長λ1より大きい方が安定することから好ましい。
【0034】
また、撥水層20として、撥水剤と架橋剤を併用する場合には、この架橋剤は、繊維に対する質量比で0.05〜5%程度の範囲で用いることが望ましく、撥水剤と架橋剤との割合は概ね、4:1〜7:1の範囲で用いるのが好ましい。また、これら撥水剤の処理方法としては、反射機能構造体10が繊維状やフィルム状の場合は、例えば、含浸法やスプレー法等の公知の方法により付与し、乾燥、熱処理を行えばよい。あるいは、紡糸工程で吐出される糸に直接付与したり、紡糸後の未延伸糸を延伸する工程(熱延伸工程)において、オイリングロール法等で付与し、乾燥、熱処理を行っても構わない。一方、織物、編物、不織布等の場合は一般に行われているパディング法、スプレー法等の公知の方法で行えばよい。
【0035】
また、一般に繊維では、各種後加工処理(染色処理、柔軟処理等)や製織加工、プリント加工等を施したり、さらには実用環境においてもクリーニング等の処理を行うので、沸水下での履歴(100℃の沸騰水で5分間の浸漬)による寸法変化も考慮しておかなくてはいけない。当該光反射機能物体1は、前述のように、光反射機能を有する物体1の内部に規則配列されている微細構造体11の寸法・形状がこのような環境により変化すると、光反射機能も変化してしまうため、沸水収縮率は3%以下となるようにすることが望ましい。沸水収縮率3%以下とすることにより、例えば可視光域での反射スペクトルにおける反射ピーク波長λ1(nm)の変化も、20nm程度のシフトに留まり、大きな色味の変化を引き起こすことなく、品質的に安定したものとなる。
【0036】
反射機能構造体10を構成する材料については、少なくとも第1の材料がポリマー系、ガラス系、セラミックス系より成る群から選ばれる1種類以上の材料よりなることが望ましい。これは、反射機能構造体10が屈折率の異なる少なくとも第1、第2の材料からなり、かつ第2の材料によって取り囲まれた第1の材料からなる複数の微細構造体11が、実質的に行列状に十分な規則性をもって配列形成されていることにより光の散乱、回折の少なくともいずれかの物理作用に基づいた光反射機能を発現する物体であることから、実質的に光透過性を有する材料系であること、繊維状あるいはフィルム状に比較的容易に加工(しかも連続状に加工できることが望ましい)できる系であること等の観点に基づく。
【0037】
ガラス系の材料としては例えば、通常のクラウンガラス、フリントガラス、Eガラス、Sガラス、石英ガラスなどを、また、セラミックス系の材料としては、例えば、Al、BeO、CaOなどが挙げられる。さらに、より多くの応用品に適用するため、例えば紫外線・赤外線の反射や、可視光領域で死角のない発色化のための織編物やフィルム、成形品として、あるいはまた、それらを所定の長さに切断した微小なチップ(小片)として光輝材として使用した加飾性・高意匠性用途には、実質的に光透過性を有するポリマーがより望ましい。
【0038】
さらに望ましくは,前記ポリマー系が、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系、ビニル系、ポリエーテルケトン系、ポリサルファイド系、フッ素系、ポリカーボネート系の単体もしくはこれらのブレンド、あるいはこれらのうちの2種以上ポリマーの共重合体のいずれかであることが好ましい。これらの材料を使用することにより、繊維状、フィルム状に紡糸あるいは押出しした際に、紡糸(押出し)方向の屈折率をより大きくできる、いわゆる複屈折Δnを大きくできるという効果を生むため、光反射機能をより一層向上できる。
【0039】
一方、第2の材料は、第1の材料と屈折率が異なれば特に限定されないが、当該物体1を安定して成形するという点、さらに物体1を用いた各種物品の観点から、第1の材料と同系統の材料であることが好ましい。例えば、第1の材料がポリマー系であれば、第2の材料もポリマー系とすることが好ましい。
【0040】
また、当該物体1の発色機構は、前述のように、入射光と物体1の内部に規則的に配列されている複数の微細構造体11(微細構造体群)との相互作用によって発現するもの(物理発色)であるため、当該光反射機能物体1の表面(特に入射面側)に油や各種着色性物質、埃、塵などが付着、吸着しやすい場合には、それによって汚れ層を形成してしまい、当該物体1の内部へ入り込む光量が減じる結果、発色性が損なわれることになってしまう。本発明に係わる光反射機能物体1に用いる材料系は、例えばパラフィン系やフッ素系などのように、概ね撥油性や防汚性の機能を持ち合せているが、撥水層20に帯電防止剤を付与することにより、防汚性をより一層向上させることができる。
【0041】
図4(a)および(b)は、撥水層20に帯電防止剤が付与されず、その表面に汚れが生じた場合と、帯電防止剤が付与されて汚れが付着していない場合について、光のパスを示したものである。なお、図中の矢印の太さの違いは、光量の大小の目安として示している。
【0042】
すなわち、図4(a)に示した帯電防止剤が付与されない場合においては、撥水層20の表面に汚れ層が形成されやすく、汚れ層3が形成された場合には、当該光反射機能物体1に入射した光4は、その一部が表面で反射される(表面反射光5)が、残りの光は屈折して汚れ層3に入り、この汚れ層3で吸収されることになる。従って、物体1の内部に入っていく透過光6の量(光量)も低下し、結局、回折・散乱作用による反射光7の特定波長の光の量も少なくなる(すなわち、反射率も小さくなる)。また、色味に関しても、この汚れ層3で吸収されることによる色味と、回折・散乱作用による発色(物理発色)との色との混合色となってしまい、回折・散乱作用による本来の澄んだ色・深みのある色の発現ができなくなってしまう。
【0043】
これに対して、撥水層20に帯電防止剤が付与されていると、図4(b)に示すように、顕著な汚れ層3が形成されないため、当該物体1の表面に入射した光4は、一部は表面で反射される(表面反射光5)が、それ以外の残りの光は屈折して、そのほとんどが物体1の内部に透過光6として入り、反射機能構造体10の内部の微細構造体11と作用して、狙いとする回折・散乱作用による反射光7を発現するようになる。なお、使用する撥水剤との組合せにもよるが、例えば、フッ素系の撥水剤の場合、特に、アニオン系の帯電防止剤を付与することにより、撥水性に加え、防汚性もさらに向上することがわかった。
【0044】
このようなアニオン系帯電防止剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸塩、アルキルジフェニルスルホン酸塩などのスルホン酸塩系帯電防止剤やアルキルリン酸エステル、アルキル亜リン酸塩、アルキルホスホン酸、アルキルホスホン酸エステル等の含リン系帯電防止剤が挙げられる。なお、帯電防止剤の比率は特に限定されないが、反射機能構造体10に対して、質量比で0.1〜10%、好ましくは0.5〜3.0%である。なお、この帯電防止剤は、先の撥水剤や架橋剤と共に、混合処理剤として用いるのが好ましい。
【0045】
また、このように撥水剤が、あるいは撥水剤と帯電防止剤が付与された撥水層20を備えた光反射機能物体1を少なくとも一部に用いて、他の合成繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系合成繊維、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド系合成繊維、ポリビニル系繊維、ポリアクリルニトリル繊維)と組み合わせて使用しても構わないし、あるいはトリアセテート繊維等の半合成繊維や木綿等の天然繊維と組み合わせても構わない。このように組み合わせることにより、他の繊維の優れた物性を取り込むことができ、優れた商品とすることができる。
【0046】
さらに、当該光反射機能物体1を他の合成繊維、半合成繊維、天然繊維などと組合せて織物、編物、不織布化した後、通常の撥水処理を行っても構わない。なお、撥水処理と同時にあるいは別個に、柔軟処理や難燃処理等をおこなっても一向に構わない。
【0047】
また、撥水層20を備えた本発明の光反射機能物体1を数百本から数千本というオーダで、ある断面形状(例えば、円形状)になるように束ねた状態にしてから機械的にカッター等で切断することにより、微小なチップ(小片)とすることも可能である。具体的には、適切な含浸液(例えば、水)を使用して当該物体1を数千本程度に集合束ねて直径数十mmの集合体とした後、集合体の送り出し機構を備えた自動カッターで連続的に、数十μmから数十mmといった所定の長さに切断することも可能である。なお、このような切断(チッピング)の方法は、例えば、繊維機会学会編の「繊維工学(II) 繊維の製造、構造体及び物性」の第116頁や、同学会編の「繊維工学(III) 繊維の製造、構造体及び物性」の第233〜235頁に記載されている。
【0048】
また、本発明に係わる光反射機能物体1を上記のごとく集合束ねた後、例えば、フリージング処理し、各種方法によって粉砕して所定の長さに粉砕した粉末体とすることも可能である。これらはいずれも従来にない、優れた色材として各種分野に幅広く適用できるものである。
【0049】
さらに、このような微小なチップ(小片)や粉末体を光輝材として、塗料やフィルム構造体、プラスチック等の各種成形体に適用することができ、光輝材使用による光反射機能を発揮させることができる。例えば、自動車用塗装としては、外板塗装、ホイールやエンブレム表面、テーブルフィッシャ、インパネ、ドアトリム等に適用可能であり、また成形体としては、バンパー、エアロパーツ等に適用することができる。また、自動車分野以外では、家電製品や玩具等のハウジング、建材、スポーツ製品、インテリア製品等の各種表面意匠材としても適用できる。
【0050】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、これら実施例によって本発明が限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
微細構造体11を形成するための第1の材料として、平均屈折率n=1.53のナイロン6(Ny6)を使用し、この微細構造体11を取り囲み、所定の規則性配列を保持するためのマトリックス12を構成する第2の材料として、平均屈折率n=1.63のポリエチレンテレフタレート(PET)を選択し、下記条件のもとに、図1(a)に示すような直交配列型をなす矩形型の反射機能構造体10(青色発色)を狙って紡糸すると共に、その紡糸工程中に撥水層20を付与して、光反射機能を有する物体1を得た。
【0052】
すなわち、口金として、特開平8−226011号公報に記載の複合紡糸口金を一部修正したものを準備し、これを溶融複合紡糸装置に装着したうえで、紡糸温度285℃、巻き取り速度2km/minの条件下で、同一吐出量のもと、未延伸糸を得、この未延伸糸に有機フッ素系撥水剤(パーフルオロアルキルアクリレート)を反射機能構造体10に対して質量比で10%付与しながら巻き取った。そしてさらに、この未延伸糸に、延伸倍率3倍で熱処理と細径化を兼ねて、熱延伸処理を施し、矩形型断面の光反射機能を有する物体1を得た。なお、上記有機フッ素系撥水剤からなる撥水層20の屈折率nは、1.38であり、したがって反射機能構造体10の最表面材料との屈折率の差(n −n)値は、0.25であった。
【0053】
得られた光反射機能物体1(糸)の断面を電子顕微鏡で観察したところ、その内部には、1本当たり、平均直径D=190nmの円柱体からなる微細構造体11が平均ピッチP=280nm(12行×60列の直行配列型)で規則的に配列していることが確認された。そして、この単糸を黒板に整列巻きした試料とし、この試料を積分球を具備した分光光度計(日立製作所製モデルU−4000を改良したもの)を用いて、可視光領域で反射スペクトルを測定した。なお、反射率は標準白色板を基準とした。得られた反射スペクトルは、波長λ=476nmにメインピークをもち、その反射率Rは72%、しかもその波長におけるスペクトルの半値幅Bも約86nmと小さく、急峻なスペクトル形状を示した。また、角度0°(法線方向)での目視による色味は青色系を示した。
【0054】
(実施例2)
微細構造体11を形成するための第1の材料として、平均屈折率n=1.59のポリスチレン(PS)を、この微細構造体11を取り囲み、所定の規則性配列を保持するためのマトリックス12を構成するための第2の材料として、平均屈折率n=1.63のポリエチレンテレフタレート(PET)を選択し、これ以外は上記実施例1と同様の条件下で、図2(b)に示すような矩形型をなし、3段構造(第1の反射機能構造体10a/第2の反射機能構造体10b/第1の反射機能構造体10a)の反射機能構造体10を得た。なお、撥水層20としては、実施例1と同様にパーフルオロアルキルアクリレートを反射機能構造体10に対して質量比で20%付与した。したがって反射機能構造体10の最表面材料との屈折率の差(n −n)値は、上記実施例1と同様0.25となる。
【0055】
得られた糸の断面を電子顕微鏡で観察したところ、その内部には上部反射機能構造体10aと、中央反射機能構造体10bと、下部反射機能構造体10aが積木状に配置され、上部および下部構造体10aの内部には、平均直径D=0.09μmの円柱体からなる微細構造体11が平均ピッチP=0.28μm(3行×60列の直交配列型)で、また、中央部の反射機能構造体10bには、平均直径D=0.07μmの円柱体からなる微細構造体11がx方向の平均ピッチPx=0.07μm、 y方向の平均ピッチPy=0.14μm(12行×60列の直交配列型)で規則的に配列していることが確認された。
【0056】
この単糸を黒板に整列巻きした試料とし、この試料を上記分光光度計を用いて、可視光領域で反射スペクトルを同様に測定した。その結果、得られた反射スペクトルは、波長λ=472nmにメインピークをもち、その反射率Rは71%、しかもその波長におけるスペクトルの半値幅Bも94nmと小さく、スペクトルとして急峻な形状を示し、また角度0°(法線方向)での目視による色味も青色系を示した。
【0057】
(実施例3)
実施例1と同様のポリマーを使用し,図2(b)に示すような矩形型の3段構造(第1の反射機能構造体10a/第2の反射機能構造体10b/第1の反射機能構造体10a)からなる青色発色する反射機能構造体10を狙って紡糸した。これ以外は、上記実施例1と同様の条件とし、なお、撥水層20としては、ジメチルポリキロキサンを反射機能構造体10に対して質量比で5%付与した。なお、上記ジメチルポリキロキサンからなる撥水層20の屈折率nは、1.41であり、したがって反射機能構造体10の最表面材料との屈折率の差(n −n)値は、0.21となる。
【0058】
得られた糸の断面を電子顕微鏡で観察したところ、糸断面形状は矩形をなし、その内部には上部反射機能構造体10aと、中央反射機能構造体10bと、下部反射機能構造体10aが積木状に配置され、上下構造体10aの内部には、平均直径D=0.09μmの円柱体からなる微細構造体11が平均ピッチP=0.28μm(3行×60列の直交配列型)で、また、中央部の反射機能構造体10bには、平均直径D=0.07μmの円柱体からなる微細構造体11がx方向の平均ピッチPx=0.07μm、 y方向の平均ピッチPy=0.14μm(12行×60列の直交配列型)で規則的に配列していることが確認された。
【0059】
この単糸を黒板に整列巻きした試料とし、この試料を上記分光光度計を用いて、可視光領域で反射スペクトルを同様に測定した。その結果、得られた反射スペクトルは、波長λ=482nmにメインピークをもち、その反射率Rは92%、スペクトルの半値幅Bは約78nmと極めて小さく、スペクトルとして急峻で、角度0°(法線方向)での目視による色味も緑青色系であった。
【0060】
(実施例4)
実施例1と同様のポリマーを使用し、図2(c)に示すような矩形型の2段構造(第1の反射機能構造体10a/第2の反射機能構造体10b)からなる緑色発色する反射機能構造体10を狙って紡糸した。撥水層20としては、ジメチルポリキロキサンを反射機能構造体10に対して質量比で10%付与し、これ以外は、上記実施例1と同様の条件とた。したがって反射機能構造体10の最表面材料との屈折率の差(n −n)値は、実施例3と同様に0.21となる。
【0061】
得られた糸の断面を電子顕微鏡で観察したところ、糸断面形状は矩形をなし、その内部には上部反射機能構造体10aと下部反射機能構造体10bとが積木状に配置され、上部構造体10aの内部には、平均直径D=0.16μmの円柱体からなる微細構造体11が平均ピッチP=0.28μm(7行×60列の六角形配列型)で、また、下部構造体10bの内部には、平均直径D=0.08μmの円柱体からなる微細構造体11がx方向の平均ピッチPx=0.08μm、 y方向の平均ピッチPy=0.16μm(12行×60列の直交配列型)で規則的に配列していることが確認された。
【0062】
この単糸を黒板に整列巻きした試料とし、この試料を上記分光光度計を用い、可視光領域で反射スペクトルを同様に測定した。得られた反射スペクトルは、波長λ=520nmにメインピークをもち、その反射率Rは72%、スペクトルの半値幅Bは約89nmと極めて小さく、スペクトルとして急峻で、角度0°(法線方向)での目視による色味も緑色に発色していることが確認された。
【0063】
(実施例5)
帯電防止剤としてアルキルスルホン酸塩を反射機能構造体10に対する質量比で1.5%となるように撥水層20に添加したこと以外は、上記実施例1と同様の要領によって光反射機能を有する物体1を得た。
【0064】
(実施例6)
帯電防止剤としてアルキルリン酸エステルを反射機能構造体10に対する質量比で1.5%となるように撥水層20に添加したこと以外は、実施例2と同様の要領によって光反射機能を有する物体1を得た。
【0065】
(実施例7)
帯電防止剤としてアルキルスルホン酸を反射機能構造体10に対する質量比で0.8%となるように撥水層20に添加したこと以外は、実施例3と同様の要領によって光反射機能を有する物体1を得た。
【0066】
(実施例8)
実施例1と同様のポリマーを使用し、パーフルオロアルキルアクリレートからなる撥水層20を反射機能構造体10に対する質量比で0.06%付与したこと以外は、実施例1と同一条件のもとに、図1(a)に示すような光反射機能を有する物体1(矩形型の青色発色する物体)を得た。
【0067】
(実施例9)
実施例1と同様のポリマーを使用し、ジメチルポリキロキサンからなる撥水層20を反射機能構造体10に対する質量比で0.05%付与したこと以外は、実施例3と同様の紡糸条件のもとに、図2(b)に示すような、矩形型で3段構(第1の反射機能構造体10a/第2の反射機能構造体10b/第1の反射機能構造体10a)からなる反射機能構造体10を備えた光反射機能を有する物体1を得た。
【0068】
(比較例1)
撥水層20を備えていないことを除いて、実施例2と同一条件のもとに、図2(b)に示すような矩形型で3段構造(第1の反射機能構造体10a/第2の反射機能構造体10b/第1の反射機能構造体10a)を有する反射機能構造体10を備えた光反射機能を有する物体を得た。
【0069】
(比較例2)
撥水層20を備えていないことを除いて、実施例4と同様の条件のもとに、図1(c)に示すような矩形型をなし、緑色発色する光反射機能を有する物体を得た。
【0070】
上記によって得られた光反射機能を有する物体に対して、下記の要領による試験をそれぞれ実施し、吸水処理による寸法変化率、および吸水処理後の反射ピーク波長λmax、および防汚性を求めた。これらの結果を各光反射機能物体の諸元および吸水処理後の反射ピーク波長λmaxと共に、表1にまとめて示す。
【0071】
なお、吸水処理による寸法変化率Sおよび、防汚性の測定要領は以下の通りである。
【0072】
〔寸法変化率〕
上記実施例および比較例によって得られた連続する光反射機能物体(糸)から、長さ10cmの試料をそれぞれ5本切り出し、この状態での長さを測定し、その平均値を初期値Loとする。これら試料を100℃の沸騰水中に30分間浸漬した後、取り出して5試料の長さを測定し、その平均値を処理後の長さLaとする。これらの測定値から、寸法変化率Sを次式により算出した。
S(%)={(Lo−La)/Lo}×100
【0073】
〔防汚性評価〕
上記実施例および比較例によって得られた光反射機能物体(糸)を黒地のプラスチック製板に整列巻きしたものを評価用試料とした。当該試料に対する自然環境(屋外放置)下での6ヶ月間の暴露試験前後の明度Lをミノルタ製色彩計(R−300)を用いて測定し、その色差Δで判断すると共に、目視による官能評価も併用した。表1中には、これらの総合評価として、防汚性が低いものを1、防汚性が高いものを5とする5段階評価結果を記載した。
【0074】
【表1】
Figure 0004325147
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係わる光反射機能を有する物体は、第1の材料からなる同一直径の円柱状微細構造体が屈折率の異なる第2の材料中に、光の散乱、回折の少なくともいずれかの物理作用に基づく光反射機能を発現するために互いに並列状態に配置され、横断面において一定のピッチで規則的に配置された構造を有する反射機能構造体の最表面にフッ素系やシリコン系の撥水剤を含む撥水層を備えた繊維状あるいはフィルム状をなすものであるから、反射機能構造体の規則的な微細構造に基づいて、光の回折・散乱作用特有の色調の深み感を備えた優れた光反射機能を発揮すると共に、耐水性、撥水性を向上させることができ、光反射機能物体の吸水による寸法変化を抑制できるようになり、安定した光反射機能を長期に亘って発現することができるという極めて優れた効果がもたらされる。
【0076】
また、撥水層として、反射機能構造体の最表面を構成する材料よりも低屈折率の撥水剤を使用することにより、さらに色味をはっきりさせることができ、吸水による寸法変化抑制と色味をはっきりさせる効果(濃色化効果)の両立が可能なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a) 本発明に係わる光反射機能を有する物体の基本構造として微細構造体が直交配列された構造例を示す斜視図である。
(b) 図1(a)に示した微細構造体の拡大斜視図である。
(c) 本発明に係わる光反射機能を有する物体の基本構造として微細構造体が六角形配列された構造例を示す斜視図である。
【図2】(a) 本発明に係わる光反射機能を有する物体の他の実施形態として径及びピッチが異なる2種類の微細構造体を組み合わせた構造例を示す斜視図である。
(b) さらに他の実施形態として径及びピッチが異なる2種類の微細構造体を組み合わせたサンドイッチ型の構造例を示す斜視図である。
(c) さらに他の実施形態として径、ピッチおよび配列形態が異なる2種類の微細構造体を組み合わせた構造例を示す斜視図である。
【図3】(a)ないし(g)は本発明に係わる光反射機能を有する物体の断面形状例を示すそれぞれ断面図である。
【図4】(a)及び(b)は撥水層に帯電防止剤が付与された場合と付与されていない場合の光のパスを比較して示す断面説明図である。
【符号の説明】
1 光反射機能を有する物体
10(10a,10b) 反射機能構造体
11 微細構造体(第1の材料)
12 マトリックス(第2の材料)
20 撥水層

Claims (16)

  1. 可視光線、赤外線及び紫外線の反射特性のうちの少なくともいずれかの光学機能を有する繊維状あるいはフィルム状の物体であって、
    屈折率の異なる少なくとも第1及び第2の材料からなり、第1の材料からなる同一直径の円柱状微細構造体が第2の材料中に、光の散乱、回折の少なくともいずれかの物理作用に基づく光反射機能を発現するために互いに並列状態に配置され、横断面において一定のピッチで規則的に配置された構造を有する反射機能構造体の最表面に、フッ素系及び/又はシリコン系の撥水剤を含む撥水層を備えていることを特徴とする光反射機能を有する物体。
  2. 反射機能構造体の最表面を構成する材料の屈折率をn、撥水層の屈折率をnとするとき、両屈折率nおよびnの間に、次式の関係を有していることを特徴とする請求項1に記載の光反射機能を有する物体。
    −n≧0.03
  3. フッ素系撥水剤が有機フッ素系撥水剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光反射機能を有する物体。
  4. 反射機能構造体に対して、質量比で0.1〜30%の撥水層が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の光反射機能を有する物体。
  5. 100℃における沸水収縮率が3%以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1つの項に記載の光反射機能を有する物体。
  6. 少なくとも第1の材料がポリマー系、ガラス系、セラミックス系からなる群から選ばれる1種以上の材料からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の光反射機能を有する物体。
  7. 前記ポリマー系材料が、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系、ビニル系、ポリエーテルケトン系、ポリサルファイド系、フッ素系、ポリカーボネート系ポリマーの単体もしくはこれらのブレンド、あるいはこれら2種類以上の共重合体のいずれかであることを特徴とする請求項に記載の光反射機能を有する物体。
  8. 撥水層が帯電防止剤を含有していることを特徴とする請求項1〜のいずれか1つの項に記載の光反射機能を有する物体。
  9. 帯電防止剤がアニオン系のものであることを特徴とする請求項に記載の光反射機能を有する物体。
  10. アニオン系帯電防止剤がスルホン酸塩系及び/又は含リン系のものであることを特徴とする請求項記載の光反射機能を有する物体。
  11. 請求項1〜10のいずれか1つの項に記載の物体が少なくとも一部に用いられていることを特徴とする織物、編物及び不織布からなる群から選ばれる物品。
  12. 請求項11に記載の物品の表面に、さらに撥水剤を付与してなることを特徴とする物品。
  13. 請求項1〜10のいずれか1つの項に記載の物体を所定の長さに切断してなることを特徴とする光反射機能チップ。
  14. 請求項1〜10のいずれか1つの項に記載の物体を所定の寸法に粉砕してなることを特徴とする光反射機能粉末。
  15. 請求項13記載の光反射機能チップを含有していることを特徴とする塗料、フィルム構造体およびプラスチック部品からなる群より選ばれる物品。
  16. 請求項14記載の光反射機能粉末を含有していることを特徴とする塗料、フィルム構造体およびプラスチック部品からなる群より選ばれる物品。
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