JP3017055B2 - ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents

ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ

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JP3017055B2
JP3017055B2 JP7251599A JP25159995A JP3017055B2 JP 3017055 B2 JP3017055 B2 JP 3017055B2 JP 7251599 A JP7251599 A JP 7251599A JP 25159995 A JP25159995 A JP 25159995A JP 3017055 B2 JP3017055 B2 JP 3017055B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、軟鋼、高張力鋼又は低
合金鋼の溶接に適用することができ、水平隅肉溶接及び
立向上進溶接に好適であると共に、溶接作業性が優れ、
溶接速度の向上が可能なガスシールドアーク溶接用フラ
ックス入りワイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】近時、溶接作業について、省人化及び高
能率化を促進するための開発が進められている。特に造
船分野においては二重船殻が必要とされており、隅肉溶
接線が他の分野の1.5乃至2倍程度となるので、溶接
の高速化が強く要求されてきている。
【0003】従来のガスシールドアーク溶接の分野にお
いては、ビードの外観を改善するための技術が公知であ
る(特開昭62−33093号公報)。これは、フラッ
クスの成分であるTiO2 の粒度分布を適切に規定する
ことにより、アークを安定させるものである。また、溶
接速度を向上させる技術も提案されている(特開昭63
−235077号公報)。これは多電極溶接によるもの
であり、電極間隔を50mm以下にすることによって、
溶接速度の高速化を図っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、TiO
2 の粒度分布を規定しても、ビードの外観が改善される
のみであって、その溶接速度は40cm/分程度と低速
である。また、多電極溶接による方法については、溶接
速度は高速化されているが、多電極溶接であるために、
溶接施工上においてトーチ周りが大型化したり、設備投
資費が高くなる等の問題点がある。
【0005】このように従来技術では、ガスシールドア
ーク溶接において、優れたビード形状と高速溶接とを低
コストで得ることが実現できる単電極のフラックス入り
ワイヤは開発されていない。
【0006】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、単電極による水平隅肉溶接において溶接速
度が例えば1m/分まで向上させることができ、優れた
ビード形状及びなじみ性を有していて、溶接作業性が良
好であると共に、単電極による立向上進溶接においても
優れた溶接作業性を有するガスシールドアーク溶接用フ
ラックス入りワイヤを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係るガスシール
ドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、ワイヤ全重量
に対して、TiO2 :3.0乃至5.5重量%、ZrO
2 :0.2乃至0.5重量%、SiO2 :0.1乃至
0.5重量%、C:0.02乃至0.1重量%、Mn:
2.0乃至3.0重量%、Si:0.5乃至1.0重量
%、(Zr+Al)含有量:0.15乃至0.5重量
%、及び(TiO2 +SiO2 +ZrO2 )含有量:
4.0乃至6.0重量%を含有していることを特徴とす
る。
【0008】更に、ワイヤ全重量に対してMg及びMg
酸化物(Mg換算値):0.3重量%以下及びAl
23:0.2重量%以下に規制されていることが好まし
い。
【0009】また、金属外皮は軟鋼又は合金鋼にするこ
とができる。
【0010】
【作用】本願発明者等は、使用するフラックスの化学成
分を適正量に限定することにより、前記課題を解決する
ことができることを見い出した。即ち、水平隅肉溶接に
おける高速溶接時(溶接速度1m/分)の溶接作業性
(ビードの形状及びなじみ性)、及び立向上進姿勢にお
ける溶接作業性(ビードの垂れ落ち防止性)を向上させ
ることができる。
【0011】以下、本発明におけるフラックス入りワイ
ヤ全重量に対するフラックス中の含有成分の組成限定理
由について説明する。
【0012】TiO2 :3.0乃至5.5重量% フラックスとして使用されるTiO2 はスラグ形成剤と
して作用する。TiO2 含有量が3.0重量%未満であ
ると、スラグ量が不足となり、水平隅肉姿勢におけるビ
ード形状が劣化し、立向上進姿勢においてはビードの垂
れ落ちが発生する。一方、TiO2 含有量が5.5重量
%を超えると、ビードのなじみ性が劣化する。従って、
ワイヤ全重量に対するTiO2 含有量は3.0乃至5.
5重量%とする。好ましくは、TiO2 含有量は4.0
乃至5.0重量%である。なお、TiO2 はルチール及
びルコキシン等から添加されるものである。
【0013】ZrO2 :0.2乃至0.5重量% フラックスとして使用されるZrO2 は水平隅肉姿勢に
おけるビード形状及びビードのなじみ性を向上させる効
果を有する。ZrO2 含有量が0.2重量%未満である
と、その効果が低下する。一方、ZrO2 含有量が0.
5重量%を超えると、スラグが溶接金属に均一に被覆さ
れなくなり、ビード形状が劣化する。従って、ワイヤ全
重量に対するZrO2 含有量は0.2乃至0.5重量%
とする。好ましくは、ZrO2 含有量は0.25乃至
0.45重量%である。なお、ZrO2 はジルコンサン
ド等から添加されるものである。
【0014】SiO2 :0.1乃至0.5重量% フラックスとして使用されるSiO2 はスラグ形成剤及
びアーク安定剤として作用する。SiO2 含有量が0.
1重量%未満であると、その効果が低下し、スパッタの
発生量が増加する。一方、SiO2 含有量が0.5重量
%を超えると、スラグの剥離性が低下する。従って、ワ
イヤ全重量に対するSiO2 含有量は0.1乃至0.5
重量%とする。好ましくは、0.2乃至0.45重量%
である。なお、SiO2 は長石及び珪砂等から添加され
るものである。
【0015】C(炭素):0.02乃至0.1重量% フラックス又は金属外皮中に含有されるCは溶接金属の
強度を向上させる効果を有する。C含有量が0.02重
量%未満であると、溶接金属の強度が不足する。一方、
C含有量が0.1重量%を超えると、スパッタの発生量
の増加等によって、溶接作業性が低下する。従って、ワ
イヤ全重量に対するC含有量は0.02乃至0.1重量
%とする。好ましくは、C含有量は0.03乃至0.0
8重量%である。
【0016】Mn(マンガン):2.0乃至3.0重量
フラックス又は金属外皮中に含有されるMnは溶接金属
の脱酸を促進すると共に、溶接金属の靱性及び強度を高
める効果も有している。Mn含有量が2.0重量%未満
であると、溶接金属の強度及び靱性が低下する。一方、
Mn含有量が3.0重量%を超えると、強度が必要以上
に高くなり、靱性が低下する。従って、ワイヤ全重量に
対するMn含有量は2.0乃至3.0重量%とする。な
お、Mnは金属Mnの他に、Fe−Mn及びFe−Si
−Mn等のMn合金から添加されるものであり、Mn合
金から添加される場合は、Mn含有量はこれに含有され
るMn換算値とする。
【0017】Si(ケイ素):0.5乃至1.0重量% フラックス又は金属外皮中に含有されるSiは溶接金属
の脱酸を促進する効果を有する。Si含有量が0.5重
量%未満であると、その効果が低下し、溶接部にブロー
ホール等の溶接欠陥が発生する。一方、Si含有量が
1.0重量%を超えると、溶接金属の靱性が低下する。
従って、ワイヤ全重量に対するSi含有量は0.5乃至
1.0重量%とする。なお、Siは金属Siの他に、F
e−Si及びFe−Si−Mn等のSi合金から添加さ
れるものであり、Si合金から添加される場合は、Si
含有量はこれらに含有されるSi換算値とする。
【0018】(Zr+Al):0.15乃至0.5重量
Zr及びAlは水平隅肉溶接におけるビードのなじみ性
を向上させる効果を有する。ワイヤ中に含有されるZr
とAlとの総量が0.15重量%未満であると、その効
果が低下する。一方、ワイヤ中に含有されるZrとAl
との総量が0.5重量%を超えると、水平隅肉姿勢にお
けるビード形状が劣化する。従って、ワイヤ全重量に対
する(Zr+Al)含有量は0.15乃至0.5重量%
とする。好ましくは、(Zr+Al)含有量は0.2乃
至0.4重量%である。なお、ZrはFe−Zr及びF
e−Si−Zr等のZr合金から添加されるものであ
り、Alは金属Alの他に、Fe−Al等のAl合金か
ら添加されるものである。Zr又はAlがZr合金又は
Al合金から添加される場合は、Zr及びAlの含有量
は合金中に含有されるZr及びAl換算値とする。
【0019】(TiO2 +SiO2 +ZrO2 ):4.
0乃至6.0重量% 前述の如く、フラックス中に含有されるTiO2 、Si
2 及びZrO2 はスラグ形成剤として作用する。ワイ
ヤ全重量に対して、TiO2 、SiO2 及びZrO2
総量が4.0重量%未満であると、水平隅肉姿勢におけ
るアンダカットが発生しやすくなるとともに、立向上進
姿勢における溶接作業性が低下する。一方、TiO2
SiO2 及びZrO2 の総量が6.0重量%を超える
と、水平隅肉姿勢におけるビードのなじみ性が低下す
る。従って、ワイヤ全重量に対する(TiO2 +SiO
2 +ZrO2 )含有量は4.0乃至6.0重量%とす
る。好ましくは、(TiO2 +SiO2 +ZrO2 )含
有量は4.5乃至5.5重量%である。
【0020】Mg(マグネシウム):0.3重量%以下 Mgは一般的には、Zr及びAlと共に、強力な脱酸剤
として使用されることが多い。また、MgOは一般的
に、スラグ形成剤として使用されることが多い。しかし
ながら、Mg及びMgOには、Zr及びAlと異なり、
水平隅肉溶接におけるビード形状及びビードのなじみ性
を向上させる効果はない。Mg含有量が0.3重量%を
超えると、溶接金属に対するスラグの被包性が不均一と
なり、水平隅肉溶接におけるビード形状が劣化する。こ
のため、本発明においては、Zr及びAlの添加により
水平隅肉溶接におけるビードのなじみ性を向上させる
が、脱酸剤として同様の効果を有すると考えられている
Mgの含有量については制限する必要がある。また、M
g酸化物についても、同様の理由により制限する必要が
ある。従って、ワイヤ全重量に対するMg含有量は0.
3重量%以下であることが望ましい。なお、MgがMg
酸化物として添加される場合は、Mg含有量はMg換算
値とする。
【0021】Al23:0.2重量%以下 Al23はスラグの凝固点を上昇させる効果を有する。
このため、立向上進姿勢においては、Al23を添加す
ることによりビードの形状が向上する。しかしながら、
Al23含有量が0.2重量%を超えると、水平隅肉溶
接におけるビード形状が劣化する。従って、ワイヤ全重
量に対するAl23含有量は0.2重量%以下とするこ
とが望ましい。
【0022】本発明において使用するフラックスにおい
て、前述のフラックス成分以外の成分としては金属フッ
化物及び鉄粉等がある。
【0023】
【実施例】以下、本発明に係るガスシールドアーク溶接
用フラックス入りワイヤの実施例についてその比較例と
比較して具体的に説明する。
【0024】先ず、フラックス中における全ての含有成
分等が本発明の範囲内であるものを実施例とし、少なく
とも1種が本発明の範囲から外れているものを比較例と
して、鋼製外皮中にフラックスを充填してフラックス入
りワイヤを作製した。各フラックス中の含有成分(重量
%)等を下記表1及び2に示す。但し、表中の化学成分
欄において、酸化物の形で表したものについては酸化物
の重量%を示し、元素の形で表したものについては、合
金等の形でフラックス中に含有される場合であっても、
それらの換算値を示す。また、鋼製外皮はJIS G
3141、SPCCを使用し、ワイヤ全重量に対するフ
ラックスの割合は15重量%、ワイヤ径は1.4mmと
した。
【0025】次に、これらのワイヤを使用して、下記表
3に示す溶接方法によって鋼板を溶接し、ビード形状及
びビードのなじみ性等を観察することによって、溶接作
業性を評価した。これらの評価結果を下記表4及び5に
示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
【表3】
【0029】
【表4】
【0030】
【表5】
【0031】上記表1〜2及び4〜5に示すように、フ
ラックス中の化学成分等が全て本発明の範囲内である実
施例No.1〜7については、優れた溶接作業性を示し
た。また、実施例No.8については、請求項1に規定
した成分の含有量は実施例No.7と同一であるが、M
g換算値及びAl23の含有量が請求項2に規定した範
囲から外れているため、実施例No.7と比較して水平
隅肉溶接におけるビードの形状が劣化した。
【0032】一方、比較例No.9はTiO2 含有量及
び(TiO2 +ZrO2 +SiO2)含有量が本発明範
囲の下限未満であり、Mg換算値が本発明範囲の上限を
超えているので、水平隅肉溶接におけるビード形状及び
ビードのなじみ性が実施例と比較して不良であると共
に、立向上進溶接におけるビード形状が劣化した。比較
例No.10はSi含有量及び(Zr+Al)含有量が
本発明範囲の上限を超えているので、水平隅肉溶接にお
けるビード形状が実施例と比較して不良であると共に、
溶接金属の靱性が低下した。
【0033】比較例No.11はC及びMnの含有量が
本発明範囲の上限を超えているので、スパッタ発生量が
増加すると共に、必要以上に高強度となり、靱性が低下
した。比較例No.12はMn、Siの含有量及び(Z
r+Al)含有量が本発明範囲の下限未満であり、Mg
換算値が本発明範囲の上限を超えているので、水平隅肉
姿勢におけるビード形状及びビードのなじみ性が不良で
あると共に、溶接金属の強度が低下し、脱酸不足により
ブローホールが多発した。比較例No.13はTi
2 、ZrO2 、Al23の含有量及び(TiO2 +Z
rO2 +SiO2 )含有量が本発明範囲の上限を超えて
おり、(Zr+Al)含有量が本発明範囲の下限未満で
あるので、水平隅肉溶接におけるビード形状及びビード
のなじみ性が劣化した。
【0034】更に、比較例No.14はZrO2 、Si
2 及びCの含有量が本発明範囲の下限未満であるの
で、ビード形状及びビードのなじみ性が不良となり、ス
パッタ発生量が増加すると共に、溶接金属の強度が低下
した。比較例No.15はSiO2 含有量が本発明範囲
の上限を超えており、(Zr+Al)含有量が本発明範
囲の下限未満であるので、水平隅肉溶接におけるビード
形状及びビードのなじみ性が不良であると共に、いずれ
の溶接姿勢においても、スラグ剥離性が低下した。比較
例No.16は(TiO2 +ZrO2 +SiO2 )含有
量が本発明範囲の上限を超えているので、水平隅肉溶接
におけるビードのなじみ性が不良であった。
【0035】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
ワイヤ中の化学成分の含有量を適正量に規定しているの
で、単電極による水平隅肉溶接において、溶接速度の向
上が可能であり、優れたビード形状及びビードのなじみ
性を有していて溶接作業性が良好であると共に、単電極
による立向上進溶接においても優れた溶接作業性を有す
るガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを得
ることができる。更に、ワイヤ中のMg換算値及びAl
23含有量を規制すると、より一層優れたビード形状が
得られる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭56−39193(JP,A) 特開 平9−94692(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 35/368 B23K 35/30

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属外皮中にフラックスを充填してなる
    ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおい
    て、ワイヤ全重量に対して、TiO2 :3.0乃至5.
    5重量%、ZrO2 :0.2乃至0.5重量%、SiO
    2 :0.1乃至0.5重量%、C:0.02乃至0.1
    重量%、Mn:2.0乃至3.0重量%、Si:0.5
    乃至1.0重量%、(Zr+Al)含有量:0.15乃
    至0.5重量%、及び(TiO2 +SiO2 +Zr
    2 )含有量:4.0乃至6.0重量%を含有している
    ことを特徴とするガスシールドアーク溶接用フラックス
    入りワイヤ。
  2. 【請求項2】 更に、ワイヤ全重量に対してMg及びM
    g酸化物(Mg換算値):0.3重量%以下及びAl2
    3:0.2重量%以下に規制されていることを特徴と
    する請求項1に記載のガスシールドアーク溶接用フラッ
    クス入りワイヤ。
  3. 【請求項3】 前記金属外皮は軟鋼又は合金鋼であるこ
    とを特徴とする請求項1又は2に記載のガスシールドア
    ーク溶接用フラックス入りワイヤ。
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