JP3024533B2 - インクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェット記録装置

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JP3024533B2
JP3024533B2 JP32957295A JP32957295A JP3024533B2 JP 3024533 B2 JP3024533 B2 JP 3024533B2 JP 32957295 A JP32957295 A JP 32957295A JP 32957295 A JP32957295 A JP 32957295A JP 3024533 B2 JP3024533 B2 JP 3024533B2
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ink
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祥五 鈴木
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、用紙にインクを吹
き付けて印字するインクジェット記録装置に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】ファクシミリ装置等の通信装置やパーソ
ナルコンピュータ等の情報処理装置は、通常、文字や図
形からなるデータを視覚情報として記録するように、こ
れらのデータを用紙に記録可能な記録装置を有してい
る。この記録装置には、インパクト方式や感熱方式、イ
ンクジェット方式等の各種の印字方式が採用されている
が、近年においては、静粛性に優れていると共に各種材
質の用紙に印字可能なインクジェット方式を採用したイ
ンクジェット記録装置が注目されている。
【0003】上記のインクジェット記録装置は、多数の
ノズルを有した記録ヘッドと用紙とを対向配置し、記録
ヘッドを主走査しながら、ノズルからインクを吐出させ
て用紙に吹き付けることによって、用紙に文字や図形を
印字するようになっている。この際、ノズルからのイン
クの吐出は、一般に、ノズルに連通されたインク室の容
積を圧電素子の伸縮により増減させる構成により行われ
ている(図4参照)。従って、この構成においては、イ
ンクの吐出量が画質に大きな影響を与えるため、駆動電
圧を印加したときに圧電素子を所望の伸縮量で伸縮可能
であることが画質を向上させる上での重要な要素となっ
ている。
【0004】これにより、従来は、圧電素子が所望の伸
縮量で伸縮する変位特性を有するように、記録ヘッドの
製造時に、所定の分極温度下で所定の分極電圧を印加す
ることにより圧電素子を分極処理し、この圧電素子を記
録ヘッドに搭載することにより所望の吐出量でインクを
吐出させるようになっている。
【0005】
【発明を解決しようとする課題】ところで、分極処理
は、圧電素子の分子構造を高温、高圧により強制的に歪
ませる処理であるため、この分極処理により生成された
圧電素子の変位特性は、時間の経過に伴って分子構造の
歪みの解消と共に劣化することになる。これにより、上
記従来のように製造時に分極処理された状態で圧電素子
が使用されると、印字当初に実現されていた圧電素子の
所望の伸縮量が変位特性の劣化により次第に低下するた
め、経年使用後に、インクの吐出量が画質を大きく低下
させる程度にまで減少することになるという問題があ
る。
【0006】従って、本発明は、経年使用後において
も、インクを所望の吐出量で吐出させて画質を良好な状
態に維持することができるインクジェット記録装置を提
供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、請求項1の発明は、分極処理された圧電素子を備
え、該圧電素子を駆動電圧の印加により伸縮させること
によって、常温では固形のホットメルトインクを溶融し
インクを吐出させて印字を行う記録ヘッドと、上記ホ
ットメルトインクを加熱して溶融させると共に、上記圧
電素子を加熱する加熱手段と、上記圧電素子に印加す
圧を発生する駆動電圧発生手段と、印字時において
は、上記加熱手段により上記ホットメルトインクを加熱
して溶融し、上記駆動電圧を上記駆動電圧発生手段によ
り上記圧電素子に印加させることによって、上記記録ヘ
ッドに印字を行わせる一方、再分極時においては、上記
加熱手段により上記圧電素子を環境温度以上で且つキュ
リー温度未満に昇温させると共に、上記圧電素子の分極
方向と同極性を有する電圧を上記駆動電圧発生手段によ
り上記圧電素子に印加させることによって、上記圧電素
子を再分極させる再分極処理手段ととを有していること
を特徴としている。これにより、加熱手段により圧電素
子が昇温されると共に、駆動電圧発生手段の電圧が圧電
素子に印加されるため、圧電素子が劣化した場合でも、
圧電素子を再分極して変位特性を回復させることができ
る。これにより、圧電素子を良好な変位特性に維持する
ことができるため、経年使用後においても、インクを所
望の吐出量で吐出させて画質を良好な状態に維持するこ
とができる。
【0008】請求項2の発明は、請求項1記載の上記再
分極処理手段は、再分極時には、上記駆動電圧発生手段
による電圧を上記駆動電圧以上で且つ絶縁破壊電圧未満
に昇圧して上記圧電素子に印加させることを特徴として
いる。これにより、加熱手段により圧電素子が昇温され
ると共に、駆動電圧発生手段による電圧が駆動電圧以上
で且つ絶縁破壊電圧未満に昇圧されて圧電素子に印加さ
れるため、圧電素子の再分極による変位特性の回復が請
求項1の構成による場合よりも一層良好なものになる。
【0009】請求項3の発明は、請求項1または2記載
の上記再分極処理手段は、圧電素子の電極間距離d(m
m)に対して3000×d(V)未満の電圧を、再分極
時において上記圧電素子に印加することを特徴としてい
る。これにより、さらに、圧電素子の絶縁破壊を招来し
ない範囲の電圧が圧電素子に印加されるため、再分極処
理時における圧電素子の損傷を確実に防止することがで
きる。
【0010】請求項4の発明は、請求項1乃至3のいず
れかに記載の上記再分極処理手段は、再分極時には圧電
素子の初期分極に用いられた分極電圧程度に昇圧させた
電圧を、上記圧電素子に印加させることを特徴としてい
る。これにより、さらに、初期分極に用いられた分極電
圧程度に昇圧された電圧が再分極処理に用いられるた
め、圧電素子の変位特性を初期分極時の変位特性に近い
状態または同等の状態にまで回復させることができる。
【0011】請求項5の発明は、請求項1乃至4のいず
れかに記載のインクジェット記録装置において、上記再
分極処理手段は、再分極時には上記加熱手段により上記
圧電素子を上記ホットメルトインクの溶融温度以上に昇
温させることを特徴としている。これにより、再分極時
においてホットメルトインクの溶融温度以上に圧電素子
を昇温するようになっているため、再分極時以外におけ
る加熱手段による加熱量の浪費を防止し、ランニングコ
ストの低減が可能になる。
【0012】請求項6の発明は、請求項1乃至5のいず
れかに記載の上記再分極処理手段は、再分極時には圧電
素子の初期分極に用いられた分極温度程度に、上記圧電
素子を昇温させることを特徴としている。これにより、
さらに、初期分極に用いられた分極温度程度に圧電素子
が昇温されながら再分極処理されるため、圧電素子の変
位特性を初期分極時の変位特性に近い状態または同等の
状態にまで回復させることができる。
【0013】請求項7の発明は、請求項1乃至6のいず
れかに記載の上記再分極処理手段は、電源投入時、印字
開始前、および周期的のうち少なくとも一つの機会に上
記圧電素子を再分極させることを特徴としている。これ
により、さらに、再分極処理がオペレータを介さずに自
動的に実施されるため、画質を常に許容範囲内に維持す
ることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図1乃至図
5に基づいて以下に説明する。本実施の形態に係るイン
クジェット記録装置は、図2に示すように、筐体となる
下カバー1および上カバー2を備えている。上カバー2
の後部側には、多数枚の用紙20を積層して収容可能な
給紙機構3・4が前後に設けられている。これらの給紙
機構3・4の下端部の近傍には、給紙ローラ5・6がそ
れぞれ配設されており、給紙ローラ5・6は、給紙機構
3・4に収容された用紙20を搬送経路7に送り出すよ
うになっている。
【0015】上記の搬送経路7は、第1搬送ローラ8と
第2搬送ローラ9と排紙トレイ部10と排紙口1aとを
給紙機構3・4側からこの順に有しており、第1および
第2搬送ローラ8・9により用紙20を矢符方向(副操
作方向)に定量的または連続的に移動させながら、用紙
20を排紙口1aから機外に排紙させるようになってい
る。
【0016】上記の搬送経路7の上カバー2側には、印
字機構本体11が配置されている。印字機構本体11
は、記録ヘッド12と、記録ヘッド12に接合されたキ
ャリッジ13と、キャリッジ13を副走査方向に対して
垂直となる主走査方向に移動自在に支持するガイド部材
14と、キャリッジ13をガイド部材14に沿わせて主
走査方向に往復移動(主走査)させる図示しない走行機
構とを有している。
【0017】上記の記録ヘッド12は、図3に示すよう
に、ホットメルトインクを吐出させるヘッド部15と、
ヘッド部15に供給されるホットメルトインクを収容す
るタンク部16とからなっている。尚、インクジェット
記録装置に用いられるホットメルトインクとは、常温で
固形化し、軟化点が40〜140℃、融点が50〜15
0℃、インクから吐出される際のインク粘度が3〜50
cpsである性質を有したインクの総称であり、好まし
くは30〜90%のワックスと、5〜70%の樹脂と、
0.1〜10%の色剤と、その他の添加剤(増粘剤や海
面活性剤、溶解剤等)とからなっている。
【0018】上記のヘッド部15は、図4にも示すよう
に、用紙20に対向され、副走査方向に多数のノズル2
1aが形成されたノズルプレート21を有している。ノ
ズルプレート21は、キャビティプレート22に接合さ
れており、キャビティプレート22には、各ノズル21
aに対応して形成された多数のインク吐出溝22aおよ
びインク室溝22bと、全てのインク室溝22bに接続
されたインク供給溝22cとが形成されている。
【0019】上記のキャビティプレート22の全面に
は、ダイアフラム23が接合されている。ダイアフラム
23は、キャビティプレート22の各溝22a〜22c
の上面を塞ぐことによって、ノズル室27とインク室2
8とインク供給室29とを形成させるようになってい
る。そして、ダイアフラム23には、ベースプレート2
5に支持された多数の圧電素子部材24が接合されてお
り、各圧電素子部材24は、ダイアフラム23を介して
インク室28の上方に位置するように配置されている。
【0020】上記の圧電素子部材24は、ジルコンチタ
ン酸鉛(PZT)等の材質からなっており、記録ヘッド
12の製造時において、所定の分極温度(例えば130
℃)下で所定の分極電圧(例えば80V)を印加するこ
とにより分極処理されている。また、本実施例の圧電素
子部材24の各々には、その分極方向と同一方向の極性
を有する駆動電圧が印加されるように少なくとも一対の
電極(駆動電圧発生手段)が設けられている。具体的に
は、本実施例の各圧電素子部材24は、PZTからなる
30μmの圧電層を2乃至3μmの電極層を交互に積層
した積層型圧電素子からなり、圧電層は、各層毎に分極
方向が反転している。一般に、圧電素子は、分極方向と
同一の電界をかけられると、電極の平行方向に伸び、垂
直方向に縮む特性を呈する。そして、上記電極を介して
圧電素子部材24に電圧を印加すると、圧電素子部材2
4は、印加される駆動電圧に応じた伸縮量で伸縮し、ダ
イアフラム23を上下に変位させてインク室28の容積
を増減させることによって、インク室28のインクをノ
ズル室27およびノズル21aを介して用紙20方向に
吐出させるようになっている。尚、上記の分極温度と
は、圧電素子部材24の分極初期の際に用いられる温度
のことであり、分極電圧とは、圧電素子部材24の分極
初期の際に用いられる電圧のことである。
【0021】上記の圧電素子部材24を支持するベース
プレート25には、平板状に形成されたフロントヒータ
26(加熱手段)が面状に接合されている。フロントヒ
ータ26は、ベースプレート25からタンク部16のイ
ンク供給路16aにかけて配設されており、ベースプレ
ート25を介して圧電素子部材24およびインク供給室
29のホットメルトインクを加熱すると共に、インク供
給路16aのホットメルトインクを加熱するようになっ
ている。
【0022】上記のインク供給路16aは、タンク部1
6のインク収容室16bに連通されており、インク収容
室16bに収容されたホットメルトインクをインク供給
室29に流動させるようになっている。インク収容室1
6bの底面壁には、タンクヒータ31が貼設されてお
り、タンクヒータ31は、インク収容室16bに収容さ
れたホットメルトインクを加熱して溶融させるようにな
っている。
【0023】上記のフロントヒータ26やタンクヒータ
31、圧電素子部材24等を備えた印字機構本体11
は、図1に示すように、記録装置制御系40(再分極処
理手段)により制御されるようになっている。記録装置
制御系40は、バス46を介して接続されたCPU4
2、ROM43、RAM45、タイマー44、インター
フェース49、メカ制御部47、ヒータ制御部53(
分極処理手段)、および電圧制御部54(再分極処理手
)を有している。
【0024】ROM43には、出力データ記憶領域のド
ットデータを印字させる印字ルーチンや、電源投入時、
印字開始前、および周期的のうち少なくとも一つの機会
に圧電素子部材24を再分極させる再分極処理ルーチン
等の各種の制御プログラムが格納されている。RAM4
5には、再分極処理を実施する時期を設定するタイマー
領域が形成されていると共に、主走査方向アドレスおよ
び副走査方向アドレスからなるマトリックス状のデータ
テーブルにドットデータを格納する出力データ記憶領域
が形成されている。また、タイマー44は、現在の時刻
を示す時刻データを出力するようになっており、インタ
ーフェース49は、図示しないパーソナルコンピュータ
等の情報処理装置に接続され、この情報処理装置からの
イメージデータ等の情報データを記録装置制御系40に
入力させるようになっている。
【0025】また、メカ制御部47は、記録ヘッド12
を主走査させるCRモータ55と、用紙20を副走査さ
せるPFモータ56とに接続されている。ヒータ制御部
48は、図3のフロントヒータ26およびタンクヒータ
31に接続されており、これらのヒータ26・31にそ
れぞれ設けられたサーミスタ50・50から発熱温度を
得ることによって、ヒータ26・31を所定の温度に調
整するようになっている。また、電圧制御部54は、駆
動電圧を圧電素子部材24に印加させるようになっいる
と共に、再分極時において、駆動電圧以上で且つ絶縁破
壊電圧未満に昇圧された電圧を図3の圧電素子部材24
に印加させるようになっている。具体的には、再分極時
においては、圧電素子部材24の電極間距離d(mm)
に対して3000×d(V)未満の電圧(本実施例にお
いては90(V)未満に相当)を圧電素子部材24に印
加させるようになっている。
【0026】そして、このような構成を有した記録装置
制御系40は、通常の使用状態においては、フロントヒ
ータ26およびタンクヒータ31をホットメルトインク
の溶融点よりも僅かに高い温度に維持してホットメルト
インクを溶融させ、モータ55・56の作動により記録
ヘッド12の主走査と用紙20の副走査とを繰り返すこ
とによって、RAM45の出力データ記憶領域に格納さ
れたドットデータを用紙20に1バンド単位で印字させ
るようになっている。一方、再分極処理を実施する場合
には、フロントヒータ26を昇温させて圧電素子部材2
4を分極温度に加熱した後、電圧制御部54により分極
電圧を発生させ、この分極電圧を圧電素子部材24に印
加させるようになっている。尚、フロントヒータ26と
共にタンクヒータ31も昇温されるようになっていても
良い。
【0027】上記の構成において、インクジェット記録
装置が印字開始前、記録装置の電源投入時、および周期
的に再分極処理を実施する場合の動作について説明す
る。図5に示すように、記録装置の電源が投入されると
(S1)、記録装置の初期設定の一つとして、現時点の
時刻から所定時間の経過に再分極処理を実施する時期を
示す設定時期データがタイマ領域に格納されると共に、
CPU42からヒータ制御部53に対して分極温度デー
タが送出されることになる。そして、温度データが入力
されたヒータ制御部53は、圧電素子部材24の初期分
極の際に用いられた分極温度(例えば130℃)以上に
フロントヒータ26を昇温させることによって、圧電素
子部材24を加熱させることになる(S2)。
【0028】続いて、CPU42から電圧制御部54に
対して分極電圧データが送出されることによって、初期
分極の際に用いられた分極電圧(例えば80V)を発生
するように、電圧制御部54が設定されることになる
(S3)。そして、圧電素子部材24が分極温度にまで
昇温すると、駆動電圧を昇圧した分極電圧が電圧制御部
54から圧電素子部材24に印加されることによって、
圧電素子部材24が再分極処理され、記録装置の製造時
における変位特性に回復されることになる(S4)。
【0029】上記のようにして再分極処理が終了する
と、記録装置が通常の使用状態で作動するように、CP
U42からヒータ制御部53に対して通常温度データが
送出され、図3のフロントヒータ26およびタンクヒー
タ31がホットメルトインクの溶融温度よりも僅かに高
い温度(例えば105℃)となるように制御されなが
ら、ホットメルトインクが溶融されることになる。ま
た、CPU42から電圧制御部54に対して通常電圧デ
ータが送出され、分極電圧よりも低電圧の駆動電圧を発
生するように、電圧制御部54が設定されることになる
(S5)。
【0030】この後、タイマー44の時刻データと、タ
イマー領域の設定時期データとが比較され、所定期間が
経過したか否かが判定されることになる(S6)。そし
て、時刻データが設定時期データ以上となり、所定期間
が経過したと判定された場合には(S6,YES)、上
述のS2から再実行され、再分極処理が実施されること
になる。一方、所定期間が経過していないと判定された
場合には(S6,NO)、印字命令が図示しない情報処
理装置からインターフェース49を介して入力されたか
否かが判定され(S7)、印字命令が入力されていない
と判定された場合には(S7,NO)、上述のS6が再
実行され、S6とS7とが繰り返して実行されて待機状
態とされることになる。
【0031】一方、印字命令が入力されたと判定された
場合には(S7,YES)、上述のS2〜S5までの動
作と同様に、初期設定(S8)、分極電圧の設定(S
9)、再分極処理(S10)、および駆動電圧の設定
(S11)が実施され、圧電素子部材24が記録装置の
製造時における変位特性に回復された後、印字動作が実
施されることになる。
【0032】即ち、図2に示すように、給紙機構3・4
から用紙20が搬送経路7に繰り出され、用紙20が記
録ヘッド12に対向する所定位置に到達したときに、用
紙20が停止されることになる。そして、メカ制御部4
7がCRモータ55により記録ヘッド12を主走査する
と共に、RAM45の出力データ記憶領域に格納された
ドットデータに基づいて、駆動電圧が電圧制御部54か
ら圧電素子部材24に印加されることになる。これによ
り、図3および図4に示すように、圧電素子部材24が
駆動電圧に応じた伸縮量で伸縮し、ダイアフラム23を
上下に変位させてインク室28の容積を増減させること
によって、インク室28のインクがノズル室27および
ノズル21aを介して用紙20方向に吐出されることに
なる。そして、記録ヘッド12の主走査により1バンド
分の印字が行われると、PFモータ56により用紙20
が1バンド分の紙送り量で副走査された後、次段の印字
が開始されることになる。この後、用紙20に対する印
字が完了すると、この用紙20は、搬送経路7から排紙
口1aを介して機外に排紙されることになる(S1
2)。この後、上述のS5から再実行されることにな
る。
【0033】これにより、印字開始前、記録装置の電源
投入時、および周期的に再分極処理が実施されることに
よって、記録装置の経年使用後においても、インクを所
望の吐出量で吐出させて画質を良好な状態に維持するこ
とが可能になっている。
【0034】尚、上記のフローチャートにおいては、印
字開始前、記録装置の電源投入時、および周期的の全て
の機会に再分極処理を実施するようになっているが、こ
れに限定されることはなく、上記の機会のうちの少なく
とも一つの機会に再分極処理を実施するようになってい
れば良い。また、本実施例においては、ホットメルトイ
ンクにより印字する記録装置に適用した場合について説
明しているが、これに限定されることもなく、圧電素子
を用いて印字する方式であれば、液状インクにより印字
する記録装置に適用することもできる。
【0035】また、本実施例においては、初期分極に使
用された分極電圧および分極温度により再分極すること
によって、初期分極時と同等の分極特性に回復させる場
合について説明しているが、これに限定されることはな
い。即ち、圧電素子部材24を環境温度以上で且つキュ
リー温度未満に昇温させると共に、圧電素子部材24に
設けられた電極(駆動電圧発生手段)による電圧を印加
することによって、圧電素子部材24を再分極させる構
成であれば良い。
【0036】
【発明の効果】請求項1の発明は、分極処理された圧電
素子を備え、該圧電素子を駆動電圧の印加により伸縮さ
せることによって、常温では固形のホットメルトインク
を溶融したインクを吐出させて印字を行う記録ヘッド
と、上記ホットメルトインクを加熱して溶融させると共
に、上記圧電素子を加熱する加熱手段と、上記圧電素子
に印加する電圧を発生する駆動電圧発生手段と、印字時
においては、上記加熱手段により上記ホットメルトイン
クを加熱して溶融し、上記駆動電圧を上記駆動電圧発生
手段により上記圧電素子に印加させることによって、上
記記録ヘッドに印字を行わせる一方、再分極時において
は、上記加熱手段により上記圧電素子を環境温度以上で
且つキュリー温度未満に昇温させると共に、上記圧電素
子の分極方向と同極性を有する電圧を上記駆動電圧発生
手段により上記圧電素子に印加させることによって、
記圧電素子を再分極させる再分極処理手段とを有してい
る構成である。これにより、加熱手段により圧電素子が
昇温されると共に、駆動電圧発生手段の電圧が圧電素子
に印加されるため、圧電素子が劣化した場合でも、圧電
素子を再分極して変位特性を回復させることができる。
これにより、圧電素子を良好な変位特性に維持すること
ができるため、経年使用後においても、インクを所望の
吐出量で吐出させて画質を良好な状態に維持することが
できるという効果を奏する。さらに、加熱手段が圧電素
子の加熱とホットメルトインクの加熱とに共用されてい
るため、ホットメルトインクを採用したインクジェット
記録装置にとっては、部品コストの増大を防止しなが
ら、再分極処理を行うことができるという効果も奏す
る。
【0037】請求項2の発明は、請求項1記載の上記再
分極処理手段は、再分極時には、上記加熱手段により上
記圧電素子を昇温させると共に、上記駆動電圧発生手段
による電圧を上記駆動電圧以上で且つ絶縁破壊電圧未満
に昇圧して上記圧電素子に印加させる構成である。これ
により、加熱手段により圧電素子が昇温されると共に、
駆動電圧発生手段による電圧が駆動電圧以上で且つ絶縁
破壊電圧未満に昇圧されて圧電素子に印加されるため、
圧電素子の再分極による変位特性の回復が請求項1の構
成による場合よりも一層良好なものになるという効果を
奏する。
【0038】請求項3の発明は、請求項1または2記載
の上記再分極処理手段は、圧電素子の電極間距離d(m
m)に対して3000×d(V)未満の電圧を、再分極
時において上記圧電素子に印加する構成である。これに
より、さらに、圧電素子の絶縁破壊を招来しない範囲の
電圧が圧電素子に印加されるため、再分極処理時におけ
る圧電素子の損傷を確実に防止することができるという
効果を奏する。
【0039】請求項4の発明は、請求項1乃至3のいず
れかに記載の上記再分極処理手段は、再分極時には圧電
素子の初期分極に用いられた分極電圧程度に昇圧させた
電圧を、上記圧電素子に印加させる構成である。これに
より、さらに、初期分極に用いられた分極電圧程度に昇
圧された電圧が再分極処理に用いられるため、圧電素子
の変位特性を初期分極時の変位特性に近い状態または同
等の状態にまで回復させることができるという効果を奏
する。
【0040】請求項5の発明は、請求項1乃至4のいず
れかに記載のインクジェット記録装置において、上記再
分極処理手段は、再分極時には上記圧電素子を上記ホッ
トメルトインクの溶融温度以上に昇温させる構成であ
る。これにより、再分極時においてホットメルトインク
の溶融温度以上に圧電素子を昇温するようになっている
ため、再分極時以外における加熱手段による加熱量の浪
費を防止し、ランニングコストの低減が可能になるとい
う効果を奏する。
【0041】請求項6の発明は、請求項1乃至5のいず
れかに記載の上記再分極処理手段は、再分極時には圧電
素子の初期分極に用いられた分極温度程度に、上記圧電
素子を昇温させる構成である。これにより、さらに、初
期分極に用いられた分極温度程度に圧電素子が昇温され
ながら再分極処理されるため、圧電素子の変位特性を初
期分極時の変位特性に近い状態または同等の状態にまで
回復させることができるという効果を奏する。
【0042】請求項7の発明は、請求項1乃至6のいず
れかに記載の上記再分極処理手段は、電源投入時、印字
開始前、および周期的のうち少なくとも一つの機会に上
記圧電素子を再分極させる構成である。これにより、さ
らに、再分極処理がオペレータを介さずに自動的に実施
されるため、画質を常に許容範囲内に維持することがで
きるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】記録装置制御系のブロック図である。
【図2】インクジェット記録装置の概略構成図である。
【図3】記録ヘッドの内部構造を示す説明図である。
【図4】記録ヘッドのヘッド部の内部構造を示す説明図
であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図5】再分極処理ルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
11 印字機構本体 12 記録ヘッド 15 ヘッド部 16 タンク部 20 用紙 21 ノズルプレート 22 キャビティプレート 23 ダイアフラム 24 圧電素子部材 25 ベースプレート 26 フロントヒータ 27 ノズル室 28 インク室 29 インク供給室 31 タンクヒータ 53 ヒータ制御部 54 電圧制御部 55 CRモータ 56 PFモータ

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 分極処理された圧電素子を備え、該圧電
    素子を駆動電圧の印加により伸縮させることによって、
    常温では固形のホットメルトインクを溶融したインクを
    吐出させて印字を行う記録ヘッドと、上記ホットメルトインクを加熱して溶融させると共に、
    上記圧電素子を加熱する加熱手段と、 上記圧電素子に印加する電圧を発生する駆動電圧発生手
    段と、印字時においては、上記加熱手段により上記ホットメル
    トインクを加熱して溶融し、上記駆動電圧を上記駆動電
    圧発生手段により上記圧電素子に印加させることによっ
    て、上記記録ヘッドに印字を行わせる一方、 再分極時においては、上記加熱手段により 上記圧電素子
    を環境温度以上で且つキュリー温度未満に昇温させると
    共に、上記圧電素子の分極方向と同極性を有する電圧を
    上記駆動電圧発生手段により上記圧電素子に印加させる
    ことによって、上記圧電素子を再分極させる再分極処理
    手段とを有していることを特徴とするインクジェット記
    録装置。
  2. 【請求項2】 上記再分極処理手段は、再分極時には、
    上記駆動電圧発生手段による電圧を上記駆動電圧以上で
    且つ絶縁破壊電圧未満に昇圧して上記圧電素子に印加さ
    せることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記
    録装置。
  3. 【請求項3】 上記再分極処理手段は、圧電素子の電極
    間距離d(mm)に対して3000×d(V)未満の電
    圧を、再分極時において上記圧電素子に印加することを
    特徴とする請求項1または2記載のインクジェット記録
    装置。
  4. 【請求項4】 上記再分極処理手段は、再分極時には圧
    電素子の初期分極に用いられた分極電圧程度に昇圧させ
    た電圧を、上記圧電素子に印加させることを特徴とする
    請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェット記録
    装置。
  5. 【請求項5】 上記再分極処理手段は、再分極時には上
    記圧電素子を上記ホットメルトインクの溶融温度以上に
    昇温させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか
    にインクジェット記録装置。
  6. 【請求項6】 上記再分極処理手段は、再分極時には圧
    電素子の初期分極に用いられた分極温度程度に、上記圧
    電素子を昇温させることを特徴とする請求項1乃至5の
    いずれかに記載のインクジェット記録装置。
  7. 【請求項7】 上記再分極処理手段は、電源投入時、印
    字開始前、および周期的のうち少なくとも一つの機会に
    上記圧電素子を再分極させることを特徴とする請求項1
    乃至6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
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