JP3018256B2 - 水酸化亜鉛カルシウム、レシチンおよびpaoの抗原溶液用アジュバントとしての使用 - Google Patents

水酸化亜鉛カルシウム、レシチンおよびpaoの抗原溶液用アジュバントとしての使用

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】本発明は、抗原溶液に対する水酸化亜鉛カ
ルシウム、レシチンおよびPAOの使用、およびこの種
類のアジュバントで処理した抗原溶液に関する。
【0002】多くの抗原はわずかな免疫原性しか示さな
いので、動物への1回注射では、弱い免疫応答を引き起
こすにすぎないかまたは検出できるような応答は全く認
められない。したがって、抗原に対する生体の免疫応答
を増幅するため、抗原刺激性アジュバントが抗原に添加
される。大部分の不活性化ウイルスおよび細菌ワクチン
は、この理由で、アジュバントを含んでいる。これらの
ウイルスおよび細菌ワクチンには好んでAl(OH)3
よびAlPO4が単独でもしくは配合されて、また粗製
油分画から得られる植物油もしくは鉱油、たとえば組成
は明確に定義されていない、いわゆる医療用の薬用白油
が用いられる。BayolR F鉱油を含有し、結核菌抽
出物を添加したおよび添加しないフロインドの完全およ
び不完全アジュバントが実験的ワクチンには優先的に用
いられている。
【0003】しかしながら、これらのアジュバントには
局所反応に加えて全身的な副作用もある。
【0004】アジュバントには、その局所的および全身
的耐容性のほかに、以下の点が重要である。すなわち、
1. それらの作用の免疫学的機構すなわちそれらによ
って誘発される作用、2. それらの薬動力学的性質
(生物学的分解性)である。
【0005】1に関しては、無機アジュバント〔Al
(OH)3,AlPO4〕は主として体液性免疫応答のみを
誘発し、一方、多くのウイルス感染において有力な役割
を果たす細胞性免疫はわずかしかまたは全く刺激しない
ことが一般的に知られている。
【0006】鉱油、とくにフロインドのアジュバントの
特性は異なり、よく知られているように、細胞性および
体液性の両免疫応答を刺激する。
【0007】2に関しては、現在まで慣用されてきたア
ジュバントは、主として注射部位に残留するか、または
生体の他の臓器に輸送され、濃縮されて、そこでそれら
の免疫学的作用と場合によっては毒性作用を示す。すな
わち、分解および排泄は、きわめて長期の遅延後に生じ
るか、または全く起こらない。
【0008】本発明のアジュバントの成分、すなわち水
酸化亜鉛/水酸化カルシウムゲルおよびレシチンは異な
る性質を有する。これらは生体内で代謝され、したがっ
て毒性が低い。
【0009】EP−A−0,108,316(ドイツ公開
公報3,241,113号)には、ワクチンの添加物とし
て他の物質に加えて、亜鉛化合物すなわち亜鉛塩の使用
が提案されている。
【0010】EP−A−0,343,548にはアジュバ
ントとしてポリアルファオレフィン(PAO)が開示さ
れ、またEP出願89 118565494には水酸化
亜鉛ゲルおよびレシチンが開示されている。
【0011】しかしながら驚くべきことに、水酸化亜鉛
/水酸化カルシウムゲル、レシチンおよびPAOを組合
せると、以下の性質を有するアジュバントが得られるこ
とが見出された。すなわち、1. この配合アジュバン
トは、アジュバントとして有効な4種の個々の成分それ
ぞれと比較して著しく改良された、免疫系に対する刺激
作用を有する。2. この配合アジュバントは、驚くべ
きことに、水酸化亜鉛ゲルおよびレシチンまたはPAO
に比較して、改良された全身的および局所的耐容性を有
する。
【0012】水酸化亜鉛/水酸化カルシウムゲルおよび
レシチン99懸濁液のそれ自体既知の方法による製造方
法の説明: 水酸化亜鉛/水酸化カルシウムゲル: 1. ZnCl2およびCaCl2・2H2Oに出発し
て、蒸留水中0.1M溶液の調製(それぞれについて0.
1mol/l)。 2. ZnCa塩溶液の濾過による滅菌(0.2μ膜フ
ィルター)。 3. 塩基、好ましくは10N NaOHまたは10N
KOHを、滅菌条件下、撹拌しながら、pHが6.8〜7.
8に達するまで加える。 4. 沈殿した水酸化亜鉛/水酸化カルシウムゲルは好
ましくは、UltraturaxR処理によってホモジナイズでき
る。
【0013】この場合出発原料として用いられるこれら
のZnCa塩は単に一例である。水酸化亜鉛/水酸化カ
ルシウムゲルは、直接、抗原懸濁液中でpHをモニタリン
グしながら調製することもできる。用いられるZnCa
塩溶液が滅菌されていなくて、操作が非滅菌条件下に行
われる場合は、ゲルを120℃で20分間、オートクレ
ーブ処理してもよい。
【0014】 20%レシチン99懸濁液の調製: 1. レシチン20gをPBS(Dulbeccoによるリン酸
緩衝食塩溶液)、pH7.2、100ml中に懸濁する。 2. この懸濁液を120℃で20分間オートクレーブ
処理。3. 冷却後、懸濁液をホモジナイズする。 4. 10N NaOHを用いて、懸濁液のpHを7.0〜
7.8に調整する。
【0015】 本発明のアジュバント配合物(BW89)の調製例: PAO 26.67% をTweenR81 6.00% およびTweenR80 2.00% (いずれもポリオキシエチレンソルビ タンモノエステル)とホモジナイザー を用いて完全に混合する。 UltraturaxRを用いて混合しながら 0.1M水酸化亜鉛カルシウムゲル 50.00% およびレシチン99の20%懸濁液 15.33% を加える。 100.00%
【0016】この方法で得られるアジュバント配合物は
所望の任意の百分率で抗原に添加することができる。
【0017】レシチンは20%懸濁液として添加するこ
とが好ましい。この種類の懸濁液1〜10%、好ましく
は5%を添加できる。
【0018】ポリアルファオレフィンは1〜40%、好
ましくは10%の濃度に添加される。
【0019】このアジュバント配合物に考えられる別の
製法としては、1. 抗原への、水酸化亜鉛カルシウム
ゲルおよびレシチン99懸濁液の添加、ついで2. P
AO、Tween81およびTween80、ならびに1に記載し
た抗原/アジュバント混合物によるW/O エマルジョ
ン(油中水型乳剤)の製造による方法がある。
【0020】しかしながらまた、本発明のアジュバント
配合物は以下の方法で製造することもできる。この場
合、すべての操作工程は滅菌条件下に行われる。 1. PAO 26.67% TweenR80 6.00% TweenR81 2.00% をUltraturaxによって完全に混合する。 2. 滅菌ZnCl2/CaCl2 0.1M溶液 50.00% を加え、UltraturaxRによって混合して油中水型(W/O) エマルジョンを調製する。 3. pHをモニタリングし(6.5〜7.5)、Ultraturax を用いて混合しながら、10N NaOHを加えてW/O エマルジョン中に水酸化亜鉛カルシウムゲルを沈殿させる。 4. 次に、20%レシチン99 15.33% を混合しながら加える。 計 100.00%
【0021】アジュバント配合物の製造に考えられる他
の方法としては、 1. 水酸化亜鉛カルシウムゲルとレシチン99懸濁液
を抗原に加えて抗原を吸着させ、 2. PAO、TweenR81および80、ならびに1に述
べた抗原/アジュバント混合物によりW/Oエマルジョ
ンを製造する方法がある。
【0022】以下の実施例は、本発明のアジュバント配
合物の利点を例示するものである。
【0023】実施例 1 アウジェスツキー(Aujeszky)病ウイルス(AV)を初
代ブタ腎臓細胞培養中で増殖させる。培養細胞の100
%がウイルス特異的に破壊されたならば、すなわち細胞
が完全に破壊される(CPE)まで待って、ウイルスを
収穫し、遠心分離および濾過によって精製した。次に、
エチレンイミンを用いてAVを不活性化した。不稔性お
よび安全性をチェックしたのち、この不活性化AV抗原
から4種のワクチンを製造した。
【0024】ワクチンの組成を以下の表1に掲げる(数
値はmlである)。
【表1】
【0025】局所的耐容性を調べるため、体重450g
のモルモット2匹に、それぞれのワクチンの各場合とも
0.1mlを足蹠内に接種した。
【0026】接種後4週間、毎日モルモットの足蹠の発
赤、腫張および他の肉眼的な病的解剖学的変化を検査し
て局所的耐容性を評価し、不耐性の値を点数で決定し
た。肉眼的な病的解剖学的変化が重篤なほど、その値の
点数は高く、不耐性が大きいことを示す。
【0027】測定した不耐性の点数を以下に表として掲
げる。
【表2】
【0028】表に示した結果から明らかなように、BW
89アジュバント配合物(ワクチンD)は、局所的耐容
性に関し、他のすべてのアジュバントよりはるかに優れ
ている。
【0029】ワクチンの効力を評価するために、ワクチ
ン接種4週後にモルモットから採血し、AVに対する血
清中の中和抗体を測定した。
【0030】測定された中和力価を以下に表として示
す。
【表3】
【0031】この表における結果から明らかなように、
アジュバント配合物(ワクチンD)の効力は他のアジュ
バントの場合よりも良好である。
【0032】全身的耐容性の測定 各場合とも体重30gのNMRIマウス10匹を用
い、上述のようにして製造したワクチンの各場合とも
0.3mlを皮下に接種した。
【0033】全身的耐容性の測定には、ワクチン接種後
8日まで毎日、動物の体重をモニタリングした。
【0034】 動物の体重の増加は ワクチンA 11g ワクチンB 6g ワクチンC 8g ワクチンD 11g 非処置対照 10g であった。
【0035】体重の増加は、BW89アジュバント配合
物が、良好な全身的耐容性を有することを示している。
【0036】実施例 2 PI3ウイルス(パラインフルエンザ3ウイルス)をD
BK細胞中で増殖させた。培養細胞ローンの80〜10
0%がウイルス特異的に破壊されたとき、ウイルスを収
穫し、遠心分離によって精製した。こののち、エチレン
イミンを用いてウイルス抗原を不活性化した。不稔性と
安全性をチェックし、不活性化抗原から2種のワクチン
を製造した。
【0037】 ワクチンA(ワクチン組成の百分率は容量:容量であ
る): PI3V抗原 80.0% 2%濃度Al(OH)3 19.5% 10%濃度サポニン(Merck) 0.5% ワクチンB: PI3V抗原 80.0% BW89 20.0%
【0038】いずれの場合も2.0mlのワクチンをそれ
ぞれ3匹のヒツジの皮下に接種し、接種4週後に同じ用
量を再接種した。ワクチンの局所的耐容性を調べるた
め、注射部位の腫張、発赤、硬度および感受性を調べ
た。
【0039】ワクチンAでは接種の8週後にも接種後ラ
ンプが肉眼で認められ、その退行にはその硬度からみて
なお数週を要するものと思われた。本質的により良好な
局所的耐容性はワクチンBに認められた。接種後14〜
21日で、注射部位の接種後ランプはも早肉眼ではみら
れないかまたは触知できなかった。ワクチンAまたはB
を接種されたすべての動物で、全身的健康状態に障害は
認められなかった。
【0040】実施例 3 耐容性の試験のために、2種のブランクワクチンを調製
した(ブランクワクチンは抗原を含まない。抗原の代わ
りにEagles59媒体を添加する。しかしながら、アジュ
バントの含量はワクチンの場合と同様とする)。組成は
次の通りである。
【0041】 ワクチンA: EB(生理食塩水+ビタミン+アミノ酸) 90.0% 2%濃度のAl(OH)3 10.0% ワクチンB: EB 90.0% BW89 10.0%。
【0042】3頭のウマにワクチンAを、6頭のウマに
ワクチンBを、2.0mlを用いて皮下に接種した。
【0043】動物の局所反応の検査を8日間毎日実施し
た。結果を以下の表にまとめる。
【表4】
【0044】この表から明らかなようにBW89はAl
(OH)3よりもかなり良好な局所的耐容性を示す。注目
すべき全身反応を示す動物はみられなかった。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 抗原溶液に予め水酸化亜鉛/水酸化カル
    シウムゲルを添加したアジュバント処理抗原溶液。
  2. 【請求項2】 抗原溶液に予めさらに、20%レシチン
    懸濁液1〜10%好ましくは5%を添加した請求項1記
    載の抗原溶液。
  3. 【請求項3】 抗原溶液に予めさらに、ポリアルファオ
    レフィン1〜40%好ましくは10%を添加した請求項
    1記載の抗原溶液。
  4. 【請求項4】 抗原溶液に水酸化亜鉛/水酸化カルシウ
    ムゲルを添加するアジュバント処理抗原溶液の製造方
    法。
JP3065215A 1990-03-08 1991-03-07 水酸化亜鉛カルシウム、レシチンおよびpaoの抗原溶液用アジュバントとしての使用 Expired - Fee Related JP3018256B2 (ja)

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AT (1) ATE101045T1 (ja)
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ATE101045T1 (de) 1994-02-15
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KR100195571B1 (ko) 1999-06-15
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JPH04217631A (ja) 1992-08-07
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