JP3029232B2 - 水際緑化用植生マット及び該マットを使用した植生工法 - Google Patents

水際緑化用植生マット及び該マットを使用した植生工法

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  • Pit Excavations, Shoring, Fill Or Stabilisation Of Slopes (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば河岸やダム湖等
の水際法面を、植生を導入して緑化を図るために用いら
れる植生マット及び該マットを使用した植生工法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】河岸やダム湖等の水際法面は、道路造成
により形成される法面とは異なり、緑化のための植生基
盤を形成しても、冠水して植生基盤が流亡するため、一
般に行われている有機客土吹付工法は適用できない。そ
こで、水を多量に含んだ植生材料を植生袋に注入する方
法が提案されている。この方法は、河岸の水際法面等に
施工して植生袋が冠水したとしても、植生材料は植生袋
内に保持されているために流亡することがなく、水際緑
化に適用できる数少ない方法である。ところが、植生材
料の注入作業の効率は添加する水分量によって非常に左
右されやすく、水分が若干多いと植生材料自体の注入量
が不足して所定厚さの植生基盤が得られず、また水分量
が若干少ないと植生材料の流動性が悪くなり、注入途中
に詰まってしまうため、常に微妙な水分管理を必要と
し、品質管理が難しく、施工性の良い方法ではなかっ
た。しかも、導入しようとする植生は、種子からの導入
に限られ、根株は注入途中に詰まるために使用不可能で
あった。
【0003】また、上記した工法に対し、実公平3−2
0348号公報では、天然繊維フェルトで植生材料の下
面を、布で上面を包被して縫着したマットが提案されて
いる。これによると、植生基盤の造成が工場生産による
マットの敷設にて簡易に行えるが、水際法面に施工した
場合、下面の天然繊維フェルトが腐蝕しにくいため根の
活着が悪い。さらに上面の布の目合いが詰み過ぎている
ことより、牧草でも双葉のもの及び牧草以外 の植物の
通芽が悪く、最終的には布が完全に腐蝕することより、
冠水とともに植生材料が流亡するため、水際法面には適
用できなかった。
【0004】また、本願出願人は、特開平6−5775
4号において、植生材料を少なくとも部分的に分解する
性状の表裏シートで包被して、更に表面側にネットを付
設してなる植生マットを提案している。これは、雨水に
より前記表裏シートが速やかに分解されて植生材料が法
表面に密着するよう構成されており、植生マットを法面
に敷設・固定するだけで植生基盤を形成できるものであ
る。しかしこの植生マットは、植生材料を包被する表裏
シートの速やかな分解性を重視しているため、道路等の
法面には有効に適用できるが、河岸の水際法面等、植生
マットが一時でも冠水するような場所では植生材料が流
出してしまうために施工不可能であった。
【0005】以上の通り、道路や宅地等の造成により形
成される法面を緑化保護する工法、および製品は多数提
案され、実際に施工されて成果を上げている。ところ
が、こと河川やダム湖等の水際法面のように、植生基盤
が冠水してしまうような場所においても適用できる工法
は数少なく、それも施工性に問題があり、敷設するだけ
で確実に植生を導入できるような植生マットは存在しな
かった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は以上のような
問題に鑑みてなしたもので、その目的は、植生生育基盤
の造成を、工場生産による植生マットの貼り付け作業の
みという極めて施工性の良い方法により、河岸やダム湖
等の水際法面において、冠水することがあっても植生材
料を流亡することなく、種子のみならず、根株からも確
実に植生を導入できる植生マット及び該マットを使用し
た植生工法を提供することにある。
【0007】現在、水際法面に適用できる工法として、
耐腐蝕性の糸が格子状に織り込まれた補強部で囲まれた
植生領域が腐蝕性の高い糸で形成され、水練タイプの湿
式方式を用いて前記腐蝕性の高い糸の早期腐蝕化によっ
て種子の発芽、生育、根付けが行われている(実公昭6
3−828号公報)が、植生材料の注入作業に執拗な水
分管理を必要とすると同時に、補強部枠内の植生領域の
目合いの不都合により、植生領域における施工後初期の
発育性に問題があることを本発明者等は確認した。
【0008】すなわち、植生材料の注入作業において、
植生材料を水練して植生袋にポンプで注入充填する際、
水分が若干多いと注入は容易であるが、水分が漏出した
後、植生材料自体の注入量が不足しているため所定厚さ
の植生基盤が得られず、また逆に水分量が若干少ないと
植生材料の流動性が悪くなり、注入途中に詰まるために
内圧により植生袋が破裂してしまうことがあるため、常
に微妙な水分管理を必要とし、品質管理上問題があり、
非常に施工性が悪く作業に熟練を要する。さらに、水を
使用しているので植生袋の内圧が大きく、強度的に強い
耐腐蝕性の糸を腐蝕性の高い糸に比して多く植生袋の布
帛に使用する必要があるとともに、植生材料等が地部か
ら抜け出ないように布帛の目合いを詰んで密にしなけれ
ばならず、そのため、マメ科等双葉発芽種子でも容易に
発芽できるような発芽生育に好ましい目合いを実現する
ことは困難である。しかも、導入しようとする植生は、
種子からの導入に限られ、根株は注入途中に詰まるため
に使用不可能である。
【0009】上記事項を克服するために本発明者等は鋭
意研究の結果、上記公報に使用された布帛とは反対に、
腐蝕性の高い糸を強度的に強い耐腐蝕性の糸に比して多
く布帛に使用し、該布帛にて、予め工場生産にて植物種
子、根株と乾燥した植物生育材料などの植生材料を包被
し、表裏を適宜連結した植生マットを施工すれば、施工
性の悪いポンプによる注入作業をすることなく、マット
の敷設・固定作業のみという極めて簡単な作業で植生基
盤を形成でき、規格品であるため品質管理が容易で、し
かも種子のみならず、根株からも植物の導入が可能であ
り、勿論内圧を考慮して布帛の強度を高める必要がない
ため、腐蝕性の高い糸と耐腐蝕性の糸の目合いを、植生
材料の流亡がなく、かつ種子の発芽生育に好ましい目合
いに設定でき、マメ科等双葉発芽種子でも容易に発芽で
きることを見出した。
【0010】
【課題を解決するための手段】かくして、本発明に係る
植生マットは、冠水することがある水際法面に敷設する
植生マットであって、腐蝕性の高い糸と耐腐蝕性の糸を
用いて編織され、該耐腐蝕性の糸を格子状もしくは筋状
に連続的に織り込んで形成した補強帯を所定間隔で配置
してなる補強部を有し、該補強部間に前記腐蝕性の高い
糸を配置して補強部で囲まれた植生領域を形成した布帛
を表裏布帛の少なくとも表面側に用いて、植物種子、根
株、土壌改良剤、肥料、有機質材などの一種以上よりな
る植生材料を包被し、両面同士を互いに適宜連結してな
とともに、植生マットのカット部分において、前記表
裏布帛間に不織布もしくは植物性繊維材よりなるマット
を介在させたことに特徴を有する。また、本発明に係る
植生工法は、前記植生マットを冠水することがある水際
法面に敷設し、緑化することを特徴とする。
【0011】本発明においては、耐腐蝕性の糸Tからな
る補強帯Hを格子状もしくは筋状に配置して補強部を形
成し、この補強部内に、それぞれ腐蝕性の高い糸Fから
なる植生領域Sが形成されている。(図1参照)すなわ
ち、施工初期において、植物は発芽後容易に布帛の植生
領域を通芽して生育し、植生領域の腐蝕性の高い糸が完
全に腐蝕する頃には植生マットの植生基盤中の随所に根
を張った状態で、植生基盤ごと耐腐蝕性の糸からなる補
強帯に抱えられるように保持されて、水際法面において
冠水しても安定して生育を続けることができる。
【0012】
【作用】植生材料を包被する布帛において、腐蝕性の高
い糸を強度的に強い耐腐蝕性の糸に比して多く使用し、
目合いを、植生材料の流亡がなく、かつ種子の発芽生育
に好ましい目合いに設定できるため、植生領域が腐蝕す
るまでの間の通芽性が良好で、種子は確実に発芽生育で
き、マメ科等双葉発芽種子でも容易に通芽する。また、
植生領域が腐蝕した後であっても、耐腐蝕性の糸からな
る補強帯が植生基材をしっかりと抱え込むため、水際法
面で冠水しても植生材料が流亡することなく、法面を緑
化保護するために必要とされる植物が容易に発芽生育で
きる。特に、注入式では使用不可能だった根株もマット
に内添させることができるため、より幅広い草種を確実
に導入可能である。
【0013】また、植生材料を水練して圧入するマット
は硬質となるが、乾燥した植生材料を包被した植生マッ
トは柔軟であるため、施工面の凹凸によく馴染み、マッ
ト下に空気相ができるために植生基盤が乾燥するといっ
たような問題がない。また、植生マットのカット部分に
おいて、表裏布帛間に不織布もしくは植物性繊維材より
なるマットを介在させて一体に縫着しているため、カッ
ト部分から植生材料が流亡することがない。さらに、工
場生産の規格品であるため品質管理が容易で、乾燥した
植生材料を包被した植生マットであるから軽量であるた
め、施工は敷設・固定作業のみと容易で熟練を要さず、
非常に施工性が良い。
【0014】
【実施例】以下、本発明に係る水際緑化用植生マット及
び該マットを使用した植生工法の好適な実施例を図1〜
図6に基づいて説明する。図2および図3は、本発明の
一実施例に係る植生マットMを示し、これらの図におい
て、1,2はそれぞれ上面布帛、下面布帛である。そし
て、3は両布帛1,2間に挟持される種子及び根株であ
り、4は有機質材等の植生基盤である。5は前記各布帛
1,2を一括して縫着するミシン糸である。
【0015】この植生マットMは、種子及び根株3,植
生基盤4からなる植生材料を腐蝕性の高い糸Fと耐腐蝕
性の糸Tを用いて編織した布帛1,2で表裏を包被し、
カット部分6には、不織布もしくは植物性繊維材よりな
るマット7を介在させるように表裏布帛1,2を縫着す
ることにより形成する。
【0016】該布帛は、図1に示す通り、それぞれ50
0〜1,000デニールの太さを有する腐蝕性の高い糸
Fと耐腐蝕性の糸Tを用いて編織し、該耐腐蝕性の糸T
を連続的に織り込んだ幅1〜3cmの補強帯Hを7〜1
0cm間隔で配置して格子状の補強部を形成し、該補強
部間に前記腐蝕性の高い糸Fを7cm間に50〜80本
配置して補強部で囲まれた植生領域Sを形成するように
構成する。
【0017】前記腐蝕性の高い糸Fとしては、耐環境性
に劣った早期腐蝕化容易な綿、麻等の天然繊維、もしく
はレーヨン、アセテート、キュプラ等のセルロース系再
生繊維が適しており、特に500〜1,000デニール
の太さを有する糸が好ましい。また、土壌との密着性が
極めて良好となることから、これらの中でも特に紡績糸
が好ましい。
【0018】前記耐腐蝕性の糸Tとしては、耐環境性に
優れ、長期にわたって耐久性のあるポリエステル、ポリ
アミド、ポリエチレン、ナイロン、ビニロン等の人造繊
維が適しており、特に500〜1,000デニールの太
さを有する糸が好ましい。
【0019】上述の両布帛1,2に挟持される種子及び
根株3としては、牧草などの外来種植物の種子や、花植
物種子、野草、樹木などの郷土種植物の種子、また、水
生植物の根株が用いられる。具体的には、牧草種子とし
ては、リードキャナリー、ハイランドベントグラス、バ
ミューダグラスなどがあり、花植物種子としては、フラ
ンス菊、大金鶏菊、のこぎりそう、カワラナデシコなど
があり、野草種子としては、よもぎ、めどはぎ、いたど
りなどがあり、また樹木種子としては、いたちはぎ、や
まはぎ、こまつなぎなどがある。そして、これらの種子
が適宜混合される。また、特にクレソン、セリ、ガマ、
ヨシ、キショウブ、ジャノヒゲ、セキショウなどの水生
植物の根株を用いると良い。
【0020】前記植生基盤4としては、植物の生育や土
壌の改良に必要な材料であり、例えば、一般化成肥料や
土壌改良剤、バーク堆肥やピートモスなどの有機質材、
バーミキュライトやパーライトなどの無機質材などを適
宜混合したものが用いられる。
【0021】前記カット部分6に用いるマット7として
は、保水性のあるレーヨンや綿等の繊維を圧着すること
なく水溶性のバインダーで接着したソフトな不織布をマ
ット状にしたものが好ましく、この他に、例えばヤシの
実の繊維を主体とした植物繊維をマット状に成形したも
のも用いることができる。
【0022】前記の各布帛1,2およびマット7を縫着
するミシン糸5としては、ジュート綿やレーヨンが適当
である。
【0023】次に、上記構成を有する植生マットMを製
造する方法について、図4および図5を参照しながら説
明する。
【0024】図4に示す下面布帛2を、図示していない
コンベア上に流し、同図4に示すように、下面布帛2上
に、植生基盤4、種子及び根株3を落下散布する。この
場合、所定の間隔で種子及び根株3、植生基盤4が散布
されない所定幅の無散布ゾーンZ(図5参照)が形成さ
れるようにする。
【0025】次いで、その無散布ゾーンZに、マット7
を投入する。そのマット7,7間の間隔は植生マットM
の厚さが1cmの場合10m間隔、2cmの場合、5m
間隔、3cmの場合は3m間隔程度とするのが好まし
い。
【0026】そして、図示していない折り返し装置によ
って、同図(D)に示すように、下面布帛2の進行方向
の両側端部2aを上方に折り返す。しかる後、上面布帛
1を載せる[図3(C)参照]。上面布帛1の両側端部
1aと重ね、上面布帛1および下面布帛2の進行方向の
両側端部を封じる。
【0027】そして、同図(E)および図5に示すよう
に、上面布帛1、種子及び根株3、植生基盤4、下面布
帛2を一括して図示していないミシン装置によって縫着
する。なお、図4(E)および図5における符号11
は、ミシン装置の複数のミシン針を示す。
【0028】前記縫着後、図示していない裁断装置によ
って、前記マット7を投入したカット部分6において裁
断することにより、図3(F)および図6に示すよう
に、所定長さ、所定幅の植生マットMが形成される。な
お、この植生マットMは適宜の巻き取り装置(図示省
略)によってロール状に巻き取られる。
【0029】このように製造した植生マットMは、例え
ば次のようにして冠水することがある水際法面に敷設さ
れる。すなわち、図3に示すように複数の植生マットM
を、下面布帛2を法面9側に、そして、その長さ方向が
法面9の上下方向になるように、また、幅方向の一部が
互いに重なるようにして幅方向に並べ、アンカーなどの
止着具10を用いて法面9に固定する。この場合、法面
9の最上位つまり法肩部では、図中に拡大して示すよう
に、その長さ方向の両端に形成されるカット部分6を展
開してここに止着具10を挿通させる。また、植生マッ
トM,M間の接合部においては、前記カット部分6を下
面布帛2側に折り返し、この折り返し部分を挿通するよ
うに止着具10を設ける。
【0030】植生マットMが法面9に敷設された当初に
おいては、種子及び根株3や植生基盤4が両布帛1,2
によって覆われており、かつその両布帛1,2のカット
部分6にマット7が挟持されているため、植生材料の流
亡が効果的に防止される。また、植生領域Sが腐蝕した
後であっても、耐腐蝕性の糸Tからなる補強帯Hが植生
材料4をしっかりと抱え込むため、水際法面で冠水して
も植生材料が流亡することなく、法面を緑化保護するた
めに必要とされる野草、樹木の種子、水性植物の根株が
容易に生育できる。
【0031】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の水際緑化
用植生マット及び該マットを使用した植生工法により、
河岸やダム湖等の水際法面を緑化するに際し、従来の工
法では不可能であった、水生植物の根株からの導入が可
能となり、またマメ科等双葉発芽種子でも容易に通芽・
生育することができるとともに、冠水することがあって
も植生材料を流亡することがなく、さらに施工性の悪い
ポンプによる植生材料の注入作業を必要とせず、工場生
産による軽量な植生マットの貼り付け作業のみという、
品質管理が容易で極めて施工性の良い方法により、確実
に植生を導入できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の植生マットに使用する布帛を示す図で
ある。
【図2】同植生マットの一実施例を示す部分破断斜視図
である。
【図3】同植生マットを法面に敷設する状態を示す斜視
図である。
【図4】同植生マットの製造工程の説明図である。
【図5】同植生マットの縫着工程の一例を示す部分破断
斜視図である。
【図6】同植生マットの横断面図である。
【符号の説明】
1;上面シート、2;下面シート、3;植物種子・根
株、4;植物生育材料、5;ミシン糸、6;カット部
分、7;マット、8;ミシン針、9;法面、10;止着

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 冠水することがある水際法面に敷設する
    植生マットであって、腐蝕性の高い糸と耐腐蝕性の糸を
    用いて編織され、該耐腐蝕性の糸を格子状もしくは筋状
    に連続的に織り込んで形成した補強帯を所定間隔で配置
    してなる補強部を有し、該補強部間に前記腐蝕性の高い
    糸を配置して補強部で囲まれた植生領域を形成した布帛
    を表裏布帛の少なくとも表面側に用いて、植物種子、根
    株、土壌改良剤、肥料、有機質材などの一種以上よりな
    る植生材料を包被し、両面同士を互いに適宜連結してな
    とともに、植生マットのカット部分において、前記表
    裏布帛間に不織布もしくは植物性繊維材よりなるマット
    を介在させたことを特徴とする植生マット。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の植生マットを、冠水す
    ることがある水際法面に敷設し、緑化することを特徴と
    する植生工法。
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