JP3018112B2 - 嵩密度を向上させた無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体 - Google Patents

嵩密度を向上させた無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は無水マレイン酸−メチル
ビニルエーテル共重合体に関する。さらに詳しくは、加
圧ロールで圧縮した後粉砕することにより粉末状のもの
を粒状化し、嵩密度を向上させることによりハンドリン
グを容易にし、かつ、種々の欠点を改良した無水マレイ
ン酸−メチルビニルエーテル共重合体に関する。
【0002】無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共
重合体は直鎖状の無水共重合体であって水溶性の高分子
電解質化合物である。従来は合成洗剤のビルダーなどに
も用いられていた。最近では人体に対する無毒性、長期
間にわたる安定性、粘着性、凝集性、保水性、剥離性な
どが優れているため薬剤、粘着剤等混合して貼付剤(パ
ップ剤)等に用いられるようになってきた。
【0003】また、この共重合体を水、アルカリや各種
アルコールと反応させることにより無水マレイン酸部分
を開環したものも同様に水溶液の増粘剤や接着剤、洗剤
の固着防剤、スプレー式毛髪固定剤などとして、幅広く
応用されている。
【0004】
【従来の技術】従来、無水マレイン酸−メチルビニルエ
ーテル共重合体は、特公昭45−29193号公報に開
示されているように出発原料モノマーである無水マレイ
ン酸とメチルビニルエーテルをベンゼン等の溶媒を用
い、密閉耐圧容器中において、ラジカル共重合反応によ
り製造し、得られたポリマーを、スラリー状で反応器か
ら取り出し、溶媒を除去することにより、粉末状の共重
合体が製造されていた。
【0005】また、特開昭64−14222号公報には
メチルビニルエーテルを溶媒として用いて加圧下で重合
を行い、粉末の共重合体を製造する方法が開示されてい
る。しかしながら、この粉末状重合体を前記のような用
途に使用するため、反応器に仕込んだり、また溶解槽等
に移しかえる際、微粉末が飛散し、反応装置等の周辺が
粉末で汚れたり、また、作業員が粉塵を吸入し、気管等
に悪影響をおよぼす。
【0006】また、水溶液やアルコール溶液を調製する
際に、液面上に浮いてしまうため、“ままこ”状態にな
りやすく、溶解作業所要時間が長くなる等の問題があ
る。最悪の場合には舞い上った粉塵が静電気等による火
花放電などの着火源で着火し、粉塵爆発を起こし、重大
な事故につながる恐れがある。
【0007】このような問題を解決するために一定の粒
度を有し、粉塵発生を抑制した無水マレイン酸−メチル
ビニルエーテル共重合体を製造する方法が特開昭57−
158214号公報[USP 4,370,454に相
当(発明の名称:マレイン酸無水物重合体の製造方
法)]に開示されている。
【0008】これは溶媒を用いずに過剰のビニルエーテ
ル中に溶解した、無水マレイン酸を、石英粉末、酸化ア
ルミニウム粉末などからなる粉末床の中で激しく転動さ
せながら重合させ反応終了後、過剰のビニルエーテルモ
ノマーを留去することにより、粒子径10μm〜2cm
を有する共重合体を製造する方法である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記の
方法では重合体が石英粉末、酸化アルミニウム粉末など
からなる粉末床の中で処理される訳であるから嵩密度は
ある程度まで高くはなるが、必然的に製品中にそれら粉
末が混入してくるおそれがある。また、当然のことなが
ら、製造工程における管理が複雑になる。
【0010】上記のような問題を解決するために本出願
人は特願平1−258471号明細書(発明の名称:粒
状化無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体)
および特願平1−250513号明細書(発明の名称:
粒状化無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体
の製造方法)において、数百ミクロン〜数千ミクロンの
粒度をものを一定量含有し、かつ、実質的に無機物を含
有していないグレードのものを開示した。
【0011】しかしながら、これでも問題が完全に解決
している訳ではない。それは粒度の問題だけでなく、共
重合体の嵩密度が小さいため前記のような問題が完全に
は解消しないことおよび充填密度が小さいことである。
上記のような状況に鑑み、本発明者らは鋭意検討を重ね
た結果、本発明を完成させた。
【0012】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は 「平均嵩密度が0.3g/cm以上で、実質的に無機
物を含有していないことを特徴とする粒状化無水マレイ
ン酸−メチルビニルエーテル共重合体」である。
【0013】無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共
重合体を製造する際の反応式は以下のように示される。
【0014】以下に本発明の「嵩密度を向上させ、か
つ、実質的に無機物を含有していない無水マレイン酸−
メチルビニルエーテル共重合体」について製造工程で使
用する機器をブロック図で示した図1を用いて詳細に説
明する。まず、“嵩密度を向上させ”というのは前記の
ように、従来から製造され販売されていたほとんどの無
水マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体の嵩密度
が高々0.25〜0.30g/cm程度であったのに
対して平均嵩密度を0.30〜0.60g/cm程度
に向上させたことを意味する。
【0015】無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共
重合休の嵩密度は乾燥直後は通常、0.25g/cm
程度であるが、流通過程などで長時間放置されていると
自然に圧密化されて0.30g/cm程度に変化する
ことが知られている。
【0016】図1において、1−1が原料を仕込んで重
合反応を行うための重合槽である。この重合槽では、通
常はベンゼンのような不活性な溶剤を製品である共重合
体の分散溶媒として使用し、出発原料モノマーである無
水マレイン酸およびメチルビニルエーテルを仕込んでラ
ジカル重合開始剤の存在下、ラジカル共重合反応させ
る。反応終了後の共重合体は、スラリー状で反応器より
取出される。
【0017】反応器より取出された共重合物はベンゼン
等溶剤の中に懸濁したスラリー状態のまま遠心濾過装置
2−2に移送される。遠心濾過装置2−2により、スラ
リー液中の大部分のベンゼンが除去され、共重合物はケ
ーキ状になる。しかしながら、このケーキ状の共重合物
中にも未だ70〜80%のベンゼンが含まれている。
【0018】次いで、ケーキ状の共重合物は、3−3で
示される乾燥機に移送される。本発明で述べる湿潤した
スラリー状または粉末状原料というのは70〜80%の
ベンゼンが含まれているケーキ状の共重合物のことであ
る。本発明のポイントは前記ベンゼン等溶剤を70〜8
0%含有したケーキ状の共重合物を乾燥後、圧縮型造粒
機を用いることにより一定の嵩密度を有するように粒状
化され、かつ、実質的に無機物を含有していない無水マ
レイン酸−メチルビニルエーテル共重合体を提供すると
ころにある。
【0019】4−4が乾燥後の粉末状または高々500
0ミクロン程度の粒度の粒子を含有する無水マレイン酸
−メチルビニルエーテル共重合体の嵩密度を向上させる
役割を有する圧縮型造粒機である。次に、本発明におけ
る“実質的に無機物を含有していない”という言葉の意
味に付いて説明する。
【0020】上記のように粒子径10μm〜2cmを有
する無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体は
公知である。しかしながら、この共重合体は石英粉末、
酸化アルミニウム粉末などの無機物を必然的に含有して
いる。
【0021】これに対して、本発明の共重合体はこのよ
うな物質を含有していない。しかしながら、使用する原
料、溶剤はごく微量ではあるが、無機物を含有している
のが普通である。また、無機物を含む触媒を使用すれば
必然的にその無機物が共重合体中に残存する。
【0022】また、一般的に工業的な設備で製造された
生成物は本発明の共重合体に限らず機器に由来する不純
物などを微量含むのを避けることはできない。本発明に
おける“実質的に無機物を含有していない”という意味
はこれら止むを得ず混入してくる無機物以外の無機物を
含まないということである。このような止むを得ず混入
してくる無機物の残存量は高々0.1%程度である。
【0023】次に、嵩密度を向上させる具体的な手段に
ついて詳細に記述する。嵩密度を向上させる具体的な手
段としては粉末状の共重合体にバインダーを混ぜて高速
回転させることによる湿式造粒、減圧で脱気して粒子を
ブロッキングさせる方法などもあるが、共重合体の化学
的性質や粉体物性を考えると乾式造粒法である圧縮型造
粒機を用いる方法が好ましい。もう一つの乾式圧縮造粒
法の利点は加湿/乾燥工程を省けることである。
【0024】圧縮型造粒機としては圧縮ロールを縦型ま
たは横型に配置したものいずれでも使用し得る。圧縮ロ
ールの押圧力はある程度までは高ければ高い程、部分的
には共重合体の嵩密度を向上させることができるが、実
用的には20〜200kg/cm、好ましくは、50
〜150kg/cmである。
【0025】圧縮ロールのサイズ、特にロールの長さは
処理能力に影響するが、モーターの所要電力、品質のバ
ラツキ度合いなどを考慮すると50mm〜1000mm
程度で十分である。一方、圧縮ロールの直径は処理能力
にはそれ程影響しないが、ロールの長さとのバランス上
50〜500mm程度が好ましい。
【0026】圧縮ロールの回転速度は5〜50r.p.
m.程度である。回転速度を速くするとある程度までは
処理能力が向上するが、嵩密度や粒度のバラツキが大き
くなること、電動機の安定な運転が難しいことなどを考
えると自ずから一定の限度がある。より好ましくは、2
0〜30r.p.m.程度である。
【0027】目的の嵩密度、粒度のものを得るために
は、圧縮ロールを通しただけでは不十分であり、通常は
共重合体を圧縮後、破砕機、スクリーン付き整粒機など
を組み合わせて使用するのが好ましい。以上のようにし
て嵩密度および粒度を大にした場合の具体的な嵩密度お
よび粒度の数値を記述する。
【0028】前記のように乾燥処理をしただけで特別な
造粒処理をしない共重合体の嵩密度が高々0.25〜
0.30g/cm程度であったのに対して圧縮造粒処
理をすると平均嵩密度を0.30〜0.60g/cm
程度に向上させることが可能である。また、粒度に関し
ては0.5mmを超えるものをほとんど含んでいなかっ
たのに対して、圧縮造粒処理をすると0.5mmを超え
るものも含まれてくる。
【0029】嵩密度と溶解所要時間に関して詳細な関係
を調べたわけではないが、35g/cm程度のものが
最も短時間で溶解するようである。嵩密度が大きくなる
と特に中心部の溶解が遅れる傾向があるため全体の溶解
時間が延長されるようである。
【0030】なお、本発明において述べる粒子の粒径と
はJIS Z8801で規定された標準ふるい/網ふる
いを用いて測定したものである。各ふるい上に残った顆
粒状共重合体の重量百分率によって粒径分布を表わし
た。粒径分布はロータップ型ふるい振盪機によって測定
した。
【0031】
【発明の効果】以上のようにして製造された本発明の嵩
密度を向上させた無水マレイン酸−メチルビニルエーテ
ル共重合体は溶解させるために要する時間が短縮され、
“ままこ”状態になりにくく、かつ、作業時の粉立ち現
象がなくなった。さらに、充填密度が大になるため流通
過程における合理化効果も顕著である。以下実施例及び
比較例を挙げて本発明の効果を具体的に説明する。
【0032】なお、実施例及び比較例において、水に対
する所要溶解時間の測定は以下の方法で行なった。36
0gの水を500lのビーカー中で70℃に保持する。
回転数500r.p.m.で攪拌しながら共重合体40
gを投入する。溶液がフロック状になり、流動しなくな
るまでの時間を測定し、これを所要溶解時間とした。
【0033】
【比較例1】嵩密度を向上させる処理をしていない無水
マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体の嵩密度、
粒径分布、水に対する溶解所要時間を測定して表1に示
した。
【0034】
【表1】
【0035】
【実施例1】縦型のロールプレス機を使用して嵩密度を
向上させる処理を行なった。処理条件は以下の通りであ
る。 ロール寸法 228φ×76mm ロール回転数 15r.p.m. ロール圧力 140kg/cmおよび50kg/cm 供給速度 55kg/時間 スクリューフィーダー回転数 40r.p.m.
【0036】以上の条件でロール加圧処理を行なった後
スクリーン付きグラニュレーター(モーター:0.4k
w、スクリーンメッシュ:2mm)を用いて粗砕した
後、整粒した。結果を表2(ロール圧力140kg/c
の場合)および表3(ロール圧力50kg/cm
の場合)に示した。
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】なお、無機物の含有量を測定した結果、い
ずれも0.1重量%未満であった。無機物の含有量の測
定はJIS K4101に規定された方法で行なった。
【0040】
【実施例2】横型のロールプレス機を使用して嵩密度を
向上させる処埋を行なった。処理条件は以下の通りであ
る。 ロール寸法 162φ×60mm ロール回転数 15r.p.m. ロール圧力 103(kg/cm) 供給速度 46.1(kg/時間)
【0041】以上の条件でロール加圧処理を行なった後
フレークブレーカーを用いて粗砕した後、ロータリーフ
ァイングラニュレーターを用いて整粒した。結果を表4
および表5に示した。
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の“嵩密度を向上させ、かつ、実質的に
無機物を含有していない無水マレイン酸−メチルビニル
エーテル共重合体”を製造するための装置の組み合わせ
フローシート。
【0045】
【符号の説明】
1−1が原料を仕込み、重合反応を行うための重合槽で
ある。 2−2が遠心濾過装置である。 3−3が乾燥機である。 4−4が圧縮型造粒機である。 5−5が破砕機である。(以下余白)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 平均嵩密度が0.3g/cm以上で、
    実質的に無機物を含有していないことを特徴とする粒状
    化無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体。
  2. 【請求項2】 粒度0.5mm以上の粒子を含有する請
    求項1記載の粒状化無水マレイン酸−メチルビニルエー
    テル共重合体。
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