JP3024385B2 - インジウムスクラップからのインジウムの回収方法 - Google Patents

インジウムスクラップからのインジウムの回収方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はIn含有物からのInの
回収に関し、特にP,As,Gaを不純物として含有す
るInスクラップ、特に金属InスクラップからInを
粗Inとして回収する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】Inは主としてZn製錬における副産物
として産出され、合金添加材料、半導体用結晶材料等に
使用されている。近年新規用途開発によりP,Ga,A
s,Inより構成される単結晶が開発され、製造されて
いるが、これに伴い該組成を主成分とするスクラップよ
りのInの回収方法の開発が急務とされている。
【0003】従来よりIn含有原料からのInの回収方
法としては大きく分けて湿式法と乾式法とがある。湿式
法には例えば、In含有原料を硫酸で溶解しInを溶出
し、溶出液を水酸化アルカリで中和し、Inを殿物とし
て沈殿させ、得た殿物を硫酸で再溶解し、得た溶液にZ
n粉末等の還元剤を添加し、Inを還元析出させて粗I
nを得、これを精製する方法や、In含有原料を硫酸で
溶解して得たIn溶液に硫化剤を添加し、生成した沈殿
を分離除去し、得たIn溶液を中和し、Inを殿物とし
て沈殿させ、得た沈殿を塩酸で再溶解し、得た溶液に再
度硫化剤を添加し、生成した硫化物を分離除去し、得た
In溶液のpHを調整し、Zn粉末等の還元剤を添加
し、Inを還元析出させて粗Inを得、これを精製する
方法がある。そして、乾式法には、In含有原料を塩化
剤と混合し、加熱してInを塩化物として揮発させ、回
収する方法がある。
【0004】しかしながら、上記従来の方法では上記
P、As、Ga、Inを主成分とするスクラップよりI
nを効率よく回収することは困難である。というのは、
例えば、該Inスクラップの代表的なものは、金属In
と、In、P、As、Gaから成る半導体と、酸化In
とから構成され、スクラップ中のP、As、Gaの含有
量がそれぞれ5重量%(以下、「重量%」を「%」と記
す)以下であり、P、As、Gaの含有量の合計値が1
0%以下であるものであるが、上記従来の方法は何れも
微量のInを含むIn原料を対象としており、このよう
なIn含有量の高いスクラップを処理対象としていない
こと、また上記スクラップを湿式法で処理、たとえば直
接HClやHSOで浸出しようとすると、有害なリ
ン化水素が発生したり、金属Inも浸出してしまい、物
量が多くなって効率的でないこと、さらに塩化剤と混合
し加熱してInをInClとして揮発回収しようとして
もP、As、Gaの塩化物もかなり揮発しやすく分離が
むずかしいことからである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、P,
As,Ga,Inを主とするスクラップよりInを粗I
nとして回収する方法の提供にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発
明の方法は、金属Inを主成分とし、In、P、As、
Gaの酸化物を含有するInスクラップよりInを回収
する方法において、該スクラップを湿式で粉砕し、20
0〜2000μmの篩を用いて分級し、金属Inから主
としてなる篩上に、その重量に対して5〜20%相当量
のNaOHを加え、200〜300℃に加熱して融解
し、次いでソーダスラグと粗Inに分離し、酸化物から
主としてなる前記分級の篩下とソーダスラグとを、酸化
還元電位が標準水素電極基準で750mV以上、好まし
くは800mV以下の塩酸と酸化剤の酸性溶液で酸化浸
出し、得た浸出液中のInを粗Inとすることを特徴と
するInスクラップからのInの回収方法である。本発
明の方法において、酸化還元電位は酸化還元電位計を用
いて測定してもよく、指示薬として第一鉄イオン溶液を
添加してもよい。また、酸化剤としては不純物等の理由
や、硫化による脱Asあるいはセメンテーションといっ
た後工程への支障の無さより過酸化水素水を用いること
が好ましい。さらに、酸化浸出時の塩酸と酸化剤の酸性
溶液のpHは、1.5以下が好ましく、0.5〜1.5
がより好ましい。なお、本発明の方法は不純物としてそ
れぞれ5%以下のP、As、Gaを合計で10%以下含
有するInスクラップに対して最適である。
【0007】
【作用】本発明において原料を湿式分級するのは原料中
に存在するP,As,Ga,Inの酸化物を分離し、効
率よくInを回収するためである。すなわち、該酸化物
は金属成分と異なり容易にかつ、細かく破砕されるの
で、破砕後 200 〜 2000μmの篩を用いることにより酸
化物を主とする篩下とメタルを主とする篩上とに分離
し、篩上のメタルを乾式処理し、篩下のみを塩酸溶解す
ることによりInを溶解するために必要とされる塩酸量
を最小限とすることができるからである。粉砕方法は特
に限定するものではないが、粉砕時のダストの飛散を防
止するためには湿式粉砕が好ましい。このようにスクラ
ップを破砕し、篩分けをすることにより、スクラップの
性状にもよるが、通常スクラップ中のInの 70 % 程度
を篩上として分離回収できる。
【0008】篩上として回収したメタルをソーダ溶融す
ることによりメタル中のInの約 90 % を純度 95 % 以
上の粗Inとし、不純物をソーダスラグとして分離回収
するが、メタル分に添加するNaOHはメタル重量の 5
〜 20 % とする。これは 5% 未満ではソーダスラグ生
成量が不足し、Inメタルが酸化しやすくなるからであ
り、また 20 % をこえてもこれ以上ソーダスラグ中の
P,As,Gaの濃度も上昇せず、ソーダスラグの量の
み増加するためである。よって、必要であれば、NaO
H量を上記範囲に抑え、ソーダスラグ処理を繰返す方が
効率的である。
【0009】温度を 200 〜 300 ℃としたのは 200 ℃
未満では生成したスラグの流れが悪くソーダスラグとメ
タルとの分離がし難くなり、 300 ℃を越えると有毒の
リン化水素の発生量が無視できなくなるからである。
【0010】次にソーダスラグを冷却した後、前述の篩
下と混合し、塩酸性で酸化浸出を行なうが、この際にp
Hを 1.5 以下に下げないと浸出時間ばかり長くなり、
また0.5 未満とすると浸出は短時間で可能なものの、H
Cl原単位が高くなり経済性を損う。
【0011】酸化浸出に用いる酸化剤としては、前述し
た理由より過酸化水素が好ましい。浸出時に酸化還元電
位を標準水素電極で 750 mV 以上に維持するのは、酸化
還元電位が 750 mV 未満となるとリン化水素ガスの発生
の可能性が高くなるからである。酸化還元電位をあまり
高くすると過酸化水素原単位が高くなり、経済性を損う
ので 800 mV 以下とすることが好ましい。酸化還元電位
の検出方法としては酸化還元計を使用してもよく、ま
た、指示薬としてFe2+を添加してもよい。これはFe
2+が酸化還元電位が 750 mV 以上になるとFe3+とな
り、比較的無色透明に近い液が黄色になるからである。
【0012】このようにして処理することによりソーダ
スラグと篩下中のInを液中に浸出でき、P,As,G
aを残渣として分離することができる。そして、得られ
た浸出液から粗Inを回収する方法としては、浸出液に
2Sガスを吹きこみ、AsをAs23として沈殿除去
し、次いでZn粉末を添加する等の従来法がそのまま適
用できる。このようにして得られた粗Inより高純度I
nを製造するためには、電解法等の常法を用いれば良
い。
【0013】
【実施例】次に本発明の実施例について述べる In 89.8 %、P 1.2 %、As 2.6 %、Ga 0.8
%、残部が主に酸素よりなるInスクラップ 226 kg を
ミキサーに投入し 300 ml の水を入れて1時間混合した
後、500 μmの目の篩を用いて篩い分けし、篩上として
湿量で 224 kg (乾量で 206 Kg)のメタルを得た。こ
の篩上に対してNaOH 38 Kg を添加しステンレス製
のるつぼ中で 220 ℃で溶解し、撹拌し、静置した後、
表層のソーダスラグをひしゃくですくい取りスラグ 162
Kg と粗Inを 132 Kg を得た。得られた粗In(A)
を分析したところIn 99.8 %、As <0.0005 %、P
<0.0005 %、Ga <0.0005 % であり充分に不純物が除
去されていることがわかる。
【0014】次に篩下の全量と得られたソーダスラグの
全量とを 1 m3 タンクに入れ、pH= 1 で、酸化還元
電位が 750 〜 800 mV となるように 36 % HClと 35
% H22を加え 1 時間撹はんし、Inを浸出した。使
用した 36 % HClは 286 Kg、 35 % H22は 35.5 k
g であった。次いでろ過し、In 63.1 g/l、As 0.
9 g/l、Ga 0.6 g/l、P 0.8 g/l の組成の浸出液 8
20 l を得た。なお、得られた浸出残渣は湿量で 44.1
Kg (乾量で 36.8 Kg)であり、その組成はIn 52.2
%、As 15.4 %、Ga 5.4 %、P 6.1 % であった。
この結果より大部分のAs,Ga,Pが残渣として分離
されていることが判る。
【0015】次いで得た浸出液にH2Sガスを 2 l/min
で 4 hr 吹き込み、AsをAs23として沈殿させ、該
沈殿を分離後、金属亜鉛粉末を 44 Kg 加え、穏やかに
撹拌し、金属Inを析出させ、金属Inを分離回収し、
水洗した。次いで、NaOH7 Kg と得られた金属In
とをステンレス製のるつぼに入れ、220 ℃で加熱熔融
し、生成したソーダスラグをすくい取り、ソーダスラグ
13.9 Kg と粗In(B)47.3 g を得た。この粗INの
品位はIn 99.9 %、As <0.0005 %、P <0.0005
%、Ga <0.0005 % であった。このようにして得た粗
In(A)、(B)より高純度Inを得るには、常法に
従いそのまま溶解し、アノードに鋳造して電解精製すれ
ば良い。
【0016】
【発明の効果】以上詳述したように本発明の方法を用い
れば、半導体製造関連で発生するP,As,Gaを不純
物として含有するInスクラップから効果的に粗Inを
製造することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−24332(JP,A) 特開 平3−75223(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22B 58/00

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属インジウムを主成分とし、インジウ
    ム、リン、ヒ素、ガリウムの酸化物を含有するインジウ
    ムスクラップよりインジウムを回収する方法において、
    該スクラップを湿式で粉砕し、200〜2000μmの
    篩を用いて分級し、金属インジウムから主としてなる
    上に、その重量に対して5〜20重量%相当量の水酸化
    ナトリウムを加え、200〜300℃に加熱して融解
    し、次いでソーダスラグと粗インジウムメタルに分離
    し、酸化物から主としてなる前記分級の篩下とソーダス
    ラグとを、酸化還元電位が標準水素電極基準で750m
    V以上の塩酸と酸化剤の酸性溶液で酸化浸出し、得た浸
    出液中のインジウムを粗インジウムメタルとすることを
    特徴とするインジウムスクラップからのインジウムの回
    収方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の方法において、酸化浸
    出時のpHを1.5以下とするインジウムスクラップか
    らのインジウムの回収方法。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の方法において、酸化浸
    出時のpHが0.5〜1.5、酸化還元電位が標準水素
    電極基準で800mV以下であるインジウムスクラップ
    からのインジウムの回収方法。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の方法において、酸化還
    元電位の指示薬として第一鉄イオンを用いるインジウム
    スクラップからのインジウムの回収方法。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の方法において、インジ
    ウムスクラップが金属インジウムと、インジウム、リ
    ン、ヒ素、ガリウムから成る半導体と、酸化インジウム
    とから構成され、スクラップ中のリン、ヒ素、ガリウム
    の含有量がそれぞれ5重量%以下であり、リン、ヒ素、
    ガリウムの合計含有量が10重量%以下であるインジウ
    ムスクラップからのインジウムの回収方法。
  6. 【請求項6】 請求項1、3または4記載の方法にお
    いて、酸化還元電位は、過酸化水素水を用いて調整され
    インジウムスクラップからのインジウムの回収方法。
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