JP3014954B6 - 感熱転写記録媒体セット - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は感熱転写記録媒体セット、特に転写されたインク層の擦り汚れを防止するのに有効な感熱転写記録媒体、受理媒体及びこれらの組合せに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル樹脂やポリイミド樹脂などからできたフィルム、および、グラシン紙、トレーシング紙やコンデンサー紙など薄用紙からなる基材上に熱溶融性インク層を設けた感熱転写記録媒体の熱溶融性インク層の面に普通紙やタッグを重ね合わせて前記基材側よりサーマルヘッドで加熱し、熱溶融性インク層を溶融させて普通紙やタッグに転写させる感熱転写記録方法が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この様な方法で熱溶融性インク層を転写した普通紙やタッグは、熱溶融性インク層を擦ることにより容易に汚れてしまうという欠点が有った。
【0004】
したがって本発明の目的は、普通紙やタッグに転写された熱溶融性インク層の擦り汚れを防止することが可能な感熱転写記録系を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
従来の感熱転写記録媒体の熱溶融性インク層は、着色剤とワックスが主成分で、中でもワックスが全体の30〜80重量パーセントを占めていた。一方、樹脂は20重量パーセント以下であった。
【0006】
本発明者は、感熱転写された印字の擦り汚れを防止するために種々検討した結果、熱溶融性インク層中のワックス成分が少ないものほど擦過性(=擦り汚れ性)が良く、ワックス成分が30重量パーセントを越えると擦過性が悪くなることを見い出した。しかしながら本発明者はまた、ワックス成分が少なくなると転写性が悪くなることをも見出した。
【0007】
この発明は、以上の知見に基づく本発明者の創意及び工夫によりなされたものであり、基材上に熱溶融性インク層を設けた感熱転写記録媒体及び印字がなされる受理媒体に於いて、該感熱転写記録媒体の基材と熱溶融性インク層との間に、転写性を上げるために剥離層を設け、かつ該受理媒体にオーバーコート層を設けたことを特徴とする。
【0008】
基材としては、前述のポリエステル樹脂やポリイミド樹脂などからできたフィルム、および、グラシン紙、トレーシング紙やコンデンサー紙など薄用紙が使用できる。
【0009】
剥離層は、50〜120℃で溶融する材料から成り、通常はワックスを単独で、またはこれを樹脂と併用したものを主成分とするものであり、他に充填剤などを合せて使用することも出来る。
【0010】
ワックスとしては、カルナバ、モンタン、キャンデリラ、パラフィン、ライスワックス、ポリエチレンワックスなどで50〜120℃で溶融するものを使用すれば良い結果が得られる。
【0011】
樹脂成分としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、エチレン−アクリル共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、ロジン、ポリエステルなどを使用すれば良い結果が得られる。
【0012】
充填剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、シリカなどの微粉末が使用できる。
【0013】
次に、熱溶融性インク層は、一般に知られているカーボンブラックやグラファイトなどの顔料を含む着色剤と、カルナバ、マイクロクリスタリンワックスなどのワックス類、およびポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、アイオノマー樹脂などの熱可塑性樹脂とから成る。耐油性、耐アルコール性、耐酸性等を考慮する場合には、アクリル樹脂、飽和ポリエステル樹脂又はアイオノマー樹脂を使用するのが有利である。特に、ガラス転移温度が−20〜70℃のものを使用すればより良い結果が得られる。また、ポリエステル樹脂を用い、それを一部硬化させるとさらに良い結果が得られる。
【0014】
樹脂は熱溶融性インク層中で30重量パーセント以上使用することが好ましい。30重量パーセント未満であると、擦過性が悪くなり、また、耐油性、耐アルコール性、耐酸性等が悪くなってくる。35重量パーセント以上用いれば特に良い結果が得られる。
【0015】
一方、ワックスは熱溶融性インク層中で30重量パーセント以下とすることが好ましい。30重量パーセントを越えると、擦過性が悪くなる。
【0016】
また、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、シリカなどの微粉末からなる充填剤、潤滑油等の添加剤を加えることができる。
【0017】
オーバーコート層は、熱可塑性樹脂から成り、前記熱溶融性インク層として使用できる樹脂をオーバーコート層に使用できる。好ましくは、オーバーコート層に使用される樹脂と熱溶融性インク層に使用される樹脂は、同種の樹脂とされる。
【0018】
本発明の感熱転写記録媒体は、必要に応じて前記基材の片面にシリコン樹脂や界面活性剤を塗布して、サーマルヘッドの熱に依る基材の溶融に起因するスティックを防止するための層を設け、該基材の他方の面に、ワックスを単独で、またはこれを樹脂と併用したものを主成分とした塗剤をソルベントコーティング法、または、エマルジョンコーティング法など通常に使われるコーティング法により塗布して剥離層を形成(好適な厚みは、1〜4μ)したのち、この剥離層上に通常の方法により熱溶融性インク層を形成する(好適な厚みは、1〜5μ)ことにより容易に製造することができる。
【0019】
【実施例】
実施例1
剥離層
片面にスティック防止の為の耐熱処理層を設けた厚さ5μのポリエステルフィルムの他の面にカルナバワックスからなる塗剤を1μの厚さになるように塗布した。
熱溶融性インク層
バイロナールMD1930(ポリエステル樹脂水分散体
30%溶液、東洋紡績(株)製) 50部
DISPERSE BLACK(カーボンブラック水分散体
40%溶液、大日本インキ化学工業(株)製) 50部
上記配合で、撹拌機などで混合して塗剤を作成する。このものを剥離層の上に2μの厚みになるように塗布した。
オーバーコート層
厚み25μのポリエステルフィルムに、バイロナールMD−1930を塗布して1μの厚みになるようにオーバーコート層を設けた。この感熱転写記録媒体セットを用いて文字を印字したところ、良好な印字が得られた。この感熱転写記録媒体セットを用いてバーコードを印字してJIS規格(L0823)の摩擦試験機I型の摩擦子の白綿布に替えてシードゴム工業株式会社製「レーダーS50」を貼り付けてテストを行なったところ、50往復テストを行なっても印字には何の変化も見られなかった。次に、35℃の水中に4時間浸せきしたもの、及び70℃で紫外線を100時間照射したものを前記と同じ様にテストしたところ何等擦り汚れは見えなかった。また、エンジンオイルに浸せきしたのち、前記と同じ様にテストしたところ何等擦り汚れは見えなかった。ガソリンに対しても同様のテストをしたところ同じ様な効果が有った。さらに、印字したものを布に挟んでアイロン(150℃)をかけて耐熱テストを行なったところ、印字には変化は見られなかった。
【0020】
比較例1
オーバーコート層を設けなかった以外は実施例1と同様にして感熱転写記録媒体セットを作製し、これを用いて文字を印字したところ、良好な印字が得られた。しかしながら、この感熱記録媒体セットを用いてバーコードを印字して、実施例1で使用した試験機I型の摩擦子の白綿布に替えてシードゴム工業株式会社製「レーダーS50」を貼り付けてテストを行なったところ、20往復テストの後から汚れがではじめた。
【0021】
実施例2
剥離層
片面にスティック防止の為の耐熱処理層を設けた厚さ5μのポリエステルフィルムの他の面にカルナバワックスからなる塗剤を1μの厚さになるように塗布した。
熱溶融性インク層
セビアン46704(アクリル樹脂水分散体30%溶液、
ダイセル化学工業(株)製) 40部
DISPERSE BLACK(カーボンブラック水分散体
40%溶液 40部
カルナバエマルジョン(水分散体30%溶液) 20部
上記配合による塗剤を2μの厚さになるように塗布した。
オーバーコート層
厚み25μのポリエステルフィルムに、セビアン46704を塗布して1μの厚みになるようにオーバーコート層を設けた。実施例1と同様にして感熱転写記録媒体セットをつくり、さらに、同様のテストを行なったところ同じ様な結果を得た。
【0022】
実施例3
剥離層
片面にスティック防止の為の耐熱処理層を設けた厚さ5μのポリエステルフィルムの他の面にカルナバワックスからなる塗剤を1μ厚さになるように塗布した。
熱溶融性インク層
バイロナールND1930(ポリエステル樹脂水分散体
30%溶液) 25部
ケミパールS120(アイオノマー樹脂水分散体27%溶液、
三井石油化学工業(株)製) 25部
DISPERSE BLACK(カーボンブラック水分散体
40%溶液 50部
上記配合による塗剤を2μの厚さになるように塗布した。
オーバーコート層
厚み25μのポリエステルフィルムに、バイロナールMD1930とケミパールS120を1対1に配合した塗剤を塗布して1μの厚みになるようにオーバーコート層を設けた。実施例1と同様にして感熱転写記録媒体セットをつくり、さらに、同様のテストを行なったところ同じ様な結果を得た。
【0023】
比較例2
オーバーコート層を設けなかった以外は実施例3と同様にして感熱記録媒体セットをつくり、印字を行った後、同様のテストを行ったところ、比較例1と同様な結果を得た。
【0024】
実施例4
剥離層
片面にスティック防止の為の耐熱処理層を設けた厚さ5μのポリエステルフィルムの他の面にカルナバワックスからなる塗剤を1μの厚さになるように塗布した。
熱溶融性インク層
バイロン56ES(酢酸エチル溶液に溶解されたポリエステル
樹脂45%溶液、東洋紡績(株)製) 100部
コロネートEX(ポリイソシアネート、日本ポリウレタン
工業(株)製) 6部
カーボンブラック 20部
軽質炭酸カルシウム 30部
酢酸エチル 181部
上記配合による塗剤を120℃の熱風にて一部を硬化して2μの厚さになるように塗布した。
オーバーコート層
厚み25μのポリエステルフィルムに、バイロン56ESとコロネートEXを100対6に配合した塗剤を120℃の熱風にて一部を硬化して塗布して1μの厚みになるようにオーバーコート層を設けた。実施例1と同様にして感熱転写記録媒体セットをつくり、さらに、同様のテストを行なったところ実施例1よりトリクレンに対して耐溶剤性が向上した。
【0025】
比較例3
オーバーコート層を設けなかった以外は実施例4と同様にして感熱転写記録媒体セットをつくり、印字を行った後、同様のテストを行ったところ、比較例1と同様な結果を得た。
【0026】
【発明の効果】
本発明の感熱転写記録媒体セットを用いて普通紙やタッグ、ラベル、シールとか言ったものに熱溶融性インク層を転写したとき、オーバーコート層と熱溶融性インク層とが一体化し、擦り汚れに対して非常に強くなった。それとともに、耐熱性、耐溶剤性にすぐれ、その上剥離層の離型効果も有り転写性が向上し、普通紙や紙製のタッグ、ラベル、シールのみならず繊維製のタッグ、ラベル、シールまで使用する事ができるようになった。

Claims (2)

  1. 耐熱性基材上に剥離層および熱溶融性インク層が順次積層された感熱転写記録媒体と、基材上にオーバーコート層が設けられた受理媒体とからなり、該感熱転写記録媒体と該受理媒体とがそれらの熱溶融性インク層とオーバーコート層とが互いに対向するように重ねられてなる、感熱転写記録媒体セットにおいて、
    該剥離層が50〜120℃で溶融する材料からなり、
    該熱溶融性インク層は、一部を硬化させたポリエステル 樹脂および着色剤を主成分として含有し、該ポリエステ ル樹脂の含有量が30重量%以上であり、かつ、ワックス成分の含有量が30重量%以下であり、
    該オーバーコート層はポリエステル樹脂を30重量%以上含むことを特徴とする感熱転写記録媒体セット。
  2. 基材上にポリエステル樹脂を30重量%以上含むオーバーコート層を有する受理媒体と組み合わされることにより、感熱転写記録媒体セットを構成するための感熱転写記録媒体であって、耐熱性基材上に剥離層および熱溶融性インク層が順次積層され、該剥離層が50〜120℃で溶融する材料からなり、該熱溶融性インク層は、一部を硬化させたポリエステル樹脂および着色剤を主成分として含有し、該ポリエステル樹脂の含有 量が30重量%以上であり、かつ、ワックス成分の含有量が30重量%以下であことを特徴とする感熱転写記録媒体。
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