JP3020839B2 - チーズケーキの素及びその製造方法 - Google Patents

チーズケーキの素及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、家庭等において、ごく
簡単な操作を施すだけで手軽に高品質のチーズケーキを
作ることが可能な新しいタイプのチーズケーキの素及び
その製造方法等に関するものであり、更に詳しくは、本
発明は、ペースト状ケーキベースと粉体状ケーキミック
スから構成されるチーズケーキの素に係るものであり、
ペースト生地と粉体原料とを混ぜた際に、ダマが発生す
ることがなく、また、チーズケーキの生地を調製する際
に、生地のベースのペースト原料を起泡(オーバーラ
ン)させる必要がなく、更に、焼成したチーズケーキの
組織のきめを細かくし、かつ、チーズケーキ(スフレ)
特有のふわっとした食感を与えて製品の品質をきわめて
良好なものにしてその高品質化を図ることを可能とする
ものであり、しかも、常温流通で約6か月間以上の長期
保存が可能な新しいタイプのチーズケーキの素及びその
製造方法等に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、家庭等において卵、牛乳等を加え
て攪拌するだけでケーキ生地を作ることができるタイプ
の製品として、ケーキ用プレミックスもしくはケーキ生
地の素が知られており、その製品形態として、粉末状ケ
ーキミックス、ペースト状ケーキミックス等の製品が知
られている。
【0003】これらのうち、前者の粉末状ケーキミック
スは、更に2種類のものがあり、その一方は、粉末状ケ
ーキミックスに単に水を加えて混合した後、焼型に入れ
てオーブン等で焼成するタイプのものである。このタイ
プのケーキミックスは、簡単に生地とすることができる
ものであるが、水と混合するときにダマが生じ、また、
ケーキの風味が悪く、ケーキとしての品質は比較的低い
ものである。他の一方は、粉末ケーキミックスに、別に
準備した卵、牛乳、バター等を加えて混合した後、型に
入れてオーブン等で焼成するタイプのものである。この
タイプのケーキミックスは、品質は高いものが得られる
ものの、材料を均一に混合するのに手間がかかり、ま
た、材料を混合する際にダマが生じたり、水分の多い原
料を使用できないと云った問題があった。
【0004】一方、後者のペースト状ケーキミックス
は、卵、牛乳、バター等を含みそのままオーブン等で焼
成するタイプのものと、別に準備した卵、牛乳、バター
等を加えて混合した後、オーブン等で焼成するタイプの
ものがある。このタイプのケーキミックスは、簡便に生
地を作ることができるものであるが、前者は、チルド流
通で1〜2週間程度の保存性しかないものであり、ま
た、後者は、卵等の材料を加えて混練するときに、攪拌
にかなりの労力を要し簡便に操作することが困難である
と云った問題があった。
【0005】このようなことから、従来、流通時におい
ては充分な保存性を有し、喫食時においては手間をかけ
ずに高品質のケーキを簡便に得ることが可能ないわば粉
末状ケーキミックスとペースト状ケーキミックスの長所
を兼ね備えたようなケーキミックスを調製する試みが種
々行われている。ここで、そのような先行技術をいくつ
か例示してみると、例えば、チルド流通で1か月間保存
することができるペースト状ケーキ生地を提供すること
を目的とするものとして、小麦粉、膨張剤等からなる粉
体を収納した包装体Aと、卵、糖類、油脂等からなるペ
ースト状物を収納した包装体Bを包装体C中に収納して
なることを特徴とするケーキミックス(特開平3−25
1134号公報)、が提案されている。これによれば、
長期保存が可能で、ペースト状物と粉体原料とを混合す
るだけで風味の良好な、きめの細かいケーキを作ること
ができるとされている。しかしながら、ここに例示した
ものは、ケーキの製造に必要な全ての原材料を粉体とペ
ーストに分けて包装することにより、前記目的を達成し
ようとするものであり、基本的には、粉末状ケーキミッ
クスとペースト状ケーキミックスを利用し、これと特定
の包装体を組み合わせた点にその特徴が存するものであ
る。
【0006】また、充分な起泡性を有するチーズケーキ
の素を提供することを目的とするものとして、必須成分
としてのチーズ類と、牛乳、脱脂粉乳もしくは水又はそ
れらの混合物及び乳化剤と任意的付加成分としての油脂
を含む均質な起泡能を有する水中油型エマルジョンであ
るチーズケーキ類製造用素材(特公昭62−42573
号公報)、が提案されている。これによれば、所望のオ
ーバーランまで起泡させた後、小麦粉、卵等を加えて混
合し焼成するだけで、簡単にベークドチーズケーキを作
ることができ、また、きめの細かい均一な組織を有する
レアチーズケーキを焼成することもできる、とされてい
る。
【0007】また、充分な起泡性を有するチーズケーキ
の素の製造方法を提供することを目的とするものとし
て、必須成分としてのチーズ類と、牛乳、脱脂粉乳もし
くは水又はそれらの混合物と、要すれば更に油脂とを乳
化剤の存在下に均質乳化すること及び得られた乳化物を
直接加熱方式により滅菌することを特徴とする、起泡能
を有するチーズケーキ類製造用素材の製造法(特公昭6
2−42574号公報)、が提案されている。これによ
れば、上記製造法により得たチーズケーキ類製造用素材
を使えば、極めて容易にかつ手軽にベークドチーズケー
キを作ることができ、また、きめの細かい均一な組織を
有するレアチーズケーキも作ることができる、とされて
いる。しかしながら、これら先行技術は、チーズケーキ
を作る際に生地原料を起泡させることが必要であり、本
発明のように、チーズケーキの素をあらかじめ起泡させ
た状態で気密性容器に収納したものではない。
【0008】更に、起泡性粉末油脂を含んだ起泡成分と
小麦粉等の粉末成分を組み合わせたケーキ用のプレミッ
クスにおける生地の調製時のダマの発生をなくすこと、
及び食べた時の食感が好ましいケーキを作ることを目的
とするものとして、起泡性粉末油脂を主成分とする起泡
成分と、小麦粉を主成分とする粉末成分を別々に包装
し、これを組み合わせたケーキ用プレミックスにおい
て、使用する糖類の一部又は全部を粉末成分に配合し、
しかも粉末成分中の糖類の配合量を小麦粉100部に対
し10〜120部、好ましくは20〜100部とするこ
とを特徴とするケーキ用プレミックス(特開平7−81
60号公報)、が提案されている。これによれば、ケー
キ生地調製時のダマの発生を抑えることができ、更に、
きめ細かい気泡が多数存在するふっくらとした好ましい
食感のケーキを得ることができる、とされている。しか
しながら、このケーキ用プレミックスは、すべて粉体原
料からなるものであり、ペースト原料を使用するもので
はない。
【0009】上記各先行技術文献によれば、例えば、チ
ーズケーキではないが、ペースト原料をあらかじめ起泡
させておくことが記載されており、また、ペースト状チ
ーズケーキの素に乳化剤等を配合して起泡力を付与する
こと、及びこのような起泡性成分を含有させることが記
載されている。従って、この限りでは、ペースト状ケー
キの素をケーキ焼成前にホイップして起泡させて使用す
ることは公知技術であると云える。
【0010】しかしながら、粉体材料を含まないペース
ト状の製品は、家庭等においてこれを使用する場合、ホ
イップ又は攪拌等の操作を施す手間が比較的少なくて済
むことから、より簡便な形でこれを利用することができ
る点で一定の長所を有するものであるものの、概して粘
着性が高く、器具への付着性が高いこと、卵等の他の材
料を加えて均質化するのに時間を要すること、保存性が
かなり低く、流通上の支障が大きいこと、と云った問題
がある。
【0011】また、これらの先行技術文献には、従来、
起泡させるのが困難であるとされていたチーズ原料を含
有するペースト状チーズケーキの素を起泡(オーバーラ
ン)させた状態で気密性容器に充填密封すること、更
に、これを加熱殺菌処理すること等の構成、及び長期保
存後においても泡立て(ホイップ)させる必要がないこ
と等は全く記載されていない。例えば、上記特開平3−
251134号公報はケーキ生地一般が対象であって、
チーズ原料を起泡させるのが困難なこと及びこれを簡便
に起泡させる方法については何も記載されていない。
【0012】このように、従来、ケーキミックスもしく
はケーキ生地の素としては、家庭で卵等を加えて攪拌す
るだけでケーキ生地を作ることができる粉末ケーキミッ
クス、あるいはペースト状ケーキ生地の素が知られてお
り、このうち、粉末ケーキミックスの場合は、上記従来
技術によっても、一般に、ミックスと卵等の材料を攪拌
するときにダマが生じることを解消し得ず、また、水分
の多い原料を使用できないと云う問題点があり、一方、
ペースト状ケーキ生地の素の場合は、一般に、粘着性が
高いために、実際の使用に当たって、これをボール等に
移し、そこに卵等の材料を加えて混練するときに、泡立
て器を必要とし、しかも攪拌にかなりの労力を要し簡便
に操作することが困難であると云った問題点があり、当
業界において、これらの問題点を確実に解消し得るよう
な新しい製品を開発することが強く要請されている状況
にあった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】このような状況を踏ま
え、本発明者らは、前記したような従来製品にみられる
各種の問題点を確実に解消すると共に、家庭等において
も本格的な調理器具を使用することなく、簡単な操作を
施すだけで、きわめて簡便に良好なチーズケーキ生地を
調製することが可能であり、しかも、従前の粉末状、及
びペースト状の製品とはその基本構成を異にした新しい
タイプの製品を開発することを目標として鋭意研究を積
み重ねた結果、チーズ類、糖類の均質混合物に起泡剤を
加え、卵等の水分活性を上昇させる蛋白質成分を含まな
いようにして、あらかじめ起泡(オーバーラン)させた
ペースト原料を気密性容器に充填密封し、これを加熱殺
菌処理すること等により所期の目的を達成し得ることを
見い出し、本発明を完成するに至った。
【0014】すなわち、本発明は、家庭等において卵、
牛乳等の材料を加えて均一に混ぜるだけでチーズケーキ
生地を作ることができるものであり、従来の粉末ケーキ
ミックス、あるいは、ペースト状ケーキ生地の素と比較
して、泡立て(ホイップ)する必要がなく、また、焼成
したチーズケーキの物性及び食感が顕著に改善される高
品質の新しいタイプのチーズケーキの素及びその製造方
法を提供することを目的とするものである。
【0015】また、本発明は、ペースト状ケーキベース
と粉末状ケーキミックスから構成される新しいタイプの
チーズケーキの素を提供することを目的とするものであ
る。また、本発明は、原料混合物を起泡(オーバーラ
ン)させた状態で気密性容器に充填密封してなる高品
質、かつ高保存性を有する密封容器入りペースト状ケー
キベースと粉末状ケーキミックスとを組み合わせてなる
チーズケーキの素を提供することを目的とするものであ
る。
【0016】また、本発明は、格別の調理器具を必要と
せず、スプーン等の簡単な器具を用いるだけで簡便に良
好なケーキ生地を調製することが可能なチーズケーキの
素を提供することを目的とするものである。
【0017】更に、本発明は、上記チーズケーキの素を
利用した高品質のチーズケーキ製品の製造方法を提供す
ることを目的とするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の本発明は、少なくともチーズ類、糖類、起泡剤を含有
し、卵等の水分活性を上昇させる蛋白質成分を含まない
原料混合物を、起泡(オーバーラン)させた状態で、気
密性容器に充填密封し、加熱殺菌処理されてなるペース
ト状ケーキベースと、少なくとも小麦粉、ベーキングパ
ウダーを含有する粉体状ケーキミックスとから構成され
ることを特徴とするチーズケーキの素、である。また、
本発明の他の態様は、上記起泡剤が、少なくとも油脂、
糖類、乳化剤からなることを特徴とする上記のチーズケ
ーキの素、である。また、本発明の他の態様は、上記ペ
ースト状ケーキベースが、かさ比重0.8〜1.0にな
るまで起泡(オーバーラン)させたものであることを特
徴とする上記のチーズケーキの素、である。
【0019】また、本発明の他の態様は、次の各工程; 少なくともチーズ類、糖類を均質に混合してペース
ト原料を得る工程、 で得たペースト原料に起泡剤を混合し、これを混
捏して該ペースト原料をかさ比重0.8〜1.0になる
まで起泡(オーバーラン)させる工程、 上記で調製したペースト原料を気密性容器に充填
密封し、加熱殺菌処理を施す工程、 を経ることを特徴とするペースト状ケーキベースの製造
方法、である。また、本発明の他の態様は、上記起泡剤
を上記ペースト原料に混合する際の上記ペースト原料の
品温が20℃〜50℃であることを特徴とする上記のペ
ースト状ケーキベースの製造方法、である。更に、本発
明の他の態様は、上記方法で得たペースト状ケーキベー
スに、卵及び乳原料と、少なくとも小麦粉、ベーキング
パウダーを含有する粉体状ケーキミックスとを均一に混
合して得たチーズケーキ生地を焼型に入れて焼成するこ
とを特徴とするチーズケーキの製造方法、である。
【0020】続いて、本発明について更に詳細に説明す
る。本発明に係るチーズケーキの素は、ペースト状ケー
キベースとして、チーズ類、糖類の均質混合物に起泡剤
を加え、この原料混合物を混捏して、あらかじめ起泡
(オーバーラン)させたペースト原料を気密性容器に充
填密封し、加熱殺菌処理したものが採用される。このよ
うに、本発明は、あらかじめ卵等の水分活性を上昇させ
る蛋白質成分を含まない原料混合物を調製し、かつ、従
来、起泡させるのが困難であるとされていたチーズ類を
含むペースト状チーズケーキの原料を起泡(オーバーラ
ン)させた状態で気密性容器に充填密封し、加熱殺菌処
理する構成を採用した点にその最大の特徴があると云え
る。
【0021】このような構成を採用することによって、
本発明は、チーズケーキ生地を作る時に、従来のように
泡立て(ホイップ)する必要がなく、ただ牛乳と卵等を
添加して均一になるように混ぜるだけでよい。つまり、
面倒なホイップ作業を省略しても、組織が細かく、チー
ズケーキ(スフレ)特有のふっくらとした良好な食感を
有するきわめて良好な品質のチーズケーキを製造するこ
とができる。更に、ペースト原料に卵を含まないように
することによって、高温殺菌が可能となり、これによ
り、常温で長期間の保存(約6か月)を可能とすること
ができる。尚、上記特開平3−251134号公報のペ
ースト原料には卵等が含まれている。また、あらかじめ
起泡させたペースト原料を容器に充填密封して長期間保
存した場合、保存中に起泡の度合いが低くなり良好な品
質の製品は得られなくなることが一般的に知られている
が、本発明のチーズケーキの素は、長期間保存して起泡
の度合いが低くなったと思われるものであっても、泡立
て(ホイップ)する必要がまったくなく、そのまま良好
に使用することが可能であり、本発明のチーズケーキの
素は、特に、この点で、従来技術の常識を変えるものと
して注目に値する。
【0022】次に、本発明は、少なくとも小麦粉、ベー
キングパウダーを含有する粉体状ケーキミックスを別添
とした点にも特徴を有するものである。すなわち、すべ
ての原料を混合してペースト状チーズケーキの素とした
場合、充分な起泡性を得ることができず、このようなチ
ーズケーキの素を使用してケーキを焼成しても、いわゆ
る沈みが生じ、チーズケーキ(スフレ)特有のふっくら
としたチーズケーキを焼成することができない。この原
因は、チーズケーキの素を調製した後に行う加熱殺菌処
理によって、原料中に含まれている小麦粉が熱変性を起
こし、粘性が高くなりすぎるからであると考えられる。
【0023】次に、本発明のペースト状チーズケーキベ
ースの製造方法と、更に、このペースト状チーズケーキ
ベースを使ったチーズケーキの製造方法を示す。まず、
チーズケーキの素の製造方法については、チーズ類を加
熱して溶融状態にし、必要に応じてフレーバー等の添加
物を添加する。添加物を加えた場合には、均一に混ざる
まで攪拌する。チーズ類としては、通常のチーズケーキ
に使用されるものであれば如何なるものであっても使用
することが可能であり、例えば、風味の点から、天然の
クリームチーズが好適なものとして使用されるが、栄養
的あるいは味覚的見地から、他のチーズ類、例えば、植
物性チーズを使用することも可能であり、また、カッテ
ージチーズ等の低油分チーズ、エダムチーズ、ゴーダチ
ーズ等の熟成チーズを利用することも適宜可能である。
これらのチーズ類はペースト状チーズケーキベース全体
に対し30〜45重量%含まれるように配合することが
望ましい。
【0024】フレーバーとしては、例えば、バターフレ
ーバー、クリームフレーバー、バニラフレーバー、チー
ズフレーバー、レモンフレーバー、ミルクフレーバーが
好適なものとして例示される。その他、できあがったケ
ーキをしっとりさせる場合には、油脂を添加することも
適宜可能であり、例えば、固体脂の他、菜種油、大豆
油、ヒマワリ油、コーン油、サラダ油、パーム油等の常
温で液体の植物油の1種以上を使用してもよい。
【0025】次に、糖類を添加して、均一に混ぜるが、
糖類としては、例えば、砂糖(グラニュー糖)を単独で
使用する他、砂糖にマルチトール、マルトース、グルコ
ース、フラクトース、ソルビトール、水飴、異性化液糖
等の糖類の1種以上を混合することも可能である。
【0026】本発明においては、ペースト原料の水分活
性を上昇させない原料であれば、何れでも使用すること
が可能であり、例えば、必要により、全粉乳、全脂粉
乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエーパウダー、バ
ターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳などの各種粉
乳、バターオイルなどを使用することができる。ただ
し、本発明においては、卵等の水分活性を上昇させる蛋
白質成分を使用することは不可能であり、例えば、卵、
牛乳、クリーム、生クリーム、濃縮乳、脱脂乳、無糖練
乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳等、液体状
又は半固形状の乳原料は使用することができない。上記
のように、本発明のペースト状ケーキベースは、卵等の
水分活性を上昇させる蛋白質成分を含んでいないので、
常温下でも変敗しにくく、従って、きわめて長期間(約
6ヶ月)保存することができる。
【0027】次に、起泡剤を添加して、原料を起泡(オ
ーバーラン)させる。この場合、ペースト原料を均一に
混捏する工程で起泡剤を入れて、ペースト原料を均一に
なるまで混捏すると、ペースト原料が起泡し過ぎて、好
適な範囲に調整することが困難になるので好ましくな
い。本発明においては、ペースト原料が均一に混ざって
から起泡剤を入れることによって、適度な起泡状態とす
ることが可能であり、ペースト原料のかさ比重を0.8
〜1.0まで起泡(オーバーラン)させることができ
る。起泡剤は、少なくとも油脂、糖類、乳化剤からなる
ものが好ましく、適宜の起泡性成分ないし組成物を使用
することができる。起泡剤に油脂及び糖類を入れること
によって、起泡剤をペースト原料に添加した際の作業性
を顕著に向上させることができる。このうち、乳化剤と
しては、例えば、親油性の乳化剤を混合するのが好まし
い。親油性の乳化剤としては、HLBが1〜7の乳化
剤、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレング
リコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、
ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等を例示することがで
きる。また、当該乳化剤は、油脂100重量部に対し
て、グリセリン脂肪酸エステルの場合で3重量部まで、
レシチンの場合で2重量部まで混合することが好まし
い。原料を起泡(オーバーラン)させる際、ペースト原
料の比重が0.8〜1.0g/mlになるまで起泡させ
ることが望ましい。この場合、起泡が0.8g/ml未
満の場合、生地原料が柔らかくなりすぎて、チーズケー
キの焼成時にいわゆる沈みが生じやすくなり好ましくな
い。また、気泡が、1.0g/mlを超える場合、焼成
したチーズケーキの食感が硬くなり、きめの細かさがな
くなり、スポンジ様の食感になる傾向にあり、好ましく
ない。また、卵、牛乳等の原料を添加して生地を調製す
る時、ダマが発生しやすくなる。起泡剤の添加は、ペー
スト原料の品温が20℃〜50℃の間に行うのが好まし
く、これ以外では、起泡させるのが困難であるととも
に、起泡状態の維持が難しくなり、また、チーズケーキ
の焼成時にいわゆる沈みが生じやすくなり好ましくな
い。
【0028】以上の工程を経て調製されたペースト原料
は、気密性容器に充填密封され、加熱殺菌処理が施され
る。上記ペースト原料は、水分活性が0.9以下と低く
抑えられており、加熱殺菌は、80〜90℃、30〜6
0分の条件でも十分効果がある。その方法としては、熱
水噴霧、熱水浸漬、蒸気吹き込み等による方法が好適な
ものとして挙げられる。また、上記ペースト原料は、熱
変性成分を含んでいないので、比較的高温条件下の殺菌
が可能である。それにより、約6か月間の常温保存が可
能となる。
【0029】容器の材質は、耐熱性を有するものであれ
ば、特に制限されるものではなく、例えば、アルミ、P
P(ポリプロピレン)、ナイロン、PE(ポリエチレ
ン)あるいはこれらの積層物などが適している。ケーキ
生地の素の充填量については任意であるが、例えば、幅
130mm、長さ180mm、底材折り込み幅60mm
の気密性容器の場合は300gを充填する。密封の方法
は、ケーキ生地の素の水分の蒸散を防ぐために、PEな
どのプラスチックフィルムを用いたヒートシールなどに
より行う。
【0030】一方、粉体状ケーキミックスは、少なくと
も小麦粉、ベーキングパウダーが均一に混合されていれ
ばよく、混合の手順等に制限はない。また、必要によ
り、粉末植物繊維を使用することも適宜可能であり、そ
れによって、チーズケーキの物性を改善することができ
る。粉体状ケーキミックスは、耐湿性のすぐれた包材に
収納することで、保存性を向上させることができる。
【0031】本発明のチーズケーキの素のベースとなる
その他の原料として、必要により、澱粉(例えば、コー
ンスターチ等)、塩、増粘剤(例えば、キサンタンガム
等)、着色料(例えば、ベーターカロチン等)、果汁、
ゼラチン等の適宜の材料が付加的に使用される。
【0032】また、アルコールをケーキ生地の素に対し
て1〜4重量%混合して、保存性及び風味を高めること
も適宜可能である。アルコールとしては、ラム酒、ブラ
ンデー、又はキュラソー等のリキュール等を例示するこ
とができるが、食品用エチルアルコールをそのまま、又
は前記したラム酒、ブランデー又はキュラソー等に混合
して使用してもよい。前記いずれの場合においても、含
有するアルコールは、ケーキ生地の素に対して1〜4重
量%が好ましく、含有するアルコールが1重量%未満で
あると、保存性が低くなり、4重量%を超えると、アル
コール臭が強くなり、浮きが小さくなって食感が悪くな
る。
【0033】次に、上記チーズケーキの素を使ったチー
ズケーキの製造方法について説明する。本発明のチーズ
ケーキの素を利用して、チーズケーキを焼成する時は、
まず、上記ペースト状ケーキベースと、卵及び乳原料
と、粉体状ケーキミックスとを均一になるまで混合す
る。これらの原料の添加の順序、混合方法は特に限定さ
れるものではなく、例えば、上記ペースト状ケーキベー
スと粉体状ケーキミックスの混合物に卵及び乳原料を添
加してもよい。次に、上記混合物を全体がなめらかにな
るまで混合して生地を調製する。上記の生地を焼型に入
れて、常法により170℃〜200℃のオーブンで30
〜35分間かけて焼成することによりチーズケーキが得
られる。焼成後のケーキは、一般に行われているよう
に、約20cmの高さから一度落下させることにより、
焼成生地中に含まれている水蒸気を放出させ、ケーキ生
地の収縮を防止することができる。
【0034】本発明のチーズケーキの素は、常温流通下
で長期間その品質を高レベルに維持して保存することが
可能であり、特に、長期保存にもかかわらず、ペースト
状ケーキベースの起泡状態をきわめて良好に維持するこ
とが可能である。尚、上記原料配合からなるペースト状
ケーキベースは、高温で殺菌した場合でも、品質が変性
することはない。
【0035】このように、本発明のチーズケーキの素
は、気密性容器に充填密封したペースト状ケーキベース
を組み合わせたものであり、しかも、従来製品のように
泡立て(ホイップ)する必要がなく、焼成したチーズケ
ーキも物性、食感がきわめて良好に改善された製品であ
って、長期間保存しても起泡(オーバーラン)状態がき
わめて良好に維持される点で、チーズケーキミックスの
製品形態としては、これまでに類例がなく、きわめて画
期的なものと云える。尚、本発明において泡立て(ホイ
ップ)する必要がないとは、ただ本発明のチーズケーキ
の素に牛乳と卵等を添加して均一になるように混ぜるだ
けでよいこと、すなわち、泡立て(ホイップ)させる必
要がないことを意味するものであり、従来、起泡させる
のが困難であったペースト状チーズケーキの原料を気密
性容器に充填密封して長期間保存した状態においても起
泡性を保持することを可能としたものであり、本発明の
チーズケーキの素は、特に、このような点からみても、
従来のケーキミックスとは本質的に全く別異のものであ
ると云える。。
【0036】
【実施例】次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説
明するが、本発明は、当該実施例によって何ら限定され
るものではない。 実施例1 (1)ペースト状ケーキベースの製造 クリームチーズ46.5g重量部を加熱しながら攪拌し
てクリーム状にした。チーズ原料が溶融した後、チーズ
の良好な風味を付与するために、チーズフレーバーを
0.5重量部添加した。クリームチーズとチーズフレー
バーが均一になるまで攪拌した後、グラニュー糖55.
0重量部を添加した。次いで、グラニュー糖がチーズ原
料全体に均一に混合されるまで攪拌を行った後、起泡剤
(花王株式会社製 商品名:ハイロフティ)を10.0
重量部添加してオーバーランさせ、ペースト状ケーキベ
ース112重量部を得た。このペースト状ケーキベース
のかさ比重を測定したところ0.8であった。次に、上
記ペースト状ケーキベースを角型のポリプロピレン製平
底容器(10cm×10cm×2cm)に112重量部
充填し、フィルムで密閉した後、90℃、30分間の熱
水浸漬による加熱殺菌を施した。
【0037】(2)粉体状ケーキミックスの製造 小麦粉85重量部に粉末食物繊維10.0重量部及びペ
ーキングパウダー(三栄源FFI社製 商品名:サンオ
ーバー)5.0重量部を粉体混合して均一にし、この混
合物を袋状容器に収納した。
【0038】(3)チーズケーキの素 上記(1)及び(2)で製造したペースト状ケーキベー
ス及び粉体状ケーキミックスを組み合わせて袋状容器に
収納して、本発明のチーズケーキの素を得た。
【0039】(4)チーズケーキの焼成 開口部が円形の紙製焼型に、上記チーズケーキの素のう
ち、まず、ペースト状ケーキベース112重量部を入
れ、次に、粉体状ケーキミックス43重量部を加え、均
一になるまで攪拌してチーズケーキのベースを調製し
た。次に、上記チーズケーキのベースに卵2個(あらか
じめ溶いたもの)と牛乳30ccを添加して、生地全体
がなめらかになるまでかき混ぜ、チーズケーキの生地を
調製し、これを、オーブンに入れて170℃、35分間
の条件で、焼成して、チーズケーキ製品を得た。このチ
ーズケーキは、細かい組織を有しており、かつ、風味も
良好であった。
【0040】(5)製品の品質評価試験 上記実施例1で製造した本発明のチーズケーキ製品につ
いて、製品の品質評価試験を行って、製品の品質特性に
ついて評価した。 1)方法 上記実施例1の製品と、対照製品として、上記実施例1
のペースト状ケーキベースにあらかじめ卵原料を配合し
た点、及び、加熱殺菌処理を行わない点以外は、上記実
施例1の場合と同様にしてペースト状ケーキベースを調
製し、このペースト状ケーキベースを利用して実施例1
と同様にして製造したチーズケーキ(比較例1)を準備
して、製品の品質特性を比較した。
【0041】また、比較例2として、チーズ類、糖類及
び起泡剤を同時的に混合し、これを混捏して起泡(オー
バーラン)させて調製したペースト状ケーキベースを準
備して、同様に製品の品質特性を比較した。このものの
かさ比重は、1.1であった。各製品の品質特性は、組
織のきめの細かさ及び食感について、更に、保存性につ
いて、その程度を−−(きわめて不良)、−(不良)、
±(普通)、+(良好)、++(きわめて良好)のGr
adeに分類して、上記各製品を被検試料として5段階
評価法によりその品質を評価した。
【0042】尚、製品の品質特性のうち、組織のきめの
細かさ及び食感は、焼成して得たチーズケーキ製品の組
織のきめの細かさの程度及びチーズケーキ(スフレ)特
有のふわっとした食感の良否の程度を、また、保存性
は、ペースト状ケーキベースを1.5ヶ月常温保存した
場合の、ペースト状ケーキベースの起泡状態の維持の程
度及び品質の保持の程度を、それぞれ、意味する。
【0043】2)結果 その結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】上記表1の結果から明らかなように、本発
明の製品は、対照製品(比較例1〜2)に比較して、チ
ーズケーキの組織(きめの細かさ、食感)がきわめて良
好であり、また、ペースト状ケーキベースの保存性(起
泡性の維持、品質の保持)がきわめて良好な高品質のも
のであることが分かった。ペースト状ケーキベースの原
料配合、混合方法等を変更して同様に製造したチーズケ
ーキ製品について同様に品質評価試験を行ったところ、
ほぼ同様の結果が得られ、本発明製品は、その品質特性
がきわめて良好な高品質のものであることが分かった。
【0046】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明は、少なく
ともチーズ類、糖類、起泡剤を含有し、卵等の水分活性
を上昇させる蛋白質成分を含まない原料混合物を、起泡
(オーバーラン)させた状態で、気密性容器に充填密封
し、加熱殺菌処理されてなるペースト状ケーキベース
と、少なくとも小麦粉、ベーキングパウダーを含有する
粉体状ケーキミックスとから構成されることを特徴とす
るチーズケーキの素に係るものであり、本発明によれ
ば、チーズケーキ生地を作る時に、従来のように泡立て
(ホイップ)をして、生地をオーバーランさせる必要が
なく、卵と牛乳を加えて均一に混合するだけで高品質の
チーズケーキ生地を調製することが可能であり、また、
焼成したチーズケーキは細かい組織を有し、かつチーズ
ケーキ(スフレ)特有のふわっとした良好な食感を有し
ており、製品の品質特性がきわめて良好な高品質のチー
ズケーキ製品を得ることができる。また、本発明のチー
ズケーキの素は、常温下での長期間保存が可能であり、
しかも、長期間保存しても、その起泡性が良好に保持さ
れることから、従来のペースト状生地の流通に必要であ
った、チルド流通を行わなくてもよいので、物流コスト
も削減することができる。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭57−47436(JP,A) 特開 昭57−47435(JP,A) 特開 平1−101844(JP,A) 特開 平1−101843(JP,A) 特開 平7−8160(JP,A) 特開 平3−251134(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A21D 10/02 A23C 19/09 A23G 3/00

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくともチーズ類、糖類、起泡剤を含
    有し、卵等の水分活性を上昇させる蛋白質成分を含まな
    い原料混合物を、起泡(オーバーラン)させた状態で、
    気密性容器に充填密封し、加熱殺菌処理されてなるペー
    スト状ケーキベースと、少なくとも小麦粉、ベーキング
    パウダーを含有する粉体状ケーキミックスとから構成さ
    れることを特徴とするチーズケーキの素。
  2. 【請求項2】 上記起泡剤が、少なくとも油脂、糖類、
    乳化剤からなることを特徴とする請求項1記載のチーズ
    ケーキの素。
  3. 【請求項3】 上記ペースト状ケーキベースが、かさ比
    重0.8〜1.0になるまで起泡(オーバーラン)させ
    たものであることを特徴とする請求項1記載のチーズケ
    ーキの素。
  4. 【請求項4】 次の各工程; 少なくともチーズ類、糖類を均質に混合してペース
    ト原料を得る工程、 で得たペースト原料に起泡剤を混合し、これを混
    捏して該ペースト原料をかさ比重0.8〜1.0になる
    まで起泡(オーバーラン)させる工程、 上記で調製したペースト原料を気密性容器に充填
    密封し、加熱殺菌処理を施す工程、 を経ることを特徴とするペースト状ケーキベースの製造
    方法。
  5. 【請求項5】 上記起泡剤を上記ペースト原料に混合す
    る際の上記ペースト原料の品温が20℃〜50℃である
    ことを特徴とする請求項4記載のペースト状ケーキベー
    スの製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項4で得たペースト状ケーキベース
    に、卵及び乳原料と、少なくとも小麦粉、ベーキングパ
    ウダーを含有する粉体状ケーキミックスとを均一に混合
    して得たチーズケーキ生地を焼型に入れて焼成すること
    を特徴とするチーズケーキの製造方法。
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KR101354180B1 (ko) * 2013-05-28 2014-01-23 씨제이푸드빌 주식회사 가라기난을 이용한 버터케익 제조방법

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